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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】光学材料
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20230216BHJP
   G02C 7/10 20060101ALI20230216BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20230216BHJP
   C08G 18/38 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
G02B5/22
G02C7/10
C09B67/20 F
C08G18/38 076
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021514238
(86)(22)【出願日】2020-04-17
(86)【国際出願番号】 JP2020016890
(87)【国際公開番号】W WO2020213717
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】P 2019079856
(32)【優先日】2019-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391007507
【氏名又は名称】伊藤光学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 勇輔
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 伸介
(72)【発明者】
【氏名】小田 博文
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-123236(JP,A)
【文献】特開2012-058643(JP,A)
【文献】特開2003-084242(JP,A)
【文献】特開平07-306387(JP,A)
【文献】国際公開第2014/011581(WO,A2)
【文献】中国特許出願公開第102830506(CN,A)
【文献】特開2018-087868(JP,A)
【文献】台湾特許公告第000633201(TW,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/22
G02C 7/10
C09B 67/20
C08G 18/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み2mmで測定した透過率曲線が以下(1)の特性を満たし、かつ視感透過率が以下(2)の特性を満たし、
さらに、厚み2mmで測定したCIE1976(L*,a*,b*)色空間における色相が、以下(3)の特性を満たす、光学材料;
(1)波長410nm~450nmにおける最大の透過率が20%以上65%以下である。
(2)視感透過率が70%以上85%以下である。
(3)CIE1976(L*,a*,b*)色空間における色相が、a*が2.6以上4.0以下であり、b*が10以上15以下である。
【請求項2】
さらに、厚み2mmで測定したYIが、以下(4)の特性を満たす、請求項に記載の光学材料;
(4)YIが、10以上35以下である。
【請求項3】
波長410nm~450nmの波長帯の平均透過率が、35%以上65%以下である、請求項1又は請求項に記載の光学材料。
【請求項4】
波長399nm以下の波長の透過率が1%以下である、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の光学材料。
【請求項5】
波長680nm~800nmの波長帯の平均透過率が90%以上である、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の光学材料。
【請求項6】
波長680nm~800nmの波長の透過率が90%以上である、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の光学材料。
【請求項7】
波長450nm~700nmの波長において、波長に略比例して透過率が増加し、
波長450nmにおける透過率が50%以上であり、かつ、波長700nmの波長における透過率が、95%以上である、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の光学材料。
【請求項8】
波長450nm~700nmの波長帯の平均透過率が、70%以上85%以下である、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の光学材料。
【請求項9】
少なくとも1種類の色素により着色された、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の光学材料。
【請求項10】
イソシアネート化合物(A)由来の構成成分と、
2以上のメルカプト基を有するポリチオール化合物、1以上のメルカプト基と1以上の水酸基を有するヒドロキシチオール化合物、2以上の水酸基を有するポリオール化合物、及びアミン化合物からなる群から選択される少なくとも一種の活性水素化合物(B)由来の構成成分とからなる樹脂を含む、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の光学材料。
【請求項11】
前記イソシアネート化合物(A)が、脂肪族イソシアネート化合物、脂環族イソシアネート化合物、芳香族イソシアネート化合物、複素環イソシアネート化合物、及び芳香脂肪族イソシアネート化合物から選択される少なくとも一種を含む、請求項10に記載の光学材料。
【請求項12】
前記イソシアネート化合物(A)は、キシレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネートからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項10に記載の光学材料。
【請求項13】
前記ポリチオール化合物は、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、3-メルカプトメチル-1,5-ジメルカプト-2,4-ジチアペンタン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、及びエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項10に記載の光学材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、特定の波長の光をカットする光学材料に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックレンズは、無機レンズに比べ軽量で割れ難く、染色が可能なため、眼鏡レンズ、カメラレンズ等の光学材料に急速に普及してきている。
