IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミルトン エセックス エス・アーの特許一覧

特許7228276皮膚テストにおけるアレルギー反応のマルチモーダル分析のための装置、皮膚テストにおけるアレルギー反応のマルチスペクトル・イメージングのためのハイブリッド方法、および、これらのテストの結果の自動的な評価のためのその使用
<>
  • 特許-皮膚テストにおけるアレルギー反応のマルチモーダル分析のための装置、皮膚テストにおけるアレルギー反応のマルチスペクトル・イメージングのためのハイブリッド方法、および、これらのテストの結果の自動的な評価のためのその使用 図1
  • 特許-皮膚テストにおけるアレルギー反応のマルチモーダル分析のための装置、皮膚テストにおけるアレルギー反応のマルチスペクトル・イメージングのためのハイブリッド方法、および、これらのテストの結果の自動的な評価のためのその使用 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】皮膚テストにおけるアレルギー反応のマルチモーダル分析のための装置、皮膚テストにおけるアレルギー反応のマルチスペクトル・イメージングのためのハイブリッド方法、および、これらのテストの結果の自動的な評価のためのその使用
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20230216BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20230216BHJP
   G01J 5/48 20220101ALI20230216BHJP
【FI】
A61B10/00 Q ZDM
A61B5/00 M
G01J5/48 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020558917
(86)(22)【出願日】2019-04-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 EP2019060315
(87)【国際公開番号】W WO2019211118
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2022-01-28
(31)【優先権主張番号】P.425395
(32)【優先日】2018-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PL
(73)【特許権者】
【識別番号】520407389
【氏名又は名称】ミルトン エセックス エス・アー
【氏名又は名称原語表記】MILTON ESSEX SA
【住所又は居所原語表記】ul. J.P. Woronicza 31/348 Warszawa Republic of Poland
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】シュテンピェン ヤセク
(72)【発明者】
【氏名】ソラン ラドスワフ
(72)【発明者】
【氏名】ウカシェヴィチ パヴェウ
【審査官】外山 未琴
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0177802(US,A1)
【文献】特開2017-060778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/00
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚アレルギー・プリック・テストおよびパッチ・テストにおけるアレルギー性皮膚反応の生物物理学的パラメーターのマルチモーダル・イメージングおよび分析のための装置であって、
底部から開いているハウジングの中において、760nmから100μmの電磁波長範囲で動作する赤外線サーマル・イメージング・カメラを含んでいる記録システムを組み合わせているハイブリッド構造体を有し、
一体化されている登録システムが、CCDまたはCMOS感光性マトリックスを備えた静止カメラ(1)を含んでおり、
前記静止カメラ(1)は、380nmから780nmの電磁波長範囲内の可視光スペクトルで動作し、
加えて、前記装置は、3次元の光学スキャナー(3D)(5)を含む回転式チューブと、経皮的なレーザー・ドップラー・フローメトリーのためのドップラー・センサー(4)と、加熱および冷却システム(18)と、安定化された黒色熱電対の形態のキャリブレーション・システムと、スペーサー(15)とを有し、それによって、上側ベースおよび下側ベースを備えないリングまたはプリズムの形態の前記スペーサー(15)は、前記ハウジング(19)の下側縁部に解放可能に接続されており、前記ハウジング(19)とテストされる皮膚エリア(17)との間に囲まれたスペースを画定しており、
そして、前記テストされる皮膚エリア(17)は、前記スペーサー(15)の下側部分の孔部によって画定されており、
一方、前記静止カメラ(1)、前記サーマル・イメージング・カメラ(2)、および垂直方向に後退可能な前記ドップラー・センサー(4)は、前記ハウジング(19)内の中央位置に装着されており、
前記中央位置は、組み立てられた状態において、前記テストされる皮膚エリア(17)の真上に位置し、前記サーマル・イメージング・カメラ(2)、前記静止カメラ(1)、および前記ドップラー・センサー(4)を含んでいる前記ハウジング(19)の下側部分の中に、回転式チューブが設けられており、
前記回転式チューブは、ステッパー・モーターによって駆動され、上部および底部の両方から開いており、内蔵型3D光学スキャナー・システム(5)を備えており、
前記内蔵型3D光学スキャナー・システム(5)は、LED光源を備えたパターン・プロジェクター(5a)と、垂直方向のパターン投影グリッド(5b)と、300nmから1000nmの波長範囲で動作するフルスペクトル・デジタル・カメラを装備しているレコーダー(5c)とを含んでおり、それによって、前記パターン・プロジェクター(5a)および前記レコーダー(5c)の両方が、前記回転式チューブの下側開口部に対して傾けられた1つの平面内に装着されており、
前記チューブ自身は、前記サーマル・イメージング・カメラ(2)の光軸に対して垂直の平面内での円形運動を可能にする円形フレームの上に配置されていることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記サーマル・イメージング・カメラ・システム(2)は、少なくとも1つのまたは複数の相互接続されたセンサーを含んでおり、合計で偶数個の熱検出器をえることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記サーマル・イメージング・カメラ・システム(2)は、光学システムと一体化されており、
前記光学システムは、少なくとも60°x45°の視野角を備えたシングルまたはマルチ・レンズ対物レンズから構成されており、0.15x0.15mm(IFOV)以上のカメラ・マトリックスの上に投射される皮膚の上のピクセル・サイズ、および、0.5mm(MFOV)以下の3x3ピクセルから構成される分析フィールドのサイズを提供することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記サーマル・イメージング・カメラ・システム(2)は、100mmを超えない距離において、60x150mm以上のエリア上のテストされる皮膚の温度を測定するように適合されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記サーマル・イメージング・カメラ・システム(2)は、人工皮膚マスター・サンプルを具備しており、
前記人工皮膚マスター・サンプルは、人工皮膚の放射率εを0.98以上のレベルに設定し、前記サーマル・イメージング・カメラによって記録された温度範囲に関して任意の値に、しかし、0℃以上100℃までの範囲内に、温度参照ポイントを設定することを可能にすることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記ドップラー・センサー(4)はレーザーを有し、
前記レーザーは、少なくとも560nmから780nmまでの波長範囲で動作し、2つの帯域にあり、かつ少なくとも46mmの光ファイバー・チャネルの分離を伴う、10Hzから19kHzのサンプリング周波数を有していることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記静止カメラ(1)は、CMOSマトリックスまたはCCDマトリックスから選択される、少なくとも640x480ピクセルのネイティブ解像度を有する少なくとも1つの光検出マトリックスを含んでいることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記3Dスキャナー(5)の前記パターン・プロジェクター(5a)の前記LED光源は、380nmから780nmの波長範囲内の、一貫した単色放射線を放出することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記スペーサー(15)は、プラスチック製であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記加熱および冷却システム(18)は、前記テストされる皮膚エリア(17)の中の空気の流れを制御するためのブロー・ノズルを具備していることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記スペーサー(15)は、前記テストされる皮膚表面への大気流入を閉鎖することによって、および、前記加熱および冷却システム(18)からの空気を前記テストされる皮膚表面へ直接方向付けることによって、前記サーマル・イメージング・カメラ(2)によって実施される測定の熱的条件を安定化させるためのチャンバーでもあることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項において特定されているマルチモーダル・デバイスによって実行される、皮膚アレルギー・プリック・テストおよびパッチ・テストにおけるアレルギー性皮膚反応のハイブリッド・マルチスペクトル・イメージングのための方法であって、
患者の皮膚のテストされるエリアが、少なくとも1つのテスト物質に露出され、
前記少なくとも1つのテスト物質は、前記プリック・テストにおいてはアレルゲンであり、前記パッチ・テストにおいてはハプテンであり、
赤外線サーマル・イメージング・カメラを同時に使用して、
前記赤外線サーマル・イメージング・カメラは、前記アレルゲンまたはハプテンに応答して発症するアレルギー反応の結果として生じる皮膚組織の中のサーマル・シグネチャの存在によって現れるアレルギー反応の体温上昇の成分を記録するために使用され、
前記プリック・テストのケースでは、前記サーマル・イメージング・カメラによって前記体温上昇のアレルギー反応を記録した直後に、追加的に経皮的なレーザー・ドップラー・フローメトリーを使用して、内皮上に位置するH1受容体に対するI型アレルギー反応効果の間に放出されるヒスタミンの結果としての、乳頭下血管叢の拡張した皮膚血管の中の局所的な増加した血管流のイメージングを実施し、
一方、パッチ・テストのケースでは、前記サーマル・イメージング・カメラによって前記体温上昇のアレルギー反応を記録した直後に、IV型アレルギー反応によって引き起こされる表面皮膚病変の識別とともに、前記テストされる皮膚エリア表面のトポグラフィーを示す光学的成分が、3Dスキャナーを使用する可視光範囲内の光学リフレクトメトリーによって、サーマル・イメージング・カメラで記録され、
さらに、サーマル・イメージングのデジタル的に集約された結果と、経皮的なレーザー・ドップラー・フローメトリーまたは前記3Dスキャナーを使用した光学リフレクトメトリーのいずれかによって取得される結果とに基づいて、前記テストされる皮膚エリアの前記アレルギー反応の全体像が展開され、前記サーマル・イメージング・カメラ(2)からの、前記テストされる皮膚の表面の上の等温線分布の画像は、静止カメラ(1)によって登録される前記テストされる皮膚の同じエリアの可視光画像にデジタル的に適用されることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の主題は、皮膚テストにおけるアレルギー反応のマルチモーダル分析のための装置に関し、また、皮膚アレルギー・プリック・テストおよびパッチ・テストにおけるアレルゲン物質の適用によって誘発されるI型およびIV型アレルギー反応の間のアレルギー反応のマルチスペクトル・イメージングの方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界保健機関(WHO)によれば、アレルギーは、最も一般的な慢性疾患のリストにおいて第3番目にランクしており、いわゆる生活習慣病のうちの1つと考えられており、その排除は、現在では、ヘルスケア機関および個々の政府の両方にとって国際的な優先事項である。WHOは、21世紀をアレルギー流行の時代と形容した(WHO: White Book on Allergy, 2011-2012)。WHO専門家は、アレルギーに苦しむ人口の数は毎年0.5%から2.5%増加すると推定している。新しい発生率に関する限り、他の生活習慣病のいずれもそのようなレートでは成長していない。アレルギー・テストの形態の精密な器具診断は、効果的な治療への第一歩である。テスト手順を自動化および標準化するために、診断への容易なアクセスを患者に提供すること、および、診断ツールを適合させることは、課題である。世界アレルギー機構(WAO)は、皮膚アレルギー・テストをアレルギー診断のためのゴールド・スタンダードとして認識しており、テストされるアレルゲン物質に対する患者の身体の実際のアレルギー反応性を複製する参照方法としてそれらを使用することを推奨している。
