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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】粒子層式コレクタ
(51)【国際特許分類】
   B01D 47/06 20060101AFI20230216BHJP
   B01D 50/40 20220101ALI20230216BHJP
【FI】
B01D47/06 A
B01D50/40
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018191348
(22)【出願日】2018-10-10
(65)【公開番号】P2019141831
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-09-09
(31)【優先権主張番号】P 2018026737
(32)【優先日】2018-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591059445
【氏名又は名称】ホーコス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐介
【審査官】谷本 怜美
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-001433(JP,A)
【文献】特開2015-221407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 47/00-47/18
B01D 50/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気流に含まれる汚染粒子を捕集する粒子層式コレクタは、
ハウジングと、
前記ハウジング内部に前記気流を導入する吸込口と、
前記ハウジング内部に着脱可能に収容され、上流側および下流側に通気面を有する粒子層フォルダ内に多数の粒状または不定形状の充填粒子が充填される1つ以上の粒子層ユニットと、
前記粒子層ユニットの上流側に配置されて、前記充填粒子を湿潤させて前記充填粒子間の気流通路を狭めるための液体を供給する1つ以上の液体供給手段と、
前記粒子層ユニットを通過し、前記汚染粒子が捕集されて清浄になった気流を前記ハウジングの外に排出するための排気口と、
を有し、
前記充填粒子は、二層以上十層以下からなる粒子層をなし、さらに1~5mmのうち、すくなくとも一種類以上の粒径を有し、前記粒子層ユニット内で前記充填粒子同士が自重により安定した最密充填構造を保った状態で前記粒子層ユニットの上流側通気面を通過する前記気流を、平均面速1m/s以上で通過させるとともに、
前記粒子層フォルダ内の充填空間に充填される前記充填粒子の全容量は、前記充填空間の全容量より少なく、前記充填空間内上部には、前記充填粒子がない未充填空間ができ、前記未充填空間は、前記粒子層フォルダ上部の通気性のない非通気面部内に位置するよう前記充填粒子が充填されることを特徴とする粒子層式コレクタ。
【請求項2】
前記粒子層ユニットは、前記粒子層が垂直となるように、または、垂直位置から最大60度までの角度範囲で傾斜を持つように前記ハウジング内に設置されることを特徴とする請求項1に記載の粒子層式コレクタ。
【請求項3】
前記粒子層ユニットの下流側には、気流処理室が設けられており、前記気流処理室は、前記液体供給手段から供給された前記液体が前記粒子層を通過して前記汚染粒子を含んだ液滴となり、 前記液滴が重力沈降するための空間を有するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の粒子層式コレクタ。
【請求項4】
前記粒子層ユニットの下流側には、前記液体供給手段から供給された前記液体が前記粒子層を通過して前記汚染粒子を含んだ液滴を気流から分離する分離ユニットが配置され、前記分離ユニットは、デミスタであることを特徴とする請求項1または2に記載の粒子層式コレクタ。
【請求項5】
前記気流処理室の下流側には、前記液滴を気流から分離する分離ユニットが配置され、前記分離ユニットは、デミスタであることを特徴とする請求項に記載の粒子層式コレクタ。
【請求項6】
前記デミスタは、円筒形状を有し、前記円筒形状の下流側面のみ通気できるように設けられていることを特徴とする請求項4または5に記載の粒子層式コレクタ。
【請求項7】
前記汚染粒子はオイルミストであり、前記液体供給手段から供給される前記液体は、前記オイルミストと親和性のある液であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一つに記載の粒子層式コレクタ。
【請求項8】