近年では、特定波長の光の透過を抑制することにより、眼への影響を軽減する眼鏡レンズの開発が行われている。
【0003】
特許文献1には、概日リズムを維持するために420nmを含む波長域の光を遮断する光学フィルターを有する機器について開示されている。しかしながら、片頭痛に対する効果や、外観上許容可能な色相について開示されていない。
【0004】
特許文献1:特表2010-535538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
哺乳類の網膜上には、光受容器として、桿体、錐体(S錐体、M錐体、L錐体)、内因性光感受性網膜神経節細胞(intrinsically photosensitive retinal ganglion cell: ipRGC)が存在する。片頭痛の症状のひとつとして、頭痛時に光を過敏に感じる光過敏の症状を有する場合が多いが、片頭痛の光過敏に眼の光受容体が関与している可能性が示唆されている。
【0006】
S錐体は、波長域420nm付近の青色成分光に強く反応することから、波長域420nm付近の青色成分光の透過率が低いレンズを有する眼鏡やサングラスなどのアイウェアを使用することで、使用者の片頭痛の予防・軽減の効果が期待される。
【0007】
さらに、光過敏の症状を有する片頭痛患者においては、眩しさを感じやすい場合があることから、所定の視感透過率(遮光性)を有しながらも、外観上許容できる自然な色相のレンズに対するニーズもあった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討の結果、透過率曲線及び視感透過率を所定の範囲とすることにより、光過敏による片頭痛を軽減することができ、さらに自然な色相のレンズを提供することができることを見出し、本開示の発明を完成させた。
すなわち、本開示は、以下に示すことができる。
【0009】
[1] 厚み2mmで測定した透過率曲線が以下(1)の特性を満たし、かつ視感透過率が以下(2)の特性を満たす、光学材料;
(1)波長410nm~450nmにおける最大の透過率が20%以上65%以下である。
(2)視感透過率が70%以上85%以下である。
[2] さらに、厚み2mmで測定したCIE1976(L*,a*,b*)色空間における色相が、以下(3)の特性を満たす、[1]に記載の光学材料;
(3)CIE1976(L*,a*,b*)色空間における色相が、a*が2.4以上5.5以下であり、b*が5以上15以下である。
[3] さらに、厚み2mmで測定したYIが、以下(4)の特性を満たす、[2]に記載の光学材料;
(4)YIが、10以上35以下である。
[4] 波長410nm~450nmの波長帯の平均透過率が、35%以上65%以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の光学材料。
[5] 波長399nm以下の波長の透過率が1%以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の光学材料。
[6] 波長680nm~800nmの波長帯の平均透過率が90%以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の光学材料。
[7] 波長680nm~800nmの波長の透過率が90%以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の光学材料。
[8] 波長450nm~700nmの波長において、波長に略比例して透過率が増加し、
波長450nmにおける透過率が50%以上であり、かつ、波長700nmの波長における透過率が、95%以上である、[1]~[6]のいずれかに記載の光学材料。
[9] 波長450nm~700nmの波長帯の平均透過率が、70%以上85%以下である、[1]~[8]のいずれかに記載の光学材料。
[10] 少なくとも1種類の色素により着色された、[1]~[9]のいずれかに記載の光学材料。
[11] イソシアネート化合物(A)由来の構成成分と、
2以上のメルカプト基を有するポリチオール化合物、1以上のメルカプト基と1以上の水酸基を有するヒドロキシチオール化合物、2以上の水酸基を有するポリオール化合物、及びアミン化合物からなる群から選択される少なくとも一種の活性水素化合物(B)由来の構成成分とからなる樹脂を含む、[1]~[10]のいずれか一項に記載の光学材料。
[12] 前記イソシアネート化合物(A)が、脂肪族イソシアネート化合物、脂環族イソシアネート化合物、芳香族イソシアネート化合物、複素環イソシアネート化合物、及び芳香脂肪族イソシアネート化合物から選択される少なくとも一種を含む、[11]に記載の光学材料。
[13] 前記イソシアネート化合物(A)は、キシレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネートからなる群から選択される少なくとも一種である、[11]に記載の光学材料。
[14] 前記ポリチオール化合物は、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、3-メルカプトメチル-1,5-ジメルカプト-2,4-ジチアペンタン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、及びエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)からなる群から選択される少なくとも一種である、[11]に記載の光学材料。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一実施形態によれば、光過敏による片頭痛を軽減することができ、さらに自然な色相を有する光学材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1で得られたプラノーレンズの透過率曲線を示す。
図2】実施例2で得られたプラノーレンズの透過率曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0013】
本開示の光学材料を実施の形態により具体的に説明する。