【0003】
臨床実務において、2つの異なるタイプの皮膚アレルギー・テストが現在使用されている。
- 患者の皮膚の表面的な穿刺、および、テストされるアレルゲン物質(アレルゲン)の適用を含む、さまざまなバリアントでのプリック・テスト。これらのテストは、主に吸入アレルゲンおよび食物アレルゲンに対するI型アレルギー反応(即時型過敏症)を検査するために使用される。
- 少なくとも48時間にわたって患者によって着用される特別のパッチを使用して、テストされる物質(ハプテン)を損傷していない皮膚の上に直接的に適用することを含むパッチ・テスト。これらのテストは、さまざまなタイプの職業性アレルギーを含むアレルギー性接触皮膚炎の間に起こるIV型アレルギー反応(遅延型過敏症)を決定するために使用される。
【0004】
両方のタイプの皮膚テストに共通の問題は、読み取り方法である。その理由は、プリック・テストおよびパッチ・テストは両方とも、現在、皮膚表面に見ることができる症状のみに基づいて医師によって評価され、ミリメートル目盛りを備えた単純な定規による視覚的な判定技法を用いるからである。プリック・テストのケースでは、読み取りは、アレルギー性みみず腫れのサイズを測定すること、および、それをヒスタミン・コントロール・エリア(ヒスタミン塩酸塩に露出される)におけるみみず腫れサイズと比較すること、ならびに、アレルギー性紅斑のサイズを測定することを必要とし、その後に、結果が、ポイント・ベースの等級付けスケールのさまざまなバリアントの上にマークされる。パッチ・テストのケースでは、アレルギー性紅斑の存在を判定することに加えて、医師は、また、テスト物質の適用の部位に現れる丘疹および/または小胞の形態の非特異的な症状の存在を判定し、その結果も、ポイント・ベースの等級付けスケールの上にマークされる。
【0005】
医師によって観察される非特異的な皮膚症状に基づく皮膚テスト(プリック・テストおよびパッチ・テストの両方)の視覚的な読み取りの方法は、読み取りの再現性を保証せず、したがって、必要な標準化を提供せず、後続の評価のために、測定可能な生化学的なまたは生物物理学的な定量的なインジケーターに基づいて決定されるいわゆるマーカーを必要とするエビデンス・ベースト・メディシン(EBM)の基準を満たさない。視覚的な方法は、著者の技法(author technique)であり、それは、未知のレベルの偽陽性および偽陰性の読み取りによって影響を受ける。
【0006】
WO2016/064795A1から、ハウジングと短波赤外線検出器(SWIR)とを具備した、皮膚テスト読み取りのためのデバイスが公知である。SWIR検出器は、患者の皮膚テスト・エリアの画像を記録することを可能にするレンズを具備し得、アレルゲンの局所適用に続いてこのテスト・エリアの中の皮膚病変(小胞、膿疱)を検出するように構成されている。
【0007】
WO2016/096591A1は、皮膚テストの間の患者のアレルギー検出の方法を説明しており、前記方法は、可視放射線および赤外線放射線に関して、アレルゲンが適用された患者の皮膚のエリアにわたる空間的レイアウトの中に2セットの放射線強度値を記録することを含み、それに続いて、フォトプレチスモグラム(PPG)でパルス波振幅の空間的分布の2つの対応するセットを発生させ、それらを互いに比較し、テスト皮膚エリアと比較し、これに基づいて、テストされるアレルゲンに対するアレルギー反応を患者が示しているかどうかについて決定する。
【0008】
WO2014182932A1は、複数のエピトープを含んでいるマイクロニードルのシステムによって患者の皮膚を穿刺し、それに続いてこれらのアレルゲンに対する皮膚反応を決定することによって、アレルギー反応の特異性および強度をテストする方法を開示している。反応は、サーマル・イメージング・カメラによって測定され、可能な療法の分析および選択が、これらの結果に基づいて実施される。
【0009】
米国特許出願公開第2012253224A1号は、皮膚アレルギー・テストを実施するための装置を説明しており、それは、患者の皮膚にわたってテストされるエリアをマークする孔部およびテストされるエリアの画像を記録するためのカメラを有するハウジングと、発光エレメントと、患者の腕に装置を取り付けるデバイスと、画像処理コントローラーとを具備している。
【0010】
米国特許出願公開第20170007170A1号は、皮膚アレルギー・テストを実施するためのデバイスを説明しており、それは、皮膚に貼り付け可能な接着性キャリア・ストリップを含み、それは、その下側に、アレルゲンを穿刺部に導入するためのマイクロニードルを具備している。分析は、ストリップの適用の前および後の患者の皮膚表面エリアの画像比較に基づいており、両方の画像の電子的な分析がそれに続く。
【0011】
さらに、WO2013116316A1は、少なくとも1つのハイパースペクトルのイメージング・ユニットを備えたハイパースペクトルのイメージング・システムを開示しており、少なくとも1つのハイパースペクトルのイメージング・ユニットは、拡散光、反射光、または、テストされる物体を通過する光を、光を個別のスペクトル帯域へと分離するハイパースペクトルのフィルター・システムに方向付けるためのレンズと;この放射線を記録し、テストされる物体に対応する適当な電気信号を発生させるセンサーと;ハイパースペクトルの画像から得られるデータに基づいて生物学的なパラメーターを決定するための少なくとも1つのプロセッサーとを含んでいる。
【0012】
WO2014140215A1は、小胞のサイズを測定するための、および、前腕のエリアの3次元表現でアレルギーを検出するための方法および装置を説明している。装置は、小胞を有する腕の3次元スキャンを実施し、デジタル処理の結果として、特定の小胞の3次元表現が取得され、アレルギー反応の診断のための基礎を形成する。
【0013】
米国特許出願公開第20040176701A1号は、IV型アレルギー反応をテストするためのデバイスを開示しており、それは、アレルゲンに露出されていない皮膚エリアの血管および露出されたエリアの血管内に見られる血球によって散乱されるレーザー・ビームの比較測定を使用する。
【0014】
PL410688A1は、皮膚アレルギー反応におけるヒスタミンに誘発された皮下の異常高熱の反応のサイズの非侵襲性のイメージングのための接触式熱光学システムおよびその使用に関する。システムの動作は、アレルギー反応によってトリガーされる局所的な異常高熱に応答してコンフォメーションを変化させる液晶性混合物に基づく熱光学システムの色の変化を登録することに基づいている。この文献にて説明されている液晶性接触サーモグラフィーは、サーマル・イメージング技法であるが、赤外線サーマル・イメージング・カメラを使用するリモート(放射)サーマル・イメージングに基づく他の解決策とは異なり、それは、1:1の縮尺で、皮膚表面の上のアレルギー性の体温上昇の反応のロスレス表現を可能にする。
【0015】
さらに、米国特許出願公開第2018014734A1号は、熱伝達(熱伝導率、熱拡散率、熱容量を含む)の観点から、人間の組織とりわけ、皮膚の分析のためのデバイスを説明している。デバイスは、組織に熱を供給するエレメントと、熱によって影響を受ける組織の生理学的なパラメーターまたは物理的特性の空間的なおよび時間的な分布を記録する検出器とを含む。この情報は、血液流の速度および/または方向、血管閉塞の存在、炎症反応に関連付けられる循環の変化、水分補給のレベル、ならびに他の生理学的なパラメーターと相関付けられ得る。
【0016】
米国特許出願公開第2010121200A1号は、血液流の局所的な変化を強調するために、サーマル・イメージング・デバイス、血管シンチグラフィー技法、またはレーザー・ドップラー・フローメトリーを使用して、病態生理学的な組織変化とりわけ、火傷の診断をサポートするように設計されたデバイスを開示している。
【0017】
米国特許出願公開第2017035344A1号は、熱的顔測定を使用するアレルギー検出システムに関しており、それは、サーマル・イメージング・カメラを備えたフレームを含み、サーマル・イメージング・カメラは、患者の頭部の患者の顔から10cm未満のところに装着され、患者の鼻の少なくとも一部のサーマル画像を記録するように構成されており、それは、デジタル処理の後に、アレルギー反応のサイズを決定するための基礎を形成する。
【0018】
そのうえ、米国特許第4819657B1号は、電子システムを具備した電極と、患者の身体へのアレルゲンの経皮的な送達のためのデバイスとを含んでいる自動アレルギー検出システムに関する。電極は、アレルゲン投与部位に隣接する皮膚エリアの温度を測定するための温度センサーも具備している。測定は、15分の期間にわたって30秒ごとに実施され、結果は、グラフィック形態で医師に提示される。
【0019】
米国特許出願公開第20040019269A1号は、赤外線サーモグラフィーを使用して動物の体内の炎症および感染の早期検出のための方法を開示している。
【0020】
最後に、米国特許出願公開第2008269635A1号は、マイクロニードル穿刺システムと、穿刺部の中へ投与されるアレルゲンを含んでいるカプセルと、穿刺部位におけるアレルギー反応のトポグラフィック・プロファイルを決定するためのセンサーを備えたイメージング・システムとを特徴とするアレルギー試験システムを説明している。
【0021】
さまざまな赤外線帯域で動作するカメラを使用するサーマル・イメージングを含むイメージング技法の開発は、投与されたアレルゲンまたはハプテン(テスト物質)に応答して発症するアレルギー反応の結果として皮膚組織の中に現れる特定のサーマル・シグネチャを明らかにすることを可能にする。重要な技術的問題は、使用されるカメラの比較的低い幾何学的な解像度または空間解像度であり、結果として、サーマル画像上での特定のアレルゲンの適用部位の精密かつトポグラフィックな識別の困難を生じさせる。パッチ・テストにおける追加的な問題は、アレルギー反応の結果として形成される丘疹および小胞の形態のさまざまなタイプの皮膚症状の存在によるものである。その理由は、医師にとって、それらが、陰性反応からの強い陽性反応の基本的な差別化変数を構成するからである。パッチ・テストにおける体温上昇のアレルギー反応の赤外線イメージングにおいて、反応強度におけるそのような相違も十分に反映されるべきであり、それは、特にデジタル・ズーミングが適用されるときに、皮膚エリアにわたる等温線の表皮の分布のはるかに高密度のマップの可視化を必要とする。測定の信頼性および皮膚レベルにおけるサーマル・イメージング・カメラの解像度に伴う問題は、赤外線カメラの広過ぎる温度範囲から生じ、それは、100℃超をカバーし、おおよそ±2%の平均測定誤差を伴っており、それは、おおよそ+/-2℃のレベルにおいて(それはアレルギー性の異常高熱の絶対値よりも大きい)起こり得る誤った結果を引き起こす。そのうえ、カメラの技術的な限界は、それらの公称パラメーターにかかわらず、おおよそ320x240ピクセルのマイクロボロメーター・マトリックス解像度および0.05℃の熱解像度において、カメラ(ここでは、たとえばFLIR A325カメラ)が、7.5~13.0μmの波長を有する赤外線放射線を検出し、25°x19°の視野(FOV)を有するときには、瞬間視野(iFOV)が1.36mradであることが、結果として、皮膚の表面から1mの距離において、それぞれの分析ピクセルが1.36mm程度の大きさになり、熱的分析を推奨されるエリアが少なくとも3x3ピクセルになるというようなものであり、それは、1mの距離における最小の分析エリアが4.08x4.08mm程度の大きさになることを意味し、それは、アレルギー性皮膚テストの目的のためには、とりわけ、単一のテスト・エリアの全体のサイズがわずか10x10mmであるパッチ・テストのためには、はるかに大き過ぎる。
【0022】