前記液体供給手段はスプレーノズルであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一つに記載の粒子層式コレクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状または不定形状の充填物を用い、気流に含まれるミストなどの汚染粒子を捕集する装置に関し、特に、工作機械の加工中に発生するオイルミストの捕集に好適な粒子層式コレクタに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の稼働する工場において、金属等の被削材(ワーク)に切削などの加工を施す際、切削工具の焼き付き防止や加工の精度を良好にするため、高速で回転する切削工具とワークの接点、つまり加工箇所に向け、大量のクーラントや極微量の油剤を潤滑冷却剤として供給する。これら潤滑冷却剤は、せん断による微細化や、加工箇所で発生する加工熱による蒸発などによって、オイルミストとなって空気中に浮遊し、作業環境を悪化させる原因となる。そこで、工作機械にオイルミストを捕集するコレクタを設置するなどして、オイルミストが工場内に拡散するのを防止する必要がある。
【0003】
従来、オイルミストを捕集するコレクタとしては、フィルタ式、静電式、慣性式の装置が種々開発されている。もっとも一般的には、不織布によりろ過を行うフィルタ式のものが広く採用されている。しかし、不織布は目詰まりを起こすため、処理できる風量が時間の経過とともに低下する。そのため、不織布のメンテナンスや交換が必要となり、労力・費用ともに不経済であり、また使用済みの不織布は廃棄物としての処分が必要となる。
【0004】
静電式のものとしては、電気集塵式のものがあり、粒径の非常に微細なオイルミストが大量に発生する工場などで使用されるが、メンテナンスに専門性を必要とする場合もあり、その際には、専門家によるメンテナンスが終了するまでの比較的長い時間運転が止まってしまう。また、メンテナンスを行っていても環境の変化等によりリーク電流やスパークが発生するおそれがある。さらに、フィルタ式や慣性式のものと比べ、価格が比較的高額なところも難点である。
【0005】
そこで、廃棄物の削減、フィルタ交換などに要する労力やランニングコストの削減の実現を目指し、フィルタの代わりに高速で回転する円盤状の捕集ディスク板を用いて、気流から粉塵やオイルミストなどの汚染粒子を分離する慣性式のフィルタレスコレクタが種々開発されている。たとえば、特許文献1のフィルタレスコレクタは、高速で回転する捕集ディスクに汚染粒子を含む気流を衝突させ、捕集された汚染粒子は、高速回転で発生する遠心力により、捕集ディスク板の外周へと振り切られるため、捕集効率が高いという優れたメリットを有する。
【0006】
しかしながら、この捕集ディスクは、汚染粒子を捕集する部位が細かいメッシュで構成されており、さらに基本的に乾式で使用されるため、時間の経過とともに、捕集部位に汚染粒子が堆積するなどして、汚染粒子が詰まりやすくなるという処理風量低下の問題を完全に解決しきれていない。また、汚染粒子が目詰まりした細かいメッシュは洗浄しづらく、また捕集ディスクは高速で回転することから装置にしっかり固定されているため、装置から取り外すには工具の使用が不可欠となり、手間がかかる。
【0007】
そこで、粒状の濾材が充填されるケース内において、粒状濾材が互いに遊びをもって回転自在に収容されることで、粒状濾材は自由に回転・遊動できるため、粒状濾材同士が互いにぶつかり、付着した油脂や粉塵が分離されやすくなる(堆積しにくい)効果を有した粒子層フィルタも開発されており、これらは、比較的長く濾過機能を保持できるという利点がある(例えば、特許文献2~3)。
【0008】
特許文献2~3では、粒状濾材を収容したケース全体を洗浄液につけてケースを揺すれば、粒状濾材が遊動して表面にムラなく洗浄液が行き渡り、簡単に粒子層フィルタを洗浄することができる。
【0009】
しかしながら、特許文献2~3は、濾材が流動して洗浄性は優れるものの、粒状濾材は乾式で使用される。そのため、例えば、金属等のワークの切削の際に冷却潤滑剤として使用される水溶性クーラントが加工熱等により空気中にオイルミストとなって飛散し、このオイルミストを捕集する場合には、水分の蒸発に伴い、濾材の粒子間において水溶性クーラントがゲル化して固着するため、早期に目詰まりを起こしやすい。また油性クーラントによるオイルミストの場合、オイルミストは細かい粒子径になり易く、付着性が乏しいため、ほとんど捕集されず、捕集効率は非常に低いものとなる。
【0010】
そこで、濾材を水や洗剤などの液体で湿潤させ、汚染粒子を捕集させ、かつ濾材を洗い流すことによって、濾材の掃除を不要とするコレクタも存在する(例えば、特許文献4~5)。特許文献4は、衝突・慣性フィルタの上流で、含塵エアの汚染粒子に液体を吸着させることによって、液体が吸着された汚染粒子を衝突・慣性フィルタで捕集するのである。またさらに、特許文献4の図3に示すように液体を衝突・慣性フィルタの前面に沿って流下させることにより、フィルタ洗浄の機能も持たせている。
【0011】
また、特許文献5では、空気流路に設けられた粒状濾材の上流に、この粒状濾材を湿潤させるための給水装置を設けて、空気の清浄化と同時に加湿し、さらに濾材に捕集された汚染粒子を常に洗い流して目詰まりを生じさせないようにしたものである。
【0012】
しかしながら、特許文献4では、衝突・慣性フィルタの前段階で、含塵エアと液体を接触させておく必要があり、ムラなく接触させるには比較的大量の液体を供給しなければならない。また噴霧範囲にムラがある場合、十分な捕集効率は得られない。さらに、衝突・慣性フィルタの前面に液体を流下させるだけでは、実質は十分なフィルタの洗浄効果は得られない。
【0013】
