(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】横方向位置推定装置及び横方向位置推定方法
(51)【国際特許分類】
G01S 17/931 20200101AFI20230216BHJP
G01C 21/28 20060101ALI20230216BHJP
G01S 17/89 20200101ALI20230216BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20230216BHJP
【FI】
G01S17/931
G01C21/28
G01S17/89
G06T7/00 650A
G06T7/00 350B
(21)【出願番号】P 2018124564
(22)【出願日】2018-06-29
【審査請求日】2021-05-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】ムハンマド・アムル・アッディバージャ
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 直樹
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-331787(JP,A)
【文献】特開平08-202877(JP,A)
【文献】特開2010-079414(JP,A)
【文献】特開2016-081361(JP,A)
【文献】特開2007-328631(JP,A)
【文献】特表2017-533482(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0160744(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0191391(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51,
G01S 17/00-17/95,
G01C 21/28,
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の走行方向に対する横方向位置を推定する横方向位置推定装置であって、
前記移動体が走行している道路を前記移動体から撮像した画像データを取得する取得部と、
前記画像データにおける前記横方向位置と、前記横方向位置に対する前記画像データにおける輝度の変化率を示すエッジ強度との関係を示すエッジプロファイルの全体において、前記エッジ強度を強調することによって前記エッジプロファイルの再構成を行う再構成部と、
再構成された前記エッジプロファイルと、前記画像データに対応する道路のマップ情報から得られる前記横方向位置と前記エッジ強度との関係を示すマップエッジプロファイルと、を照合することによって、前記移動体の横方向位置を算出する照合部とを備え
、
前記再構成部は、機械学習によって前記再構成のアルゴリズムを予め決定し、
前記再構成部は、
前記機械学習においてPCA(Principal Component Analysis)を用い、
前記エッジプロファイルにおける複数のピークの配置の変化を符号化する第一の固有ベクトルと、車道境界線のピークに比例する強度の変化を符号化する第二の固有ベクトルとを用いて、前記エッジプロファイルを再構成し、
前記第一の固有ベクトル及び前記第二の固有ベクトルの配置を示すグラフにおいて、前記エッジプロファイルを表す固有ベクトルのうち、前記第一の固有ベクトル及び前記第二の固有ベクトルの固有値を表す楕円の外部に位置する固有ベクトルを、前記楕円上にシフトすることによって、前記エッジプロファイルを再構成する
横方向位置推定装置。
【請求項2】
移動体の走行方向に対する横方向位置を推定する横方向位置推定方法であって、
前記移動体が走行している道路を前記移動体から撮像した画像データを取得する取得ステップと、
前記画像データにおける前記横方向位置と、前記横方向位置に対する前記画像データにおける輝度の変化率を示すエッジ強度との関係を示すエッジプロファイルの全体において、前記エッジ強度を強調することによって前記エッジプロファイルの再構成を行う再構成ステップと、
再構成された前記エッジプロファイルと、前記画像データに対応する道路のマップ情報から得られる前記横方向位置と前記エッジ強度との関係を示すマップエッジプロファイルと、を照合することによって、前記移動体の横方向位置を算出する照合ステップとを含
み、
前記再構成ステップにおいて、機械学習によって前記再構成のアルゴリズムを予め決定し、
前記機械学習において、
PCA(Principal Component Analysis)を用い、
前記再構成ステップにおいて、
前記エッジプロファイルにおける複数のピークの配置の変化を符号化する第一の固有ベクトルと、車道境界線のピークに比例する強度の変化を符号化する第二の固有ベクトルとを用いて、前記エッジプロファイルを再構成し、
前記第一の固有ベクトル及び前記第二の固有ベクトルの配置を示すグラフにおいて、前記エッジプロファイルを表す固有ベクトルのうち、前記第一の固有ベクトル及び前記第二の固有ベクトルの固有値を表す楕円の外部に位置する固有ベクトルを、前記楕円上にシフトすることによって、前記エッジプロファイルを再構成する
横方向位置推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の走行方向に対する横方向位置を推定する横方向位置推定装置及び横方向位置推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、車両などの移動体の自動運転に関する研究が企業および大学などにおいて活発に進められている(非特許文献1、2など参照)。車両が公道で自動運転を行うためには、道路における車両の位置を正確に推定する必要がある。特に、車両の走行方向に対する横方向位置の正確な推定が、安全な自動運転を実現するために必要である。
【0003】
例えば、非特許文献1には、予め生成された地図と、車両からLIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)の観測値との類似度を計算することで、車両の位置を推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】山本大貴、菅沼直樹、「高解像度赤外線反射画像を用いた自動運転自動車の自己位置推定」、日本機械学会、第23回交通・物流部門大会講演論文集2014(23)、p.329-330
【文献】J. Levinson and S. Thrun, "Robust vehicle localization in urban environments using probabilistic maps", in Proceedings of IEEE Conference on robotics and automation, pp. 4372-4378, 2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両が公道で自動運転を行うためには、道路の周辺環境、天候などの条件に関わらず、正確に車両の横方向位置を推定する必要がある。しかしながら、例えば、降雪などに起因して、路面状況が変化する場合には、路面状況変化前に生成された地図と、路面状況変化後に取得されたLIDARの観測値とが合致しないことがある。このため、上記非特許文献1に記載の技術を含む従来の技術では必ずしも精度良く位置推定できない。
