(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】着脱自在な止水板
(51)【国際特許分類】
E06B 5/00 20060101AFI20230216BHJP
E06B 7/23 20060101ALI20230216BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E06B7/23 A
E04H9/02 341Z
(21)【出願番号】P 2020039652
(22)【出願日】2020-03-09
【審査請求日】2022-08-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519263752
【氏名又は名称】株式会社ESUM
(73)【特許権者】
【識別番号】520081536
【氏名又は名称】株式会社大阪ヒカリ
(73)【特許権者】
【識別番号】599108806
【氏名又は名称】株式会社泉化工
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(72)【発明者】
【氏名】上平 雅己
【審査官】素川 慎司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-113858(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0467597(KR,Y1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0112355(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00 - 5/20
E04H 9/00 - 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
止水板と、建物の出入口の左右のドア枠に設けられる一対の固定板とからなり、該一対の固定板に前記止水板の一方の端部と他方の端部とが固定されると前記出入口が氾濫水に対して遮断されるようになっている止水装置であって、
前記止水板は、底部に弾性部材からなる所定厚さの底部パッキンが設けられ、
前記底部パッキンは前記止水板の表面側に位置する第1の底部パッキンと裏面側に位置する第2の底部パッキンとからなり、前記第2の底部パッキンは底面に凸状の突起が形成されていると共に前記第1の底部パッキンより変形しやすい部材から形成されており、
前記固定板は床面から所定高さにおいて突起部が形成されており、
前記止水板は、前記一対の固定板に固定されるとき、前記底部パッキンが床面に圧縮された状態で前記止水板の上端部が前記突起部によって押さえ
られるようになっていることを特徴とする止水装置。
【請求項2】
請求項1に記載の止水装置において、
前記止水板は、裏面側に前記固定板に当接する面に裏面部パッキンが設けられていると共に永久磁石が埋め込まれ、前記固定板は前記止水板が当接する面に鉄板が埋め込まれており、前記止水板は、前記一対の固定板に固定されるとき、前記鉄板に前記永久磁石が吸着されて前記裏面部パッキンが前記固定板に密着した状態になることを特徴とする止水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長方形状の止水板からなり、氾濫水の危険があるときに浸水の危険がある出入口を該止水板で所定の高さで閉鎖して浸水を阻止するようになっている止水装置に関するものであり、用途を限定するものではないが、店舗等の出入口を封鎖するのに最適な止水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、大雨による河川の氾濫等により店舗に氾濫水が流れ込む被害が多発しており、対策が急務となっている。氾濫水の浸入を防ぐには店舗の出入口を液密的に封鎖する止水装置を設ける必要がある。従来の止水装置として、地下街、地下鉄設備、地下駐車場等の比較的大きな地下設備を浸水から守る比較的大型のものが周知である。例えば、地下街の出入口を封鎖する止水装置として、特許文献1には自動緊急遮断扉装置が、そして特許文献2には水圧駆動式の防水装置が提案されている。また、比較的シンプルな止水装置として、長方形状の板すなわち止水板を出入口に取り付けるものも周知である。地下の出入り口に、止水板の端部を固定するための一対の方立を設けるようにし、方立には所定の溝を形成する。止水板には両端の端部近傍に複数個、例えば4個のハンドル付きストッパを取り付ける。止水板を取り付けるときは、止水板の一方の端部を一方の方立に他方の端部を他方の方立に押しつける。そしてハンドルを回転する。そうするとストッパが方立の溝に係合する。4カ所のストッパがそれぞれ方立の溝に係合すると止水板を取り付けることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-3751号公報
