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特許7228280アニオン性高分子を用いた新規なナノ粒子、その製造方法及び組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】アニオン性高分子を用いた新規なナノ粒子、その製造方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/38 20060101AFI20230216BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230216BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230216BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230216BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230216BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20230216BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20230216BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/02
A61K45/00
A61K9/14
A61K9/107
A61K47/44
A61P35/00
A61P9/00
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021015076
(22)【出願日】2021-02-02
(65)【公開番号】P2022051660
(43)【公開日】2022-04-01
【審査請求日】2021-02-02
(31)【優先権主張番号】10-2020-0122036
(32)【優先日】2020-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516270991
【氏名又は名称】アイエムジーティー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、スン ギ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョン リョン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ウン ア
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ウ ラン
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0082427(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0254078(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0166716(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0087722(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/38
A61K 47/36
A61K 47/02
A61K 9/14
A61K 9/107
A61K 45/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン性高分子及び3価金属塩化合物を含むナノ粒子;及び
カチオン性薬物;を有効成分として含む血管塞栓及び癌治療用組成物であって、
前記アニオン性高分子は、カルボキシメチルセルロース及びデキストランサルフェートを含み、
前記3価金属塩化合物は、3価金属塩化物である、組成物。
【請求項2】
前記カルボキシメチルセルロース及びデキストランサルフェートは、0.5~20:1の質量比で含まれたことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記3価金属塩化合物は、塩化鉄(III)、及び、塩化アルミニウムよりなる群から選ばれた1つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記カチオン性薬物は、ドキソルビシン(doxorubicin)、プロカインアミド(Procainamide)、ジゴキシン(digoxin)、キニジン(quinidine)、トリメトプリム(trimethoprim)、シメチジン(cimetidine)、バンコマイシン(vancomycin)、イリノテカン(Irinotecan)、ダウノルビシン(daunorubicin)、エピルビシン(Epirubicin)、ジフェンヒドラミン(diphenhydramine)、メマンチン(memantine)、オキシコドン(oxycodone)、ピリルアミン(pyrilamine)及びトラマドール(tramadol)よりなる群から選ばれた1つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記カチオン性薬物は、前記ナノ粒子にローディングされたことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物は、エマルジョン剤形であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記カチオン性薬物及びナノ粒子は、1:1~10の質量比で含まれたことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
塞栓物質をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記塞栓物質は、ヨード化オイルであることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ヨード化オイルは、ケシ実由来ヨード化オイル、大豆由来ヨード化オイル及びエチオドール(ethiodol)よりなる群から選ばれた1つ以上であることを特徴とする請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記ナノ粒子は、10~500nmの直径を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
下記段階を含むアニオン性高分子及び3価金属塩化合物を含むナノ粒子の製造方法:
オイル相にアニオン性高分子が溶解した水相を添加した溶液と、水相に非イオン性界面活性剤を溶かした溶液とを混合して、エマルジョンを形成する段階、ここで前記アニオン性高分子は、カルボキシメチルセルロース及びデキストランサルフェートを含み、;
前記エマルジョンに3価金属塩化合物水溶液を添加してマイクロ粒子を形成する段階;及び
前記マイクロ粒子を高圧均質機、ビーズミル及びロールミルよりなる群から選ばれた1つ以上を使用して粒子サイズをナノ水準に減少させる段階
ここで、前記3価金属塩化合物は、3価金属塩化物である
【請求項13】
前記オイル相は、ミネラルオイル、植物性オイル、重鎖トリグリセリド及びこれらの混合物よりなる群から選ばれることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記非イオン性界面活性剤は、ポリビニルアルコール(Polyvinyl Alcohol)、ポリアルキレングリコール(polyalkylene glycol)、ポリビニルピロリドン(Polyvinyl Pyrrolidone)、アルキルポリグリコシド(alkyl polyglycoside)、t-オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(t-octylphenoxy polyethoxy ethanol)、ポロキサマー(poloxamer)、ポリソルベート(polysorbate)、ポリ(N-ビニルアセトアミド)(poly(N-vinylacetamide))、ポリビニルブチラール(polyvinyl butyral)及びこれらの混合物よりなる群から選ばれることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