また、特許文献5は、粒状濾材が充填された充填層全体に液を均一に供給しなければ捕集効率が低下するため、必然的に液の供給量が増加する。また、ドレン回収のために大きな排出装置が必要となり、装置が複雑・巨大化し、製造コストも増大する。
【0014】
また、特許文献6のように濾材の粒子径が非常に細かい場合、極微細な汚染粒子を捕集することはできるものの、濾材を収容するケーシングは、その通過性を有しながら、粒子の流出を防止するために、網目状(または多孔状など)部材の開口を極端に小さくしなければならず、目詰まりの原因となりやすい。そのため、圧力損失が増大しやすく、大容量の動力が必要となるなど、ランニングコストの増大を招き、省エネの実現が難しくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特開2013‐22495号公報
【文献】特開平7-332724号公報
【文献】実開昭57-25719号公報
【文献】特開平6-335610号公報
【文献】特開平4-367705号公報
【文献】特開2005-46676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、前記のような問題点に鑑み、使用済みの不織布などの廃棄物を出さず、省エネが実現でき、処理風量の低下がほとんどなく、定期的なメンテナンス以外では処理風量回復のためのメンテナンスがほとんど不要な粒子層式コレクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る粒子層式コレクタは、ハウジングと、ハウジング内部に気流を導入する吸込口と、ハウジング内部に着脱可能に収容され、上流側および下流側に通気面を有する粒子層フォルダ内に多数の粒状または不定形状の充填粒子が充填される1つ以上の粒子層ユニットと、粒子層ユニットの上流側に配置されて、充填粒子を湿潤させて充填粒子間の気流通路を狭めるための液体を供給する1つ以上の液体供給手段と、粒子層ユニットを通過し、汚染粒子が捕集されて清浄になった気流をハウジングの外に排出するための排気口とを有し、充填粒子は、二層以上十層以下からなる粒子層をなし、さらに1~5mmのうち、すくなくとも一種類以上の粒径を有し、粒子層ユニット内で充填粒子同士が自重により安定した最密充填構造を保った状態で粒子層ユニットの上流側通気面を通過する前記気流を平均面速1m/s以上で通過させるとともに、粒子層フォルダ内の充填空間に充填される充填粒子の全容量は、充填空間の全容量より少なく、充填空間内上部には、充填粒子がない未充填空間ができ、この未充填空間は、粒子層フォルダ上部の通気性のない非通気面部内に位置するよう充填粒子が充填されることを特徴とする。
【0018】
本発明の粒子層式コレクタは、粒子層ユニットは、粒子層が垂直、または、垂直位置から最大60度までの角度範囲で傾斜を持つように、ハウジング内に着脱可能に設置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の粒子層式コレクタによれば、汚染粒子の捕集部材に充填粒子を使用するため、不織布などの濾材の交換が不要となり、廃棄物処分の必要がなく、交換作業のための労力も省くことができる。また、充填粒子を湿潤させ、さらに高速の気流を通過させるため、汚染粒子は充填粒子の表面や充填粒子間の液体に衝突、接触し、高い捕集効率を得ることができる。さらに装置は小型であるにも関わらず、処理風量を大きくできる。湿潤された粒子層は、高速の気流によって液体が下流に押し出され、常に洗い流される状態となる。そのため、処理風量の低下もなくなり、処理風量を回復させるためのメンテナンスがほとんど不要となる。また、粒子層の層数が少ないため、圧力損失をできる限り小さくでき、省エネも実現できる。装置の構成自体もシンプルで部品点数も少なくすることができる。
【0020】
本発明の粒子層式コレクタの充填粒子の粒径は、目詰まりを防止しつつ高い捕集効率をバランスよく実現でき、充填粒子そのものの扱いも難しくない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の粒子層式コレクタの捕集原理を示す図である。
図2】本発明の粒子層式コレクタを示す(a)断面図、(b)断面斜視図である。
図3】粒子層ユニットの(a)斜視カットモデル図、(b)断面図、(c)粒子層のイメージ図である。
図4】本発明の粒子層式コレクタの別の実施形態を示す(a)断面図、(b)断面斜視図、(c)分離ユニットの分解図である。
図5】本発明の粒子層式コレクタのさらに別の実施形態を示す(a)断面図、(b)断面斜視図である。
図6】本発明の粒子層式コレクタのさらに別の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態につき図面を参照しながら説明する。各図において、同一の部分または対応する部分には、同一の符号を付してある。
【0023】
図1は、本発明の粒子層式コレクタの捕集原理を模式的に表した図である。ガラスビーズなど球状をした充填粒子で構成される粒子層の上流側から液体を供給(噴霧)し、充填粒子の表面をまんべんなく湿潤させる。充填粒子間の隙間には、気流の通り道を残しつつ供給された液体が広がっている。液体を供給することにより充填粒子間の隙間が狭まる。そこへオイルミストを含んだ気流が高速で通過し、オイルミストは充填粒子の表面や充填粒子間の液体に衝突しながら下流へと進む。オイルミストは液体と接触することにより分子間力または表面張力などの作用により液体と一体または混ざり合った状態となり、充填粒子間を気流が通過する過程でオイルミストが混ざり合った液体は凝集され、オイルミストを含む大きな液滴となって下流へと押し出される。
