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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】ロボットアーム
(51)【国際特許分類】
   B25J 18/06 20060101AFI20230216BHJP
【FI】
B25J18/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019013592
(22)【出願日】2019-01-29
(65)【公開番号】P2020121354
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-09-13
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度から30年度、知の拠点あいち重点研究プロジェクト「次世代ロボット社会形成技術開発プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】三枝 亮
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 薪雄
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-185226(JP,A)
【文献】特開2017-047494(JP,A)
【文献】特開平07-136956(JP,A)
【文献】特開2018-117703(JP,A)
【文献】特表2014-503374(JP,A)
【文献】特開2006-039311(JP,A)
【文献】▲高▼信 英明 他,舌型ロボットの開発 Development of Tongue Robot,第21回日本ロボット学会学術講演会予稿集CD-ROM 2003年 The 21st Annual Conference of THE ROBOTICS SOCIETY OF JAPAN ,日本,社団法人日本ロボット学会
【文献】木▲崎▼ 裕太 他,舌機構のための柔軟空気圧湾曲アクチュエータ,第36回日本ロボット学会学術講演会 THT 36th ANNUAL CONFERENCE OF THE ROBOTICS SOCIETY OF JAPAN ,日本,社団法人日本ロボット学会
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 18/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ又は反りを個別に制御可能な複数のリンクを有する駆動部であって、舌のように動作する駆動部を備え、
上記リンクは、舌を表現するワイヤーフレームモデル又はソリッドモデルの各エッジに対応するように配置されており、上記駆動部は、上記リンクの長さを変化させることによって動作する、
ことを特徴とするボットアーム。
【請求項2】
長さ又は反りを個別に制御可能な複数のリンクを有する駆動部であって、舌のように動作する駆動部を備え、
上記リンクは、舌を構成する内舌筋及び外舌筋に対応するように配置されており、上記駆動部は、上記リンクのうち、内舌筋に対応するように配置されたリンクの長さを変化させることによって、舌体が変形するように動作し、上記リンクのうち、外舌筋に対応するように配置されたリンクの長さを変化させることによって、舌体が移動するように動作する、
ことを特徴とするボットアーム。
【請求項3】
長さ又は反りを個別に制御可能な複数のリンクを有する駆動部であって、舌のように動作する駆動部を備え、
上記リンクは、葉脈状に配置されており、上記駆動部は、上記リンクの反りを変化させることによって動作する、
ことを特徴とするボットアーム。
【請求項4】
上記リンクは、内舌筋を構成する上縦舌筋、下縦舌筋、横舌筋、及び垂直舌筋、並びに、外舌筋を構成するオトガイ舌筋、茎突舌筋、及び舌骨舌筋に対応して配置されている、
ことを特徴とする請求項2に記載のロボットアーム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットアームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のロボットアームとしては、一定の長さを有するリンクをジョイントで連結することにより構成されたものが一般的であった。このようなロボットアームは、ジョイントを介して隣接するリンクの成す角を変化させることによって、人間の腕のように動作する。
【0003】
また、放射状に配置された3本の棒状体をリンクで連結することにより構成されたフレキシブルアームが特許文献1に開示されている。このフレキシブルアームは、3個のサーボモータを回転させることによって、長さを変化させたり曲げ方向を変化させたりすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭61-61788(1986年3月29日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のロボットアームには、運動の自由度が低く、動作の制約が多いという問題があった。例えば、曲げ/伸ばしの動作や伸び/縮みなどの動作は可能であったが、丸めるといった動作は不可能であった。
