(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】建材用ネット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
E06B 9/52 20060101AFI20230216BHJP
B32B 5/26 20060101ALI20230216BHJP
D04H 1/728 20120101ALI20230216BHJP
【FI】
E06B9/52 F
B32B5/26
D04H1/728
(21)【出願番号】P 2019037329
(22)【出願日】2019-03-01
【審査請求日】2021-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】517008858
【氏名又は名称】株式会社ナフィアス
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 圭
(72)【発明者】
【氏名】大澤 道
(72)【発明者】
【氏名】川久保 淳子
(72)【発明者】
【氏名】松本 晃造
(72)【発明者】
【氏名】山田 司
(72)【発明者】
【氏名】高山 幸久
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-501090(JP,A)
【文献】特開2012-132288(JP,A)
【文献】特表2010-509056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/52- 9/54
B32B 1/00-43/00
D04H 1/00-18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸(縦糸)と緯糸(横糸)からなり、前記経糸と前記緯糸との交点が溶着している網基材と、
接着剤を介さずに前記網基材にナノ繊維が付着しているナノ繊維層とを備え、
前記網基材は、当該網基材に前記ナノ繊維を付着させる際に前記ナノ繊維が裏抜けすることのない粗さのメッシュ数を有し、かつ、前記経糸の繊維径及び前記緯糸の繊維径がいずれも0.10mm~0.30mmの範囲内にあり、
前記ナノ繊維層は、前記ナノ繊維の平均繊維径が300nm~3000nmの範囲内にあり、かつ、目付量が0.05g/m
2~0.5g/m
2の範囲内にあ
り、
前記ナノ繊維は、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂又はポリエーテル系ポリウレタン樹脂からなることを特徴とする建材用ネット。
【請求項2】
前記網基材は、経方向及び緯方向のうちいずれについてもメッシュ数が24メッシュ~44メッシュの範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の建材用ネット。
【請求項3】
前記網基材は、
経方向及び緯方向のうち少なくとも一方についてはメッシュ数が28メッシュ以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の建材用ネット。
【請求項4】
前記ナノ繊維は、黒色のナノ繊維であることを特徴とする
請求項1~3のいずれかに記載の建材用ネット。
【請求項5】
前記経糸及び前記緯糸はいずれも、所定の融点を有する第1樹脂製の芯部材の周囲に、前記第1樹脂よりも低い融点を有する第2樹脂脂製の鞘部材が被覆された芯鞘構造を有するものであることを特徴とする
請求項1~4のいずれかに記載の建材用ネット。
【請求項6】
前記経糸及び前記緯糸はいずれも、ガラス繊維製の芯部材の周囲に樹脂製の鞘部材が被覆された芯鞘構造を有するものであることを特徴とする
請求項1~4のいずれかに記載の建材用ネット。
【請求項7】
経糸(縦糸)と緯糸(横糸)からなり、前記経糸と前記緯糸との交点が溶着している網基材であって、前記経糸の繊維径及び前記緯糸の繊維径がいずれも0.10mm~0.30mmの範囲内にある網基材を準備する網基材準備工程と、
エレクトロスピニング法を用いて、前記網基材の一方の面に、平均繊維径が300nm~3000nmの範囲内にあるナノ繊維からなり、目付量が0.05g/m
2~0.5g/m
2の範囲内にあるナノ繊維層を形成するナノ繊維層形成工程と
、
前記ナノ繊維層形成工程の後に、前記網基材と前記ナノ繊維層との付着力を高くするための熱処理工程と、を含み、
前記網基材準備工程においては、前記網基材に前記ナノ繊維を付着させる際に前記ナノ繊維が裏抜けすることのない粗さのメッシュ数を有する網基材を準備することを特徴とする建材用ネットの製造方法。
【請求項8】
経糸(縦糸)と緯糸(横糸)からなり、前記経糸と前記緯糸との交点が溶着していない網基材であって、前記経糸の繊維径及び前記緯糸の繊維径がいずれも0.10mm~0.30mmの範囲内にある網基材を準備する網基材準備工程と、
エレクトロスピニング法を用いて、前記網基材の一方の面に、平均繊維径が300nm~3000nmの範囲内にあるナノ繊維からなり、目付量が0.05g/m
2~0.5g/m
2の範囲内にあるナノ繊維層を形成するナノ繊維層形成工程と、
前記経糸と前記緯糸との前記交点を溶着するとともに前記網基材と前記ナノ繊維層との付着力を高くするための熱処理工程とを含み、
前記網基材準備工程においては、前記網基材に前記ナノ繊維を付着させる際に前記ナノ繊維が裏抜けすることのない粗さのメッシュ数を有する網基材を準備することを特徴とする建材用ネットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建材用ネット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
