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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】材料および成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/04 20060101AFI20230216BHJP
   B29C 70/10 20060101ALI20230216BHJP
   B29C 70/30 20060101ALI20230216BHJP
   B29K 101/12 20060101ALN20230216BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20230216BHJP
【FI】
C08J5/04 CFG
B29C70/10
B29C70/30
B29K101:12
B29K105:08
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018194930
(22)【出願日】2018-10-16
(65)【公開番号】P2020063342
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(73)【特許権者】
【識別番号】302027675
【氏名又は名称】カジレーネ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】仲井 朝美
(72)【発明者】
【氏名】梶 政隆
(72)【発明者】
【氏名】本近 俊裕
(72)【発明者】
【氏名】井出 圭亮
(72)【発明者】
【氏名】松本 信彦
【審査官】福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-014653(JP,A)
【文献】特開平05-059630(JP,A)
【文献】特開平11-099580(JP,A)
【文献】国際公開第2018/092500(WO,A1)
【文献】特開2011-074207(JP,A)
【文献】特開2007-035636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/04-5/10
C08J 5/24
B29C 41/00-41/36
B29C 41/46-41/52
B29C 70/00-70/88
B32B 1/00-43/00
B29B 11/16
B29B 15/08-15/14
B29K 101/12
B29K 105/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含浸率が1~20%である微含浸領域を少なくとも2つと、含浸率が1%未満である未含浸領域を少なくとも1つ有し、前記微含浸領域と前記未含浸領域は交互に連続しており、前記微含浸領域は、熱可塑性樹脂が、規則的に配列している連続強化繊維に微含浸しており、前記未含浸領域は、規則的に配列している連続強化繊維を含み、
前記微含浸領域が混繊糸から構成されており、
前記微含浸領域に含まれる連続強化繊維および前記未含浸領域に含まれる連続強化繊維が一方向にのみ揃って配列しており、
前記熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂を含む、材料;含浸率とは、熱可塑性樹脂が連続強化繊維に含浸している割合を意味し、連続強化繊維の長手方向に垂直な断面の面積に対する、含浸している熱可塑性樹脂面積の割合(熱可塑性樹脂が含浸している領域の面積/材料の断面の面積×100(%))をいう。
【請求項2】
前記微含浸領域が、連続強化繊維の繊維長方向に平行に設けられている、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
前記材料のうち、前記連続強化繊維の繊維長方向に平行な端部の少なくとも一方が微含浸領域である、請求項1または2に記載の材料。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂がジアミンに由来する構成単位およびジカルボン酸に由来する構成単位から構成され、ジアミンに由来する構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の材料。
【請求項5】
前記未含浸領域を少なくとも2つ有する、請求項1~のいずれか1項に記載の材料。
【請求項6】
テープ状である、請求項1~のいずれか1項に記載の材料。
【請求項7】
幅0.2~4cm、厚さ40~200μmのテープ状である、請求項1~のいずれか1項に記載の材料。
【請求項8】
テーラード・ファイバー・プレースメント用である、請求項1~のいずれか1項に記載の材料。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載の材料を加熱加工することを含む、成形品の製造方法。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載の材料をテーラード・ファイバー・プレースメント加工することを含む、成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料および成形品の製造方法に関する。特に、熱可塑性樹脂と連続強化繊維を含む材料およびその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、繊維と熱可塑性樹脂からなる繊維強化熱可塑性樹脂材料(fiber-reinforced thermoplastic、FRP)が注目されている(特許文献1~4)。FRPは、軽量で高い強度を有することから、各種用途に広く用いられている。
ここで、FRPの代表的な例としては、繊維を熱可塑性樹脂に含浸させた繊維強化熱可塑性樹脂材料が知られている。このようなFRPは、通常、繊維を熱可塑性樹脂に含浸させた繊維強化熱可塑性樹脂材料を複数枚加熱して結合したプリプレグとして用いられている。このようなプリプレグは、さらに加熱して、所望の用途に応じた形状に加工される。
また、本出願人は、繊維成分が連続熱可塑性樹脂繊維と連続強化繊維からなる混繊糸を開示している。さらに、かかる混繊糸を用いてステッチング(刺繍)することも検討している(特許文献5)。このようなステッチングはテーラード・ファイバー・プレースメント(TFP)と呼ばれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-207198号公報
【文献】特開2014-169411号公報
【文献】特開2010-017934号公報
【文献】特開2014-173196号公報
【文献】WO2016/159340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、混繊糸をTFP加工しようとすると、ほつれが生じやすいという問題があった。
一方、熱可塑性樹脂を連続強化繊維に完全に含浸させた材料や、熱可塑性樹脂をある程度の割合で、連続強化繊維に含浸させた材料では、TFPの操作性に劣ることが分かった。すなわち、TFP加工では、材料を折り返して用いることが多いため、折り返しの際に、連続強化繊維が折れてしまったり、材料が屈曲してしまったりしていた。材料を細くすれば、TFPの操作性は向上するが、コスト面を考慮すると他の手段が求められる。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、TFP操作性に優れ、かつ、ほつれにくい材料および前記材料を用いた成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、微含浸領域と未含浸領域を交互に設けることにより、上記課題を解決しうることを見出した。具体的には、下記手段<1>により、好ましくは<2>~<15>により、上記課題は解決された。
