(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】遠近調節型の眼内レンズ
(51)【国際特許分類】
A61F 2/16 20060101AFI20230216BHJP
【FI】
A61F2/16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021051099
(22)【出願日】2021-03-25
(62)【分割の表示】P 2019169157の分割
【原出願日】2015-03-25
【審査請求日】2021-04-12
(32)【優先日】2014-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2014-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516195580
【氏名又は名称】フォーサイト・ビジョン6・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】FORSIGHT VISION6, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】ユージーン・デ・フアン・ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】キャリー・ライク
(72)【発明者】
【氏名】ハンソン・エス・ギフォード・ザ・サード
(72)【発明者】
【氏名】ガイ・オレン
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・クラーク
(72)【発明者】
【氏名】ホセ・ディ・アレハンドロ
【審査官】中尾 麗
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-511224(JP,A)
【文献】国際公開第2012/106673(WO,A1)
【文献】特表2013-537457(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0088433(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼を治療するための遠近調節型眼内レンズデバイスであって、前記遠近調節型眼内レンズデバイスは、
ある体積の流体を含む密閉チャンバを有するレンズ体であって、
前記レンズ体の中央領域で外側に湾曲するように構成され、前記レンズ体の周辺領域の近くの第1厚さ、及び前記レンズ体の中央領域の近くの第2厚さを有する前方壁部と、
前記密閉チャンバ
に圧縮力が付与されると、前記前方壁部に対して目の光学軸に向かって内方変位を受けるように構成された周辺壁部と、
前記レンズ体の前記周辺領域で前記前方壁部に結合され、前記レンズ体の光学要素を機械的に分離して、遠近調節中の歪みを防止する周辺支持体であって、前記周辺壁部から一定距離離れ
、内方変位中に前記周辺壁部との接触を回避する
ために先細り
になる外壁を有する周辺支持体と、を備えるレンズ体と、
目の水晶体嚢内に配置されるように構成された安定化ハプティックと、
前記レンズ体の前記周辺壁部から外方に突出し、前記水晶体嚢の外側に伸びて、目の毛様体構造に係合するように構成され、毛様体構造が移動すると、前記レンズ体に対して移動し、前記周辺壁部に前記圧縮力を付与するように構成されている力変換アームと、を備える遠近調節型眼内レンズデバイス。
【請求項2】
前記力変換アームの移動は目の前記光学軸に向かう内方であり、前記圧縮力は前記密閉チャンバの周辺領域の変形を生じる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記変形により前記密閉チャンバ内の流体が前記前方壁部の内面を押圧し、前記中央領域を外方へ湾曲させる、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記安定化ハプティックが、開ループの、閉ループの、プレートの、プレート・ループの、単ブロック・プレートの、j-ループの、c-ループの、修正されたJ-ループの、複数ピースの、単一ピースの、角張った、平面のものからなる群から選ばれる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記安定化ハプティックが、前記力変換アームとは異なる平面上に配置される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記レンズ体は、さらに、形状変形を受けない静的な要素からなり、前記静的な要素は、前記レンズ体の後側にある、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記静的な要素は、屈折力を有する静的なレンズからなる、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記屈折力は、±30Dまでである請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記前方壁部は、前記第1厚さと前記第2厚さの間に、一定の厚さを有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記レンズ体の前記前方壁部は、前記第1厚さと前記第2厚さの間に、可変厚さを有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記レンズ体の前記周辺領域の近くの前記第1厚さは、前記中央領域の近くの前記第2厚さより大きく、前記中央領域は目の前記光学軸を囲む、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記
前方壁部は、前記周辺領域から前記中央領域に向かって、線形の勾配厚さ又は湾曲した勾配厚さを有する、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記流体は、可視スペクトルにおいて高い清澄さ及び透過性の非圧縮性の液体又はゲルを備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
前記流体は、シリコーン、官能化シリコーン、炭化水素、官能化炭化水素流体である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
前記流体は、フッ化シリコーン、芳香族シリコーン、またはフェニル官能化シリコーンである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
前記流体は、長鎖炭化水素流体、又はハロゲン化炭化水素流体である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項17】
前記流体は、フルオロシリコーンオイルである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項18】
前記力変換アームは、前記レンズ体の前記周辺壁部と前記毛様体構造との間に延在するように構成された長さを有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項19】
前記毛様体構造は、毛様体筋、毛様体、毛様体突起及び小帯の少なくとも1つを備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項20】
前記レンズ体の少なくとも一部は、目の内側で、目の水晶体嚢の前方部の嚢切開の外側に配置されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項21】
前記周辺支持体は、前記密閉チャンバの変形可能領域と中央領域の間の流体連通を可能にする1又はそれ以上のチャネルを含む請求項1に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に眼科の分野に関し、具体的には遠近調節型(accommodating)の眼内レンズのような眼内レンズ(IOLs)を含む眼科デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
必要に応じて、健全な若い人間の眼は、遠距離又は近距離にある目的物に合焦できる。近見から遠見まで前後に変更する眼の能力は、遠近調節(accommodation)と呼ばれる。毛様体筋が収縮してそれによって水晶体嚢の赤道付近の領域での安静時の小帯の緊張を解放するとき、遠近調節が生じる。小帯の緊張の解放は、レンズの固有の弾性をより球状又はより球状の形に変更するのを可能にして、前後のレンズ形表面の表面曲率を増加させる。
【0003】
人間のレンズは、視覚システムでのその働きを下げる1つ以上の疾患で苦しむ可能性がある。共通の水晶体疾患は、通常清澄で(clear)自然な水晶体マトリックスの混濁である白内障である。混濁は老化現象に起因する場合があるが、遺伝又は糖尿病によって引き起こされる場合がある。白内障手術では、患者の不透明な水晶体は清澄なレンズ・インプラント又はIOLと置き換えられる。
【0004】
従来の嚢外の白内障手術では、毛様体及び毛様体筋への小帯の靭帯接続と一緒に前後の水晶体(capsule)の薄い壁を無傷のままで水晶体マトリックスが除去される。水晶体コアは、曲線から成る嚢切開(つまり水晶体嚢の前部部分の除去)を通して水晶体超音波乳化吸引によって除去される。
【0005】
数日から数週にわたる治癒期間の後、水晶体嚢は、嚢切開、嚢の壁の圧潰及びそれに続く線維症によりIOLのまわりで効果的に収縮包装する(shrink-wrap)。今日実行されるような白内障手術は、遠近調節を提供する眼の自然な構造のほとんどの回復不能な損失を生じさせる。水晶体マトリックスが完全に失われて、水晶体嚢の完全性が嚢切開(capsularhexis)によって低下する。IOLのまわりの水晶体嚢の「収縮包装」は、小帯複合体(complex)にダメージを与える場合がある、そしてその後、毛様体筋が萎縮することがある。したがって、従来のIOLs(調節性のことを公言するものさえ)も、近見に対する適切量の遠近調節を供給するために光軸又はレンズ形状変化に沿った十分な軸方向のレンズ空間変位を提供することができないことがある。
【0006】
有水晶体のIOLsの場合に既存のレンズでの屈折誤差を対処するか又は偽水晶体の患者の場合に白内障手術後に標準IOLの屈折結果を改善するために、レンズの組み合わせ体を移植することは既知である。これらの「ピギーバック」IOLsは、偽水晶体の場合に白内障手術の屈折結果を改善するか又は有水晶体眼の場合に眼の屈折ステータスを変更するために、通常、高度の近視を矯正するために、以前に移植されたIOL又は自然レンズの前方に配置される場合がある。一般に、これらのレンズは、溝に移植されて非遠近調節である。
【発明の概要】
【0007】
いくつかの実施形態(implementations)では、眼の治療に関する遠近調節型の眼内レンズのデバイスが開示されている。眼内レンズのデバイスは、眼の領域内に位置決めされるように構成された安定化ハプティック(haptic)を含む。眼内レンズのデバイスは、一定体積の光学流体を含む密閉チャンバを有するレンズ体を含む。レンズ体は、眼の光軸を囲む領域で外方に撓むように構成された形状変化薄膜と、第1の形状変化薄膜に対して変位(displacement)を受けるように構成された形状変形薄膜と、静的な要素とを含む。形状変化薄膜の内面と形状変形薄膜の内面と静的な要素の内面とは、共同で(collectively)密閉チャンバを形成する。眼内レンズのデバイスは、レンズ体の形状変形薄膜の外面と接触するように構成された第1端と、眼の毛様体構造と係合するように構成された第2端とを有する力変換アーム(force translation arm)を含む。力変換アームは、毛様体構造の動きでレンズ体に対して動くように構成される。
【0008】
形状変形薄膜は、遠近調節の間に形状変化薄膜に対して眼の光軸への内方変位を受けるように構成される場合がある。力変換アームの内方への動きは、密閉チャンバの変形を生じさせる眼の光軸への形状変形薄膜の少なくとも1つ以上の領域の内方への動きを生じさせる場合がある。形状変形薄膜の内方への動きにより、密閉チャンバでの光学流体が形状変化薄膜の内面を押圧して、形状変化薄膜の外方への湾曲を生じさせる場合がある。眼内レンズのデバイスは、密閉チャンバ内に内方の支持体をさらに含む場合がある。内方の支持体は、力変換アームの動きの間に歪みからレンズの光学部品を機械的に分離することができる。内方の支持体は、密閉チャンバ内に互いに離間した複数の内方の支持体を含むことができる。内方の支持体は、形状変形薄膜の内方への動きの間に接触を回避するために先細りの形状を含む場合がある。
【0009】
