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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】ロータ及びロータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/28 20060101AFI20230216BHJP
   H02K 1/22 20060101ALI20230216BHJP
   H02K 15/03 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
H02K1/28 A
H02K1/28 D
H02K1/22 A
H02K15/03 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018235324
(22)【出願日】2018-12-17
(65)【公開番号】P2020099109
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505336622
【氏名又は名称】株式会社TOP
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】上野 清香
(72)【発明者】
【氏名】三好 広之
(72)【発明者】
【氏名】砂畑 政信
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-163757(JP,A)
【文献】特開2014-150626(JP,A)
【文献】特開2003-204649(JP,A)
【文献】特開2009-219309(JP,A)
【文献】特開2009-225519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/28
H02K 1/22
H02K 1/27
H02K 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸と、
前記駆動軸が挿入される貫通孔を有する第1の鉄心材と、
前記第1の鉄心材に設けられる複数の第1の永久磁石と
を有し、
前記第1の鉄心材と前記第1の永久磁石とが面一又は前記第1の永久磁石よりも前記第1の鉄心材の方が突出した第1の基準面を有する
第1のロータコアユニットと、
前記駆動軸が挿入される貫通孔を有する第2の鉄心材と、
前記第2の鉄心材に設けられる複数の第2の永久磁石と
を有し、
前記第2の鉄心材と前記第2の永久磁石とが面一又は前記第2の永久磁石よりも前記第2の鉄心材の方が突出した第2の基準面を有する
第2のロータコアユニットと
を具備し、
前記第1の鉄心材及び前記第2の鉄心材それぞれは、位置決め用孔を有する同じ形状のロータプレートを、前記位置決め用孔が重なるように複数積層して構成され、
前記第1の鉄心材のロータプレートと前記第2の鉄心材のロータプレートとは、表裏同じ向きで同じ形状を有し、表裏を逆向きにして重ね合わせたときに互いの前記位置決め用孔の位置は一致せず、
前記第1のロータコアユニットと前記第2のロータコアユニットは、互いの前記位置決め用孔の位置が一致せず、前記第1の基準面と前記第2の基準面とが接するように軸方向に積層される
ロータ。
【請求項2】
請求項に記載のロータであって、
前記ロータプレートは、前記位置決め用孔として、前記ロータプレートの中心からの距離が異なる位置に位置する第1の位置決め用孔と第2の位置決め用孔を有する
ロータ。
【請求項3】
請求項に記載のロータであって、
前記ロータプレートは、前記位置決め用孔として、大きさの異なる第1の位置決め用孔と第2の位置決め用孔を有し、前記第1の位置決め用孔と前記第2の位置決め用孔とは前記ロータプレートの中心を対称中心とした点対称の位置関係にない
ロータ。
【請求項4】
駆動軸が挿入される貫通孔及び位置決め用孔を有する複数のロータプレートであって、複数の前記ロータプレートは表裏同じ向きで同じ形状を有し、2枚の前記ロータプレートの表裏を逆向きにして重ね合わせたときに互いの前記位置決め用孔が一致しない、複数の前記ロータプレートを、前記位置決め用孔に平坦な作業面を有する作業台に固定された位置決めピンを通して、前記作業面上で積層して鉄心材を形成し、
前記鉄心材を前記作業面上に載置した状態で前記鉄心材に永久磁石を取り付け、前記作業面と接する面を基準面とするロータコアユニットを形成し、
2つの前記ロータコアユニットを、互いの前記基準面が対向するように軸方向に配置し、2つの前記ロータコアユニットの互いの前記基準面を当接させ、2つの前記ロータコアユニットに荷重をかけて前記貫通孔に前記駆動軸を圧入する
ロータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータ及びロータの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車の電動ステアリング装置に用いられるモータでは、モータのトルク脈動は騒音や振動の原因となる。トルク脈動の一要因としてコギングトルクが挙げられる。
コギングトルクを低減するために、例えばステップスキュー構造のロータが用いられる(例えば特許文献1。)。
【0003】
特許文献1に記載されるロータコアは、鉄心材と、当該鉄心材の周囲に設けられた複数の永久磁石とを有する複数の段コアがスキュー角に相当する分ずれて積層されて、ステップスキュー構造を形成している。ロータコアを構成する鉄心材には回転軸が挿入される貫通孔が設けられ、当該貫通孔に回転軸が挿入されてロータが構成される。
【0004】