本実施形態の光学材料は、厚み2mmで測定した透過率曲線が以下(1)の特性を満たし、かつ厚み2mmで測定した視感透過率が以下(2)の特性を満たす。
【0014】
(1)波長410nm~450nm、好ましくは410nm~430nmにおける最大の透過率が20%以上65%以下であり、好ましくは30%以上60%以下である。
(2)視感透過率が70%以上85%以下であり、好ましくは70%以上80%以下である。
本実施形態の光学材料は、透過率曲線及び視感透過率が上記特性を満たすことにより、光過敏による片頭痛を軽減することができ、さらに自然な色相を備えることができる。
【0015】
さらに、本実施形態の光学材料は、厚み2mmで測定したCIE1976(L*,a*,b*)色空間における色相が、以下(3)の特性を満たすことが好ましい。
(3)CIE1976(L*,a*,b*)色空間における色相が、a*が2.4以上5.5以下であり、好ましくは2.6以上4.0以下であり、b*が5以上15以下であり、好ましくは10以上15以下である。
本実施形態の光学材料は、色相が上記範囲を満たすことにより、片頭痛をより軽減することができる。
【0016】
またさらに、本実施形態の光学材料は、厚み2mmで測定したYI(YellowIndex)が、以下(4)の特性を満たすことが好ましい。
(4)YIが、10以上35以下であり、好ましくは20以上32以下である。
本実施形態の光学材料は、YIが上記範囲を満たすことにより、自然な色相を備えることができる。
【0017】
本実施形態の光学材料は、本開示における効果の観点から、波長410nm~450nm、好ましくは410nm~430nmの波長帯の平均透過率が、好ましくは35%以上65%以下であり、より好ましくは40%以上55%以下である。
本実施形態の光学材料は、本開示における効果の観点から、波長399nm以下の波長の透過率が1%以下であることが好ましい。
なお、「波長399nm以下の波長の透過率」とは、波長399nm以下の全ての波長域における個々の透過率を意味する。つまり、「波長399nm以下の波長の透過率が1%以下」とは、波長399nm以下の全ての波長域において、透過率が1%以下であることを意味する。
【0018】
本実施形態の光学材料は、本開示における効果の観点から、波長680nm~800nm、好ましくは波長700nm~780nmの波長帯の平均透過率が、90%以上であることが好ましい。
また、波長680nm~800nm、好ましくは波長700nm~780nmの透過率が、90%以上であることが好ましく、93%以上であることがより好ましい。
なお、上述と同様に、「波長680nm~800nm、好ましくは波長700nm~780nmの透過率」とは、波長680nm~800nm、好ましくは波長700nm~780nmの全ての波長域における個々の透過率を意味する。
【0019】
また、本実施形態の光学材料は、本開示における効果の観点から、波長450nm~700nmの波長において、波長に略比例して透過率が増加し、波長450nmにおける透過率が50%以上であり、かつ、波長700nmの波長における透過率が95%以上であることが好ましい。
また、500nm~680nmの波長において、波長に略比例して透過率が増加し、波長500nmにおける透過率が60%以上であり、かつ、波長680nmの波長における透過率が、92%以上であることが好ましい。
【0020】
また、本実施形態の光学材料は、本開示における効果の観点から、波長450nm~700nmの波長帯の平均透過率が、好ましくは70%以上85%以下であり、より好ましくは70%以上80%以下である。
【0021】
本実施形態の光学材料は、好ましくは、少なくとも1種類の色素を含むことにより、波長域420nm付近の青色成分光をカットし光過敏による片頭痛を軽減することができ、さらに自然な色相を有する光学材料を提供することができる。
【0022】
本実施形態の光学材料を得る方法としては、波長域420nm付近の青色成分光をカットし自然な色相を有することができれば特に限定はないが、色素を含む組成物をコーティングする方法、樹脂組成物等に色素を練り込み、当該組成物から光学材料を得る方法、光学材料を染色する方法等が挙げられる。
【0023】
前記色素としては、本開示における効果を得ることができれば光学材料に用いることができる公知の色素から選択して用いることができる。コーティング法や練り込み法、染色法に用いる色素としては、例えば、Dianixシリーズ(ダイスタージャパン社製)、Sumikaronシリーズ(住友化学社製)、Kayalonシリーズ(日本化薬社製)、色調調整剤等を挙げることができる。これらの色素は1種また2種以上組み合わせて用いることができる。
【0024】
色調調整剤としては、例えば、アントラキノン系染料、ペリノン系染料、モノアゾ系染料、ジアゾ系染料、及びフタロシアニン系染料等を挙げることができ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
アントラキノン系染料としては、Solvent Blue 36(1,4-ビス(イソプロピルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、Solvent Blue 63(1-(メチルアミノ)-4-(m-トリルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、Solvent Blue 94(1-アミノ-2-ブロモ-4-(フェニルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、SolventBlue 97(1,4-ビス((2,6-ジエチル-4-メチルフェニル)アミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、Solvent Blue 104(1,4-ビス(メシチルアミノ) アントラセン-9,10-ジオン)、Solvent Violet 13(1-ヒドロキシ-4-(p-トリルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、Solvent Violet 13(1,5-ビス(p-トリルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、Solvent Red 52(3-メチル-6-(p-トリルアミノ)-3H-ナフト[1,2,3-de]キノリン-2,7-ジオン)、Solvent Red 168またはPlast Red 8320(1-(シクロヘキシルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、Solvent Red 207(1,5-ビス(シクロヘキシルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、Disperse Red 22(1-(フェニルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、Disperse Red 60(1-アミノ-4-ヒドロキシ-2-フェノキシアントラセン-9,10-ジオン)、Solvent Violet 59(1,4-ジアミノ-2,3-ジフェニルアントラセン-9,10-ジオン)、Solvent Green 28(1,4-ビス((4-ブチルフェニル)アミノ)-5,8-ジヒドロキシアントラセン-9,10-ジオン)、Plast Blue 8514(1-ヒドロキシ-4-[(4-メチルフェニル)アミノ]-9,10-アントラセンジオン)等を挙げることができる。