安定化ハプティックは、レンズ体に接合される場合がある。安定化ハプティックは、レンズ体の一部として成型される場合がある。眼内レンズのデバイスは、外方の支持体をさらに含む場合がある。内方の支持体は、形状変化薄膜の周辺領域に結合される場合がある。内方の支持体は、密閉チャンバを変形可能領域と中央部とに分割する密閉チャンバ内のパーティション(partition)を形成する場合がある。変形可能領域は、光学ゾーンの外側に位置する場合がある。変形可能領域は、光学ゾーンの内側に位置する場合がある。力変換アームの内方への動きは、形状変形薄膜の内方への動き及び変形可能領域の変形を生じさせる場合がある。形状変形薄膜の内方への動きは、密閉チャンバを圧縮できる。密閉チャンバでの光学流体は、非圧縮性であり、形状変化薄膜の内面を押圧することがあり、形状変化薄膜の外方への湾曲を生じさせる場合がある。内方の支持体は、静的な要素の領域にさらに結合される場合がある。内方の支持体は、密閉チャンバの変形可能領域と中央部との間での流体連通を提供する内方の支持体を貫通して延在するチャネルを含む場合がある。
【0010】
眼内レンズのデバイスは、外方の支持体をさらに含む場合がある。外方の支持体は、剛体であり、レンズ体に対して力変換アームの動きによって生じた歪みを防ぐように構成される場合がある。安定化ハプティック(stabilization haptic)は、外方の支持体の外表面に接合される場合がある。安定化ハプティックは、外方の支持体の一部として成型される場合がある。第1端が形状変形薄膜に対して位置決めされるように、力変換アームの第1端は、外方の支持体の周壁でのチャネルを通して延在する場合がある。外方の支持体は、中央の環状領域及び対向する側面領域を含む場合がある。レンズ体は、中央部及び対向した変形可能部を含む場合がある。中央部は、外方の支持体の中央の環状領域と連携する(align with)場合がある。そして、レンズ体の変形可能部は、外方の支持体の対向する側面領域の内で延在する。形状変形薄膜の外面は、中央の環状領域を通して露出する場合がある。静的な要素の外面は、中央の環状領域を通して露出する場合がある。力変換アームの第1は、外方の支持体の第1の側壁の第1の開口を貫通して第1のチャネルの中に延在する場合がある。力変換アームの第2は、外方の支持体の第2の側壁の第2の開口を貫通して第2のチャネルの中に延在する場合がある。第1のチャネル及び第2のチャネルは、中央の環状領域の反対の側にある場合がある。力変換アームは、第1のチャネル及び第2のチャネル内で前後に動くように構成される場合がある。
【0011】
形状変形薄膜は、形状変化薄膜に結合された第1表面と、静的な要素に結合された第2表面と、第1表面と第2表面との間で延在する側壁とを有する場合がある。レンズ体が外方の支持体に対して固定して位置決めされるように、形状変形薄膜の側壁は、外方の支持体の中央部の内面と連携して、内面に接合される場合がある。中央部は、光軸を囲む場合がある。そして、変形可能部は中央部の外側に位置する。中央部近くの形状変化薄膜の外面は、外方の支持体の中央の環状領域の内面と連携して、内面に接合される場合がある。変形可能部は、外方の支持体内で自由に可動である場合がある。変形可能部は、遠近調節の間に中央部に対して内方への倒状可能な(collapsible)動き又は変位を受けるように構成される場合がある。力変換アームカムの第1端は、変形可能部に対して位置決めされるように構成される。収縮で、毛様体構造は、力変換アームの第1端を変形可能部で押圧させ、中央部に向けての変形可能部の内方への倒状可能な動きを生じさせる第2端を押圧する場合がある。中央部に向けての変形可能部の内方への倒状可能な動きは、形状変化薄膜の領域を外方に撓ませる場合がある。中央部に向けての変形可能部の内方への倒状可能な動きにより、密閉チャンバ中の光学流体が、形状変化薄膜の外方への湾曲を生じさせる形状変化薄膜の内面を押圧する場合がある。
【0012】
レンズ体の中央部は、略円形である場合がある。そして、レンズ体の変形可能部は、蛇腹状、ひだ付きの(pleated)、台形の、円筒状の、楕円の、円錐の、球状の、及び半球状のものから成る群から選ばれた形を有する場合がある。レンズ体の変形可能部は、力変換アームに毛様体構造によって印加された力に応じて、レンズ体の中央部に対して動く場合がある。変形可能部は、約50μmから約500μmの距離を動くことができる。変形可能部が動く距離は、少なくとも3ジオプターまでレンズ体の屈折力(power)変化を少なくとも生じさせる場合がある。印加された力は、約0.1gfから約5gfである場合がある。安定化ハプティックは、光学部品(optics)の連携を維持し、かつ眼における移植に従うデバイスの動きに抗するように構成される場合がある。安定化ハプティックは、眼内でのハプティックの固定を改善するために噛み込み要素をさらに含む場合がある。噛み込み要素は、溝が彫られたエッジ及び/又は穴を含むことができる。安定化ハプティックは、開ループの、閉ループの、プレート・スタイルの、プレート・ループの、単ブロック・プレート・スタイルの、jループの、cループの、修正されたJループの、多ピースの、単一ピースの、角張っている、平面の、あるいはオフセットのハプティックである場合がある。安定化ハプティックは、力変換アームと同軸で又は共面である場合がある。安定化ハプティックは、力変換アームとは異なる平面に配置される場合がある。安定化ハプティックは、フレキシブルであるか又は折り曲げられるか、形状記憶材料から形成される場合がある。安定化ハプティックは、眼の毛様体の溝又は水晶体嚢の内に位置決めされる場合がある。
【0013】
レンズ体は、光学ゾーンの外に位置する変形可能部を含む場合がある。変形可能部は、形状変形薄膜の領域である場合がある。レンズ体は、光学ゾーンの内に位置する変形可能部を含む場合がある。変形可能部は、形状変形薄膜の領域である場合がある。形状変形薄膜は、環状である場合がある。形状変化薄膜の外方への湾曲は、眼へのデバイスの移植後に手動で調整可能である場合がある。静的な要素は、屈折力を有する静的なレンズである場合がある。静的なレンズは、眼に対して後方に位置決めされる場合がある。そして、形状変化部材は眼に対して前方に位置決めされる場合がある。形状変化薄膜は、一定の厚さを有する場合がある。形状変化薄膜の領域は、密閉チャンバ内での増加した内部圧力、又は形状変化薄膜の内面に対する光学流体による圧力の印加で撓み(give way)やすい減肉厚領域である場合がある。光学流体は、可視スペクトルにおいて高い清澄さ及び透過性の非圧縮性の液体又はゲルを含む場合がある。光学流体は、シリコーンオイル又はフルオロシリコーンオイルである場合がある。
【0014】
力変換アームは、レンズ体の形状変形薄膜と毛様体構造との間に延在するように構成された長さを有する場合がある。長さは、眼におけるデバイスの挿入の前又は後に調整可能である場合がある。その調節は、機械的である場合がある。力変換アームは、ともに結合された2つの部分を含む場合がある。2つの部分は、ヒンジ、ピストン、圧着(crimp)、ネジ又はカム・メカニズムによってともに結合される場合がある。2つの部分は、化学物質によってともに結合される場合がある。毛様体構造は、毛様体筋、毛様体、毛様体突起及び小帯の少なくとも1つを含む場合がある。
【0015】
デバイス、システム及び方法の詳細が、添付図面と以下の記載とに示される。他の特徴及び利点が、記載と図面とから明白になる。
【0016】
これらの態様及び他の態様は、以下の図面を参照しながら詳細に説明されるであろう。概して言えば、図は、絶対的に又は比較的に一定の縮尺で(to scale)あるものでないが、実例であることを意図している。さらに、特徴及び要素の相対的な配置は、実例の明瞭さを目的として修正されることがある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】不透明な水晶体嚢を持った眼の斜視断面図である。
【
図1B】従来の3ピースのIOLの移植で曲線から成る嚢切開及び水晶体マトリックスが除去された
図1Aの眼の斜視断面図である。
【
図2A】遠近調節型の眼内レンズ(「AIOL」)の実施形態の斜視図である。
【
図2E】E-E線に沿って切断された、
図2CのAIOLの断面図である。
【
図2F】F-F線に沿って切断された、
図2DのAIOLの断面図である。
【
図2H】H-H線に沿って切断された、
図2GのAIOLの断面図である。
【
図3D】D-D線に沿って切断された、3C図の静的なレンズの断面図である。
【
図5C】レンズ体の別の実施形態の概略断面図である。
【
図5H】レンズ体の別の実施形態の概略平面図である。
【
図6】毛様体構造とレンズ体との間に延在する力変換アームの実施形態の概略平面図である。
【
図7】毛様体構造とレンズ体との間に延在する力変換アームの実施形態の概略平面図である。
【
図8A】毛様体構造とレンズ体との間に延在する力変換アームの実施形態の概略平面図である。
【
図8B】毛様体構造とレンズ体との間に延在する力変換アームの実施形態の概略平面図である。
【
図9】毛様体構造とレンズ体との間に延在する力変換アームの実施形態の概略平面図である。
【
図10】毛様体構造とレンズ体との間に延在する力変換アームの実施形態の概略平面図である。
【
図11】毛様体構造とレンズ体との間に延在する力変換アームの実施形態の概略平面図である。
【
図12】毛様体構造とレンズ体との間に延在する力変換アームの実施形態の概略平面図である。
【
図13】毛様体構造とレンズ体との間に延在する力変換アームの実施形態の概略の側面図である。
【
図14A】本願に係るデバイスのための屈折力調整機構の実施形態の概略平面図である。
【
図14B】本願に係るデバイスのための屈折力調整機構の実施形態の概略平面図である。
【
図15】本願に係るデバイスのための屈折力調整機構の実施形態の概略平面図である。
【
図16】本願に係るデバイスのための屈折力調整機構の実施形態の概略平面図である。
【
図17】本願に係るデバイスのための屈折力調整機構の実施形態の概略平面図である。
【
図18】変形可能部182及び中央部180を有する形状変形薄膜140を示す。
【
図19】力(gf)の印加による形状変形薄膜の動き(μm)でレンズ体において達成された屈折力(D)を図示する。
【
図20】眼内に位置決めされた遠近調節型の眼内レンズのデバイスの横断面の部分的な斜視図である。
【
図21】虹彩なしでハプティックが可視であるように示された眼内に位置決めされた
図20のデバイスの横断面の斜視図である。
【
図22】非遠近調節状態にある
図20のデバイスの横断面の側面図である。
【
図23】遠近調節状態にある
図20のデバイスの横断面の側面図である。
【
図24】虹彩なしでハプティックが可視であるように示された眼内に位置決めされた遠近調節型の眼内レンズのデバイスの横断面の側面図である。
【
図25A】遠近調節型の眼内レンズの別の実施形態の斜視図である。
【
図26A】遠近調節型の眼内レンズの別の実施形態の斜視図である。
【
図26D】遠近調節型の眼内レンズの斜視図である。
【
図27A】非遠近調節の弛緩状態にある遠近調節型の眼内レンズの別の実施形態の横断面の部分的な斜視図である。
【
図27B】非遠近調節の弛緩状態にある、
図27Aのレンズの横断面の部分側面図である。
【
図27C】遠近調節の作動状態にある遠近調節型の眼内レンズの別の実施形態の横断面の部分的な斜視図である。
【
図27D】遠近調節の作動状態にある、
図27Cのレンズの横断面の部分側面図である。
【0018】
図面が単なる例示であり、一定の縮尺であることを意味しないことは認識されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示は、一般に眼科の分野に関し、より具体的には遠近調節型の眼内レンズ(AIOLs)のような眼内レンズ(IOLs)を含む眼科デバイスに関する。本願に係るデバイスは、若い調節性の自然な眼のように、遠近調節(accommodation)と非遠近調節(disaccommodation)との間で繰り返して前後に切り替えることができる。本願に係るデバイスは、遠近調節及び非遠近調節をもたらすために、自然レンズ(毛様体、毛様体突起及び小帯)によって典型的に使用される眼組織に対して機械的に且つ機能的に相互に作用することによって距離及び調節性範囲の両方における合焦能力(focusing power)を提供できる。これらの組織によって生成された力は、屈折力(power)変化をより効果的に遠近調節させる、本願に係るデバイスに機能的に変換される。本願に係るデバイスは、サイズが調節され、移植前に、移植の間に、移植後いつでも適合するように構成される。本願に係るデバイスは、病気の自然レンズ(natural lens)を交換するために眼に移植される場合がある。しかしながら、当該デバイスが、患者の水晶体嚢(偽水晶体の患者)内に以前に移植された自然レンズ(有水晶体の患者)又は眼内レンズの補完として移植されることは認識されるべきである。
【0020】