【0024】
捕集対象となるオイルミストを含んだ気流は、1m/s以上の高速の面速度で粒子層へと突入する。充填粒子を湿潤させることで液体により充填粒子間の気流通路が狭まり、気流に含まれたオイルミストは充填粒子の表面や充填粒子間の液体に衝突しやすくなる(接触効率が高まる)。下流に押し出され、大きな液滴となったオイルミストが混ざり合った液体の多くは、重力によって沈降する。細かい飛沫は下流でデミスタに衝突・凝集され、ドレン液として排出される。そして、排気口からはオイルミストや液体が取り除かれた清浄な気流のみが排出される。なお、図1では、粒子層の直下流にデミスタを設けているが、これに限定される意味ではない。デミスタは省略することもできるし、送風機の下流に設けることもできる。
【0025】
液体で湿潤された薄い層厚の粒子層に高速の気流を通過させることにより、オイルミストは液体と一緒に常に下流に押し出されるため、粒子層Rは常に洗い流されることとなり、粒子層に汚染粒子が堆積して、処理風量低下の原因となる目詰まりが起きることがない。本発明の粒子層は、汚染粒子をろ過する濾材ともいえ、汚染粒子を衝突させて分離する慣性衝突材ともいえ、双方の機能を有する。
【0026】
まず、図2を参照して、本実施形態による粒子層式コレクタの全体構造を説明する。粒子層式コレクタ100は、箱体をしたハウジング本体1に、吸込口2と、気流導入室10と、スプレーノズル20、粒子層ユニット30、気流処理室40、分離ユニット50、清浄気流出口室60とを有している。
【0027】
吸込口2は、汚染粒子を含む気流を吸い込む。気流導入室10は、吸込口2から吸い込まれた気流を粒子層ユニット30へ導く。オイルミストを含む気流は、ハウジング本体1内を水平に流れる(図2の矢印Fは気流の流路を示す。)。なお、図2に示す吸込口2は、ハウジング本体1の前面側板1aに設けられているが、天井面板1bに上向きに設けても、横向きに設けてもよい。
【0028】
気流導入室10の上流側には、スプレーノズル20が設けられ、気流導入室10の下流に設置された粒子層ユニット30に向けて液体を噴霧し、粒子層を湿潤させる。気流導入室10が位置するハウジング本体1の底面板1cには、液体排出孔3が設けられている。
【0029】
粒子層ユニット30は、図3に示すように、矩形フレーム状の粒子層フォルダ31内に充填粒子32を充填したものである。充填粒子32で構成される粒子層Rの上流側および下流側にそれぞれ通気面33、34を有する。通気面33、34には、充填粒子32が抜け落ちないよう粒子層金網33a、34aが設置されている。本実施形態では粒子層フォルダ31内の上下流方向の幅(厚み)が、粒子層Rの層厚を決めるスペーサとしての役割を果たしている。
【0030】
粒子層ユニット30に充填される充填粒子32の全容量は、粒子層フォルダ31内に形成される充填空間Sの全容量よりも少ない量が充填される。図2や3(b)に示すように、粒子層ユニット30は、水平な流路Fに対し粒子層Rが直交するように、ハウジング本体1内に垂直に立設され、固定される。その際、充填空間Sの上方には未充填空間S´ができる。粒子層フォルダ31の上部には通気性のない非通気面部35、36を有しており、未充填空間S´は、この非通気面部35、36内に位置するように充填粒子32が充填される。
【0031】
通気面33、34を通過する高速の気流によって、充填粒子32が未充填空間S´内で浮き上がらないように、充填粒子32は非通気面部35、36の高さ中央くらいまで達するように充填させているが、充填粒子32が自重により浮き上がらない厚みの積層であればよい。そのため、未充填空間S´に近い上部に充填されている充填粒子32であっても、非通気面部35、36内の充填粒子32の自重により未充填空間S´へと浮きあがらないように安定させることができ、高速気流の影響により粒子層Rに粗密が発生するのを防ぐことができる。
【0032】
本実施形態における粒子層ユニット30の充填粒子32は、粒径2mmのガラスビーズで、層数は三層となるように粒子層を形成している。粒子層ユニット30がハウジング本体1内に装着されているとき、充填粒子32で形成される粒子層Rは、充填粒子32の自重、そして直径と層厚の関係から最密充填構造のような状態を保つ整然とした安定層となる(図3(c)のイメージ図を参照)。
【0033】
粒子層ユニット30の上流側に設置されたスプレーノズル20から粒子層Rに向かって液体が噴霧される。粒子層ユニット30の垂直配置により、液体は、充填粒子32の表面を伝って重力で沈下するため、少量の液体供給であっても、粒子層Rはまんべんなく湿潤され、充填粒子32間の隙間は液体が広がることによって狭くなる。
【0034】
粒子層Rの上流側通気面33を通過する際のオイルミストを含む気流の面速度は、本実施形態では、1m/sの高速である。気流に含まれるオイルミストは、充填粒子32の表面や充填粒子間の液体に衝突して捕集され、供給された液体に混濁される。充填粒子の表面や充填粒子間の液体はオイルミストともに常に高速の気流によって下流へ押し出される。オイルミストを含んだ液体は、粒子層Rに沿って流下しドレンとして排出されるか、また粒子層Rを通過して下流の気流処理室40へと押し出される。