花粉症は今や国民病であり、首都圏の花粉症率は47%に上る。花粉症になると、勉強・仕事・家事へ支障をきたす等、QOL(Quality Of Life)の低下をもたらす。花粉症対策としては、「マスクを着用する」、「うがい・手洗いをする」、「顔や眼を洗
う」、「衣服の花粉を落とす」、「外干ししない」、「窓を開けない」、「処方薬・市販薬を服用する」、「花粉症に有効な食材を摂取する」、「健康食品/サプリメントを摂取する」、「花粉ブロックスプレー/クリームを利用する」などの対策があげられる。このうち、「窓を開けない」という対策は全体の23%の人が実行している。
【0003】
しかしながら、「窓を開けない」すなわち「換気を行わない」という対策を採ると空気が汚れる。住宅の高気密化などが進み、化学物質による空気汚染が起こりやすくなっているほか、湿度が高いと細菌、カビ、ダニが繁殖しやすくなるうえ、一般的な石油ストーブやガスストーブからも一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物などの汚染物質が放出されるから、なおさらである。花粉症発症者の95%が2~5月に発症しており、この時期は風邪、インフルエンザの流行と重なるため、換気の重要性が高い時期でもあり、「花粉症のために換気を行わない」のは問題である。そこで、室内への花粉の侵入を防ぎながら換気が可能な窓(網戸)が提案され販売されている(例えば、非特許文献1及び2参照。)。
【0004】
このうち、非特許文献1に記載の網戸は、編目の大きさを従来の網戸よりも小さくしたものであり(約80μm、従来の網戸の約160分の1)、花粉の侵入を80%以上阻止できるとされている。また、非特許文献2に記載の網戸は、インナーネットとアウターネットとの間に特殊フィルターを介装したものであり、花粉に相当する30μm~40μmの粒子を98%以上捕集できるとされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】「クロスキャビンR・クロスキャビンRVT(網戸用ポリエステルハイメッシュ)」、住江織物株式会社、[online]、[平成31年2月22日検索]、インターネット(http://suminoe.jp/products/functional_material/crosscabin.html)
【文献】「花粉やカビ胞子などの迷惑粒子を強力ブロック 空気清浄網戸 ナノキャッチ」、株式会社サンエス、[online]、[平成31年2月18日検索]、インターネット(https://sanesu.net/wp/wp-content/uploads/2017/05/ナノキャッチ.pdf)
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した非特許文献1に記載の網戸は、編目開口部の総面積割合が小さいため、通気性が低く、また、眺望性が極めて低いという問題がある。一方、上記した非特許文献2に記載の網戸は、特殊フィルターが不織布を用いたものであるため、通気性及び眺望性が極めて低いという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、花粉捕集性に優れ、かつ、従来の網戸よりも通気性及び眺望性に優れた建材用ネット及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1]本発明の建材用ネットは、経糸(縦糸)と緯糸(横糸)からなり、前記経糸と前記緯糸との交点が溶着している網基材と、接着剤を介さずに前記網基材にナノ繊維が付着しているナノ繊維層とを備え、前記網基材は、当該網基材に前記ナノ繊維を付着させる際に前記ナノ繊維が裏抜けすることのない粗さのメッシュ数を有し、かつ、前記経糸の繊維径及び前記緯糸の繊維径がいずれも0.10mm~0.30mmの範囲内にあり、前記ナノ繊維層は、前記ナノ繊維の平均繊維径が300nm~3000nmの範囲内にあり、かつ、目付量が0.05g/m2~0.5g/m2の範囲内にあることを特徴とする。
【0010】
本発明の建材用ネットにおいて、ナノ繊維層の目付量を0.05g/m2~0.5g/m2の範囲内としたのは、ナノ繊維層の目付量が0.05g/m2よりも小さい場合には、ナノ繊維層の目が粗すぎて十分高い花粉捕集率が得られなくなる場合があり、ナノ繊維層の目付量が0.5g/m2よりも大きい場合には、ナノ繊維層の目が細かすぎて十分な通気性及び眺望性が得られない場合があるからである。これらの観点から言えば、ナノ繊維層の目付量は、0.08g/m2よりも大きいことが好ましく、0.10g/m2よりも大きいことがより一層好ましい。また、ナノ繊維層の目付量は、0.4g/m2よりも小さいことが好ましく、0.3g/m2よりも小さいことがより一層好ましい。
【0011】
また、本発明の建材用ネットにおいて、網基材を、経糸の繊維径及び緯糸の繊維径がいずれも0.10mm~0.30mmの範囲内にあるものとしたのは、経糸の繊維径及び緯糸の繊維径のいずれかが0.10mmよりも細いものである場合には、経糸及び緯糸のいずれかが細すぎて十分な機械的強度が得られない場合があるからであり、経糸の繊維径及び緯糸の繊維径のいずれかが0.30mmよりも太いものである場合には、経糸及び緯糸のいずれかが太すぎて十分な通気性及び眺望性が得られない場合があるからである。
【0012】
また、本発明の建材用ネットにおいて、網基材を、当該網基材に前記ナノ繊維を付着させる際に前記ナノ繊維が裏抜けすることのない粗さのメッシュ数を有する網基材としたのは、網基材を、当該網基材に前記ナノ繊維を付着させる際に前記ナノ繊維が裏抜けする粗さのメッシュ数を有する網基材とした場合には、網基材に対するナノ繊維の付着密度及び付着強度が十分に高くならず、安定した機械的構造をもった建材用ネットを実現できない場合があるからである。