図1Aを参照する。人間の眼10は、角膜12、虹彩14、溝16、毛様体筋18、小帯20、及び、水晶体嚢(capsular sac)22内に含まれているレンズ21を含む。毛様体筋18が、収縮してそれによって水晶体嚢22の赤道付近の領域にある安静時の小帯の緊張を解放するとき、遠近調節が生じる。小帯の緊張の解放は、レンズ21の固有の弾性をより球状の又はより球面の形に変更するのを可能にして、前部のレンズ形の表面23及び後部のレンズ形の表面24の両方の表面曲率を増加させる。さらに、人間のレンズは、視覚システムでの働きを下げる1つ以上の疾患で苦しむ場合がある。共通の水晶体疾患は、通常は清澄で自然な水晶体マトリックス26の混濁から成る白内障である。混濁は、老化作用に起因する場合があるが、遺伝又は糖尿病によって引き起こされる場合がある。
図1Aは、不透明になった水晶体核26を持った水晶体嚢22を備える水晶体嚢を示す。
【0021】
白内障手術では、患者の不透明な水晶体が、清澄なレンズインプラント又はIOL30と置き換えられる。従来の嚢外の白内障手術において、
図1Bに図示されるように、水晶体マトリックス26は、毛様体及び毛様体筋18への小帯の靭帯接続と一緒に前後の嚢(capsule)の薄い壁を完全に(intact)しておいて除去される。水晶体コアは、
図1Bに図示するように曲線から成る(curvilinear)嚢切開(つまり水晶体嚢の前部部分23の除去)を通して水晶体超音波乳化吸引によって除去される。
図1Bは、水晶体嚢22への移植直後の従来の3ピースのIOL30を図示する。数日から数週にわたる治癒期間後の水晶体嚢22は、嚢切開、水晶体嚢22の壁の圧潰及びそれに続く線維症により、従来の3ピースのIOL30のまわりで効果的に収縮包装する場合がある。今日実行されるような白内障手術は、遠近調節を提供する眼の自然な構造のほとんどの回復不能な損失を生じさせる。水晶体マトリックス26が完全に失われる。そして、水晶体嚢22の完全性が嚢切開によって低下する。水晶体嚢の線維症は、そのバッグに配置されたレンズの動態的動きを制限する。したがって、従来のIOL(調節性のことを公言するものでさえも)は、近見のための適切量の遠近調節を提供するために光軸又はレンズ形状変化に沿った十分な軸方向のレンズ空間変位を提供できないことがある。
【0022】
有水晶体のIOLsの場合に既存のレンズでの屈折誤差を対処するために、又は偽水晶体の患者の場合に白内障手術後に標準IOLの屈折結果を改善するために、レンズの組み合わせ体を移植することは既知である。これらの「ピギーバック」IOLsは、偽水晶体の場合に白内障手術の屈折結果を改善するために、あるいは通常、高度の近視を矯正するために有水晶体眼の場合に眼の屈折ステータスを変更するために、以前に移植されたIOL又は自然レンズの前方に配置することができる。一般に、これらのレンズは、毛様体の溝に移植されて非遠近調節である。
図1Cに最もよく示されるように、毛様体の溝16は、虹彩14のベースの後面と毛様体の前面との間にあるスペースである。
【0023】
遠近調節型のIOLsは白内障を患っていない患者にとって有益である。しかし、患者は、近視、遠視及び老眼を矯正するために眼鏡及びコンタクトレンズに対する依存を低減することを望む。近視、遠視及び乱視眼における大きな屈折異常を矯正するために使用された眼内レンズは、「有水晶体の眼内レンズ」と呼ばれ、水晶体を除去することなく移植される。ある場合には、白内障が存在しなくても、無水晶体のIOLs(有水晶体でないIOLs)は、レンズ取り出し及び置換手術を介して移植される。この手術の間に、水晶体は取り出される。そして、IOLは、白内障手術に非常に類似したプロセスで交換される。屈折レンズ交換は、白内障手術のように、レンズ置換を含み、レンズ挿入のために眼に小さな切開と局所麻酔の使用とをなすことを要求し、およそ30分続く。本願において説明される遠近調節型のIOLsは、屈折レンズ交換のために患者に使用できる。
【0024】
水晶体嚢と無関係に、例えば3ジオプター(D)から約5Dの範囲で所望の屈折力変更を達成することができる遠近調節型のIOLs(「AIOLs」)が、本願において説明される。本願に係るデバイスは、1つ以上の毛様体構造の動きを利用し、かつ動きを遠近調節と非遠近調節とのためのレンズ体の形状変化に至らせる機能的な力に変換するために眼に位置決めされるように構成された1つ以上の力変換アームを含むことができる。本願に係るデバイスは、力変換アームと離れていて、例えば毛様体の溝の内に位置決めできる、1つ以上の安定化ハプティックをさらに含む場合がある。本願に係るデバイスは、上述されている水晶体嚢の線維症により生じる傾向がある既知の問題を除去する。本願に係るデバイスが、毛様体筋、毛様体、毛様体突起及び小帯を含むがこれらに限定されない毛様体構造の1つ又は組み合わせの動きを利用する(harness)ように構成されることは、認識されるべきである。簡潔さのために、毛様体構造は、1つ以上の毛様体構造のことを言及する(refer to)ために全体にわたって使用される。本願において詳細に説明されるように、レンズ体の遠近調節をもたらすために、力変換アームによってその動きが利用される。
【0025】
本願に係るデバイスは、病気の自然レンズを交換するために眼に移植される。いくつかの実施形態では、本願に係るデバイスは、屈折レンズ交換手術を介して無水晶体のIOLsとして移植される。本願において説明される眼内レンズは、自然レンズ(有水晶体の患者)又は患者の水晶体嚢(偽水晶体の患者)内に以前に移植された眼内レンズの補完として移植される。本願において説明されるレンズは、米国特許公開第2009/0234449号、米国特許公開第2009/0292355号及び米国特許公開第2012/0253459号において説明される眼内レンズと組み合わせて使用できる。それらは、各々、それらの全体が参照によって本願に組み込まれる。そのため、本願において説明されるレンズは、独立して又はいわゆる「ピギーバック」レンズとして使用される。ピギーバック・レンズは、有水晶体又は偽水晶体の眼において残余の屈折異常を矯正するために使用される。自然レンズを置換するために使用される主要なIOLは、一般に厚くて、±10Dから±25Dの範囲である屈折力を通常有する。より厚くて、より大きな屈折力レンズは、一般に遠近調節する(accommodate)ことがない。対照的に、補助レンズは、ジオプター(D)の全範囲を所有する必要はない。補助レンズは、主要なIOLと比較して相対的に薄くなり、より多くの遠近調節を受ける場合がある。薄いレンズの形状変化及び動きは、厚い主要なレンズに対して一般に容易に遂行される。本願において説明されるAIOLは、独立して使用でき、ピギーバック・レンズのように自然レンズ又は移植されたIOLと組み合わせて使用される必要はない。本願において説明されるAIOLは、溝16及び/又は水晶体嚢22に位置決めされるように構成できる。
【0026】
本願に係るデバイス及びシステムは、本願において説明される様々な特徴のいずれかを組み込むことができる。米国特許公開第2009/0234449号、米国特許公開第2009/0292355号及び米国特許公開第2012/0253459号において説明される様々なインプラント及び特徴と同様に、本願において説明されるシステム及びデバイスの実施形態のその要素又は特徴は、二者択一的に組み込まれるか、本願に係るデバイス及びシステムの別の実施形態の要素又は特徴と組み合わして組み込まれる。それらの米国特許公開は、各々参照によってそれらの全体が本願に組み込まれる。様々な組み合わせが本願において考えられるが、簡潔さのために、それらの組み合わせの各々の明示的な記載は省略される場合がある。追加的に、本願に係るデバイス及びシステムは、眼に位置決めされて、図に示されるように又は本願において説明されるように、具体的に移植される必要はない。様々なデバイスは、様々な異なる方法により及び様々な異なるデバイス及びシステムの使用で、移植され、位置決めされ、調節される。様々なデバイスは、移植前に、移植の間に、移植後いつでも調節される場合がある。様々なデバイスがどのように移植されて位置決めされるかのいくつかの代表的な記載が提供されるが、各々のインプラント又はシステムに関しての各方法の明示的な記載が、簡潔さのために省略されることがある。
【0027】
図2Aから
図2Hに移る。遠近調節型の眼内レンズ(「AIOL」)100は、外方の支持体110の中に位置決めされるとともに外方の支持体110に結合されて、1つ以上の力変換アーム115を有するレンズ体105を含む場合がある。1つ以上の安定化ハプティック120が、組み込まれる。外方の支持体110は、レンズ体105の中央部103が位置決めされる中央の環状領域125と、レンズ体105の変形可能部107が延在する対向する側面領域130とを含む場合がある。レンズ体105の前面は、外方の支持体110の中央の環状領域125の開口を通してデバイスの前部側から露出する場合がある。同様に、レンズ体105の後面は、外方の支持体110の中央の環状領域125の開口を通してデバイスの後部側から露出する場合がある。外方の支持体110の対向する側面領域130は、各々、開口133又はスロットから側面領域130の側壁134を通って中央の環状領域125の中に延在するチャネル132を含む場合がある(
図2Hに最もよく示されている)。2つの対向する力変換アームは図に示されるが、本願に係るデバイスが、1つの、2つの、3つの、4つの又はそれ以上の力変換アーム115を有する場合があることは認識されるべきである。いくつかの実施形態では、力変換アーム115は、側面領域130のうちの1方の開口133を貫通して延在する場合がある。そして、第2の力変換アーム115は、対向する側面領域130の開口133を貫通して延在する場合がある。力変換アーム115は、毛様体構造の少なくとも一部と接触するか係合するように構成された外接触部135と、レンズ体105の少なくとも一部と接触するか又は位置決めされるように構成された内接触部137とを各々含む場合がある。力変換アーム115の接触部135が遠近調節と非遠近調節との間で毛様体構造に接触しているのを維持できるように、各力変換アーム115の接触部135は、外方の支持体110の外側にあることを維持できる。各力変換アーム115の接触部137は、開口133を貫通して延在することによりチャネル132内で変わる(translate)ことができる。下に詳細に説明されるように、レンズ体105の調節性の形状変化をもたらすために毛様体構造が変化する(move)とき、力変換アーム115は開口133を通してチャネル132内で自由に前後に動く場合がある。
【0028】
例えば、動作(operation)のいかなる特別の理論又はモードに対するこの開示を制限せずに、毛様体筋18は環状の構造又は括約筋である。自然な環境で、眼が遠い距離にある目標を見ているとき、毛様体内の毛様体筋18が弛緩して、毛様体筋18の内径がより大きくなる。毛様体突起は小帯20を引っ張る。それは順にその赤道のまわりの水晶体嚢22を引っ張る。これは自然レンズを平らにさせるか凸面でないようにさせる。それは非遠近調節(disaccommodation)と呼ばれる。遠近調節の間に、毛様体筋18が収縮する。そして、毛様体筋18の内径が小さくなる。自然レンズがその自然で凸形状に戻り(spring back)、眼が近距離で合焦できるように、毛様体突起は、小帯20での緊張を解放する(release tension)。以下に詳細に説明されるように、本願に係るデバイスは、力変換アーム115で毛様体筋18(あるいは1つ以上の毛様体構造)のその内側の/前部の動きを利用するように構成されている。本願においてより詳細に説明されるように、力変換アーム115が、毛様体筋18の収縮で、毛様体構造(つまり小帯、毛様体突起及び/又は毛様体)の少なくとも1つと安静接触にあるか容易に接触するかのいずれかにあるように、力変換アーム115の接触部135が移植される。毛様体筋の収縮と、1つ以上の毛様体構造の光軸への内側の/前部の運動とは、力変換アーム115の接触部135に力を加える。力変換アーム115は、中央の環状領域125の方にチャネル132を通して内側に滑動することにより、レンズ体105に力を伝達する(transfer)。力変換アーム115の接触部137は、レンズ体105の中央部103でのより球状又は凸形状への形状変化を引き起こし、それにより近見焦点に適しているレンズの屈折力を高めるレンズ体105の変形可能部107に隣接するように構成される。
【0029】
外方の支持体110は、シリコーン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリウレタン、PMMA、PVDF、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリカーボネート、PEEKなど、及びその組み合わせを含むがそれらに限定されない、生体適合性のプラスチックから形成される場合がある。外方の支持体110は、チャネル132を通した力変換アーム115の動きによって生じた歪みを防ぐように構成される。いくつかの実施形態では、外方の支持体110が剛体である場合がある。他の実施形態では、折り曲げられない剛体のバージョンよりも小さな切開を通じて眼にデバイスが移植されるように、外方の支持体110は折り曲げられることができる。