特許文献1に記載されるロータでは、ロータコアの内周面に径方向内側に突出するキーが設けられ、回転軸の外周面に各段コアそれぞれに対応する複数のロータコア固定用のキー溝がスキュー角に相当する分ずらした位置に設けられている。回転軸の各段コアに対応するキー溝にキーが嵌め込まれるように順に複数の段コアを積層することによりステップスキュー構造のロータを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-236592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の段コアは、例えば、回転軸が挿入される貫通孔を有する円筒状の鉄心材の周囲に複数の永久磁石を接着剤により貼り付けて形成することができる。そして、複数の段コアを積層し、積層方向に荷重を加えて回転軸を貫通孔に圧入してロータコアを形成することができる。
【0007】
段コアの端面は、鉄心材、永久磁石それぞれの寸法誤差により、必ずしも平坦にならず、鉄心材が永久磁石よりも突出したり、永久磁石が鉄心材よりも突出する場合がある。
2つの段コアを積層して回転軸を圧入する場合、例えば、2つの段コアの永久磁石が鉄心材よりも突出する端面同士が接するように配置され積層される場合がある。このような状態の積層された2つの段コアを積層方向に荷重を加えて回転軸を圧入する際、永久磁石同士が衝突して破損してしまい、安定してロータを製造することが難しいという問題があった。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、安定した品質のロータを得ることができるロータ及びロータの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るロータは、駆動軸と、第1のロータコアユニットと、第2のロータコアユニットとを具備する。
上記第1のロータコアユニットは、上記駆動軸が挿入される貫通孔を有する第1の鉄心材と、上記第1の鉄心材に設けられる複数の第1の永久磁石とを有し、上記第1の鉄心材と上記第1の永久磁石とが面一又は上記第1の永久磁石よりも上記第1の鉄心材の方が突出した第1の基準面を有する。
上記第2のロータコアユニットは、上記駆動軸が挿入される貫通孔を有する第2の鉄心材と、上記第2の鉄心材に設けられる複数の第2の永久磁石とを有し、上記第2の鉄心材と上記第2の永久磁石とが面一又は上記第2の永久磁石よりも上記第2の鉄心材の方が突出した第2の基準面を有する。
上記第1の鉄心材及び上記第2の鉄心材それぞれは、位置決め用孔を有する同じ形状のロータプレートを、上記位置決め用孔が重なるように複数積層して構成される。
上記第1の鉄心材のロータプレートと上記第2の鉄心材のロータプレートとは、表裏同じ向きで同じ形状を有し、表裏を逆向きにして重ね合わせたときに互いの上記位置決め用孔の位置は一致しない。
上記第1のロータコアユニットと上記第2のロータコアユニットは、互いの上記位置決め用孔の位置が一致せず、上記第1の基準面と上記第2の基準面とが接するように軸方向に積層される。
【0010】
本発明のこのような構成によれば、2つのロータコアユニットの互いの基準面同士が当接するように積層されてロータが形成されるので、各ロータコアユニットの永久磁石同士が衝突して破損することがなく、安定した品質のロータを得ることができる。
【0012】
上記ロータプレートは、上記位置決め用孔として、上記ロータプレートの中心からの距離が異なる位置に位置する第1の位置決め用孔と第2の位置決め用孔を有してもよい。
【0013】
上記ロータプレートは、上記位置決め用孔として、大きさの異なる第1の位置決め用孔と第2の位置決め用孔を有し、上記第1の位置決め用孔と上記第2の位置決め用孔とは上記ロータプレートの中心を対称中心とした点対称の位置関係になくてもよい。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るロータの製造方法は、駆動軸が挿入される貫通孔及び位置決め用孔を有する複数のロータプレートであって、複数の上記ロータプレートは表裏同じ向きで同じ形状を有し、2枚の上記ロータプレートの表裏を逆向きにして重ね合わせたときに互いの上記位置決め用孔が一致しない、複数の上記ロータプレートを、上記位置決め用孔に平坦な作業面を有する作業台に固定された位置決めピンを通して、上記作業面上で積層して鉄心材を形成し、上記鉄心材を上記作業面上に載置した状態で上記鉄心材に永久磁石を取り付け、上記作業面と接する面を基準面とするロータコアユニットを形成し、2つの上記ロータコアユニットを、互いの上記基準面が対向するように軸方向に配置し、2つの上記ロータコアユニットの互いの上記基準面を当接させ、2つの上記ロータコアユニットに荷重をかけて上記貫通孔に上記駆動軸を圧入する。
【0015】
本発明のこのような構成によれば、2つのロータコアユニットの互いの基準面同士が当接するように積層されてロータが形成されるので、圧入工程時に、各ロータコアユニットの永久磁石同士が衝突して破損することがなく、安定した品質のロータを得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上述べたように、本発明によれば、安定した品質のロータを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るロータが搭載された回転電機の構成例を示す分解斜視図である。
図2】上記回転電機の要部の断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るロータの斜視図である。
図4】上記ロータを構成するロータコアユニットの斜視図である。
図5】上記ロータコアユニットを構成する鉄心材を構成するロータプレートの平面図である。
図6】上記ロータプレートを2枚、表裏を逆向きにして重ね合わせたときの平面図である。
図7】上記ロータコアユニットの組立工程を示す組立工程図である。
図8】上記ロータコアの製造における駆動軸圧入工程を説明するための図であり、圧入装置の概略断面図である。
図9】駆動軸圧入工程を説明するための図であり、上記圧入装置の部分斜視図である。
図10】上記ロータコアユニットの概略断面図である。
図11】上記ロータコアの概略断面図である。