【0026】
ペリノン系染料としては、Solvent Orange 60(12H-イソインドロ[2,1-a]ペリミジン-12-オン)、Solvent Orange 78、Solvent Orange 90、Solvent Red 135(8,9,10,11-テトラクロロ-12H-イソインドロ[2,1-a] ペリミジン-12-オン)、Solvent Red 162、Solvent Red 179(14H-ベンゾ[4,5] イソキノリノ[2,1-a]ペリミジン-14-オン)等を挙げることができる。
【0027】
モノアゾ系染料としては、Solvent Red 195、ファストオレンジR、オイルレッド、オイルエロー等を挙げることができる。
ジアゾ系染料としては、シカゴスカイブルー6B(ソディウム 6,6’-((1E,1’E)-(3,3’-ジメトキシ-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイル)ビス(ジアゼン-2,1-ジイル))ビス(4-アミノ-5-ヒドロキシナフタレン-1,3-ジスルホネート))、エバンスブルー(ソディウム 6,6’-((1E,1’E)-(3,3’-ジメチル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイル)ビス(ジアゼン-2,1-ジイル))ビス(4-アミノ-5-ヒドロキシナフタレン-1,3-ジスルホネート))、ダイレクトブルー15(ソディウム 3,3’-((1E,1’E)-(3,3’-ジメトキシ-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイル)ビス(ジアゼン-2,1-ジイル))ビス(5-アミノ-4-ヒドロキシナフタレン-2,7-ジスルホネート))、トリパンブルー(ソディウム 3,3’-((1E,1’E)-(3,3’-ジメチル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイル)ビス(ジアゼン-2,1-ジイル))ビス(5-アミノ-4-ヒドロキシナフタレン-2,7-ジスルホネート))、ベンゾプルプリン4B(ソディウム 3,3’-((1E,1’E)-(3,3’-ジメチル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイル)ビス(ジアゼン-2,1-ジイル))ビス(4-アミノナフタレン-1-スルホネート))、コンゴーレッド(ソディウム 3,3’-((1E,1’E)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイルビス(ジアゼン-2,1-ジイル))ビス(4-アミノナフタレン-1-スルホネート))等を挙げることができる。
フタロシアニン系染料としては、C.I.ダイレクトブルー86、C.I.ダイレクトブルー199等を挙げることができる。
【0028】
本実施形態においては、本開示における効果の観点から、好ましくは、Solvent Blue 94、Solvent Blue 97、Solvent Blue 104、Solvent Violet 59、Solvent Red 195、Disperse Red 60、Solvent Green 28、Solvent Orange 60、Plast Blue 8514、またはPlast Red 8320であり、さらに好ましくはPlast Blue 8514、またはPlast Red 8320である。これらは単独で使用しても2種以上組合せて使用してもよいが、2種以上組合せて用いることが好ましい。
色素の添加量は、本実施形態の光学材が所望の色相となるように調整される。
【0029】
また、本実施形態の光学材料は、さらに、樹脂を含むことが好ましい。
樹脂としては、本開示における効果を発揮することができれば、特に限定されず、光学材料に用いることができる公知の透明樹脂から選択することができる。
樹脂としては、例えば、ポリ(チオ)ウレタン、ポリ(チオ)ウレタンウレア、ポリスルフィド、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリオレフィン等を挙げることができ、好ましくはポリ(チオ)ウレタン、またはポリ(チオ)ウレタンウレアである。樹脂はこれらから選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0030】
以下、光学材料の調製に用いられる光学材料用組成物について説明する。本実施形態においては、樹脂としてポリ(チオ)ウレタンまたはポリ(チオ)ウレタンウレアを含む光学材料の調製に用いられる重合性組成物について説明する。
【0031】
[光学材料用重合性組成物]
本実施形態において用いられる光学材料用重合性組成物は、
(A)イソシアネート化合物と、
(B)2以上のメルカプト基を有するポリチオール化合物、1以上のメルカプト基と1以上の水酸基を有するヒドロキシチオール化合物、2以上の水酸基を有するポリオール化合物、及びアミン化合物からなる群から選択される少なくとも1種の活性水素化合物と、
を含む。
【0032】
光学材料が色素を含む場合には、光学材料用重合性組成物は、さらに前記色素を含んでいてもよい。光学材料用重合性組成物に含まれる色素の量は、所望の色相となるように調整される。
【0033】
[イソシアネート化合物(A)]
イソシアネート化合物(A)としては、脂肪族イソシアネート化合物、脂環族イソシアネート化合物、芳香族イソシアネート化合物、複素環イソシアネート化合物、芳香脂肪族イソシアネート化合物等が挙げられ、1種または2種以上混合して用いられる。これらのイソシアネート化合物は、二量体、三量体、プレポリマーを含んでもよい。
これらのイソシアネート化合物としては、WO2011/055540号に例示された化合物を挙げることができる。