【0013】
また、本発明の建材用ネットにおいて、網基材を、経糸と緯糸との交点が溶着している網基材としたのは、網基材が、経糸と緯糸との交点が溶着していない網基材である場合には、十分な機械的強度が得られない場合があるからであり、また、建材用ネットの使用時に交点のところにほこりがたまり易くなる場合があるからであり、また、建材用ネットの組み立て時や使用時に経糸と緯糸が動きやすくなり、これに起因してナノ繊維が破断されてしまう場合があるからである。
【0014】
また、本発明の建材用ネットにおいて、ナノ繊維層を、接着剤を介さずに網基材に付着しているナノ繊維層としたのは、ナノ繊維層を、接着剤を介して網基材に付着しているナノ繊維層とした場合には、接着剤が空気や光の通過を妨げてしまい十分な通気性及び眺望性が得られない場合があるからである。
【0015】
また、本発明の建材用ネットにおいて、ナノ繊維の平均繊維径を300nm~3000nmの範囲内としたのは、ナノ繊維の平均繊維径が300nmよりも細い場合には、ナノ繊維層として十分な機械的強度が得られない場合があり、また、網基材とナノ繊維層との間の十分な付着力が得られない場合があるからである。一方、ナノ繊維の平均繊維径が3000nmよりも太い場合には、ナノ繊維が太すぎて十分な通気性及び眺望性が得られない場合があるからである。
【0016】
その結果、本発明の建材用ネットは、花粉捕集性に優れ、かつ、従来の網戸よりも通気性及び眺望性に優れた建材用ネットとなる。
【0017】
なお、網基材にナノ繊維層を付着させた構造を有する網戸自体は知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、特許文献1に記載の網戸においては、網基材に接着剤を介してナノ繊維層を付着させたものである。このため、特許文献1に記載の網戸においては、接着剤が空気や光の通過を妨げてしまい十分な通気性及び眺望性が得られない場合がある。
【0018】
本発明において、メッシュ数とは、網糸1インチ当たりに存在する網目の数をいうものとする。このうち、経方向のメッシュ数とは、経糸1インチ当たりに存在する網目の数をいうものとし、緯方向のメッシュ数とは、緯糸1インチ当たりに存在する網目の数をいうものとする。
【0019】
[2]本発明の建材用ネットにおいては、前記網基材は、経方向及び緯方向のうちいずれについてもメッシュ数が24メッシュ~44メッシュの範囲内にあることが好ましい。
【0020】
本発明の建材用ネットにおいて、網基材のメッシュ数を、経方向及び緯方向のうちいずれについても24メッシュ~44メッシュの範囲内としたのは、網基材のメッシュ数が24メッシュよりも小さい場合には、網基材の目が粗すぎて網目を虫が通過し易くなる場合があり、網基材のメッシュ数が44メッシュよりも大きい場合には、網基材の目が細かすぎて十分な通気性及び眺望性が得られない場合があるからである。これらの観点から言えば、網基材のメッシュ数は、経方向及び緯方向のうちいずれについても26メッシュよりも大きいことが好ましく、28メッシュよりも大きいことがより一層好ましい。また、網基材のメッシュ数は、経方向及び緯方向のうちいずれについても42メッシュよりも小さいことが好ましく、40メッシュよりも小さいことがより一層好ましい。
【0021】
[3]本発明の建材用ネットにおいては、前記網基材は、経方向及び緯方向のうち少なくとも一方についてはメッシュ数が28メッシュ以上であることが好ましい。
【0022】
本発明の建材用ネットにおいて、網基材のメッシュ数を、経方向及び緯方向のうち少なくとも一方については28メッシュ以上としたのは、メッシュ数が経方向及び緯方向のいずれについても28メッシュよりも小さい場合には、経緯のうち少なくとも一方に沿った網糸間の間隔が広くなりすぎてナノ繊維層が裏抜けしてしまい、安定した機械的構造をもった建材用ネットを実現できない場合があるからである。この観点から言えば、網基材のメッシュ数は、経方向及び緯方向のうち少なくとも一方については30メッシュよりも大きいことが好ましく、33メッシュよりも大きいことがより一層好ましい。
【0023】
[4]本発明の建材用ネットにおいては、前記ナノ繊維は、難加水分解性樹脂からなることが好ましい。
【0024】
本発明の建材用ネットは、ナノ繊維が難加水分解性樹脂からなることから、耐候性に優れた建材用ネットとなる。
【0025】
[5]本発明の建材用ネットにおいては、前記ナノ繊維は、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂又はポリエーテル系ポリウレタン樹脂からなることが好ましい。
【0026】
本発明の建材用ネットは、ナノ繊維が、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂又はポリエーテル系ポリウレタン樹脂からなることから、ナノ繊維が難加水分解性樹脂からなるものとなり、耐候性に優れた建材用ネットとなる。また、このように、ナノ繊維が、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂又はポリエーテル系ポリウレタン樹脂からなることから、ナノ繊維が伸縮性・柔軟性のある樹脂からなるものとなり、建材用ネットの組み立て時や使用時にナノ繊維が破断されにくい丈夫な建材用ネットとなる。また、このように、ナノ繊維が、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂又はポリエーテル系ポリウレタン樹脂からなることから、網基材とナノ繊維との付着力が強くなり、これによっても、建材用ネットの組み立て時や使用時にナノ繊維が破断されにくい丈夫な建材用ネットとなる。
