(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】絶縁電線
(51)【国際特許分類】
H01B 7/08 20060101AFI20230216BHJP
H01B 7/40 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
H01B7/08
H01B7/40 307Z
(21)【出願番号】P 2019076732
(22)【出願日】2019-04-14
【審査請求日】2022-03-21
(73)【特許権者】
【識別番号】518284558
【氏名又は名称】株式会社ごとう
(74)【代理人】
【識別番号】100161229
【氏名又は名称】加藤 達彦
(72)【発明者】
【氏名】後藤 正
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-109204(JP,A)
【文献】実開昭53-74078(JP,U)
【文献】実開昭62-165611(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/08
H01B 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の導電性金属薄板に対し、長手方向に沿って折り目が形成されるように、等間隔に山折りと谷折りとが交互に行われ、各折り目に区画された複数の区画部が蛇腹状に重ね合わせられた単線導体と、
前記単線導体の周囲に被覆された絶縁体であって、内側が前記単線導体よりも一回り大きく形成されているとともに内側に複数の突起部が形成され、前記突起部が前記単線導体に当接することで全体が前記単線導体に支持されている絶縁体と、
を備えたことを特徴とする絶縁電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体を絶縁体で被覆した絶縁電線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
絶縁電線としては、平角導体を用いたものが知られている(例えば特許文献1)。これによれば、丸電線を用いたものよりも配索スペースを少なくすることができる。また、これによれば、可撓性が小さいため、絶縁電線を壁面等に固定する場合に、複数本の素線を撚り合わせた丸電線よりも固定箇所を少なくすることができる。
【0003】
しかし、絶縁電線は、屈曲又は湾曲させて使用したい場合もある。この点、平角導体を用いたものでは使い勝手が悪い。そこで、互いに擦動可能な複数枚の導体箔を積層させた絶縁電線が提案されている(例えば特許文献2)。これによれば、積層方向に対する屈曲性を向上させることができる。
【0004】
しかし、特許文献2に記載の絶縁電線では、積層方向と垂直な方向に対する屈曲性も上がってしまい、壁面に固定する場合に固定箇所を少なくすることができるという効果を損なってしまっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-23205号公報
【文献】特開2008-77876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、壁面等に固定する場合に固定箇所を少なくできるとともに、必要な場所で屈曲させることもできる絶縁電線を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る絶縁電線は、
長尺の導電性金属薄板に対し、長手方向に沿って折り目が形成されるように、等間隔に山折りと谷折りとが交互に行われ、各折り目に区画された複数の区画部が蛇腹状に重ね合わせられた単線導体と、
前記単線導体の周囲に被覆された絶縁体であって、内側が前記単線導体よりも一回り大きく形成されているとともに内側に複数の突起部が形成され、前記突起部が前記単線導体に当接することで全体が前記単線導体に支持されている絶縁体と、
を備えたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
壁面等に固定する場合に固定箇所を少なくできるとともに、必要な場所で屈曲させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態である絶縁電線を示した説明図である。
【
図3】単線導体の曲げ方向(積層方向)を示した説明図である。
【
図4】単線導体の曲げ方向(積層方向とは垂直の方向)を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の絶縁電線を具現化した実施形態について、図面を用いて説明するが、本発明の技術的範囲は、もちろんこれだけに限定されるものではない。なお、周知の技術に関しては、詳細な説明を省略する。また、本明細書中で特に断りなく絶縁電線について上方向又は下方向、右方向又は左方向という場合、