【0034】
本実施形態において、本開示における効果の観点から、イソシアネート化合物(A)が、キシレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネートからなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、
キシレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、及び2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタンからなる群から選択される少なくとも一種を含むことがより好ましい。
【0035】
(活性水素化合物(B))
本実施形態において、活性水素化合物(B)としては、2以上のメルカプト基を有するポリチオール化合物、1以上のメルカプト基と1以上の水酸基を有するヒドロキシチオール化合物、2以上の水酸基を有するポリオール化合物、及びアミン化合物からなる群から選択される少なくとも1種を用いることができる。
これらの活性水素化合としては、WO2016/125736号に例示された化合物を挙げることができる。
【0036】
活性水素化合物(B)は、本開示における効果の観点から、好ましくは2以上のメルカプト基を有するポリチオール化合物及び1以上のメルカプト基と1以上の水酸基を有するヒドロキシチオール化合物から選択される少なくとも一種であり、より好ましくは2以上のメルカプト基を有するポリチオール化合物から選択される少なくとも一種である。
【0037】
ポリチオール化合物は、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、3-メルカプトメチル-1,5-ジメルカプト-2,4-ジチアペンタン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、及びエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)からなる群から選択される少なくとも一種であり、
より好ましくは5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン及びペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)からなる群から選択される少なくとも一種である。
【0038】
本実施形態において、イソシアネート化合物(A)におけるイソシアナト基に対する、活性水素化合物(B)における活性水素基のモル比率は0.8~1.2の範囲内であり、好ましくは0.85~1.15の範囲内であり、さらに好ましくは0.9~1.1の範囲内である。上記範囲内で、光学材料、特に眼鏡用プラスチックレンズ材料として好適に使用される樹脂を得ることができる。
【0039】
任意の添加剤として、重合触媒、内部離型剤、紫外線吸収剤などを挙げることができる。本実施形態において、ポリウレタン及びポリチオウレタンを得る際には、重合触媒を用いても良いし、用いなくてもよい。
【0040】
内部離型剤としては、酸性リン酸エステルが挙げられる。酸性リン酸エステルとしては、リン酸モノエステル、リン酸ジエステルを挙げることができ、それぞれ単独または2種類以上混合して使用することできる。
【0041】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などが挙げられ、好ましくは2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノールや2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-6-tert-ブチルフェノールのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は単独でも2種以上を併用することもできる。
光学材料用組成物は、上記の成分を所定の方法で混合することにより得ることができる。
【0042】
組成物中の各成分の混合順序や混合方法は、各成分を均一に混合することができれば特に限定されず、公知の方法で行うことができる。公知の方法としては、例えば、添加物を所定量含むマスターバッチを作製して、このマスターバッチを溶媒に分散・溶解させる方法などがある。例えばポリウレタン樹脂の場合、ポリイソシアネート化合物に添加剤を分散・溶解させてマスターバッチを作製する方法などがある。
【0043】
色素を含む成形体を得るには、色素と光学材料用樹脂モノマーとを含む光学材料用組成物を混合し、重合させる方法や、色素と光学材料用樹脂とを含む光学材料用組成物を硬化させる方法により行うことができる。
【0044】
<硬化物>
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、重合することにより硬化物を得ることができ、モールドの形状により様々な形状の硬化物を得ることができる。重合方法は、従来公知の方法を挙げることができ、その条件も特に限定されない。
【0045】
本実施形態において、硬化物の製造方法は、特に限定されないが、好ましい製造方法として注型重合が挙げられる。はじめに、ガスケットまたはテープ等で保持された成型モールド間に光学材料用重合性組成物を注入する。この時、得られる硬化物に要求される物性によっては、必要に応じて、減圧下での脱泡処理や加圧、減圧等の濾過処理等を行うことが好ましい場合が多い。
【0046】
重合条件については、成分(A)及び成分(B)の種類と使用量、触媒の種類と使用量、モールドの形状等によって条件が異なるため限定されるものではないが、およそ、-50℃~150℃の温度で1時間~50時間かけて行われる。場合によっては、10℃~150℃の温度範囲で保持または徐々に昇温して、1時間~25時間で硬化させることが好ましい。
【0047】
本実施形態の硬化物は、必要に応じて、アニール等の処理を行ってもよい。処理温度は通常50℃~150℃の間で行われるが、90℃~140℃で行うことが好ましく、100℃~130℃で行うことがより好ましい。
【0048】
また、本実施形態において、光学材料用重合性組成物を加熱硬化させて得られる硬化物は、たとえば光学材料として使用することができ、光学材料の一部を構成することができる。本実施形態の硬化物は、無色透明で外観に優れ、波長域420nm付近の青色成分光の遮断効果に優れ片頭痛を軽減することができる。硬化物は、高屈折率、高アッベ数などの光学特性及び耐熱性などの諸物性に優れており、硬化物を所望の形状とし、必要に応じて形成されるコート層や他の部材等を備えることにより、様々な光学材料として用いることができる。