【0035】
湿潤された粒子層Rを通過する際、オイルミストは、最前列の充填粒子32にぶつかるもの、湿潤されたことによって狭くなった充填粒子間の隙間を通過して慣性力で二層目にぶつかるもの、以降の充填粒子32の層間を蛇行しながら進むことにより慣性力でぶつかるもの、といった作用で捕集される。しかし、粒子層Rの上流側通気面33を通過する際のオイルミストを含む気流の面速度を1m/s以上の高速とした場合、最前列と二層目で捕集されるオイルミストの割合が高く、粒子層Rの層数・層厚をいたずらに増やしても、思ったように捕集効率は上がらない。そこで、粒子層Rの層数を必要最小限にし、層厚を非常に薄くすることにより、粒子層Rを気流が高速で通過しても圧力損失を低く抑えることができる。
【0036】
また、噴霧させただけでは液体が届きにくい粒子層Rの最下流列の充填粒子32であっても、粒子層Rの層数が少なく層厚が薄いこと、高速で気流が通過することによって、最下流列の充填粒子32も湿潤されやすくなり、液体の供給量は少なくて済む。
【0037】
充填粒子の表面や充填粒子間の液体にぶつかったオイルミストは供給される液体に混濁し、粒子層Rを伝って流下するか、高速の気流によって下流へと押し出される。粒子層Rは常に洗い流されることとなり、オイルミストは粒子層Rに堆積することなく、処理風量低下の原因となる目詰まりが起きることがない。
【0038】
なお、粒子層ユニット30は、ハウジング本体1内に着脱可能で、天井面板1bに設けられる図示しない蓋付の開口部から取り出し可能にされる。そして、粒子層ユニット30をハウジング本体1から取り出した際には、充填空間Sに対する充填粒子32の充填率が低いため、充填粒子32は互いに流動可能となる特徴を生かし、たとえば洗浄液などの入った洗浄槽などへ粒子層ユニット30を浸けて揺らしながら洗浄することができ、充填粒子32は回転・流動しながら、容易に洗浄される。また、噴流を当てて、粒子同士を動かしながら洗浄することができる。
【0039】
次に、粒子層ユニット30の下流に位置する気流処理室40・分離ユニット50について説明する。気流処理室40の最下流には、気流に含まれる液体を気流から分離除去する分離ユニット50が設置される。分離ユニット50は具体的にはデミスタである。デミスタは、粒子層ユニット30から一定の距離を置いて設置される。粒子層ユニット30と分離ユニット50の間に気流処理室40という空間を設けることにより、粒子層Rの風下に押し出されたオイルミストを含む液体のうち、大きな液滴に凝集されたものは、ここで重力沈降することができる。そして重力沈降した液体は、気流処理室40の底部に設けられた液体排出孔41から外部へ排出される。
【0040】
気流処理室40で重力沈降できなかった粒径の小さな飛沫は、デミスタである分離ユニット50にぶつかり、そこで凝集されて、大きな液滴となり、デミスタを伝って流下し、ドレン液として排出される。デミスタは、たとえば樹脂製のメッシュを幾重にも重ねて構成されており、メッシュを気流が通過する際に、液体の飛沫を受け止めて大粒の液滴に凝集する分離部材である。
【0041】
分離ユニット50を経由して液体が分離された清浄な気流は、清浄気流出口室60へと案内され、出口61を経由して、排気ユニット70の排気口71から装置の外へと排出される。清浄気流出口室60の底部にも液体排出孔62が設けられる。
【0042】
排気ユニット70は、ハウジング本体1の後面側板1dに設置されたファンケーシング72内に送風機73を収容されており、送風機73はモータ74によって回転駆動され、オイルミストを含む気流を吸い込み、清浄となった気流を排出する。
【0043】
次に、図4を参照して、本発明の粒子層式コレクタの別の実施形態を説明する。ここでは、前述の粒子層式コレクタ100と異なる部分のみについて説明する。
【0044】
図4に示すように、粒子層式コレクタ200の分離ユニット250は、円筒形状を有しており、粒子層ユニット30の下流において、分離ユニット250の外周空間が気流処理室240、分離ユニット250の内周空間が清浄気流出口室260であり、清浄気流出口室260の底部には出口261が設けられ、その直下に設けられた排気ユニット270を経て、排気口271へと導かれる。
【0045】
分離ユニット250は、具体的には、図4(c)に示すように、上下方向が開口した円筒形状のリテナ251と、リテナ251の円筒外周の全周にわたりデミスタ252を保持させたもので構成されている。図4に示すように、粒子層ユニット30と分離ユニット250は一定の距離を設けて配置される。分離ユニット250は、気流がバランスよく流れるように、気流処理室250のほぼ中央部に縦置きに配置されている。そして、清浄気流出口室260の底部、ハウジング本体201の底面板201cには、リテナ251と同心円状に設けられた出口261が設けられる。この出口261を介して、清浄気流出口室260は、後述する排気ユニット270と連通される。
【0046】