図12】他の実施形態に係るロータプレートの平面図及び当該ロータプレートを2枚、表裏を逆向きにして重ね合わせたときの平面図である。
図13】比較例としてのロータコアの製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
本発明の一実施形態に係るロータを備える回転電機100は、例えば車両の電動ステアリング装置に用いられ、ステアリングシャフトに操舵補助力を付与するモータとして構成される。
【0019】
<回転電機の構成>
図1は本発明の一実施形態に係る回転電機100の構成例を示す分解斜視図であり、図2は回転電機100の要部の断面図である。
【0020】
回転電機100は、ケーシング10と、部品実装体20と、モータ30と、バスバーユニット40と、ベアリングホルダ50と、圧入リング60と、を有する。
【0021】
[ケーシング]
ケーシング10は、開口部11と、開口部11に対向する底部12とを有する概略円筒形状(筒状)に形成される。ケーシング10は、典型的には、アルミダイカスト、アルミニウム等の金属材料から構成され、図2に示すように、モータ30やバスバーユニット40等を収容する。
【0022】
底部12と開口部11との間には、開口部11から挿入されるベアリングホルダ50の周縁部を支持するための段部15が形成されている(図2参照)。ケーシング10は、底部12と段部15との間に設けられ、後述するロータ(回転子)32を収容するモータ室10M(図2参照)を有する。
【0023】
[部品実装体]
部品実装体20は、図2に示すように、モータ30、バスバーユニット40及びベアリングホルダ50よりも上方においてケーシング10の上端部に保持される。部品実装体20は、部品実装基板21と、ヒートシンク23とを有する。
【0024】
本実施形態の部品実装基板21は、電動パワーステアリング装置(EPS:Electric Power Steering)のECU(Electronic Control Unit)を構成する各種電子機器(図示略)を含む回路基板である。当該電子機器としては、CPU(Central Processing Unit)、メモリ等を含む。部品実装基板21は、複数のネジ部(図示せず)を介してヒートシンク(蓋部)23に固定される。
【0025】
ヒートシンク23は、シールリングS(図2参照)を介してケーシング10の開口部11に組み付けられることで、ケーシング10の内部を密閉する蓋部を構成する。図1に示すように、ヒートシンク23の上面には、部品実装基板21と図示しない電源ユニットとの間を電気的に接続する外部接続端子23aが設けられている。ヒートシンク23の周縁部には、ネジ挿通孔を有する複数のブラケット23bが設けられており、これらのブラケット23bを介してヒートシンク23の開口部11の周縁部に設けられた複数の固定ブラケット14にネジ固定される。
【0026】
[モータ]
モータ30は、図2に示すようにケーシング10内のモータ室10Mに収容され、ステータ(固定子)31と、ロータ(回転子)32とを有する。
【0027】
ステータ31は、ケーシング10の内側に円環状に配置された複数のティース(ステータコア)と、複数のティースにそれぞれ巻回されたコイル(ステータコイル)を含む。ティースは、磁性材からなり、例えば複数の磁性鋼板の積層体で構成される。ステータ31は、ケーシング10の内周に嵌合されることによりケーシング10に固定される。コイルは、U相、V相及びW相の三相電磁コイルを形成するように、それらの両端部(図示せず)がバスバーユニット40に電気的に接続される。
【0028】
ロータ32は、一軸(Z軸)まわりに回転する駆動軸(回転軸)321と、駆動軸321に取り付けられるロータコア322とを有する。駆動軸321は、ケーシング10の軸心に沿って配置され、ロータコア322の中央に形成された貫通孔に圧入される。駆動軸321は、ベアリングB1(第1のベアリング)及びベアリングB2(第2のベアリング)を介してケーシング10に回転自在に支持される。ロータコア322は、周方向に配列された複数の磁極を有する。ロータ32は、ステータ31の内側に配置され、ステータ31との電磁作用により駆動軸321をその軸まわりに回転させる。
ロータ32の詳細な構成については後述する。
【0029】
駆動軸321の一端(図1及び図2において下端)は、ケーシング10の底部12を貫通し、その先端部にギヤ部323を有する。ギヤ部323は、ステアリングシャフトに連絡する相手側ギヤ(図示略)に噛み合い、駆動軸321の回転を上記ステアリングシャフトに伝達する。
【0030】
一方のベアリングB1(第1のベアリング)は、ケーシング10の底部12に取り付けられ、駆動軸321の一端側を回転可能に支持する。他方のベアリングB2(第2のベアリング)は、駆動軸321の他端側を回転可能に支持する。
ベアリングB2は、ロータコア322とヒートシンク23との間に配置され、ベアリングホルダ50を介してケーシング10に固定される。ベアリングホルダ50に関しては後に詳述する。
【0031】
[バスバーユニット]
バスバーユニット40は、導電材からなる複数のバスバー41と、これらバスバー41を内包する電気絶縁性のバスバーホルダ42とを有する(図2参照)。バスバーホルダ42は、円環状の成形体で構成され、複数のバスバー41は、バスバーホルダ42の外周面から径外方へ突出する複数の接続端子41aと、バスバーホルダ42の天面から一軸方向に延び、U相、V相及びW相のそれぞれに対応した複数の電源端子41bとを有する(図1参照)。
【0032】
バスバーユニット40は、ケーシング10の内部に配置され、駆動軸321と同心的に、ステータコイルに接続される。複数の接続端子41aは、U相、V相及びW相のステータコイルの一端にそれぞれ電気的に接続され、複数の電源端子41bは、ヒートシンク23に固定された部品実装基板21上のコネクタ部品22と電気的に接続される(図2参照)。
【0033】
[圧入リング]