<1>含浸率が1~20%である微含浸領域を少なくとも2つと、含浸率が1%未満である未含浸領域を少なくとも1つ有し、前記微含浸領域と前記未含浸領域は交互に連続しており、前記微含浸領域は、熱可塑性樹脂が、規則的に配列している連続強化繊維に微含浸しており、前記未含浸領域は、規則的に配列している連続強化繊維を含む、材料;
含浸率とは、熱可塑性樹脂が連続強化繊維に含浸している割合を意味し、連続強化繊維の長手方向に垂直な断面の面積に対する、含浸している熱可塑性樹脂面積の割合(熱可塑性樹脂が含浸している領域の面積/材料の断面の面積×100(%))をいう。
<2>前記微含浸領域が混繊糸から構成されている、<1>に記載の材料。
<3>前記微含浸領域が混繊糸から構成されており、前記未含浸領域が連続強化繊維を含む、<1>に記載の材料。
<4>前記微含浸領域が、連続強化繊維の繊維長方向に平行に設けられている、<1>~<3>のいずれか1つに記載の材料。
<5>前記微含浸領域に含まれる連続強化繊維と、前記未含浸領域に含まれる連続強化繊維が同じ規則性を持って配列している、<1>~<4>のいずれか1つに記載の材料。
<6>前記微含浸領域に含まれる連続強化繊維および前記未含浸領域に含まれる連続強化繊維が一方向にのみ揃って配列している、<1>~<4>のいずれか1つに記載の材料。
<7>前記材料のうち、前記連続強化繊維の繊維長方向に平行な端部の少なくとも一方が微含浸領域である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の材料。
<8>前記熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂を含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載の材料。
<9>前記熱可塑性樹脂がジアミンに由来する構成単位およびジカルボン酸に由来する構成単位から構成され、ジアミンに由来する構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂を含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載の材料。
<10>前記未含浸領域を少なくとも2つ有する、<1>~<9>のいずれか1つに記載の材料。
<11>テープ状である、<1>~<10>のいずれか1つに記載の材料。
<12>幅0.2~4cm、厚さ40~200μmのテープ状である、<1>~<10>のいずれか1つに記載の材料。
<13>テーラード・ファイバー・プレースメント用である、<1>~<12>のいずれか1つに記載の材料。
<14><1>~<13>のいずれか1つに記載の材料を加熱加工することを含む、成形品の製造方法。
<15><1>~<13>のいずれか1つに記載の材料をテーラード・ファイバー・プレースメント加工することを含む、成形品の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、TFP操作性に優れ、かつ、ほつれにくい材料および前記材料を用いた成形品の製造方法を提供可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の材料の一例を示す概略図である。
図2図1における微含浸領域の1つの拡大図である。
図3図1における未含浸領域の1つの拡大図である。
図4】本発明の材料の他の一例を示す概略図である。
図5】本発明の材料の製造方法の一例を示す概略図である。
図6】加熱ロールのロール面を示す概略図である。
図7】テーラード・ファイバー・プレースメント加工の一例を示す概略図である。
図8】混繊糸の分散度を測定するための投影画像の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0009】
本発明の材料は、含浸率が1~20%である微含浸領域を少なくとも2つと、含浸率が1%未満である未含浸領域を少なくとも1つ有し、微含浸領域と未含浸領域は交互に連続しており、微含浸領域は、熱可塑性樹脂が、規則的に配列している連続強化繊維に微含浸しており、未含浸領域は、規則的に配列している連続強化繊維を含むことを特徴とする。
このような構成とすることにより、TFP操作性に優れ、かつ、ほつれにくい材料を提供可能になる。さらに、未含浸の材料のみでテーラード・ファイバー・プレースメント(TFP)加工を行うと、含浸に時間がかかっていたが、本発明では、未含浸領域と微含浸領域を設けることにより、未含浸領域が熱可塑性樹脂を含む場合はもちろん、熱可塑性樹脂を含まない場合も、含浸をより効果的に進行させることができる。
すなわち、本発明の材料は、テーラード・ファイバー・プレースメント用に好ましく用いられる。
【0010】
以下、図面に沿って、本発明の材料を説明する。
図1は、本発明の材料の一例を示したものであり、テープ状の材料であって、そのテープ面から見た概略図である。図1において、1は微含浸領域を、2は未含浸領域を示している(以下、他の図においても、同じ)。本発明では、微含浸領域1と未含浸領域2は交互に連続している。交互に連続するとは、微含浸領域/未含浸領域/微含浸領域のように、微含浸領域と未含浸領域が、間に他の領域を介さずに、並んでいることをいう。ただし、微含浸領域と未含浸領域の境界が明確でなく、多少のグラデーションを有している場合も本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
本発明では、微含浸領域が少なくとも2つあればよいが、少なくとも3つであることが好ましく、4つ以上であることがより好ましい。2つ以上とすることにより、TFP操作性を向上させることができる。また、微含浸領域の数の上限は、30以下であることが好ましく、25以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、材料を配置する角度や曲線に応じて負荷のかからない状態で折りたたむことができ、テキスタイル加工の際、特にテーラード・ファイバー・プレースメントにおいて、より操作性に優れ、よりほつれにくくすることができる。
また、本発明では、未含浸領域が少なくとも1つあればよいが、2つ以上であることが好ましく、微含浸領域の数-1であることがより好ましい。
【0011】
微含浸領域と未含浸領域が交互に連続している方向は、例えば、微含浸領域に含まれる連続強化繊維の繊維長方向に垂直な方向であることが好ましい。織物等2つ以上の方向に繊維が配列している場合は、その少なくとも1つの繊維長方向に垂直な方向で交互に連続していることが好ましい。このような構成とすることにより、連続繊維の繰り出し、移動時の負荷が少なくなり、テキスタイル加工の際、特にテーラード・ファイバー・プレースメントにおいて、より操作性に優れ、また、よりほつれにくくすることができる。
繊維長方向に垂直な方向で連続している態様について、図2および図3を用いて、より具体的に説明する。図2は、図1における微含浸領域1の1つを拡大したものであり、3が連続強化繊維であり、4が連続熱可塑性樹脂繊維あるいは連続強化繊維に含浸した熱可塑性樹脂である。図2は、連続強化繊維と連続熱可塑性樹脂繊維が分散している。ただし、一部の領域については、連続熱可塑性樹脂繊維が連続強化繊維に含浸している。また、図3は、図1における未含浸領域2の1つを拡大したものであり、3が連続強化繊維である。そして、図1では、図2および図3に示す領域が、交互に並んでいる。特に、図1図3に示すように、本発明では、微含浸領域に含まれる連続強化繊維と、未含浸領域に含まれる連続強化繊維が同じ規則性を持って配列していることが好ましい。このような構成とすることにより、様々な形状への加工において、より操作性が安定する傾向にある。