これらの制限が医療用途から赤外線カメラを排除することはないが、赤外線カメラがアレルギー性皮膚応答のスケールの正しいイメージングを提供するように、それらを追加的なスキャニング器具と組み合わせ、アレルギー反応が起こったテストされるエリアの初期のサーマル・イメージング識別を(他の方法を使用して)確認することが必要である。
【0023】
結論として、赤外線カメラを使用することは、アレルギー・テストの経過において起こる異常を強調し(Dencheva M.ら; Thermovision in dental allergology、Journ. of IMAB - Annual Proceeding、20巻、3号、2014)、それは、特定の異常高熱のシグネチャの形態で現れるが、技術的な限界に起因して、とりわけ、カメラの不十分な熱光学的な解像度および空間解像度に起因して、診断の確実性を取得することを可能にせず、それは、異常高熱の発生源、すなわち、サーモグラム上での特定のアレルゲン物質の適用部位の物理的な場所、を信頼性高く区別することを可能にしない。
【0024】
サーマル・イメージング・カメラによる赤外線検査は、別の技法、すなわち、陽性の皮膚テスト結果の部位において放出されたヒスタミンの結果として、皮膚マイクロ循環の拡張した血管の中の局所的に増加した血液流の部位の画像を記録するようになっているレーザー・ドップラー・フローメトリー(J. Serup J.、Staberg B.、Quantification of Weal Reactions with Laser Doppler Flowmetry - Comparative Blood Flow Measurements of the Oedematous Centre and the Perilesional Flare of Skin-Prick Histamine Weals、Allergy Europ. Journ. of Allergy and Clinic. Immunology、40巻、4号、1985)、および、アレルギー反応によって影響を受けていない未変化の皮膚と比較したときに、紅斑、丘疹、および小胞の形態の区別可能な皮膚病変を識別するための光学的な方法(散乱)、による同時の確認を必要とする。
【0025】
乳頭下血管叢の拡張した微小血管を通る局所的な血液流の増加によって特徴付けられるアレルギー反応の表皮下の部位を可視化することを目標としたレーザー・ドップラー・フローメトリーの使用は、ほぼ排他的に、実験的なおよび科学的な研究と関連付けられる。この技法は、アレルギー性皮膚反応の臨床評価の自律的な方法として使用されることができない。その理由は、それが、ヒスタミン後の効果を通したこの反応の1つの血管成分のみを表しており、同じ病態生理学的なメカニズムを使用することによってフローメトリーを検証するために追加的な技法を必要とするからである。レーザー・ドップラー・フローメトリーの方法は本質的に、皮膚アレルギー反応を伴う現象の複合を実証せず、したがって、皮膚アレルギー・テストの経過についての断片的な情報のみを提供する。
【0026】
アレルゲン/ハプテンの適用に対する皮膚反応を評価するための器具的な光学的な方法の使用は、それが特定のバイオマーカーの分析ではなく皮膚症状の分析に基づいているので、視覚的な判定方法のケースと同じ問題に起因して非効果的である。反応部位の周りのコントラストを増加させること、および、表皮紅斑の形態の皮膚異常の隔離に焦点を合わせた光学的な方法は、不十分であることが判明し(S. Astnerら、Pilot study on the sensitivity and specificity of in vivo reflectance confocal microscopy in the diagnosis of allergic contact dermatitis; Journal of the American Academy of Dermatology、3巻、6号、2005年12月; 986-992)、アレルギー性皮膚反応の包括的な判定のための自律的なツールとして失敗した。しかし、それらは、アレルギー反応によって影響を受けた皮膚の状況を変化のないエリアから差別化するために、分析的な可能性を有しているが、それは、表皮の応答のコントラストを増加させること、または、皮膚発疹の視覚的な拡大によってではなく、むしろ、健康な皮膚エリアおよびテストの間に変化したものによる可視光の反射係数/吸収係数の客観的なリフレクトメトリーの分析によってであり、それは、パッチ・テストにとってとりわけ重要であり、パッチ・テストでは、紅斑に加えて、形成された丘疹および/または小胞を考慮に入れることが必須であり、それは、生物物理学的な意味において、異なる光学的な特質(380~700nmの電磁スペクトル幅範囲内の反射および吸収)を有するエリアを構成する。
【0027】
これまで、テスト・アレルギー反応を評価することを目標とした皮膚条件の分析の上述の方法のいずれも、プリック・テストおよびパッチ・テストの両方においてアレルギー皮膚テストの自動読み取りのための単一の技法として用いられるのに十分なレベルで臨床的に確認された効率を示すことが自律的に証明されていない。本発明による装置に採用される本質的な新規な点は、I型アレルギー反応の間にH1ヒスタミン受容体の活性化によって誘発される皮膚マイクロ循環血管の拡張を確認するために、表皮のサーマル・イメージングをレーザー・ドップラー・フローメトリーと組み合わせることによって、ならびに、全く同じデバイスにおいて、IV型テスト・アレルギー反応によって引き起こされる紅斑、丘疹、または小胞の形態の皮膚病変を確認するための表皮のサーマル・イメージングおよび表皮のリフレクトメトリーの組合せによって、アレルギー・テスト・エリアにおける赤外線皮膚イメージングの結果の客観的な評価に必要な技術的な冗長性を取得することを可能にするハイブリッド・マルチスペクトル・イメージングの使用である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明による装置は、精度の目覚ましい改善を可能にし、同時に、マルチスペクトル・イメージングを導入することによって、I型アレルギー反応(即時型過敏症)およびIV型アレルギー反応(遅延型過敏症)の両方を再現するアレルギー皮膚テストの読み取り信頼性の目覚ましい改善を可能にし、マルチスペクトル・イメージングは、3つのデジタル・イメージング技法のうちの(1つのデバイス内での)新しい独自の組合せを通して利用可能であり、3つのデジタル・イメージング技法は、皮膚表面を分析するだけでなく、より深くに、最大で、おおよそ2000μmの深さに位置する構造体も分析するように設計されており、(a)熱的異常、いわゆる、異常高熱のアレルギー反応、(b)紅斑、丘疹、小胞、および腫れの形態の、いわゆるパッチ・テストの表皮反応として現れる皮膚表面異常、ならびに、(c)乳頭下血管叢の微小血管の拡張の形態の、皮膚のより深い層の中に位置する異常、を識別するようになっている。
【0029】
研究の結果として、3つの異なる技法である、サーマル・イメージング、レーザー・ドップラー・フローメトリー、および光学的なレフラクトメトリーの組合せが、プリック・テストおよびパッチ・テストの両方において皮膚アレルギー反応の完全なピクチャーを取得することを可能にすることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明の目的は、皮膚アレルギー・プリック・テストおよびパッチ・テストにおけるアレルギー性皮膚反応の生物物理学的パラメーターのマルチモーダル・イメージングおよび分析のための装置であって、底部から開いているハウジングの中において、動作する赤外線サーマル・イメージング・カメラと、(380nmから780nmの電磁波長範囲内の)可視光スペクトルで動作する、CCDまたはCMOS感光性マトリックスを備えた静止カメラとを含んでいる記録システムを組み合わせているハイブリッド構造体を有する、装置である。本発明による装置は、3次元の光学スキャナー(3D)を含む回転式チューブと、経皮的なレーザー・ドップラー・フローメトリーのための垂直方向に後退可能なドップラー・センサーとをさらに有している。また、ハウジングは、加熱および冷却システムを含む。また、装置は、サーマル・イメージング検査を実行するための安定した環境を提供する絶縁チャンバーを形成するスペーサーと、安定化された黒色熱電対の形態のキャリブレーション・システムとを具備している。上側ベースおよび下側ベースを備えないリングまたはプリズムの形態のスペーサーは、その側壁部にベンチレーション・スロットを具備しており、ハウジングの下側縁部に解放可能に接続されており、ハウジングとテストされる皮膚エリアとの間に囲まれたスペースを画定しており、そして、テストされる皮膚エリアは、スペーサーの下側部分の孔部によって画定されている(より具体的には、スペーサーの底部縁部によって画定されている)。静止カメラ、サーマル・イメージング・カメラ、および、垂直方向に後退可能なドップラー・センサーは、ハウジング内の中央位置に直接的に装着されており、中央位置は、検査フィールドの真上に(テストされる皮膚エリア上に)位置する。サーマル・イメージング・カメラ、静止カメラ、およびドップラー・センサーを含んでいるハウジングの下側部分の中に、回転式チューブが設けられており、回転式チューブは、ステッパー・モーターによって駆動され、上部および底部の両方から開いており、内蔵型3D光学スキャナー・システムを備えており、内蔵型3D光学スキャナー・システムは、LED光源を備えたパターン・プロジェクターと、垂直方向のパターン投影グリッドと、300nmから1000nmの波長範囲で動作するフルスペクトル・デジタル・カメラを装備しているオプトエレクトロニック・レコーダーとを含んでおり、それによって、パターン・プロジェクターおよびレコーダーの両方が、回転式チューブの下側開口部に対して傾けられた1つの平面内に装着されており、チューブ自身は、サーマル・イメージング・カメラの光軸に対して垂直の平面内での円形運動を可能にする円形フレームの上に配置されている。
【0031】
好ましくは、サーマル・イメージング・カメラ・システムは、少なくとも1つのまたは複数の相互接続されたセンサーを含んでおり、合計で偶数個の熱検出器、好ましくは、非冷却マイクロボロメーター・マトリックスを与え、少なくとも640x480の熱電対マトリックスのネイティブ解像度を有している。
【0032】
本発明による装置の別の好ましい実施形態では、サーマル・イメージング・カメラ・システム(2)は、光学システムと一体化されており、光学システムは、少なくとも60°x45°の視野角を備えたシングルまたはマルチ・レンズ対物レンズから構成されており、0.15x0.15mm(IFOV-瞬間視野)以上のカメラ・マトリックスの上に投射される皮膚の上のピクセル・サイズ、および、0.5mm(MFOV-測定視野)以下の3x3ピクセルから構成される分析フィールドのサイズを提供する。
【0033】
好ましくは、サーマル・イメージング・カメラ・システム(2)は、100mmを超えない距離において、60x150mm以上のエリア上のテストされる皮膚の温度を測定するように適合されている。
【0034】
好ましくは、サーマル・イメージング・カメラ・システムは、人工皮膚マスター・サンプルを具備しており、人工皮膚マスター・サンプルは、人工皮膚の放射率εを0.98以上のレベルに設定し、サーマル・イメージング・カメラによって記録される温度範囲に関して任意の値に、しかし、0℃以上から100℃までの範囲内に、温度参照ポイントを設定することを可能にする。
【0035】
好ましくは、人工皮膚を模倣するキャリブレーション・システムは、調節可能な温度、および、0.98以上の値に近い、および、好ましくは、1に近い既知の放射率(ε)を備えており、サーマル・イメージング・カメラの視野の中において、スペーサーの内側に、下側縁部上に装着されており、また、熱抵抗器、サーミスタ、または熱電センサー(熱電対)の形態の温度センサーを備えたフィードバック・ループの中で動作する電子的な温度調整器を備えた、抵抗材料製の安定化された加熱用熱電対から構成されており、温度点の精密な設定を可能にし、キャリブレーション・システムは、サーマル・イメージング・カメラによって記録された温度範囲に対して、その温度点まで加熱する。
【0036】
好ましくは、人工皮膚を模倣するキャリブレーション・システムは、調節可能な温度、および、1に近い既知の放射率(ε)を備えており、微粉末化された炭素を含んでいるものを含む黒色顔料を使用することによって取得される黒色によってカバーされており、または、完全な黒体に近い電磁放射線に関する吸収特性を有する市販のナノ粒子、たとえば、Surrey Nanosystemsによって供給されるVantaBlack(商標)、によってカバーされている。
【0037】
好ましくは、スペーサーは、プラスチック製であり、好ましくは、透明であり、それは、光ファイバーの原理に基づいて、皮膚と接触する縁部を照射することを可能にする。