【0006】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、運動の自由度が高く、動作の制約が少ないロボットアームを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るロボットアームは、長さ又は反りを個別に制御可能な複数のリンクを有する駆動部であって、舌のように動作する駆動部を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、運動の自由度が高く、動作の制約が少ない(例えば、丸めるといった動作を行うことができる)ロボットアームを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施形態に係るロボットアームの斜視図である。
図2図1に示すロボットアームが備えるリンクの等価回路を示す回路図である。
図3】舌の筋構造を示す断面図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係るロボットアームの側面図及び平面図である。
図5】本発明の第3の実施形態に係るロボットアームの斜視図である。
図6図5に示すロボットアームが備えるリンクの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔第1の実施形態〕
(ロボットアームの構成)
本発明の第1の実施形態に係るロボットアーム1の構成について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るロボットアーム1の斜視図である。
【0011】
ロボットアーム1は、人間の舌を模したロボットアーム(マニピュレータ)であり、図1に示すように、駆動部11と、被覆部12と、を備えている。駆動部11は、個別に長さを制御することが可能な複数のリンクLにより構成されており、舌のように動作する。互いに隣接するリンクLは、ジョイントJ(例えば、ボールジョイント)を介して連結されており、各ジョイントJを介して連結されたリンクLの成す角は、自由に変化し得る。被覆部12は、ゴム等の弾性材料により構成されており、駆動部11を被覆している。
【0012】
駆動部11におけるリンクLの配置は、舌を表現するワイヤーフレームモデルに基づいて決められている。すなわち、各リンクLは、舌を表現するワイヤーフレームモデルの各エッジに対応するように配置されている。
【0013】
これらのリンクLの長さを遠隔制御により変化させることによって、駆動部11を舌のように動作させることができる。例えば、下面側において前後方向に沿うリンクLを伸ばし、上面側において前後方向に沿うリンクLを縮めれば、側面視形状がU字型になるようにロボットアーム1を丸めることができる。或いは、下面側において左右方向に沿うリンクLを伸ばし、上面側において左右方向に沿うリンクLを縮めれば、正面視形状がU字型になるようにロボットアーム1を丸めることができる。或いは、上下方向に沿うリンクLを伸ばし、左右方向に沿うリンクLを縮めれば、ロボットアーム1の断面を丸くして、ロボットアーム1の厚みを増すことができる。
【0014】
以上のように、本実施形態によれば、運動の自由度が高く、動作の制約が少ないロボットアーム1を実現することができる。
【0015】
(リンクの構成例)
ロボットアーム1の駆動部11を構成するリンクLの一構成例について、図2を参照して説明する。図2は、本構成例に係るリンクLの等価回路を示す回路図である。
【0016】
本構成例に係るリンクLは、図2に示すように、2つのバネS1~S2と、1つのダンパDと、1つの動力源Pと、を備えている。第1のバネS1及び第2のバネS2は、直列に接続されている。ダンパD及び動力源Pは、第1のバネS1と並列に接続されている。第1のバネS1の自然長をL10、第1のバネS1の長さをL1、第2のバネS2の自然長をL20、第2のバネS2の長さをL2とすると、リンクLの長さLtotal=L1+L2は、下記の拘束条件により与えられる。
【0017】
k1(L10-L1)+k2(L20-L2)+Fp=Fext。
【0018】
上記の式において、Fpは、動力源Pから与えられる、第1のバネS1を伸ばそうとする力であり、Fextは、両端のジョイントJを介して隣接するリンクLから与える、リンクLを縮めようとする外力である。また、k1は、第1のバネS1のバネ定数であり、k2は、第2のバネS2のバネ定数である。
【0019】
上記の拘束条件の下で力Fpを制御することによって、リンクLの長さLtotal=L1+L2を制御することができる。例えば、k1=k2=kの場合、Ltotalは、Ltotal=L10+L20+(Fp-Fext)/kと表すことができる。
【0020】