圧入リング60は、図1に示されているような円環状のものである。圧入リング60は、段部15との間でベアリングホルダ50をZ軸方向に挟持するように、ケーシング10に開口部11から圧入される。圧入リング60は、開口部11の内周面に圧入される外周面60Aと、ベアリングホルダ50の周縁部に当接する第2の支持面60Bとを有する。
【0034】
圧入リング60は、ケーシング10と同一の材料(アルミダイカスト、アルミニウム等)または、ケーシング10と同程度の線膨張係数を有する材料(例えば黄銅やマグネシウム合金)から成る。
【0035】
[ベアリングホルダ]
ベアリングホルダ50は、ベアリングB2をケーシング10内に位置決め保持するためのものであり、金属板のプレス成形体で構成される。本実施形態においてベアリングホルダ50は、金属板を立体形状に深絞り加工及び折り曲げ加工することで作製される。
【0036】
ベアリングホルダ50は、概略円盤形状を有し、その中心部には駆動軸321が貫通する軸穴が設けられている。この軸穴を包囲するように、第2のベアリングB2を圧入保持するためのベアリング保持部502が設けられている。
【0037】
ベアリング保持部502は、ベアリングB2のアウタレースとの嵌合あるいは嵌着作用によってベアリングB2を一体的に保持する。この際、ベアリング保持部502の開口下端部をカシメることで、ベアリングB2との一体的結合が得られるようにしてもよい。
【0038】
ベアリングホルダ50は、磁性材料で構成されてもよいし、非磁性材料で構成されてもよい。ベアリングホルダ50が磁性材料で構成されることにより、ステータ31やロータ32から発生する電磁場の影響から部品実装基板21上の電子部品を保護するというシールド効果が得られる。このような材料として、例えばSPCC(冷間圧延鋼板)が挙げられるが、勿論これに限られない。
【0039】
[ロータの詳細構成]
図3はロータ32の斜視図である。本実施形態のロータ32は、ステップスキュー構造のロータである。ロータ32は、互いに独立したロータコアユニット63が、周方向に所定角度ずれて複数積層されて構成される。
【0040】
図2及び図3に示すように、ロータ32は、駆動軸321と、ロータコア322と、を有する。略円筒状のロータコア322の中心には、駆動軸321が貫通する挿入孔322aが設けられている。
【0041】
ロータコア322は、複数、本実施形態においては2つの独立したロータコアユニット63が積層されて構成される。本実施形態においては、下段に位置するロータコアユニット63を下段ロータコアユニット63aと称し、上段に位置するロータコアユニット63を上段ロータコアユニット63bと称する。
【0042】
第1のロータコアユニットとしての下段ロータコアユニット63aは、第2のロータコアユニットとしての上段ロータコアユニット63bを上下逆方向に回転(あるいは反転)させた形態を有している。それ以外は、下段ロータコアユニット63aと上段ロータコアユニット63bとは同じ構成を有し、特に上下に分けて説明をする必要がない場合は、単にロータコアユニット63と称する場合がある。
また、ロータコアユニット63を構成する鉄心材8、永久磁石9においても同様であり、上下に分けて説明する場合は、第1の鉄心材としての下段鉄心材8a、第2の鉄心材としての上段鉄心材8b、第1の永久磁石としての下段永久磁石9a、第2の永久磁石としての上段永久磁石9bと称するが、特に分ける必要がない場合は鉄心材8、永久磁石9と称する場合がある。
【0043】
ロータコアユニット63は略円筒状を有し、基準面61と、当該基準面61に対向する対向面62とを有する(例えば図8参照)。
詳細については後述するが、本実施形態では、後述するロータの製造方法において、ロータコアユニット63の組立工程時に、組立治具200の作業面201に接する側が基準面となる。
【0044】
下段ロータコアユニット63aと上段ロータコアユニット63bとは、互いの基準面61同士が当接するように積層される。下段ロータコアユニット63aは、上段ロータコアユニット63bに対して、駆動軸321の回転方向(ロータコアユニットの周方向)に、所定の角度(スキュー角分)ずらして配置される。これにより、コギングトルクを低減することができる。本実施形態では12度ずらしたが、これに限定されない。スキュー角は、永久磁石の形状、数等により適宜設定される。
【0045】
以下、第1の基準面としての下段ロータコアユニット63aの基準面に61aの符号を付し、第2の基準面としての上段ロータコアユニット63bの基準面に61bの符号を付して説明をする場合がある。また、基準面61と対向する対向面62において、下段ロータコアユニット63aの対向面に62aの符号を付し、上段ロータコアユニット63bの対向面に62bの符号を付して説明をする場合がある。
【0046】
図4は、ロータ32を構成するロータコアユニット63の斜視図である。
図5(A)は、鉄心材8を構成するロータプレートとしての鋼板81の平面図である。図5(B)は、図5(A)の鋼板81の表裏を逆向きにしたときの平面図である。
図6は2枚の鋼板81をその表裏を逆向きにして重ね合わせたときの平面図である。
【0047】
ロータコアユニット63は、駆動軸321の外周に固定され駆動軸321とともに回転する鉄心材8と、鉄心材8の外周に亘って等間隔で取り付けられる複数の永久磁石9と、を有する。本実施形態においては、永久磁石9は6つ設けられる。
【0048】
鉄心材8は、図5(A)に示す鋼板81が、図2に示すように、複数枚積層されて構成される。
【0049】
図5に示すように、鋼板81は、中心に駆動軸321が挿入される貫通孔84と、第1の位置決め用孔82と、第2の位置決め用孔83と、を有する。いずれの孔も平面形状が円形を有している。
【0050】
複数枚の鋼板81が、互いの貫通孔84、第1の位置決め用孔82、第2の位置決め用孔83が重なるように積層されて鉄心材8が形成される。
【0051】
複数枚の鋼板81が積層されることにより各貫通孔84が連なって、鉄心材8の貫通孔841(図4参照)が形成される。