【0030】
外方の支持体110は、1つ以上の安定化ハプティック120に接合又は結合できる。いくつかの実施形態では、安定化ハプティック120は、少なくとも外方の支持体110の中央の環状領域125の一部を取り囲む要素121を介して外方の支持体110に結合できる(
図21に最もよく示されている)。他の実施形態では、安定化ハプティック120は、要素121なしで外方の支持体110に直接的に結合できる(
図24を参照)。安定化ハプティック120は、デバイスの光学部品の連携を維持するとともに、いったん移植されて調節性の形状変化を受けるデバイスの動きに抗するように構成された静的なハプティックとする場合がある。デバイスの前部、後部の回動を防止及び/又は制限して、力変換アーム115が動く間でのデバイス100の安定性を維持するために、安定化ハプティック120は、溝16及び/又は水晶体嚢の内に位置決めされて係合することができる。ハプティック120は、眼内でのハプティックの固定を改善するために溝が彫られたエッジ162及び穴164を有する終端近くの噛み込み要素160を含む場合がある(
図2Bを参照)。ハプティック120は、開ループの、閉ループの、プレート・スタイルの、プレート・ループの、単ブロック・プレート・スタイルの、j-ループの、c-ループの、修正されたJ-ループの、複数ピースの、単一ピースの、角張った、平面の、オフセットのものなどを含むがそれらに制限されない様々なハプティック設計あるいはハプティック設計の組み合わせのいずれかとする場合がある。ハプティック120は、力変換アーム115と同軸に又は共面にする場合がある。ハプティック120は、力変換アーム115とは異なる軸に沿って位置決めされるか、例えば、力変換アーム115からオフセットするか、又は力変換アーム115に対して角張っている場合がある。いくつかの実施形態では、ハプティック120は、力変換アーム115に対して0度から20度の角度又は他の角度で位置決めされる。本願に考えられているハプティック120は、Rayner設計のハプティック(Rayner眼内レンズ株式会社、East Sussex、英国)、NuLens設計のハプティック(NuLens株式会社、イスラエル)、Staarレンズ設計(Staar、外科、Monrovia、CA)及び他のものを含む場合がある。いくつかの実施形態では、ハプティック120は、シリコーン、ポリウレタン、PMMA、PVDF、PDMS、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリカーボネート、PEEKなど又は当該材料の組み合わせのような生体適合性ポリマーから形成される場合がある。ハプティック120は、折り曲げられる材料から形成されるか、又は折り曲げられるように構成される場合がある。いくつかの実施形態では、ハプティック120は形状記憶材料から形成される場合がある。
【0031】
図2B、
図3Aから
図3Fを参照する。レンズ体105は、レンズ体105の周囲の近くで材料の連続的なループ又はバンドを形成するようにリング状を形成する形状変形薄膜140を含む場合がある。形状変形薄膜140は、第1端すなわち(or)第1表面141と、第2端すなわち(or)第2表面142と、内面及び外面を有して第1表面141と第2表面142との間にある側壁143とを有する場合がある。形状変形薄膜140は、形状変化薄膜145への第1表面141に、例えばAIOL100の前部の側に、結合できる。形状変形薄膜140の第2表面142は、形状変化を受けない静的な要素150に、例えばAIOL100の後部の側に、結合できる。要素150は、光学的に清澄で、AIOLの光学部品に影響せずに、支持機能を提供できる。要素150は、静的なレンズであるか、又は静的なレンズを含む場合がある。前部の薄膜が形状変化薄膜145の直径を規定し、形状変化薄膜145に形状変形薄膜を結合するように構成される前支持体を有する場合があることは認識されるべきである。形状変化薄膜145、形状変形薄膜140及び静的な要素150の内面は、一定体積の光学流体をそこに含むように構成された、一定体積を有して、定圧の密閉チャンバ155を共同で形成する場合がある。結合した際に、形状変形薄膜140、形状変化薄膜145及び静的な要素150が密閉チャンバ155とレンズ体105の変形可能部107及び中央部103とを形成するように、形状変形薄膜140、形状変化薄膜145及び静的な要素150の各々は、中央部と変形可能部とを含む場合がある。密閉チャンバ155は、形状変化薄膜145、静的な要素150及び形状変形薄膜140の側壁143の内面によって形成された略平坦なチャンバとすることができ、以下に詳細に説明されるように様々な形を有する場合がある。
【0032】
レンズ体105が中央部125内に固定して位置決めされるように、形状変形薄膜140の側壁143の外面は、外方の支持体110の中央部125の内面と連携していて(aligned with)、内面に接合される場合がある。形状変化薄膜145が前方に位置決めされて、眼解剖学的構造に対して後方に位置決めされた静的なレンズのような静的な要素150とすることができるように、デバイス100内及び眼内にあるレンズ体105の方向が変更できることは認識されるべきである。同様に、形状変化薄膜145は、眼解剖学的構造に対して後方に位置決めされ、静的な要素150は前方に位置決めされる。さらに、形状変形薄膜140の第1表面141,第2表面142ではなく外方の支持体110に直接的に結合することにより、形状変化薄膜145及び/又は静的な要素150が、デバイス100内で密閉チャンバ155を作り出すことができることは認識されるべきである。さらに、レンズは、形状変化薄膜145の直径に結合して直径を規定する前支持体を含む場合がある。
【0033】
図3C及び
図3Dは、静的なレンズを有する静的な要素150の実施形態を図示する。静的なレンズは、シリコーン、ウレタン、アクリル材料、低弾性率のエラストマー又はそれらの組み合わせから形成される場合がある。静的なレンズは、正視の状態に矯正するための静的な光学部品であるか、又は無水晶体症の患者用の適切な屈折力(通常±30Dへの±10D)からなる場合ができる。静的なレンズは、ゼロの屈折力を有し、レンズ体105への後方の支持体を形成する場合がある。AIOL100が別個の水晶体嚢のIOL(例えば「ピギーバック」レンズとして)と一緒に使用される場合、眼の光学系での残留屈折(residual refractive)又は他の光学収差のために矯正するために、屈折力は約-5Dから約+5Dの範囲であるとする場合がある。いくつかの実施形態では、静的なレンズは、平面151及び曲面152を有する場合がある。平面151が眼の流体に接して、曲面152がレンズ体105の密閉チャンバ155に面する内面を形成するように、静的なレンズは、上述したようなレンズ体105の内側に位置決めされる。他の実施形態では、平面151がレンズ体105の密閉チャンバ155に面する内面を形成して曲面152が眼の流体に接するように、静的なレンズはレンズ体105の外側に位置決めされる。静的なレンズとそれを囲む流体(眼の流体であるか密閉チャンバ155内の光学流体である)との相対屈折率は、あらゆる所定の屈折力用の静的なレンズの形を決定するであろう。静的なレンズは、平面-凸面のことがある、凸面-平面の、凸面-凸面の、凹面-凸面の又は他の組み合わせである場合がある。静的なレンズは、例えば、フレキシブルなレンズに関連したあらゆる異常のために低減又は補償するために、球面レンズ、非球面レンズ、回折レンズ又は両方のあらゆる組み合わせである場合がある。
【0034】
形状変化薄膜145は、光学的に清澄で低弾性率のエラストマー(シリコーン)から形成されたフレキシブルな光学部品である。例えば、密閉チャンバ155の変形の間に形状変化薄膜145の内面に印加された増加した力で、形状変化薄膜145が相対的にたわみやすくなっている減肉厚部を有するように、それが平面要素(
図4Aを参照)又は可変厚さ(
図3Eから
図3F、
図4Bから
図4Eを参照)であるように、形状変化薄膜145は一定の厚さを有する場合がある。形状変化薄膜145の構造が変化できることは認識されるべきである。いくつかの実施形態において、形状変化薄膜145は、線形の勾配厚さ(
図4B)、湾曲した勾配厚さ(
図4C)、丸みのつけられた又は直角の角度を含むステップを持った2つの、3つの又はそれ以上の厚さ(
図4D)、あるいは、例えば、遠近調節ゾーン(つまり形状変化を受ける薄膜145の領域)の近くで屈曲するように構成された材料、及び、光学ゾーンを強化して歪みを制限するように構成された他の材料のような複数の材料(
図4E)を有する場合がある。
【0035】
いくつかの実施形態では、形状変化薄膜145の減肉厚部は、光軸Aの内に、又は光軸Aと平行に取り囲む、形状変化薄膜145の領域170の近くで見つけられる場合がある。減肉厚領域170は、外面(例えば前面)の外方への湾曲を生じさせる形状変化薄膜145の内側面上で密閉チャンバ155内の光学流体によって加えられた、増加した圧力により撓むように構成される場合がある。形状変化薄膜145の領域172は、領域170よりも大きな厚さを有して、密閉チャンバ155での光学流体によって加えられた内部圧力下で変形することに対して抵抗性がある場合がある。領域170が近見のために変形するときでさえ、形状変化薄膜145の領域172は遠視力矯正を提供し続ける場合がある。形状変化薄膜145の領域170は、領域172の材料よりも相対的に外方への湾曲の影響をより受けやすい材料から形成される場合がある。領域170は、相対的にシームレスで中断されない外面を提供するために領域172と結合してインジェクション成型である場合がある。領域170は、周囲の領域よりもさらに外方に撓ませる異なる剛性又は弾性を有する場合があるが、領域172の材料は略一貫している場合がある。形状変化薄膜145は、例えば、米国公開公報第2009/0234449号(参照によってその全体が本願に組み込まれる)に説明されるように、広範囲の距離にわたって強化された視覚を本願において説明されるAIOLの着用者に提供するために変化に富んだ(varied)多焦点の能力を有するように構成される場合がある。
【0036】
再び、
図2Hを参照する。形状変形薄膜140は、中央部180及び変形可能部182を含む場合がある。いくつかの実施形態では、変形可能部182が中央部180に対して倒状可能なように、変形可能部182は、ヒンジによって中央部180に結合される場合がある。中央部180は、光軸A内に又は光軸Aと平行に囲繞するレンズ体105の中央部103を作り出すために形状変化薄膜145の変形可能領域170(及び静的な要素150の中央部)と連携している場合がある。レンズ体105の中央部103が外方の支持体110の中央の環状領域125に対して固定して取り付けられるように、中央部180の側壁143の外面は、中央の環状領域125の内面と連携していて当該内面に接合できる。上で詳細に説明されるように、レンズ体105の変形可能部107が遠近調節の間に中央部103に対して内方への倒状可能な動き又は変位を受けるように、レンズ体105の変形可能部107は、対照的に、外方の支持体110の側面領域130のチャネル132内で自由に可動である(moveable)場合がある。
【0037】
図2Gから
図2Hを参照する。変形可能部182は、力変換アーム115の接触部137に接触して、中央部180に対して動くように構成される。例えば、遠近調節の間に、力変換アーム115は、1つ以上の毛様体構造によって光軸Aに向けて促される。接触部135は、1つ以上の毛様体構造と係合するように位置決めされる。接触部137は、形状変形薄膜140の変形可能部182に対して位置決めされる。収縮は、薄膜140の変形可能部182を形状変形薄膜140の中央部180に対する動きを受けさせる場合がある。この動きは、圧縮、収縮、圧潰(collapse)、圧入(indentation)、引き伸ばし、変形、回転自在の支持(hinging)、又は大略光軸Aに向けての他のタイプの動きである場合がある。形状変形薄膜140の変形可能部182(したがってレンズ体105の変形可能部107)のこの動きは、ストレスを課すことなく、光学ゾーン上で押しつぶすことなく、光学ゾーン101での形状変化薄膜145の撓みを生じさせる場合がある。変形可能部182は、光学ゾーンの内側又は外側に位置する場合がある。本願で使用されるような光学ゾーンは、光軸を囲んで視覚に対して光学的に清澄であるレンズ体105の部分を一般的に指している。光学ゾーン全体は同じ矯正屈折力を有しないことがあるが、光学ゾーンは矯正屈折力を有するように構成される。例えば、光学ゾーンの中央部は矯正屈折力を有することがある。そして、光学ゾーンの周辺領域は矯正屈折力を有しないことがある。
【0038】
