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特許7228197工具、作業管理装置、作業管理方法及び作業管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】工具、作業管理装置、作業管理方法及び作業管理システム
(51)【国際特許分類】
   B25B 23/14 20060101AFI20230216BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
B25B23/14 610B
B25B23/14 620J
G05B19/418 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019558198
(86)(22)【出願日】2018-12-03
(86)【国際出願番号】 JP2018044357
(87)【国際公開番号】W WO2019111846
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2017236253
(32)【優先日】2017-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】510018649
【氏名又は名称】コネクテックジャパン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】110002893
【氏名又は名称】弁理士法人KEN知財総合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100186750
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健司
(72)【発明者】
【氏名】堀川 和俊
(72)【発明者】
【氏名】根橋 徹
(72)【発明者】
【氏名】町田 秀和
(72)【発明者】
【氏名】下石坂 望
(72)【発明者】
【氏名】原田 章弘
(72)【発明者】
【氏名】落石 将彦
(72)【発明者】
【氏名】大和 義昭
(72)【発明者】
【氏名】軽部 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】小艾 睦典
(72)【発明者】
【氏名】篠原 努
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-155848(JP,A)
【文献】特開2006-320984(JP,A)
【文献】国際公開第2017/149623(WO,A1)
【文献】特開2015-179304(JP,A)
【文献】特開2013-132736(JP,A)
【文献】特開2010-046766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 23/14
G05B 19/418
B23P 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビットに作用する締結部品を締め付ける締付トルクを検出可能なトルクセンサを備える工具であって、前記トルクセンサは、検出される締付トルクが設定閾値を越えると締付トルクの測定データの記録を開始し、検出される締付トルクが前記設定閾値よりも下がり、かつ、設定時間を経過すると測定を終了し、測定開始から測定終了までの間の測定時刻を含む測定データに基づくトルク関連データを出力する工具を用いて、製品に含まれる複数の締結部品の各々を締め付ける締付作業を管理する作業管理装置であって、
前記トルク関連データを受信すると、一の締結部品の締付作業中に複数の視点から撮像された前記工具の複数の画像の中から、前記トルク関連データに含まれる測定時刻に対応する複数の画像を抽出して処理し、前記一の締結部品に係合する前記ビットの係合位置を検出する、作業管理装置。
【請求項2】
前記工具は、画像処理用に少なくとも第1のマーカおよび第2のマーカを備え、
前記工具の複数の画像は、少なくとも前記第1および第2のマーカを含む、請求項に記載の作業管理装置。
【請求項3】
ビットに作用する締結部品を締め付ける締付トルクを検出可能なトルクセンサを備える工具であって、前記トルクセンサは、検出される締付トルクが設定閾値を越えると締付トルクの測定データの記録を開始し、検出される締付トルクが前記設定閾値よりも下がり、かつ、設定時間を経過すると測定を終了し、測定開始から測定終了までの間の測定時刻を含む測定データに基づくトルク関連データを出力する工具を用いて、製品に含まれる複数の締結部品の各々を締め付ける締付作業を管理する作業管理方法であって、