【0006】
そこで、本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであって、移動体の横方向位置を精度良く推定できる横方向位置推定装置及び横方向位置推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る横方向位置推定装置は、移動体の走行方向に対する横方向位置を推定する横方向位置推定装置であって、前記移動体が走行している道路を前記移動体から撮像した画像データを取得する取得部と、前記画像データにおける前記横方向位置と、前記横方向位置に対する前記画像データにおける輝度の変化率を示すエッジ強度との関係を示すエッジプロファイルにおいて、前記エッジ強度を強調することによって前記エッジプロファイルの再構成を行う再構成部と、再構成された前記エッジプロファイルと、前記画像データに対応する道路のマップ情報から得られる前記横方向位置と前記エッジ強度との関係を示すマップエッジプロファイルと、を照合することによって、前記移動体の横方向位置を算出する照合部とを備える。
【0008】
また、上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る横方向位置推定方法は、移動体の走行方向に対する横方向位置を推定する横方向位置推定方法であって、前記移動体が走行している道路を前記移動体から撮像した画像データを取得する取得ステップと、前記画像データにおける前記横方向位置と、前記横方向位置に対する前記画像データにおける輝度の変化率を示すエッジ強度との関係を示すエッジプロファイルにおいて、前記エッジ強度を強調することによって前記エッジプロファイルの再構成を行う再構成ステップと、再構成された前記エッジプロファイルと、前記画像データに対応する道路のマップ情報から得られる前記横方向位置と前記エッジ強度との関係を示すマップエッジプロファイルと、を照合することによって、前記移動体の横方向位置を算出する照合ステップとを含む。
【0009】
このような横方向位置推定装置及び横方向位置推定方法では、画像データから得られるエッジプロファイルにおけるエッジ強度が横方向位置推定を精度良く行うために不十分である場合にも、画像データから得られるエッジプロファイルにおけるエッジ強度を再構成部によって強調することで、精度良く横方向位置を推定できる。
【0010】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の横方向位置推定装置及び横方向位置推定方法によれば、移動体の横方向位置を精度良く推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、車両の横方向位置を説明する模式図である。
【
図2A】
図2Aは、LIDARの観測値から得られる道路の画像データの一例を示す図である。
【
図3A】
図3Aは、車両が走行する道路の一例を示す写真である。
【
図3C】
図3Cは、
図3Aに示される道路を走行する車両に設置されたLIDARの観測値から得られる道路の画像データを示す図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1に係る横方向位置推定装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、車両V10が走行する道路、及び、その道路における位置推定結果の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、車両V10が走行する道路、及び、その道路における位置推定結果の他の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、実施の形態1に係る固有ベクトルの振る舞いを示すグラフである。
【
図8A】
図8Aは、マップ情報から得られるマップエッジプロファイルの第一及び第二の固有ベクトルの配置を示すグラフである。
【
図8B】
図8Bは、標準的な範囲からずれたピークを有するプロファイルの一例を示すグラフである。
【
図8C】
図8Cは、
図8Bに示されるプロファイルを再構成して得られるプロファイルを示すグラフである。
【
図9】
図9は、実施の形態1に係る再構成において使用する固有ベクトルと、当該固有ベクトルを用いた符号化によってプロファイルに生じる変化の大きさとの関係を示すグラフである。
【
図10】
図10は、実施の形態1に係る横方向位置推定方法を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、実施の形態1に係る横方向位置推定装置の第一の動作例を示す図である。
【
図12】
図12は、実施の形態1に係る横方向位置推定装置の第二の動作例を示す図である。
【
図13】
図13は、実施の形態1に係る横方向位置推定装置の第三の動作例を示す図である。
【
図14】
図14は、実施の形態1に係る横方向位置推定装置の第四の動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(本発明の基礎となった知見)
本発明の説明に先立って、本発明の基礎となった知見について説明する。
【0014】
図1は、車両1000の横方向位置を説明する模式図である。
図1に示すように、車両1000の横方向位置とは、道路R0を走行する車両1000の走行方向に対して横断方向における位置を意味する。横方向位置を推定することで、車両1000の自動運転において、道路R0の走行車線における適切な位置にあるか否かを判断できる。例えば、日本の道路R0においては、
図1に示すように、横断方向の端部である二つの端縁Erの中央付近に中央線Lcが示されている。また、道路R0においては、車道の外側の端部を示す車道外側線Lsが示されている。道路R0において、中央線Lcの左側であって、中央線Lcと、車道外側線Lsとの間が、走行する車両1000の適切な横方向位置である。
【0015】
ここで、LIDARを用いた車両の横方向位置の推定方法について
図2A~
図2Cを用いて説明する。
図2Aは、LIDARの観測値から得られる道路の画像データの一例を示す図である。
図2Bは、
図2Aに示される道路のマップ情報を示す図である。
図2Cは、
図2Aに示す画像データと
図2Bに示すマップ情報とを照合した結果を示す図である。
【0016】
図2Aに示すように、LIDARによって、道路の端縁Erと、路面に示される車道境界線(中央線Lc、車道外側線Ls)などの標識とを検出できる。これらの情報と、