上述のように、レンズ体105の密閉チャンバ155は、清澄で生体適合性の光学流体で満たされる場合がある。光学流体は、可視スペクトルにおいて清澄で透明な非圧縮性の液体又はゲルである場合がある。光学流体は、例えばシリコーンの流体及びゲル、官能化シリコーン流体及びゲル(例えばハロゲン(つまりフッ化シリコーン、芳香族の(つまりフェニル官能化シリコーンなど))、炭化水素、官能化炭化水素(長連鎖炭化水素)、ハロゲン化炭化水素(フッ化及び部分的にフッ化炭化水素)、水システム、流体及びゲルの両方である。その屈折率(RI)は、水溶性の(water-soluble)又は水膨潤性の(water swellable)ポリマー、バイオポリマー膨潤性の添加物(セルローズ)、さらに屈折率を増加させるためにナノストラクチャーを形成する有機又は無機の添加物の添加によって増大している。いくつかの実施形態では、密閉チャンバ155内の光学流体は、1.37を超える屈折率を有する。他の実施形態では、密閉チャンバ155内の光学流体は、1.37から1.57の屈折率を有する。他の実施形態では、密閉チャンバ155内の光学流体は、1.37から1.60の屈折率を有する。
【0039】
密閉チャンバ155内の光学流体は、形状変形薄膜140の変形可能部182(したがってレンズ体105の変形可能部107)が動く際に形状変化薄膜145の撓みを生じさせる場合がある。変形可能部182の内方への動きにより、レンズ体の一定体積の密閉チャンバ155内に含まれた非圧縮性の光学流体が、形状変化薄膜145の内面、及び形状変形薄膜140の側壁143の内面を含む密閉チャンバ155の表面を押圧することに帰着する場合がある。形状変化薄膜145が、力の印加で外方に撓むように構成された領域170の近くで領域を有するので、形状変化薄膜145の内壁に対する光学流体の圧力は、変形可能部107が内方に動く際に形状変化薄膜145の外面の外方への湾曲及び変形に帰着する。光学ゾーンの調節性の部分は、AIOL100の屈折力を高めるようにさらに凸面形状になる。
【0040】
形状変化薄膜145のこの形状変化が、或るチャンバから別のチャンバへ光学流体の実際のフローなしで生じることは認識されるべきである。もっと正確に言えば、密閉チャンバ155の内部での光学流体が密閉チャンバ155の形状変化と共に形状変化するとき、第1の領域の密閉チャンバ155を変形するために形状変形薄膜140に印加されている力は、少なくとも第2の領域の密閉チャンバ155の反作用の(reactive)変形を生じさせる場合がある。密閉チャンバ155は、一定体積(定圧)を有して変形可能である。光学流体は一定体積を有し、非圧縮性であり、密閉チャンバ155の形に応じて形状変化する。チャンバ155の1つ以上の部分(例えば変形可能部107)の内向きの変形は、密閉チャンバ155の内部にある非圧縮性の光学流体により、チャンバ155の別の部分(例えば形状変化薄膜145の領域170)の反作用の外向きの変形を生じさせる場合がある。したがって、光学流体は、実際にAIOLの別個のチャンバ間を流れないが、もっと正確に言えば、形状変化薄膜145の光学ゾーンの調節性部分をAIOL100の屈折力を高める外方に撓ませる密閉チャンバの形状変化と共に、形状変化する。
【0041】
形状変形薄膜140、形状変化薄膜145及び静的な要素150は、ともに様々な形状のいずれかを有するレンズ体105を形成する場合がある。レンズ体105の中央部103は、略円形である。そして、変形可能部107は、蛇腹形状(bellowed)、ひだ付き形状(pleated)、台形形状、円筒形状、楕円形状、円錐形状、球形状、半球形状などを含む様々な形状のいずれかを有する場合がある(例えば、
図5B、
図5E、
図5Gを参照)。さらに、変形可能部107が様々な中心軸に沿った様々な横断面の形状のいずれかを有する場合があることは認識されるべきである(例えば、
図5A、
図5C、
図5D及び
図5Fを参照)。力変換アーム115の接触部137が、
図5H、
図5Iから
図5J及び
図25Fに示されるように光学ゾーン内で形状変形薄膜140と接触するように、レンズ体105は、光学ゾーン内に中央部103及び変形可能領域を有する円形のエラストマーのリングである場合がある。レンズ体105の変形可能部107は、レンズ体105と同様に光学ゾーンの外側又は内側に(例えば、
図5Hを参照)位置する場合がある。レンズ体105は、3つの、4つの又はそれ以上の変形可能部107を含む、2つ以上の変形可能部107を有する場合がある。
【0042】
形状変形薄膜140は、光学的に清澄な低弾性率のエラストマー(シリコーン、ウレタン)、又はフレキシブルで非弾性のフィルム(ポリエチレン)から形成される場合がある。形状変形薄膜140の中央部180は、弾性材料からなる場合がある。形状変形薄膜140の変形可能部182は、弾性又は非弾性の材料から形成される場合がある。
【0043】
図2B及び2Hを参照する。本願に係るデバイスは、外方の支持体110の側面領域130の側壁134の開口133を貫通して延在するように構成された力変換アーム115を含む場合がある。上述のように、力変換アーム115は、側面領域130のうちの1つの開口133を貫通して延在する場合がある。そして、第2の力変換アーム115は、対向する側面領域130の開口133を貫通して延在する場合がある。しかしながら、本願に係るデバイスが、2つ未満の及び2つ以上の力変換アーム115を含む場合があることは認識されるべきである。例えば、本願に係るデバイスは、デバイスのまわりで平等に配置された1つの、3つの又は4つ以上の力変換アーム115を含む場合がある。いくつかの実施形態では、力変換アーム115は、剛体であるポリマー(シリコーン、ポリウレタン、PMMA、PVDF、PDMS、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリカーボネートなど又はそれらの組み合わせ)である場合がある。いくつかの実施形態では、力変換アーム115は、PMMAで強化された要素である場合がある。
【0044】
いくつかの実施形態では、力変換アーム115は、各々、様々な形のいずれかを有する場合がある外側の接触部135及び内側の接触部137を含む場合がある(例えば
図2B及び2Hを参照)。接触部135は、遠近調節と非遠近調節との間で光学部品を形状変化に至らせるために、1つ以上の毛様体構造(毛様体、毛様体突起、毛様体筋、小帯又はその組み合わせを含むがそれらに制限されない)と、接するか、接触するか、係合するか、機能的に結合するか、あるいは、密接に関連しているように構成される場合がある。遠近調節と非遠近調節との間で毛様体構造に接したままであるように、各力変換アーム115の接触部135は、外方の支持体110の外側にとどまる場合がある。いくつかの実施形態では、接触部135は、接触部135が関連する眼の領域の湾曲した輪郭と一致できる湾曲した輪郭を有する外面を有する場合がある。いくつかの実施形態では、接触部135は、例えば毛様体突起又は小帯の突起との接触及び相互嵌合を改善するために圧入(indentation)、溝、歯、櫛(combs)又は他の表面特徴を有する場合がある。接触部135の外面は、上の及び/又は下のエッジで先の尖っている又は面取りされているエッジを有する場合がある。力変換アーム115の接触部135は、損傷を生じずに、毛様体構造とのそれらの接続を改善する特徴を組み込む場合がある。一般に、接触部135は、毛様体構造への穿孔又は外傷が生じることを回避する。いくつかの実施形態では、組織自体に外傷をもたらさずに、動きを伝達する(transfer)ことができるように、接触部135は毛様体構造と干渉できる。
【0045】
接触部137は、接触部135と結合される場合がある。いくつかの実施形態では、接触部137は、接触部135の内面と結合された、及び接触部135の内面から外に延在する長尺要素である場合がある(例えば、
図2Bを参照)。力変換アーム115の少なくとも一部がチャネル132内で変換する(translate)ことができるように、接触部137は、チャネル132内に位置決めされるように形作る場合がある。接触部137は、レンズ体105の少なくとも部分(形状変形薄膜140の変形可能部182)に対して接する場合がある。例えば、毛様体筋18が遠近調節の間に収縮するとき、毛様体筋18は光軸の方へ収縮する。力変換アーム115がチャネル132内で動き、接触部137がレンズ体105の変形可能部107を押圧し、中央部103に対して変形可能部107の動きを生じさせ、それによって、上述されるように形状変化薄膜145の遠近調節型の形状変化を駆動させるように、毛様体構造は接触部135の外面と接触する場合がある。
【0046】
1つ以上の毛様体構造に対する力変換アーム115の位置は変化できる。さらに、力変換アーム115は、固定長を有するか又は調整可能である場合がある。眼における挿入に先立って、眼における挿入の間に又は眼における挿入の後いつでも、力変換アーム115の調節が行なわれる。様々な力変換アームに対して説明される様々な構成要素及び特徴には、本願での様々なデバイスに関して説明される1つ以上の様々な構成要素及び特徴が組み込まれることは認識されるべきである。本願に係るデバイス及びシステムのいずれもが、本願において説明される様々な特徴及び構成要素のいずれかを組み込む場合がある。本願に係るデバイス及びシステムの1つの実施形態の構成要素又は特徴は、本願に係るデバイス及びシステムの別の実施形態の構成要素又は特徴が別法として組み込まれるか又は結合される。様々な組み合わせが本願において考慮されることになっているが、簡潔さのために、それらの組み合わせの各々の明示的な記載は省略されることがある。
【0047】
図6は、固定長を有する力変換アーム115の実施形態を示す。力変換アーム115は、1つ以上の毛様体構造(毛様体)と接触するように構成された外側の接触部135を有する場合がある。接触部135は、長尺要素136によって内側の接触部137に結合できる。力変換アーム115の全長は、一定であり、手術前の測定に基づいて各患者に対して選ばれた適切なサイズである場合がある。
【0048】
例えば、
図7は、移植の前に、移植の間に、又は移植の後いつでも調節できる長さを有する力変換アーム115の実施形態を示す。この実施形態では、力変換アーム115は、接触部135及び接触部137を有する。接触部135は、接触部135の内面から外に延在する第1の長尺要素738を有する場合がある。そして、接触部137は、接触部137の外面から外に延在する第2の長尺要素739を有する場合がある。第1の長尺要素738と第2の長尺要素739との間での機械的な調節インターフェースは、第1の長尺要素738及び第2の長尺要素739の領域の外面が、第1の長尺要素738及び第2の長尺要素739の領域の内面での対応するネジと係合するように構成されたネジを有する場合があるネジ係合である場合がある。例えば、第2の長尺要素739は、外面上のネジを有し、対応するネジと係合するために第1の長尺要素738のチャンバ731に挿入するように構成される場合がある。力変換アーム115の2つの部分の間でのこのネジ係合は、例えば、患者がテーブルにいる挿入に先立って、眼内へのデバイスの移植の間に、又は眼内へのデバイスの移植後いつでも、最適なサイジングのためになされるオンザフライの調節を可能にする。
【0049】
第1の長尺要素738及び第2の長尺要素739は、他の様々な機械的な構成によって互いに係合する場合がある。例えば、
図8Aは、調節できる長さを有する力変換アーム115の別の実施形態を示す。この実施形態では、力変換アーム115は、接触部135及び接触部137を有する。接触部135は、接触部135の内面から外に延在する第1の長尺要素738を有する場合がある。そして、接触部137は、接触部137の外面から外に延在する第2の長尺要素739を有する場合がある。力変換アーム115の所望の全長が達成されるまで、第1の長尺要素738及び第2の長尺要素739は互いに隣接して連携する場合ができる。別法として、第1の長尺要素738及び第2の長尺要素739は、長尺要素の1つが穴を通して反対の長尺要素のチャンバ731に挿入するように、互いに同軸で連携する場合がある(
図8Bを参照)。両方の構成では、第1の長尺要素738及び第2の長尺要素739の領域は、いったん所望の長さが達成されれば、圧着(crimp)サイト861で圧着する(crimp)ことによって機械的に一緒に固定することができる。例えば、眼内へのデバイスの移植に先立って、眼内へのデバイスの移植の間に、又は眼内へのデバイスの移植の後いつでも、この種の調節は行われる。
【0050】
図9に示されるような別の相互に関連する実施形態では、いったん接触部135,137の間での所望の長さが達成されれば、第1の長尺要素738及び第2の長尺要素739は、滑動するカム・メカニズム963によって一緒に固定できる。第1の長尺要素738は、不規則な形を有する第2の長尺要素739の対応する端と接触するように構成される端を有する不規則に形作られた軸を有する場合がある。第1の長尺要素738の端が第2の長尺要素の端を越えて通過されるとき、2つの不規則に形作られた軸が互いにロック係合にスナップ留めする。
【0051】