なお、第1のバネS1は、その長さL1の時間変化率v1=dL1/dtに比例する抵抗力b×v1をダンパDから受ける。bは、ダンパDの粘性係数である。これにより、ロボットアーム1の動作がより滑らかになる。
【0021】
(ロボットアームの遠隔制御)
ロボットアーム1は、例えば、操作者の舌を用いて遠隔制御することができる。この場合、例えば、各ジョイントJに対応するサンプリングポイントを操作者の舌の表面に設定し、互いに隣接するサンプリングポイント間の距離(以下、「サンプリングポイント間隔」と記載する)をリアルタイム測定する。そして、各リンクLを、そのリンクLに対応するサンプリングポイント間隔に応じた長さに制御する。これにより、ロボットアーム1の形状を、操作者の舌の形状に連動して変化させることができる。ここで、サンプリング間隔のリアルタイム測定は、例えば、操作者の口腔内に設置されたカメラにより撮像された舌の映像を解析することによって実現することができる。サンプリングポイント間隔を測定するセンサが内蔵されたサックを、操作者の舌に被せることによって実現することもできる。
【0022】
なお、サンプリングポイント間隔とリンクLの長さとの対応関係は、線形であってもよいし、そうでなくてもよい。また、サンプリングポイント間隔とリンクLの長さとの対応関係は、全てのリンクLで共通であってもよいし、そうでなくてもよい。この対応関係が線形かつ共通の場合、ロボットアーム1の形状を操作者の舌の形状と相似な形状に制御することが可能になる。また、この対応関係が非線形又は非共通である場合、操作者の舌の動きを補完又は強調した形でロボットアーム1の動きに反映させることができる。
【0023】
(付記事項)
実施形態においては、舌を表現するワイヤーフレームモデルとして、三角形をセルとするワイヤーフレームモデルを採用しているが、これに限定されない。すなわち、舌を表現するワイヤーフレームモデルとしては、任意の多角形をセルとするワイヤーフレームモデルを採用することができる。ひとつのワイヤーフレームモデルのなかに、頂点数の異なるセル(例えば、三角形のセルと四角形のセル)が混在していてもよい。更に、舌を表現するワイヤーフレームモデルの代わりに、舌を表現するソリッドモデルを採用してもよい。この場合、四面体などの多面体がセルとなる。駆動部11を構成する各リンクLをソリッドモデルのエッジに対応するように配置する点については、ワイヤーフレームモデルを採用する場合と同様である。
【0024】
〔第2の実施形態〕
(舌の筋構造)
本発明の第2の実施形態の説明に入る前に、舌の筋構造について、図3を参照して説明する。図3は、人間の舌の断面図である。
【0025】
舌は、複数の筋(横紋筋)からなる筋性器官である。舌を構成する舌筋は、舌体を構成する内舌筋と、舌体を支持する外舌筋とに分けられる。内舌筋は、舌体上面において前後方向に伸縮する上縦舌筋、舌体下面において前後方向に伸縮する下縦舌筋、舌体内部において左右方向に伸縮する横舌筋、及び、舌体内部において上下方向に伸縮する垂直舌筋を含み、舌体の変形に利用される。外舌筋は、舌体を前方に引き出すオトガイ舌筋、舌体を後方に引き込む茎突舌筋、及び、舌体を下方に引き下げる舌骨舌筋を含み、舌体の移動に利用される。
【0026】
(ロボットアームの構成)
本発明の第2の実施形態に係るロボットアーム2の構成について、図4を参照して説明する。図4において、(a)は、ロボットアーム2の側面図であり、(b)は、ロボットアームの平面図である。
【0027】
ロボットアーム2は、人間の舌を模したロボットアーム(マニピュレータ)であり、図4に示すように、駆動部21と、被覆部22と、を備えている。駆動部21は、個別に長さを制御することが可能な複数のリンクL,L’により構成されており、舌のように動作する。互いに隣接するリンクL,L’は、ジョイントJ(例えば、ボールジョイント)を介して連結されており、各ジョイントJを介して連結されたL,L’の成す角は、自由に変化し得る。被覆部22は、ゴム等の弾性材料により構成されており、駆動部21を被覆している。
【0028】
駆動部21におけるリンクL,L’の配置は、舌を構成する舌筋の配置に基づいて決められている。すなわち、各リンクL,L’は、舌を構成する各舌筋に対応するように配置されている。より具体的に説明すると、駆動部21を構成するリンクL,L’は、内舌筋に対応するリンクLと、外舌筋に対応するリンクL’と、に大別される。内舌筋に対応するリンクLには、上縦舌筋に対応するリンクL1、下縦舌筋に対応するリンクL2、横舌筋に対応するリンクL3、及び、垂直舌筋に対応するリンクL4があり、これらは、舌体部の変形に利用される。外舌筋に対応するリンクL’には、オトガイ舌筋に対応するリンクL’1、茎突舌筋に対応するリンクL’2、及び、舌骨舌筋に対応するリンクL’3があり、これらは、舌体の移動に利用される。
【0029】