図2Bに示されるマップ情報における車道境界線などとを照合することで、
図2Cに示されるように、LIDARから得られる画像データとマップ情報との関係を推定できる。
図2Cに示される例では、マップ情報を示す図において、白線枠で囲まれた内部が、
図2Aに示される画像データと一致している。これにより、画像データによって示される領域のマップ上における位置を推定できる。したがって、予め得られている画像データにおける車両の位置情報から車両の横方向位置を推定できる。
【0017】
しかしながら、このような推定方法では、車両の横方向位置を精度良く推定できない場合がある。以下、その一例を
図3A~
図3Cを用いて説明する。
【0018】
図3Aは、車両が走行する道路の一例を示す写真である。
図3Bは、
図3Aに示される道路のマップ情報を示す図である。
図3Cは、
図3Aに示される道路を走行する車両に設置されたLIDARの観測値から得られる道路の画像データを示す図である。
【0019】
図3Aに示されるように、道路に雪が積もっている場合がある。
図3Bは、
図3Aに示される道路に雪が積もっていない場合のマップ情報が示されている。
図3Cに示されるように、雪が積もっている道路を走行する車両に設置されたLIDARの観測値から得られる画像データには、雪によって形成される線状の模様が形成されていることが認められる。また、
図3Cにおいて車道外側線は、雪によって隠れている。このため、
図3Bと、
図3Cとを照合する場合に、
図3Cの画像データの
図3Bのマップ上での位置を精度良く推定できない。以上のように、道路状況は、天候などに応じてダイナミックに変化し得るため、上記の方法では、位置を精度良く推定できないという問題がある。
【0020】
本発明は、以上のような問題を解決するためのものであって、車両などの移動体の横方向位置を精度良く推定できる横方向位置推定装置及び横方向位置推定方法を提供することを目的とする。
【0021】
以下、本発明の横方向位置推定装置及び横方向位置推定方法における実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0022】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0023】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成部材については同じ符号を付している。
【0024】
(実施の形態1)
実施の形態1に係る横方向位置推定装置及び推定方法について説明する。
【0025】
[1-1.装置構成]
まず、本実施の形態に係る横方向位置推定装置の構成について
図4を用いて説明する。
【0026】
図4は、本実施の形態に係る横方向位置推定装置100の構成の一例を示すブロック図である。
【0027】
本実施の形態に係る横方向位置推定装置100は、車両V10などの移動体に搭載され、移動体の走行方向に対する横方向位置を推定する装置である。横方向位置推定装置100は、取得部10と、再構成部20と、照合部30と、位置検出部40と、記憶部50とを備える。
【0028】
取得部10は、車両V10などの移動体が走行している道路を移動体から撮像した画像データを取得する。本実施の形態では、取得部10は、車両V10に搭載されたLIDARを有し、車両V10が走行している道路のLIDARによる観測値である計測反射率から二次元の画像データを取得する。取得部10は、例えば、車両V10の周囲の32m×32mの領域の画像データを10Hzで取得する。画像データにおける画素数は、例えば、192×192ピクセルである。より詳しくは、LIDARによって、三次元画像データを取得できるが、本実施の形態では、三次元画像データのうち、路面から30cmの高さにおける二次元画像データを切り取って用いる。これにより、二次元画像データによって、路面から30cm程度以下における道路の情報として、車道境界線、路面標識、道路の端縁及び縁石のような一般的な道路に共通するランドマークを表すことができる。
【0029】
再構成部20は、取得部10が取得した画像データにおける横方向位置と、横方向位置に対する画像データにおける輝度の変化率を示すエッジ強度との関係を示すエッジプロファイルにおいて、エッジ強度を強調することによってエッジプロファイルの再構成を行う。エッジプロファイルを用いることによって、画像データの横方向における特性を抽出することができる。このため、エッジプロファイルは、横方向位置を推定するための効果的なツールとなり得る。本実施の形態では、再構成部20は、取得部10が取得した画像データに基づいて、エッジプロファイルを生成し、当該エッジプロファイルを再構成する。エッジプロファイル及びその再構成については後述する。
【0030】
位置検出部40は、車両V10の概略位置を検出する。位置検出部40として、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)/INS(Inertial Navigation System)複合航法装置を用いることができる。これにより、車両V10の三次元位置及び姿勢を100Hz程度で計測できる。
【0031】
記憶部50は、横方向位置推定装置100において使用されるマップ情報を記憶する。記憶部50は、横方向位置推定装置100において使用される他の情報を記憶してもよい。ここで、マップ情報とは、道路の構造及び標識を示す情報である。マップ情報には、例えば、道路の構造を示す情報として、例えば、道路の端縁の位置、道路の側溝の位置、ガードレールの位置などを示す情報が含まれる。また、マップ情報には、例えば、道路の標識を示す情報として、例えば、道路に示される中央線、車道外側線、横断歩道などの位置の情報が示される。マップ情報は、例えば、天候のいいときに、LIDARなどを用いて観測することで生成されてもよいし、他の方法で生成されてもよい。
【0032】
照合部30は、再構成されたエッジプロファイルと、取得部10によって取得された画像データに対応する道路のマップ情報から得られる横方向位置とエッジ強度との関係を示すマップエッジプロファイルと、を照合することによって、移動体の横方向位置を算出する。本実施の形態では、照合部30は、位置検出部40が検出した車両V10の概略位置に基いて、記憶部50から、当該概略位置に対応するマップ情報を取得する。ここで、当該マップ情報は、取得部10が取得する画像データが示す領域より十分広い領域の情報である。照合部30は、当該マップ情報から得られるマップエッジプロファイルと、画像データから得られるエッジプロファイルとを照合することによって、車両V10の横方向位置を推定する。より具体的には、位置検出部40によって得られた車両V10の横方向位置と、照合の結果に基づいて得られる横方向位置とのずれを推定する。照合部30における照合方法の詳細については後述する。
【0033】
[1-2.再構成方法及び照合方法]
次に、再構成部20においてエッジプロファイルを再構成する方法及び照合部30における照合方法について説明する。まず、再構成部20によって再構成される対象となるエッジプロファイルの例について、