同じ規則性を持って配列しているとは、図1図3に示すように、微含浸領域に含まれる連続強化繊維および未含浸領域に含まれる連続強化繊維が一方向にのみ揃って配列している場合や、織物のように二方向に揃って配列している場合が例示される。本発明では、微含浸領域に含まれる連続強化繊維および未含浸領域に含まれる連続強化繊維が一方向にのみ揃って配列していることが好ましい。ここでの一方向にのみ揃って配列とは、幾何学的な意味ではなく、本発明の技術分野で通常解釈される範囲での一方向に揃っていることをいう。例えば、ロービング繊維を通常の方法で開繊した状態などは、本発明における一方向に揃っている例に含まれる。
また、微含浸領域および未含浸領域は、図1~3に示すように、それぞれ、連続強化繊維の繊維長方向に平行に設けられていることが好ましい。このような態様とすることにより、TFP操作性がより向上する傾向にある。
また、微含浸領域に含まれる連続強化繊維と未含浸領域に含まれる連続強化繊維は同じ種類の連続強化繊維であってもよいし、異なる種類の連続強化繊維であってもよい。本発明では、微含浸領域に含まれる連続強化繊維と未含浸領域に含まれる連続強化繊維の90質量%以上が共通する連続強化繊維であることが好ましく、100質量%が共通する連続強化繊維であることがより好ましい。連続強化繊維が共通するとは、両領域を構成する連続強化繊維が同じ連続強化繊維である場合のほか、2種以上の連続強化繊維を用いている場合、各領域に含まれる連続強化繊維の組成が共通していることも含む趣旨である。例えば、微含浸領域および未含浸領域が、いずれも、50質量%の特定種のガラス繊維と50質量%の特定種の炭素繊維を含む場合、100質量%が共通していると言える。
【0012】
本発明の材料の端部は、微含浸領域および未含浸領域のいずれであってもよい。好ましくは、連続強化繊維の繊維長方向に平行な端部の少なくとも一方が微含浸領域であり、連続強化繊維の繊維長方向に平行な端部の両方が微含浸領域であることがより好ましい。このような構成とすることにより、端部からのほつれをより効果的に抑制することができる。
【0013】
本発明の材料における、各微含浸領域1は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。各微含浸領域1が同一であると、材料の製造が容易になる。一方、微含浸領域1の一部または全部が異なっていると、材料に所望の物性を付与させやすくなる。各未含浸領域2は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。各未含浸領域2が同一であると、材料の製造が容易になる。一方、各未含浸領域2の一部または全部が異なっていると、材料に所望の物性を付与させやすくなる。
【0014】
次に、微含浸領域について説明する。
本発明における微含浸領域とは、熱可塑性樹脂が、規則的に配列している連続強化繊維に微含浸している領域であって、微含浸とは、後述する含浸率が1~20%の領域をいう。
含浸率とは、熱可塑性樹脂が連続強化繊維に含浸している割合を意味し、連続強化繊維の長手方向に垂直な断面の面積に対する、含浸している熱可塑性樹脂面積の割合(熱可塑性樹脂が含浸している領域の面積/材料の断面の面積×100(%))であり、より具体的には、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。ただし、実施例に記載の機器が廃番等により、入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を使用することができる。以下、実施例の測定方法について、同様である。
上記含浸率の下限値は、1.5%以上であることが好ましく、2%以上であることがより好ましく、3%以上であってもよい。また、含浸率の上限は含浸率が15%以下であることが好ましく、13%以下であることがより好ましく、11%以下であることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、操作性をより効果的に発揮できると同時に含浸性がより向上する傾向にある。
また、本発明では、微含浸領域と未含浸領域の含浸率の差が1.5%以上であることが好ましく、2%以上であることがより好ましく、3%以上であってもよい。また、微含浸領域と未含浸領域の含浸率の差が、15%以下であることが好ましく、13%以下であることがより好ましく、11%以下であることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、操作性をより効果的に発揮させることができると同時に含浸性がより向上する傾向にある。
【0015】
本発明における微含浸領域は、図2に示すように、連続強化繊維と熱可塑性樹脂から構成されている。ここで、連続強化繊維と熱可塑性樹脂から構成されるとは、連続強化繊維と熱可塑性樹脂の合計が微含浸領域の主要構成要素であることをいい、通常は、その80質量%以上、さらには90質量%以上、特には95質量%以上が連続強化繊維と熱可塑性樹脂とからなることをいう。
微含浸領域における、連続強化繊維と熱可塑性樹脂の質量比率は、10:90~90:10であることが好ましく、20:80~80:20あることがより好ましく、30:70~80:20であることがさらに好ましく、40:60~70:30であることがさらに好ましい。このような構成とすることにより、より高い機械物性とドレープ性能を達成可能になる。
連続強化繊維および熱可塑性樹脂は、それぞれ、1種のみ用いても、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0016】
熱可塑性樹脂は、含浸前および未含浸部分は、繊維状であってもよいし、フィルム状であってもよいし、他の形態であってもよい。好ましくは繊維状またはフィルム状であり、より好ましくは繊維状である。繊維状の熱可塑性樹脂を用いることにより、材料の含浸性をより向上させることができる。
【0017】
微含浸領域の第一の実施形態は、微含浸領域が混繊糸から構成されている形態である。混繊糸は、加熱して、混繊糸中の連続熱可塑性樹脂繊維の一部が連続強化繊維に含浸している。混繊糸は、図2に示すように、テープ状であることが好ましい。混繊糸の詳細は後述する。
微含浸領域の第二の実施形態は、微含浸領域が熱可塑性樹脂フィルムと連続強化繊維から構成される態様である。より具体的には、2枚の熱可塑性樹脂フィルムで、開繊したロービング繊維を挟み、加熱して微含浸させた形態が例示される。
微含浸領域の第三の実施形態は、微含浸領域が、連続熱可塑性樹脂繊維と連続強化繊維の組み紐、撚糸、カバリング糸等から構成され、その一部の熱可塑性樹脂が連続強化繊維に含浸している形態である。
【0018】
微含浸領域は、1つの領域の幅が、下限が0.1mm以上であることが好ましく、0.2mm以上であることがより好ましく、0.3mm以上であることがさらに好ましく、0.5mm以上であってもよい。また、微含浸領域の幅の上限は、4mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがより好ましく、1.5mm以下であることがさらに好ましく、1mm以下であることが一層好ましく、0.8mm以下であってもよい。1つの材料に含まれる微含浸領域の幅は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。このような範囲とすることにより、材料を配置する角度や曲線に応じて負荷がかかりにくいように折りたたむことができ、より操作性に優れ、また、よりほつれにくくすることが可能になる。
【0019】
次に、未含浸領域について説明する。
本発明における未含浸領域は、図3に示すように、連続強化繊維を含む。未含浸領域とは、含浸率が1%未満であることをいい、0.5%以下であることが好ましい。含浸率の詳細は、微含浸領域のところで述べた事項と同義である。