前記トルク関連データを受信すると、一の締結部品の締付作業中に複数の視点から撮像された前記工具の複数の画像の中から、前記トルク関連データに含まれる測定時刻に対応する複数の画像を抽出して処理し、前記一の締結部品に係合する前記ビットの係合位置を検出する、作業管理方法。
【請求項4】
製品に含まれる複数の締結部品の各々を締め付ける締付作業を管理する作業管理システムであって、
ビットに作用する締結部品を締め付ける締付トルクを検出可能なトルクセンサを備え、画像処理用の第1および第2のマーカを備える工具を有し、
前記トルクセンサは、検出される締付トルクが設定閾値を越えると締付トルクの測定データの記録を開始し、検出される締付トルクが前記設定閾値よりも下がり、かつ、設定時間を経過すると測定を終了し、測定開始から測定終了までの間の測定データに基づいて形成されたトルク関連データを出力し、
前記製品に対して所定の位置に配置され、締め付け作業中の前記工具の画像を少なくとも前記第1および第2のマーカが含まれるように、かつ、互いに異なる視点から撮像する第1および第2の撮像装置と、
前記第1および第2の撮像装置の撮像する画像を記憶する記憶装置と、
前記トルク関連データを受信すると、一の締結部品の締付作業中に複数の視点から撮像された前記記憶装置に記憶された前記工具の複数の画像の中から、前記トルク関連データに含まれる測定時刻に対応する複数の画像を抽出して処理し、前記一の締結部品に係合する前記ビットの係合位置を検出する処理装置と、を有する作業管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルトなどの締結部品を多数含む装置における締結部品の締付作業に用いるトルクセンサ付きの工具およびこの工具を用いた締付作業を管理する作業管理装置、作業管理方法、および、作業管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセス等の各種製造プロセスにおいては、正確に計量したプロセスガスをプロセスチャンバに供給するために、開閉バルブ、レギュレータ、マスフローコントローラ等の各種の流体機器を集積化した流体制御装置(例えば、特許文献1参照)が用いられている。
上記のような流体制御装置の組立工程においては、膨大な数の六角穴付きボルトなどの締結部品の締付作業が必要であり、かつ、高い組立品質が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-003013号公報
【文献】特開2013-188858号公報
【文献】特開2015-229210号公報
【文献】特開2013-852号公報
【文献】特開2008-181344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2は、トルクレンチに設けた加速度センサ、ジャイロセンサ、地磁気センサ等のセンサからの信号を利用して、締付を行った締結部品の位置を自動的に検出し締付位置を管理する技術を開示している。
特許文献3は、工具により行われる作業箇所を撮像装置で撮像し、この撮像画像データと工具に付加されたトルクセンサ等のセンサからのデータに基づいて作業が正常に行われているかを判断する技術を開示している。
特許文献4は、ワークの上方に撮像装置を設置し、ワークに対して締付工具で締付作業を実施している際に締付工具に付与されたあらかじめ登録された識別マークの有無を撮像データから検出することで、締付作業が実施されたことを検出する技術を開示している。
特許文献5は、道具を用いて行う複数の作業を含む製品の製造工程において、製品のどの位置で作業が行われたかを特定する技術を開示している。具体的には、一つの前記作業が完了したときに出力される完了信号の受信を契機として複数の画像を撮像し、これらの画像から作業完了位置を表す作業完了座標を検出し、作業を行うべき位置である作業位置を表す作業座標を取得し、作業完了座標と作業座標とに基づいて、複数の作業それぞれについての作業位置のうちのいずれに作業完了位置が対応するのかを特定する。
【0005】