【0027】
[6]本発明の建材用ネットにおいては、前記ナノ繊維は、黒色のナノ繊維であることが好ましい。
【0028】
本発明の建材用ネットは、ナノ繊維が、黒色のナノ繊維であることから、ナノ繊維層が目立たなくなり、眺望性に優れた建材用ネットとなる。
【0029】
[7]本発明の建材用ネットにおいては、前記経糸及び前記緯糸はいずれも、所定の融点を有する第1樹脂製の芯部材の周囲に、前記第1樹脂よりも低い融点を有する第2樹脂脂製の鞘部材が被覆された芯鞘構造を有するものであることが好ましい。
【0030】
本発明の建材用ネットは、上記のような芯鞘構造を有するものであるから、経糸と緯糸との交点が溶着した構造を有する建材用ネットを容易に製造可能な建材用ネットとなる。この場合、経糸及び緯糸として、第1樹脂を通常の高融点ポリプロピレンとし、第2樹脂を低融点共重合ポリプロピレンとした芯鞘構造を有する網糸を好適に用いることができる。
【0031】
[8]本発明の建材用ネットにおいては、前記経糸及び前記緯糸はいずれも、ガラス繊維製の芯部材の周囲に樹脂製の鞘部材が被覆された芯鞘構造を有することが好ましい。
【0032】
本発明の建材用ネットは、上記のような芯鞘構造を有するものであるから、上記[7]の場合と同様に、経糸と緯糸との交点が溶着した構造を有する建材用ネットを容易に製造可能な建材用ネットとなる。
【0033】
なお、上記した、本発明の建材用ネットに関する好ましい特徴は、下記の建材用ネットの製造方法にも同様に適用できるものである。
【0034】
[9]本発明の建材用ネットの製造方法は、 経糸(縦糸)と緯糸(横糸)からなり、前記経糸と前記緯糸との交点が溶着している網基材であって、前記経糸の繊維径及び前記緯糸の繊維径がいずれも0.10mm~0.30mmの範囲内にある網基材を準備する網基材準備工程と、エレクトロスピニング法を用いて、前記網基材の一方の面に、平均繊維径が300nm~3000nmの範囲内にあるナノ繊維からなり、目付量が0.05g/m2~0.5g/m2の範囲内にあるナノ繊維層を形成するナノ繊維層形成工程とを含み、前記網基材準備工程においては、前記網基材に前記ナノ繊維を付着させる際に前記ナノ繊維が裏抜けすることのない粗さのメッシュ数を有する網基材を準備することを特徴とする。
【0035】
本発明の建材用ネットの製造方法によれば、エレクトロスピニング時に溶媒成分が網糸の表面に付着した後に揮発する過程でナノ繊維が収縮して網糸としっかり結合するため、接着剤を用いることなく網基材にナノ繊維層を付着させることができ、本発明の建材用ネットを製造するのに好適な建材用ネットの製造方法となる。
【0036】
[10]本発明の建材用ネットの製造方法は、前記ナノ繊維層形成工程の後に、前記網基材と前記ナノ繊維層との付着力を高くするための熱処理工程をさらに含むことが好ましい。
【0037】
このような方法とすることにより、網糸の表面とナノ繊維の表面とが一旦溶融又は軟化されることになり、網基材とナノ繊維層との付着力を高くすることができ、ナノ繊維層が剥がれにくい建材用ネットを製造できる。
【0038】
[11]本発明の建材用ネットの製造方法は、経糸(縦糸)と緯糸(横糸)からなり、前記経糸と前記緯糸との交点が溶着していない網基材であって、前記経糸の繊維径及び前記緯糸の繊維径がいずれも0.10mm~0.30mmの範囲内にある網基材を準備する網基材準備工程と、エレクトロスピニング法を用いて、前記網基材の一方の面に、平均繊維径が300nm~3000nmの範囲内にあるナノ繊維からなり、目付量が0.05g/m2~0.5g/m2の範囲内にあるナノ繊維層を形成するナノ繊維層形成工程と、前記経糸と前記緯糸との前記交点を溶着するとともに前記網基材と前記ナノ繊維層との付着力を高くするための熱処理工程とを含み、前記網基材準備工程においては、前記網基材に前記ナノ繊維を付着させる際に前記ナノ繊維が裏抜けすることのない粗さのメッシュ数を有する網基材を準備することを特徴とする。
【0039】
本発明の建材用ネットの製造方法によれば、エレクトロスピニング時に溶媒成分が網糸の表面に付着した後に揮発する過程でナノ繊維が収縮して網糸としっかり結合するため、接着剤を用いることなく網基材にナノ繊維層を付着させることができ、本発明の建材用ネットを製造するのに好適な建材用ネットの製造方法となる。また、1回の熱処理工程で、経糸と緯糸との交点を溶着するとともに網基材とナノ繊維層との付着力を高くすることができるため、製造コストの安価な建材用ネットの製造方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】実施形態1に係る建材用ネットの要部拡大平面図である。
【
図2】実施形態1に係る建材用ネットの製造方法における工程図である。
【
図3】網基材準備工程を説明するために示す図である。
【
図4】ナノ繊維層形成工程を説明するために示す図である。
【
図5】実施形態2に係る建材用ネットの製造方法における工程図である。
【
図6】ナノ繊維層形成工程を説明するために示す図である。
【
図7】実施形態3に係る建材用ネットの製造方法における工程図である。
【
図8】網基材準備工程を説明するために示す図である。
【
図9】ナノ繊維層形成工程を説明するために示す図である。
【
図10】実施例で用いる各試料(試料1~12)の諸元を示す図表である。
【
図11】試料1~4及び9の要部拡大平面図である。
【
図12】花粉捕集性試験を説明するために示す図である。
【
図13】各試料についての試験結果を示す図表である。
【0041】