本発明おける未含浸領域は、含浸率が0%の領域であってもよい。含浸率が0%の領域には、未含浸領域が熱可塑性樹脂を含まない場合も含まれる。未含浸領域が熱可塑性樹脂を含まない場合、本発明の材料は、加熱加工前、含浸率は0%となる。一方、本発明の材料の加熱加工の際に、隣接する微含浸領域に含まれる熱可塑性樹脂成分が未含浸領域にも含浸する。結果として、熱可塑性樹脂を含まない未含浸領域に含まれる連続強化繊維にも、熱可塑性樹脂が含浸する。また、本発明の材料と他の熱可塑性樹脂成分(粉、フィルム、繊維など)と共に加熱加工し、当該他の熱可塑性樹脂成分を未含浸領域に含浸させてもよい。
【0020】
未含浸領域の第一の実施形態は、図2に示すように、未含浸領域が連続強化繊維から構成される態様である。連続強化繊維から構成されるとは、連続強化繊維が、未含浸領域の主要構成要素であることをいい、通常は、その80質量%以上、さらには90質量%以上、特には95質量%以上が連続強化繊維からなることをいう。
連続強化繊維は、1種のみ用いても、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
未含浸領域の第一の実施形態は、例えば、ロービング繊維から構成される領域が例示される。この場合、ロービング繊維は開繊されていることが好ましい。
【0021】
未含浸領域の第二の実施形態は、未含浸領域が連続強化繊維と熱可塑性樹脂から構成される態様である。ここで、連続強化繊維と熱可塑性樹脂から構成されるとは、連続強化繊維と熱可塑性樹脂の合計が未含浸領域の主要構成要素であることをいい、通常は、その80質量%以上、さらには90質量%以上、特には95質量%以上が連続強化繊維と熱可塑性樹脂とからなることをいう。
第二の実施形態の未含浸領域における、連続強化繊維と熱可塑性樹脂の質量比率は、10:90~90:10であることが好ましく、20:80~80:20あることがより好ましく、30:70~80:20であることがさらに好ましく、40:60~70:30であることがさらに好ましい。
連続強化繊維および熱可塑性樹脂は、それぞれ、1種のみ用いても、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0022】
未含浸領域の第二の実施形態において、熱可塑性樹脂は、繊維状であってもよいし、フィルム状であってもよいし、他の形態であってもよい。好ましくは繊維状またはフィルム状であり、より好ましくは繊維状である。繊維状の熱可塑性樹脂を用いることにより、材料の含浸性をより向上させることができる。
未含浸領域の第二の実施形態の第一の具体例は、未含浸領域が混繊糸から構成されている形態である。混繊糸は、テープ状であることが好ましい。混繊糸の詳細は後述する。
未含浸領域の第二の実施形態の第二の具体例は、未含浸領域が熱可塑性樹脂フィルムと連続強化繊維から構成される態様である。例えば、2枚の熱可塑性樹脂フィルムで、開繊したロービング繊維を挟んだ形態である。また、例えば、熱可塑性樹脂フィルムと、開繊したロービング繊維を交互に積層した態様が例示される。交互に積層する場合、好ましくは、熱可塑性樹脂フィルムは3~5枚であり、各熱可塑性樹脂フィルムの間にロービング繊維が設けられている。具体的には、熱可塑性樹脂フィルム/開繊したロービング繊維/熱可塑性樹脂フィルム/開繊したロービング繊維/熱可塑性樹脂フィルムの積層構成が例示される。
未含浸領域の第二の実施形態の第三の具体例は、熱可塑性樹脂フィルムと混繊糸から構成される形態である。例えば、2枚の熱可塑性樹脂フィルムで、一方向に並べた混繊糸を挟んだ形態である。また、例えば、熱可塑性樹脂フィルムと、一方向に並べた混繊糸を交互に積層した態様が例示される。交互に積層する場合、例えば、熱可塑性樹脂フィルム/一方向に並べた混繊糸/熱可塑性樹脂フィルム/一方向に並べた混繊糸/熱可塑性樹脂フィルムの積層構成が例示される。
未含浸領域の第二の実施形態の第四の具体例は、未含浸領域が、連続熱可塑性樹脂繊維と連続強化繊維の組み紐、撚糸、カバリング糸等から構成される形態である。
【0023】
未含浸領域は、1つの領域の幅が、下限が0.1mm以上であることが好ましく、0.2mm以上であることがより好ましく、0.3mm以上であることがさらに好ましく、0.5mm以上であってもよい。また、未含浸領域の幅の上限は4mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがより好ましく、1.5mm以下であることがさらに好ましく、1mm以下であることが一層好ましく、0.8mm以下であってもよい。1つの材料に含まれる未含浸領域の幅は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。このような範囲とすることにより、材料を配置する角度や曲線に応じて負荷がよりかかりにくいように折りたたむことができ、より操作性に優れ、また、よりほつれにくくすることができる。
【0024】
本発明では、微含浸領域と未含浸領域は、同じ形態の材料で構成されている態様も好ましい例として示される。同じ形態の材料とは、微含浸領域と未含浸領域の両方が混繊糸で構成されている場合、微含浸領域と未含浸領域の両方が熱可塑性樹脂フィルムとロービング繊維で構成されている場合が例示される。このような構成とすることにより、テープ状に配列した原材料の微含浸領域となる部分にのみを加熱することにより、容易に本発明の材料を製造できる。
【0025】
本発明の材料の他の実施形態として、連続強化繊維の繊維長方向とは異なる方向に微含浸領域が設けられている形態が例示される。
図4は、連続強化繊維の繊維長方向とは異なる方向に微含浸領域が設けられている形態の一例であって、図1と同様に、連続強化繊維の繊維長方向に微含浸領域1と未含浸領域2が交互に設けられている。さらに、連続強化繊維の繊維長方向とは垂直な方向にも、微含浸領域5が設けられている。このように連続強化繊維の繊維長方向とは垂直な方向にも、微含浸領域を設けることにより、連続強化繊維の一部がはだけても、微含浸領域5によって、はだけの連鎖を効果的に抑制できる。図4において、連続強化繊維の繊維長方向の微含浸領域1と、連続強化繊維の繊維長方向とは垂直な方向の微含浸領域5の含浸率は、同じであってもいし、異なっていてもよい。図4では、微含浸領域5を連続強化繊維の繊維長方向に垂直な方向に設けたが、これ以外の方向に設けてもよいことはいうまでもない。
また、本実施形態では、連続強化繊維の繊維長方向にも微含浸領域1を設けているが、連続強化繊維の繊維長方向は、未含浸領域のみから構成し、連続強化繊維の繊維長方向とは異なる方向にのみ微含浸領域5を設けてもよい。
【0026】
本発明の材料の形状は特に定めるものではないが、上述のとおり、テープ状(フィルム状、シート状を含む趣旨である)が好ましい。
本発明の材料がテープ状の場合、テープの長手方向が、連続強化繊維の繊維長方向であることが好ましい。また、図1~3に示すように、テープの長手方向に平行な方向に、微含浸領域と未含浸領域が交互に並列していることが好ましい。さらに、本発明の材料がテープ状の場合、図1~3に示すように、テープの長手方向の一方の端部から他方の端部において、つまり、テープの全面に渡って、微含浸領域と未含浸領域が交互に設けられていることが好ましい。さらに、図4に示すように、テープの幅方向にも、微含浸領域5が設けられていてもよい。
【0027】
テープ状の材料の幅は、0.2~4cmであることが好ましい。テープの幅の下限は、0.3cm以上であることが好ましく、0.4cm以上であることがより好ましく、0.5cm以上であることがさらに好ましい。また、テープの幅の上限は、3cm以下であることが好ましく、2cm以下であることがより好ましく、1.5cm以下であることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、生産性および操作性がより優れる傾向にある。