上記した流体制御装置は、小型化、集積化が進んでおり、ボルト等の締付部材も短小化しているうえに、流体機器の間のスペースが狭小化している。このため、ボルト等の締付部材の締付作業は、グリップに備わるビット保持部に細長いビットを装着した工具を用いて行われる。例えば、流体機器間の狭小スペースを通じてのみアクセスできるような箇所における締結部品の締付作業は、当該狭小スペースに工具のビット部分のみを差し込み、ビットの姿勢を適宜調整しながら締結部品にビット先端部をかみ合わせ、流体機器から離れた位置にあるグリップを操作してビットを回転させる。
しかしながら、このような工具に特許文献2に開示された締付位置の検出機能を持たせるには、各種のセンサやCPU等を内蔵するケースを装着する必要がある。グリップとビットからなる工具に各種のセンサやCPU等を内蔵するケースを装着するのは困難であり、仮にケースを工具に装着したとしても、ケースが邪魔となって工具の操作性が著しく低下してしまう。加えて、多数のセンサを装着すると、工具の製造コストが高くなる。
特許文献3,4の技術では、流体機器の間の狭小スペースに差し込んだビットの先端部や締付位置を確実に撮像するのは困難であり、撮像中に操作者の手や工具のグリップが撮像領域に入ってしまい、作業箇所や締付位置が隠れてしまう。
特許文献5では、作業位置の特定は可能であるが、ねじを締め付けた実際のトルクデータは得られない。さらに、ねじ締めなどの締付作業において作業者は何度か締め直しをすることがあるため、適切な完了信号を発生させることは容易ではない。更に、1つのねじを締め付ける時間は数秒と短いこと、1つのねじとその隣のねじとの間隔が小さいことから、画像からのみ作業完了を特定することは容易ではない。
【0006】
本発明の一の目的は、組み立てに多数の締結部品を要し、かつ、締結部品にアクセスできるスペースが狭い流体制御装置のような装置における締結部品の締付作業に適しかつ締付トルクの検出が自動化されたトルクセンサ付きの工具を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記のトルクセンサ付き工具を用いた締付作業において、締結部品の全てについて位置や締付トルク等の情報を正確に管理可能な作業管理装置、作業管理方法および作業管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る工具は、ビットに作用する締結部品を締め付ける締付トルクを検出可能なトルクセンサを備える工具であって、
前記トルクセンサは、検出される締付トルクが設定閾値を越えると締付トルクの測定データの記録を開始し、検出される締付トルクが前記設定閾値よりも下がり、かつ、設定時間を経過すると測定を終了し、測定開始から測定終了までの間の測定データに基づいて形成されかつ測定時刻を含むトルク関連データを出力する。
【0008】
好適には、前記トルク関連データは、前記測定データの中のピーク値を含む、構成を採用でき、前記トルク関連データは、データを測定した日時情報およびデータを測定した際の温度情報を含む、構成を採用でき、また工具は、画像処理用に少なくとも第1および第2のマーカを備える、構成を採用できる。
【0009】
本発明に係る作業管理装置は、上記構成の工具を用いて、製品に含まれる複数の締結部品の各々を締め付ける締付作業を管理する作業管理装置であって、
前記トルク関連データを受信すると、一の締結部品の締付作業中に複数の視点から撮像された前記工具の複数の画像の中から、前記トルク関連データに含まれる測定時刻に対応する複数の画像を抽出して処理し、前記一の締結部品に係合する前記ビットの係合位置を検出する。
【0010】
本発明の作業管理方法は、上記構成の工具を用いて、製品に含まれる複数の締結部品の各々を締め付ける締付作業を管理する作業管理方法であって、
前記トルク関連データを受信すると、一の締結部品の締付作業中に複数の視点から撮像された前記工具の複数の画像の中から、前記トルク関連データに含まれる測定時刻に対応する複数の画像を抽出して処理し、前記一の締結部品に係合する前記ビットの係合位置を検出する。
【0011】
本発明の作業管理システムは、製品に含まれる複数の締結部品の各々を締め付ける締付作業を管理する作業管理システムであって、
ビットに作用する締結部品を締め付ける締付トルクを検出可能なトルクセンサを備え、画像処理用の第1および第2のマーカを備える工具を有し、
前記トルクセンサは、検出される締付トルクが設定閾値を越えると締付トルクの測定データの記録を開始し、検出される締付トルクが前記設定閾値よりも下がり、かつ、設定時間を経過すると測定を終了し、測定開始から測定終了までの間の測定データに基づいて形成されたトルク関連データを出力し、