【文献】特開2003-129762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2に記載の止水装置も、従来の止水板からなる止水装置も、地下への出入口を液密的に封鎖することができるので、氾濫水の浸入を防止できる。従って、店舗の出入口にこれらの止水装置を設けるようにすれば、店舗への浸水を防止できる。しかしながら、解決すべき課題も見受けられる。まず、特許文献1、2に記載の止水装置は、装置が大型になっており、コストが大きいという問題がある。比較的小規模な店舗、例えばコンビニエンスストア等には使用できない。一方、従来の止水板からなる止水装置は、比較的シンプルで比較的安価に提供することができる。従って店舗用に使用することも可能である。しかしながら、止水板の収納の問題がある。止水板は氾濫の危険がない通常時においては倉庫等に保管しておく必要があるが、止水板にハンドル等が設けられているので、場所を取る。特に複数枚の止水板をまとめて保管する場合、ハンドル等が設けられていると、これらを重ねて保管することができない。止水板の方立への取付操作が比較的難しい、という課題もある。取付操作を複数回経験している従業員が対応すれば容易に取り付けることはできるが、店舗によってはアルバイト等の店員しかいない場合もある。この場合、取付方法が直感的に理解できないと止水板の取付操作に手間取って緊急時に間に合わない。
【0005】
本発明は上記のような課題を解決する止水装置を提供することを目的とし、具体的には、止水板からなり、構造がシンプルで安価に提供できる止水装置でありながら、直感的にかつ容易に止水板を装着することができる止水装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、止水装置を止水板と建物の出入口の左右のドア枠に設けられる一対の固定板とから構成し、止水板を固定板に固定すると出入口を閉鎖できるようにする。そして止水板は、底部に弾性部材からなる所定厚さの底部パッキンを設ける。一方、固定板は床面から所定高さにおいて突起部を形成する。止水板は、一対の固定板に固定されるとき、底部パッキンが床面に圧縮された状態で止水板の上端部が突起部によって押さえられる。
【0007】
すなわち、請求項1に記載の発明は前記目的を達成するために、止水板と、建物の出入口の左右のドア枠に設けられる一対の固定板とからなり、該一対の固定板に前記止水板の一方の端部と他方の端部とが固定されると前記出入口が氾濫水に対して遮断されるようになっている止水装置であって、前記止水板は、底部に弾性部材からなる所定厚さの底部パッキンが設けられ、前記底部パッキンは前記止水板の表面側に位置する第1の底部パッキンと裏面側に位置する第2の底部パッキンとからなり、前記第2の底部パッキンは底面に凸状の突起が形成されていると共に前記第1の底部パッキンより変形しやすい部材から形成されており、前記固定板は床面から所定高さにおいて突起部が形成されており、前記止水板は、前記一対の固定板に固定されるとき、前記底部パッキンが床面に圧縮された状態で前記止水板の上端部が前記突起部によって押さえられるようになっていることを特徴とする止水装置として構成される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の止水装置において、前記止水板は、裏面側に前記固定板に当接する面に裏面部パッキンが設けられていると共に永久磁石が埋め込まれ、前記固定板は前記止水板が当接する面に鉄板が埋め込まれており、前記止水板は、前記一対の固定板に固定されるとき、前記鉄板に前記永久磁石が吸着されて前記裏面部パッキンが前記固定板に密着した状態になることを特徴とする止水装置として構成される。
【発明の効果】
【0008】