【0049】
<光学材料>
本実施形態の光学材料は硬化物を含んでなる。具体的には、本実施形態の光学材料は、硬化物からなるレンズ基材、フィルム層、またはコーティング層を含む。
光学材料の構成としては、代表的には、レンズ基材から構成される光学材料、レンズ基材とフィルム層から構成される光学材料、レンズ基材とコーティング層とから構成される光学材料、レンズ基材とフィルム層とコーティング層とから構成される光学材料が挙げられる。
【0050】
本実施形態の光学材料として、具体的には、レンズ基材のみから構成される光学材料(複数のレンズ基材を貼り合わせて1つの光学材料を得る場合を含む)、レンズ基材の少なくとも一方の面にフィルム層が積層されてなる光学材料、レンズ基材の少なくとも一方の面にコーティング層が積層されてなる光学材料、レンズ基材の少なくとも一方の面にフィルム層とコーティング層とが積層されてなる光学材料、2つのレンズ基材でフィルム層が狭持されてなる光学材料等が挙げられる。
本実施形態の光学材料は、光学材料全体として、透過率曲線及び視感透過率が上述の特性を有する。
【0051】
例えば、色素を含まない光学材料用組成物を用いて成形体(レンズ基材や光学フィルム)を調製し、次いで、色素を水または溶媒中に分散させて得られた分散液に当該成形体を浸漬して色素を成形体中に含浸させ、乾燥する。このようにして得られた、成形体を用いて光学材料を調製することができる。
【0052】
また、光学材料を調製した後に、色素を該光学材料に含浸させることもできる。その他、レンズ基材と、必要に応じて積層されるフィルム層とコーティング層とを備えるプラスチック眼鏡レンズを、色素を含む分散液に浸漬して色素を含浸させることもできる。
【0053】
色素の含浸量は、分散液中の色素の濃度と、分散液の温度、光学材料用樹脂組成物を浸漬させる時間により所望の含浸量に制御することができる。濃度を高く、温度を高く、浸漬時間を長くするほどに含浸量が増す。含浸量を精密に制御したい場合は、含浸量が少ない条件で、複数回浸漬を繰り返すことにより実施する。
【0054】
本実施形態においては、例えば、80℃~95℃に加熱した水に、色素(分散染料)が配合されたキャリア、及び界面活性剤を投入し、撹拌することにより分散液を調製し、この分散液に所望の濃度となるまでレンズを浸漬する方法により着色することができる。
分散染料としては、上述した、Dianix(ダイスタージャパン社製)・Sumikaron(住友化学社製)・Kayalon(日本化薬社製)等を用いることができ、少なくとも1種を用いることができる。
【0055】
キャリアとしては、ベンジルアルコール・フェネチルアルコール・エチレングリコールモノフェニルエーテル・エチレングリコールモノベンジルエーテル・ジエチレングリコールモノベンジルエーテル等を挙げることができる。このキャリアに、色素を0.5%~10%程度の濃度となるように配合することができる。
また、色素を含むコーティング材料を用い、プラスチックレンズ基材上に色素含有コーティング層を形成することもできる。
【0056】
このような構成を有する光学材料は、プラスチック眼鏡レンズとして好適に用いることができる。なお、本開示は前述の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の効果を損なわない範囲で様々な態様を取り得ることができる。
【0057】
例えば、光学材料が上述の特性を満たすことができれば、前述の実施形態の光学材料用重合性組成物を用いることなく光学材料を得ることができる。
以下、光学材料の好ましい態様であるプラスチックレンズについて詳細に説明する。
【0058】
[プラスチックレンズ]
プラスチックレンズとしては、以下の構成を挙げることができる。
(1)本実施形態の色素を含む光学材料用組成物から得られるレンズ基材を備えるプラスチックレンズ
(2)本実施形態の色素を含まない光学材料用組成物から得られるレンズ基材の表面の少なくとも一方の面上に、本実施形態の色素を含む光学材料用組成物から得られるフィルムまたはコーティング層を備えるプラスチックレンズ
(3)本実施形態の色素を含む光学材料用組成物から得られるフィルムの両面上に、本実施形態の色素を含まない光学材料用組成物から得られるレンズ基材が積層されているプラスチックレンズ
本実施形態においては、これらのプラスチックレンズを好適に用いることができる。
以下、それぞれの実施形態について説明する。
【0059】
(実施形態1)
本実施形態の色素を含む光学材料用組成物から得られるレンズ基材を備えるプラスチックレンズを製造する方法は、特に限定されないが、好ましい製造方法としてレンズ注型用鋳型を用いた注型重合が挙げられる。レンズ基材は、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリウレタンウレア、ポリチオウレタンウレア、ポリスルフィド、ポリ(メタ)アクリレート等から構成することができ、色素と、これらの樹脂のモノマー(光学材料用樹脂モノマー)とを含む本実施形態の光学材料用組成物を用いることができる。
【0060】
具体的には、ガスケットまたはテープ等で保持された成型モールドのキャビティ内に光学材料用組成物を注入する。この時、得られるプラスチックレンズに要求される物性によっては、必要に応じて、減圧下での脱泡処理や加圧、減圧等の濾過処理等を行うことが好ましい場合が多い。
【0061】
そして、組成物が注入された後、レンズ注型用鋳型をオーブン中または水中等の加熱可能装置内で所定の温度プログラムにて加熱して硬化成型する。樹脂成形体は、必要に応じて、アニール等の処理を行ってもよい。
【0062】
本実施形態において、樹脂を成形する際には、上記「任意の添加剤」に加えて、目的に応じて公知の成形法と同様に、鎖延長剤、架橋剤、光安定剤、酸化防止剤、油溶染料、充填剤、密着性向上剤などの種々の添加剤を加えてもよい。
【0063】
また、本実施形態におけるプラスチックレンズは、その目的や用途に合わせて、本実施形態の光学材料用組成物から得られるレンズ基材上に種々のコーティング層を有していてもよい。コーティング層には色素を含むことができる。色素を含むコーティング層は、色素を含むコーティング材料(組成物)を用いて調製することができ、またはコーティング層を形成した後、色素を水または溶媒中に分散させて得られた分散液に、コーティング層付きプラスチックレンズを浸漬して色素をコーティング層中に含浸させることにより調製することができる。
【0064】
(実施形態2)
本実施形態におけるプラスチックレンズは、レンズ基材表面の少なくとも一方の面上に、本実施形態の色素を含む光学材料用組成物から得られるフィルムまたは層を備える。レンズ基材は、色素を含まない。
【0065】