下記段階を含む請求項1に記載の血管塞栓及び癌治療用組成物の製造方法:
オイル相にアニオン性高分子が溶解した水相を添加した溶液と、水相に非イオン性界面活性剤を溶かした溶液とを混合して、エマルジョンを形成する段階、ここで前記アニオン性高分子は、カルボキシメチルセルロース及びデキストランサルフェートを含み、;
前記エマルジョンに3価金属塩化合物水溶液を添加してマイクロ粒子を形成する段階;
前記マイクロ粒子を高圧均質機、ビーズミル及びロールミルよりなる群から選ばれた1つ以上を使用して粒子サイズをナノ水準に減少させて、ナノ粒子を製造する段階;及び
カチオン性薬物を前記ナノ粒子と混合する段階
ここで、前記3価金属塩化合物は、3価金属塩化物である
【請求項16】
アニオン性高分子及び3価金属塩化合物を含むナノ粒子;及び
カチオン性薬物の血管塞栓及び癌治療用薬剤を生産するための使用であって、
前記アニオン性高分子は、カルボキシメチルセルロース及びデキストランサルフェートを含み、
前記3価金属塩化合物は、3価金属塩化物である、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アニオン性高分子を用いた新規なナノ粒子及び製造方法などに関し、本発明は、癌細胞に栄養分を供給する主な血管を塞いで塞栓効果を誘導することによって、癌細胞を壊死させる方法に活用されて癌患者を治療するのに使用ことができる。
【0002】
本出願は、2020年09月22日に出願された韓国特許出願第10-2020-0122036号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示されたすべての内容は本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
肝癌は、癌腫による死亡の原因のうち韓国で2位、全世界で3位を占める予後が不良な悪性腫瘍である。肝癌患者の70%以上において根治的手術が不可能であり、根治的切除術を施行した場合にも、5年以内に他の部位で再発する確率が50%以上である。進行性肝癌において全身抗癌療法に反応する可能性は10%以内と非常に低く、これに対する代案として非手術的な治療方法として多様な画像誘導治療法(Image-guided therapy)が発達している。肝癌に適用されるImage-guided therapyとして2つが代表的であるが、1つは、肝動脈を通じて肝癌に抗癌剤を局所的に注入し、肝動脈に対する塞栓術を併行する治療法である経動脈化学塞栓術(Transarterial Chemoembolization;TACE)であり、他の1つは、高周波熱治療(Radiofrequency Ablation;RFA)である。
【0004】
肝癌組織に供給される血流の95%以上が肝動脈に伝達されるが、周辺部の健康な組織に供給される血流は、75%以上肝門脈に伝達され、25%のみが肝動脈に伝達されるので、TACEは、正常組織に損傷を起こさない安全で且つ有効な治療法である。
【0005】
TACEは、通常、1年に3~4回にかけて繰り返して施術されるので、投与物質が安全であることを要する。従来の動脈塞栓術に主に使用される薬物は、ドキソルビシン、シスプラチン、エピルビシン、ミトキサントロン、マイトマイシンCなどであり、このような抗癌剤は、水不溶性造影剤に直接溶解され得るいので、パミレイのような水溶性造影剤に溶解した後、リピオドールのような水不溶性造影剤(ヨード化オイル)に均質に分散させた水中油型または油中水型のエマルジョン形態で調製して使用している。このようなエマルジョンは、一定時間後に相分離が起こるので、患者への投与直前に調製して使用され、化学塞栓を実施し、追加的にゼラチンスポンジ粒子を投与して癌組織の虚血性壊死を促進し、薬物の消失を防止している。しかしながら、投与されたエマルジョンは、投与後に短時間に相分離が発生して抗癌剤が一時に吸収されるので、抗腫瘍効果が持続的でなく、全身露出による副作用が発生する可能性がある。また、TACEに投与された大部分の細胞毒性抗癌剤は、肝で代謝されるので、肝毒性を示すことがある。このような理由から、患者は、塞栓後症候群(postembolization syndrome)を示し、日常生活が難しくて、2~3日間入院が不可避であるので、医療費用が高い。
【0006】
最近、選択的に使用される化学塞栓用粒子(drug eluting bead、DEB)は、非吸収性ポリビニルアルコールなどからなり、塞栓粒子に薬物をイオン交換方式で吸着させて投与する製品であって、粒子サイズは、40~900μmの範囲である。エマルジョンの液滴に比べて粒子の範囲が均質であり、再現性があり、薬物が徐々に放出されるので、薬物の全身露出が少ないという長所がある。しかしながら、投与後に薬物が完全に放出されないため、投与後28日まで50%未満が放出され、90日経過以降に90%程度放出されるので、比較的ゆっくり癌組織に薬物が高濃度で蓄積される。それだけでなく、薬物を吸着させる時間が1~2時間以上かかり、非吸収性で薬物が完全に放出された後にも、粒子が体内に残留するので、正常組織の壊死を誘発することができ、TACE反復施術が困難になり得、癌の再発危険がある。しかも、従来のTACE方法に比べて薬剤費が高くて、患者の費用負担が大きいのが現状である。
【0007】
したがって、毒性が少なく、生体に適合し、目的薬物を微細血管まで速くて且つ高効率に伝達できるナノ粒子の開発が要求されているのが現状である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】The Korean Journal of Hepatology 2010;16:242-246
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、マイクロビーズ及び無機ナノ粒子の問題点を補完した生体適合性ナノ粒子及びその製造方法を提供するために鋭意努力した結果、アニオン性高分子を使用してW/Oエマルジョンを形成させた後、オイル相からマイクロ粒子を分離、精製した後、高圧均質機またはミル(ビーズまたはロール)装備を使用してナノ粒子を製造する方法を提供しようとする。
【0010】
したがって、本発明の目的は、アニオン性高分子及び3価金属塩化物を含むナノ粒子;及び
カチオン性薬物;を有効成分として含む血管塞栓及び癌治療用組成物を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、下記段階を含むアニオン性高分子及び3価金属塩化物を含むナノ粒子の製造方法を提供することにある。
オイル相にアニオン性高分子が溶解した水相を添加した溶液と、水相に非イオン性界面活性剤を溶かした溶液とを混合して、エマルジョンを形成する段階;
前記エマルジョンに3価金属塩化物水溶液を添加してマイクロ粒子を形成する段階;及び
前記マイクロ粒子を高圧均質機、ビーズミル及びロールミルよりなる群から選ばれた1つ以上を使用して粒子サイズをナノ水準に減少させる段階。
【0012】
しかしながら、本発明が達成しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は、下記の記載から当該技術分野における通常の技術者に明確に理解され得る。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による前記ナノ粒子は、セルロース系のアニオン性高分子であるカルボキシメチルセルロースと、生分解性特性を有するデキストラン系からなり、水相安定性を増加させるために架橋剤を使用することを特徴とすることによって、毒性が少なく、生体に適合し、薬物を微細血管まで伝達することができる。
【0014】
したがって、本発明は、アニオン性高分子及び3価金属塩化物を含むナノ粒子;及び
カチオン性薬物;を有効成分として含む血管塞栓及び癌治療用組成物を提供する。
【0015】
本発明の一具現例において、前記アニオン性高分子は、カルボキシメチルセルロースまたはその塩;デキストランサルフェートまたはその塩;及びこれらの混合物よりなる群から選ばれたものであり得るが、これに制限されるものではない。