テープ状の材料の厚さは、40~200μmであることが好ましい。テープの厚さの下限は、45μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、60μm以上であることがさらに好ましい。また、テープの厚さの上限は、200μm以下であることが好ましく、190μm以下であることがより好ましく、180μm以下であることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、操作性により優れる傾向にある。
【0028】
微含浸領域と未含浸領域の幅の比は、1:0.1~10であることが好ましく、1:0.5~1.5であることがより好ましく、1:0.8~1.2であることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、ほつれの抑制と操作性の向上がより効果的に達成される。
【0029】
本発明の材料が、テープ状である場合、材料の厚さ(t)とテープの幅(w)の関係である、w/tが1以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、20以上であることがさらに好ましく、30以上であることが一層好ましく、40以上であることがより一層好ましく、50以上であることがさらに一層好ましい。また、1000以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましく、100以下であることがさらに好ましく、90以下であることが一層好ましく、80以下であることがより一層好ましく、60以下であってもよい。このような範囲とすることにより、ほつれの抑制と操作性の向上がより効果的に達成される。
【0030】
次に、本発明で用いる連続強化繊維について説明する。
本発明における連続強化繊維は、6mmを超える繊維長を有する連続強化繊維をいい、30mmを超える繊維長を有する連続強化繊維であることが好ましい。本発明で使用する連続強化繊維の数平均繊維長は特に制限はないが、成形加工性を良好にする観点から、1m以上であることが好ましく、より好ましくは100m以上、さらに好ましくは1,000m以上である。また、連続強化繊維の数平均繊維長の上限は、20,000m以下であることが好ましく、より好ましくは10,000m以下、さらに好ましくは7,000m以下である。
本発明で用いる連続強化繊維は、通常、複数の連続強化繊維が束状になった連続強化繊維束(ロービング繊維)である。
【0031】
連続強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、セラミック繊維、金属繊維(スチール繊維等)等の無機繊維、および、植物繊維(ケナフ(Kenaf)、竹繊維等を含む)、アラミド繊維、ポリオキシメチレン繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、超高分子量ポリエチレン繊維等の有機繊維などが挙げられる。なかでも、炭素繊維、アラミド繊維およびガラス繊維の少なくとも1種であることが好ましく、炭素繊維およびガラス繊維の少なくとも1種であることがより好ましい。特に、軽量でありながら、高強度、高弾性率であるという優れた特徴を有するため、炭素繊維が好ましく用いられる。炭素繊維はポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維を好ましく用いることができる。また、リグニンやセルロースなど、植物由来原料の炭素繊維も用いることができる。
【0032】
本発明で用いる連続強化繊維は、処理剤で処理されたものを用いることが好ましい。このような処理剤としては、集束剤や表面処理剤が例示され、特許第4894982号公報の段落番号0093および0094に記載のものが好ましく採用され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0033】
次に、本発明で用いる熱可塑性樹脂について説明する。本発明で用いる熱可塑性樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂類、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂類、ポリカーボネート樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン等のポリエーテルケトン樹脂類、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリエーテルサルファイド樹脂、熱可塑性ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリアミドイミド、全芳香族ポリイミド、半芳香族ポリイミド等の熱可塑性ポリイミド樹脂類等を用いることができ、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂が好ましく、ポリアミド樹脂であることがより好ましい。
本発明で用いるポリアミド樹脂としては、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタラミド(ポリアミド6I)、ポリアミド66/6T、ポリキシリレンアジパミド、ポリキシリレンセバカミド、ポリキシリレンドデカミド、ポリアミド9T、ポリアミド9MT、ポリアミド6I/6T等が挙げられる。
【0034】
上述のようなポリアミド樹脂の中でも、成形性、耐熱性の観点から、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂(以下、「XD系ポリアミド」ということがある)であることが好ましい。
また、ポリアミド樹脂が混合物である場合は、ポリアミド樹脂中のXD系ポリアミドの比率が50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であってもよい。
【0035】
XD系ポリアミドは、好ましくはジアミン由来の構成単位の70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、一層好ましくは95モル%以上がメタキシリレンジアミンおよび/またはパラキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上が、一層好ましくは90モル%以上、より一層好ましくは95モル%以上が炭素原子数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来することが好ましい。
【0036】
XD系ポリアミドの原料ジアミン成分として用いることができるメタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2-メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン、ビス(4-アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
ジアミン成分として、キシリレンジアミン以外のジアミンを用いる場合は、ジアミン由来の構成単位の50モル%未満であり、30モル%以下であることが好ましく、より好ましくは1~25モル%、特に好ましくは5~20モル%の割合で用いる。
【0037】
ポリアミド樹脂の原料ジカルボン酸成分として用いるのに好ましい炭素原子数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、例えばコハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が例示でき、1種または2種以上を混合して使用できるが、これらの中でもポリアミド樹脂の融点が成形加工するのに適切な範囲となることから、アジピン酸またはセバシン酸が好ましい。
【0038】