以下、本発明の建材用ネット及びその製造方法を図に示す各実施形態を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、各実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。各実施形態においては、基本的な構成および特徴が同じ構成要素については、各実施形態をまたぎ同じ符号を使用し、説明を省略する場合がある。発明の構成要素を表示する図は模式図であり、実際の寸法や比率を必ずしも正確に表現したものではない。
【0042】
[実施形態1]
1.建材用ネット
図1は、実施形態1に係る建材用ネットの要部拡大平面図である。
実施形態1に係る建材用ネット1は、
図1に示すように、経糸3(縦糸)と緯糸4(横糸)からなり、経糸3と緯糸4との交点5が溶着している網基材2と、接着剤を介さずに網基材2にナノ繊維7がランダム状に又はクモの巣状に付着しているナノ繊維層6とを備える。
【0043】
網基材2は、当該網基材に前記ナノ繊維を付着させる際に前記ナノ繊維が裏抜けすることのない粗さのメッシュ数を有し、かつ、経糸の繊維径及び緯糸の繊維径がいずれも0.10mm~0.30mmの範囲内にある。
【0044】
網基材2は、経方向及び緯方向のうちいずれについてもメッシュ数が24メッシュ~44メッシュの範囲内にあり、かつ、経方向及び緯方向のうち少なくとも一方についてはメッシュ数が28メッシュ以上であるものを好適に用いることができる。
【0045】
経糸3及び緯糸4はいずれも、所定の融点を有する第1樹脂製の芯部材の周囲に、第1樹脂よりも低い融点を有する第2樹脂製の鞘部材が被覆された芯鞘構造を有するものである。第1樹脂としては例えば高融点ポリプロピレンを好適に用いることができ、第2樹脂としては例えば低融点共重合ポリプロピレンを好適に用いることができる。
【0046】
ナノ繊維層6は、ナノ繊維7の平均繊維径が300nm~3000nmの範囲内にあり、かつ、目付量が0.05g/m2~0.5g/m2の範囲内にある。
【0047】
ナノ繊維7は、難加水分解性樹脂からなる。ナノ繊維7は、例えば、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂又はポリエーテル系ポリウレタン樹脂からなる。
【0048】
2.建材用ネットの製造方法
図2は、実施形態1に係る建材用ネットの製造方法における工程図である。
図3は、網基材準備工程を説明するために示す図である。
図3(a)は網基材2の平面図であり、
図3(b)はロール状に巻回した状態の網基材2の斜視図である。
図4は、ナノ繊維層形成工程を説明するために示す図である。
【0049】
実施形態1に係る建材用ネットの製造方法は、
図2に示すように、網基材準備工程S11と、ナノ繊維層形成工程S12とを含む。
【0050】
網基材準備工程S11は、経糸(縦糸)と緯糸(横糸)からなり、経糸と緯糸との交点が溶着している網基材であって、当該網基材に前記ナノ繊維を付着させる際に前記ナノ繊維が裏抜けすることのない粗さのメッシュ数を有し、かつ、前記経糸の繊維径及び前記緯糸の繊維径がいずれも0.10mm~0.30mmの範囲内にある網基材(
図3参照。)を準備する工程である。実施形態1においては、網基材として、経方向及び緯方向のうちいずれについてもメッシュ数が24メッシュ~44メッシュの範囲内にあり、かつ、経方向及び緯方向のうち少なくとも一方についてはメッシュ数が28メッシュ以上であるものを好適に用いることができる。
【0051】
ナノ繊維層形成工程S12は、エレクトロスピニング法を用いて、網基材2の一方の面に、平均繊維径が300nm~3000nmの範囲内にあるナノ繊維からなり、目付量が0.05g/m
2~0.5g/m
2の範囲内にあるナノ繊維層を形成する工程である(
図4参照。)。ナノ繊維層の形成は例えばランダム状に(又はクモの巣状)に行う。なお、
図4において、符号10はエレクトロスピニング装置を示し、符号11はタンクを示し、符号12はポリマー溶液を示し、符号13はバルブを示し、符号14は電界紡糸ノズルを示し、符号15が金属コレクタを示し、符号16は引き出しロールを示し、符号17は巻き取りロールを示す。
【0052】
3.実施形態1の効果
実施形態1に係る建材用ネット1は、上記した構成を有していることから、花粉捕集性に優れ、かつ、従来の網戸よりも通気性及び眺望性に優れた建材用ネットとなる。
【0053】
また、実施形態1に係る建材用ネット1は、ナノ繊維が難加水分解性樹脂からなることから、耐候性に優れた建材用ネットとなる。
また、実施形態1に係る建材用ネット1は、ナノ繊維が、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂又はポリエーテル系ポリウレタン樹脂からなることから、ナノ繊維が難加水分解性樹脂からなるものとなり、耐候性に優れた建材用ネットとなる。また、このように、ナノ繊維が、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂又はポリエーテル系ポリウレタン樹脂からなることから、ナノ繊維が伸縮性・柔軟性のある樹脂からなるものとなり、建材用ネットの組み立て時や使用時にナノ繊維が破断されにくい丈夫な建材用ネットとなる。また、このように、ナノ繊維が、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂又はポリエーテル系ポリウレタン樹脂からなることから、網基材とナノ繊維との付着力が強くなり、これによっても、建材用ネットの組み立て時や使用時にナノ繊維が破断されにくい丈夫な建材用ネットとなる。
【0054】
また、実施形態1に係る建材用ネット1は、上記のような芯鞘構造を有するものであるから、経糸と緯糸との交点が溶着した構造を有する建材用ネットを容易に製造可能な建材用ネットとなる。
【0055】