【0016】
本発明の他の具現例において、前記ナノ粒子は、カルボキシメチルセルロース及びデキストランサルフェートを含むものであり得るが、これに制限されるものではない。
【0017】
本発明のさらに他の具現例において、前記カルボキシメチルセルロース及びデキストランサルフェートは、0.5~20:1の質量比で含まれたものであり得るが、これに制限されるものではない。
【0018】
本発明のさらに他の具現例において、前記3価金属塩化物は、塩化鉄(III)、塩化アルミニウム、硝酸鉄[Fe(NO]、硝酸アルミニウム[Al(NO]、酢酸鉄[Fe(CHCOO)]、酢酸アルミニウム[Al(CHCOO)]及び過塩素酸鉄[Fe(ClO]よりなる群から選ばれた1つ以上であり得るが、これに制限されるものではない。
【0019】
本発明のさらに他の具現例において、前記カチオン性薬物は、ドキソルビシン(doxorubicin)、プロカインアミド(Procainamide)、ジゴキシン(digoxin)、キニジン(quinidine)、トリメトプリム(trimethoprim)、シメチジン(cimetidine)、バンコマイシン(vancomycin)、イリノテカン(Irinotecan)、ダウノルビシン(daunorubicin)、エピルビシン(Epirubicin)、ジフェンヒドラミン(diphenhydramine)、メマンチン(memantine)、オキシコドン(oxycodone)、ピリルアミン(pyrilamine)及びトラマドール(tramadol)よりなる群から選ばれた1つ以上であり得るが、これに制限されるものではない。
【0020】
本発明のさらに他の具現例において、前記カチオン性薬物は、前記ナノ粒子にローディングされたものであり得るが、これに制限されるものではない。
【0021】
本発明のさらに他の具現例において、前記組成物は、エマルジョン剤形であり得るが、これに制限されるものではない。
【0022】
本発明のさらに他の具現例において、前記カチオン性薬物及びナノ粒子は、1:1~10の質量比で含まれたものであり得るが、これに制限されるものではない。
【0023】
本発明のさらに他の具現例において、塞栓物質をさらに含むものであり得るが、これに制限されるものではない。
【0024】
本発明のさらに他の具現例において、前記塞栓物質は、ヨード化オイルであり得るが、これに制限されるものではない。
【0025】
本発明のさらに他の具現例において、前記ヨード化オイルは、ケシ実由来ヨード化オイル、大豆由来ヨード化オイル及びエチオドール(ethiodol)よりなる群から選ばれた1つ以上であり得るが、これに制限されるものではない。
【0026】
本発明のさらに他の具現例において、前記ナノ粒子は、10~500nmの直径を有するものであり得るが、これに制限されるものではない。
【0027】
また、本発明は、下記段階を含むアニオン性高分子及び3価金属塩化物を含むナノ粒子の製造方法を提供する。
オイル相にアニオン性高分子が溶解した水相を添加した溶液と、水相に非イオン性界面活性剤を溶かした溶液とを混合して、エマルジョンを形成する段階;
前記エマルジョンに3価金属塩化物水溶液を添加してマイクロ粒子を形成する段階;及び
前記マイクロ粒子を高圧均質機、ビーズミル及びロールミルよりなる群から選ばれた1つ以上を使用して粒子サイズをナノ水準に減少させる段階。
【0028】
本発明の一具現例において、前記オイル相は、ミネラルオイル、植物性オイル、重鎖トリグリセリド及びこれらの混合物よりなる群から選ばれるものであり得るが、これに制限されるものではない。
【0029】
本発明の他の具現例において、前記非イオン性界面活性剤は、ポリビニルアルコール(Polyvinyl Alcohol)、ポリアルキレングリコール(polyalkylene glycol)、ポリビニルピロリドン(Polyvinyl Pyrrolidone)、アルキルポリグリコシド(alkyl polyglycoside)、t-オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(t-octylphenoxy polyethoxy ethanol)、ポロキサマー(poloxamer)、ポリソルベート(polysorbate)、ポリ(N-ビニルアセトアミド)(poly(N-vinylacetamide))、ポリビニルブチラール(polyvinyl butyral)、及びこれらの混合物よりなる群から選ばれるものであり得るが、これに制限されるものではない。
【0030】
本発明のさらに他の具現例において、前記製造方法は、前記マイクロ粒子を分別漏斗で静置させて沈殿させた後、沈殿物を分離し、不純物及びオイルを除去するために有機溶媒を使用して溶解させる段階;をさらに含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0031】
本発明のさらに他の具現例において、前記有機溶媒は、アルキルアルコール類、ケトン類、アセトニトリル、テトラヒドロフラン及びこれらの混合物よりなる群から選ばれる1つ以上であり得るが、これに制限されるものではない。
【0032】
本発明のさらに他の具現例において、前記方法は、マイクロ粒子を含み、不純物及びオイルを溶解した混合溶液からマイクロ粒子を分離または精製及び洗浄する段階;をさらに含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0033】
本発明のさらに他の具現例において、前記マイクロ粒子の分離または精製は、遠心分離機や濾過機で行われ得るが、これに制限されるものではない。
【0034】
本発明のさらに他の具現例において、前記洗浄は、同一有機溶媒や上記で言及した溶媒の群から選ばれ得るが、これに制限されるものではない。
【0035】
本発明のさらに他の具現例において、前記洗浄は、有機溶媒の洗浄後、追加で蒸留水、注射用水、スクロース、マンニトールまたは塩化ナトリウムなどが溶解した水溶性溶媒及びこれらの群から選はれるものが使用できるが、これに制限されるものではない。
【0036】
本発明のさらに他の具現例において、前記方法は、前記精製されたマイクロ粒子を水相に再分散後、粒子サイズ減少装備を使用して粒子サイズを減少させる段階;をさらに含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0037】
本発明のさらに他の具現例において、前記再分散された水相は、蒸留水、注射用水、スクロース、マンニトールまたは塩化ナトリウムなどが溶解した水溶性溶媒及びこれらの群から選ばれ得るが、これに制限されるものではない。
【0038】
本発明のさらに他の具現例において、前記粒子サイズ減少装備は、高圧均質機、ビーズミル、ロールミル及びこれらの群から選ばれ得るが、これに制限されるものではない。
【0039】
また、本発明は、下記段階を含む前記血管塞栓及び癌治療用組成物の製造方法を提供する。
オイル相にアニオン性高分子が溶解した水相を添加した溶液と、水相に非イオン性界面活性剤を溶かした溶液とを混合して、エマルジョンを形成する段階;
前記エマルジョンに3価金属塩化物水溶液を添加してマイクロ粒子を形成する段階;
前記マイクロ粒子を高圧均質機、ビーズミル及びロールミルよりなる群から選ばれた1つ以上を使用して粒子サイズをナノ水準に減少させて、ナノ粒子を製造する段階;及び
カチオン性薬物を前記ナノ粒子と混合する段階。
【0040】
また、本発明は、アニオン性高分子及び3価金属塩化物を含むナノ粒子;及び
カチオン性薬物;を有効成分として含む組成物の血管塞栓及び癌治療のための使用を提供する。
【0041】
また、本発明は、アニオン性高分子及び3価金属塩化物を含むナノ粒子;及び
カチオン性薬物;を有効成分として含む組成物を個体に投与する段階を含む血管塞栓及び癌治療方法を提供する。
【0042】
また、本発明は、アニオン性高分子及び3価金属塩化物を含むナノ粒子;及び
カチオン性薬物;を有効成分として含む組成物の血管塞栓及びガン治療制製造のための使用を提供する。
【発明の効果】
【0043】