下段ロータコアユニット63aの鉄心材8aに設けられる貫通孔には符号841aを付し、上段ロータコアユニット63bの鉄心材8bに設けられる貫通孔には符号841bを付す(図9参照)。
更に2つのロータコアユニット63a、63bが積層されることにより、それぞれのロータコアユニット63a、63bの鉄心材8の貫通孔841a、841bが連なり、駆動軸321が挿入される挿入孔322aが形成される。
【0052】
また、複数枚の鋼板81が積層されることにより各第1の位置決め用孔82が連なって、鉄心材8を貫通する第1の位置決め用孔821が形成される。同様に、積層される複数の鋼板81の各第2の位置決め用孔83が連なって、鉄心材8を貫通する第2の位置決め用孔831が形成される(図4参照)。
下段ロータコアユニット63aの鉄心材8aに設けられる第1の位置決め用孔、第2の位置決め用孔それぞれには符号821a、831aを付す。上段ロータコアユニット63bの鉄心材8bに設けられる第1の位置決め用孔、第2の位置決め用孔それぞれには符号821b、831bを付す(図9参照)。尚、上下段を特に区別する必要がない場合は、第1の位置決め用孔821、第2の位置決め用孔831と称する場合がある。
【0053】
図5に示すように、鋼板81は外形が略円形状を有する。鋼板81の周縁部には等間隔に6つの突起部85が設けられている。
【0054】
鋼板81を複数枚重ね合わせて鉄心材8としたときに、突起部85によって円筒状の鉄心材8の側面には6つの駆動軸321の軸方向に平行に延在する直線状の突起が6つ形成される。そして、隣り合う直線状の突起間に形成される空間に永久磁石9が配置される。
【0055】
第1の位置決め用孔82と第2の位置決め用孔83とはいずれも平面形状が同じ径の円形となっている。本実施形態においては、第1の位置決め用孔82と、第2の位置決め用孔83とは、鋼板81を中心とする同じ円周上には位置せず、互いに鋼板81の中心から異なる距離に位置する。
【0056】
具体的には、第1の位置決め用孔82と第2の位置決め用孔83はいずれも直径が1.5mmの大きさの円形状を有し、第1の位置決め用孔82の中心と鋼板81の中心との距離は8mm、第2の位置決め用孔83の中心と鋼板81の中心との距離は7.75mmとなっている。また、鋼板81の中心と第1の位置決め用孔82とを結ぶ直線と、鋼板81の中心と第2の位置決め用孔83とを結ぶ直線とがなす角度は128°となっている。尚、これら寸法の数値はここに記載する数値に限定されない。
【0057】
鋼板81は、相互に対向する第1の面811と第2の面812とを有する。図5(A)は、第1の面811を上面としたときの平面図である。図5(B)は、第2の面812を上面としたときの平面図である。
【0058】
図5(A)及び図5(B)に示すように、図5(A)に示す鋼板81を反転させても、図5(B)に示す鋼板81と、第1の位置決め用孔82及び第2の位置決め用孔83の位置が相互に一致することはない。
すなわち、鋼板81は、表裏を逆向きにした場合、同じ形状とはならないように、第1の位置決め用孔82及び第2の位置決め用孔83が形成されている。尚、鋼板81の中心に設けられる円形状の貫通孔84は、2枚の鋼板81をその表裏を逆向きにして重ね合わせたときに一致するように設けられる。
【0059】
鋼板81aは、図5(B)に示す第2の面812を上面としたときの鋼板である。鋼板81bは、図5(A)に示す第1の面811を上面としたときの鋼板である。
図6に示す例では、鋼板81aが鋼板81bの下側に位置している。
【0060】
また、図6は、図3に示すロータ32における、上段ロータコアユニット63bの鉄心材8bを構成する鋼板81と下段ロータコアユニット63aの鉄心材8aを構成する鋼板81との位置関係を示している。下段ロータコアユニット63aと上段ロータコアユニット63bとは、駆動軸321の回転方向に所定の角度、本実施形態では12°ずれて配置されている。
図6において、上段ロータコアユニット63bの鉄心材8bを構成する鋼板81は、第1の面811が上面に位置する鋼板81bに対応する。下段ロータコアユニット63aの鉄心材8aを構成する鋼板81は、第2の面812が上面に位置する鋼板81aに対応する。
【0061】
図6において上側に配置される鋼板81bの第1、第2の位置決め用孔にはそれぞれ符号82b、83bを付し、下側に配置される鋼板81aの第1、第2の位置決め用孔にはそれぞれ符号82a、83aを付す。
【0062】
図6に示すように、2枚の鋼板81をその表裏を逆向きにして重ね合わせたときに、互いの位置決め用孔は一致していない。また、一方の鋼板81を周方向に回転させても互いの2つの位置決め用孔は一致しない。
従って、図3に示すロータ32では、下段ロータコアユニット63aと上段ロータコアユニット63bとは上下反対に位置して配置されるため、互いの位置決め用孔821、831は一致しない。
【0063】
永久磁石9は、鉄心材8の周方向に6個、等間隔で配置される。尚、永久磁石9の数はこれに限られず、ロータコアユニット63は、周方向に並ぶ7個以上の永久磁石を有していてもよいし、2から5個のいずれかの永久磁石を有していてもよい。
【0064】
ロータコア322の挿入孔322aに駆動軸321を圧入固定することにより、ロータ32が形成される。駆動軸321の挿入孔322aに対応する面(後述する図8における符号321aで示される構成。)はナーリング加工されて表面が凹凸形状を有している。挿入孔322aの径は駆動軸321の径よりも若干小さくなっている。ロータコア322は、挿入孔322aに駆動軸321を圧入することにより、駆動軸321に固定される。
【0065】
下段ロータコアユニット63aと上段ロータコアユニット63bは、互いの基準面61aと基準面61bとが当接するように配置される。