【0038】
好ましくは、ドップラー・センサーは、半導体レーザーを装備しており、半導体レーザーは、少なくとも560nm、好ましくは、780nmの波長の単色光を作り出し、2つの帯域にあり、かつ少なくとも46mmの光ファイバー・チャネルの分離を伴う、10Hzから19kHzのサンプリング周波数を有している。
【0039】
好ましくは、静止カメラは、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)マトリックスまたはCCD(電荷結合素子)マトリックスから選択される、少なくとも640x480ピクセルのネイティブ解像度を有する少なくとも1つの光検出マトリックスを含んでいる。
【0040】
好ましくは、3Dスキャナー・パターン・プロジェクターのLED(発光ダイオード)光源は、380nmから780nmの波長範囲内の、好ましくは、415nmの、一貫した単色放射線を放出する。
【0041】
好ましくは、装置の加熱および冷却システムは、テストされる皮膚エリアの中の空気ストリームを制御するために方向ノズルを具備している。
【0042】
好ましくは、スペーサーは、テストされる皮膚表面への大気流入を閉鎖することによって、および、加熱および冷却システムからの空気をテストされる皮膚表面へ直接方向付けることによって、サーマル・イメージング・カメラによって実施される測定の熱的条件を安定化させるためのチャンバーである。
【0043】
本発明による装置は、精度の目覚ましい改善を可能にし、同時に、マルチスペクトル・イメージングを導入することによって、I型アレルギー反応(即時型過敏症)およびIV型アレルギー反応(遅延型過敏症)の両方を再現するアレルギー皮膚テストの読み取り信頼性の目覚ましい改善を可能にし、マルチスペクトル・イメージングは、3つのデジタル・イメージング技法のうちの(1つのデバイスの中での)新しい独自の組合せを通して利用可能であり、3つのデジタル・イメージング技法は、皮膚表面を分析するだけでなく、より深くに、最大で、おおよそ2000μmの深さに位置する構造体も分析するように設計されており、(a)熱的異常、いわゆる、異常高熱のアレルギー反応、(b)紅斑、丘疹、小胞、および腫れの形態の、いわゆるパッチ・テストの表皮反応として現れる皮膚表面異常、ならびに、(c)I型反応におけるプリック・テストの中の乳頭下血管叢の微小血管の拡張の形態の、皮膚のより深い層の中に位置する異常を識別するようになっている。
【0044】
本発明によるマルチモーダル・イメージング装置は、プリック・テストおよびパッチ・テストという両方のバリアントにおいて、皮膚テストによって誘発される体温上昇のアレルギー反応の定性的なおよび定量的な分析のための器具としての、アレルギー学における医療用途のためのサーマル・イメージング・カメラのパラメトリックな限界を含む、シングル・モードの解決策を使用した結果として生じる上述の問題に対する革新的な解決策を提供するが、しかし、予想される客観性は、(a)レーザー・ドップラー・フローメトリーと組み合わせたときにのみ実現されることとなり、レーザー・ドップラー・フローメトリーは、具体的には、プリック・テストにおいて、異常高熱を確認することを可能にし、より正確には、乳頭下血管叢のヒスタミンによって拡張した皮膚血管の中の増加した血液流を測定することによって、その血管成分を確認することを可能にし、また、予想される客観性は、(b)具体的には、パッチ・テストにおいて、可視光範囲内の皮膚表面の光学リフレクトメトリーと組み合わせたときにのみ実現されることとなり、光学リフレクトメトリーは、紅斑、小胞、および丘疹の形態の皮膚症状を精密に識別することを追加的に可能にする。したがって、本発明による装置は、以下を関連付ける相関した生物物理学的なデータを共同で発生させる:(a)プリック・テストの間の活性化されたマスト細胞I型アレルギー反応から放出されたヒスタミンと内皮受容体H1との間の相互作用の結果として拡張されている乳頭下層血管叢の微小血管の中の流量単位[PU]で表される毛細管流の体積を伴う、度[℃/F]で表されるアレルギー性の異常高熱の温度寸法、および、(b)パッチ・テストにおいてIV型アレルギー反応が起こった、影響を受けた皮膚エリアにおいて測定される反射率パラメーター[°]を伴う、度[℃/F]で表されるアレルギー性の異常高熱の温度寸法。
【0045】
本発明による解決策は、アレルギー反応によって影響を受けた皮膚の表面の上の拡散光の吸収および反射の生物物理学的なモデルの特性に基づいており、それは、光子拡散レベルにおいて発生する現象の光学的な特質を説明しており、光学的な検出器自身の構築概念の中でのこのモデルの使用を正当化しており、それは、後に、ハードウェア・レベルおよびソフトウェア・レベルの両方において、異常高熱と高度に相関付けられたアレルギー性紅斑を含む、表皮の異常のエリアの客観的な分離を可能にし、次いで、その精密な定量的表現を可能にする。
【0046】
本発明による装置は、適用される皮膚テストによって誘発されるアレルギー反応の結果として皮膚組織の中に起こる熱発生効果をイメージングするために赤外線スペクトル(近-760~4000nm、中-4000~14000nm、および、遠-14000~100μmとして定義される)で動作する専用のサーマル・イメージング・カメラを構成するオプトエレクトロニック・モジュールを使用する。表皮に登録された表皮下の異常高熱のエリアは、個々の過敏症の結果として、体温上昇の反応によって同伴されるアレルギー反応をアレルゲン/ハプテンがトリガーしたエリアにトポグラフィックに対応している。組織熱伝達現象の生物物理学的な説明は、分析モデルに関する理論的な基礎を形成し、分析モデルは、適用されるアレルゲンが病理学的プロセスのカスケードをトリガーして皮膚温度の著しい局所的な上昇を生じさせた皮膚エリアを識別することを可能にし、温度の著しい局所的な上昇は乳頭下層の中に発生源を有する。
【0047】
皮膚組織の中の熱伝達の最適化された生物物理学的なモデルにおいて、皮膚は、多層システムとして取り扱われ、多層システムは、非ゼロの厚さL-Lを有する表皮Ωと、非ゼロの厚さL-Lの真皮Ωと、非ゼロの厚さL-Lの準均質の構造体Ωと考えられる皮下の層とを含み、ここで、これらの層の熱力学的パラメーターは、以下のように定義される:λ[W/mK](熱伝導率)、およびc[J/mK](単位当たりの比熱、e=1,2,3)。皮膚エリアの中の瞬間的な生体熱流は、以下の式のセットによって記述される。
【0048】
【数1】
ここで、k=Gであり、Ge[(m血液/s)/(m組織)]は、血液灌流インデックスであり、c[J/(mK)]は、毛細管血液体積比熱であり、Tは、動脈血液温度であり、Qme[W/m]は、代謝熱源であり、それによって、表皮の層(e=1)に関して、G=0およびQm1=0である。この式のセットは、以下の境界条件によって補足されるものとする。
- 考慮される異なる皮膚層の間の接触表面において(e=1,2):
【0049】
【数2】
- セットを定義する標準的な想定される内部限界において:
【0050】
【数3】
- 皮膚表面において:
【0051】
【数4】
ここで、a[W/mK]は、等価熱流量であり、Tは、室温である。モデルは、初期温度の分布が既知であることを想定している:
【0052】
【数5】
【0053】
好ましくは、本発明による装置におけるアルゴリズム分析のためのモデルを実装するために、境界要素法を使用することが有益であり、それは、提示された式および遷移状態tf-1→tに関して、後続の皮膚層に関する特定の公式をもたらすが、分析アルゴリズムは本出願の対象ではない。熱力学的モデルは、皮膚組織の中の伝導を通した生体熱輸送の現象をよく反映するが、テストによって誘発されるアレルギー反応における表皮の温度分布の記録は、組織の空間的構造体の中の熱流に関係しており、その深さ(z)は、2.5~2.8mmを超えないものであり、したがって、サーマル・イメージングは、結果として誤解を招く読み取りを生じさせる重大な障壁に遭遇しないことが留意されるべきである。
【0054】
本発明による装置において、局所的なアレルギー反応の登録されるサーマル・シグネチャは、共通の要因を構成するが、プリック・テストおよびパッチ・テストの両方の結果の判定において考慮されるべき2つの分析要因のうちの1つのみを構成する。完全な判定を行うために、陽性の皮膚アレルギー反応に統計的に関係付けられる熱的異常の存在を確認するための、異なる検査技法に基づく、サーマル・イメージングに関連する2つの追加的な器具を使用することが必要である。
【0055】
これらの器具の第1のものは、最適には630nmから780nmの範囲内の波長のコヒーレント単色光ビームを放出する低出力半導体レーザーを使用するレーザー・ドップラー・フローメーターである。それは、乳頭下層血管叢の血管の中の局所的な増加した血液流を識別することによって、マルチモーダル・アレルギー・イメージング・システムの中で確認の役割を果たし、それは、毛細管血管の拡張につながるH1受容体のヒスタミン活性化の結果として直接生じる、サーマル・イメージング・カメラによって記録された表皮の異常高熱の起源を確認することを可能にし、プリック・テストの陽性結果と相関付けられる。
【0056】
本発明による装置の中のサーマル・イメージング・カメラと連結されている第2の器具は、リフレクトメトリーの測定のために使用される3D皮膚スキャナーである。可視光スペクトル波長範囲380~780nm内の光学リフレクトメトリーは、皮膚表面のスキャニング、および、パッチ・テストの結果としてIV型アレルギー性皮膚反応の間に形成されたアレルギー性紅斑、小胞、および/または丘疹などのような特定の発疹の識別を可能にし、また、テストされる同じ皮膚エリアの中のサーマル・イメージング・カメラによって記録された異常高熱を確認することを意図しており、それは、適用されるハプテンに対する陽性反応の第1のインジケーターである。リフレクトメトリーの方法によって登録される異常高熱の検証の本質は、健康な皮膚のケースとアレルギー反応によって影響を受けたものとの光反射係数の客観的な相違の存在を確認することであり、ここで、上述の異常は、紅斑、丘疹、および/または小胞の形態で起こり、それは、現在、臨床実務において、テスト部位においてIV型アレルギー反応を誘発させる過敏症の表皮の症状として判定されている。
【0057】
生物学的なサンプルの検査プロセスにおいて、吸収および反射の現象が同時に起こるので、ハードウェアの観点から、なかでも測定の観点から(後に行われるアレルギー反応エリアの読み取りを客観化する目的のために)、優先事項は、反射ビームの強度を決定することであり、それは、皮膚表面の特定の特性に依存している。
【0058】
生物物理学的なモデルの視点から、コリメートされた単色光のビームが、移動する物体(このケースでは流れている形態学的な血液エレメント(主に、赤血球))によって反射されたときには、移動する物体の速度ベクトル、入射ビームの方向、および、反射ビームの方向に応じて、周波数シフトが起こる。kが、速度v(m/s)で移動している散乱粒子にぶつかる入射光子に関するビーム伝播ベクトル(rad/m)を説明し、kが、構造体から反射される光子伝播ベクトルを定義している場合には、周波数の角度シフトβ(rad/s)は、次の関係によって記述される。
【0059】
【数6】
ここで、λは、周囲の媒体の中の光子に関する波長(m)であり、Θは、kとkとの間の拡散の角度であり、αは、ベクトルvと拡散平面との間の角度であり、φは、拡散平面a(k-k)内のベクトルの投射の間の角度である。kとkの間の差は、散乱ベクトルqとして定義される。
【0060】
レーザー・ドップラー・フローメーターは非常に小さいサンプリング体積を有するため、灌流値から、および、事実上は毛細管血液の流れから、および、組織の光学的な特性から生じる最小の空間的変化に対しても敏感になる。同じ皮膚テスト・エリア上の1つのテスト部位における特定の灌流に関して取得される信号は、測定部位が変更されると著しく変化する可能性があり、それは、アレルゲン適用の個々のポイントの中の流れを分析するときに問題になる可能性がある。また、流れ読み値の変動性は、2.5mmの間隔を離して配置された位置を測定する場合に流れ信号がおおよそ1桁異なる可能性のある程度にまで、乳頭下層の中の血管の不均一な濃度によって引き起こされる著しい不均質によっても特徴付けられ得る。
【0061】
本発明による装置は、1つの病態生理学的な条件(すなわち、皮膚アレルギー反応)に関して異なるイメージング方法の革新的なハイブリッド的組合せであり、そのうえ、それは、アレルギー反応の2つの異なるバリアントであるI型およびIV型に適合されている。本発明による装置は、相補的な生物物理学的なデータを取得することを可能にし、その定性的な態様および定量的な態様の両方において、プリック・テストおよびパッチ・テストの両タイプの皮膚テストにおける陽性アレルギー反応の存在を説明する複雑なインデックスを開発するための基礎を形成する。