本発明は、カチオン性薬物の伝達に有用であり、毒性が少なく、生体に適合し、薬物を微細血管まで伝達できるナノ粒子の新規な製造方法を提供し、本発明による新規な製造方法は、産業的に大量生産を可能にする効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】アニオン性高分子と塩化カルシウム(CaCl)の反応時に反応液の変化有無のイメージを示すものである。
図2】実施例1-2、<反応性試験2>の組成2を通じて生成された固形物の光学顕微鏡測定イメージを示すものである。
図3】実施例3、表3の組成2によってアニオン性高分子と塩化鉄の反応を通じて製造されたマイクロ粒子のイメージを示すものである。
図4】ビーズミルを用いて製造したナノ粒子の粒子分布図をDLS(dynamic light scattering)を使用して測定した結果を示すものである。
図5】ビーズミルを用いて製造したナノ粒子のTEM測定イメージを示すものである。
図6】カチオン性薬物(ドキソルビシン塩酸塩)のローディング後に薬物の溶出グラフを示すものである。
図7】Huh7 cellでの細胞生存率を測定した結果を示すものである。
図8】カチオン性薬物がローディングされたナノ粒子懸濁水溶液とリピオドール・ウルトラフルイドとのエマルジョン光学顕微鏡イメージを示すものである。
図9】薬物ローディング水性懸濁液として5%スクロースと15%マンニトールを使用したそれぞれの懸濁液とリピオドール・ウルトラフルイドとの混合エマルジョンのマイクロカテーテル通過イメージを示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明による前記ナノ粒子は、セルロース系のアニオン性高分子であるカルボキシメチルセルロースと、生分解性特性を有するデキストラン系からなり、水相安定性を増加させるために架橋剤を使用することを特徴とすることによって、毒性が少なく、生体に適合し、薬物を微細血管まで伝達することができる。
【0046】
したがって、本発明は、アニオン性高分子及び3価金属塩化物を含むナノ粒子;及び
カチオン性薬物;を有効成分として含む血管塞栓及び癌治療用組成物を提供する。
【0047】
本発明の一具現例において、前記アニオン性高分子は、カルボキシメチルセルロースまたはその塩;デキストランサルフェートまたはその塩;及びこれらの混合物よりなる群から選ばれたものであり得るが、これに制限されるものではない。
【0048】
本発明の他の具現例において前記ナノ粒子は、カルボキシメチルセルロース及びデキストランサルフェートを含むものであり得るが、これに制限されるものではない。
【0049】
本発明のさらに他の具現例において、前記カルボキシメチルセルロース及びデキストランサルフェートは、0.5~20:1、0.5~15:1、0.5~10:1、0.5~5:1、0.5~4:1、0.5~2:1、0.5~1:1、約1:1、0.5~3:1、1~3:1、1.5~2.5:1、約2:1、1~5:1、2~5:1、3~5:1、3.5~4.5:1、4~5:1または約4:1、1~10 : 1、1~9:1、3~9:1、4~9:1、5~9:1、6~9:1、7~9:1、8~9:1、7.5~8.5:1または約8:1の質量比で含まれたものであり得るが、これに制限されるものではない。
【0050】
本発明のさらに他の具現例において、前記カルボキシメチルセルロース及びデキストランサルフェートは、好ましくは、8:1、4:1、2:1、または1:1の質量比で含まれたものであり得るが、これに制限されるものではない。
【0051】
本発明のさらに他の具現例において、前記3価金属塩化物は、塩化鉄(III)、塩化アルミニウム、硝酸鉄[Fe(NO]、硝酸アルミニウム[Al(NO]、酢酸鉄[Fe(CHCOO)]、酢酸アルミニウム[Al(CHCOO)]及び過塩素酸鉄[Fe(ClO]よりなる群から選ばれた1つ以上であり得るが、これに制限されるものではない。
【0052】
本発明のさらに他の具現例において、前記カチオン性薬物は、ドキソルビシン(doxorubicin)、プロカインアミド(Procainamide)、ジゴキシン(digoxin)、キニジン(quinidine)、トリメトプリム(trimethoprim)、シメチジン(cimetidine)、バンコマイシン(vancomycin)、イリノテカン(Irinotecan)、ダウノルビシン(daunorubicin)、エピルビシン(Epirubicin)、ジフェンヒドラミン(diphenhydramine)、メマンチン(memantine)、オキシコドン(oxycodone)、ピリルアミン(pyrilamine)及びトラマドール(tramadol)よりなる群から選ばれた1つ以上であり得るが、これに制限されるものではない。
【0053】
本発明のさらに他の具現例において、前記カチオン性薬物及びナノ粒子は、1:1~10、1:1~9、1:1~8、1:1~7、1:1~6、1:1~5、1:1~4、1:1~3、1:1~2.5、1:2~2.5または1:1~1.5の質量比で含まれたものであり得るが、これに制限されるものではない。
【0054】
本発明のさらに他の具現例において、前記カチオン性薬物及びナノ粒子は、1:1~10、1:1~9、1:1~8、1:1~7、1:1~6、1:1~5、1:1~4、1:1~3、1:1~2.5、または1:2~2.5または1:1~1.5の乾燥重量比で含まれたものであり得るが、これに制限されるものではない。
【0055】
本発明のさらに他の具現例において、塞栓物質をさらに含むものてあり得るが、これに制限されるものではない。
【0056】
本発明のさらに他の具現例において、前記塞栓物質は、ヨード化オイルであり得るが、これに制限されるものではない。
【0057】
本発明のさらに他の具現例において、前記ヨード化オイルは、ケシ実由来ヨード化オイル、大豆由来ヨード化オイル及びエチオドール(ethiodol)よりなる群から選ばれた1つ以上であり得るが、これに制限されるものではない。前記ケシ実由来ヨード化オイルは、製品名としてリピオドールが使用できるが、これに制限されるものではない。
【0058】
本発明のさらに他の具現例において、前記ナノ粒子は、10~500nm、10~400nm、10~300nm、10~250nm、10~200nm、10~180nm、10~160nm、10~150nm、10~140nm、30~500nm、30~400nm、30~300nm、30~250nm、30~200nm、30~180nm、30~160nm、30~150nm、30~140nm、50~500nm、50~400nm、50~300nm、50~250nm、50~200nm、50~180nm、50~160nm、50~150nm、50~140nm、70~500nm、70~400nm、70~300nm、70~250nm、70~200nm、70~180nm、70~160nm、70~150nm、70~140nmの直径を有するものであり得るが、これに制限されるものではない。
【0059】
本発明のさらに他の具現例において、前記カチオン性薬物は、ナノ粒子の内部と表面に存在するアニオンと結合された形態でローディングされ得る。
【0060】
本発明のさらに他の具現例において、前記血管塞栓は、動脈化学塞栓術(TACE、Transarterial chemoembolization)であって、癌組織へ行く動脈に抗癌剤を注入し、塞栓物質を用いて癌組織に栄養供給を遮断して癌を治療する方法であり得る。
【0061】
本発明のさらに他の具現例において、前記癌は、血管形成依存的なものを含み、好ましくは、卵巣癌、乳癌及び非小細胞肺癌よりなる群から選ばれた1つ以上であり、より好ましくは、肝癌である。本発明の一実施例によるナノ粒子にカチオン性薬物を結合させた後、ヨード化オイルと混合すると、安定したエマルジョンを形成することができ、前記エマルジョンを肝動脈血管に注入して塞栓効果を増加させることができる。
【0062】
本発明の組成物は、エマルジョン形態で提供され得るが、これに制限されるものではない。
【0063】
本発明の組成物は、製造後に0~2時間、好ましくは、0~1時間内に投与されることを特徴とし、従来、化学塞栓術に使用される組成に比べて長時間ナノ粒子内薬物の移動が低く維持されることによって、安定性に優れている。
【0064】