前記製品に対して所定の位置に配置され、締め付け作業中の前記工具の画像を少なくとも前記第1および第2のマーカが含まれるように、かつ、互いに異なる視点から撮像する第1および第2の撮像装置と、
前記第1および第2の撮像装置の撮像する画像を記憶する記憶装置と、
前記トルク関連データを受信すると、一の締結部品の締付作業中に複数の視点から撮像された前記記憶装置に記憶された前記工具の複数の画像の中から、前記トルク関連データに含まれる測定時刻に対応する複数の画像を抽出して処理し、前記一の締結部品に係合する前記ビットの係合位置を検出する処理装置と、を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、締結部品にアクセスできるスペースが狭い流体制御装置のような装置における締結部品の締付作業に適しかつ締付トルクの検出が自動化されたトルクセンサ付きの工具が得られる。
本発明によれば、流体制御装置のような装置における締結部品の全てについて位置や締付トルク等の情報を正確に管理可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る作業管理システムの外観斜視図。
図2】流体制御装置の一例を示す外観斜視図。
図3図2の流体制御装置の側面図。
図4A】本発明の一実施形態に係る工具の外観斜視図。
図4B】グリップ部の外観斜視図。
図4C】ビットの外観斜視図。
図4D】工具のトルクセンサ部分の縦断面図。
図5A】トルクセンサの回路図。
図5B】トルクセンサのアナログ回路部分の機能ブロック図。
図6】複数回の締付作業を実施した際のトルクセンサの処理の一例を示すタイミングチャート。
図7】1回の締め付け作業におけるトルクセンサにおける各種信号の一例を示すタイミングチャート。
図8】処理装置における処理の一例を示すフローチャート。
図9】画像処理によりビット先端位置を検出する方法の説明図。
図10】本発明の他の実施形態に係る作業管理システムの外観斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面においては、機能が実質的に同様の構成要素には、同じ符号を使用することにより重複した説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る作業管理システムを示しており、このシステムは、工具としてのドライバ1と、処理装置としてのパーソナルコンピュータ(以下、PCと言う)300と、撮像装置としてのカメラ400A,400Bとを有する。図1において、製品であるガスボックス500の内部は省略しているが、図2および図3に示す流体制御装置200が底面500bに設置される。すなわち、流体制御装置200がガスボックス500内に収容された状態で組み立て作業が実施される。なお、図1における矢印A1は水平面内における横方向、矢印A2は水平面内における縦方向を示している。
【0015】
図2,3に示す流体制御装置200は、半導体製造装置等の反応器へ各種のガスを供給するために使用され、ベース板金BS上には、それぞれ長手方向に沿って配置された自動バルブやマスフローコントローラからなる各種流体機器210,220,230,240,280,250で構成される流体制御アセンブリが複数(図では3列)に並列されている。
ベース板金BS上に設けられた複数の継手ブロック260,270は各種流体機器間を接続する流路を備えている。流体機器のボディと継手ブロック260,270とは、締付部品としての六角穴付きボルトBTで連結される。
ドライバ1は、六角穴付きボルトBTの締付作業に使用される。各種流体機器が集積化されていると、六角穴付きボルトBTを締め付ける際に、流体機器とドライバ1のビットが干渉しないように、六角穴付きボルトBTに対してドライバ1を傾斜させながら締め付ける場合がある。このような作業を多数の六角穴付きボルトBTについて正確な締付トルクで実施するのは容易ではない。
【0016】
図1に戻って、カメラ400Aは、視点が横方向A1を向いており、後述するように、工具1に設けられたマーカが撮像できる位置に配置されている。カメラ400Bは、視点が縦方向A2を向いており、後述するように、工具1に設けられたマーカが撮像できる位置に配置されている。カメラ400A,400Bは、所定のフレームレートで撮像可能であり、撮像された画像データは無線信号としてPC300に送信され、記憶される。カメラ400A,400Bは、ガスボックス500の外部に設置されているため、ドライバ1の六角穴付きボルトBTの締付作業中に、ドライバ1のビットの先端位置および六角穴付きボルトBTがカメラ400A,400Bの視野に入らない場合もあり得る。