【0062】
本発明による装置は、器具的な方法によって測定可能な、I型およびIV型の両方のアレルギー反応の生化学的というよりもむしろ生物物理学的な皮膚マーカーを使用して、皮膚テストの中のアレルギー反応を客観的に測定することを可能にする。
【0063】
そして、生物物理学的なマーカーは、テスト・アレルゲン/ハプテンの適用に対する皮膚の免疫反応の繰り返し可能なおよび高度に標準化された多方向判定を可能にし、それは、今まで不可能であった。とりわけ、異なるセンターで実施されたテストの結果を比較することが可能でなかったが、また、異なる時間において同じセンターの中で実施されたテストの結果を比較することも可能でなかった。
【0064】
本発明の本質は、I型およびIV型皮膚アレルギー反応に伴う病態生理学的なメカニズムについての知識の革新的な使用ということになり、皮膚アレルギー・テストの結果の判定の精度において著しい差を結果として生じさせる、医師の個々の経験のみに基づくのではなく、現代のエビデンス・ベースト・メディスン(EBM)の要件を満たすハイブリッド・ハードウェア解決策を作り出すことになる。
【0065】
本発明による装置は、アレルギー学において以前から公知であり別個に使用されているさまざまな実験的な非侵襲性であるイメージング技法を共通のハウジングの中に組み合わせるハイブリッド分析器の構築ということになるが、別個のサーマル・イメージング、レーザー・ドップラー・フローメトリー、または光学リフレクトメトリーを使用して以前に取得された断片的な測定データは明確な結果を与えなかったため、独自の機能的な特徴の観点からは、コンポーネント器具の機能性の単なる総和をはるかに超えている。しかし、それらの組み合わせた使用は、これらのデータが互いに相補することとなる方式、ならびに、医療器具についての法律によって要求される確認および精度を測定結果が提供することとなるかどうかを決定することに関して、これらの技法のそれぞれによって取得される生物物理学的なデータ特質の事前分析を必要とした。1つの方法で取得されたデータの確認は、それが病態生理学的なプロセスの測定可能なパラメーターを客観的な生化学的なまたは生物物理学的なマーカーへと総合的に変換することとなるハードウェア解決策を提供しない場合にも必要である。サーマル・イメージング方法は、その目標を実現するために最も近いものであるが、現在使用されているサーマル・イメージング・カメラの熱光学的な空間解像度は、それらがアレルギー性皮膚反応の分析のための単独の排他的なツールとして独立して使用されて、テストされる皮膚反応フィールドの表面上のサーマル・シグネチャの必要な品質を取得することを可能にするのを妨げている。
【0066】
本発明による装置は、精度の劇的な改善を提供し、同時に、一体化しているマルチスペクトル・イメージングに起因して、I型およびIV型アレルギー反応の両方を正確に再現する皮膚アレルギー・テストの結果の読み取り信頼性の劇的な改善を提供し、マルチスペクトル・イメージングは、3つのデジタル・イメージング技法ののうちの(1つのデバイスの中での)新しい独自の組合せを通して利用可能であり、3つのデジタル・イメージング技法は、皮膚表面を分析するだけでなく、より深くに、最大で、おおよそ2000μmの深さに位置する構造体も分析するように設計されている。
【0067】
また、本発明の目的は、プリック・テストの間の、またパッチ・テストの間の、表皮下のアレルギー反応を特徴付ける3つの適当に選択された生物物理学的パラメーターのハイブリッド・イメージングのための方法であり、プリック・テストでは、患者の皮膚のテストされる区域が、アレルゲンおよびヒスタミンに露出され、パッチ・テストでは、アレルギーを誘発する物質(ハプテン)および刺激物が、特別のパッチによって、テストされる皮膚に適用される。本発明による方法は、アレルギー反応を特徴付ける生物物理学的パラメーターの自動的な判定を実行する役割を果たし、患者の皮膚のテストされるエリアをプリック・テストのケースではアレルゲンであり、パッチ・テストのケースではハプテンである少なくとも1つのテスト物質に露出させた結果、アレルゲンまたはハプテンのテスト適用の部位において陽性のアレルギー反応が存在するかどうかを冗長な様式で決定する。
【0068】
本発明によるハイブリッド方法の第1のコンポーネントは、局所性の異常高熱の皮膚フィールドの決定であり、それは、プリック・テストおよびパッチ・テストの陽性結果の場合における皮膚アレルギー反応の中の体温上昇のアレルギー反応であり、プリック・テストでは、乳頭下微小血管叢のヒスタミン後血管拡張に起因して増加した灌流の結果であり、パッチ・テストでは、異常高熱は、熱発生効果を伴う局所的な炎症プロセスによって同伴される複雑な免疫反応の結果であり、摂氏/華氏の度で表される生物物理学的な寸法を有している。
【0069】
本発明によるハイブリッド方法の第2のコンポーネントは、皮膚の乳頭下層の中の微小血管叢の中の血管流の量の決定であり、それは、内皮受容体H1の活性化を通してヒスタミンによって影響を受け、ヒスタミンは、プリック・テストの結果としてI型皮膚アレルギー反応において放出され、それは、依存関係PU=CMBC x vBCによって表される形態学的なエレメント(検査された血管の中に存在する血球)の流量(mm/s)と相関付けられる、流量単位[PU]で表される生物物理学的な寸法を有しており、ここで、CMBCは、移動する形態学的な血液エレメントの濃度であり、vBCは、形態学的な血液エレメントの測定された移動の速度である。第2のコンポーネントは、異常高熱の源が、プリック・テストにおけるI型反応に関連付けられるヒスタミン後効果に関連付けられる血管成分であることを確認することによって、表皮に検出されるアレルギー性の異常高熱の非人工性を確認するために使用される。
【0070】
本発明によるハイブリッド方法の第3のコンポーネントは、パッチ・テストにおける陽性のIV型皮膚アレルギー反応の結果として形成された丘疹および/または小胞および/または紅斑の形態の皮膚病変の決定であり、それは、[mm]で表される生物物理学的な寸法を有しており、3D皮膚スキャナーによってスキャンされたテストされる皮膚の状態を反映している。
【0071】
プリック・テストおよびパッチ・テストの両方における皮膚アレルギー反応のパラメーターをイメージングするための本発明によるハイブリッド方法の本質は、ハイブリッド方法の3つのコンポーネントをリンクさせる軸がサーマル・イメージングであるということになり、それは、表皮に投与されたテスト・アレルゲン/ハプテンに対する陽性アレルギー反応の存在を初期に識別することを可能にし、したがって、それは、両方のタイプに関して共通の生物物理学的な決定因子(サーマル・マーカー)であり、表皮の異常高熱テストの結果のさらなる確認の必要性を決定する。
【0072】
サーマル・イメージングおよびレーザー・ドップラー・フローメトリー測定の組合せだけが、プリック・テストの真の陽性結果の包括的な確認を提供することが可能であり、偽陰性および偽陽性の両方の結果を排除し、それは、感度および特異性の観点から医療テストを特徴付ける重要なパラメーターである。
【0073】
同様に、テストによってカバーされる皮膚エリアのトポグラフィーを記録することによって、IV型アレルギー反応の結果として生じる表面皮膚発疹を分類および識別することを可能にし、したがって、パッチ・テストの陽性結果を客観的に確認し、偽陰性および偽陽性の結果の排除にもつながるのは、3Dスキャナーによる可視光範囲内でのサーマル・イメージングおよび光学リフレクトメトリー測定の組合せだけである。
【0074】
さらに、サーマル・イメージング結果と経皮的なレーザー・ドップラー・フローメトリーまたは3Dスキャナーを使用した光学リフレクトメトリーの結果との重ね合わせに基づいて、完全なハイブリッド結果が開発され、それは、個々の測定値からの生物物理学的なインデックスから構成されており、テストされる皮膚エリアの中のアレルギー反応の存在およびサイズを決定することを可能にする。個々の方法で取得される結果の集計は、特殊なコンピューター・アルゴリズムによって実施され、それは、本出願の対象ではない。
【0075】
好ましくは、皮膚アレルギー反応パラメーターのハイブリッド・イメージングのための本発明による方法の物理的な実装のために使用されるのは、本発明によるマルチモーダル・イメージングのための装置である。
【0076】
好ましくは、サーマル・イメージング・カメラによって撮られる、テストされる皮膚表面の上の等温線分布の画像は、静止カメラによって取得される同じテストされる皮膚エリアの可視画像の上にデジタル的に課される。
【0077】
好ましくは、アレルギー性皮膚反応パラメーターのためのハイブリッド・イメージングのための本発明による方法において、患者の皮膚が少なくとも1つのアレルゲン物質に露出される前に、少なくとも1つのアレルゲン物質の適用ポイントのトポグラフィーを決定するために、および、皮膚表面の上の検査エリア全体の境界を画定するために、テンプレートが患者の皮膚表面に適用される。
【0078】
少なくとも2つの異なる測定技法である、サーマル・イメージング技法と、レーザー・ドップラー・フローメトリーまたは3D皮膚スキャナーを使用した光学リフレクトメトリー技法のいずれかである検眼技法と、の組合せに起因する、皮膚アレルギー反応パラメーターのハイブリッド・イメージングのための本発明による方法は、プリック・テストにおけるI型アレルギー反応およびパッチ・テストにおけるIV型アレルギー反応の両方において、同じ皮膚アレルギー反応の異なるコンポーネントをイメージングするための他の測定アルゴリズムの使用に起因して必要な検出信頼性を提供し、それは、Received Operating Curve(ROC)によって記述される信頼性の高い医療テスト結果を取得するための基準が満たされることを保証する。ROCは、臨床実務において、最適な感度および特異性パラメーターが確立されている診断テストの閾値を決定するためのツールとして使用されている。
【0079】
皮膚アレルギー反応パラメーターのハイブリッド・イメージングの方法は、2つの複雑なインデックスを決定し、それは、(a)サーマル・イメージングおよび(b)レーザー・ドップラー・フローメトリーまたは(c)3D皮膚スキャナーを使用する光学リフレクトメトリー、によって取得される測定結果のパラメトリックな組合せであり、3D皮膚スキャナーは、任意の単位で(プリック・テストの場合は[PTU]およびパッチ・テストの場合は[PATU])寸法決めされる。
【0080】
任意の単位[PTU]は、対数無次元単位として取得され、それは、以下の公式に従って定義される。
【0081】
【数7】
ここで、Pは、プリック・テストにおける複雑な皮膚アレルギー反応のサイズであり、Pは、1に等しい参照サイズであり、log10は、10進数の対数である。複雑なI型皮膚アレルギー反応のサイズは、表1に提示されているスケールで記述される。
【0082】
【表1】
【0083】
また、任意の単位[PATU]は、対数無次元単位として取得され、それは、以下の公式に従って定義される。
【0084】
【数8】
ここで、Pは、パッチ・テストにおける複雑な皮膚アレルギー反応のサイズであり、Pは、1に等しい参照サイズであり、log10は、10進数の対数である。複雑なIV型皮膚アレルギー反応のサイズは、表2に提示されているスケールで記述される。
【0085】
【表2】
【0086】
本発明は、添付の図面を参照して、下記の好適な例示的な実施形態において提示されている。
【図面の簡単な説明】
【0087】
図1】本発明による装置の実施形態の例示のスキームを示す図である。
図2図1の装置の一部である3Dスキャナーの図である。
【発明を実施するための形態】
【0088】
図1に示されている本発明による例示的な装置は、ハウジング19を有し、ハウジング19の中には、3つの測定器具が、隣り合って装着されており、アレルゲン適用の結果として生じる皮膚病変を伴う皮膚17のテストされるエリアに向けて方向付けられている。それらは、静止カメラ1、赤外線サーマル・イメージング・カメラ2、および、ハウジングから垂直方向に後退可能なドップラー・センサー4である。スペーサー15は、透明なプラスチック製であり、テストされることとなる皮膚エリア17のフィールドを画定する開口部を有しており、ハウジング19に取り付けられ、検査の間に患者の皮膚表面に面している。測定の間、スペーサー15は、患者の皮膚表面の上に置かれ、テストされる皮膚エリア17の表面から一定の距離に器具が維持されることを保証する。テストされる皮膚エリア17のフィールドを画定する開口部の縁部において、スペーサー15は、加熱マイクロエレメント16を有しており、加熱マイクロエレメント16は、フィードバック・ループの中のK-タイプ熱電対と一体化されており、商品名VantaBlack(商標)の下で市販されている、微粉末化された炭素またはナノチューブを含んでいる黒色顔料によってコーティングされており、人工皮膚の熱および放出標準を模倣する。測定の間に、加熱マイクロエレメント16は、テストされる皮膚エリア17の断片と接触している。ハウジング19は、加熱および冷却システム18を具備しており、測定の間、テストされる皮膚エリア17の直上において一定の温度を提供する。装置のハウジングの下側の、テストされる皮膚エリア17の上方には、チューブが、内蔵型3D皮膚表面スキャナー5を含んでいる回転リングの形態で設けられている。LED光源を備えたパターン・プロジェクター5a、および、広帯域フルスペクトル・デジタル・カメラを備えた3D皮膚スキャナーのレコーダー5cの形態の光学システムが、3Dスキャナー5の回転リングの内側にある。