本発明において、前記ナノ粒子及びカチオン性薬物を含む組成物と塞栓物質は、三方コック(3-way cock)を用いた混合法、超音波を用いる方法などを使用して混合され得るが、これに限定されない。
【0065】
また、本発明は、前記組成物を個体に投与する段階を含む血管塞栓及び癌の予防または治療方法を提供する。
【0066】
本発明の組成物内の前記ナノ粒子及びカチオン性抗癌剤の含量は、疾患の症状、症状の進行程度、患者の状態などによって適宜調節可能であり、例えば、全体組成物の重量を基準として0.0001~99.9重量%、または0.001~50重量%であり得るが、これに限定されるものではない。前記含量比は、溶媒を除去した乾燥量を基準とする値である。
【0067】
本発明による薬学的組成物は、薬学的組成物の製造に通常使用する適切な担体、賦形剤及び希釈剤をさらに含むことができる。前記賦形剤は、例えば、希釈剤、結合剤、崩解剤、滑沢剤、吸着剤、保湿剤、フィルム-コーティング物質、及び制御放出添加剤よりなる群から選ばれた1つ以上であり得る。
【0068】
本発明による薬学的組成物に含まれ得る担体、賦形剤及び希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、オリゴ糖、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾアート、プロピルヒドロキシベンゾアート、タルク、マグネシウムステアレート及び鉱物油が挙げられる。
【0069】
製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調製される。
【0070】
本発明による液剤の添加剤としては、水、希塩酸、希硫酸、クエン酸ナトリウム、モノステアリン酸スクロース類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類(ツインエステル)、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル類、ラノリンエーテル類、ラノリンエステル類、酢酸、塩酸、アンモニア水、炭酸アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、プロラミン、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどが使用され得る。
【0071】
本発明によるシロップ剤には、白糖の溶液、他の糖類あるいは甘味剤などが使用され得、必要に応じて芳香剤、着色剤、保存剤、安定剤、懸濁化剤、乳化剤、粘稠化剤などが使用され得る。
【0072】
本発明による乳剤には、精製水が使用され得、必要に応じて乳化剤、保存剤、安定剤、芳香剤などが使用され得る。
【0073】
本発明による懸濁剤には、アカシア、トラガカンタ、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶セルロース、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、HPMC1828、HPMC2906、HPMC2910など懸濁化剤が使用され得、必要に応じて界面活性剤、保存剤、安定剤、着色剤、芳香剤が使用され得る。
【0074】
本発明による注射剤には、注射用蒸留水、0.9%塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロース+塩化ナトリウム注射液、ピイジ(PEG)、乳酸リンゲル注射液、エタノール、プロピレングリコール、非揮発性油-ゴマ油、綿実油、落花生油、大豆油、コーン油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、安息香酸ベンゼンのような溶剤;安息香酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、ヨウ素、ウレタン、モノエチルアセトアミド、ブタゾリジン、プロピレングリコール、ツイン類、ニコチン酸アミド、ヘキサミン、ジメチルアセトアミドのような溶解補助剤;弱酸及びその塩(酢酸と酢酸ナトリウム)、弱塩基及びその塩(アンモニア及び酢酸アンモニウム)、有機化合物、タンパク質、アルブミン、ペプトン、ガム類のような緩衝剤;塩化ナトリウムのような等張剤;重亜硫酸ナトリウム(NaHSO)二酸化炭素ガス、メタ重亜硫酸ナトリウム(Na)、亜硫酸ナトリウム(NaSO)、窒素ガス(N)、エチレンジアミンテトラ酢酸のような安定剤;ソジウムビサルファイト0.1%、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート、チオウレア、エチレンジアミンテトラ酢酸ジナトリウム、アセトンソジウムビサルファイトのような硫酸化剤;ベンジルアルコール、クロロブタノール、塩酸プロカイン、ブドウ糖、グルコン酸カルシウムのような無痛化剤;CMCナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ツイン80、モノステアリン酸アルミニウムのような懸濁化剤を含むことができる。
【0075】
本発明による薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明において、「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的なベネフィット/リスクの割合で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量水準は、患者疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、同時使用される薬物を含む要素及びその他医学分野によく知られた要素によって決定され得る。
【0076】
本発明による薬学的組成物は、個別治療剤として投与したり他の治療剤と併用して投与することができ、従来の治療剤とは順次または同時に投与することができ、単一または多重投与することができる。上記した要素を全部考慮して副作用なしに最小限の量で最大効果を得ることができる量を投与することが重要であり、これは、本発明の属する技術分野における通常の技術者により容易に決定され得る。
【0077】
本発明の薬学的組成物は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢、性別、体重及び疾患の重症度などの様々な関連因子とともに活性成分である薬物の種類によって決定される。
【0078】
本発明において「個体」とは、疾病の治療を必要とする対象を意味し、より具体的には、ヒトまたは非ヒトである霊長類、マウス(mouse)、ラット(rat)、犬、猫、馬、及び牛などの哺乳類であり得るが、これに制限されるものではない。
【0079】
本発明において「投与」とは、任意の適切な方法で個体に所定の本発明の組成物を提供することを意味する。
【0080】
本発明において「予防」とは、目的とする疾患の発病を抑制したり遅延させるすべての行為を意味し、「治療」とは、本発明による薬学的組成物の投与により目的とする疾患とそれによる代謝異常症状が好転したり有利に変更されるすべての行為を意味し、「改善」とは、本発明による組成物の投与により目的とする疾患に関連したパラメーター、例えば症状の程度を減少させるすべての行為を意味する。
【0081】
また、本発明は、下記段階を含むアニオン性高分子及び3価金属塩化物を含むナノ粒子の製造方法を提供する。
i)オイル相にアニオン性高分子が溶解した水相を添加した溶液と、水相に非イオン性界面活性剤を溶かした溶液とを混合して、エマルジョンを形成する段階;
ii)前記エマルジョンに3価金属塩化物水溶液を添加してマイクロ粒子を形成する段階;及び
iii)前記マイクロ粒子を高圧均質機、ビーズミル(bead mill)及びロールミルよりなる群から選ばれた1つ以上を使用して粒子サイズをナノ水準に減少させる段階。
【0082】
前記組成物に関する事項は、本製造方法に適用され得る。
【0083】
前記段階i)は、下記段階a)~d)よりなる群から選ばれた1つ以上を含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0084】