基準面61は、平坦面である。ここで、平坦面とは、鉄心材8の端面と永久磁石9の端面とが完全に面一の形態の他、ロータコアユニット63の組立時の誤差による鉄心材8の端面が永久磁石9の端面よりも0.2mm以下突出した形態も含む。
【0066】
<ロータの製造方法>
次に、ロータの製造方法について説明する。
ロータ32は、主に、ロータコアユニット63の組立工程と、積層した2つのロータコアユニット63に駆動軸321を圧入する圧入工程とを経て製造される。以下、工程ごとに説明する。
【0067】
[ロータコアユニットの組立工程]
図7を用いてロータコアユニット63の組立工程について説明する。
図7はロータコアユニット63の組立工程図である。
【0068】
(組立治具の構成)
まず、ロータコアユニット63を組み立てる際に用いる図7(A)に示す組立治具200について説明する。
【0069】
図7(A)に示すように、組立治具200は、平坦な面に載置される。治具200は、複数の鋼板81が積層されてなる鉄心材8を形成する際の複数の鋼板81がずれて積層されないための位置決め用に用いられる。更に、治具200は、鉄心材8の周囲に複数の永久磁石9を接着固定するときの、鉄心材8と永久磁石9それぞれの端面を揃えるための位置決め用に用いられる。
【0070】
治具200は、平坦な作業面201を有する作業台202と、作業台202に固定された2つの位置決めピン212、213を有する。位置決めピン212は鋼板81の位置決め用孔82に対応し、位置決めピン213は位置決め用孔83に対応して設けられている。
【0071】
(組立工程の説明)
次に、組立工程について説明する。
図7(A)に示すように、鋼板81の位置決め用孔82、83を、治具200に設けられている対応する位置決めピン212、213それぞれに通して作業台202上に鋼板81を載置する。これにより、鋼板81は、鋼板81の第1の面811が上面に、第2の面812が作業面201側に位置するように載置される。
【0072】
図7(A)に示すように、鋼板81を治具200上に所定の枚数積層していく。
上述のように、鋼板81には、2枚の鋼板81をその表裏を逆向きにして重ね合わせたときに位置決め用孔82、83が一致しないように設けられている。これにより、図7(A)に示すように、治具200に備えられる位置決めピン212、213に従って、鋼板81を載置することにより、確実に、第1の面811が上面となるように鋼板81を積層していくことができる。例えば、鋼板81を表裏、逆方向にして載置しようとしても、位置決め用孔82、83に位置決めピン212、213を通すことができないため、確実に第2の面812が作業面201側に位置するように鋼板81を積層していくことができる。
【0073】
所定の枚数の鋼板81を積み重ね、鉄心材8を形成する。鉄心材8は、それぞれ鉄心材8を貫通する、貫通孔841と、第1の位置決め用孔821と、第2の位置決め用孔831と、を有する。
【0074】
その後、図7(B)に示すように、鉄心材8を作業台202に載置した状態で、鉄心材8の周囲に永久磁石9を接着固定する。この際、永久磁石9の一端面が作業面201に接するように鉄心材8に永久磁石9に接着していくことにより、永久磁石9の一端面と鉄心材8の一端面とを同じ面上で揃えることができる。
【0075】
これにより、図7(C)に示すように、ロータコアユニット63が組み立てられる。ロータコアユニット63の作業面201に接する面は基準面61となり、基準面61と対向する面は対向面62となる。
【0076】
基準面61は、平坦面となっている。ここで、平坦面とは、鉄心材8を構成する一番下に位置する鋼板81の第2の面812と永久磁石9の一端面とが完全に面一の形態の他、ロータコアユニット63の組立時の誤差による鉄心材8の一端面(ここでは、組立時における鉄心材8を構成する一番下に位置する鋼板81の第2の面812に相当する。)が永久磁石9の一端面よりも0.2mm以下突出した形態も含む。
【0077】
[駆動軸圧入工程]
次に、上述のように組み立てられたロータコアユニット63を2つ積層して、駆動軸321を圧入する駆動軸圧入工程について図8及び図9を用いて説明する。
【0078】
(圧入装置の構成)
まず、駆動軸圧入工程で用いられる圧入装置7の構成について説明する。
図8は、駆動軸圧入工程を説明するための図であり、圧入装置7の概略断面図である。図8において、図面を見やすくするために、各ロータコアユニット63a、63bに設けられている貫通孔841、位置決め用孔821、831の図示は省略している。
【0079】
図9は、圧入装置7の部分斜視図である。図9は、各ロータコアユニット63a、63bの位置決め用孔82a、83a、82b、83bと、各支持台712、722に設けられる位置決め用ピン7122、7123、7222、7223との位置関係を説明する図である。
【0080】
図8及び図9に示すように、圧入装置7は、第1の支持部としての下段用支持部71と、上段用支持部72と、を有する。
【0081】
下段用支持部71は、下段用台座711と、第1の支持台としての下段用支持台712とを有する。
下段用台座711は、下段用支持台712より平面形状が大きく、下段用支持台712を支持する。
下段用支持台712は下段用台座711に設置される。下段用支持台712には、第1の位置決め用支持ピン7122、第2の位置決め用支持ピン7123が設けられる。下段用支持台712は、下段ロータコアユニット63aが設置可能に構成され、下段ロータコアユニット63aの鉄心材8a部分を主に支持する。
下段用台座711及び下段用支持台712には、それぞれ、駆動軸321が挿入可能な貫通孔となっている挿入孔7111、7121が設けられている。
【0082】
下段用支持台712に設けられる第1の位置決め用支持ピン7122及び第2の位置決め用支持ピン7123は、それぞれ、対向面62aが下面、基準面61aが上面に位置する下段ロータコアユニット63aの第1の位置決め用孔821a、第2の位置決め用孔831aに挿入可能な位置に、配置される。
【0083】
上段用支持部72は、上段用台座721と、第2の支持台としての上段用支持台722とを有する。