図10に示される別の相互に関連する実施形態では、第1の長尺要素738及び第2の長尺要素739は、ピストン・システムを形成して、互いに係合する場合がある。第1の長尺要素738はチャンバ731を含む場合がある。そして、第2の長尺要素739の端は穴を貫通してチャンバ731の中に延在する場合がある。チャンバ731は、互いに対して、要素738及び739の有効長を調節するために圧縮不可能な材料1090で所望の体積に満たす場合がある。チャンバ731は、力変換アーム115の有効長を微調整するために外科手術の間に満たす場合がある。
【0052】
図11に示される別の相互に関連する実施形態では、接触領域135はフレキシブルなヒンジ・メカニズム1192によって領域137と接触するために結合する場合がある。いくつかの実施形態では、接触領域135は、第1の長尺要素738に結合される。そして、接触領域137は、第2の長尺要素739に結合される。第1の長尺要素738は、ヒンジ・メカニズム1192を介して第2の長尺要素739と嵌合する。接触領域135が複数の長尺要素738を有し、接触領域137が、ヒンジ・メカニズム1192によって、各々一緒に結合する複数の長尺要素739をそれぞれ有する場合があることは認識されるべきである。フレキシブルなヒンジ・メカニズム1192は、手術に先立って、又はその手術の間に調節する場合がある。いくつかの実施形態では、ヒンジ・メカニズム1192は、熱/放射線/化学的にもたらされた硬化を介して、適所に固定できる。ヒンジ・メカニズム1192は、長尺の力変換アーム738及び739が外側又は内側に折り重なるように、或る方向に回転するように構成される場合がある。光軸Aと毛様体構造との間の調節だけでなく前部の方向に及び/又は後部の方向に調節も提供するために、1つ以上の中心軸に沿って1つ以上のヒンジ・メカニズム1192が折り重ねることができることは、認識されるべきである。
【0053】
図12に示される別の相互に関連する実施形態では、第1の長尺要素738及び第2の長尺要素739の間の結合は、追加的に又は別法として化学結合を含む場合がある。例えば、第1の長尺要素738及び第2の長尺要素739は、関連していて、接着剤又は活性化材(熱/放射線で硬化したポリマー又は他の材料)のような化学物質を使用して、化学的に一緒に固定する場合がある。材料は、第1の長尺要素738及び第2の長尺要素739の間の界面で導入する場合がある。いくつかの実施形態では、第1の長尺要素738は、穴を貫通してチャンバ731に挿入された第2の長尺要素739の外面を材料1090が囲むように、材料1090で少なくとも部分的に満たされるチャンバ731を含む場合がある。いったん所望の長さ調節が達成されれば、材料1090は第1の長尺要素738及び第2の長尺要素739の間の界面を固定するために活性化する(activate)ことができる。測定、調節及び固定がデバイス100の移植後に行なわれるように、活性化(activation)は、例えば、眼への挿入に先立って又は眼へのデバイスの挿入後にテーブル上で行なう場合がある。
【0054】
図13に示される相互に関連する実施形態では、力変換アーム115は、材料を含むように構成された内容積1396を有する薄膜1394である場合がある接触部に長尺要素739によって結合された接触部137を含む場合がある。材料は、体積及びスペースにおけるオンザフライ(on-the-fly)の調節を可能にする感熱性の接着剤、形状記憶合金、形状記憶ポリマー、硬化性ポリマー、熱/放射線の活性化材料、又は他の材料のようなその場で(in situ)固定できる体積調整可能な材料を含む場合がある。
【0055】
力変換アーム115が外方の支持体110及びレンズ体105に対して動く必要がないことは認識されるべきである。例えば、力変換アーム115は、毛様体構造の動き及び接触で生成された電流を生成するように構成される場合がある。例えば、力変換アーム115は、毛様体構造によって印加された機械的応力に応じて電荷を生成する圧電気のシステムを組み込む場合がある。力変換アーム115によって生成された電流は、レンズ体105での遠近調節を生じさせるために使用される。例えば、接触部135の外表面は、電圧を生成する圧電気ディスクを含み、レンズの遠近調節を生じさせる場合がある。
【0056】
本願で言及されたように、形状変化が順に(in turn)最適化されるように、力変換アーム115と毛様体構造との間のカスタマイズされて最適化された接触を達成するために、力変換アーム115の全長は、上述されるように、個々の患者に対する移植の前に、個々の患者に対する移植の間に、あるいは個々の患者に対する移植の後に調節して微調整する場合がある。レンズ体105において達成された形状変化が、デバイス100の移植後いつでも調節して微調整できることは認識されるべきである。
図14Aから
図14Bに示されるいくつかの実施形態及び
図9に示される実施形態に類似している実施形態では、デバイス100はカム1498を組み込む場合がある。それらが互いに関して揺動するように、カム1498は、力変換アーム115の接触部137とレンズ体105の変形可能部107との間に位置決めされる。カム1498の位置は、レバー又は他の要素(ネジり機構)によって回転によって変更することができる。カム1498は、
図14Aの第1の「弛緩した(relaxed)」位置、及び、
図14Bの最大の「アクティブな」位置で示される。
【0057】
図15に示される相互に関連する実施形態では、ロッド、詰め木、スペーサー、くさび又は他の調節要素1502は、力変換アーム115の接触部137とレンズ体105の変形可能部107との間での相対的な接触を調節するために組み込む場合がある。調節要素1502は、それがさらに挿入されると、レンズ体105の変形可能部107上でより大きな圧力を作り出し、より大きな形状変化を作り出すように、外方の支持体110にある対応する開口を通して挿入する場合がある。調節要素1502は、所望の屈折力調節に達する際に位置へロックする場合がある。調節要素1502は、外方の支持体110からの調節要素1502の除去によって屈折力調節が微調整されるように解放する場合がある。外方の支持体110に対する調節要素1502の位置は、調節要素1502の侵入の深さに応じて様々なオンザフライの量において外方の支持体110の方に又は外方の支持体110から遠方に調節する場合がある。別法として、それが1つの又は2つの又はそれ以上のプリセットの量で「位置にぴったりと収まる(clicked into position)」ように、調節要素1502は階段状のプロフィールを有する場合がある。さらに、調節要素1502の1つ以上の部分は、調節後に固定するための感熱接着剤で覆う場合がある。
【0058】
図16及び
図17に示される相互に関連する実施形態では、レンズ体105に加えられた圧力は、レンズ体105の変形可能部107に力変換アーム115によって印加された圧力とは別々に調節する場合がある。例えば、調整可能な要素1602(ネジ、レバー又はロッド)は、レンズ体の中央部103近くの形状変形薄膜140に対してレンズ体105の領域と接触するために外方の支持体110を貫通して挿入する場合がある。密閉チャンバ155内の光学流体が形状変化薄膜145に対してさらに促される(urged)ように、調整可能な要素1602は、形状変形薄膜140に追加の力を加える場合がある。屈折力調節を達成することができるように調整可能な要素1602は印加された圧力を微調整するために調整可能な要素1602は漸増的に調整可能である場合がある。このメカニズムは、遠近調節なしでAIOLにおいて屈折力調節に一般的解決策を提供する場合がある。
図17は、レンズ体105のベース屈折力を変更するために元の場所に拡張するか縮小することのできる材料を使用する方法を図示する。この実施形態では、レンズ体105に対してネジ又は他の機械的な特徴を挿入するのではなく、形状変化薄膜145(あるいは静的な要素150)への緊張が調節される。例えば、材料は、熱活性化で気泡を作り出すことができる感熱材料である場合がある。レンズ体での緊張及び体積の変化が、気泡、圧入又は平坦化が材料の活性化の際に形成されるかどうかに応じて生じる場合がある。
【0059】
図18は、2つの変形可能部182及び中央部180を有する形状変形薄膜140を示す。変形可能部182は、圧縮可能か又は倒状可能であるか又は、光軸Aへの(そして光軸Aから離れる)中央部180に対して運動させる(undergo movement)ように構成される場合がある。この実施形態では、変形可能部182は、略矩形に形作られて、中央部180が動き又は変位を受けること無く矢印Aの方向である形状変形薄膜140の側壁143の外面から印加された力に応じて変位する又は動く場合がある。クローズドシステムの形状変形薄膜140のこの変位は、密閉チャンバ内に含まれた光学流体が形状変化薄膜の内面を押圧すること、及び、形状変化薄膜に結合された形状変化薄膜の外方への湾曲がクローズドシステム内での圧力を一定に維持することに帰着する場合がある。
【0060】
下記の表1は、変形可能部182の変位(各側からの変位)と、生じる形状変化薄膜の外方への湾曲(したがってジオプトリーの変更又は遠近調節)との関係を図示する。レンズ直径(mm)は、密閉チャンバ内で領域を押圧する光学流体に応じて外方に撓むように構成される形状変化薄膜の領域である。光学流体は、1.37から1.57の屈折率を有するシリコーンオイルである場合がある。圧縮可能な部分の長さは、薄膜140の変形可能部182の長さ(矢印L)である。そして、圧縮可能な部分の高さ(矢印H)は、形状変形薄膜140の側壁143の厚さである(
図18を参照)。個々の圧縮可能な部分(つまり形状変形薄膜140の中央部180に対する変形可能部182、又はレンズ体105の観点から中央部103に対する変形可能部107)からの変位は、圧縮可能な部分の長さLと、圧縮可能な部分の高さHと2又はV/(L*H*2)との積で割られた密閉チャンバ155の体積Vと等しい。撓むレンズの体積は、V=πh(3a
2+h
2)/6である。
レンズ高さ(h)は、ピタゴラスの方程式(r-h)
2+a
2=r
2から計算することができる。従って、h=r―(r
2-a
2)
0.5である。
例えば、光学流体の屈折率が1.4であり、レンズの直径が3mmである場合、各変形可能部182からの28ミクロンの動きは、形状変化薄膜に対して光学流体によって加えられた十分な量の圧力を作り出して1Dのレンズを形成する。そして、レンズの直径が3mmである場合、各変形可能部182の84ミクロンの動きは形状変化薄膜に対して光学流体によって加えられた十分な量の圧力を作り出して3Dのレンズを形成する。
【0061】
【0062】
図19は、力(gf)を加えた際の形状変化薄膜の動き(μm)でレンズ体において達成された屈折力(D)を図示する。本願に係るデバイスは、眼内レンズ(IOLA PLUS、ロトレックス、イスラエル)を評価するための光学台テスト及び較正されたロードセル(アドバンスト・フォース・トルク・インディケーター(AFTI)、メクメシン、英国)を用いて評価され、100μmの動き及び1gfの印加で約3Dの変化を達成するために示された。
【0063】
図20は、眼内に位置決めされたAIOL100の横断面の部分的な斜視図を示す。
図21は、ハプティック120が可視であるように虹彩なしで示された眼内に位置決めされたAIOL100の横断面の斜視図である。
図22は、眼内に非遠近調節の状態で位置決めされたAIOL100の横断面の側面図である。
図23は、眼内に遠近調節状態で位置決めされたAIOL100の横断面の側面図である。全体にわたって説明される様々な実施形態と同様に、AIOL100は、形状変形薄膜140、形状変化薄膜145及び静的な要素150の内面から形成されて密閉チャンバ155内に光学流体を含むように構成された密閉チャンバ155を有するレンズ体105を含む場合がある。レンズ体105は、支持体110内に位置決めされ、支持体110に結合する場合がある。AIOL100は、力変換アーム115及び安定化ハプティック120を含む場合がある。AIOL100が溝16内でハプティック120の相互作用によって安定化且つ固定化されるように、安定化ハプティック120は、溝16(
図24を参照)内で虹彩14の後方に位置決めされる。安定化ハプティック120が水晶体嚢内に位置決めされるように、AIOL100も移植される。形状変化薄膜145の中央部の前面は、支持体110の中央の環状領域125内に連携され、毛様体筋18の収縮で、つまり遠近調節の間に、外方に撓むように構成される場合がある。静的な要素150が、デバイス105の最後部(posterior-most)の側に配置されて嚢切開(capsularhexis)の略外側のままであるように、水晶体嚢22の受けた嚢切開を有する眼内に移植されたAIOL100が、示される(
図20を参照)。静的な要素150は、本願において説明されるように遠用の屈折力を有する(powered for distance)静的なレンズである場合がある。
【0064】
本願に係るデバイスは、毛様体構造の動き(例えば毛様体及び/又は毛様体筋の動き)に対して直接的に応答して、遠近調節の(又は非遠近調節の)形に作動される。本願に係るデバイスの遠近調節のこの直接の毛様体の変換は、密閉チャンバ内の光学流体の動きを含む場合がある。上述されるように、そして、さらに