【0089】
図2は、図1に示されている本発明による装置のコンポーネントを形成する回転式3D皮膚表面スキャナー5の図を示している。3Dスキャナー5は、LED光源を備えたパターン・プロジェクター5aを装備しており、それは、380nmから780nmの可視範囲内の光のビームを、投影グリッド5bを通して、テストされる皮膚エリア17に方向付ける。垂直方向のパターンを有する投影グリッド5bを光ビームが通過する結果として、このパターンの画像が、テストされる皮膚エリア17の上に表示される。皮膚表面の上に丘疹もしくは小胞が存在するケースでは、または、IV型アレルギー反応に関連付けられる紅斑を伴う腫れが存在するケースでは、パターン2aの幾何学的な歪みが起こり、そのため、レコーダー5cのカメラ・マトリックスによって登録されている反射放射線の画像において、表現3が、テストされる皮膚エリア17上に歪んだパターンから形成される。広帯域デジタル・カメラの感光性マトリックスの個々のピクセル3aは、テストされる皮膚表面17のそれぞれのスキャンされたポイント2において、反射光ビームを記録する。
【0090】
本発明による装置の実施形態は、プリック・テストおよびパッチ・テストの両方において出現する皮膚アレルギー反応に伴う生物物理学的パラメーターのハイブリッド包括的イメージングのための複合モジュールに関し、連結されたオプトエレクトロニック・システムから構成されており、オプトエレクトロニック・システムは、単一のハウジングの中に一体化されており、以下のコンポーネントを含んでいる。
- ハウジングの底部において、回転リングによって形成されたチューブの中心(垂直方向の)軸線の中に据え付けられているサーマル・イメージング・カメラ2。このカメラは、7.5x10nm(7.5μm)から1.4x10nm(14μm)の範囲にある赤外線帯域内で動作し、マルチ・レンズ対物レンズの形態の専用の光学システムを具備している。
- 380nmから780nmの電磁波長範囲を有する可視光スペクトルの中で動作し、マルチ・レンズ対物レンズを具備している静止デジタル・カメラ1。
- 皮膚の乳頭下層の血管の微小血管叢のエリアの中の経皮的なレーザー・ドップラー・フローメトリー(LDF)のために、2つの光ファイバー帯域および光ファイバー・チャネルの少なくとも46mmの分離を備え、10Hzから19kHzのサンプリング周波数によって、560nm以上の帯域内で、最適には780nmで動作するレーザーを備えたドップラー・センサー4。
- LEDダイオードの形態の単色コヒーレント光源を備えたパターン・プロジェクター5aと、テストされる皮膚の上にパターン化された画像を表示するために使用される垂直方向の投影グリッド5bと、300nmから1000nmの(とりわけ、380nmから780nmの可視光スペクトルをカバーする)電磁波の幅広いスペクトルの中で動作し、マルチ・レンズ対物レンズを具備しているフルスペクトルRGBカメラの形態のレコーダー5cとから構成されている3D皮膚スキャナー5。
【0091】
可視光スペクトル範囲で動作する静止カメラ1は、少なくとも640x480ピクセルのネイティブ解像度を有する、単一のマトリックスもしくはより多くの偶数個のCMOSタイプの光検出マトリックス(MOS-タイプ・トランジスターから構成されている相補型金属酸化膜半導体)、または、LIVEMOSバリアント、または、少なくとも640x480ピクセルのネイティブ解像度を有するCCDタイプ(電荷結合素子)の光検出マトリックスを具備している。構造的な態様から、3D皮膚スキャナー5システムは、パターン・プロジェクター5aとともにレコーダー5cを構成する、6400x3200ピクセルのネイティブ解像度を有する光検出マトリックスを備えたフルスペクトル・カメラから構成されている。ある実施形態では、パターン・プロジェクター5aを備えたカメラ5は、可動の円形フレームの上に、単一の垂直方向の平面内に設置されており、可動の円形フレームは、装置に接続されているコンピューターによって制御されるステッパー・モーターによって水平方向に移動し、スキャンされる皮膚エリアの上方のカメラ移動の精密な制御を可能にし、それが、プロジェクター5aによって皮膚の上に表示されるパターンの変形の精密なレコーダーとしても作用しながら、それ自身の視野によって、テストされるエリアの全体をカバーするようになっている。3D皮膚スキャナー5の光学システムは、少なくとも0.1mmの空間解像度を有する最小スキャニング・パラメーターを提供するように設計されており、スキャンされる皮膚表面対象の0.03mmの最小スキャニング・サイズによって、0.01mmから0.61mmの点密度を測定する。
【0092】
本出願による装置の実施形態において、レコーダー5cとして使用されるフルスペクトル・カメラの移動は、6.2832rad(360°)の円形トラックの上で起こり、また、テストされる皮膚エリアの全体のスキャニングを保証するために、同じラインの中に設置されているがオフセットされているパターン・プロジェクター5aと連結されており、カメラの光軸は初期に0rad(0°)に設定されている。
【0093】
実施形態において、静止カメラ1CCDが、カメラの光軸が初期に0rad(0°)に設定された状態で、6.2832rad(360°)の角度によって円形フレームの上を水平方向の平面内で移動する、6400x3200ピクセルのネイティブ解像度を有する単一の光検出器マトリックスとともに使用された。テストされる皮膚表面の3Dスキャニング・シーケンスを開始させた後に、静止カメラ1CCDは、PCのマイクロプロセッサーによって制御されるステッパー・モーターによってこのフレームの上を移動させられ、装置は、USB2.0以上を介してPCに接続されている。
【0094】
CCDマトリックスを備えた静止カメラ1は、ハウジング19の中に設置されており、ハウジング19は、底部からテストされる皮膚表面に向けて開いており、60x150mmの最小サイズを有するテストされる皮膚エリアのデジタル写真を撮る能力を提供する。好ましくは、CCDカメラのレンズが設置されている光学システム・ハウジング19の内側は、黒色のアンチ・グレア層によってカバーされている。
【0095】
ハウジング19の底部においてロータリー・リングによって形成されたチューブの軸線の中心に、静止カメラ1CCDの隣に、追加的なサーマル・イメージング・カメラ2が存在しており、サーマル・イメージング・カメラ2は、7.5μmから14μmの電磁波長の赤外線範囲内で動作し、1つ以上の偶数個のマイクロボロメーター(冷却または非冷却)を含んでおり、少なくとも640x480ピクセルのネイティブ解像度を有している。本発明による装置の実施形態において使用されるサーマル・イメージング・カメラ2は、ハウジング19の開放表面に対して垂直方向に、ハウジングの中に恒久的に固定されており、好ましくは、640x480ピクセルの最小解像度を有する非冷却マイクロボロメーターを有しており、マルチ・レンズ対物レンズは、100mmから150mmの距離、53°x38°の最小必要視野角を提供し、111x157mmの長方形の測定フィールドおよび192mmの対角線を含み、一方、サーマル・イメージング・カメラの光学系は、十分な幾何学的な解像度を保証し、ここで、マイクロボロメーターの単一のピクセルの上に投射される測定フィールドの最小セグメントのサイズは、0.33x0.33mm(iFOV=0.33mm)およびMFOV=0.99mmである。これらの値は、直接的にテスト表面の上の、および、必要とされるテスト・フィールドの全体にわたって維持される測定の完全性を伴った、サーマル・イメージング・カメラ2のプログラムされた解像度における最小温度変化の正しく十分に詳細な表現のために必須であり、必須とされるテスト・フィールドの寸法は、おおよそ50x140mmの側部を有する標準的なパッチ・テスト・チャンバーのサイズによって暗示されており、その中に、アレルゲン物質が設置され、次いで、皮膚に取り付けられ、その理由は、プリック・テストにおけるテスト・フィールドの寸法が、医師の決定のみに依存するからであり、医師は、事前決定されたサイズのランセットまたは使い捨てのランセットのいずれかを使用することが可能であり、テスト・フィールドの限界を自由に決定することを可能にする。
【0096】
サーマル・イメージング・カメラ2のレンズの光学的中心からテスト表面までの距離が、おおよそ150mmよりも大きい場合には、サーマル画像の実際の空間解像度が不十分になること、より具体的には、マイクロボロメーターの上の単一のピクセルによって区別可能なテスト・フィールドの単一のセグメントのサイズ(それに関して、サーマル・イメージング・カメラ2は最小ファクトリー・セット温度差を決定することができる)が1mmx1mmよりもはるかに大きく、とりわけ、3mmx3mmよりも大きいことが判明する可能性があるということが分かる可能性がある。約1%または1℃におけるサーマル・イメージング・カメラ2の平均測定誤差を伴うレベル<30mKにおけるサーマル・イメージング・カメラ2の最小熱解像度に関連する光学系の適当な選択は、以下の式に従って、特定のマイクロボロメーターのサイズおよびテスト・フィールド・サイズにおいて、対物レンズに関する連結された焦点距離計算を適用することによって可能である。
【0097】
【数9】
ここで、O(物体寸法)は、マイクロボロメーターの単一のピクセルによって区別可能な、テストされる四角形の物体の縁部寸法(高さまたは幅または対角線)(mm)であり、f(フォーカス)は、対物レンズの焦点距離(mm)であり、D(距離)またはMOD(最小物体距離)は、テスト・フィールドからの対物レンズの光学的中心の最小距離(mm)であり、MD(マトリックス寸法:高さ、幅、対角線)は、長方形のマイクロボロメーター(高さ、幅、対角線)の寸法(mm)である。
【0098】
上記パラメーターの計算は、サーマル・イメージング・カメラ2の不十分な空間解像度の問題を解決することを可能にし、それは、サーマル・イメージング方法のみに基づく公知の解決策では、アレルゲン/ハプテンの適用に関連付けられる表皮の異常高熱の発生源の正しい識別に対する障壁であり、また、技術的な基準を満たしているにもかかわらず、単独で使用されるサーマル・イメージング・カメラが、生物医学的な目的には適切ではなく、また、最小0.1℃の精度での最小表皮の熱的変化のイメージングには適切でないという事実を結果として生じさせた。
【0099】
サーマル・イメージング・カメラ2を使用するそれぞれの後続の測定の間の視野の中の温度表現の精度を保証するために、その視野の中に、加熱マイクロエレメント16の形態の1つまたは複数のキャリブレーション標準を設置することが必要であり、加熱マイクロエレメント16は、K-タイプ熱電対フィードバック・ループの中に一体化されており、商品名VantaBlack(商標)の下で市販されている、微粉末化された炭素またはナノチューブの内容物を含む黒色顔料によってカバーされており、人工皮膚の熱および放出標準を模倣し、表面温度が可能な限り精密に決定されており、それは、サーマル・イメージング・カメラ2の対物レンズに面しており、好ましくは1に近い放射率を有している。温度および放射率の標準は、とりわけ、加熱マイクロエレメント16の形態で、形状が四角形になっており、3x3mmの、最適には、10x10mmの最小寸法を有している。それぞれのテストの前に、サーマル・イメージング・カメラ2は、ファクトリー・キャリブレーションから独立して個別にキャリブレートされるべきであり、可能な限り1の近くにまたは正確に1に放射率を設定し、この放射率設定を立証するための標準として黒色の加熱マイクロエレメント16を使用する。黒色の加熱マイクロエレメント16の形態の単一の放射率標準の代わりに、2つまたは4つの標準が使用される場合には、それらはテスト・フィールド長方形の頂点に固着されているべきであり、それらが追加的にトポグラフィック・マーカーとしての役割を果たし、CCD静止カメラ1からのデジタル画像の上にサーマル画像を重ね合わせるようになっている。赤外線サーマル・イメージング・カメラ2の中でのこれらのマーカーのより良好な視認性のために、それらは、皮膚に固着される前に、テストされる皮膚エリア17の平均温度に対して最小で1℃だけ冷却または温められるべきである。
【0100】