また、縦置きされるリテナ251の円筒部分の下流方面には、図4(c)に示すように、開口部253が複数設けられる。開口部253を設けないリテナ251の上流方面を粒子層ユニット30側に面するように、分離ユニット250を設置する。
【0047】
オイルミストを含んだ気流はスプレーノズル20からの噴霧により湿潤された粒子層Rの充填粒子32の間を通過し、粒子層の風下に押し出された液体のうち、大きな液滴に凝集されたものは、分離ユニット250に至るまでに設けられた一定の距離の間で重力によって沈降する。ここで重力沈降できなかった飛沫は、分離ユニット250のデミスタ252にぶつかり、そこで大きな液滴に凝集されデミスタを伝って流下する。
【0048】
円筒形状のリテナ251は、粒子層ユニット30に面する側を非通気面とすることで、その非通気面は衝突板の役割を果たすとともに、そこに保持されているデミスタ252は衝突材としてだけでなく、接触材としての役割も有することとなる。飛沫の多くが、その非通気面で大きな液滴に凝集され、リテナ251やデミスタ252を伝って重力沈降を促される。そのため、開口部253を有する下流方面のデミスタ252を通過する気流に巻き込まれる飛沫の量を可能な限り減少させることができる。分離ユニット250により重力沈降した液体は、気流処理室240が位置するハウジング本体201の底面板201cに設けられる液体排出孔241から排出され、ハウジング本体201の外へと排出される。
【0049】
分離ユニット250によって液体が分離された清浄な気流は、分離ユニット250の開口部253から清浄気流出口室260、出口261を経由して、排気ユニット270の排気口271へと排出される。
【0050】
排気ユニット270は、ハウジング本体201の底面側板201cに設置されたファンケーシング272内に送風機273を収容されており、送風機273はモータ274によって回転駆動される。送風機273の回転軸は、リテナ251、出口261と同心円状になるように配置され、送風機273は水平に収容される。モータ274は送風機273の下部に設けられる。
【0051】
次に、図5を参照して、本発明の粒子層式コレクタのさらに別の実施形態を説明する。ここでも、前述の粒子層式コレクタ100、200と異なる部分のみについて説明する。
【0052】
図5に示すように、粒子層式コレクタ300は、円筒形状のハウジング本体301を有している。ハウジング本体301の天井面部301b中心部に上向きの吸込口302を有し、オイルミストを含む気流が吸込まれる。吸込口302直下のハウジング本体301内部には、吸込口302と同心円状に円筒形状の壁部311が設けられる。また、ハウジング本体301の底面部301c中心部には、吸込口302と円筒形状の壁部311と同心円状に上方に向かって円筒形状の凹部301dが設けられ、凹部301dには底面301eが設けられている。壁部311の下端部311aと凹部301dの底面301eの間に、送風機373を設置する。送風機373を駆動するモータ374は、円筒形状の凹部301dの底面301eの下方に突出するように設置される。
【0053】
モータ374で駆動される送風機373は、オイルミストを含む気流を上流側で吸い込み、送風機373の図示しない羽根部分を経て、水平方向の側方へと気流を送るもので、吸込口302になるべく近い上流側に位置するように設けられる。壁部311の内部を第一気流導入室310とする。
【0054】
送風機373の上流側には、スプレーノズル320が設けられ、送風機373に向かって液体が噴霧される。送風機373に噴霧された液体は、送風機373の回転する羽根部分から外周に向かって遠心力で拡散される。
【0055】
壁部311、凹部301dの外周には、一定の距離をおいて、円筒形状の粒子層ユニット330が配置される。壁部311、凹部301dの外周と円筒形状の粒子層ユニット330の内周の間には、第二気流導入室315が形成される。第二気流導入室315では、回転する送風機373の図示しない羽根部分からオイルミストと液体を含む気流が拡散し、粒子層ユニット330に向かって液体が供給される状態となる。オイルミストは、粒子層Rに衝突、捕集、凝集され、液体を含む気流が粒子層ユニット330の下流へと押し出される。
【0056】
なお、送風機373は、吸込口302に近いハウジング本体301内の上方に設けられているので、送風機373から粒子層ユニット33に向かって拡散され供給された液体は、重力沈降によって粒子層Rをまんべんなく湿潤させる。
【0057】
粒子層ユニット330と一定の距離を置いて、円筒形状の分離ユニット350が設置される。粒子層ユニットと分離ユニット350との間の空間は、気流処理室340となす。分離ユニット350とハウジング本体301の外壁の間の清浄気流出口室360を経て、ハウジング本体301の天井面部1aの外周に沿って設けられた複数の排気口371から清浄気流が排出される。気流処理室340や清浄気流出口室360の底面にはドレン用の液体排出孔341や361がそれぞれ設けられる。
【0058】
次に、図6を参照して、本発明の粒子層式コレクタのさらに別の実施形態を説明する。ここでも、前述の粒子層式コレクタ100、200、300と異なる部分について説明する。
【0059】
粒子層式コレクタ400は、箱体をしたハウジング本体401に、吸込口402、気流導入室410、スプレーノズル420、粒子層ユニット430、気流処理室440と、を有している。吸込口402は、ハウジング本体401の天井面401aに設けられ、オイルミストを含んだ気流が気流導入室410へと導入される。