本実施形態におけるプラスチックレンズの製造方法としては、(2-1)レンズ基材を製造し、次いで当該レンズ基材の少なくとも一方の面上に、本実施形態の色素を含む光学材料用組成物から得られるフィルムまたはシートを貼り合わせる方法、(2-2)後述のようなガスケットまたはテープ等で保持された成型モールドのキャビティ内において、本実施形態の色素を含む光学材料用組成物から得られるフィルムまたはシートをモールドの一方の内壁に沿って配置し、次いでキャビティ内に色素を含まない光学材料用組成物を注入し、硬化させる方法等を挙げることができる。
【0066】
前記(2-1)の方法において用いられる、本実施形態の光学材料用組成物から得られるフィルムまたはシートは、特に限定されないが、溶融混練や含浸等により得られた光学材料用組成物のペレットを、従来種々公知の方法、具体的には、例えば、射出成形法、異形押出成形法、異種成形体の被覆成形法、Tダイシートまたはフィルム成形法、インフレーションフィルム成形法、プレス成形法などの成形方法により得ることができる。得られるフィルムまたはシートは、ポリカーボネート、またはポリオレフィン等を含んでなる。
レンズ基材は、公知の光学用樹脂から得ることができ、光学用樹脂としては、(チオ)ウレタン、ポリスルフィド等を挙げることができる。
本実施形態の光学材料用組成物から得られるフィルムまたはシートを、レンズ基材の面上に貼り合わせる方法は公知の方法を用いることができる。
【0067】
前記(2-2)の方法における注型重合は、実施形態1におけるプラスチックレンズの方法と同様に行うことができ、注型重合に用いる組成物としては、光学材料用樹脂モノマーを含む組成物(色素を含まない)を挙げることができる。
【0068】
また、本実施形態におけるプラスチックレンズは、その目的や用途に合わせて、光学材料用組成物から得られるレンズ基材上または「フィルムまたは層」上に種々のコーティング層を有していてもよい。実施形態:1におけるプラスチックレンズと同様に、コーティング層には色素を含むことができる。
【0069】
(実施形態3)
本実施形態におけるプラスチックレンズは、本実施形態の色素を含む光学材料用組成物から得られるフィルムの両面上に、色素を含まないレンズ基材が積層されている。
【0070】
本実施形態におけるプラスチックレンズの製造方法としては、(3-1)レンズ基材を製造し、本実施形態の色素を含む光学材料用組成物から得られるフィルムまたはシートの両面上に貼り合わせる方法、(3-2)ガスケットまたはテープ等で保持された成型モールドのキャビティ内において、本実施形態の色素を含む光学材料用組成物から得られるフィルムまたはシートを、モールドの内壁から離間した状態で配置し、次いでキャビティ内に光学材料用組成物を注入し、硬化させる方法等を挙げることができる。
【0071】
前記(3-1)の方法において用いられる、本実施形態の光学材料用組成物から得られるフィルムまたはシート、及びレンズ基材は、実施形態2におけるプラスチックレンズの(2-1)の方法と同様のものを用いることができる。
本実施形態の光学材料用組成物から得られるフィルムまたはシートを、レンズ基材の面上に貼り合わせる方法は公知の方法を用いることができる。
前記(3-2)の方法は具体的に以下のように行うことができる。
【0072】
実施形態1におけるプラスチックレンズの製造方法で用いた、レンズ注型用鋳型の空間内に、本実施形態の光学材料用組成物から得られるフィルムまたはシートを、この両面が、対向するフロント側のモールド内面と並行となるように設置する。
【0073】
次いで、レンズ注型用鋳型の空間内において、モールドと偏光フィルムとの間の2つの空隙部に、所定の注入手段により、光学材料用樹脂モノマーを含む組成物(色素を含まない)を注入する。
【0074】
そして、組成物が注入された後、レンズ注型用鋳型をオーブン中または水中等の加熱可能装置内で所定の温度プログラムにて加熱して硬化成型する。樹脂成形体は、必要に応じて、アニール等の処理を行ってもよい。
【0075】
また、本実施形態におけるプラスチックレンズは、その目的や用途に合わせて、レンズ基材上に種々のコーティング層を有していてもよい。実施形態:1におけるプラスチックレンズと同様に、コーティング層には色素を含むことができる。
【0076】
[プラスチック眼鏡レンズ]
本実施形態のプラスチックレンズを用いて、プラスチック眼鏡レンズを得ることができる。なお、必要に応じて、片面又は両面にコーティング層を施して用いてもよい。
【0077】
コーティング層として、具体的には、プライマー層、ハードコート層、反射防止層、防曇コート層、防汚染層、撥水層等が挙げられる。これらのコーティング層はそれぞれ単独で用いることも複数のコーティング層を多層化して使用することもできる。両面にコーティング層を施す場合、それぞれの面に同様なコーティング層を施しても、異なるコーティング層を施してもよい。
【0078】
これらのコーティング層はそれぞれ、本実施形態において用いられる色素、赤外線から目を守る目的で赤外線吸収剤、レンズの耐候性を向上する目的で光安定剤や酸化防止剤、レンズのファッション性を高める目的で染料や顔料、さらにフォトクロミック染料やフォトクロミック顔料、帯電防止剤、その他、レンズの性能を高めるための公知の添加剤を併用してもよい。塗布によるコーティングを行う層に関しては塗布性の改善を目的とした各種レベリング剤を使用してもよい。
【0079】
以上、本実施形態に基づき本開示を説明したが、本開示の効果を損なわない範囲で様々な構成を採用することができる。
【実施例
【0080】
以下に、実施例により本開示を更に詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。なお、本開示の実施例において用いた評価方法、材料は以下の通りである。
【0081】
[L*,a*,b*の測定方法]
2mm厚のプラノーレンズについて、分光測色計(コニカミノルタ製CM-5)を用いて、厚み方向の透過率を測定することで、CIE1976(L*,a*,b*)表色系におけるL*,a*,b*を測定した。
[YIの測定方法]
2mm厚のプラノーレンズについて、コニカミノルタ社製の分光測色計CM-5を用いて、厚み方向の透過率を測定することで、YIを測定した。
【0082】
[視感透過率、及び波長420nmでの分光透過率の測定方法]
島津製作所製分光光度計UV-1800を用い、2mm厚のプラノーレンズの分光透過率を測定し、視感透過率を求めた。
【0083】
[頭痛日数の評価]
