(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】データ転送機能付きマルチメータ、マルチメータ本体、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01R 15/12 20060101AFI20230216BHJP
G08C 15/00 20060101ALI20230216BHJP
G08C 17/00 20060101ALI20230216BHJP
G08C 19/00 20060101ALI20230216BHJP
H04M 1/00 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
G01R15/12 Z
G08C15/00 E
G08C17/00 A
G08C19/00 U
H04M1/00 U
(21)【出願番号】P 2020081247
(22)【出願日】2020-05-01
【審査請求日】2021-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390025623
【氏名又は名称】共立電気計器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105212
【氏名又は名称】保坂 延寿
(72)【発明者】
【氏名】日下 亮一
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-203671(JP,A)
【文献】登録実用新案第3166968(JP,U)
【文献】特開2012-160174(JP,A)
【文献】特開2018-044776(JP,A)
【文献】特開2004-053415(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0093449(US,A1)
【文献】特開2014-055943(JP,A)
【文献】特開2013-198024(JP,A)
【文献】特開平08-015317(JP,A)
【文献】特開2014-010007(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107894525(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 15/00-17/22、
19/00-19/32、
1/06-1/073、
G08C 13/00-25/04、
H04M 1/00、
1/24-1/82、
99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象物に接触するヘッド部と、スイッチと、
前記スイッチの操作に応じて記憶トリガを生成するトリガ発生回路と、前記記憶トリガを携帯型端末に無線送信する第2通信回路と、を含むプローブと、
前記プローブに接続され、前記計測対象物の電気的な物理量を複数回にわたって計測
する計測回路と、
前記第2通信回路とは別の第1通信回路であって複数回の計測データを
前記携帯型端末に順次無線送信する
前記第1通信回路と、を含み、前記プローブ及び前記携帯型端末のいずれとも別体のマルチメータ本体と、
を備え
るマルチメータ。
【請求項2】
計測対象物に接触するヘッド部と、スイッチと、
前記スイッチの操作に応じて記憶トリガを生成するトリガ発生回路と、前記記憶トリガを携帯型端末に無線送信する第2通信回路と、を含むプローブと、
前記プローブに接続され、前記計測対象物の電気的な物理量を複数回にわたって計測
する計測回路と、
前記第2通信回路とは別の第1通信回路であって複数回の計測データを
前記携帯型端末に順次無線送信する
前記第1通信回路と、を含み、前記プローブ及び前記携帯型端末のいずれとも別体のマルチメータ本体と、
を備え
るマルチメータ
と無線通信を行う前記携帯型端末を動作させるプログラムであって、
前記マルチメータ
本体から複数回の前記計測データを順次受信する処理と、
前記
プローブから前記記憶トリガを受信する処理と、
複数回の前記計測データの内の前記記憶トリガに応じた一部のデータを記憶部へ記憶させる処理と、
前記記憶部への記憶が行われた場合に、報知手段を作動する処理と、
を前記携帯型端末に実行させるプログラム。
【請求項3】
計測対象物に接触するヘッド部と、スイッチと、前記スイッチの操作に応じて記憶トリガを生成するトリガ発生回路と、前記記憶トリガを携帯型端末に無線送信する第2通信回路と、を含むプローブと、
前記プローブに接続され、前記計測対象物の電気的な物理量を複数回にわたって計測する計測回路と、前記第2通信回路とは別の第1通信回路であって複数回の計測データを前記携帯型端末に順次無線送信する前記第1通信回路と、を含み、前記プローブ及び前記携帯型端末のいずれとも別体のマルチメータ本体と、