実施形態1に係る建材用ネットの製造方法によれば、エレクトロスピニング時に溶媒成分が網糸の表面に付着した後に揮発する過程でナノ繊維が収縮し網糸としっかり結合するため、接着剤を用いることなく網基材にナノ繊維層を付着させることができ、本発明の建材用ネットを製造するのに好適な建材用ネットの製造方法となる。
【0056】
[実施形態2]
図5は、実施形態2に係る建材用ネットの製造方法における工程図である。
図6は、ナノ繊維層形成工程を説明するために示す図である。
【0057】
実施形態2に係る建材用ネットの製造方法は、基本的には実施形態1に係る建材用ネットの製造方法と同様の工程を含むが、
図5に示すように、ナノ繊維層形成工程S12の後に、網基材とナノ繊維層との付着力を高くするための熱処理工程S13をさらに含む。
【0058】
熱処理工程S13は、エレクトロスピニング法を用いて、網基材2の一方の面にナノ繊維層を形成した後、ロールに巻き取る前に、ナノ繊維層が形成された網基材を上下面から単に加熱することにより行ってもよいし(
図6参照。)、ナノ繊維層が形成された網基材を上下一対の加熱ローラに通すことにより加圧・加熱すること(熱カレンダー加工)により行ってもよい。
【0059】
実施形態2に係る建材用ネットの製造方法によれば、網糸の表面とナノ繊維の表面とが一旦溶融又は軟化されることになり、網基材とナノ繊維層との付着力を高くすることができ、ナノ繊維層の剥がれにくい建材用ネットを製造できる。
【0060】
[実施形態3]
図7は、実施形態3に係る建材用ネットの製造方法における工程図である。
図8は、網基材準備工程を説明するために示す図である。
図9は、ナノ繊維層形成工程を説明するために示す図である。
【0061】
実施形態3に係る建材用ネットの製造方法は、
図7に示すように、基本的には実施形態2に係る建材用ネットの製造方法と同様の工程を含むが、網基材準備工程S21で準備する網基材として、
図8に示すように、経糸3と緯糸4との交点5が溶着していない網基材2aを準備する。そして、ナノ繊維層形成工程S22の後に実施する熱処理工程S23が、網基材2aとナノ繊維層6との付着力を高くするのみならず経糸3と緯糸4との交点5を溶着する。
【0062】
実施形態3に係る建材用ネットの製造方法によれば、エレクトロスピニング時に溶媒成分が網糸の表面に付着した後に揮発する過程でナノ繊維が収縮し網糸としっかり結合するため、接着剤を用いることなく網基材にナノ繊維層を付着させることができ、本発明の建材用ネットを製造するのに好適な建材用ネットの製造方法となる。また、1回の熱処理工程で、経糸と緯糸との交点を溶着するとともに網基材とナノ繊維層との付着力を高くすることができるため、製造コストの安価な建材用ネットの製造方法となる。
【0063】
[実施例]
図10は、実施例で用いる各試料(試料1~12)の諸元を示す図表である。
図11は、試料1~4及び9の要部拡大平面図である。
図12は、花粉捕集性試験を説明するために示す図である。
図13は、各試料についての試験結果を示す図表である。
【0064】
(1)試料の調製
(1-1)試料1
繊維径が0.15mmの黒色のポリプロピレン(PP)/共重合PP(芯鞘構造)を有する糸からなる24×36メッシュの経糸と緯糸の交点が融着している網を網基材として、エレクトロスピニング法により繊維径800nmのポリカーボネート系ポリウレタンナノファイバー(ナノ繊維)を目付量0.05g/m
2で網基材へ直接紡糸を行うことにより建材用ネットを作製した。ポリプロピレン(PP)/共重合PP(芯鞘構造)を有する糸は溶融紡糸法により作製した。24×36メッシュになるよう織機にて網を作製後、熱処理により経糸と緯糸の交点を融着した。交点を融着した網基材をエレクトロスピニング装置の金属コレクタにテープで貼りつけ紡糸を行った。エレクトロスピニングに用いるポリマー溶液は、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂をジメチルアセトアミド(DMAc)に15wt%の濃度になるように溶解して作製した(
図11(a)参照。)。試料1は実施例(実施例1)である。
【0065】
(1-2)試料2
目付量0.10g/m
2で網基材へ直接紡糸を行ったこと以外は試料1の場合と同様にして試料2を作製した(
図11(b)参照。)。試料2は実施例(実施例2)である。
【0066】
(1-3)試料3
目付量0.15g/m
2で網基材へ直接紡糸を行ったこと以外は試料1の場合と同様にして試料3を作製した(
図11(c)参照。)。試料3は実施例(実施例3)である。
【0067】
(1-4)試料4
目付量0.20g/m
2で網基材へ直接紡糸を行ったこと以外は試料1の場合と同様にして試料4を作製した(
図11(d)参照。)。試料4は実施例(実施例4)である。
【0068】
(1-5)試料5
メッシュ数が24×33メッシュの網基材を用いたこと以外は試料4の場合と同様にして試料5を作製した。試料5は実施例(実施例5)である。
【0069】
(1-6)試料6
エレクトロスピニング法によりナノ繊維層を形成した後140℃の熱カレンダ加工による熱処理を行ったこと以外は試料4の場合と同様にして試料6を作製した。試料6は実施例(実施例6)である。
【0070】
(1-7)試料7
網基材として、経糸と緯糸との交点が溶着していない網基材を用いたこと以外は試料6の場合と同様にして試料7を作製した。試料7は実施例(実施例7)である。
【0071】
(1-8)試料8
網基材として、メッシュ数が24×24メッシュのものを用いたこと以外は試料4の場合と同様にして試料8を作製した。試料8は比較例(比較例1)である。
【0072】
(1-9)試料9
メッシュ数が24×36メッシュの網基材にナノ繊維層を付着させないものを試料9とした(