以上のように本発明は、止水板と、建物の出入口の左右のドア枠に設けられる一対の固定板とからなり、該一対の固定板に止水板の一方の端部と他方の端部とが固定されると出入口が氾濫水に対して遮断されるようになっている止水装置として構成される。止水板と一対の固定板とからなるので、安価に提供することができ、店舗等へ適用し易い。そして本発明によると、止水板は、底部に弾性部材からなる所定厚さの底部パッキンが設けられている。そうすると、止水板には格別に突起部等が形成されていないので、使用しないときに倉庫等に保管しても嵩張らないし、複数枚を重ねて保管することも可能になる。また、本発明によると固定板は床面から所定高さにおいて突起部が形成されており、止水板は、一対の固定板に固定されるとき、底部パッキンが床面に圧縮された状態で止水板の上端部が突起部によって押さえられる。従って、止水板の固定板への取付方法は直感的に理解することができ、止水装置の取付に不慣れな作業者でも容易に取り付けることができる。特に、アルバイト等の店員が多い店舗において利用しやすいと言える。そして底部パッキンは止水板の表面側に位置する第1の底部パッキンと裏面側に位置する第2の底部パッキンとからなり、第2の底部パッキンは底面に凸状の突起が形成されていると共に第1の底部パッキンより変形しやすい部材から形成されている。第2の底部パッキンは変形しやすいので、止水板を固定板に装着するとき、第2の底部パッキンの突起が変形して床面に押しつぶされ、床面と止水板との間において液密が得られる。また第1の底部パッキンは第2の底部パッキンより変形し難いので、水圧により止水板が押されても変形は少なく、液密状態を維持できる。他の発明によると、止水板の裏面側には固定板に当接する面に裏面部パッキンが設けられていると共に永久磁石が埋め込まれている。そして固定板には止水板が当接する面に鉄板が埋め込まれている。固定板に止水板を取り付けるとき鉄板に永久磁石が吸着されて裏面部パッキンが固定板に密着した状態になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係る止水装置を示す図で、その(A)は表面側から見た止水板と一対の固定板の斜視図、その(B)は裏面側から見た止水板の斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る止水板について、
図1の符号Xで示されている部分を拡大して断面で示す、止水板の側面断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る止水装置において、止水板を固定板に取り付ける方法を模式的に示す図で、その(A)、(B)はそれぞれ取付の各段階を示す、止水装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本実施の形態に係る止水装置1は、地下街の出入口等にも使用することはできるが、比較的間口の狭い建物の出入口に適しており、コンビニエンスストア等の店舗の出入口に好適な構造をしている。
図1の(A)には店舗の自動ドア2の一部が示されているが、このような自動ドア2のドア枠3、3に設けられるようになっている。
【0011】
本実施の形態に係る止水装置1は、長方形状の止水板5と、この止水板5を一方の端部と他方の端部とにおいて固定する一対の固定板6、6とから構成されている。本実施の形態に係る止水板5は、
図2にその断面が示されているが、内部にリブ5a、5a、…が形成され、それによって中空になっている所定の板厚の板からなる。止水板5は、本実施の形態においてはFRP(ガラス繊維強化樹脂)から一体的に成形されている。従って、軽量でありながら大きな剛性を備えている。なお、本実施の形態においてはFRPから形成しているが、CFRP(炭素繊維強化樹脂)から形成してもよいし、ガラス繊維と炭素繊維とを混合した複合強化繊維樹脂から形成してもよい。あるいはジュラルミン等の軽量のアルミニウム合金から形成してもよい。このような止水板5には、
図1の(A)に示されているように、その表面側に取っ手8、8が形成され、容易に搬送できるようになっている。
【0012】
本実施の形態に係る止水板5は、色々な特徴があるが、第1の特徴は永久磁石10、10、…が埋め込まれている点である。永久磁石10、10、…は、固定板6、6に当接する部分、つまり止水板5の一方の端部と他方の端部とに複数個設けられている。なお、永久磁石10、10、…は、
図2に示されているように、止水板5の裏面側に近い部分に埋め込まれている。より正確には、永久磁石が埋め込まれた薄いFRP板が、止水板5の裏面側に貼合されている。この永久磁石10、10、…によって止水板5は固定板6、6、…に吸着されることになる。
【0013】
本実施の形態に係る止水板5における第2の特徴はパッキンである。止水板5には複数のパッキンが設けられているが、