【0060】
ハウジング本体401は、前面側板401bの下部にドレン孔403が設けられる。また、底面板401cは前面側板401bに向かって下るなだらかな傾斜を有している。そして、後面側板401dの外部にはファンケーシング472が設置される。ファンケーシング472の内部には、モータ474によって駆動される送風機473が収容される。ファンケーシング472の上部には排気口471が設けられる。また、後面側板401dの中央部には、気流処理室440とファンケーシング472とが連通するための連通孔404が設けられる。
【0061】
粒子層ユニット430は、吸込口402に対し、45度傾斜させた角度で固定されている。スプレーノズル420は、気流導入室410に設けられて、傾斜している粒子層ユニット430の上方に液体を噴霧する。噴霧された液体は、粒子層ユニット430の傾斜面を伝い、重力沈降によって、粒子層Rをまんべんなく湿潤させる。
【0062】
なお、粒子層ユニット430の粒子層を構成する充填粒子は、粒径1mmのガラスビーズで、図3に示したものと同じく三層となるように粒子層フォルダに充填されている。
【0063】
気流に含まれるオイルミストは、前述の実施形態と同様の原理で、捕集され、供給された液体に混濁される。充填粒子の表面や充填粒子間の液体は、オイルミストとともに高速の気流によって下流へ押し出される。オイルミストを含んだ液体は、粒子層Rに沿って流下しドレンとして排出されるか、また粒子層を通過して下流の気流処理室440へと押し出される。
【0064】
気流処理室440へ押し出された液体は、連通孔404の前方を覆うように垂下させたバッフル板405や、連通孔404前面の下半分を覆う半円バッフル板406にぶつかり、また、重力によって直接、底面板401cに流下する。そして、大きな液滴に凝集されて、ドレン孔403から排出される。
【0065】
そのため、気流処理室440を通過した気流は液体をほぼ含まない清浄気流となって連通孔404を通過する。さらに清浄気流は、連通孔404からファンケーシング472内部を経由して、排気口471へと案内される。
【0066】
ファンケーシング472の上部に設けられた排気口471の上部にはさらに、デミスタである分離ユニット450を設けることもできる。
【0067】
ここで、オイルミストなどの汚染粒子を捕集する手段として、薄い層厚の粒子層を用いる利点を説明する。それは、処理風量を大きく取ることができる点である。従来は捕集効率を向上させる為に、層数を増やす手段が取られていた。これは、充填粒子や、充填粒子間の液体に接触する機会が増えることで、捕集効率が向上するとの考えに基づいており、引き換えに圧力損失を増すことになった。その為粒子層上流側通気面を通過する気流の面速を高速にはできず、面速は速くても0.5m/s程度に留められていたと考えられる。フィルタ式コレクタの不織布の面速は2m/s程度であることから、不織布を厚い層厚の粒子層にて、置換えをしようとすると、装置自体が大型となり不適であったが、薄い層厚の粒子層であれば適応できる。
【0068】
また、面速度が高まるほど、捕集効率も高まるという特徴も有する。実際、圧力損失は高くなるものの、層厚が薄いこともあり面速度を3m/sより速くすることは可能であるが、必要とされる処理風量とモータ容量、圧力損失などを考え、面速度の最適な範囲としては1~3m/s程度までとするのが、捕集効率とエネルギー効率のバランスから最も望ましい。上流側通気面を通過する際の面速度は、上流側通気面の中心部や上部、下部など、通過する場所によって多少の遅速はある。例えば、吸込口がハウジング本体1の前側板1aでなく、天井面板1bに上向きに設けられた場合など、中心部の面速度は上部のそれよりも速くなる。そのため1~3m/sとは、遅速を含めた平均の面速度である。
【0069】
ところで通常、充填粒子の粒子径が小さいほど、充填粒子の表面積が増えるため、気流との接触確率は高くなるが、粒子径が小さくなるほど充填粒子の扱いは難しくなるとともに、一定の層厚を確保するのが難しくなる。本実施形態では直径2mmの粒径のガラスビーズを採用したものと、直径1mmの粒径のガラスビーズを採用したものを公開しているが、これに限らず、例えば、3mmのもの、4mmのもの、5mmの粒径のもの等を適宜選択することができる。
【0070】
なお、市販されている工業用のガラスビーズ製品には粒径にばらつきがある。そのため、例えば、粒径2mmの単一の粒径を有するガラスビーズといっても、粒子層Rを構成するガラスビーズ全ての粒径が厳密に2mmであるという意味ではなく、公差も含め、多少の大小があり、粒径2mmを中心として多少の誤差を含む範囲内の寸法を表わす意味である。
【0071】
具体的には、例えば、粒子層が直径1mmの粒径のガラスビーズという単一の粒径で構成される場合、厳密に一粒ずつのガラスビーズの粒径を測れば、0.8mmや1.2mmの粒径を有するものも混在していることがあるが、これらはみな粒径1mmに含まれるものとする。
【0072】