全19名からなる被験者の群を、9名の被験者からなる第1の群と、10名の被験者からなる第2の群とに分けて、各々の群に対して着用テストを行った。具体的には、第1の群の9名の被験者が、眼鏡なしで1ヶ月生活した後(ステージ1)、実施例で得られたレンズを備える眼鏡を着用して1ヶ月生活した(ステージ2)。ここで、被験者による着用テストの実施期間中は、各々の被験者は、各ステージにおいて着用すべき眼鏡を、被験者の日常生活に合わせて着用場面や用途を限定することなく、1日3時間以上着用した。また、いずれの眼鏡のフレームも、被験者が着用することによる外因・ストレスを低減するため、軽量かつリムの無いフレームを用いた(不図示)。
各々の被験者は、各ステージにおいて毎日片頭痛の有無や症状を記録し、各々のステージにおける頭痛日数を集計した結果を比較し、頭痛日数が20%以上減少した場合は実施例で得られたレンズを用いると片頭痛を低減する効果があるとした。
第2の群の10名の被験者については、実施例で得られたレンズを備える眼鏡を着用して1ヶ月生活した後(ステージa)、眼鏡なしで1ヶ月生活した(ステージb)。第2群の被験者による着用テストについても、第1群の被験者による着用テストと同様、着用テストの実施期間中は、各々の被験者は、各ステージにおいて着用すべき眼鏡を、被験者の日常生活に合わせて着用場面や用途を限定することなく、1日3時間以上着用した。また、いずれの眼鏡のフレームも、被験者が着用することによる外因・ストレスを低減するため、軽量かつリムの無いフレームを用いた(不図示)。
各々の被験者は、各ステージにおいて毎日片頭痛の有無や症状を記録し、各々のステージにおける頭痛日数を集計した結果を比較し、頭痛日数が20%以上減少した場合は実施例で得られたレンズを用いると片頭痛を低減する効果があるとした。
[頭痛日数低減の評価指標]
1:頭痛日数が50%以上減少
2:頭痛日数が20%~49%減少
3:頭痛日数が0%~19%減少
4:頭痛日数が減少しなかった
【0084】
[実施例1]
ジブチル錫(II)ジクロリドを0.35質量部、ステファン社製ZelecUNを1質量部、紫外線吸収剤Tinuvin329(BASFジャパン社製)を15質量部、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタンと2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタンとの混合物を506質量部仕込んで混合溶液を作製した。この混合溶液を25℃で1時間攪拌して完全に溶解させた。その後、この調合液に、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン255質量部とペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)239質量部とを仕込み、これを25℃で30分攪拌し、均一溶液とした。この溶液を400Paにて1時間脱泡を行い、1μmPTFEフィルターにて濾過を行った後、中心厚2mm、直径80mmの2Cのプラノー用ガラスモールドに注入した。このガラスモールドを25℃から120℃まで、16時間かけて昇温した。室温まで冷却させて、ガラスモールドから外し、プラノーレンズを得た。得られたプラノーレンズを更に120℃で2時間アニールを行った。
90℃に加熱した1リットルの水に青色染料としてDianix Blue FBL(ダイスタージャパン社製)1質量部を添加し、キャリア材としてベンジルアルコールを40質量部、界面活性剤を1質量部混合し青色染料分散液を作製した。同様に赤色染料分散液をSumikaron Red E-RPD(住化ケミテックス社製)、黄色染料分散液をDianix Yellow AC-E(ダイスタージャパン社製)、茶色染料分散液をDianix Yellow Brown AM-R(ダイスタージャパン社製)よりそれぞれ作製した。得られた各色の染料分散液それぞれにプラノーレンズを浸漬し目的の分光透過特性となるまで染色した。
染色されたプラノーレンズの表面にはウレタン系のプライマーコート、シリコーン系のハードコートをディップコーティングにて順次成膜を行い、次いで真空蒸着法によりSiO2とZrO2を交互に積層し5層構成の反射防止膜を成膜し、加えて最表面にはフッ素系の撥水膜を成膜した。
得られたプラノーレンズの物性を測定した。結果を表-1に示す。また、透過率データを表-3に示し、透過率曲線を図1に示す。
本実施例に基づく染色されたプラノーレンズをもう一枚作製し、当該プラノーレンズ2枚を備える眼鏡を調製した。その後、上述の被験者による着用テストに供試し、片頭痛の改善効果を検証するため、頭痛日数低減効果の評価を行った。評価結果を表-2に示す。
【0085】
[実施例2]
実施例1と同様にしてプラノーレンズを調製した。
90℃に加熱した1リットルの水に青色染料としてDianix Blue FBL(ダイスタージャパン社製)1質量部を添加し、キャリア材としてベンジルアルコールを40質量部、界面活性剤を1質量部混合し青色染料分散液を作製した。同様に赤色染料分散液をSumikaron Red E-RPD(住化ケミテックス社製)、黄色染料分散液をDianix Yellow AC-E(ダイスタージャパン社製)、茶色染料分散液をDianix Yellow Brown AM-R(ダイスタージャパン社製)よりそれぞれ作製した。得られた各色の染料分散液それぞれにプラノーレンズを浸漬し目的の分光透過特性となるまで染色した。
染色されたプラノーレンズの表面にはウレタン系のプライマーコート、シリコーン系のハードコートをディップコーティングにて順次成膜を行い、次いで真空蒸着法によりSiO2とZrO2を交互に積層し5層構成の反射防止膜を成膜し、加えて最表面にはフッ素系の撥水膜を成膜した。
得られたプラノーレンズの物性を測定した。結果を表-1に示す。また、透過率データを表-3に示し、透過率曲線を図2に示す。
本実施例に基づく染色されたプラノーレンズをもう一枚作製し、当該プラノーレンズ2枚を備える眼鏡を調製した。その後、上述の被験者による着用テストに供試し、片頭痛の改善効果を検証するため、頭痛日数低減効果の評価を行った。評価結果を表-2に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
表-2に示すように、実施例の眼鏡を着用することにより、19名の被験者のうちの42%にあたる8名において頭痛日数が50%以上減少し、19名の被験者のうちの68%にあたる13名において頭痛日数が20%以上減少しており、高い頭痛日数低減効果が認められた。
【0089】
【表3】
【0090】
【表4】
【0091】
【表5】

【0092】
2019年4月19日に出願された日本国特許出願2019-079856号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。
図1
図2