上段用台座721は、上段用支持台722より平面形状が大きく、上段用支持台722を支持する。
上段用支持台722は上段用台座721に設置される。上段用支持台722には、第1の位置決め用支持ピン7222、第2の位置決め用支持ピン7223が設けられる。上段用支持台722は、上段ロータコアユニット63bが設置可能に構成され、上段ロータコアユニット63bの鉄心材8b部分を主に支持する。
上段用台座721及び上段用支持台722には、それぞれ、駆動軸321が挿入可能な挿入孔7211、7221が設けられている。上段用支持台722に設けられる挿入孔7221は貫通孔であり、上段用台座721に設けられる挿入孔7211は、駆動軸321の挿入限度を規定する底部を有する挿入孔となっている。
【0084】
上段用支持台722に設けられる第1の位置決め用支持ピン7222及び第2の位置決め用支持ピン7223は、それぞれ、対向面62bが上面、基準面61bが下面に位置する上段ロータコアユニット63bの第1の位置決め用孔821b、第2の位置決め用孔831bに挿入可能な位置に、配置される。
【0085】
図9に示すように、上段用支持台722における第1及び第2の位置決め用支持ピン7222及び7223の位置は、下段用支持台712を図面上、上下逆にし、周方向に回転したときの第1及び第2の位置決め用支持ピン7122及び7123の位置と一致する。
上段用支持台722と下段用支持台712とは、上段ロータコアユニット63bと下段ロータコアユニット63aとがスキュー角分、周方向にずれるように、配置されている。
【0086】
このように、上段用支持台722における第1及び第2の位置決め用支持ピン7222及び7223の位置を設定することにより、上述の組立工程で組み立てたロータコアユニット63を、対向面62bを上面とし基準面61bを下面として、上段用支持台722に設置することができる。
【0087】
同様に、下段用支持台712における第1及び第2の位置決め用支持ピン7122及び7123の位置を上述のように設定することにより、上述の組立工程で組み立てたロータコアユニット63を、対向面62aを下面とし基準面61aを上面として、下段用支持台712に設置することができる。
【0088】
以上のように、2枚の鋼板81をその表裏を逆向きにして重ね合わせたときに位置決め用孔82、83が一致しない形状を有する鋼板81を用いたロータコアユニット63を用い、上述のような構成の支持台712、722を有する圧入装置7を用いることにより、一見して、基準面61かどちらか識別困難なロータコアユニット63であっても、単に、位置決め用孔に位置決めピンが挿入可能なようにロータコアユニット63a、63bを圧入装置7に配置すれば、上段ロータコアユニット63bと下段ロータコアユニット63aの互いの基準面61同士が確実に対向配置されるように設置することができる。
【0089】
これにより、基準面61を確認することなくロータコアユニットを圧入装置7に配置することができ、作業性が向上する。更に、確実に基準面61同士が対向するように2つのロータコアユニットを積層することができるので、常に安定した品質のロータ32を得ることができる。
【0090】
(圧入工程の説明)
次に、上述の圧入装置7を用いた駆動軸321の圧入工程について、図8及び図9を用いて説明する。
【0091】
まず、図9に示すように、下段ロータコアユニット63aを、下段用支持台712上に、各位置決め用孔821a831aが位置決め用ピン7122、7123に挿入されるように設置する。
下段ロータコアユニット63aは、図8及び図9に示すように、基準面61aが上側に位置し、対向面62aが下側に位置するように設置される。下段ロータコアユニット63aの貫通孔841aと、下段用支持台712の挿入孔7121及び下段用台座711の挿入孔7111とは連通する。
【0092】
同様に、上段ロータコアユニット63bは、上段用支持台722上に、各位置決め用孔821b831bが位置決め用ピン7222、7223に挿入されるように設置される。
上段ロータコアユニット63bは、基準面61bが下側に位置し、対向面62bが上側に位置するように設置される。上段ロータコアユニット63bの貫通孔841bと、上段用支持台722の挿入孔7221及び上段用台座721の挿入孔7211とは連通する。
【0093】
このように、圧入工程では、上段ロータコアユニット63bと下段ロータコアユニット63aとは、互いの基準面61が対向するように配置される。
【0094】
その後、図8に示すように、下段ロータコアユニット63aに駆動軸321を仮挿入する。駆動軸321は、ナーリング加工がなされている面321より下側の領域が下段ロータコアユニット63a、下段用支持台712、下段用台座711それぞれの挿入孔を貫通して、仮挿入される。
【0095】
その後、上段用支持部72を下側に、下段用支持部71を上側に向かってそれぞれ移動させ、駆動軸321を上段ロータコアユニット63b及び下段ロータコアユニット63aに圧入していく。駆動軸321の圧入時、上段ロータコアユニット63b及び下段ロータコアユニット63aには荷重が加わる。
駆動軸321が、上段ロータコアユニット63bと下段ロータコアユニット63aに圧入されて、ロータ32が形成される。
【0096】
ここで、組立後のロータコアユニット63において、平坦面である基準面61と対向する対向面62は、平坦面となるように設計はされるが、鉄心材8及び永久磁石9それぞれ固有の寸法誤差等により、不可避的に凹凸が生じ得る。
【0097】
例えば、図10(A)に示すロータコアユニット63のように、組立時の組立治具200の作業面201側に位置する基準面61と対向する対向面62において、永久磁石9の他端面よりも鉄心材8が突出したり、図10(B)に示すように、鉄心材8よりも永久磁石9の他端面の方が突出したりする場合がある。このように、平坦面である基準面61に対して、対向面62には不可避的に凹凸が生じ得る。