前記段階ii)は、下記段階e)及び/または、f)を含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0085】
前記段階iii)は、下記段階l)を含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0086】
前記ナノ粒子の製造方法は、各段階の間に各構成成分が均一に混合されるように撹拌する段階を含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0087】
前記段階ii)及び段階iii)の間にh)マイクロ粒子をオイル相から分離する段階を含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0088】
前記段階ii)及び段階iii)の間にi)マイクロ粒子を含む溶液に有機溶媒を添加して残留オイル及び副反応物を除去する段階を含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0089】
本発明において、前記エマルジョンは、W/O形態であり得るが、これに制限されるものではない。
【0090】
前記W/Oエマルジョンは、水相及びオイル相の比率が1:1~50、1:1~40、1:1~30、1:1~20、1:1~15、1:1~10、1:1~9、1:1~8、1:1~7、1:1~6、1:2~6、1:3~6、1:2~5、1:3~5、1:50、1:40、1:30、1:20、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、または1:2であり得るが、これに制限されるものではない。本発明では、オイルの比率が高いほどエマルジョン形成が良好に行われ得るが、オイルを最小に使用するための最適比率は、好ましくは、約1:4であり得る。
【0091】
本発明において、前記方法は、マイクロ粒子を含み、不純物及びオイルを溶解した混合溶液からマイクロ粒子を分離または精製及び洗浄する段階;をさらに含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0092】
本発明において、前記製造方法は、前記マイクロ粒子を分別漏斗で静置させて沈殿させた後、沈殿物を分離し、不純物及びオイルを除去するために、有機溶媒を使用して溶解させる段階;をさらに含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0093】
本発明において、前記マイクロ粒子の分離または精製は、遠心分離機や濾過機で行われ得るが、これに制限されるものではない。
【0094】
本発明において、前記洗浄は、同一有機溶媒や上記で言及した溶媒の群から選ばれ得るが、これに制限されるものではない。
【0095】
本発明において、前記洗浄は、有機溶媒の洗浄後、追加で蒸留水、注射用水、スクロース、マンニトールまたは塩化ナトリウムなどが溶解した水溶性溶媒及びこれらの群から選ばれるものが使用できるが、これに制限されるものではない。
【0096】
本発明において、前記方法は、前記精製されたマイクロ粒子を水相に再分散後、粒子サイズ減少装備を使用して粒子サイズを減少させる段階;をさらに含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0097】
本発明において、前記再分散された水相は、蒸留水、注射用水、スクロース、マンニトール及び塩化ナトリウムよりなる群から選ばれた1つ以上が溶解した水溶性溶媒であり得るが、これに制限されるものではない。
【0098】
本発明において、前記粒子サイズ減少装備は、高圧均質機、ビーズミル、ロールミル及びこれらの群から選ばれ得るが、これに制限されるものではない。
【0099】
本発明において、前記粒子サイズをナノ水準に減少させる段階の実行時間は、ナノ粒子の量によって伸縮的に調節され得、一般的にナノ粒子の量が増加するほど粉砕時間を延長する。
【0100】
本発明のナノ粒子の製造方法は、具体的に下記段階のうち1つ以上を含むか、下記段階からなり得るが、これに制限されるものではない:
a)水相に1つ以上のアニオン性高分子を溶解させる段階、
b)オイル相を均質機を用いて撹拌しつつ、前記a)段階の水相を添加した第1溶液を製造する段階、
c)前記b)の溶液に水相に非イオン性界面活性剤を溶かした第2溶液を添加する段階、
d)前記c)の溶液を均質機を用いて撹拌しつつ、エマルジョンを形成する段階、
e)前記d)エマルジョンに別に水相に溶解させた架橋剤を添加してマイクロ粒子を形成する段階、
f)前記e)段階で追加で撹拌する段階、
g)前記f)段階の溶液を静置させて層分離させる段階、
h)マイクロ粒子をオイル相から分離する段階、
i)マイクロ粒子を含んでいる溶液に有機溶媒を添加して残留オイル及び副反応物を抽出及び/または除去する段階、
j)水溶液を使用して残留有機溶媒をマイクロ粒子から分離及び/または除去する段階、
k)マイクロ粒子を水相に希薄にさせる段階、
l)水溶液に希釈されたマイクロ粒子を高圧均質機、ビーズミルまたはロールミルを使用して粒子サイズを減少させて、ナノ粒子を製造する段階、及び
m)水溶液に分散したナノ粒子を遠心分離または限外濾過を用いて濃縮する段階。
【0101】
前記a)~c)段階は、適当な順序で行われ得る。
【0102】
また、前記段階は、必ず前記記載順序に限定されるものではない。
【0103】
本発明において、前記オイル相は、ミネラルオイル、植物性オイル、重鎖トリグリセリド及びこれらの混合物よりなる群から選ばれるものであり得るが、これに制限されるものではない。
【0104】
本発明において、前記ミネラルオイルは、鉱物油とも呼ばれ、原油を精製する過程で生成される副産物であって、アルカン及びパラフィンを主成分とするオイルである。
【0105】
本発明において、前記植物性オイルは、堅果、種子、または穀物などに由来するオイルであり得、例えば、ピーナッツオイル、大豆オイル、ココナッツオイル、またはオリーブオイルなどを含むことができる。
【0106】
本発明において、前記重鎖トリグリセリドは、ヤシ油、パーム油を加水分解した後、カプリル酸(Caprylic acid)とカプリン酸(Capric acid)などを分画し、これをさらにグリセロールとエステル化(または結合)して製造された代表的な代替脂肪である。炭素数が通常8~10個を有する重鎖脂肪酸であって、分子構造が小さい。
【0107】
本発明において、前記非イオン性界面活性剤は、ポリビニルアルコール(Polyvinyl Alcohol)、ポリアルキレングリコール(polyalkylene glycol)、ポリビニルピロリドン(Polyvinyl Pyrrolidone)、アルキルポリグリコシド(alkyl polyglycoside)、t-オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(t-octylphenoxy polyethoxy ethanol)、ポロキサマー(poloxamer)、ポリソルベート(polysorbate)、ポリ(N-ビニルアセトアミド)(poly(N-vinylacetamide))、ポリビニルブチラール(polyvinyl butyral)及びこれらの混合物よりなる群から選ばれるものであり得るが、これに制限されるものではない。
【0108】
本発明において、前記ポリアルキレングリコールは、当該分野に知られた通常のポリアルキレングリコール系を制限なしに使用可能であるが、ポリエチレングリコール系を使用することが好ましい。
【0109】
本発明において、前記ポロキサマーは、疎水性のプロピレンオキシドを中心に両端に親水性のエチレンオキシドが結合された非イオン性のトリブロック共重合体であって、温度敏感性の特徴を有していて、濃度と温度によってゾル(Sol)とゲル(Gel)の変換が可能であり、ポリオキシプロピレン及びポリオキシエチレンの比率によってポロキサマーの性質が変わる。前記ポロキサマーは、ポロキサマー101、ポロキサマー105、ポロキサマー105ベンゾエート、ポロキサマー108、ポロキサマー122、ポロキサマー123、ポロキサマー124、ポロキサマー181、ポロキサマー182、ポロキサマー182ジベンゾアート、ポロキサマー183、ポロキサマー184、ポロキサマー185、ポロキサマー188、ポロキサマー212、ポロキサマー215、ポロキサマー217、ポロキサマー231、ポロキサマー234、ポロキサマー235、ポロキサマー237、ポロキサマー238、ポロキサマー282、ポロキサマー284、ポロキサマー288、ポロキサマー331、ポロキサマー333、ポロキサマー334、ポロキサマー335、ポロキサマー338、ポロキサマー401、ポロキサマー402、ポロキサマー403及びポロキサマー407よりなる群から選ばれ得るが、これに制限されるものではない。