図5及び
図6を用いて説明する。
図5は、車両V10が走行する道路、及び、その道路における位置推定結果の一例を示す図である。
図6は、車両V10が走行する道路、及び、その道路における位置推定結果の他の一例を示す図である。
図5には、夏の晴天時の道路における位置推定結果の一例が示されている。一方、
図6には、冬の降雪時の
図5と同じ道路及び横方向位置における位置推定結果の一例が示されている。
図5及び
図6の各写真(a)は、位置推定を行った道路の外観を示す写真である。
図5及び
図6の各グラフ(b)は、位置推定を行った道路のマップ情報から得られるマップエッジプロファイルを示す。
図5及び
図6の各グラフ(c)は、取得部10が取得する画像データ(つまり、LIDARによって取得された画像)から得られるエッジプロファイルを示す。
図5及び
図6の各グラフ(d)は、各グラフ(a)のマップエッジプロファイルと各グラフ(b)のエッジプロファイルとを照合することによって求められた類似度を示すプロファイルである。類似度の詳細については、後述する。
図5及び
図6の各グラフ(e)は、各グラフ(d)の類似度に基いて、各グラフ(b)のマップエッジプロファイルと各グラフ(c)のエッジプロファイルとを重ねたグラフである。各グラフ(e)の実線は、各マップエッジプロファイルを示し、点線は、エッジプロファイルを示す。
図5及び
図6の各画像(f)は、各グラフ(d)の類似度に基いて、各マップ情報と、取得部10が取得した画像データとを重ねた画像である。各画像(f)では、マップ情報上に、白枠で囲まれた画像データが重ね合わされている。なお、
図5及び
図6の各グラフ(b)~(e)の縦軸は横方向位置を示し、各グラフ(b)~(c)及び(e)の横軸はエッジ強度を示す。なお、各グラフ(d)の横軸は、後述する類似度R
Edgeを示す。
【0034】
図5及び
図6の各グラフ(c)に示されるエッジプロファイルとは、上述のとおり、取得部10が取得した画像データから得られる横方向位置とエッジ強度との関係を示す。具体的には、エッジプロファイルは、取得部10が取得した画像データにおいて、例えば、ソーベルフィルタを用いて検出できる。ソーベルフィルタを適用することで、エッジ強度E(u,v)と方向θ
E(u,v)は以下の式(1)及び式(2)で表される。
【0035】
【0036】
ここで、E
U及びE
Vは、それぞれu方向及びv方向における勾配成分である。本実施の形態では、各方向における20度より急な勾配(変化率)だけをエッジとして抽出する。これにより、
図5及び
図6の各グラフ(c)に示されるようなエッジプロファイルを生成できる。本実施の形態では、車両V10の道路に対する横方向位置(
図5及び
図6の各グラフの縦軸方向位置)におけるエッジプロファイルの画素数は192である。このため、
図5及び
図6のグラフ(c)の縦軸の画素数は192である。
【0037】
また、車両V10の走行方向(Longitudinal Direction)及び横方向(Lateral Direction)をそれぞれu方向及びv方向とすると、
図5及び
図6の各グラフ(b)に示されるようなマップエッジプロファイルEd
Map(v)及び
図5及び
図6の各グラフ(c)に示されるようなエッジプロファイルEd
Obs(v)は、以下の式(3)を用いて照合される。
【0038】
【0039】
ここで、ηは正規化定数であり、v
cはスキャンの刻み幅(step)であり、Vは、エッジプロファイルEd
Obs(v)の画素数である。式(3)で表される類似度R
Edgeが最大となるマップ上の位置が、画像データのマップ上の位置と推定される。
図5及び
図6に示される例では、マップエッジプロファイルの横方向(
図5及び
図6の各グラフ(b)の縦軸方向)における画素数は256であるため、照合する位置の候補は、64(=256-192)点ある(
図5及び
図6の各グラフ(d)参照)。これらの候補点のうち、最も類似度R
Edgeが高くなる点が、エッジプロファイルとマップエッジプロファイルとが合致する点(
図5及び
図6のグラフ(d)に示される円マークの点)と推定される。
【0040】
例えば、
図5の画像(f)に示されるように、式(3)で表される類似度R
Edgeに基いて、マップ情報に対する取得部10が取得した画像データの横方向の相対位置を正確に推定できる。このように、エッジプロファイルを用いることによって、画像データの横方向における特性を抽出することができる。これにより、道路の端縁の位置、道路の車道境界線などの標識の位置と、それらに対応するエッジの強度とを抽出できるため、エッジプロファイルは、横方向位置を推定するための効果的なツールとなり得る。
【0041】
ただし、取得部10が取得する画像データは、天候などの環境条件、道路工事などの状況に応じて変動し得る。例えば、
図6に示されるように、道路に雪が積もっている場合には、画像データから得られるエッジプロファイルも変化する。
【0042】
夏の晴天時のエッジプロファイルを示す
図5のグラフ(c)と、冬の降雪時のエッジプロファイルを示す
図6のグラフ(c)とを比較すると、
図5のグラフ(c)では、高いピーク値を有する部分が三か所程度あるのに対して、
図6のグラフ(c)では、高いピーク値を有する部分が一か所となっている。これは、降雪時には、車道外側線が雪によって隠れることで、エッジプロファイルにおける車道外側線に対応するエッジが、不鮮明となっているためと考えらえる。
【0043】
図6のグラフ(c)のようなエッジプロファイルとグラフ(b)のマップエッジプロファイルとの類似度を算出することによって横方向位置推定を行うと、
図6のグラフ(e)及び画像(f)に示されるように、画像データのマップ情報に対する相対位置が推定される。
図6のエッジプロファイルを示すグラフ(c)は、
図5のグラフ(c)と同様の位置で取得されたものであるため、
図6の画像(f)において白枠で囲まれた画像データは、
図5の画像(f)において白枠で囲まれた画像データと同様の位置に重ね合わされるべきである。しかしながら、雪による画像データ及びエッジプロファイルへの影響に起因して、
図6の画像(f)における画像データの位置は、正しい横方向位置(
図5の画像(f)における白枠の位置)に推定されていない。
【0044】
以上で述べたような降雪の場合だけでなく、降雨、道路工事、道路周辺の草木の状況などに起因して、エッジプロファイルを用いた横方向位置推定方法においても、正しく横方向位置を推定できない場合がある。
【0045】
そこで、本実施の形態に係る再構成部20では、
図6のグラフ(c)に示されるようなエッジプロファイルのうち、道路の構造及び標識を示すエッジを強調し、雪などに起因するマップ情報にないエッジを低減することで、
図5のグラフ(c)に示されるマップエッジプロファイルに近いエッジプロファイルに再構成する。
【0046】
以下、本実施の形態に係る再構成部20による再構成方法について説明する。
【0047】