図11(e)参照。)。試料9は比較例(比較例2)である。
【0073】
(1-10)試料10
市販の網戸に用いられている網基材(ブラックネット、ナノ繊維層は付着していない。)をそのまま試料10とした。試料10は比較例(比較例3)である。
【0074】
(1-11)試料11
市販の網戸に用いられている網基材(住江織物株式会社のクロスキャビン、クロスキャビンは帝人フロンティア株式会社の登録商標。)をそのまま試料11とした。試料11は比較例(比較例4)である。
【0075】
(1-12)試料12
メルトブロー法により作製されたポリプロピレン不織布(花粉捕集効率99%のもの)を試料12とした。試料12は比較例(比較例5)である。
【0076】
(2)性能試験及びその結果
上記の各試料を以下の性能試験に供した。
【0077】
(2-1)花粉捕集性試験
試料1~4及び9に対して以下の試験方法により花粉捕集性試験を行った(
図12参照。)。
【0078】
<試験方法>
試験系を一定の空気流量で吸引した状態で、整粒装置により整粒された試験粉体(花粉代替粒子)をフィルタ部の上流側から一定の速度で流す。フィルタ部に捕捉された粒子質量とフィルタ部を通過した粒子質量を測定し、下記式(1)から花粉粒子の捕集(ろ過)効率を算出する。そして、この花粉粒子の捕集効率が、80%以上の場合に「◎:花粉捕集性がとても高い」、50%以上80%未満の場合に「○:花粉捕集性が高い」、50%未満の場合に「×:花粉捕集性が低い」と評価する。
花粉粒子の捕集効率=B/A ・・ 式(1)
但し、Aは「フィルタ部に捕捉された粒子の質量(mg)+フィルタ部を通過した粒子の質量(mg)」であり、Bは「フィルタ部に捕捉された粒子の質量(mg)」である。
【0079】
試験条件は、以下の通り。
・試験粉体(花粉粒子):石松子(APPIE標準粉体)
・試験流量:28.3L/min
・試験粉体量:75±5mg
・試験粉体速度:20±5mg/min
・試験室の温湿度:20±5℃、50±10%RH
[一般社団法人 日本衛生材料工業連合会 全国マスク工業会 規定試験方法 準用]
【0080】
<試験結果>
上記の花粉捕集性試験の結果、花粉粒子の捕集効率は、試料1については59.7%(評価結果○)であり、試料2については82.0%(評価結果◎)であり、試料3については91.0%(評価結果◎)であり、試料4については95.2%(評価結果◎)であり、試料9については25.4%(評価結果×)であった。なお、試料10については、元来花粉捕集性能が低いことが分かっていたため、試験は行っていないが、評価結果を「×」とした。また、試料11及び試料12については、元来花粉捕集性能が高いことが分かっていたため、試験は行っていないが評価結果を「◎」とした。この結果を
図13に示す。
【0081】
(2-2)通気性試験
試料1~4、9及び10に対して、以下の試験方法により通気性試験を行った。
【0082】
<試験方法>
JIS L 1096(一般織物生地試験)A法 フラジール形法に準拠した方法で通気性試験を行った。その際の圧力差は12Pa(小枝が動く程度の風(3.4~5.4m/s))とした。
【0083】
試験手順は、以下の通り。
1.約200mm×200mmの試験片を5枚調整してフラジール形試験機に取り付ける。
2.圧力差12Paの場合に通過する空気量(cm3/cm2・s)を求める。
3.そして、この空気量が、試料10について得られる空気量の50%以上の場合に「◎:通気性がとても高い」、30%以上50%未満の場合に「○:通気性が高い」、30%未満の場合に「×:通気性が低い」と評価する。
【0084】
<試験結果>
上記の通気性試験の結果、圧力差12Paの場合に通過する空気量は、試料1については388.2cc/cm/sec(評価結果◎)であり、試料2については277.4cc/cm/sec(評価結果◎)であり、試料3については183.4cc/cm/sec(評価結果◎)であり、試料4については153.6cc/cm/sec(評価結果○)であり、試料9については523.6cc/cm/sec(評価結果◎)であり、試料10については472.9cc/cm/sec(評価結果◎)であった。なお、試料11及び試料12については、通気性が低いことが分かっていたため、試験は行っていないが評価結果を「×」とした。この結果を
図13に示す。
【0085】
(2-3)眺望性試験
試料1~4及び9~11に対して、以下の試験方法により眺望性試験を行った。
【0086】
<試験方法>
15cm角に切り出した試験片を窓ガラスに対してテープで貼りつけて、窓から2m離れた室内から晴天時の昼間に室外を眺めた際の試験片エリアの眺望性を4段階で評価した。
×:室外の様子がわかりにくい
△:室外の様子がぼやけている
○:室外の様子がわかる
◎:室外の様子がよくわかる
【0087】
<試験結果>
上記の眺望性試験の結果、眺望性は、試料1については「◎」であり、試料2については「◎」であり、試料3については「◎」であり、試料4については「○)であり、試料9については「◎」であり、試料10については「◎」であり、試料11については「△」であり、試料12については「×」であった。この結果を
図13に示す。
【0088】
(2-4)ナノ繊維層の裏抜け現象の有無確認試験
試料4、7及び8に対して、以下の試験方法により、「ナノ繊維層の裏抜け現象の有無確認試験」を行った。
【0089】
<試験方法>
ナノ繊維層の裏抜け現象の有無確認試験」は、具体的には、網基材を金属コレクタに対してテープで貼りつけ、エレクトロスピニング法により網基材に対してナノ繊維を吹き付けた後、金属コレクタから網基材を取り外した際に、ナノ繊維が網基材のメッシュを抜けて金属コレクタへ付着しているか否かを確認することにより行った。その結果、ナノ繊維が金属コレクタに付着していない場合に「裏抜けしていないとして○」の評価を与え、ナノ繊維が金属コレクタに付着している場合に「裏抜けしているとして×」の評価を与えた。