【0110】
本発明において、前記アルキルポリグリコシドは、例えばC8-22アルキルグリコシド、より具体的には、カプリリルグリコシド、ココ-グリコシド、デシルグリコシド、ラウリルグリコシド、メチルココグリコシド、及びミリスチルグリコシドよりなる群から選ばれ得るが、これに制限されるものではない。
【0111】
本発明において、前記有機溶媒は、アルキルアルコール類、ケトン類、アセトニトリル、テトラヒドロフラン及びこれらの混合物よりなる群から選ばれた1つ以上であり得るが、これに制限されるものではない。
【0112】
前記アルキルアルコール類は、炭素数1~6個のアルコールであり得、例えばメタノール、エタノール、アルコール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノールであり得るが、これに制限されるものではない。
【0113】
前記ケトン類は、RCOR’の化学式を有する有機溶媒であり得、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、ジイソブテチケトンなどであり得るが、これに制限されるものではない。
【0114】
また、本発明は、下記段階を含む上記の血管塞栓及び癌治療用組成物の製造方法を提供する。
オイル相にアニオン性高分子が溶解した水相を添加した溶液と、水相に非イオン性界面活性剤を溶かした溶液とを混合して、エマルジョンを形成する段階;
前記エマルジョンに3価金属塩化物水溶液を添加してマイクロ粒子を形成する段階;
前記マイクロ粒子を高圧均質機、ビーズミル及びロールミルよりなる群から選ばれた1つ以上を使用して粒子サイズをナノ水準に減少させて、ナノ粒子を製造する段階;及び
カチオン性薬物を前記ナノ粒子と混合する段階。
【0115】
前記カチオン性薬物を前記ナノ粒子と混合する段階は、超音波を処理して行われ得るが、これに制限されるものではない。
【0116】
前記血管塞栓及び癌治療用組成物の製造方法は、前記ナノ粒子及びカチオン性薬物の混合組成物と塞栓物質を混合する段階をさらに含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0117】
前記塞栓物質との混合段階は、三方コック(3-way cock)を用いた混合法、超音波を用いる方法などを使用して行われ得るが、これに制限されるものではない。
【0118】
本発明において使用される用語「超音波(ultrasound)」は、一般的に人間の耳が聞くことができる音波の周波数である16Hz~20kHzの周波数を超える音波を意味し、高強度集中超音波は、連続的で且つ高強度の超音波エネルギーを焦点に提供する集束型超音波を導入して、エネルギーと振動数によって瞬間熱効果(65-100℃)、空洞化(cavitation)効果、機械的効果及び音響化学的(sonochemical)効果を出すことができる。超音波は、人体組織を通過するとき、有害でないが、焦点を形成する高強度の超音波は、組織の種類に関係なく凝固壊死及び熱焼灼効果を起こすことができるほど十分なエネルギーを発生する。本発明において、前記超音波は、可聴周波数の範囲である16Hz~20kHzより周波数が大きい音波をいう。
【0119】
本発明の明細書全体において、任意の部分が或る構成要素を「含む」というとき、これは、特に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。本発明の明細書全体において使用される程度の用語「約」、「実質的に」などは、言及された意味に固有な製造及び物質許容誤差が提示されるとき、その数値でまたはその数値に近接した意味で使用され、本発明の理解を助けるために正確なまたは絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用するのを防止するために使用される。
【0120】
本発明の明細書全体において、マーカッシュ形式の表現に含まれた「これらの組合せ」の用語は、マーカッシュ形式の表現に記載された構成要素よりなる群から選ばれる1つ以上の混合または組合せを意味するものであって、前記構成要素よりなる群から選ばれる1つ以上を含むことを意味する。
【0121】
本明細書(特に特許請求範囲)において「前記」の用語及びこれと類似した指示用語の使用は、単数及び複数に該当するものであり得る。また、範囲(range)を記載した場合、前記範囲に属する個別的な値を含むものであって(これに反する記載がないと)、詳細な説明に前記範囲を構成する各個別的な値を記載したものと同じである。最後に、方法を構成する段階について明白に順序を記載したり反する記載がないと、前記段階は、適当な順序で行われ得る。必ず前記段階の記載順序に限定されるものではない。すべての例または例示的な用語(例えば、など)の使用は、単に技術的思想を詳細に説明するためのものであって、特許請求範囲により限定されない以上、前記例または例示的な用語により範囲が限定されるものではない。また、当業者は、多様な修正、組合せ及び変更が付加された特許請求範囲またはその均等物の範疇内で設計条件及びファクターによって構成され得ることが分かる。
【0122】
第1、第2などの用語は、多様な構成要素を説明するのに使用され得るが、前記構成要素は、前記用語により限定されるものではない。前記用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的だけで使用される。例えば、本発明の権利範囲を逸脱することなく、第1構成要素は、第2構成要素と命名され得、同様に第2構成要素も第1構成要素と命名され得る。及び/またはという用語は、複数の関連した記載された項目の組合せまたは複数の関連した記載された項目のうちいずれかの項目を含む。
【0123】
本発明は、多様な変換を加えることができ、様々な実施例を有することができるところ、特定の実施例を図面に例示し、詳細な説明に詳細に説明しようとする。しかしながら、これは、本発明を特定の実施形態について限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるすべての変換、均等物乃至代替物を含むものと理解されなければならない。本発明を説明するに際して、関連した公知技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を不明にすることができると判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0124】
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施例を提示する。しかしながら、下記の実施例は、本発明をさらに容易に理解するために提供されるものに過ぎず、下記実施例により本発明の内容が限定されるものではない。
【0125】
[実施例]
実施例1.高分子と架橋剤の反応性確認試験
アニオン性高分子と塩化カルシウムとの反応性を比較するために、CMC(Carboxymethyl cellulose)の存在下で塩化カルシウムを添加して反応性試験を行った。
【0126】
実施例1-1.反応性試験1
20mL容器に0.2%CMC2mLと0.2%carboxymethyl dextran sodium(以下CMD)2mLを入れ、撹拌しつつ、10%塩化カルシウム0.5mLを添加した。1時間の間確認時に固形物が形成されなかった。
【0127】
実施例1-2.反応性試験2
濃度を高めて下記表1のそれぞれ組成で<反応性試験1>と同じ方法で試験を進めて反応性を確認した。
【0128】
図1に示されたように、組成1の場合は、変化がなく、組成2、3の場合は、懸濁液に変わった。
【0129】