再構成部20は、機械学習によって再構成のアルゴリズムを予め決定する。これにより、機械学習で用いるトレーニングデータを十分に準備することで、容易に横方向位置推定の精度を高めることができる。本実施の形態では、機械学習においてPCA(Principal Component Analysis)を用いる。なお、本実施の形態では、機械学習において、PCAを用いるが、機械学習において用いることができる方法は、PCAに限定されない。例えば、後述するニューラルネットワークなどを用いてもよい。
【0048】
以下、PCAの一般的な構成を示す。まず、未加工のデータEdmap_i(i=1、2、・・・、M)に関して、データの平均値がゼロとなるように新たな変数Ed’map_iを以下の式(4)で定義する。
【0049】
【0050】
ここで、平均値がゼロであるデータの共分散行列Cが以下の式(5)のように計算される。
【0051】
【0052】
また、共分散行列Cの固有ベクトル行列Ω及び固有値λは、以下の式(6)を解くことによって求められる。
【0053】
【0054】
これにより、データEdmap_iは、以下の式(7)のように、変数Ed’map_iに関する固有ベクトルの線形結合で表される。
【0055】
【0056】
ここで、Biは、各固有ベクトルの投影値を含む1×Nベクトルである。
【0057】
本実施の形態では、M個のベクトルのセットからなるデータによって様々な道路のエッジプロファイルを表す。エッジプロファイルは、道路の端縁、標識などを示すためにマップ情報から抽出される。マップ情報は、横方向位置推定装置100を使用する道路及び当該道路と同様の構成を有する道路の情報を含む。マップ情報は、例えば、本実施の形態に係る横方向位置推定装置100が備えるLIDARと同様の装置によって取得される。
【0058】
上述した共分散行列Cの対角成分は、エッジプロファイルのM個の各ピクセルの変化を示す。また、共分散行列Cの対角成分以外の成分は、エッジプロファイル全体の互いに異なるピクセル間の相関を示す。
【0059】
PCAの重要な特性の一つは、データの構造を暗にモデル化することにある。共分散行列の固有ベクトルは、エッジプロファイルのうち最も変化が大きい方向を示す。このような変化は、エッジのピークの配置、強度、及び、道路の構造の特性の変化に起因する。よって、各固有ベクトルは、対応する固有値に従って、これらの特性の異なるパターンを示すことが想定される。
【0060】
以上で述べた固有ベクトルの例について
図7を用いて説明する。
図7は、本実施の形態に係る固有ベクトルの振る舞いを示すグラフである。
図7には、固有値の大きい五つの固有ベクトルの、-3λiから+3λ
iまで振る舞いが示されている。
図7の各グラフの縦軸が道路における横方向位置を示し、横軸が固有ベクトルの各要素の強度を示す。
【0061】
図7の最上段のグラフ(a)で示される第一(1st)の固有ベクトルは、エッジプロファイルにおける複数のピークの配置の変化を符号化する。
図7に示される全範囲で、当該複数のピークは、それぞれ2ピクセル分だけ等しくシフトする。ここで、2ピクセル分とは、実空間における25cmに相当する。
図7のグラフ(a)に示されるように、複数のピークは、道路の端縁Er、中央線Lc、車道外側線Lsなどに対応する。
図7の上から二段目のグラフ(b)で示される第二(2nd)の固有ベクトルは、車道境界線のピークにほぼ比例する強度の変化を符号化する。
図7の上から三段目のグラフ(c)で示される第三(3rd)の固有ベクトルは、道路の中央線に対応するピークと、道路の端縁のピークとの強度の関係を符号化する。
図7の上から四段目のグラフ(d)で示される第四(4th)の固有ベクトルは、二つの車道外側線の強度の関係を示す。
図7の最下段のグラフ(e)で示される第五(5th)の固有ベクトルは、中央のピークが変化する範囲を示す。
【0062】
続いて、エッジプロファイルの再構成の具体的な手順について
図8A~
図8Cを用いて説明する。
図8Aは、マップ情報から得られるマップエッジプロファイルの第一及び第二の固有ベクトルの配置を示すグラフである。
図8Bは、標準的な範囲からずれたピークを有するプロファイルの一例を示すグラフである。
図8Cは、
図8Bに示されるプロファイルを再構成して得られるプロファイルを示すグラフである。
【0063】
図8Aに示すように、固有ベクトルの分布は、一点鎖線の楕円で囲まれた領域内に概ね集中する。この楕円で囲まれた領域は、各固有ベクトルにおいて符号化されたパターンに基いて標準的なプロファイルを再構成するためのプラットフォームになると考えられる。例えば、
図8Bに示されるプロファイルは、標準的でない負のピークを有する。
図8Bに示されるプロファイルは、
図8Aの三角印で示される点に対応する。プロファイルの固有空間における位置は、以下の式(8)で求められる。
【0064】
【0065】
上記式(8)におけるベクトルBは、第一の固有ベクトル及び第二の固有ベクトルへの投影値を含む。
図8Aに示される三角印の点の第一の固有ベクトルへの投影値は上記楕円の内部にあるのに対して、第二の固有ベクトルへの投影値は楕円の外側にある。上述のとおり第二の固有ベクトルは、強度の変化を符号化するため、第二の固有ベクトルへの投影値が楕円の外側にあることは、プロファイルの強度における変形があることを示唆する。そこで、
図8Aの楕円上の白丸印で示される点に、三角印の点を投影する。このように投影された固有ベクトルを再構成において用いる。つまり、上記式(7)において、投影された固有ベクトルを用いることで、
図8Cに示されるような再構成されたプロファイルを得ることができる。
【0066】
以上のように、第二の固有値に基いて第二の固有ベクトルの投影値が修正される。これにより、
図8Aの楕円の外部にある三角印の点を楕円上の白丸印で示される点にシフトされる。そして、第二の固有ベクトルに関する白丸印の点の新たな投影値は、ベクトルB
newに結合され、上記式(7)と類似する以下の式(9)に適用されることによってエッジプロファイルの再構成のために用いられる。
【0067】
【0068】
ここで、Edreconstructedは、再構成されたエッジプロファイルを表す。
【0069】
すべての固有ベクトルを固有空間に投影し、所定の範囲外にある固有ベクトルを当該所定の範囲内に投影する。これにより、標準的でないプロファイルを標準的なプロファイルに再構成できる。
【0070】
固有ベクトルは固定されているが、エッジプロファイルの投影値は、楕円の境界に従って修正又は変更される。ここで二次元平面における楕円は、第一の固有ベクトル及び第二の固有ベクトルの固有値を表す。
【0071】
本実施の形態に係る横方向位置推定装置100では、再構成のアルゴリズムを決定するためのトレーニングデータとして、64m×64mの領域に対する画素数が192×192である340枚の画像データを用いる。また、上述のとおり、取得部10のLIDARは、192×192画素の画像データを取得するため、エッジプロファイルは、1×192ベクトルである。一方、記憶部50が有するマップ情報のマップエッジプロファイルは、1×256ベクトルである。これらのベクトルを照合することにより、最も合致した横方向位置を求める。