上記炭素原子数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、1,7-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸と等のナフタレンジカルボン酸異性体を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
【0039】
ジカルボン酸成分として、炭素原子数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸を用いる場合は、成形加工性、バリア性の点から、テレフタル酸、イソフタル酸を用いることが好ましい。テレフタル酸、イソフタル酸の割合は、好ましくはジカルボン酸構成単位の30モル%以下であり、より好ましくは1~30モル%、特に好ましくは5~20モル%の範囲である。
【0040】
さらに、ジアミン成分、ジカルボン酸成分以外にも、ポリアミド樹脂を構成する成分として、本発明の効果を損なわない範囲でε-カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類も共重合成分として使用できる。
【0041】
本発明で用いるポリアミド樹脂は、数平均分子量(Mn)が6,000~30001であることが好ましく、より好ましくは8,000~28,000であり、さらに好ましくは9,000~26,000であり、よりさらに好ましくは10001~24,000であり、特に好ましくは11,000~22,000である。このような範囲であると、耐熱性、弾性率、寸法安定性、成形加工性がより良好となる。
【0042】
なお、ここでいう数平均分子量(Mn)とは、ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度[NH2](μ当量/g)と末端カルボキシル基濃度[COOH](μ当量/g)から、次式で算出される。
数平均分子量(Mn)=2,000100/([COOH]+[NH2])
ポリアミド樹脂の製造方法は、特開2014-173196号公報の段落0052~0053の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0043】
本発明においては、ポリアミド樹脂の融点は、150~310℃であることが好ましく、180~300℃であることがより好ましく、180~250℃であることがさらに好ましい。
また、ポリアミド樹脂のガラス転移点は、50~100℃が好ましく、55~100℃がより好ましく、特に好ましくは60~100℃である。この範囲であると、耐熱性が良好となる傾向にある。
【0044】
なお、本発明における融点とは、DSC(示差走査熱量測定)法により観測される昇温時の吸熱ピークのピークトップの温度であり、具体的には、後述する方法で測定された値を言う。
ガラス転移点とは、試料を一度加熱溶融させ熱履歴による結晶性への影響をなくした後、再度昇温して測定されるガラス転移点をいう。測定には、例えば、島津製作所(SHIMADZU CORPORATION)製、DSC-60を用い、試料量は約1mgとし、雰囲気ガスとしては窒素を30mL/分で流し、昇温速度は10℃/分の条件で室温から予想される融点以上の温度まで加熱し溶融させた際に観測される吸熱ピークのピークトップの温度から融点を求めることができる。次いで、溶融したポリアミド樹脂を、ドライアイスで急冷し、10℃/分の速度で融点以上の温度まで再度昇温し、ガラス転移点、融点を求めることができる。
尚、結晶構造を形成しにくい低結晶性樹脂については、前処理等を行って融点が明確になるように調整してから融点を測定してもよい。前処理の一例としては、加熱処理が例示される。
【0045】
熱可塑性樹脂は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、エラストマー、酸化防止剤、熱安定剤等の安定剤、耐加水分解性改良剤、耐候安定剤、艶消剤、紫外線吸収剤、核剤、可塑剤、分散剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤、着色剤、離型剤等の添加剤等を加えることができる。これらの詳細は、特許第4894982号公報の段落番号0130~0155の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。これらの配合量は、合計で、熱可塑性樹脂の10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0046】
本発明で用いる熱可塑性樹脂の形態は特に定めるものではない。一例は、熱可塑性樹脂繊維であり、好ましくは連続熱可塑性樹脂繊維である。また、他の一例は熱可塑性樹脂フィルムである。
連続熱可塑性繊維は、好ましくは、混繊糸として、本発明の材料に用いられる。
【0047】
本発明で用いる混繊糸は、好ましくは、連続強化繊維が分散しており、かつ、連続強化繊維および連続熱可塑性樹脂繊維の少なくとも一方の処理剤によって、束状(好ましくはテープ状)にされたものである。また、本発明で用いる混繊糸では、連続熱可塑性樹脂繊維は連続強化繊維に含浸せず、繊維の状態を保っている。しかしながら、本発明で用いる混繊糸は、連続熱可塑性樹脂繊維成分の一部が連続強化繊維に含浸していてもよい。具体的には、本発明で用いる混繊糸において、連続熱可塑性樹脂繊維成分の含浸率は1%未満であり、0.5%以下であることが好ましい。含浸率の下限値は特に定めるものではなく、0%であってもよい。混繊糸中の含浸率は、上述の含浸率と同様の方法によって測定される。
混繊糸は、連続熱可塑性樹脂繊維の処理剤によって、処理されていることが好ましい。このような構成とすることにより、混繊糸中の連続強化繊維の分散度を高めつつ、より束状にしやすくなる。処理剤としては、エステル系化合物、アルキレングリコール系化合物、ポリオレフィン系化合物、フェニルエーテル系化合物を例示できる。特に、界面活性剤としての機能を有する化合物が好ましい。
【0048】
また、混繊糸中における、連続強化繊維の割合は、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましく、30質量%以上であることが一層好ましく、40質量%以上であることがより一層好ましく、50質量%以上であることが特に好ましく、55質量%以上とすることもできる。混繊糸中における連続強化繊維の割合の上限は、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以下であり、65質量%以下とすることもできる。
混繊糸中における、連続熱可塑性樹脂繊維の割合は、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましく、35質量%以上とすることもできる。連続熱可塑性樹脂繊維の割合の上限は、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは85質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以下であり、一層好ましくは70質量%以下であり、より一層好ましくは60質量%以下であり、特に好ましくは50質量%以下であり、45質量%以下とすることもできる。
【0049】
混繊糸中における、連続強化繊維の分散度は、60~100%であることが好ましく、63~100%であることがより好ましく、68~100%がさらに好ましく、70~100%が特に好ましい。このような範囲とすることにより、混繊糸はより均一な物性を示し、さらに、成形品の外観がより向上する。また、これを用いて成形品を作製した際に機械物性により優れたものが得られる。
本発明における分散度とは、後述する実施例で示す方法によって測定された値をいう。測定装置等が入手不可能な場合、他の同種の機器等を採用することができる(以下、他の測定方法についても同じ)。