を備えるマルチメータ
と無線通信を行う前記携帯型端末を動作させるプログラムであって、
前記マルチメータ本体から複数回の前記計測データを順次受信する処理と、
前記プローブから前記記憶トリガを受信する処理と、
複数回の前記計測データの内の前記記憶トリガに応じた一部のデータを記憶部へ記憶させる処理と、
を前記携帯型端末に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ転送機能付きマルチメータ、マルチメータ本体、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気的パラメータを計測するマルチメータにおいて、計測を行いながらスマートフォンと無線通信を行い、計測結果をスマートフォンの表示部に表示させたり、スマートフォンのメモリに記憶させたりするものが知られている(特許文献1)。計測結果をスマートフォンのメモリに記憶させることができれば、携帯電話通信網などを利用し、計測結果を他の場所へ送信してデータ管理するのに便利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、計測結果をスマートフォンのメモリに記憶させるなどの各種操作を行うために、ユーザはマルチメータを操作するか、スマートフォンを操作する必要がある。
しかし、計測を行うために、ユーザはマルチメータに接続された2本のプローブを保持しなければならない場合が多い。この場合にはユーザの両手が塞がった状態で、マルチメータ、又はスマートフォン、あるいはその両方を操作しなければならない場合がある。例えば配電盤の検査において、チェックすべき端子数が多い場合には、プローブの操作とマルチメータ又はスマートフォンの操作とを同時に又は交互に行わなくてはならず、作業効率の点で問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの観点において、マルチメータは、プローブと、マルチメータ本体と、を備える。プローブは、計測対象物に接触するヘッド部と、スイッチと、を含む。マルチメータ本体は、プローブに接続され、計測対象物の電気的な物理量を複数回にわたって計測し、複数回の計測データを携帯型端末に順次無線送信する。マルチメータは、スイッチの操作に応じて、記憶トリガを携帯型端末に無線送信する。
【0006】
本発明の他の1つの観点において、マルチメータ本体は、計測対象物に接触するヘッド部と、スイッチと、を含むプローブに接続される。マルチメータ本体は、計測対象物の電気的な物理量を複数回にわたって計測し、複数回の計測データを携帯型端末に順次無線送信し、スイッチの操作に応じて、記憶トリガを携帯型端末に無線送信する。
【0007】
本発明の他の1つの観点において、プログラムは、マルチメータと無線通信を行う携帯型端末を動作させるプログラムである。
マルチメータは、プローブと、マルチメータ本体と、を備える。プローブは、計測対象物に接触するヘッド部と、スイッチと、を含む。マルチメータ本体は、プローブに接続され、計測対象物の電気的な物理量を複数回にわたって計測し、複数回の計測データを携帯型端末に順次無線送信する。マルチメータは、スイッチの操作に応じて、記憶トリガを携帯型端末に無線送信する。
プログラムは、マルチメータから複数回の計測データを順次受信する処理と、マルチメータから記憶トリガを受信する処理と、複数回の計測データの内の記憶トリガに応じた一部のデータを記憶部へ記憶させる処理と、記憶部への記憶が行われた場合に、報知手段を作動する処理と、を携帯型端末に実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1Aは、本発明の第1の実施形態に係るマルチメータ1の構成を概念的に示す。
図1Bは、マルチメータ1と無線通信を行う携帯型端末5の構成を概念的に示す。
【
図2】
図2は、第1の実施形態における第1制御部24及び第2制御部52の処理を示すフローチャートである。
【
図3】
図3Aは、本発明の第2の実施形態に係るマルチメータ1aの構成を概念的に示す。
図3Bは、プローブ3aに含まれるトリガ発生装置35aの構成を概念的に示す。
図3Cは、マルチメータ1aと無線通信を行う携帯型端末5の構成を概念的に示す。
【
図4】
図4は、第2の実施形態における第1制御部24、第2制御部52、及び第3制御部354の処理を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、本発明の第3の実施形態における第2制御部52の処理の一部を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、本発明の第4の実施形態における第1制御部24の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。以下に説明される各実施形態は、本発明の一例を示すものであって、本発明の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本発明の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0010】