【0072】
また、主要な固有ベクトルによって、トレーニングデータから得られるプロファイルのピーク間の最も重要な特性及び関係を表現し得る。したがって、LIDARによって得られるエッジプロファイルを、主要な14個の固有ベクトルだけで十分に再構成できることが分かった。再構成に必要な固有ベクトルの個数について、
図9を用いて説明する。
図9は、本実施の形態に係る再構成において使用する固有ベクトルと、当該固有ベクトルを用いた符号化によってプロファイルに生じる変化の大きさとの関係を示すグラフである。
図9に示されるように、最初の14個の固有ベクトルだけで、全変化量の約75%の変化を生じさせることができる。
【0073】
[1-3.横方向位置推定方法]
次に、本実施の形態に係る横方向位置推定装置100において用いられる横方向位置推定方法について、動作例を参照しながら説明する。
図10は、本実施の形態に係る横方向位置推定方法を示すフローチャートである。
図11は、本実施の形態に係る横方向位置推定装置100の動作例を示す図である。
図11においては、
図5~
図7を用いて上述した雪が積もった道路における動作例が示されている。
図11の画像(a)は、マップ情報を示す画像である。
図11のグラフ(b)は、上記の式(1)及び式(2)を用いてマップ情報から生成されたマップエッジプロファイルである。
図11のグラフ(c)は、グラフ(b)に示されるマップエッジプロファイルと、グラフ(f)に示される再構成前のエッジプロファイルとを上記式(3)に入力することによって求められたオフセット量に基いて、グラフ(f)に示される再構成前のエッジプロファイルをグラフ(b)に示されるマップエッジプロファイルに重ね合わせたグラフである。なお、グラフ(c)では、マップエッジプロファイル及びエッジプロファイルがそれぞれ実線及び点線で示されている。
図11の画像(d)は、グラフ(c)に示される照合結果に基いて、マップ情報を示す画像(a)と画像(e)とを重ね合わせた図である。
図11の画像(e)は、取得部10によって取得された画像データを示す画像である。
図11のグラフ(f)は、上記の式(1)及び式(2)を用いて、画像(e)に示される画像データから生成されたエッジプロファイルを示す。
図11のグラフ(g)は、上記の式(9)によって得られた再構成されたエッジプロファイルである。
図11のグラフ(h)は、グラフ(f)に示される再構成される前のエッジプロファイルと、グラフ(g)に示される再構成されたエッジプロファイルとを重ね合わせたグラフである。
図11のグラフ(i)は、グラフ(b)に示されるマップエッジプロファイルと、グラフ(g)に示される再構成後のエッジプロファイルとを上記式(3)に入力することによって求められたオフセット量に基いて、グラフ(f)に示される再構成前のエッジプロファイルをグラフ(b)に示されるマップエッジプロファイルに重ね合わせたグラフである。ここで、
図11のグラフ(c)及びグラフ(i)は、いずれもグラフ(b)とグラフ(f)とを重ね合わせたグラフであるが、上記式(3)に入力するエッジプロファイルが異なるため、オフセット量が異なる。グラフ(i)の方がグラフ(c)より正しい位置にグラフ(f)が重ね合わされている。
【0074】
図11の画像(j)は、グラフ(i)に示される照合結果に基いてマップ情報を示す画像(a)と画像(e)とを重ね合わせた図である。なお、再構成後のエッジプロファイルを示すグラフ(g)を基にデータ画像を復元することができないので、画像(j)においては元のデータ画像である画像(e)をそのまま使用している。グラフ(i)と同様に、上記式(3)に用いた入力として、再構成前のグラフ(f)でなく、再構成後のグラフ(g)を使っているので、画像(e)の位置が、画像(d)における位置と少し変わっている。画像(j)においては、画像(d)より正しい位置に画像(e)が重ね合わされている。
【0075】
図10に示されるように、横方向位置推定装置100の取得部10は、車両V10が走行している道路を車両V10から撮像した画像データを取得する(S10)。例えば、
図11の画像(e)に示されるような画像をLIDARの観測値から取得する。なお、
図11の画像(e)は、
図7の画像(a)と同じ画像データである。
【0076】
続いて、再構成部20は、取得部10が取得した画像データから得られる横方向位置とエッジ強度との関係を示すエッジプロファイルを取得する(S20)。再構成部20は、
図11の画像(e)に示すような画像データから、
図11のグラフ(f)に示すようなエッジプロファイルを生成する。
【0077】
続いて、エッジプロファイルにおけるエッジ強度を強調することによってエッジプロファイルの再構成を行う(S30)。ここでは、上述した再構成方法により、エッジプロファイルの再構成を行うことにより、
図11のグラフ(g)に示されるようなエッジプロファイルを得る。なお、
図11のグラフ(h)は、再構成前のエッジプロファイル(点線)と再構成後のエッジプロファイル(実線)とを重ねて示したグラフである。
図11のグラフ(h)に示されるように、再構成によって、エッジプロファイルのうち、道路の車道境界線に対応する横方向位置のエッジなどの強度が強調されている。また、同時に、雪などに起因するマップ情報にないエッジを低減する。
【0078】
続いて、照合部30は、取得部10によって取得された画像データに対応する道路のマップ情報から得られる横方向位置とエッジ強度との関係を示すマップエッジプロファイルを取得する(S40)。本実施の形態では、照合部30は、
図11の画像(a)に示されるようなマップ情報を記憶部50から取得し、
図11のグラフ(b)に示されるようなマップエッジプロファイルを生成する。
【0079】
続いて、照合部30は、再構成されたエッジプロファイルと、マップエッジプロファイルと、を照合する(S50)。具体的には、照合部30は、
図11のグラフ(b)に示されるような、マップエッジプロファイルと、グラフ(g)に示されるような再構成されたエッジプロファイルと、を照合する。本実施の形態に係る照合においては、上記式(3)が用いられる。この結果、再構成されたエッジプロファイルとマップエッジプロファイルとの位置関係が、
図11のグラフ(i)に示されている。
【0080】
続いて、照合部30は、照合の結果に基づいて、車両V10の横方向位置を算出する(S60)。
図11の画像(j)は、照合の結果を示す画像である。
図11の画像(j)は、マップ情報を示す画像(a)における画像(e)の位置を示す。
図11の画像(j)の白線枠内が画像(e)に対応する位置である。
図11の画像(j)に示されるように、画像(e)の位置が精度良く求められている。
【0081】
一方、再構成前のエッジプロファイルをそのまま用いて照合を行った場合には、エッジプロファイルとマップエッジプロファイルとは、