また、図2に示されたように、表1の組成2の反応固形物に対する光学顕微鏡分析イメージを確認した結果、粒子化されずにゲル化していることを確認することができた。
【0130】
前記結果によって、塩化カルシウムがナノ粒子を製造するための架橋剤として適していないことを確認した。
【0131】
【表1】
【0132】
実施例2.W/Oエマルジョンを用いたマイクロ粒子製造
下記表2の組成比によってそれぞれCMC、塩化鉄(FeCl)溶液とDS(dextran sulfate)パウダーを用意した。
【0133】
まず、CMC溶液にDSパウダーを溶解させ、室温でポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、以下PVA)1%溶液と混合後に、油相として使用したmedium chain triglyceride(以下MCT)オイルに滴加し、超音波分散機(sonicator)を使用してエマルジョンを製造した。エマルジョンにFeClを滴加した後、追加撹拌して粒子を製造した。形成された粒子を得るために、遠心分離を4℃、15,000rpmで10分間実施し、エタノールを使用して不溶物及びMCTオイルを除去した。エタノールと精製水を使用して順次に同一条件で遠心分離機を使用して分離した後、最終的に精製水2mLに再分散させた。
【0134】
【表2】
【0135】
その結果、CMC濃度が増加するにしたがって、sonication時間が増加するにしたがって粒子形成が良好に行われた。
【0136】
実施例3.W/Oエマルジョンを用いたマイクロ粒子製造による収得率確認
Scale-upのために超音波分散機の代わりにホモジナイザーを使用した。ホモジナイザー(rpm:17,000)を使用して室温で同じ製造方法で下記表3の組成比によって粒子を製造し、各組成比による収得率を比較した。最終的に再分散された各懸濁液を凍結乾燥して、乾燥後の質量を測定した。
【0137】
図3に示されたように、表3の組成2を通じて生成された固形物のイメージを通じて、塩化カルシウムを使用した場合より塩化鉄を使用した場合、粒子が形成されることが分かった。
【0138】
表3に示されたように、CMCとDSを2:1の質量比で混合した場合、最も収得率が高いことを確認した。
【0139】
【表3】
【0140】
実施例4.W/Oエマルジョンを用いたマイクロ粒子製造後に追加ナノ工程を通したナノ粒子製造
マイクロ粒子製造を下記のような方法で具現した。水相溶液の製造のために、PVA2gとCMC1gをそれぞれ100mLの蒸留水に溶解させた。その後、DS0.5gを測量して、CMC溶解液に添加した後、溶解させた。架橋剤溶液の製造のために、塩化鉄(III)(FeCl)0.5gを100mLの蒸留水に溶解させた。
【0141】
W/Oエマルジョン製造のために、2LビーカーにMCTオイルを800mL満たし、ホモジナイザーを用いて室温で17,000rpmで撹拌しつつ、前記水相(water phase)の溶液を全部添加した。同一条件で10分間撹拌後、前記架橋剤溶液を滴加し、追加で約30分間撹拌した。
【0142】
下記実験方法を使用してマイクロ粒子を分離した:反応溶液を分別漏斗に移して入れた後、2時間の間静置させた。分別漏斗内黄色固形物が存在する下層液(水相)を集めて、遠心分離機を用いて黄色の粒子ペレットを生成した。上澄み液を捨てて、白色の物質はエタノールを使用して溶解させて除去した。この際、下層のペレットには影響を与えないように注意した。エタノール15mLを入れ、ボルテックスと超音波分散機を使用してペレットを再分散させ、塊りが見られないまで繰り返した。その後、エタノールの他に蒸留水、スクロース(5%)溶液で順次に洗浄過程を繰り返してマイクロ粒子を収得した。最終的に5%スクロース溶液に再分散させた。
【0143】
ナノ粒子の製造のためには、ビーズミル(Minicer、Netzsch)を使用した。洗浄された前記粒子を5%スクロース溶液に希釈させて約500mLの量で製造した。ビーズミル装備に0.2mmのビーズを使用してポンプ速度20rpm、流速5m/s、約10℃でミーリングして粒子を小さく製造した。ビーズを0.1mmに交換後、ポンプ速度10rpm、流速4m/s、同一温度で追加的にミーリングして、サイズがAve.146.6nm(PDI:0.145)の粒子を得た。
【0144】
図4に示されたように、DLS(dynamic light scattering)測定結果、粒子分布が50nm~460nmであることが分かった。
【0145】
また、図5に示されたように、ナノ工程を通じてナノサイズの粒子が良好に生成されたことを確認した。
【0146】
実施例5.ドキソルビシン塩酸塩がローディングされたナノ粒子製造及び溶出試験
ドキソルビシン塩酸塩を25mg/mL濃度で5%スクロース溶液に完全に溶かした。完全に溶かしたドキソルビシン塩酸塩スクロース溶液をナノ粒子60mgが分散した5%スクロース溶液1.25mL溶液に入れ、ドキソルビシン塩酸塩:粒子=25mg:60mgの比率に合わせ、初期1分間超音波(bath type sonication)処理後、約30分間追加混合した。
【0147】
Cellu Sepメンブレイン(MW:15,000、Width:32mm、Wall thickness:24μm)に前記ドキソルビシン塩酸塩がローディングされたナノ粒子懸濁液500μLを入れ、両側をクリップで止めた。バッファー(PVA0.4%、Tween 0.1% in Lactic acid pH=2.7、37度)をバイアルに50mL入れ、200rpmで撹拌し、温度を37度に昇温した。前記メンブレイン試料を入れ、溶出試験を進めた。ポイント別に取った試料をUV分光器(wavelength:475nm)で吸光度を測定して、溶出される量を確認した。
【0148】
その結果、図6に示されたように、ドキソルビシン溶出量が70%程度であって、優れていることが示された。
【0149】
実施例6.In vitro細胞毒性評価
製造したナノ粒子の毒性を評価するために、Huh7肝癌細胞で生存率分析を行った。ドキソルビシン塩酸塩(dox)、ドキソルビシンが積載された粒子(032d)、ドキソルビシンが積載されない粒子(032)の3つの群に対して評価した。
【0150】
図7に示されたように、ドキソルビシン塩酸塩自体と同じ薬物が積載された粒子の場合、濃度依存的に癌細胞死滅効果を示すことを確認した反面、薬物が積載されない粒子の場合には、濃度と関係なく死滅効果がなくて毒性を示さなかった。
【0151】
実施例7.リピオドールとの混合エマルジョン製造及びマイクロカテーテル通過確認
ドキソルビシン塩酸塩(イルトン製薬アドリアマイシンR.D.F.)50mgが入れられたバイアルにオムニパーク300注(GE Healthcare)1.25mLを入れて薬物を溶解させた後、注射器を用いて全量を取って、5%スクロース溶液2mLにナノ粒子60mgが分散した溶液に入れて混合して、ナノ粒子に薬物を積載させた懸濁液を準備した。そして、別途の注射器にリピオドール・ウルトラフルイド(ゲルベコリア)10mLを用意した。前記2つの溶液を三方コック(3-way cock)に装着し、注射器を交代しながら押して、エマルジョンを製造した。形成されたエマルジョンイメージを図8に示した。
【0152】
前記製造したエマルジョンが入っている三方コックの最後の片方にマイクロカテーテルを連結し、注射器を押して通過させた。同じ方法で5%スクロース溶液を15%マンニトール溶液に変えて製造したエマルジョンとのマイクロカテーテル通過試験を比較した。
【0153】
その結果、図9に示されたように、2つの場合、いずれもマイクロカテーテルを通過した。
【0154】
したがって、本発明の方法で製造したエマルジョンがマイクロカテーテルを通過して塞栓術に用いることができることを確認した。
【0155】
前述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で容易に変形が可能であることを理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は、すべての面において例示的なものであり、限定的でないものと理解しなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9