<1.プローブにトリガ用スイッチを設けたマルチメータ>
図1Aは、本発明の第1の実施形態に係るマルチメータ1の構成を概念的に示す。
マルチメータ1は、マルチメータ本体2と、プローブ3及び4と、で構成される。
【0011】
<1-1.マルチメータ本体2の構成>
マルチメータ本体2は、複数の計測機能を切り換えて計測対象物の複数の電気的な物理量を計測することのできる装置である。マルチメータ本体2は、例えば、第1~第4の端子穴211~214と、計測回路22と、トリガ発生回路23と、第1制御部24と、第1表示部25と、第1通信回路26と、を含む。
【0012】
第1~第4の端子穴211~214は、それぞれの内部に、図示しない端子(第1~第4の端子)を備えている。
【0013】
計測回路22は、第3及び第4の端子穴213及び214の端子に接続され、電圧などの複数の計測機能を切り換えられるようになっている。計測回路22は、第3及び第4の端子穴213及び214を介した電気的な入力に基づいて計測対象物の電気的な物理量を計測し、計測結果をデジタル変換して、計測データを第1制御部24に出力する。第3及び第4の端子穴213及び214を介した電気的な入力が継続する場合には、計測回路22が一定時間ごとに新たな計測を行うので、複数回にわたって計測が行われる。計測回路22は、複数回の計測データを第1制御部24に順次出力する。
【0014】
トリガ発生回路23は、第1及び第2のノード231及び232を含む。第1のノード231は第1の端子穴211の第1の端子に接続され、第2のノード232は第2の端子穴212の第2の端子に接続されている。トリガ発生回路23は、第1のノード231と第2のノード232との電気的な接続状態の変化に応じて、記憶トリガを発生し、第1制御部24に出力する。第1のノード231と第2のノード232との電気的な接続状態の変化は、プローブ3によってもたらされる。プローブ3については後述する。
【0015】
第1制御部24は、計測回路22から順次入力される計測データに基づいて、表示データを順次生成し、第1表示部25に順次出力するとともに、計測データを第1通信回路26に順次出力する。第1制御部24から出力される表示データ及び計測データには、計測回路22から順次入力された計測データの他に、計測時の設定項目や計測レンジなどの情報が含まれてもよい。
第1制御部24は、トリガ発生回路23から記憶トリガが入力された場合に、記憶トリガを第1通信回路26に出力する。
第1制御部24は、その他、マルチメータ本体2の各種制御を行う。
【0016】
第1表示部25は、第1制御部24から順次入力される表示データに基づいて、計測結果及びその他の情報を順次表示する。
【0017】
第1通信回路26は、後述の携帯型端末5との間でペアリングなどの通信準備を行う。第1通信回路26は、第1制御部24から順次入力される計測データを、携帯型端末5に順次無線送信する。第1通信回路26は、第1制御部24から記憶トリガが入力された場合に、記憶トリガを携帯型端末5に無線送信する。
【0018】
<1-2.プローブ3及び4の構成>
プローブ3は、配線部31と、接続部32と、ヘッド部33と、スイッチ34と、を含む。
配線部31は、3本の導電線311~313を含む。導電線311~313の各一端が接続部32に位置し、導電線311~313の各他端がヘッド部33に位置する。配線部31については、内部の導電線311~313を強調して示すために被覆の図示が省略されているが、導電線311~313はそれぞれ別々に被覆されたうえで、束ねられ、1本のコードとして再度被覆されている。
【0019】
接続部32は、第1~第3の端子穴211~213に嵌め込めるように構成されている。接続部32は、導電線311の上記一端と、第1の端子穴211の第1の端子と、を接続させ、導電線312の上記一端と、第2の端子穴212の第2の端子と、を接続させ、導電線313の上記一端と、第3の端子穴213の第3の端子と、を接続させる。
【0020】
スイッチ34は、ヘッド部33の内部に配置されている。導電線311の上記他端及び導電線312の上記他端が、スイッチ34の別々の端子に接続されている。スイッチ34は、導電線311の上記他端と導電線312の上記他端との間の電気的な接続状態を変化させるように構成されている。電気的な接続状態の変化とは、例えば、開放状態から短絡状態への変化、あるいは短絡状態から開放状態への変化、あるいは第1の抵抗値と第2の抵抗値との間の変化でもよい(第1の抵抗値と第2の抵抗値とは異なる値とする)。スイッチ34の操作によって導電線311の上記他端と導電線312の上記他端との間の電気的な接続状態が変化すると、第1のノード231と第2のノード232との電気的な接続状態が変化する。