図11のグラフ(c)に示されるように照合される。
図11の画像(d)は、照合の結果を示す画像である。
図11の画像(d)は、画像(j)と同様にマップ情報を示す画像(a)における画像(e)の位置を示す。
図11の画像(d)に示されるように、再構成を行わない場合には、画像データの位置が画像(j)の場合より下方にずれており、正しく照合されていないことがわかる。
【0082】
以上のように、本実施の形態に係る横方向位置推定装置及び横方向位置推定方法によれば、エッジプロファイルの再構成を行うことによって、再構成を行わない場合より、精度良く横方向位置を推定できる。
【0083】
続いて、他の動作例について
図12~
図14を用いて説明する。
図12~
図14は、本実施の形態に係る横方向位置推定装置100の他の動作例を示す図である。
図12~
図14には、
図11と同様に動作例が示されている。
図12~
図14の画像(a)は、マップ情報を示す画像である。
図12~
図14のグラフ(b)は、上記の式(1)及び式(2)を用いてマップ情報から生成されたマップエッジプロファイルである。
図12~
図14のグラフ(c)は、マップエッジプロファイルと、再構成前のエッジプロファイルとを上記式(3)を用いて照合した結果を示すグラフである。つまり、各グラフ(c)は、各グラフ(b)のマップエッジプロファイルと、グラフ(f)に示されるエッジプロファイルとを重ね合わせたグラフである。
図12~
図14の画像(d)は、グラフ(c)に示される照合結果に基いて、マップ情報を示す画像(a)と画像(e)とを重ね合わせた図である。
図12~
図14の画像(e)は、取得部10によって取得された画像データを示す画像である。
図12~
図14のグラフ(f)は、上記の式(1)及び式(2)を用いて、画像(e)に示される画像データから生成されたエッジプロファイルを示す。
図12~
図14のグラフ(g)は、上記の式(9)によって得られた再構成されたエッジプロファイルである。
図12~
図14のグラフ(h)は、グラフ(f)に示される再構成される前のエッジプロファイルと、グラフ(g)に示される再構成されたエッジプロファイルとを重ね合わせたグラフである。
図12~
図14のグラフ(i)は、上記の式(3)を用いた照合結果に基いて、グラフ(b)に示されるマップエッジプロファイルと、グラフ(f)に示される再構成前のエッジプロファイルとを重ね合わせたグラフである。
図12~
図14の画像(j)は、上記の式(3)を用いた照合結果に基いてマップ情報を示す画像(a)と画像(e)とを重ね合わせた図である。
【0084】
図12に示される動作例は、舗装工事中の道路における動作を示す例である。
図12の画像(e)に示されるように、舗装工事中であるため、車道境界線がほとんど認められない。このような道路状況においても、エッジプロファイルを再構成することで、画像(j)に示されるように、横方向位置を精度良く推定できる。一方、エッジプロファイルを再構成しない場合には、
図12の画像(d)に示されるように、画像データの位置が画像(j)の場合より上方にずれており、正しく照合されていないことがわかる。
【0085】
図13に示される動作例は、車道境界線が不鮮明であり、かつ、車道の外側に雪が積もっている道路における動作を示す例である。この場合、レーザに対する車道境界線での反射率が低下し、
図13の画像(e)に示されるように、車道境界線の鮮明度が低下する。一方、レーザに対する雪の反射率が比較的高いため、雪によって形成されるエッジが照合において支配的となり得る。このような道路状況においても、エッジプロファイルを再構成することで、画像(j)に示されるように、横方向位置を精度良く推定できる。一方、エッジプロファイルを再構成しない場合には、
図13の画像(d)に示されるように、雪によって形成されるエッジの影響で画像データの位置が画像(j)の場合より下方にずれており、正しく照合されていないことがわかる。
【0086】
図14に示される動作例は、路面が濡れている道路における動作を示す例である。この場合、レーザに対する車道境界線での反射率が低下し、
図14の画像(e)に示されるように、車道境界線の位置情報がほとんど得られない。このような道路状況においても、エッジプロファイルを再構成することで、画像(j)に示されるように、横方向位置を精度良く推定できる。一方、エッジプロファイルを再構成しない場合には、
図14の画像(d)に示されるように、画像データの位置が画像(j)の場合より情報にずれており、正しく照合されていないことがわかる。
【0087】
以上のように、本実施の形態に係る横方向位置推定方法及び横方向位置推定装置100によれば、車道境界線などの標識の情報の少なくとも一部が失われていても、エッジプロファイルを再構成することで精度良く横方向位置を推定できる。また、本実施の形態によれば、雪などが、道路の標識などと誤認され得る場合にも、エッジプロファイルを再構成することで、精度良く横方向位置を推定できる。言い換えると、本実施の形態では、道路状況のダイナミックに変化に対してロバストな横方向位置推定装置及び横方向位置推定方法を実現できる。なお、上述した例以外にも、例えば、道路上及び道路付近の植物の状態などによっても、エッジプロファイルは変化し得るが、このような場合も含めてあらゆる道路状況のダイナミックな変化に対して本実施の形態に係る横方向位置推定装置及び横方向位置推定方法はロバストである。
【0088】
発明者らが条件の異なる多数の道路において実験した結果によれば、再構成を行わなかった場合は、精度良く推定できたのは31%程度に留まったのに対して、再構成を行った場合には、83%程度の実験において精度よく推定できた。
【0089】
車両V10の自動運転を実現するためには、天候などに起因する道路状況のダイナミックな変化がある場合にも、安全性を確保することが必要である。このため、本実施の形態に係る横方向位置推定装置及び横方向位置推定方法は、自動運転を行う車両V10に特に有効である。また、本実施の形態に係る横方向位置推定方法は、車両V10の自動運転において、リアルタイムで横方向位置を推定することができる程度にシンプルな演算によって実現できる。
【0090】
[1-4.まとめ]
以上のように、本実施の形態に係る横方向位置推定装置100は、移動体の走行方向に対する横方向位置を推定する横方向位置推定装置であって、移動体が走行している道路を移動体から撮像した画像データを取得する取得部10と、画像データにおける横方向位置と、横方向位置に対する画像データにおける輝度の変化率を示すエッジ強度との関係を示すエッジプロファイルにおいて、エッジ強度を強調することによってエッジプロファイルの再構成を行う再構成部20と、再構成されたエッジプロファイルと、画像データに対応する道路のマップ情報から得られる横方向位置とエッジ強度との関係を示すマップエッジプロファイルと、を照合することによって、移動体の横方向位置を算出する照合部30とを備える。
【0091】