図1を正面視した状態においての上下左右方向を指すものとする。
【0011】
(実施形態)
まず、実施形態である絶縁電線1の構成について、
図1~
図5を参照して説明する。
図1は本実施形態の絶縁電線1を示した説明図である。
図2は単線導体の構成を示した説明図である。
【0012】
図1に示すように、絶縁電線1は、主に単線導体11、絶縁体12で構成される。なお、
図1では紙面の都合上、絶縁電線1の長さが短く描かれているが、実際は例えば数十メートルのように、もっと長いものである。
【0013】
単線導体11は、
図2に示すように、長尺の導電性金属薄板111に対し、長手方向に沿って折り目が形成されるように、山折りと谷折りとを等間隔に交互に行い、各折り目112、113に区画された複数の区画部114を蛇腹状に重ね合わせたものである。
図2では、説明をわかりやすくするため、導電性金属薄板111の厚みがないものとして描かれているが、実際には区画部114は互いに密着して
図1のようになっている。また、各折り目及び区画部の全てに符号を付していない。
なお、
図2では紙面の都合上、単線導体11の長さが短く描かれているが、実際は例えば数十メートルのように、もっと長いものである。
【0014】
導電性金属薄板111の厚さは、0.05mm~0.1mmであることが望ましく、区画部114の数は、50以上であることが望ましい。なお、
図1及び
図2においては、説明の都合上、導電性金属薄板111の厚さ及び区画部114の数は忠実に描かれていないが、本実施形態では、導電性金属薄板111の厚さは、0.07mmであり、区画部114の数は100である。
【0015】
導電性金属薄板111は、良導体の金属箔を用いることができ、例えば、銅箔やアルミニウム箔を用いることができる。本実施形態では、均一な厚さが得られる電解銅箔を用いている。
【0016】
図3は、単線導体の曲げ方向(積層方向)を示した説明図である。
図4は、単線導体の曲げ方向(積層方向とは垂直の方向)を示した説明図である。
単線導体11は、
図3に示す矢印の方向、すなわち積層方向には屈曲及び湾曲させることができるが、
図4に示す矢印の方向、すなわち積層方向とは垂直の方向には屈曲又は湾曲させることが困難となっている。これにより、絶縁電線1を壁面等に固定する場合に固定箇所を少なくできるとともに、必要な場所で屈曲させることもできるのである。
【0017】
単線導体11同士を接続する場合は、互いの区画部114を交互に重ね合わせることで行う。この際、単線導体11の端部を少し開いてそのまま重ね合わせてもよく、同じく単線導体11の端部を少し開いて各折り目112、113に切込みを入れ、互いの区画部114を1枚ずつ交互に重ね合わせてもよい。また、どちらの方法を取るにせよ、重ね合わせた後、一番外側の2つの区画部114、114を挟み込むように、圧力を加えるとよい。この圧力は、10kg/cm2程度が好ましい。単線導体11同士の接続は、互いの単線導体11が直線上に配置される場合のみならず、互いの単線導体11が直角に配置される場合においても適用可能である。
【0018】
2冊の本を1ページずつ交互に重ねると摩擦力によって引っ張っても取れなくなるが、互いの区画部114を交互に重ね合わせると、これと同じ状態になるため、接続部はカシメ材やネジ留め等の必要がなく、通常の絶縁テープで処理できる。
【0019】
また、互いの区画部114を交互に重ね合わせることで接触面積を広く確保することができ、単線導体11同士の接続時の電気抵抗を低減することができる。
【0020】
絶縁体12は、絶縁性材料で形成され、単線導体11の周囲に被覆されている。絶縁体12は、内側が単線導体11よりも一回り大きく形成されているとともに、内側に複数の突起部121が形成されている。そして、突起部121が単線導体11に当接することで絶縁体12の全体が単線導体11に支持されている。内側の全体が単線導体11に密着した構造だと、単線導体11の可撓性を損ねるためである。
【0021】
図5は、絶縁体の構成を示した説明図である。なお、
図5に示す絶縁体12は、
図1に示す絶縁体12を長手方向に1カ所切断し、内側が上側になるように開いた状態を表したものである。
突起部121は、
図5(a)に示すように線状に設けられた突起でもよく、
図5(b)に示すように点状に設けられた突起でもよい。なお、
図5(b)においては、突起部の全てに符号を付してはいない。
【0022】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0023】
1 絶縁電線(第1の実施形態)
11 単線導体
12 絶縁体
111 導電性金属薄板
112 折り目
113 折り目
114 区画部
121 突起部