【0021】
ヘッド部33が計測対象物に接触することにより、計測対象物の電気的な物理量に応じた入力が、導電線313に伝達される。
【0022】
プローブ4は、配線部41と、接続部42と、ヘッド部43と、を含む。
配線部41は、導電線を含む。導電線の一端が接続部42に位置し、導電線の他端がヘッド部43に位置する。配線部41については、内部の導電線を強調して示すために被覆の図示が省略されている。
【0023】
接続部42は、第4の端子穴214に嵌め込めるようになっている。接続部42は、配線部41の導電線の上記一端と、第4の端子穴214の第4の端子と、を接続させる。
【0024】
ヘッド部43が計測対象物に接触することにより、計測対象物の電気的な物理量に応じた入力が、配線部41に伝達される。
【0025】
<1-3.携帯型端末5の構成>
図1Bは、マルチメータ1と無線通信を行う携帯型端末5の構成を概念的に示す。マルチメータ1と携帯型端末5とで電気計測システムが構成される。
携帯型端末5は、スマートフォン、タブレット型コンピュータ、ノート型コンピュータなど、情報処理機能と通信機能とを有する持ち運び可能な装置である。
図1Bに示されるように、携帯型端末5は、第2通信回路51と、第2制御部52と、第2表示部53と、記憶部54と、を含む。
【0026】
第2通信回路51は、マルチメータ本体2との間でペアリングなどの通信準備を行う。第2通信回路51は、マルチメータ本体2から計測データを順次受信する。第2通信回路51は、マルチメータ本体2から受信した計測データを第2制御部52に順次出力する。第2通信回路51は、マルチメータ本体2から記憶トリガを受信した場合に、記憶トリガを第2制御部52に出力する。
【0027】
第2制御部52は、第2通信回路51から順次入力される計測データに基づいて、表示データを順次生成し、第2表示部53に順次出力する。
第2制御部52は、第2通信回路51から記憶トリガが入力された場合に、記憶トリガが入力されたタイミングに応じて計測データを選択し、選択された計測データを記憶部54に記憶させるために書き込み指令を出力する。あるいは、第2制御部52は、選択された計測データを、携帯型端末5の外部の図示しない記憶部に記憶させてもよい。携帯型端末5の外部の記憶部とは、例えば、携帯型端末5とネットワークを介して接続されたサーバーなどの装置内の記憶部でもよい。
第2制御部52は、その他、携帯型端末5の各種制御を行う。
【0028】
第2表示部53は、第2制御部52から順次入力される表示データに基づいて、計測結果及びその他の情報を順次表示する。
【0029】
記憶部54は、第2制御部52から計測データの書き込み指令が入力された場合に、第2制御部52によって選択された計測データを記憶する。記憶部54は、さらに、後述するプログラムを記憶しており、第2制御部52からの要求に応じて、このプログラムを読み出し可能となっていてもよい。
【0030】
<1-4.マルチメータ本体の動作>
図2は、第1の実施形態における第1制御部24及び第2制御部52の処理を示すフローチャートである。
【0031】
マルチメータ本体2の第1制御部24は、以下の手順で動作する。
マルチメータ本体2の電源が投入されると、第1制御部24は、図示しない記憶部からプログラムを読み出して、このプログラムに従った制御を開始する。第1制御部24は、携帯型端末5との通信方式に従って、必要な場合にはペアリングなどの通信準備を行う。
【0032】
第1制御部24は、計測回路22から入力される計測データに基づいて、表示データを生成する(S110)。第1制御部24は、表示データを第1表示部25に出力することにより計測結果を第1表示部25に表示させるとともに、計測データを第1通信回路26に出力することにより第1通信回路26を介して計測データを携帯型端末5に送信する(S120)。
【0033】
第1制御部24は、トリガ発生回路23から記憶トリガが入力されたか否かを判定する(S130)。
記憶トリガが入力された場合(S130:YES)、第1制御部24は、第1通信回路26を介して記憶トリガを携帯型端末5に送信する(S140)。その後、第1制御部24の処理は、S110に戻る。
記憶トリガが入力されなかった場合(S130:NO)、記憶トリガを携帯型端末5に送信することなく、第1制御部24の処理は、S110に戻る。
【0034】