図20から
図23に示されるように、力変換アーム115が一般にデバイス105の中心軸CAから離れて位置決めされる第1の構成(
図22を参照)と、力変換アーム115がデバイス105の中心軸CAの方に毛様体構造によって促される第2の構成(
図23を参照)とで接触部137がチャネル132内で位置決めされるように、力変換アーム115は、力変換アーム115の作動を生じさせるために1つ以上の毛様体構造に直接的に接触する場合がある。力変換アーム115が第1の構成(つまり、非遠近調節の形)にあるとき、形状変化薄膜145は略平坦である場合がある。そして、力変換アーム115が第2の構成(つまり、遠近調節の形)にあるとき、形状変化薄膜145が外方に撓む場合がある。レンズ体の変形可能部107が圧潰する(collapse)か又はレンズ体105の中央部103の方へ内側に動くように、これは、形状変形薄膜140を押圧する力変換アーム115の接触部137による場合がある。形状変化薄膜145の前面が光軸に沿った外方への湾曲でより球状あるいは凸形状(
図23を参照)になる(take on)まで、変形可能部107の圧潰(collapse)により、密閉チャンバ155内の光学流体がチャンバ155の内側面を押圧する場合がある。
【0065】
図25Aから
図25Gは、本願に提供される記載による遠近調節型の眼内レンズ(「AIOL」)200の相互に関連する実施形態を図示する。本願に係るデバイスの特徴及び構成要素が、相互に関連して、組み合わせで又は代案で使用されることは認識されるべきである。それらの前の記載が次の実施形態に当てはまらないことを意味すると解釈されるべきでないが、簡潔さのために、本願に係るデバイスの様々な実施形態の構成要素に関する記載のうちのいくつかは反復されない。
【0066】
AIOL200は、レンズ体205、支持体210、力変換アーム215及び1つ以上の安定化ハプティック220を含む場合がある。支持体210は、内側の及び/又は外方の支持体210を含むことができる。いくつかの実施形態では、支持体210は、レンズ体205の中央部が連携されている中央の環状領域を有する外方の支持体210である。支持体210は、周辺の側壁を通して、中央の環状領域へ延在するチャネル232又はスロットを含む場合がある(
図25Fに最もよく示されている)。力変換アーム215は、支持体210の1方側でチャネル232を通して延在する場合がある。そして、第2の力変換アーム215は、支持体210の対向側でチャネル232を通して延在する場合がある。力変換アーム215の各々は、毛様体構造の少なくとも一部と接触するように構成された外側の接触部235と、レンズ体205の少なくとも一部と接触するように構成された内側の接触部237とを含む場合がある。接触部235が遠近調節と非遠近調節との間で毛様体構造に対して接触し続けることができるように、それぞれの力変換アーム215の接触部235は、支持体210の外側にとどまる場合がある。それぞれの力変換アーム215の接触部237は、チャネル232内で変換する場合がある。以下に詳細に説明されるように、毛様体構造が、レンズ体205の調節性の形状変化をもたらすために動くとき、力変換アーム215はチャネル232内で自由に前後に動く場合がある。
【0067】
前の実施形態と同様に、支持体210は、シリコーン、ポリウレタン、PMMA、PVDF、PDMS、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリカーボネートなどあるいはそれらの組み合わせを含むがそれらに限定されない剛体のポリマーから形成される。支持体210は、チャネル232による力変換アーム215の動きによって生じた歪みを防ぐように構成される場合がある。支持体210は、
図25Aから
図25Gに示されるように、密閉カプセル255の外側に位置した外方の支持体である場合がある。又は、以下により詳細に説明されるように、支持体210は、
図26Aから
図26F及び
図27Aから
図27Dに示されるように、密閉カプセル255の内側に位置する場合がある。いくつかの実施形態では、1つ以上の安定化ハプティック220は、外方の支持体210に接合される場合がある。他の実施形態では、1つ以上の安定化ハプティック220は、レンズ体205とレンズ体205の密閉チャンバ内にある支持体210との一部に接合される場合がある。他の実施形態では、1つ以上の安定化ハプティック220は、レンズ体205又は外方の支持体210の一部として成型される場合がある。安定化ハプティック220は、上記に詳細に説明されるように、デバイスの光学部品の連携を維持し、かつ、いったん移植されて調節性の形状変化を受けるデバイスの動きに抗するように構成された静的なハプティック(haptics)である場合がある。いくつかの実施形態では、ハプティック220は、毛様体の溝又は水晶体嚢に配置される場合がある。
【0068】
レンズ体205は、形状変形薄膜240、形状変化薄膜245及び静的な要素250(静的なレンズを含む)を含む場合がある。形状変形薄膜240、形状変化薄膜245及び支持体210と結合した静的な要素250は、光学流体をそこに含むように構成される略平坦の密閉チャンバ255を作り出す。形状変形薄膜240は、略リング形の支持体210の内面に結合されたリング形の薄膜である場合がある。形状変化薄膜245の領域は、支持体210の第1表面に結合する場合がある。そして、静的な要素250の領域は、支持体210の第2の反対表面に結合する場合がある。形状変化薄膜245が眼解剖学的構造に対して前方に位置決めされ、及び静的な要素250を眼解剖学的構造に対して後方に位置決めされるように、AIOL200内及び眼内でのレンズ体205の方向が変わることができることは認識されるべきである。同様に、形状変化薄膜245が眼解剖学的構造に対して後方に位置決めされて、静的な要素250が眼解剖学的構造に対して前方に位置決めされる場合がある。
【0069】
静的な要素250は、
図25B及び25Cに最もよく示される。静的な要素250は、他の実施形態において上述されるような、シリコーン、ウレタン又は低弾性率のエラストマーから形成された静的なレンズを含む場合がある。形状変化薄膜245は、光学的に清澄な低弾性率のエラストマー(シリコーン)から形成されたフレキシブルな光学部品(optic)である場合がある。上で詳細に説明されるように増加した内部圧力により相対的に撓みやすい減肉厚部を形状変化薄膜245が有するように、形状変化薄膜245が平面要素又は可変厚さであるように、形状変化薄膜245は一定の厚さを有する場合がある。本願において説明されるように、形状変化薄膜245の構造が変化できることは認識されるべきである。減肉厚部は、外面(例えば前面)の外方への湾曲を生じさせる密閉チャンバ255内の光学流体によって加えられた増加した内部圧力により撓む(give way)ように構成する場合がある。
【0070】
次に、
図25F及び25Gを参照する。支持体210は、力変換アーム215の接触部237が形状変形薄膜240にアクセスできるチャネル232を含む場合がある。例えば、遠近調節の間に、力変換アーム215は、1つ以上の毛様体構造によって光軸Aの方に促される場合がある。毛様体構造の内側/前部の動きは、力変換アーム215を光軸Aの方へチャネル232を通して内側に動かす接触部235によって利用される。力変換アーム215の接触部237は、形状変形薄膜240と接触して、形状変形薄膜240を形状変化薄膜245に対して運動させる場合がある。この動きは、圧縮、圧入、引き伸ばし、変形、又は大略光軸Aに向けての他のタイプの動きである場合がある。形状変形薄膜240のこの動きは、光学ゾーン201でのより球状又は凸形状への形状変化薄膜245の撓みを生じさせ、それによって、以下に詳細に説明されるようにストレスを課すこと無く又は光学ゾーン上で押し潰すこと無く近見合焦のためのレンズの屈折力を増大させる場合がある。
【0071】
上述のように、レンズ体205の密閉チャンバ255は、清澄で生体適合性の光学流体である光学流体で満たされる。光学流体は、可視スペクトルにおいて清澄で透明な非圧縮性の液体又はゲルである場合がある。当該液体又はゲルは、例えば、シリコーン流体及びゲル、官能化シリコーン流体及びゲル(例えばハロゲン(つまりフッ化シリコーン、芳香薬(つまりフェニル基を含む官能化シリコーンなど)))、炭化水素及び官能化炭化水素(長連鎖炭化水素)、ハロゲン化炭化水素、フッ化及び部分的なフッ化炭化水素、水のシステム、流体とゲルの両方である。その屈折率(RI)が、水溶性の又は水膨潤性のポリマー、バイオポリマー膨潤性の添加物(セルローズ)、及び屈折率を増加させるためにナノストラクチャーを形成する有機又は無機の添加物の添加により増大する。いくつかの実施形態では、密閉チャンバ255内の光学流体は、1.37よりも大きな屈折率を有する。他の実施形態では、密閉チャンバ255内の光学流体は、1.37から1.57の屈折率を有する。他の実施形態では、密閉チャンバ255内の光学流体は、1.37から1.60の屈折率を有する。
【0072】
密閉チャンバ255内の光学流体は、形状変形薄膜240の動きで形状変化薄膜245の撓みを生じさせる場合がある。形状変形薄膜240の内方への動きは、一定体積の密閉チャンバ255内に含まれる非圧縮性の光学流体が、形状変化薄膜245の内面を含む密閉チャンバ255の表面を押圧することに帰着する場合がある。形状変化薄膜245が力の印加で外方に撓むように構成された中央部の近くの領域を有するので、形状変化薄膜245の内壁に対する光学流体の圧力は、外方への湾曲と、形状変化薄膜245の外面の変形とに帰着する。
図25Dと
図25Eとは、それぞれ、弛緩して遠近調節されていない(非遠近調節)状態と、作動して遠近調節された状態とにあるデバイスの部分断面図である。光軸Aの内にあるいは光軸Aと平行に囲繞する光学ゾーン部分は、AIOL200の屈折力を高めるさらなる凸面形状になる。本願において説明されるように、レンズ体205の或る部分から別の部分まで流体が実際に流れることなく、形状変化薄膜245のこの形状変化が生じる場合があることは認識されるべきである。もっと正確に言えば、対応する一定体積の非圧縮性の光学流体で満たされた一定体積を有する密閉チャンバ255の或る領域の圧縮は、形状変化薄膜245によって形成された密閉チャンバ255の別領域の反作用の形状変化に至らせる(drive)。
【0073】
AIOL200は、支持体210にチャネル232を通して延在するように構成された力変換アーム215を含む場合がある。上述されるように、力変換アーム215は、一側のチャネル232を通して延在する場合がある。そして、第2の力変換アーム215は反対側のチャネル232を通して延在する場合がある。しかしながら、本願に係るデバイスが2つ以上の力変換アーム215を含む場合があることは認識されるべきである。例えば、本願に係るデバイスは、デバイスを中心にして均等に配置された3つの、4つの又はそれ以上の力変換アーム215を含む場合がある。いくつかの実施形態では、力変換アーム215は、剛体であるポリマー(シリコーン、ポリウレタン、PMMA、PVDF、PDMS、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリカーボネートなど又はその組み合わせ)である場合がある。例えば、力変換アーム215は、第2の材料(PMMA)で強化された第1の材料からなる要素である場合がある。
【0074】
いくつかの実施形態では、力変換アーム215の各々は、本願において説明されるような様々な形のいずれかを有する、外方の接触部235と内方の接触部237とを含む場合がある。接触部235は、遠近調節と非遠近調節との間で光学部品の形状変化に至らせるために毛様体、毛様体突起、毛様体筋、小帯又はその組み合わせを含むがそれらに限定されない、1つ以上の毛様体構造に対して、接するか、接触するか、係合するか、機能的に結合するかあるいは密接に関連しているように構成される場合がある。接触部235が遠近調節と非遠近調節との間で毛様体構造に対して接触を続けることができるように、それぞれの力変換アーム215の接触部235は、支持体210の外側にとどまることができる。いくつかの実施形態では、接触部235は、接触部235が関連する(associate)眼の領域の湾曲した輪郭と一致できる、湾曲した輪郭を有する外面を有する場合がある。いくつかの実施形態では、接触部235は、例えば毛様体突起又は小帯の突起との接触及び相互嵌合を改善するために、圧入、溝、歯、櫛又は他の表面特徴を有する場合がある。接触部235の外面は、上の及び/又は下のエッジで先の尖っているか又は面取りされているエッジを有する場合がある。
【0075】
接触部237は、接触部235に結合される場合がある。いくつかの実施形態では、接触部237は、接触部235の内面に結合された及び/又は接触部235の内面から外に延在する長尺要素である場合がある(例えば、
図25D及び