【0050】
混繊糸の製造には、通常、連続熱可塑性樹脂繊維束と連続強化繊維束を用いて製造する。
混繊糸に用いる連続強化繊維および/または連続熱可塑性樹脂繊維は、処理剤で表面処理されたものを用いるのが好ましい。このような構成とすることにより、連続強化繊維と連続熱可塑性樹脂繊維とがより均一に分散した混繊糸が得やすくなり、また、成形後の連続熱可塑性樹脂繊維成分の連続強化繊維への含浸率を向上させることができる。
その他の混繊糸の詳細は、WO2016/159340号公報の段落0018~0039の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0051】
本発明の材料は公知の方法を採用して製造することができる。図5は、図1に示す本発明の材料の製造方法の一例を示す図である。まず、束状の連続強化繊維3と束状の連続熱可塑性樹脂繊維4がボビン等から引出される。あるいは、複数のボビンから、単繊維の連続強化繊維および/または連続熱可塑性繊維が引き出される。このとき、微含浸領域(図1の1)となる部分は、連続強化繊維3と連続熱可塑性樹脂繊維4が含まれるように引き出される。一方、未含浸領域(図1の2)となる部分は、連続強化繊維3のみが引き出される。この後、加熱ロールで引き出した繊維を加熱する。そうすると、連続熱可塑性樹脂繊維の一部が溶融して連続強化繊維内に含浸して、微含浸領域1を形成する。一方、連続強化繊維のみを引き出された領域は、連続熱可塑性樹脂繊維が存在しないため、未含浸領域2とすることができる。
また、未含浸領域も熱可塑性樹脂を含む場合、加熱ロールに断熱シートなどを貼って、微含浸領域のみ加熱され、未含浸領域は加熱されないようにする態様も例示される。図6は、加熱ロールの断面図である。すなわち、加熱ロールの表面が加熱領域11と非加熱領域12が設けられ、加熱領域11が微含浸領域1となる領域を加熱し、非加熱領域12が未含浸領域2となる領域と接する。加熱領域と非加熱領域は、ロールの表面に凹凸を設けることによって形成してもよいし、非加熱領域のみ、断熱材を設けてもよい。
すなわち、本発明の材料の製造方法の一例は、熱可塑性樹脂と一方向に引きそろえた連続強化繊維を含む原料を連続強化繊維の繊維長方向に垂直な方向に加熱ロールを適用して、前記原料を加熱する工程を含み、前記加熱ロールは、その表面に加熱領域と非加熱領域を有し、加熱領域が前記原料のうち微含浸領域となる領域に接し、非加熱領域は前記原料のうち未含浸領域となる領域に接することを含む方法である。
【0052】
本発明の材料は、加熱加工して、成形品を製造することができる。成形品としては、特に定めるものではなく、自動車、航空機等輸送機部品、一般機械部品、精密機械部品、電子・電気機器部品、OA機器部品、建材・住設関連部品、医療装置、レジャースポーツ用品、遊戯具、医療品、食品包装用フィルム等の日用品、防衛および航空宇宙製品等に広く用いられる。特に、医療用装具(長下肢装具など)、自動車、電車および船舶等の窓枠、ヘルメットのゴーグル部位の枠、メガネフレーム、安全靴など用の成形材料として、好適に用いられる。特に、本発明の複合材料は、医療用装具形成用材料、自動車用二次構造部材としての利用価値が高い。また、凹部や凸部を有する成形品の製造に適している。
【0053】
本発明の材料は、テーラード・ファイバー・プレースメント(TFP)用の糸として、また、組み機、編み機、織り機など、糸繰りを含む用途に用いる糸として好ましく用いられる。本発明における糸繰りを含む用途としては、組紐、撚り紐などが例示される。
【0054】
図7は、本発明の材料をテーラード・ファイバー・プレースメント加工した場合の一例であって、6は本発明の材料を、7は糸を示している。TFP加工は、好ましくは、材料6を成形品の形状に沿うように配置し、糸7でステッチングする。糸7は、通常、連続熱可塑性樹脂繊維であり、好ましい範囲等は上述した連続熱可塑性樹脂繊維と同様である。本発明の材料は、図7に示すような、例えば2か所以上、好ましくは3か所以上の折り返し部を有する成形品に好ましく用いることができる。特に、図7に示すように折り返し角度が90℃以上の折り返し部を有する成形品に好ましく用いられる。
【実施例
【0055】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0056】
原料
<熱可塑性樹脂>
MXD6:メタキシリレンアジパミド樹脂(三菱ガス化学株式会社製、グレードS6001)、融点237℃、数平均分子量16800
MP10:キシリレンセバカミド樹脂、融点213℃、数平均分子量15400、下記合成例に従って合成した。
PA6:ポリアミド樹脂6、宇部興産社製、1022B、融点220℃
PC:ポリカーボネート樹脂、三菱エンジニアリングプラスチックス社製、品番:S-2000
PI:ポリイミド樹脂、融点319℃、WO2016/147996号公報の記載、特に、段落0128の記載に従って、同公報に記載のポリイミド樹脂1を合成した。
【0057】
<<MP10の合成例>>
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロートおよび窒素導入管、ストランドダイを備えた反応容器に、セバシン酸(伊藤製油株式会社製TAグレード)10kg(49.4mol)および酢酸ナトリウム/次亜リン酸ナトリウム・一水和物(モル比=1/1.5)11.66gを仕込み、十分に窒素置換した後、さらに少量の窒素気流下で系内を撹搾しながら170℃まで加熱溶融した。
メタキシリレンジアミン(三菱ガス化学株式会社製)とパラキシリレンジアミン(三菱ガス化学株式会社製)のモル比が70/30である混合キシリレンジアミン6.647kg(メタキシリレンジアミン34.16mol、パラキシリレンジアミン14.64mol)を溶融したセバシン酸に撹拌下で滴下し、生成する縮合水を系外に排出しながら、内温を連続的に2.5時間かけて240℃まで昇温した。
滴下終了後、内温を上昇させ、250℃に達した時点で反応容器内を減圧にし、さらに内温を上昇させて255℃で20分間、溶融重縮合反応を継続した。その後、系内を窒素で加圧し、得られた重合物をストランドダイから取り出して、これをペレット化することにより、ポリアミド樹脂MP10を得た。
得られたポリアミド樹脂の融点は、213℃、数平均分子量は、15400であった。
【0058】
<連続強化繊維>
炭素繊維(CF):ロービング繊維、三菱レイヨン社製、Pyrofil-TR-50S-12000-AD、8000dtex、繊維数12000f。エポキシ樹脂で表面処理されている。
ガラス繊維(GF):ロービング繊維、日東紡績社製、ECG 75 1/0 0.7Z、繊度687dtex、繊維数400f、集束剤で表面処理されている。
【0059】
<連続熱可塑性樹脂繊維の製造>
表1または表2に示す熱可塑性樹脂を直径30mmのスクリューを有する単軸押出機にて溶融押出しし、60穴のダイからストランド状に押出し、ロールにて巻き取りながら延伸し、連続熱可塑性樹脂の繊維束を巻取体に800m巻き取った。溶融温度は、連続熱可塑性樹脂の融点+15℃とした。ただし、PCは、300℃、PIは350℃とした。
油剤(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(花王製、エマノーン 1112))を深型のバットに満たし、表面をゴム処理したローラーをローラーの下部分が油剤に接するように設置してローラーを回転させることで、常に油剤がローラー表面に付着している状態にした。上記連続熱可塑性樹脂繊維をこのローラーに接触させることで連続熱可塑性樹脂繊維の表面に油剤を塗布した。
【0060】
<樹脂フィルムの製造>
MXD6をシリンダー径30mmのTダイ付き単軸押出機(プラスチック工学研社製、PTM-30)に供給した。シリンダー温度を290℃、スクリュー回転数30rpmの条件で溶融混練を行った。溶融混練した後、Tダイを通じてフィルム状物を押出し、冷却ロール上で固化し、厚み40μmのフィルムを得た。