S110に戻ると、計測回路22から入力される計測データなどに基づく表示データの生成が行われ、上述と同様の処理が繰り返される。これにより、マルチメータ本体2は、計測結果を順次表示するとともに、計測データを携帯型端末5に順次送信し、記憶トリガが入力された場合に、記憶トリガを携帯型端末5に送信する。
【0035】
<1-5.携帯型端末の動作>
携帯型端末5の第2制御部52は、以下の手順で動作する。
第2制御部52は、記憶部54からプログラムを読み出して、このプログラムに従った制御を開始する。第2制御部52は、マルチメータ本体2との通信方式に従って、必要な場合にはペアリングなどの通信準備を行う。
【0036】
第2制御部52は、マルチメータ本体2から計測データを受信したか否かを判定する(S220)。計測データを受信した場合(S220:YES)、第2制御部52は、計測データに基づいて、表示データを生成し、第2表示部53に出力することにより計測結果を第2表示部53に表示させる(S230)。計測データを受信しなかった場合(S220:NO)、第2制御部52は、計測データを受信するまでS220の判定を繰り返す。
【0037】
S230の後、第2制御部52は、マルチメータ本体2から記憶トリガを受信したか否かを判定する(S240)。
【0038】
記憶トリガを受信した場合(S240:YES)、第2制御部52は、記憶トリガが入力されたタイミングに応じて計測データを選択し、選択された計測データを記憶部54に記憶させる。例えば、記憶トリガを受信した時に第2表示部53に表示されている計測結果に対応する計測データを、記憶部54に記憶させる(S250)。
【0039】
第2制御部52は、計測データを記憶させるだけでなく、他の情報を併せて記憶部54に記憶させてもよい。例えば、第2制御部52は、図示しない内蔵時計から現在時刻を取得し、現在時刻を計測データと対応付けて記憶させてもよい。また、第2制御部52は、図示しないGPS(Global Positioning System)信号受信器から、現在位置を取得し、現在位置を計測データと対応付けて記憶させてもよい。さらに、現在時刻と現在位置との両方を計測データと対応付けて記憶させてもよい。
【0040】
記憶トリガを受信しなかった場合(S240:NO)、計測データを記憶させることなく、第2制御部52は、S220に戻る。
S220に戻ると、マルチメータ本体2から計測データを受信したか否かの判定が行われ、上述と同様の処理が繰り返される。これにより、携帯型端末5は、計測結果を順次表示し、記憶トリガが入力された場合に、選択された計測データを記憶部54に記憶させる。
【0041】
<1-6.効果>
第1の実施形態によれば、プローブ3が、計測対象物に接触するヘッド部33と、スイッチ34と、を含む。マルチメータ本体2は、プローブ3に接続され、計測対象物の電気的な物理量を複数回にわたって計測し、複数回の計測データを携帯型端末5に順次無線送信する。マルチメータ本体2は、スイッチ34の操作に応じて、記憶トリガを携帯型端末5に無線送信する。これによれば、ユーザは、プローブ3を持って計測を行うことができ、計測データを携帯型端末5に記憶させたいときは、プローブ3を持ったまま、プローブ3に設けられたスイッチ34を操作する。例えば配電盤の検査において、マルチメータ本体2及び携帯型端末5を一度設定しておけば、マルチメータ本体2及び携帯型端末5を逐一操作しなくても、プローブ3を持ったまま、連続的に多数の端子を検査し、必要に応じて計測データを携帯型端末5に記憶させることができ、作業効率が向上する。
さらにプローブ4も用いて計測を行う場合には、片方の手でプローブ3を保持し、もう片方の手でプローブ4を保持すると両手が塞がるので、マルチメータ本体2及び携帯型端末5を逐一操作しなくて済むというアドバンテージがさらに明確となる。
【0042】
第1の実施形態によれば、マルチメータ本体2は、トリガ発生回路23と、物理量を計測する計測回路22と、プローブ3に接続される第1、第2、及び第3の端子と、を含む。第1の端子は第1の端子穴211に位置し、トリガ発生回路23の第1のノード231に接続されている。第2の端子は第2の端子穴212に位置し、トリガ発生回路23の第2のノード232に接続されている。第3の端子は第3の端子穴213に位置し、計測回路22に接続されている。トリガ発生回路23は、第1のノード231と第2のノード232との電気的な接続状態の変化に応じて、記憶トリガを発生する。これによれば、プローブ3のスイッチ34が簡単な構成であっても、スイッチ34の電気的な接続状態を変化させることで、トリガ発生回路23から記憶トリガを発生させることができる。また、第1、第2、及び第3の端子が1本のプローブ3に接続されるので、第1、第2、及び第3の端子穴211~213へのプローブ3の接続作業を単純化することができる。
【0043】
<2.プローブに無線通信回路を設けたマルチメータ>
<2-1.構成>