サーマル・イメージング・カメラ2テストを開始させることは、デバイス(たとえば、「TERMO SCAN」としてマークされている)を起動するボタンを押下することによって、適切なプラスチック・スペーサー15をデバイス・ハウジング19に取り付けることを必要とする。テストされる皮膚エリア17は、プリック・テストまたはパッチ・テストが以前に実施されたエリアである。サーマル・イメージング・テストの開始は、デバイス・ハウジングの上の適当な(たとえば、緑色の)報知LEDの音および点滅によって報知される。同時に、テストされるエリアの写真は、また、静止カメラ1によって撮られる。皮膚の上にデバイスを位置決めすることは、デバイスに接続されているコンピューターのスクリーンの上の静止カメラ1からの画像のプレビューによって、適当なテンプレートによって適用される参照ポイントに従って手動で実施される。サーマル・イメージング・テストの終了は、デバイス・ハウジングの上の適当な(たとえば、赤色の)報知LEDの音および点滅によって報知される。例示的な実施形態では、テスト結果は、デバイスの内部メモリーの中におよびリムーバブルmicroSDカード上に、bmtグラフィック・ファイル・フォーマットで保存され、jpg、png、csv、またはxlsフォーマットにエクスポートするオプションを備えており、次いで、USBを介してコンピューターへ転送され、コンピューターにおいて、専用のソフトウェアによってさらに処理され、それは、本出願の対象ではない。サーマル・イメージング分析の結果は、jpgまたはgifグラフィック・ファイルの形態で表示され、また、皮膚表面の上の記録された異常高熱エリアの熱的寸法を℃[または、ユーザーの好みに応じて°F]で示す数値フォーマットで表示され、一方、サーマル画像は、静止カメラ1によってjpgフォーマットで記録された画像の上に好都合に重ね合わせられ、テスト部位におけるアレルギー反応のより多くの数の詳細を強調することが可能である。本発明による装置の用途において、テストされる皮膚表面の上の温度分布の測定は、差動法を使用して実施され、黒色放射率標準を含んでいる材料の上の参照温度が最初に測定される。
【0101】
すでに上述されているように、上側ベースまたは下側ベースのいずれも有さないプラスチック・リングまたはプリズムの形態の特別のスペーサー15をデバイス・ハウジング19に取り付けることは、本発明による装置を使用して繰り返し可能な測定条件を保証し、とりわけ、CCD静止カメラ1およびサーマル・イメージング・カメラ2内で使用される対物レンズの焦点距離から生じる、光学システムとテストされる表面との間の適当な距離を保証する。好ましくは、スペーサーは、透明であることが可能であり、加熱または冷却された空気がテストされる皮膚表面の上方から放出されることを可能にするベンチレーション・スロットを追加的に含んでいることが可能である。好ましくは、テストされる皮膚表面からCCD静止カメラ1およびサーマル・イメージング・カメラ2の光学系の底部レンズまでの最小距離は、距離エレメント15が挿入されると、100mmであり、最適には150mmである。スペーサー15のサイズは、使用されるハウジング・バリアントから生じ、たとえば、30mmの最小直径、および、CCD静止カメラ1およびサーマル・イメージング・カメラ2の光学系の中心から100mm(最適には、150mm)の最小高さを有するリング15aの形態であることが可能であり、または、テスト・フィールドの最小サイズによって暗示される寸法、すなわち、50mmx150mm、を有する上側ベースもしくは下側ベース15bのいずれも有さないプリズムの形態であることが可能であるが、上側ベースまたは下側ベースのいずれも有さない直方体の形態のスペーサー15の相互交換可能な幅の狭くなったバリアントを使用することも必要であり、それに関して、皮膚との接触ポイントにおけるその寸法は、30mmの最小幅および150mmの最小長さまで低減されるはずである。スペーサー15の追加的な機能は、皮膚とサーマル・イメージング・カメラとの間の冷却/加熱媒体としての未制御の空気流を防止するため、サーマル・イメージング・テスト中に安定した熱力学的パラメーターを提供することである。そのうえ、加熱および冷却システム18および温度センサー(熱電対若しくはサーミスタの形態である接触型、またはパイロメーターまたはサーマル・イメージング・カメラを備えたシステムの形態である非接触型のいずれか)と組み合わせたスペーサー15は、温度センサーからのフィードバックによって制御される、テストされる皮膚表面の上に強制的な正常体温(forced euthermia)をトリガーすることを可能にする。本発明による装置の例示的な実施形態では、温度センサー機能は、サーマル・イメージング・カメラ2によって実施され、サーマル・イメージング・カメラ2は、適正なサーマル・イメージング・シーケンスを登録する前に、サーマル・プレスキャンを実施し、テストされる皮膚エリア17の平均温度を決定するための基礎としてそれを使用する。
【0102】
ハウジング19の中に位置する加熱および冷却システム18のコントローラーは、テスト皮膚エリア17の平均温度がテストにとって最適なレベルに到達するまで、空気の流れによって、テスト・エリアを冷却または加熱するプロセスを開始させる。最適な温度の絶対値は、個別に可変であり、個々の特徴に依存し、一方、温度最適化は、本出願の対象ではないコンピューターによって実装されるアルゴリズムによって実施されるということが留意されるべきである。
【0103】
皮膚の上のアレルゲン/ハプテン適用ポイントのトポグラフィーと関連して生物物理学的パラメーターの登録を標準化するために、テンプレートを使用することが有利であり、テンプレートに従って、アレルゲンは、プリック・テストの際にテストされる皮膚に適用されることとなり、または、ハプテンを備えた接着性チャンバーまたはパッチが、パッチ・テストの際に配置されることとなり、また、それに従って、皮膚の上のテスト・フィールド境界がマークされることとなる。テンプレートに従ってポイントおよび境界をマークするために、適切に証明された特別の低刺激性のマーカーが使用されるべきである。テンプレートは、人間の皮膚にとって可能な限り生物学的に中立の剛体材料、たとえば、プラスチックまたはセルロース・パルプ製であるとし、また、プリック・テストおよびパッチ・テストにおけるテスト・フィールドに対応するテスト・フィールドの寸法に等しい寸法を有するものとする。プリック・テストのケースでは、最適には2つのタイプのテンプレート(線形および非線形)が使用される。第1のテンプレートは、最小30mm以上の等しい辺を備えた正三角形の頂点によって画定される幅を有し、かつ150mmの最小長さを有する、より幅の狭いフィールド内のアレルゲン適用ポイントのマーキングを可能にする。第2のテンプレートは、少なくとも50mmx150mmの寸法を有する長方形とし、孔部が2列に線形に配置されており、少なくとも30mmの孔部の中心同士の間の距離を伴う。パッチ・テストには、第2のテンプレート・タイプ、すなわち、50mmx150mmの最小寸法を有する長方形テンプレート、だけを使用することが最適である。
【0104】
テンプレートを使用することは、テストされる皮膚エリアの上にそれを設置することと、特別のマーカーによってテンプレートの輪郭を描くことと、テンプレートの孔部を通してアレルゲン/ハプテン適用ポイントをマーキングすることとを必要とする。テンプレートは、皮膚テストの性能を標準化するために使用されることもなく、それは、アレルギー・テスト自体を実施するための補助器具でもなく、赤外線帯域でのアレルギー・テストにおいてすでに明らかにされた生物物理学的パラメーターのイメージングを標準化するのみであり、アレルゲン/ハプテン適用ポイント、ネガティブ・コントロール部位およびポジティブ・コントロール部位、ならびにサーマル・カメラ2が局所的な異常高熱を記録した刺激物適用ポイントのトポグラフィックに正確な参照を行うことが可能である。異常高熱は、アレルゲン、ハプテン、ヒスタミン、または任意の刺激物の追加なしに、食塩水またはグリセリン溶液の形態のいわゆるネガティブ・コントロール部位の適用部位におけるテスト・フィールドの中で記録された温度よりも少なくとも0.1℃高くなっている、テスト・フィールドの中の局所的な温度として定義され、ここで、thiper>0.1+tcontrであり、ここで、thiperは、異常高熱(℃)であり、tcontrは、ネガティブ・コントロール部位における温度(℃)である。
【0105】
テンプレートは、CCD静止カメラ1からのデジタル画像をサーマル・イメージング・カメラ2からのデジタル画像の上に一体化させる、すなわち、精密に重ね合わせるために使用され、アレルギー反応症状の形態の皮膚病変の仮想画像を取得し、それは、これらの病変の周りの皮膚の上の可視化された等温線分布、ならびに、アレルギー性皮膚反応が起こらなかった場所、および、食塩水またはグリセリン溶液を使用して実施されたネガティブ・コントロールの部位、および、ヒスタミン塩酸塩溶液(1:1、1:10、または1:1000の希釈)を使用して実施されたポジティブ・コントロールの部位、ならびに、刺激物を使用するテスト部位の周りの皮膚の上の可視化された等温線分布と関連付けられている。そのような複雑な仮想画像は、装置ハウジング19の中に一体化されているセンサーのセットを使用してより正確なテストをさらに行うための開始点として使用されるのみである。これらのセンサーは、プリック・テストにおけるアレルゲンのテスト適用によってトリガーされるI型アレルギー性皮膚反応と直接的に関連付けられる特定の病態生理学的な異常に関するパラメーターを記録し、ここで、特定のアレルゲンによって誘発されるような、表皮に登録される異常高熱を確認するために、その源を確認することが必要であり、すなわち、適用されるアレルゲンによって誘発されるマスト細胞の粒状化から放出されるヒスタミンによるH1受容体の活性化の結果としての乳頭下血管叢を含む、皮下の微小血管叢の拡張した血管を確認することが必要である。そのような確認は、ドップラー・センサー4を使用する経皮的なレーザー・ドップラー・フローメトリーによるこれらの膨張した微小血管の中の増加した流れの検査によって実施される。
【0106】
IV型アレルギー性皮膚反応の経過を再現するパッチ・テストのケースでは、テストされるハプテンのサンプル同士の間の非常に小さい距離(わずか5mm)、および、したがって、2つの異なるアレルギー病巣からの等温線が重なり合う可能性から生じる、局所性の異常高熱の形態のこの反応の自律性マーカーの決定の不正確さに起因して、サーマル画像は、皮膚表面の3Dスキャナー5のイメージングを使用することによって、小さい小胞および丘疹として見ることができる表皮性病変の形態の他の典型的なアレルギー・インジケーターの存在の追加的な冗長な客観的な決定が必要である。単一のデバイスの中でのマルチスペクトル・イメージングの使用は、測定冗長性を構成するだけでなく、皮膚アレルギー反応の他のコンポーネントの特定の生物物理学的パラメーターを寸法決めすることによって、赤外線帯域内の皮膚アレルギー反応のサーマル・パラメーターの初期イメージングの結果のカスケード確認も目標としており、その測定は、プリック・テストにおけるI型アレルギー反応、および、パッチ・テストにおけるIV型反応で別個である、完全に異なる技法を必要とする。本発明による皮膚アレルギー・テストにおけるシーケンシャルなマルチスペクトル・イメージングのメカニズムは、特定の生物物理学的量を導入することによって、それらの読み値の完全な客観性の問題を効果的に解決し、特定の生物物理学的量は、測定され得、特定の応答インジケーターに関係付けることが可能である。分析モデルは、最初に、赤外線におけるテスト・フィールドの分析によって(これは、I型およびIV型アレルギー反応の両方に共通の技法である)、テストされるアレルゲン/ハプテンに対する過敏症の存在の2段階の確認を想定している。次いで、特別な病態生理学的な特定のインジケーターの測定が、I型アレルギー反応に適合されて実施され、レーザー・ドップラー・フローメトリーを使用して、皮膚血管叢の拡張した微小血管の中における増加した局所的な血管流が測定され、内皮の中に位置するH1受容体に対するヒスタミン放出の効果を確認する。同様に、IV型アレルギー反応のケースでは、現在、アレルギー反応の差別化の基礎となっている、小胞および丘疹の形態の表皮性発疹の存在インデックスが測定される。この目的のために、装置は、3Dスキャナー5を使用してコヒーレント光の中に皮膚の表面を再構築する方法を用い、それは、これらの発疹のサイズをmm単位で決定することを可能にする。
【0107】