【0017】
図4A図4Dにドライバ1の構造を示す。
ドライバ1は、グリップ10、ビット20、トルクセンサ30を有する。ドライバ1は六角穴付きのボルト(締結部品)の締結に用いられ、最大締付トルクが10N・m以下の範囲で用いられるが、これに限定されるわけではない。
締結部品は、六角穴付きボルト、六角ボルト、十字穴付きネジなどが用いられるが、これらに限られない。
グリップ10は、図4Bに示すように、樹脂等の材料からなる円柱状の部材であり、外周面に滑り止め用の複数条の溝が形成された本体部11と、先端部に形成された円筒状のビット保持部12、本体部11とビット保持部12との間に形成され、トルクセンサ30を着脱自在に装着するセンサ装着部13とを有する。ビット保持部12には、断面が正六角形状のブラインドホールからなる保持穴12aが形成され、これにビット20が挿入保持される。補助バー19は、グリップ10に直交するように設けられている。グリップ10に補助バー19を設けることで、より大きな締緩トルクを手動で生み出すことができる。
【0018】
ビット20は、図4Cに示すように、上記のグリップ10のビット保持部12に挿入保持される断面が正六角形状の基端部22と、基端部22とは反対側の先端部21と、基端部22と先端部21との間で延びる軸部23とを有する。先端部21および軸部23の六角形状の断面は同一寸法に形成されている。先端部21および軸部23の断面積は、基端部22よりも小さくなっている。先端部21が六角穴付きボルトの六角穴に係合する。軸部23の基端部22寄りの一部は、トルクセンサ30により検出される被検出部24となっている。
ビット20は、具体的には、炭素鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、クロムバナジウム鋼等の合金鋼で形成されている。
被検出部24には、磁歪材料が形成されており、検出感度を高めるために、例えば、Ni(40%)-Fe(60%)のメッキが施されている。
ビット20の寸法は、例えば、基端部22の断面に内接する円の直径が10mm以下で、軸部23の断面に内接する円の直径が4mm程度であり、全長は200mm程度であるが、これに限定されるわけではなく、作業性、操作性を考慮して適宜選択される。
ビット20は、軸部23と被検出部24が一体に形成されていても良く、分割できるようになっていても良い。
【0019】
トルクセンサ30は、図4Dに示すように、ケース部31、装着部32、検出部33、回路収容部35を有する。
検出部33は、その中心部に貫通孔33aが形成され、この貫通孔33a内をビット20が貫通する。検出部33の内部には、貫通孔33aの一部を画定するように円筒状のコイル保持部33bが形成され、外周面に励磁・検出用のコイル36が設けられている。検出部33を貫通すするビット20の被検出部24はコイル36によって外周が包囲される。
ケース部31、装着部32、検出部33は樹脂材料により一体的に形成され、ケース部31の内部には空洞39が形成されている。空洞39は、装着部32を通じてグリップ10のビット保持部12を収容可能となっている。
円筒状に形成された装着部32は、グリップ10のセンサ装着部13が内周に嵌合し、図示しないねじ部材により、センサ装着部13に固定される。
回路収容部35は、後述するように、マイクロコンピュータ、メモリ、バッテリー、外部入出力回路、通信回路、トルク検出用の各種回路等から構成されるハードウエアを収容し、メモリにストアーされた所要のソフトウエアにより動作する。
【0020】
ドライバ1は、グリップ10にビット20を装着した状態で後からトルクセンサ30を取付け可能となっている。このため、グリップ10およびビット20が従来から使用されていた汎用的な工具であるとすると、トルクセンサ30を後付けすることで、工具の作業性、操作性を損なうことなくビット20に作用するトルク検出が可能となる。
なお、本実施形態では、トルクセンサ30を後付け可能な場合を例示するが、グリップ10に予めトルクセンサ30を取付け、その後に、グリップ10にビット20を装着する構成も採用可能である。
【0021】
図5Aは、トルクセンサ30の回路図である。