図3Aは、本発明の第2の実施形態に係るマルチメータ1aの構成を概念的に示す。
マルチメータ1aは、マルチメータ本体2aと、プローブ3a及び4と、で構成される。
【0044】
マルチメータ本体2aは、第1及び第2の端子穴211及び212と、トリガ発生回路23とを含まない点で、
図1Aを参照しながら説明したマルチメータ本体2と異なる。
【0045】
プローブ3aは、配線部31aと、接続部32aと、ヘッド部33と、トリガ発生装置35aと、を含む。
配線部31aは、導電線313を含む。配線部31aは、導電線311及び312を含まない点で、
図1Aを参照しながら説明した配線部31と異なる。
接続部32aは、第3の端子穴213に嵌め込めるように構成されている。接続部32aは、導電線313の一端と、第3の端子穴213の第3の端子と、を接続させる。
【0046】
トリガ発生装置35aは、ヘッド部33の内部に配置されている。
図3Bは、プローブ3aに含まれるトリガ発生装置35aの構成を概念的に示す。トリガ発生装置35aは、トリガ発生回路350と、スイッチ353と、第3制御部354と、第3通信回路355と、を含む。
【0047】
トリガ発生回路350は、第1及び第2のノード351及び352を含む。トリガ発生回路350は、第1のノード351と第2のノード352との電気的な接続状態の変化に応じて記憶トリガを発生し、第3制御部354に出力する。第1のノード351と第2のノード352との電気的な接続状態の変化は、スイッチ353によってもたらされる。
【0048】
スイッチ353の別々の端子に、第1のノード351と第2のノード352とが接続されている。スイッチ353は、第1のノード351と第2のノード352との電気的な接続状態を変化させるように構成されている。
【0049】
第3制御部354は、トリガ発生回路350から記憶トリガが入力された場合に、記憶トリガを第3通信回路355に出力する。
第3通信回路355は、第3制御部354から記憶トリガが入力された場合に、記憶トリガを携帯型端末5に無線送信する。
【0050】
他の点については、第2の実施形態に係るマルチメータ1aの構成は、
図1Aを参照しながら説明した第1の実施形態に係るマルチメータ1の構成と同様である。
【0051】
図3Cは、マルチメータ1aと無線通信を行う携帯型端末5の構成を概念的に示す。
携帯型端末5の構成は、
図1Bを参照しながら説明した携帯型端末5の構成と同様である。
【0052】
<2-2.マルチメータ本体の動作>
図4は、第2の実施形態における第1制御部24、第2制御部52、及び第3制御部354の処理を示すフローチャートである。
【0053】
マルチメータ本体2aの第1制御部24は、S110及びS120の処理を行う。S120の後、第1制御部24の処理は、S110に戻る。これにより、マルチメータ本体2aは、計測結果を順次表示するとともに、計測データを携帯型端末5に順次送信する。
【0054】
<2-3.プローブの動作>
プローブ3aの第3制御部354は、以下の手順で動作する。
第3制御部354は、電源が投入されると、図示しない記憶部からプログラムを読み出して、このプログラムに従った制御を開始する。第3制御部354は、携帯型端末5との通信方式に従って、必要な場合にはペアリングなどの通信準備を行う。
【0055】
第3制御部354は、トリガ発生回路350から記憶トリガが入力されたか否かを判定する(S330a)。
記憶トリガが入力された場合(S330a:YES)、第3制御部354は、第3通信回路355を介して記憶トリガを携帯型端末5に送信する(S340a)。その後、第3制御部354の処理は、S330aに戻る。
記憶トリガが入力されなかった場合(S330a:NO)、第3制御部354は、記憶トリガを携帯型端末5に送信することなく、S330aの処理を繰り返す。
これにより、プローブ3aは、スイッチ353が操作された場合に、記憶トリガを携帯型端末5に送信する。
【0056】
<2-4.携帯型端末の動作>
携帯型端末5の第2制御部52は、必要な場合にはマルチメータ本体2aとのペアリング及びプローブ3aとのペアリングなどの通信準備を行う。
その後、第2制御部52は、S220からS250までの処理を行う。なお、携帯型端末5は、マルチメータ本体2aから記憶トリガを受信するのではなく、プローブ3aから記憶トリガを受信する(S240a)。これにより、携帯型端末5は、計測結果を順次表示し、記憶トリガが入力された場合に、選択された計測データを記憶部54に記憶させる。
他の点については、第2の実施形態の動作は、
図2を参照しながら説明した第1の実施形態の動作と同様である。
【0057】
<2-5.効果>