これらのリンクL,L’の長さを遠隔制御により変化させることによって、駆動部21を舌のように動作させることができる。例えば、下縦舌筋に対応するリンクL2を伸ばし、上縦舌筋に対応するリンクL1を縮めれば、側面視形状がU字型になるようにロボットアーム2を丸めることができる。或いは、横舌筋に対応する下面側のリンクL3を伸ばし、横舌筋に対応する上面側のリンクL3を縮めれば、正面視形状がU字型になるようにロボットアーム2を丸めることができる。或いは、垂直舌筋に対応するリンクL4を伸ばし、横舌筋に対応するリンクL3を縮めれば、ロボットアーム2の厚みを増すことができる。或いは、茎突舌筋に対応するリンクL’2を伸ばし、オトガイ舌筋に対応するリンクL’1を縮めれば、ロボットアーム2を前方に突き出すことができる。
【0030】
以上のように、本実施形態によれば、運動の自由度が高く、動作の制約が少ないロボットアーム2を実現することができる。
【0031】
(リンクの構成例)
本実施形態に係るロボットアーム2の駆動部21を構成するリンクL,L’は、第1の実施形態に係るロボットアーム1の駆動部11を構成するリンクLと同様に実現することができる。このため、本実施形態に係るロボットアーム2の駆動部21を構成するリンクL,L’の構成例については、図示及び説明を割愛する。
【0032】
(ロボットアームの遠隔制御)
ロボットアーム2は、例えば、操作者の舌を用いて遠隔制御することができる。この場合、例えば、操作者の各舌筋の伸縮状態をリアルタイム測定する。そして、各リンクL,L’を、そのリンクL,L’に対応する舌筋の伸縮状態に応じた長さに制御する。これにより、ロボットアーム2の形状を、操作者の舌の形状に連動して変化させることができる。
【0033】
〔第3の実施形態〕
(ロボットアームの構成)
本発明の第3の実施形態に係るロボットアーム3の構成について、図5を参照して説明する。図5は、ロボットアーム3の斜視図である。
【0034】
ロボットアーム3は、人間の舌を模したロボットアーム(マニピュレータ)であり、図5に示すように、駆動部31と、被覆部32と、を備えている。駆動部31は、個別に反りを制御することが可能な複数のリンクLより構成されており、舌のように動作する。互いに隣接するリンクLは、ジョイントJ(例えば、T字型又は十字型ジョイント)を介して連結されており、各ジョイントJを介して連結されたリンクLの成す角は、固定である。被覆部32は、ゴム等の弾性材料により構成されており、駆動部31を被覆している。
【0035】
駆動部31におけるリンクLの配置は、葉脈状である。すなわち、駆動部31は、幹となる第1階層のリンクL1と、リンクL1から枝分かれした第2階層のリンクL2と、リンクL2から枝分かれした第3階層のリンクL3と、により構成されている。
【0036】
これらのリンクLの反りを遠隔制御により変化させることによって、駆動部31を舌のように動作させることができる。例えば、幹となる第1階層のリンクL1を上方に向かって反らせれば、側面視形状がU字型になるようにロボットアーム3を丸めることができる。或いは、枝となる第2階層のリンクL2を上方に向かって反らせれば、正面視形状がU字型になるようにロボットアーム3を丸めることができる。
【0037】
以上のように、本実施形態によれば、運動の自由度が高く、動作の制約が少ないロボットアーム3を実現することができる。
【0038】
(リンクの構成例)
ロボットアーム3の駆動部31を構成するリンクLの一構成例について、図6を参照して説明する。図6の(a)及び(b)は、本構成例に係るリンクLの断面図である。
【0039】
本構成例に係るリンクLは、図6に示すように、熱膨張率が相対的に大きい金属により構成された第1金属層M1と、熱膨張率が相対的に小さい金属により構成された第2金属層M2とを含むバイメタルストリップである。リンクLは、第1金属層M1がロボットアーム3の下面側に位置し、第2金属層M2がロボットアーム3の上面側に位置するように配置される。
【0040】
室温環境において、リンクLは、図6の(a)に示すように、平坦な状態を保っている。リンクLを加熱すると、熱膨張率の相対的に大きい第1金属層M1が熱膨張率の相対的に小さい第2金属層M2よりも大きく膨張する。その結果、リンクLは、図6の(b)に示すように、上に向かって反った状態になる。逆に、高温環境において、リンクLは、図6の(b)に示すように、反った状態を保っている。リンクLを冷却すると、熱膨張率の相対的に大きい第1金属層M1が熱膨張率の相対的に小さい第2金属層M2よりも大きく収縮する。その結果、リンクLは、図6の(a)に示すように、平坦な状態になる。
【0041】
リンクLの反りの程度(例えば、曲率半径)とリンクLの温度との間には、一定の対応関係がある。このため、リンクLの温度を制御することによって、リンクLの反りの程度を制御することができる。リンクLの温度は、例えば、以下のように制御することができる。すなわち、リンクLの温度が制御目標値よりも低い場合、リンクLの温度が制御目標値に達するまでリンクLに電流を流し、ジュール熱によってリンクLの温度を上昇させる。逆に、リンクLの温度が制御目標値よりも高い場合、リンクLの温度が制御目標値に達するまでリンクLに電流を流さず、自然冷却によってリンクLの温度を低下させる。また、リンクLの温度を制御する別の方法としては、リンクLの近くにヒータを配置しておき、ヒータに流す電流を制御する方法であってもよい。