図5Aにおいて、50は励磁コイル,51は検出コイル、52はトルクに比例した電圧を出力するアナログ回路、53はDC・DCコンバータ、54は比較器、55は基準電圧設定回路である。60はマイクロコンピュータ(以下、マイコン)、61はアナログ-ディジタルコンバータ(以下、ADC)、62は温度センサ、63はリアルタイムクロック、64はシリアルバス、65は通信モジュール、66はリードオンリーメモリ(ROM)、67はデータ入力端子、68はメモリカード、69はリセットIC、70はDC・DCコンバータ、71はキャリブレーションスイッチ、72は電源スイッチ、73はバッテリー、74は充電制御回路、75は充電コネクタである。
【0022】
ここで、図5Aの励磁コイル50,検出コイル51およびアナログ回路52のアナログ回路部分の機能ブロック図を図5Bに示す。
トルクセンサ30は、発振回路110、バッファーアンプ120、位相調整回路130、V-Iコンバータ140、インバータ160、同期検波回路170、および、反転増幅器180を有する。
(励磁側)
発振回路110は、励磁コイル50を励磁する基準周波数信号(例えば、100kHz)を生成する。
発振回路110から励磁側回路には正弦波として信号が出力されるが、発振回路110を安定動作させるため、バッファーアンプ120を経由して位相調整回路130に出力される。
位相調整回路130は、波形の位相を調整し、V-Iコンバータ140に出力する。
V-Iコンバータ140は、入力電圧を電流に変換し、励磁コイル50に出力する。
(検出側)
検出コイル51は、逆磁歪効果により発生した誘起電圧を同期検波回路170に出力する。
発振回路110から検出側へは、参照信号として矩形波が出力される。この矩形波の周波数は、励磁側へ出力される正弦波と同じである。出力された矩形波は2つに分岐され、一方はそのまま同期検波回路170へ出力され、他方はインバータ160で位相を反転され同期検波回路170へ出力される。
同期検波回路170は、参照信号を参照して、検出コイル51からの誘起電圧を同期検波し、反転増幅器180へ出力する。
反転増幅器180は、同期検波回路170からの出力を平均化し、オフセット調整、ゲイン調整を行い、アナログのトルク信号SGとしてADC61に出力する。同期検波回路170及び反転増幅器180が、上述したアナログ回路52を構成する。
【0023】
上記したようにトルクセンサ30では、ビット20の被検出部に作用するトルク変化を、ビット20を形成する磁歪材料の透磁率の変化として励磁コイル50および検出コイル51で検出する。
ビット20で、締結部品を締付けているトルクを測定するには、ビットに作用するトルクを検出すれば良い。
ビットに作用するトルクを検出するには、逆磁歪効果を利用するが、印加トルクによる軸(被検出部)表面の透磁率変化を、軸(被検出部)を取りまくソレノイドコイルのインピーダンス変化に換算し、ブリッジ回路の非平衡電圧として検出する必要がある。
軸(被検出部)の表面に作用する応力(歪み)と、軸(被検出部)の直径との関係は以下の式で表わされる。
【0024】
σ=16T/(πD
【0025】
ここで、σは軸(被検出部)表面の応力(歪み)、Tは軸(被検出部)に作用するトルク、Dは軸(被検出部)の直径である。
すなわち、軸(被検出部)の径の異なるビットに同じトルクが印加された場合、軸(被検出部)の径が小さなビットの方が、軸(被検出部)表面の応力(歪み)は著しく大きくなる。
軸(被検出部)表面の応力(歪み)は、軸(被検出部)表面の透磁率を変化させる。
透磁率の変化は、外部からの力に応じ、原子サイズで構成されている微小磁石の向きが変化することで起こるが、微小磁石の向きが揃い切ってしまうとそれ以上は変化しない(飽和状態)。
ビット(軸)に印加されたトルクを精密に検出するには、印加されるトルクの範囲で、透磁率の変化がリニアであることが望ましい。
【0026】
マイコン60は、シリアルバス64を介して、ADC61、温度センサ62、リアルタイムクロック63、通信モジュール65との間で各種のデジタルデータを授受する。
通信モジュール65は、PCとの間で、データを送受信する。
ROM66は、マイコン60が読み出し可能に、補正値データやキャリブレーションデータを格納している。
データ入力端子67は、プログラムやクロック信号をマイコン60に入力するために設けられている。
【0027】
比較器54の一方の入力端子には、アナログのトルク信号が入力され、他方の入力端子には、基準電圧設定回路55から基準電圧(閾値)が入力され、トルク信号が基準電圧を超えると、後述するように、測定トリガー信号をマイコン60のP1端子に出力する。