図1の(A)、(B)に示されているように、裏面側には固定板6、6に当接する面に裏面部パッキン12が設けられている。裏面部パッキン12は、比較的柔らかいスポンジ状を呈しており、永久磁石10、10、…の吸着力によって止水板5が固定板6、6に当接するとき圧縮されることになる。一方、止水板5の底部には、長辺に沿って2本の底部パッキン、つまり第1の底部パッキン13と、第2の底部パッキン14とが設けられている。第1の底部パッキン13は、
図2に示されているように、断面が方形を呈しており、比較的堅い弾性素材から形成されている。堅い弾性素材からなるので、第1の底部パッキン13が強い力で床面に押し当てられても、変形はわずかで済む。この第1の底部パッキン13は止水板5の表面側に位置しており、表面側において液密を維持するようになっている。一方第2の底部パッキン14は、止水板5の裏面側に位置しており、第1の底部パッキン13に比して柔らかい弾性素材、例えばスポンジ状の素材からなる。この第2の底部パッキン14は、その底面に断面形状が半円形、あるいは凸状の突起14aが形成されている。従って、第2の底部パッキン14が床面に押し当てられると、突起14aが押しつぶされて床面に密着し、液密が得られるようになっている。
【0014】
本実施の形態において固定板6、6は、
図1の(A)に示されているように、その背面が出入口のドア枠3、3に固着されている。固定板6、6はFRP等から構成され、止水板5が当接する面には、比較的浅い位置に鉄板16が埋め込まれている。あるいは、止水板5が薄く形成されている場合には、鉄板16は止水板5の裏面側に設けても良い。このように鉄板16が設けられているので、止水板5は永久磁石10、10の吸着力によって固定板6、6に押し当てられることになる。固定板6、6には、床面から所定の高さにおいて突起部18、18が形成されている。止水パネ5が固定板6、6に取り付けられるとき、止水板5の上端部がこの突起部18、18によって押さえられることになる。
【0015】
本実施の形態に係る止水板5は、次のようにして建物の出入口、つまり固定板6、6に装着することができる。まず、
図3の(A)に示されているように、止水板5をわずかに斜めに傾けて、その底部を固定板6と床面とに接触させる。符号20で示されているように、止水板5を下方、つまり床面に押しつける。そうすると、第1、2の底部パッキン13、14が変形する。特に第2の底部パッキン14は大きく変形し、突起14aは押しつぶされる。符号20による押しつけ力を維持して、符号21で示されているように止水板5を回転させて直立させる。そうすると
図3の(B)に示されているように、止水板5の上端部が固定板6の突起部18、18の下になるようにして入る。このとき永久磁石10、10、…の鉄板16への吸着力により、止水板5は固定板6、6に密着し、裏面部パッキン12は圧縮されて液密が得られる。符号20で示されている押しつけ力を解除すると第1、2の底部パッキン13、14は弾性力によりわずかにその形状が復元し、止水板5は上方に持ち上げられる。このとき止水板5の上端部が所定の押し力で突起部18、18に当接する。止水板5の装着を完了する。止水板5を取り外すときは、このような装着の手順と逆の手順を実施すればよい。
【0016】
本実施の形態に係る止水装置1は色々な変形が可能である。例えば、底部パッキンを変形することができる。本実施の形態において底部パッキンは第1、2の底部パッキン13、14から構成されているように説明したが、1本の底部パッキンのみから構成してもよい。また第2の底部パッキン14の下面には突起14aを設けるように説明したが、突起14aは必ずしも必須ではない。取っ手8、8についても変形が可能であり、止水板5の上部に吊り下げ用の輪を設けてもよいし、取っ手8、8を設けないようにしてもよい。なお、本実施の形態において止水板5は、FRP等から一体的に形成されているように説明した。一体的に形成することによって安価に製造でき、リブ5a、5a、…を設けることによって必要な強度が得られるからである。しかしながら、一体的に形成するようにしないで、複合部材から形成するようにしてもよい。例えば、複数本の金属製角パイプから格子状に形成された心材を製造し、この心材に対して、表面側と裏面側とに薄いFRP板、あるいは炭素繊維強化樹脂板を貼合してもよい。
【符号の説明】
【0017】
1 止水装置 2 自動ドア
3 ドア枠 5 止水板
6 固定板 10 永久磁石
12 裏面部パッキン 13 第1の底部パッキン
14 第2の底部パッキン 14a 突起
16 鉄板 18 突起部