【0042】
また、リンクLは、図6に示したような第1金属層M1と第2金属層M2との2層構造に限定されるものではなく、ロボットアーム3の下面側から順番に、第2金属層M2、第1金属層M1、及び第2金属層M2が配置された3層構造であってもよい。このような3層構造のリンクLにおいて、ロボットアーム3の下面側に位置する第2金属層M2、又は、ロボットアーム3の上面側に位置する第2金属層M2を選択的に加熱することによって、リンクLを反らせる方向を選択することができる。
【0043】
なお、リンクLは、反りが制御可能なものであればよく、バイメタルストリップに限定されない。例えば、形状記憶合金を用いてリンクLを実現してもよい。
【0044】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係るロボットアームは、長さ又は反りを個別に制御可能な複数のリンクを有する駆動部であって、舌のように動作する駆動部を備えていることを特徴とする。
【0045】
上記の構成によれば、従来のロボットアームと比べて、運動の自由度が高く、動作の制約が少ないロボットアームを実現することができる。上記のように構成されたロボットアームの動作には、例えば、特許文献1に記載のロボットアームでは実現することのできなかった、側面視形状又は正面視形状がU字型になるように丸めるといった動作をも含まれる。
【0046】
本発明の態様2に係るロボットアームは、本発明の態様1に係るロボットアームにおいて、上記リンクは、舌を表現するワイヤーフレームモデル又はソリッドモデルの各エッジに対応するように配置されており、上記駆動部は、上記リンクの長さを変化させることによって動作する、ことを特徴とする。
【0047】
上記の構成によれば、長さを制御可能なリンクを用いて、運動の自由度が高く、動作の制約が少ないロボットアームを実現することができる。また、上記リンクが舌を表現するワイヤーフレームモデルの各エッジに対応するように配置されている場合、(1)操作者の舌にワイヤーフレームのノードに対応するサンプリングポイントを設定し、(2)互いに隣接するサンプリングポイント間の距離をリアルタイム測定し、(3)各リンクの長さを対応するサンプリング間の距離に応じた長さに制御することによって、あたかも操作者の舌が外在化したかのように振る舞うロボットアームを実現することができる。
【0048】
本発明の態様3に係るロボットアームは、本発明の態様1に係るロボットアームにおいて、上記リンクは、舌を構成する各舌筋に対応するように配置されており、上記駆動部は、上記リンクの長さを変化させることによって動作する、ことを特徴とする。
【0049】
上記の構成によれば、長さを制御可能なリンクを用いて、運動の自由度が高く、動作の制約が少ないロボットアームを実現することができる。また、(1)操作者の舌を構成する各舌筋の収縮状態を測定し、(2)各リンクの長さを対応する舌筋の収縮状態に応じた長さに制御することによって、あたかも操作者の舌が外在化したかのように振る舞うロボットアームを実現することができる。
【0050】
本発明の態様4に係るロボットアームは、本発明の態様1に係るロボットアームにおいて、上記リンクは、葉脈状に配置されており、上記駆動部は、上記リンクの反りを変化させることによって動作する、ことを特徴とする。
【0051】
上記の構成によれば、反りを制御可能なリンク(例えば、バイメタルストリップ)を用いて、運動の自由度が高く、動作の制約が少ないロボットアームを実現することができる。
【0052】
なお、本発明の第2の態様に係るロボットアームが備える駆動部は、舌のように動作させることもできるし、舌以外の対象物のように動作させることもできる。後者のような駆動部を備えたロボットアームは、「長さを個別に制御可能な複数のリンクであって、任意の対象物を表現するワイヤーフレームモデル又はソリッドモデルの各エッジに対応するように配置された複数のリンクを有する駆動部を備えたロボットアーム」と表現することができる。このような構成によっても、従来のロボットアームよりも動作の柔軟性の高いロボットアームを実現することができる。
【0053】
また、本発明の第4の態様に係るロボットアームが備える駆動部は、舌のように動作させることもできるし、舌以外の対象物のように動作させることもできる。後者のような駆動部を備えたロボットアームは、「反りを個別に制御可能な複数のリンクであって、葉脈状に配置された複数のリンクを有する駆動部を備えたロボットアーム」と表現することができる。このような構成によっても、従来のロボットアームよりも動作の柔軟性の高いロボットアームを実現することができる。
【0054】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1,2,3 ロボットアーム
11,21,31 駆動部
12,22,32 被覆部
L,L’ リンク
図1
図2
図3
図4
図5
図6