これにより、画像データから得られるエッジプロファイルの強度が横方向位置推定を精度良く行うために不十分である場合にも、画像データから得られるエッジプロファイルにおけるエッジ強度を再構成部によって強調することで、精度良く横方向位置を推定できる。言い換えると、本実施の形態では、道路状況のダイナミックに変化に対してロバストな横方向位置推定装置を実現できる。したがって、本実施の形態に係る横方向位置推定装置を例えば自動運転を行う車両に適用することで、自動運転における安全性を高めることができる。また、車両V10の自動運転を実現するためには、天候などに起因する道路状況のダイナミックな変化がある場合にも、安全性を確保することが必要である。このため、本実施の形態に係る横方向位置推定装置及び横方向位置推定方法は、自動運転を行う車両V10に特に有効である。また、本実施の形態に係る横方向位置推定方法は、車両V10の自動運転において、リアルタイムで横方向位置を推定することができる程度にシンプルな演算によって実現できる。
【0092】
また、本実施の形態に係る横方向位置推定方法は、移動体の走行方向に対する横方向位置を推定する横方向位置推定方法であって、移動体が走行している道路を移動体から撮像した画像データを取得する取得ステップと、画像データにおける横方向位置と、横方向位置に対する画像データにおける輝度の変化率を示すエッジ強度との関係を示すエッジプロファイルにおいて、エッジ強度を強調することによってエッジプロファイルの再構成を行う再構成ステップと、再構成されたエッジプロファイルと、画像データに対応する道路のマップ情報から得られる横方向位置とエッジ強度との関係を示すマップエッジプロファイルと、を照合することによって、移動体の横方向位置を算出する照合ステップとを含む。
【0093】
これにより、上述の横方向位置推定装置と同様の効果を得ることができる。
【0094】
また、横方向位置推定装置100において、再構成部20は、機械学習によって再構成のアルゴリズムを予め決定してもよい。
【0095】
これにより、機械学習で用いるトレーニングデータを十分に準備することで、容易に横方向位置推定の精度を高めることができる。
【0096】
また、横方向位置推定装置100において、再構成部20は、機械学習においてPCAを用いてもよい。
【0097】
これにより、マップ情報のデータの構造をモデル化できる。
【0098】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る横方向位置推定装置及び横方向位置推定方法について説明する。実施の形態1に係る横方向位置推定装置及び横方向位置推定方法においては、エッジプロファイルの再構成のアルゴリズムの決定においてPCAを用いたが、本実施の形態では、ニューラルネットワークを用いる。以下、本実施の形態に係る再構成のアルゴリズム決定方法について説明する。
【0099】
上述のとおり、本実施の形態にでは、ニューラルネットワークを用いた機械学習によって、再構成のアルゴリズムを決定する。
【0100】
本実施の形態に係る再構成部には、取得部によって取得された複数のサンプルとなる画像データから得られるエッジプロファイルと、当該画像データに対応するマップ情報から得られるマップエッジプロファイルとが予め入力される。なお、ここで画像データは、取得部が取得する画像データと同様の画像データであればよく、必ずしも取得部によって取得されなくてもよい。
【0101】
再構成部にエッジプロファイルが入力される際、再構成部には、マップエッジプロファイルにおけるエッジプロファイルが対応する位置の情報も入力される。これらの情報を用いて、再構成部は、エッジプロファイルをマップエッジプロファイルに近いプロファイルに再構成するアルゴリズムを学習する。再構成部に、十分多くのエッジプロファイル及びマップエッジプロファイルを入力して学習させることにより、エッジプロファイルを精度良く再構成するアルゴリズムを決定できる。つまり、本実施の形態によれば、横方向位置を精度良く推定できる。さらに、本実施の形態に係る再構成部及び再構成方法によれば、機械学習量を増大させるほど、横方向位置推定の精度をより一層向上させることができる。したがって、本実施の形態によれば、実施の形態1より一層精度良く横方向位置を推定できる。
【0102】
(変形例など)
以上、本発明の一態様に係る横方向位置推定装置及び横方向位置推定方法について、各実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を各実施の形態に施したものも、本発明の範囲内に含まれてもよい。
【0103】
例えば、上記各実施の形態では、取得部10が、LIDARによって画像データを取得する例を示したが、取得部10は、LIDAR以外の検出器を用いて画像データを取得してもよい。例えば、カメラなどの他の撮像装置を用いて画像データを取得してもよい。
【0104】
また、上記各実施の形態に係る横方向位置推定装置及び横方向位置推定方法において、マップ情報及び画像データとして、上述のとおり、路面から30cmの高さにおける二次元画像データを用いることができる。このような二次元画像データによって、路面から30cm程度以下における道路の情報として、車道境界線、路面標識、道路の端縁及び縁石のような一般的な道路に共通するランドマークを表すことができる。これらのランドマークは都市では非常に一般的に存在するものである。上記各実施の形態におけるエッジプロファイルは、これらのランドマークのパターンを、車道境界線、路面標識、道路の端縁、縁石等のピークによって表す。上記各実施の形態に係る横方向位置推定装置及び横方向位置推定方法は、機械学習及び移動のために路面の情報のみを使用するため、上記のピークの分布及び振幅の異なるパターンを学習することにより、学習を行った都市又は国と異なる都市又は国でも使用することができる。
【0105】
また、上記各実施の形態では、エッジプロファイルは、再構成部20において生成されたが、エッジプロファイルは、再構成部20以外の構成要素によって生成されてもよい。例えば、エッジプロファイルは、取得部10で生成されてもよい。
【0106】
また、上記各実施の形態では、移動体の一例として車両V10を用いる例を示したが、移動体は、車両V10に限定されない。道路上を移動し得る物体であればよい。
【0107】
なお、上記実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。ここで、上記実施の形態の横方向位置推定装置100などを実現するソフトウェアは、
図10に示されるフローチャートに含まれる各ステップをコンピュータに実行させるプログラムである。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の一態様に係る横方向位置推定装置及び横方向位置推定方法は、車両などの移動体の横方向位置を精度良く推定できるという効果を奏し、例えば、自動運転のために車両などに適用することができる。
【符号の説明】
【0109】
10 取得部
20 再構成部
30 照合部
40 位置検出部
50 記憶部
100 横方向位置推定装置
V10 車両