【0098】
ロータコアユニット63の対向面62に生じる凹凸は、例えば永久磁石9と鉄心材8との差が1mmよりも小さい凹凸であり、一見して、ロータコアユニット63のどちらの面が基準面61かが識別しにくい。
【0099】
上述したように、駆動軸321の圧入工程では、積層された2つのロータコアユニット63に軸方向に荷重がかかって駆動軸321が圧入される。
図10(B)に示す、対向面62が鉄心材8よりも永久磁石9の方が突出するロータコアユニット63を用いてロータ32を製造する場合、図13(B)に示すように、2つのロータコアユニット63a、63bの互いの対向面62同士が対向配置されて圧入工程が行われると、2つのロータコアユニット63a、63bに軸方向に荷重がかかり、互いの永久磁石9が衝突する。永久磁石9は脆い焼結体で形成されているため、圧入工程で永久磁石9が破損してしまう。
【0100】
これに対して、本実施形態では、上述のように、2つのロータコアユニット63a、63bは、確実に、互いの平坦面である基準面61同士が対向配置され当接するように積層されるため、永久磁石9同士が衝突して破損することがなく、安定してロータ32を製造することができる。
【0101】
例えば、図11(A)に示すように、鉄心材8が永久磁石9よりも突出した対向面62を有するロータコアユニット63a、63bを積層しても、互いの平坦面である基準面61同士が当接するように積層されるので、永久磁石9の衝突による破損はない。
同様に、図11(B)に示すように、永久磁石9が鉄心材8よりも突出した対向面62を有するロータコアユニット63a、63bを積層しても、互いの平坦面である基準面61同士が当接するように積層されるので、永久磁石9の衝突による破損はない。
【0102】
尚、図13)に示すように、永久磁石9よりも鉄心材8の方が突出する面同士が対向配置された場合には、永久磁石9同士は衝突しないため、駆動軸圧入工程で永久磁石の破損は生じない。永久磁石9よりも鉄心材8の方が突出する場合であって、このような面同士を対向配置させて2つのロータコアユニット63a、63bを積層する場合、上段のロータコアユニット63bの永久磁石9bと下段のロータコアユニット63aの永久磁石9aとに隙間が生じる。この隙間は、例えば0.4mm以下であることが好ましい。

【0103】
また、本実施形態では、ロータ32を構成する上段ロータコアユニット63bと下段ロータコアユニット63aとを同じ組立治具200で組み立てることができるので、上段用と下段用とでロータコアユニットを別々の組立治具で組み立てる必要がないため、作業効率がよい。
【0104】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0105】
例えば、上述の実施形態においては、鋼板81に設けられる位置決め用孔として、鋼板81の中心からの距離が異なる第1の位置決め用孔82と第2の位置決め用孔83を設ける例をあげたが、これに限定されない。
【0106】
位置決め用孔は、2枚の鋼板をその表裏を逆向きにして重ね合わせたときに、互いの位置決め用孔が一致しないように設けられていればよい。
【0107】
例として、図12に示す鋼板181のように、径の異なる円形の第1の位置決め用孔182と第2の位置決め用孔183を設け、第1の位置決め用孔182と第2の位置決め用孔183とが、鋼板181の中心を対称中心とした点対称の位置関係にないように設けてもよい。この場合、第1の位置決め用孔182と第2の位置決め用孔183とは中心からの距離が同じ位置にあってもよいし、異なる位置にあってもよい。
【0108】
この場合、ロータコアユニットを組み立てる際に用いられる組立治具に設けられる2つの位置決めピン、圧入装置に用いられる各支持台に設けられる2つの位置決めピンには、それぞれ太さが異なるものが用いられる。
【0109】
また、他の例として、形状の異なる第1の位置決め用孔と第2の位置決め用孔を設け、第1の位置決め用孔と第2の位置決め用孔とが、鋼板の中心を対称中心とした点対称の位置関係にないように設けてもよい。この場合、第1の位置決め用孔と第2の位置決め用孔とは中心からの距離が同じ位置にあってもよいし、異なる位置にあってもよい。
【0110】
また、位置決め用孔の数は2つに限定されず3つ以上であってもよい。
【0111】
また以上の実施形態では、電子機器として、車両の電動パワーステアリング装置に用いられる回転電機100を例に挙げて説明したが、他の用途の回転電機(モータ)にも適用可能である。さらに、本発明に係る電子機器は、モータだけでなく、発電機等の他の回転電機にも適用可能であり、加えて、回転電機以外の他の電子機器にも適用可能である。
【符号の説明】
【0112】
8…鉄心材
8a…下段鉄心材(第1の鉄心材)
8b…上段鉄心材(第2の鉄心材)
9…永久磁石、(磁石)
9a…下段永久磁石(第1の永久磁石)
9b…上段永久磁石(第2の永久磁石)
32…ロータ(回転子)
61…基準面
61a…下段ロータコアユニットの基準面(第1の基準面)
61b…上段ロータコアユニットの基準面(第2の基準面)
62…対向面
62a…下段ロータコアユニットの対向面(第1の対向面)
62b…上段ロータコアユニットの対向面(第2の対向面)
63…ロータコアユニット
63a…下段ロータコアユニット(第1のロータコアユニット)
63b…上段ロータコアユニット(第2のロータコアユニット)
81…鋼板(ロータプレート)
82…第1の位置決め用孔(位置決め用孔、第1の位置決め用孔)
83…第2の位置決め用孔(位置決め用孔、第2の位置決め用孔)
84…鋼板の貫通孔(ロータプレートの貫通孔)
201…作業面
321…駆動軸
322…ロータコア
712…下段用支持台(第1の支持台)
722…上段用支持台(第2の支持台)
841a…下段鉄心材の貫通孔(貫通孔)
841b…上段鉄心材の貫通孔(貫通孔)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13