【0028】
次に、図6および図7を参照して、トルクセンサ30の回路の作用について説明する。なお、図6は、複数のボルトBTを順に締め付けた際のトルクセンサ30の動作を示すタイミングチャートであり、図7は、図6の最初のトルク測定におけるトルクセンサ30の動作をより詳細に示すタイミングチャートである。
上記したADC61は、例えば、12ビットで構成され、1mvを1ビットとすると、0~4.096Vの範囲で出力できる。本実施形態では、設定閾値Thは、例えば、基準電圧設定回路55により2.0Vに初期設定されている。
図5Aに示した電源スイッチ72を図6の(1)に示すようにオン(導通状態)にすると、リセットIC69からマイコン60にリセット信号が図6の(2)に示すように入力される。
工具1を用いて流体制御装置200の六角穴付きボルトBTの一つを締め付けていきトルク信号(アナログ入力)の電圧が設定閾値Thを超えると(図7の(1))、比較器54から測定トリガー信号が発生し、マイコン60のP1端子に入力される。
マイコン60では、P1端子に測定トリガー信号が入力されると、測定記録期間信号(図7の(4))がオンする。測定記録期間信号がオンされると、マイコン60はトルク信号のADC61のデジタル出力(図7の(3))の記録(サンプリング)を開始する。
マイコン60では、読み込んだデジタル出力を検出し、これを記憶する(図7の(5))。
アナログ入力が設定閾値Thを下まわると、測定トリガー信号がオフとなり(図7の(2))、トルク信号のADC61のデジタル出力の記録が停止される。アナログ入力が設定閾値Thを下まわり、かつ、あらかじめ設定した設定時間T1(例えば、0.5秒)を経過すると、測定記録期間信号がオフとなる(図7の(4))。これにより、一のボルトBTの締付トルクの測定が終了する。
図7の例では、デジタル出力のピーク値の値が、2993、3051、2989と3つ検出されている。そして、マイコン60では、3つのピーク値の最大値(3051)を検出する(図7の(6))。本実施形態では、このピーク値の最大値をトルクセンサ30の締付完了トルクとする。
次いで、後述するように、このトルクの最大値を含むトルク関連情報を形成し、この最大値を含むトルク関連情報をメモリカード68に格納するとともに、通信モジュール65を通じてPC300に送信する。
【0029】
図6に戻って、各締付作業毎にトルク信号の最大値を検出し(図6の(3),(4))、各トルク信号の測定時の温度を検出し(図6の(5))、(図6の(7))に示すように、トルク関連データを形成する。具体的には、トルク関連データは、測定時刻(測定日時)、トルク信号の最大値(ピーク値)を実際のトルク値に換算した値、および、測定時の温度を含む。トルク関連データは、パワーオン時には、トルク値のデータはゼロとなっており、1回目は3.051N・m、2回目は3.015N・m、3回目は3.011N・mとなっている。
【0030】
次に、PC300における処理の一例について図8を参照して説明する。
PC300では、トルクセンサ30からトルク関連データを受信したかを常時監視しており(ステップS1)、受信した場合には、当該トルク関連データからトルクを測定した測定時刻(日時)を読み出す(ステップS2)。
PC300は、カメラ400A,400Bからの画像を記録するフレームバッファを備えており、締付作業の画像は作業の進行に伴ってPC300に記憶されていく。PC300に記憶された画像データを遡り、ステップS2で読み出した時刻に対応するカメラ400A,400Bがそれぞれ撮像した画像データを抽出する。すなわち、これら2つの画像は、ボルトBTの締付完了時の工具の画像である。これらの画像データを処理し、図9に示すように、工具1に設けたマーカMKAとマーカMKBの画像の重心位置CGA,CGBを検出し、重心位置CGA,CGBを結ぶ直線上にビット20の先端座標20Pが存在する。これにより、ビット20の先端座標が検出される(ステップS5)。なお、本実施形態では、マーカMKAとマーカMKBは、周囲の環境からの外乱を受けにくい緑色とした。
次いで、検出したビット20の先端座標、温度データ、締付完了トルク値等のデータを関係づけて
記憶装置に記録する。これにより、流体制御装置200におけるすべてのボルトBTの締付作業の有無、締付トルク等の作業情報を常に正確にトレースすることが可能となる。
【0031】