本発明による装置の例示的な実施形態では、共通のハウジングの中に配置されている別の一体化された測定器具は、3D光学スキャナー・システム5であり、3D光学スキャナー・システム5は、300nmから1000nmの幅広い範囲の光スペクトルの中で働く、640x480ピクセルの最小解像度を有する高解像度CCD光検出器を備えたフルスペクトル・カメラの形態のモバイル・レコーダー5cと、少なくとも415nmの波長のコヒーレント単色青色光を放出するLEDの形態の光源を有する可動のパターン・プロジェクター5aと、1cm当たり少なくとも10ラインの密度で皮膚表面の上に垂直方向のパターンを投射することを可能にする垂直方向の投影グリッド5bと、少なくとも30mmの直径を有するテストされるフィールドの全体においてパターンを投射することを可能にする、少なくとも7.7mmの焦点距離を有する対物レンズとから構成されている。パターン・プロジェクター5aおよびレコーダー5cの形態の3D光学スキャナー・ユニットは、本発明による装置のハウジング19の可動の下側部分の中に設置されており、テストされる皮膚に面する側において開放しており、円形フレームの上にあり、円形フレームは、装置全体が接続されているコンピューター・プロセッサーによって制御されるステッパー・モーターによって移動し、水平方向の平面内でのカメラ・レコーダー5cの厳密に制御された移動を可能にし、テストされる皮膚表面の3次元の360°スキャニングを可能にする。
【0108】
3Dスキャンの形態のパッチ・テストの中のIV型アレルギー反応において形成される小胞および丘疹の形態の皮膚病変の分析は、取得される表皮画像の深さの適当な再構築を必要とし、それは、実際には、仮想平面と光線との検出される交差点に対応する深さの再構築を意味する。計算の結果は、グローバル座標系(X;Y;Z)の中の交差点ポイントの座標のセットであり、ここで、h、vは、検出される交差点ポイントの座標であり、nは、ポイントに交差する平面に対応する、インデックス段階において取得されるシーケンス番号である。次いで、コンピューターは、この平面に関する式(An、Bn、Cn、およびDn係数)、ならびに、3Dスキャン画像のこのポイントに対応する光線の方向係数(ΔxhおよびΔyv)を発生させることが可能である。このデータは、光線の連立方程式:0=An・Δxh・zh,v+Bn・Δyv・zh,v+Cn・zh,v+Dnから、平面xh,v、およびyh,vの式を解くためにさらに使用され、ここで、解は、カメラ・レコーダー5c(座標系の原点)の対物レンズの見かけの焦点距離に対するポイントの深さであり、それによって、ポイントは、zh,vがプラスの場合にのみ、正しく決定されると考えられる。
【0109】
本発明による解決策において、3Dスキャナー5動作の最終的な効果は、再構築されるポイント・クラウドに対する表面の調節を含む、テストされる皮膚表面の再構築であることが想定された。カメラ・レコーダー5cのイメージ・センサーの上へのポイント・クラウド投射が与えられており、通常のポイント・ベクトルが対物レンズの方向に面するz成分を有するということが知られているので、投射のポイントを接続する平面的なグラフを生成させることによって、解は、2次元で可能であり、それは、そのような投射なしにポイント・クラウドから検査された物体のトポロジーの再構築と比較して最適である。頂点および縁部のデータに基づいて、互いに接続されているそれぞれの3つのポイントに関して三角形のエリアを生成することが可能である。このステップの結果は、小胞または丘疹の形態の起こり得る発疹を備えた予期される3次元の皮膚表面モデルであるが、しかし、このモデルは、対物レンズの視点から見ることができないエリアを考慮に入れていない。例示的な実施形態では、スキャンは、Wavefront OBJフォーマットで保存される。
【0110】
パターン・プロジェクター5aおよびレコーダー5cから構成されている、3Dスキャナー5の連結された光学系システムは、スキャニング・システムの適正な移動を保証することによって、皮膚表面の上の物体を再現することができなければならない。本発明による装置の例示的な実施形態では、3Dスキャナー5の連結された光学システムは、装置の円筒形状のハウジングの下側部分の中のフレームの上に設置されており、それが、垂直方向の軸線を中心として360°回転することができるようになっており、したがって、30mmの最小直径を有するテストされる皮膚表面のエリア全体を3Dスキャンがカバーすることを保証する。プロジェクター対物レンズ5aおよびレコーダー対物レンズ5cの光軸の角度のアライメントは、垂直方向のパターンがパターン・プロジェクター5aによって投射される、テストされる皮膚エリア17の表面から反射された光ストリームの方向を考慮に入れなければならない。本例における3Dスキャナー5の測定範囲は、Z軸に関して:30mm最小、X軸に関して:30mm、直線性(Z軸):範囲の+/-0.2%、解像度(Z軸):範囲の+/-0.04%、X軸およびY軸についての直線性:範囲の+/-0.4%、X軸およびY軸についての解像度:最大で1024ポイント/プロファイルの範囲にある。
【0111】
3Dスキャナー5のデジタル・レコーダー5cのレンズは、幾何学的な画像歪みを導入し、したがって、このデバイスの対物レンズの歪みを補正することが必要であり、ここで、dは、微分された歪み関数であり、それは、座標(h、V)を有するイメージ・センサーの上のポイントを画像(対物レンズの見かけの焦点距離の中に中心を有する透視投影)のそれぞれのポイント(h、v)に割り当てる。次いで、逆関数d-1も存在しており、そして、それは、画像の対応するポイントをマトリックス・ポイントに割り当てる。したがって、歪みの補正は、関数d-1を使用してマトリックス・ポイントの座標を変換するように低減される。歪み補正は、スキャナーの中で、または、外部プログラムを使用してのいずれかで実施され得る。前者の解決策は、新しいピクセル位置を内挿するときに追加的な数値誤差を回避するという利点を有している。画像の中心からの距離であるr変数の4次多項式は、関数dとして最も一般に使用されている。この多項式に関するパラメーターは、本発明による装置の設計解決策で使用された、スキャンされた標準から、発見的なデータベースによって自動的に取得され得る。
【0112】
3Dスキャニング・シーケンスを起動することは、スペーサー15を装置ハウジング19に接続すること、開始ボタン(たとえば、「パッチ・テスト3Dスキャン」)を押下することを必要とし、ハプテンがパッチ・テストにおいて以前に適用された単一の皮膚エリア17に適用可能である。3Dスキャンの開始は、装置ハウジング19の上の適当な(たとえば、緑色の)報知LEDの音および点滅によって報知される。3Dスキャンの終了は、装置ハウジング19の上の適当な(たとえば、赤色の)報知LEDの音および点滅によって報知される。例示的な実施形態では、3Dスキャン結果は、装置の内部メモリーおよびmicroSDカードにWavefront OBJフォーマットで保存され、次いで、USBを介してPCへ転送され、PCにおいて専用のソフトウェアによってさらに処理され、それは、本出願の対象ではない。3Dスキャンの分析の結果は、再構築されたjpgまたはgifグラフィック・ファイルの形態で表示され、登録された皮膚病変の数、それらのタイプ、および外挿された寸法(mm)を示す数値フォーマットで表示される。
【0113】
本発明による装置の例示的な実施形態では、共通のハウジングの中に設置されている最後の一体化された測定器具は、ドップラー・センサー・システム4であり、1mWの最小パワーを有する560nmの最小の帯域内で、および、最適には780nmで(すなわち、近赤外線範囲内で)働くレーザーを備えており、少なくとも0.25mmの光ファイバー・チャネル間隔を備え、それは、乳頭下層の中の皮膚微小血管、および、プリック・テストが以前に実施された、テストされる皮膚エリア17の中の乳頭下血管叢に血液を供給するより深い血管枝の中の経皮的なレーザー・ドップラー・フローメトリーのために設計されている。本発明による装置の中にドップラー・センサー4を一体化させることは、アレルギー性の体温上昇の血管反応を確認する必要な測定冗長性を保証する必要性によって決定付けられ、アレルギー性の体温上昇の血管反応は、サーマル・イメージング・カメラ2によって記録され、また、プリック・テストの陽性結果が取得されるときに、マスト細胞の粒状化から放出されるヒスタミンによる内皮のH1受容体の刺激によってトリガーされる。
【0114】
経皮的なレーザー・ドップラー・フローメトリーは、皮膚微小血管の中の平均流速度、および、テストされる組織断片の中の細胞の数と細胞移動速度との積に比例する血球フラックスと呼ばれる信号の強度を測定することだけを可能にし、その結果は、いわゆるperfusion unit(PU)で表されるが、テストは、ユニット(1gの血液/100gの組織/1分)の中の実際の流れを測定しないため、完全に客観的な結果を提供しない。経皮的なレーザー・ドップラー・フローメトリーは、比較による性質であり、さまざまな刺激の影響下において所与の血管床の中の流れの変化を提示する。本発明による装置において、この刺激は、H1内皮受容体に対する放出されたヒスタミンの血管拡張効果である。したがって、ドップラー・センサー4の使用は、確認の役割を果たし、テスト結果は、サーマル・イメージング・テストの結果と相関付けられ、記録された局所性の表皮の異常高熱と、プリック・テストによってトリガーされるI型アレルギー性皮膚反応における同じ場所での微小血管の中の流れの増加との関連を確認する。
【0115】
ドップラー・センサー4は、垂直方向に後退可能な(ステッパー・モーターによって)円筒形状のヘッドから構成されており、ヘッドは、ハウジングの幾何学的中心から少なくとも10mmの距離において装置ハウジングの内側に設置されている、テストされる組織の中で反射されたビームの光ファイバー・エミッターおよびレシーバー・レコーダーを含んでいる。その理由は、それが、以前の実験的な研究から、この方法を使用して皮膚微小血管の中の流れを検査する場合に、ヒスタミン後血管拡張(Hovelら Laser Doppler flowmetry for determining changes in cutaneous blood flow following intradermal injection of histamine、Clin. Allergy、17;1987)に関連したI型アレルギー性皮膚反応において、ヒスタミン・テストの適用ポイントちょうどにおける測定の結果、または、プリック・テストにおけるアレルゲンの測定の結果が、決定的でないという結果になるからであり、最適な流量は、適用ポイントから>10mmの、最大でおおよそ30mmまでの距離において測定される。
【0116】
本発明の装置の例示的な実施形態では、780nm帯域内で動作するレーザーを、560nm、570nm、および580nmの波長を有する光を放出するレーザーに切り替えることが、アレルギー・テスト・エリアにおける表皮紅斑インデックスEを追加的に決定するために適用された。表皮紅斑インデックスEの決定は、皮膚顔料メラニンによる吸収なしに、ヘモグロビンによるレーザー吸収によって放出される単色光ビームの程度を評価することによって実施される。インデックスは、以下の公式に従って算出される。
【0117】
【数10】
ここで、Rは、560nm、570nm、580nmの3つの単色光ビームに関する平均反射率であり、Rは、以下の公式に従って算出される反射率である。
【0118】
【数11】
ここで、R650rmは、650nm光ビームに関する反射率である。
660rmは、660nm光ビームに関する反射率を示す。
640rmは、640nm光ビームに関する反射率を示す。
670rmは、670nm光ビームに関する反射率を示す。
【0119】
ドップラー・センサー4を使用してテストを開始することは、プラスチック・スペーサー15を装置ハウジング19に接続すること、起動ボタン(たとえば、「LDF Prick Test」とラベル付けされている)を押下することを必要とし、アレルゲンが皮膚プリック・テストの間に以前に適用された単一のテスト皮膚エリア17に関係する。レーザー・ドップラー血液フローメトリーの開始は、装置ハウジング19上の適当な(たとえば、緑色の)報知LEDの音信号および点滅によって報知される。この時点において、プローブ・ヘッド位置決めが、静止カメラ1からのPCモニター・プレビューによって手動で実施され、プローブ・ヘッドは、自分自身を自動的に引っ張り出され、テストされる皮膚表面と接触すると停止する。ドップラー・センサー4を使用するテストの終了は、装置ハウジングの上の適当な(たとえば、赤色の)報知ダイオードの音信号および点滅によって報知される。例示的な実施形態では、テスト結果は、デバイスの内部メモリーにおよびmicroSDカードにテキスト・ファイルとして保存され、次いで、USBを介してPCへ転送され、PCにおいて専用のソフトウェアによってさらに処理され、それは、本出願の対象ではない。テスト結果は、皮膚血管の中の流れの数値をPerfusion Units(PU)で示すテキスト・ファイルおよびグラフとして表示され、ここで、PUは、流れている血球濃度および平均血球流量の指数であり、生物物理学的な次元において、1PUは、10mVに相当する。
図1
図2