また、真球以外の所定のアスペクト比(長径と短径の比)を持った球体やペレット状のものでもよい。前述の実施形態では、粒子層を構成する充填粒子に、単一の粒径を有するものだけを使用しているが、例えば、2mmと3mmといった複数の異なる粒径の充填粒子を混在させてもよい。なお、捕集対象のオイルミストの粒子径に応じて、充填粒子の粒径は1~5mmの粒径を適宜選ぶことができる。アスペクト比を有するものであれば、短径が1mm以上、長径が5mm以下のものが望ましい。これらの場合も、粒径には多少の誤差を含む範囲内の寸法を表している。
【0073】
また、層数については、少なくとも二層以上は必要であるが、多すぎても捕集効率は向上しないため、十層程度までに抑え、層厚を薄くすることができる。複数の異なる粒径の充填粒子が充填されれば、粒子層の層数は箇所によって多少の違いがあるが、層数を抑え、層厚を薄くすることにより、汚染粒子は、液体と一緒に高速の気流に洗い流され、粒子層は常に目詰まりのない状態が維持されるとともに、装置の小型化、軽量化を図ることができる。
【0074】
また、前述した実施形態においては、図3(c)に基づいて、2mm粒径の充填粒子を三層充填する場合を説明しているが、前述したように粒径には多少のばらつきがあるため、厳密に粒子層全面に渡り三層が保たれているわけではなく、二層あるいは四層あるいはそれ以上となっている箇所もあることを含む意味である。また、最密充填構造のような層とは、粒径が揃い最密充填構造のような整然と配列された箇所もあれば、複数の粒径が混ざり合いつつ、充填粒子同士が自重により密に安定して充填されている状態も含む意味である。
【0075】
ガラス素材には、アルカリガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスなどがあるが、捕集する汚染粒子の特性に合わせて適宜選ぶことができる。ガラス球は、安価で入手でき、表面が円滑で洗浄に適しており、耐薬品性が高いなどの利点を有する。なお、充填粒子の材質は必ずしもガラス球である必要はなく、樹脂球、金属球、その他セラミック球であってもよい。また粒子は中空であってもよい。例えば、樹脂球はガラス球に比べ軽量で、オイルミストとの親和性が高いなどの利点がある。
【0076】
また、スプレーノズルから供給される液体は、捕集する汚染粒子の特性に合わせて親和性のあるものを適宜選択すると捕集効率がより高くなる。例えば、汚染粒子がクーラントによるオイルミストであれば、工作機械に設けられたクーラントポンプあるいは工場に常設されたクーラント配管から同じクーラントをスプレーノズルから供給することもできる。もちろんこれに限らず、水でもよく、洗浄液を供給してもよい。なお、粒子層式コレクタを設置する現場に液体供給源がある場合には、供給配管を接続するだけでよく、粒子層式コレクタに液体供給用のポンプやタンクを備える必要がない。
【0077】
また、粒子層ユニットに向かって噴霧される液体が、粒子層をまんべんなく湿潤させつつ、過度で無駄な液体の供給を避けるため噴霧粒径と流量を維持できるものとして、前述の実施形態ではスプレーノズルを一例としてあげたが、粒子層への液体供給手段は、必ずしもスプレーノズルである必要ない。配管に設けた孔から、液体を供給させるなど、粒子層を湿潤させることができればよく、公知の液体供給手段を使用することができる。
【0078】
なお、前述の実施形態では、潤滑冷却剤のオイルミストを具体的な捕集対象として説明したが、そのほかの液体から発生するミスト(液滴)であってもよい。
【0079】
また、前述の実施形態では、粒子層Rが垂直になるように粒子層ユニットを立設させたものや、垂直位置から45度ほど傾斜させたものを説明しているが、必ずしも絶対的な垂直あるいは45度である必要はない。吸込口の位置や気流との関係で垂直位置から最大45度ほどまでの間で傾斜を持たせたものや、前述の45度傾斜させた位置からさらに15度(つまり垂直位置から60度)ほどまでの間で傾斜を持たせたものも含む。
【0080】
また、粒子層金網としたが、金網に限らず樹脂の網で構成してもよい。また網の替わりに、多数の孔が打ち抜かれた金属板や樹脂板を用いてもよい。また、多数の細いスリット(たとえば幅が1mm以下)が設けられた金属板や樹脂板を用いることも可能である。
【0081】
前述した実施形態に限らず、ほかの形態であっても良い。粒子層を構成する充填粒子の表面をまんべんなく湿潤させ、充填粒子間の隙間には供給された液体が広がり、充填粒子間の隙間が狭められた状態で、粒子層の層厚が非常に薄い粒子層に、高速で汚染粒子を含む気流を通過させることにより、汚染粒子は、充填粒子の表面や充填粒子間の液体に衝突し、捕集されて、粒子層に堆積しないため、処理風量低下の原因となる目詰まりが起きることがない。
【符号の説明】
【0082】
1、201、301、401 ハウジング本体
2、302、402 吸込口
20、320、420 スプレーノズル(液体供給手段)
30、330、430 粒子層ユニット
32 充填粒子
33、34 通気面
40、240、340、440 気流処理室
50、250、350、450 分離ユニット(デミスタ)
60、260、360 清浄気流出口室
73、273、373、473 送風機
71、271、371、471 排気口
100、200、300、400 粒子層式コレクタ
F 流路
R 粒子層
S 充填空間
S´ 未充填空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6