本実施形態では、上記したように、ビットの先端座標を取得するための画像データを常時撮像しつつ、これとは独立にトルクセンサ30から取得されるトルク関連データを取得する。そして、取得したトルク関連データとこれと時間的に適合する画像データから得られるビット20の先端座標データとを関連付けることで、正確な作業情報を獲得できる。
例えば、工具による締め付け作業が完了したのちに完了信号を発生させ、この完了信号を契機として工具の撮像を開始し、撮像した画像データを処理して工具等の位置座標を算出したのでは、作業が完了した時点と工具等の位置座標を算出した時点との間にずれが生じ、算出した位置座標が作業が完了した時点の工具等の位置座標とは限らない。
本発明では、算出されるビット20の先端座標データと取得されるトルク関連データとの間に時間的な乖離がないため、より正確な作業データが得られる。
【0032】
図10に本発明の他の実施形態に係る作業管理システムを示す。
図10に示すシステムは、PC300とカメラ400A,400Bとが通信ケーブルCA,CBで接続されている。このように、無線の代わりに有線でも工具1の画像を取得することができる。
【0033】
カメラ400A,400Bの設置位置は、上記実施形態のように2台の場合、カメラ400Aの視点方向とカメラ400Bの視点方向が、直交することが望ましい。撮像範囲は、作業者が作業開始してから、流体制御装置200の全ての六角穴付きのボルト(締結部品)の締付けを完了するまでの間、工具1に設けたマーカMKAとマーカMKBが撮像されていれば良い。作業者の全身やガスボックス500、流体制御装置200が撮像される必要はない。
【0034】
上記実施形態では、トルク信号のピーク値の最大値を工具1からPC300に送信したが、本発明はこれに限定されるわけではない。例えば、ピーク値の最大値以外に、最初のピーク値または最後のピーク値を締付完了トルクとすることもでき、ピーク値の平均値を採用することも可能である。
また、上記実施形態では、締付けトルクの測定データを工具1に記録しPC300に送信しているが、工具1では記録せずに、測定データの送信のみ行い、PC300において記録、ピーク値の検出を行うことも可能である。
【0035】
上記実施形態では、撮像した画像データをフレームバッファに記憶し、このフレームバッファから必要な画像データを抽出し、画像処理により座標データを算出したが、本発明はこれに限定されるわけではない。覚三された画像データを逐次画像処理して座標データ等を算出し、これを時系列に記憶しておき、この時系列データとトルク関連データとを関連付けることも可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 :ドライバ(工具)
10 :グリップ
11 :本体部
12 :ビット保持部
12a :保持穴
13 :センサ装着部
19 :補助バー
20 :ビット
20P :先端座標
21 :先端部
22 :基端部
23 :軸部
24 :被検出部
30 :トルクセンサ
31 :ケース部
32 :装着部
33 :検出部
33a :貫通孔
33b :コイル保持部
35 :回路収容部
36 :コイル
39 :空洞
50 :励磁コイル
51 :検出コイル
52 :アナログ回路
53,70:DC・DCコンバータ
54 :比較器
55 :基準電圧設定回路
60 :マイクロコンピュータ(マイコン)
61 :アナログ-ディジタルコンバータ(ADC)
62 :温度センサ
63 :リアルタイムクロック
64 :シリアルバス
65 :通信モジュール
66 :ROM
67 :データ入力端子
68 :メモリカード
69 :リセットIC
71 :キャリブレーションスイッチ
72 :電源スイッチ
73 :バッテリー
74 :充電制御回路
75 :充電コネクタ
110 :発振回路
120 :バッファーアンプ
130 :位相調整回路
140 :V-Iコンバータ
160 :インバータ
170 :同期検波回路
180 :反転増幅器
200 :流体制御装置
210,220,230,240,250,280:流体機器
260,270:継手ブロック
300 :PC(処理装置)
400A,400B:カメラ(撮像装置)
500 :ガスボックス
500b :底面
BS :ベース板金
BT :六角穴付きボルト
CA,CB:通信ケーブル
CGA,CGB :重心位置
MKA,MKB :マーカ
SG :トルク信号
T1 :設定時間
Th :設定閾値
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10