第2の実施形態によれば、プローブ3aは、計測対象物に接触するヘッド部33と、スイッチ353と、トリガ発生回路350と、第3通信回路355とを含む。マルチメータ本体2aは、プローブ3aに接続され、計測対象物の電気的な物理量を複数回にわたって計測し、複数回の計測データを携帯型端末5に順次無線送信する。トリガ発生回路350が、スイッチ353の操作に応じて記憶トリガを生成し、第3通信回路355が、記憶トリガを携帯型端末5に無線送信する。これによれば、第1の実施形態と同様に、マルチメータ本体2a及び携帯型端末5を逐一操作しなくても、プローブ3aを持ったまま、計測を行い、必要に応じて計測データを携帯型端末5に記憶させることができる。
【0058】
さらに、第2の実施形態によれば、マルチメータ本体2aにトリガ入力用の第1及び第2の端子穴211及び212を設けなくても、記憶トリガを携帯型端末5に送信することができる。
【0059】
第2の実施形態は、上述の構成に限らず、マルチメータ本体2aが、
図1Aを参照しながら説明したトリガ発生回路23を備えていてもよい。マルチメータ本体2aにおいて、第1通信回路26が、プローブ3aから記憶トリガを受信し、この記憶トリガに基づいてトリガ発生回路23が新たに記憶トリガを生成し、新たに生成された記憶トリガを第1通信回路26が携帯型端末5に送信してもよい。これによれば、プローブ3aと携帯型端末5との間の通信が不要となる。プローブ3aとマルチメータ本体2aとの間は配線部31aの長さ以下の距離しかないので、プローブ3aとマルチメータ本体2aとの通信手段の選択肢が広がる。例えば、マルチメータ本体2aと携帯型端末5との通信には電波を使い、数十メートルの通信を可能とする一方で、プローブ3aとマルチメータ本体2aとの通信には赤外線を使うようなことも可能である。
【0060】
図3Aに示されるように、マルチメータ本体2aがトリガ発生回路23を備えない構成とする場合には、マルチメータ本体2aの構成は公知のマルチメータ本体と同様の構成でもよく、携帯型端末5のプログラムと、プローブ3aとを追加すれば本発明を実施可能となる。従って、本発明を導入するためのコストを抑制し得る。
【0061】
<3.報知手段を作動させるプログラム>
<3-1.携帯型端末の動作>
図5は、本発明の第3の実施形態における第2制御部52の処理の一部を示すフローチャートである。
図5に示される処理は、
図2又は
図4のS250のサブルーチンに相当する。第3の実施形態の構成は、第1の実施形態又は第2の実施形態の構成と同様でよい。第3の実施形態の動作は、
図5に示される処理以外は、第1の実施形態又は第2の実施形態の動作と同様でよい。
【0062】
携帯型端末5の第2制御部52は、計測データを記憶部54に記憶させる(S254b)。S254bの具体的内容は第1の実施形態又は第2の実施形態において説明したS250の内容と同様である。
【0063】
第2制御部52は、計測データの記憶が成功したか否かを判定する(S255b)。
計測データの記憶が成功した場合(S255b:YES)、第2制御部52は、報知手段を作動させ(S256b)、本サブルーチンの処理を終了する。
計測データの記憶が成功しない場合(S255b:NO)、第2制御部52は、報知手段を作動させることなく、本サブルーチンの処理を終了する。このように計測データの記憶が成功しない場合には、失敗を報知しなくてもよい。計測データの記憶が成功しない原因は、S254bの処理時のエラーに限られず、スイッチ34又は353の操作ミス又は動作不良、トリガ発生回路23又は350の動作不良、各制御部の動作不良、各通信回路の動作不良又は通信障害の可能性もあり、S254bの処理時のエラーだけを報知する必要性は必ずしも高くない。
図5に示されるように、成功時のみ報知手段を作動させ、それ以外は報知しないことで、ユーザは不成功を認識することができる。
【0064】
携帯型端末5の動作の信頼性が高い場合には、記憶が成功したか否かの判定(S255b)は、省略されてもよい。すなわち、S254bの処理を実行すると同時に、報知手段を作動させてもよい。
【0065】
記憶成功を報知する報知手段は、携帯型端末5が音を出力するものでもよいし、振動を発生させるものでもよいし、ランプを点灯するものでもよいし、第2表示部53に何らかの表示を行うものでもよい。
【0066】
<3-2.効果>
第3の実施形態によれば、プログラムが、携帯型端末5に以下の処理を実行させる。すなわち、携帯型端末5は、マルチメータ1又は1aから複数回の計測データを順次受信し(S220)、マルチメータ1又は1aから記憶トリガを受信し(S240又はS240a)、複数回の計測データの内の記憶トリガに応じた一部のデータを記憶部54へ記憶させる(S250、S254b)。そして、記憶部54への記憶が行われた場合に(S255b)、報知手段を作動させる(S256b)。これによれば、ユーザは、記憶部54に記憶された内容を、計測時に逐一確認しなくても、記憶成功を知ることができ、作業効率が向上し得る。