【0061】
実施例1
<混繊糸とロービング繊維からなる材料の製造方法>
1m以上の長さを有する連続熱可塑性樹脂繊維の回巻体、および、1m以上の長さを有する連続強化繊維の回巻体からそれぞれの繊維を引き出し、複数のガイドを通しながらエアブローにより開繊を行った。連続強化繊維を開繊しながら、また、連続熱可塑性樹脂繊維を幅0.6mm、9本に分け、その隙間が0.6mmになるように、配置して、一束とし、さらに、複数のガイドを通しながらエアブローを与え、均一化を進めた。複数の支点間距離10mmのガイドを通し、幅を定めた。その後、加熱ロールを用いて連続熱可塑性樹脂繊維を部分的に溶融し、巻き取った。微含浸領域と未含浸領域が繊維長方向に交互に存在する材料を得た。
【0062】
<<分散度の測定方法>>
混繊糸をエポキシ樹脂で包埋し、混繊糸の長手方向に垂直な断面を研磨し、断面図を、超深度カラー3D形状測定顕微鏡を使用して撮影した。図8に示すように、撮影画像において、放射状に補助線を等間隔に6本ひき、各補助線上にある連続強化繊維領域の長さをa1, a2, a3・・・ai(i=n)と測量した。また、各補助線上にある連続熱可塑性樹脂繊維の領域の長さをb1, b2, b3・・・bi(i=m)と測量した。その結果に基づき、次式により分散度を算出した。
【数1】
超深度カラー3D形状測定顕微鏡は、VK-9500(コントローラー部)/VK-9510(測定部)(キーエンス製)を使用した。
【0063】
<<含浸率の測定方法>>
材料について、連続強化繊維の長手方向に垂直な断面をまとめて切り取り、エポキシ樹脂で包埋し、材料の断面部にあたる面を研磨し、断面図を超深度カラー3D形状測定顕微鏡を使用して撮影した。作製した成形品の断面をデジタルマイクロスコープで観察した。得られた断面写真に対し、連続強化繊維の熱可塑性樹脂が含浸した領域を画像解析ソフトImageJを用いて選択し、その面積を測定した。含浸率は、連続強化繊維の熱可塑性樹脂が含浸した領域/断面積(単位%)として示した。
超深度カラー3D形状測定顕微鏡は、VK-9500(コントローラー部)/VK-9510(測定部)(キーエンス製)を使用した。
【0064】
得られた材料について、微含浸領域と未含浸領域の含浸率をそれぞれ測定した。
なお、微含浸領域は、含浸前(混繊糸の状態のとき)、連続強化繊維の分散度70%以上であった。
微含浸領域の幅、未含浸領域の幅、材料(テープ)の幅および材料(テープ)の厚さは、ノギスを用いて測定した。通常0.05mm程の差異が生じるが、平均値をそれぞれの幅と記載する。
【0065】
<TFP操作性>
タジマ工業社製、コンポジットファイバー縫い付け機、TCWM-101を用い、上記で得られた材料を、上記で製造したMXD6フィルムの上に、中心から0度方向に5cmステッチングするようにして保形し、次いで180度の角度で曲げて-180度方向に5cmステッチングするようにして保形し、次いで180度の角度で曲げて再び0度方向に5cmステッチングするようにして保形した。これを5回繰り返した。
以下の通り評価した。
A: 設定通りに保形された。
B: 180度の角度で曲げる際、材料が配置予定位置からややずれた。
C: 180度の角度で曲げる際、材料が配置予定位置からややずれたり、材料が部分的に裂けたりした。
D: 材料が安定せず、最後まで保形できなかった。
【0066】
<未含浸領域の含浸性>
上記TFPで一方向に保形したプリフォームを、結晶性熱可塑性樹脂については、融点+5℃で、ポリカーボネート樹脂については、250℃で、3MPaで3分間プレス成形し、得られた成形品を繊維方向に垂直に切断し、含浸率を測定した。
以下の通り評価した。
A: 含浸率99%以上
B: 含浸率97以上99%未満
C: 含浸率97%未満
【0067】
<ほつれ>
TFP操作性試験で得た成形品を目視で評価した。
以下の通り評価した。
A: ほつれなし
B: ほつれ箇所が1
C: ほつれ箇所が2
D: ほつれ箇所が3以上
【0068】
実施例2~6、8~9、13~17
実施例1において、表1または表2に記載のとおり変更し、他は同様に行った。
【0069】
実施例7
1m以上の長さを有する連続強化繊維の回巻体から連続強化繊維を引き出し、複数のガイドを通しながらエアブローにより開繊を行った。連続強化繊維を開繊しながら、その上下のうち、微含浸領域に相当する部分に、0.6mm幅にスリットした熱可塑性樹脂フィルムを配置した。その後、加熱ロールを用いて熱可塑性樹脂フィルムを部分的に溶融し、巻き取った。微含浸領域と未含浸領域が連続強化繊維方向に交互に存在する材料を得た。
なお、微含浸領域は、含浸前(混繊糸の状態のとき)、連続強化繊維の分散度70%以上であった。
【0070】
実施例10、11
1m以上の長さを有する連続熱可塑性樹脂繊維の回巻体、および、1m以上の長さを有する連続強化繊維の回巻体からそれぞれの繊維を引き出し、複数のガイドを通しながらエアブローにより開繊を行った。さらに、複数のガイドを通しながらエアブローを与え、均一化を進めた。複数の支点間距離10mmのガイドを通し、幅を定めた。図6に示すような加熱ロールであって、9つの加熱領域と8つの非加熱領域が0.6mm幅で交互に設けられており、両端が加熱領域であるロールを用いて加熱した。微含浸領域に相当する領域の連続熱可塑性樹脂繊維を部分的に溶融し、巻き取った。微含浸領域と未含浸領域が繊維方向に交互に存在する材料を得た。
【0071】
実施例12
1m以上の長さを有する連続強化繊維の回巻体から連続強化繊維を引き出し、複数のガイドを通しながらエアブローにより開繊を行った。連続強化繊維を開繊しながら、その上下に、10mm幅の熱可塑性樹脂フィルムを配置した。その後、実施例10と同様の加熱ロールを用いて、微含浸領域に相当する領域の熱可塑性樹脂フィルムを部分的に溶融し、巻き取った。微含浸領域と未含浸領域が連続強化繊維方向に交互に存在する材料を得た。
【0072】
実施例18
実施例10において、さらに回転方向に垂直の向きにも加熱領域と非加熱領域を有する加熱ロールを用いた他は、実施例10と同様に行った。前記加熱ロールは、直径100mmであり、二本等間隔に回転方向に垂直な方向にも加熱領域を有する。長手方向(繊維長方向)の157mm毎に、長手方向に垂直な方向に微含浸領域を有する材料を得た。
【0073】
参考例1
1m以上の長さを有する連続熱可塑性樹脂繊維の回巻体、および、1m以上の長さを有する連続強化繊維の回巻体からそれぞれの繊維を引き出し、複数のガイドを通しながらエアブローにより開繊を行った。複数のガイドを通しながらエアブローを与え、均一化を進めた。複数の支点間距離10mmのガイドを通し、幅を定めた。その後、加熱ロールを用いて連続熱可塑性樹脂繊維を部分的に溶融し、巻き取った。微含浸領域からなる材料を得た。
【0074】
参考例2
参考例1において、加熱ロールを用いないことの他は同様に行った。未含浸領域からなる材料を得た。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
上記結果から明らかなとおり、本発明の材料は、TFP操作性に優れ、未含浸領域の含浸率が高く、ほつれが抑制された。
これに対し、すべての領域が微含浸領域の場合、TFP操作性が劣っていた。また、すべての領域が未含浸の混繊糸からなる場合、TFP操作性が劣り、また、ほつれも生じやすかった。
【0078】
実施例1に用いた材料を、16錘、48錘丸打の組物作製装置を用いて筒状の組紐を作製した。操作性、含浸性、ほつれ共に良好だった。
【符号の説明】
【0079】
1 微含浸領域
2、5 未含浸領域
3 連続強化繊維
4 連続熱可塑性樹脂繊維
6 材料
7 糸
11 加熱領域
12 非加熱領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8