【0090】
<試験結果>
上記の試験の結果、試料4及び7については「○」であり、試料8については「×」であった。この結果を
図13に示す。
【0091】
(2-5)網基材に対するナノ繊維層の付着性試験
試料4、7及び8に対して、以下の試験方法により、「網基材に対するナノ繊維の付着性試験」を行った。
【0092】
<試験方法>
網基材に対するナノ繊維の付着性試験」は、掃除機による吸引により行った。掃除機はIC-C100-W サイクロンクリーナー コンパクト、アイリスオーヤマ製を用いた。試験片は15cm角にカットした。金属板へ試験片を固定し、掃除機のフロアヘッドを外して、パイプにて吸引した。パイプの吸引口は試験片から10mm離して固定した。網基材からナノ繊維層が剥離しているか否かを確認した。網基材からナノ繊維層が剥離していない場合に「付着性が高いとして○」の評価を与え、網基材からナノ繊維層が剥離している場合に「付着性が低いとして×」の評価を与えた。
【0093】
<試験結果>
上記の試験の結果、試料4及び7については「○」であり、試料8については「×」であった。この結果を
図13に示す。
【0094】
(3)総合評価
この結果、各試料のうち試料1~7(請求項1の範囲に入る建材用ネット、実施例1~7)は、花粉捕集性、通気性、眺望性、裏抜けしない性能及び付着性のうちすべての性能に優れた建材用ネットであることが分かった。
【0095】
なお、試料8においては、ナノ繊維の裏抜け現象が認められ、網基材に対するナノ繊維の付着性が低いことが認められたが、試料8と同じ網基材を用いた場合であっても、ナノ繊維層を試料8のものよりも繊維径の太いナノ繊維(例えば3000μm)からなるナノ繊維層とすることによって、ナノ繊維の裏抜け現象が無く、かつ、網基材に対するナノ繊維の付着性が高い建材用ネットを製造可能であることが確認されている。
【0096】
以上、本発明の建材用ネット及びその製造方法を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施することが可能であり、例えば、以下のような変形も可能である。
【0097】
(1)上記各実施形態において示した各要素の寸法、形状、材料は例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲に於いて任意に決定することができる。
【0098】
(2)上記各実施形態においては、ナノ繊維層として、特に着色することのない通常のナノ繊維層を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ナノ繊維として、黒色のナノ繊維を用いることができる。そして、ナノ繊維として、黒色のナノ繊維を用いた場合には、ナノ繊維層が目立たなくなり、より一層眺望性に優れた建材用ネットとなる。この場合、黒色のナノ繊維を作製する方法としては、ナノ繊維を作製するためのナノ繊維顔料含有溶液に黒色顔料を添加する方法、ナノ繊維を黒色溶液で染色する方法、ナノ繊維を構成するモノマーに黒色発色基を導入する方法などを好適に用いることができる。
【0099】
(3)上記各実施形態においては、経糸及び緯糸として、所定の融点を有する第1樹脂製の芯部材の周囲に、第1樹脂よりも低い融点を有する第2樹脂製の鞘部材が被覆された芯鞘構造を有するものを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、経糸及び緯糸として、ガラス繊維製の芯部材の周囲に樹脂製の鞘部材が被覆された芯鞘構造を有するものを用いることもできる。
【0100】
(4)上記実施例においては、網基材として、経方向及び緯方向のメッシュ数が異なる網基材(24メッシュ×36メッシュ、24メッシュ×33メッシュ)を用いた。これは、メッシュ数の大きい(メッシュが細かい)側にて網基材に対するナノ繊維の付着性を確保しつつ、メッシュ数の小さい(メッシュが粗い)側にて通気性及び眺望性を確保する趣旨である。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、網基材として、経方向及び緯方向のメッシュ数が同じ網基材(例えば、30メッシュ×30メッシュのもの、33メッシュ×33メッシュのもの、36メッシュ×36メッシュのものなど)を用いることもできる。このようにすることによっても、網基材に対するナノ繊維の付着性、通気性及び眺望性を確保することができる。
【0101】
(5)本発明においては、経方向及び緯方向のメッシュ数のうちどちらを大きく(メッシュの目を粗く)してもよい。
【0102】
(6)上記実施形態においては、本発明の建材用ネットが花粉捕集性に優れることを説明したが、本発明の建材用ネットは、火山灰捕集性にも優れるものである。また、ナノ繊維層の目付量を増加させることなどにより、塵や埃、または、PM2.5等の環境汚染物質に対する捕集性の高い建材用ネットとすることもできる。
【0103】
(7)上記各実施形態においては、網戸の網に用いる建材用ネットを用いて本発明の建材用ネットを説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明の建材用ネットは、通気口に用いることもできる。
【符号の説明】
【0104】
1…建材用ネット、2…網基材、3…経糸、4…緯糸、5…交点、6…ナノ繊維層、7…ナノ繊維、10,10a,10b…エレクトロスピニング装置、11…タンク、12ポリマー溶液、13…バルブ、14…電界紡糸ノズル、15…金属コレクタ、16…引き出しロール、17…巻き取りロール、18,19…加熱装置