【0067】
記憶成功を報知する報知手段は、音又は振動によるものが好ましい。これによれば、ユーザが携帯型端末5を注視していなくても、記憶成功を知ることができる。例えば、ユーザが着ている作業服のポケットに携帯型端末5を入れたまま計測を行うような場合でも、音又は振動によって記憶成功を知ることができる。従って、プローブ3又は3a、プローブ4、マルチメータ本体2又は2a等の操作に注意を集中できるので、作業効率を向上し、計測ミスを軽減することができる。
【0068】
<4.マルチメータ本体又はプローブに報知するプログラム>
<4-1.マルチメータ本体の動作>
第4の実施形態においては、第3の実施形態の報知手段にさらなる工夫を付加している。すなわち、第3の実施形態において説明した記憶成功を報知する報知手段は、第4の実施形態においては、第2通信回路51を介してマルチメータ本体2に報知信号を送信するものでもよい。この場合、第2制御部52は、
図5のS256bにおいて報知信号を生成して、第2通信回路51に出力する。
【0069】
図6は、本発明の第4の実施形態における第1制御部24の処理を示すフローチャートである。マルチメータ本体2の第1制御部24は、以下の手順で動作する。
【0070】
S110からS140までの処理は、第1の実施形態において説明したものと同様である。
第1制御部24は、S140の後、携帯型端末5から報知信号を受信したか否かを判定する(S150c)。携帯型端末5から報知信号を受信した場合(S150c:YES)、第1制御部24は、マルチメータ本体2の報知手段を作動させる(S160c)。その後、第1制御部24の処理は、S110に戻る。携帯型端末5から報知信号を受信しなかった場合(S150c:NO)、報知手段を作動させることなく、第1制御部24の処理は、S110に戻る。
【0071】
マルチメータ本体2の報知手段は、音を出力するものでもよいし、振動を発生させるものでもよいし、ランプを点灯するものでもよいし、第1表示部25に何らかの表示を行うものでもよい。
【0072】
図6は、
図2の第1制御部24の処理にS150c及びS160cを追加したものになっているが、本発明はこれに限定されない。
図4の第1制御部24の処理にS150c及びS160cを追加することにより、マルチメータ本体2aの第1制御部24が携帯型端末5から報知信号を受信するようにしてもよい。あるいは、
図4の第3制御部354の処理にS150c及びS160cを追加することにより、プローブ3aの第3制御部354が携帯型端末5から報知信号を受信するようにしてもよい。
【0073】
また、S160cにおいて作動する報知手段は、マルチメータ本体2又は2aが音の出力、振動の発生、ランプの点灯、表示部への表示などをするものに限られない。プローブ3又は3aに音の出力、振動の発生、ランプの点灯などをさせてもよい。
【0074】
<4-2.効果>
第4の実施形態によれば、記憶成功時にマルチメータ1又は1aに報知信号を送信することにより、ユーザが携帯型端末5の挙動を逐一確認しなくても、記憶成功を知ることができ、作業効率が向上し得る。例えば、携帯型端末5を作業台の上やカバンの中に置いたまま、ユーザはマルチメータ本体2又は2a、プローブ3又は3a、及びプローブ4を携帯して、携帯型端末5から離れた場所の各種設備を巡って検査を行うという場合にも、マルチメータ本体2又は2a、あるいはプローブ3又は3aの挙動を確認すれば、携帯型端末5への記憶成功を知ることができる。
【0075】
マルチメータ本体2又は2aの報知手段は、音又は振動によるものが好ましい。これによれば、ユーザがマルチメータ本体2又は2aを注視していなくても、記憶成功を知ることができ、プローブ3又は3a及びプローブ4等の操作に注意を集中できるので、作業効率を向上し、計測ミスを軽減することができる。
【符号の説明】
【0076】
1、1a...マルチメータ、2、2a...マルチメータ本体、3、3a、4...プローブ、5...携帯型端末、22...計測回路、23...トリガ発生回路、24...第1制御部、25...第1表示部、26...第1通信回路、31、31a...配線部、32、32a...接続部、33...ヘッド部、34...スイッチ、35a...トリガ発生装置、41...配線部、42...接続部、43...ヘッド部、51...第2通信回路、52...第2制御部、53...第2表示部、54...記憶部、211...第1の端子穴、212...第2の端子穴、213...第3の端子穴、214...第4の端子穴、231...第1のノード、232...第2のノード、311、312、313...導電線、350...トリガ発生回路、351...第1のノード、352...第2のノード、353...スイッチ、354...第3制御部、355...第3通信回路