図25Eを参照)。接触部237は、力変換アーム215の少なくとも一部がチャネル232内で変換できるように、チャネル232内に位置決めされるように形作られる場合がある。接触部237は上述されるように形状変形薄膜240に対して接する場合がある。例えば、毛様体筋18が遠近調節の間に収縮するとき、毛様体筋18は光軸Aの方へ収縮する。力変換アーム215がチャネル232内で動き、接触部237が、レンズ体205の形状変形薄膜240を押圧し、接触部237が、形状変化薄膜245に対する形状変形薄膜240の動きを生じさせ、それによって、上述のように形状変化薄膜245の遠近調節の形状変化に至らせるように、毛様体構造は、接触部235の外面と接触する場合がある。形状変形薄膜240は、レンズ体の光学ゾーンの内側又は外側に位置する場合がある。
【0076】
図26Aから
図26Fは、以下に詳細に説明される内方の支持体312を有する遠近調節型の眼内レンズ(「AIOL」)300の相互に関連する実施形態を図示する。本願に係るデバイスの特徴及び構成要素が、相互に関連して、組み合わせ又は代案で使用されることは認識されるべきである。それらの前の記載が次の実施形態に当てはまらないことを意味すると解釈されるべきでないが、簡潔さのために、本願に係るデバイスの様々な実施形態の構成要素に関する記載のうちのいくつかは反復されない。
【0077】
AIOL300は、レンズ体305、支持体310及び力変換アーム315を含む場合がある。支持体310は、内方の及び/又は外方の支持体310を含む場合がある。いくつかの実施形態では、AIOL300は、付加的な外方の支持体なしでレンズを支持するのに十分な内方の支持体だけを有する。レンズ体305は、支持体310の中央部内に位置決めされ、支持体310の中央部に結合される場合がある。レンズ体305の前面は、支持体310の前部の開口を通して露出する場合がある。そして、レンズ体305の後面は、支持体310の後部の開口を通して露出する場合がある。AIOL300内及び眼内のレンズ体305の構成要素の方向が変化でき、「前部の」及び「後部の」という用語の使用は、限定することを意図していないことは認識されるべきである。
【0078】
支持体310は、力変換アーム315が延在できる側壁にチャネル332又はスロットを含む場合がある。毛様体構造がレンズ体305の調節性の形状変化をもたらすために動くとき、力変換アーム315はチャネル332内で自由に前後に動くことができる。例えば、第1の力変換アーム315は、支持体310の一側で第1のチャネル332を通して延在する場合がある。そして、第2の力変換アーム315は、支持体310の反対側で第2のチャネル332を通して延在する場合がある。力変換アーム315の各々は、毛様体構造の少なくとも一部と接触するように構成された外側の接触部335と、チャネル332内で変換されてレンズ体305と接触するように構成された内側の接触部337とを含む場合がある。接触部335が遠近調節と非遠近調節との間で毛様体構造に対して接触を続けることができるように、それぞれの力変換アーム315の接触部335が支持体310の外側にとどまる場合がある。
【0079】
支持体310は、力変換アーム315の不用意な動き(例えば、力変換アーム315の内側/外側の動きに直交する方向)を防ぐとともに力変換アーム315の動きによって生じた歪みを防ぐように構成された材料から形成される場合がある。いくつかの実施形態では、1つ以上の安定化ハプティック320が、支持体310に接合される場合がある。他の実施形態では、1つ以上の安定化ハプティック320は、レンズ体305及びレンズ体305の密閉チャンバ内にある支持体310の一部に接合される場合がある。他の実施形態では、1つ以上の安定化ハプティック320は、レンズ体305又は外方の支持体310の一部として成型される場合がある。安定化ハプティック320は、デバイスの光学部品の連携を維持して、かつ、いったん移植され、上で詳細に説明されるように調節性の形状変化を受けているAIOL300の動き(例えば垂直の動き)に抗するように構成された静的なハプティックである場合がある。いくつかの実施形態では、1つ以上のハプティック320は毛様体の溝及び/又は水晶体嚢に配置される場合がある。
【0080】
レンズ体305は、形状変形薄膜340と、形状変化薄膜345と、密閉チャンバ355を有する略平坦のレンズ体305に一緒に密閉された静的な要素350(あるいは静的なレンズ)とを含む場合がある。密閉チャンバ355は、その中に光学流体(例えばフルオロシリコーンオイル、本願において説明される他の光学流体)を含むように構成される。形状変形薄膜340は、形状変化薄膜345の周囲に又は形状変化薄膜345の直径を規定する前方の支持体に対して第1表面(例えば前面)で結合されたリング形のシリコーン構造(例えばPDMS)である場合がある。形状変形薄膜340は、静的な要素350の周囲に対して反対の表面(例えば後面)で結合される場合がある。支持体310と同様にそれら自身の間での様々な構成のいずれにおいてもレンズ体の構成要素が結合されることは認識されるべきである。形状変形薄膜340の外壁は、力変換アーム315が動くとき、領域が同様に動くように、力変換アーム315と係合するように構成された領域を有する場合がある。形状変形薄膜340の動きは、以下に詳細に説明されるように遠近調節及び非遠近調節を生じさせる密閉チャンバ355の形状を変化させる。いくつかの実施形態では、形状変形薄膜340は、第1の力変換アーム315と係合する外壁上の第1の領域と、第2の力変換アーム315と係合する外壁上の第2の領域とを有する場合がある。形状変形薄膜340の外壁上にある第1の領域及び第2の領域の各々は、力変換アーム315上にある対応する特徴338と係合するように構成された表面特徴341を含む場合がある(
図26Cに最もよく示されている)。
【0081】
支持体310は、デバイスの可動部の不用意な動きを防ぐために、形状変形薄膜340よりも硬質の材料(あるいは複数の材料)から形成される場合がある。AIOL300は、別法として又は追加的に、レンズ体305の密閉チャンバ355内に配置された1つ以上のリブ又は内方の支持体312を含む場合がある。内方の支持体312は、AIOL300の可動部が動いている間に光学歪みからレンズの光学部品を機械的に分離するために働く場合がある。いくつかの実施形態では、1つ以上の内方の支持体312は、前後の支持体を接続する。いくつかの実施形態では、内方の支持体312の第1表面は、形状変化薄膜345の周辺領域(
図26B及び
図26Cに最もよく示されている)又は形状変化薄膜345の直径を規定する前方の支持体に結合される場合がある。いくつかの実施形態では、内方の支持体312は、形状変化薄膜345の周辺領域に対して第1表面で結合され、静的な要素350の周辺領域に対して第2の反対表面で結合されるように、内方の支持体312は静的な要素350(あるいは静的なレンズ)に追加的に結合される(
図27Aから
図27Dを参照)。いずれかの実施形態(つまり、前後の表面の1方又は両方に結合される)では、内方の支持体312は、光学流体が含まれる変形可能領域307及び中央部303に密閉チャンバ355を分割するように、内方の支持体312の少なくとも一部は、形状変形薄膜340から離間している。内方の支持体312がちょうど形状変化薄膜345に結合される場合、チャネル342は、密閉チャンバ355の変形可能領域307と中央部303との間での流体連通を可能にする内方の支持体312の下に延在する場合がある(
図26Bに最もよく示されている)。内方の支持体312が形状変化薄膜345及び静的な要素350の両方に結合される場合、密閉チャンバ355の変形可能領域307と中央部303との間での流体連通を可能にするために、1つ以上のチャネル342は、内方の支持体312それ自体を通して延在する場合がある(
図27Bに最もよく示されている)。1つ以上のチャネル342は、外壁の領域から内方の支持体312の内壁の領域を貫通して延在する円筒穴を含む場合がある。チャネル342が様々な形及びサイズのいずれかを有する場合があることは認識されるべきである。別法として、複数の内方の支持体312は、密閉チャンバの変形可能領域307と中央部303との間での密閉チャンバ355内の流体連通のためのそれらの間の1つ以上のチャネル342を形成する、互いから離間した密閉チャンバ355内に含まれる場合がある。本願において説明されるAIOLは、密閉チャンバ355内で1つの、2つの、3つの、4つの又は5つ以上の内方の支持体312を組み込む場合がある。
【0082】
遠近調節の間に、毛様体構造の内方/前方の動きは、力変換アーム315を光軸Aに向けて内側に動かす力変換アーム315の接触部335によって利用される場合がある。力変換アーム315の内方への動きは、形状変形薄膜340が、例えば光軸に向けて、形状変化薄膜345に対する動き又は変形を行うように促す。光軸への形状変形薄膜340の変形可能領域307の内方への動き、圧潰、圧縮又は変形により、一定体積の密閉チャンバ355内に含まれた非圧縮性の光学流体が、形状変化薄膜345の内面を含む密閉チャンバ355の表面を押圧する。形状変化薄膜345は、力の印加で外方に撓むか又は屈曲して光学ゾーンでのより球状又は凸形状になるように構成された光軸を囲繞し、それによってストレスを課さずに光学ゾーンでの押し潰し(squeezing)無しで近見合焦用のレンズの屈折力を増大させる領域を有する場合がある。形状変化薄膜345に対する光学流体の圧力は、外面を作り変える。レンズ体305の或る部分から別の部分への流体の流れ無しでこの形状変化が生じる場合があることは認識されるべきである。もっと正確に言えば、非圧縮性の光学流体で満たされた一定体積の密閉チャンバ355(及び変形可能領域307)の圧縮は、薄膜345の形状変化に至らせる。形状変形薄膜340(及び変形可能領域307)の変形が、光学ゾーン内部で生じるように、密閉チャンバ355の変形可能領域307及び中央部303は、両方とも光学ゾーン内にある場合がある。別法として、形状変形薄膜340(及び変形可能領域307)の変形が、光学ゾーンの外側で生じるように、変形可能領域307は光学ゾーンの外側に位置する場合がある。
【0083】
支持体312が形状変形薄膜340のようなレンズの可動部と接触しないように、内方の支持体312は先細りの形状を有する場合がある。例えば、
図26Cに示されるように、支持体312は、支持体312が形状変化薄膜345と結合する場所の近くでより大きな寸法と、形状変形薄膜340が遠近調節の間に最大限に変形する場所の近くで支持体312がより小さな寸法を有するように、形状変化薄膜345から離れて先細りになる外壁を有する場合がある。
図27Dに示されるような別の実施例では、支持体312が形状変化薄膜345及び静的な要素350とそれぞれ結合するところで、支持体312は、AIOL300の前側端及び後側端の両方で、中心領域の方へ先細りになるより大きな寸法を有する場合がある。この実施形態では、支持体312は先細りのスプール形状を形成する。
【0084】
本願に係るデバイスの構成要素の寸法は変化できる。デバイスは約4mm未満である切開を通じて移植されるように構成される場合がある。いくつかの実施形態では、デバイスの全体直径は、変化できるが、およそ8mmである。例えば、フレキシブルであるか折り曲げられる安定化ハプティックを有するデバイスは、安定化ハプティックの展開又は拡張に従って移植後にそれが達成する直径よりも小さな第1の直径を移植の間に有する場合がある。いくつかの実施形態では、外方の支持体がデバイスの移植の間に湾曲できるように、外方の支持体は可撓性材料から形成される場合がある。いくつかの実施形態では、レンズ体の中央の光学ゾーン部分は、約2.5mm、約3.0mm、約3.5mm、約4.0mm、約4.5mm、約5.0mm、約5.5mm、約6.0mm、約6.5mm以上の直径である直径を有する場合がある。いくつかの実施形態では、遠近調節型の直径、あるいは形状変化を受ける中央の光学ゾーンの領域は、3.0mm以上である。
【0085】
上述されるように、レンズ体の変形可能領域は、形状変化薄膜への力の印加度合いでレンズ体の中央部に対して動くか又は圧潰する(collapse)場合がある。遠近調節をもたらすためにレンズ体の形状変化薄膜の動きを達成するために印加される力は、約0.1グラムの力(gf)くらいである場合がある。いくつかの実施形態では、印加される力が、約0.1gfから約5.0gfの間、約0.5gfから約1.5gfの間、又は約1.0gfから約1.5gfの間である場合がある。遠近調節を達成するために印加される力に応じた、レンズ体の中央部に対するレンズ体の変形可能領域の動きは、約50μmくらいである場合がある。印加された力に応じた、レンズ体の中央部に対するレンズ体の変形可能領域(すなわち、例えば、中央部103に対する領域107、又は、形状変形薄膜140の中央部180に対する形状変形薄膜140の変形可能部182)の動きは、約50μmから約500μmの間に、約50μmから約150μmの間に、あるいは約100μmから約150μmの間にある場合がある。印加される力のこれらの範囲、及び動きのこれらの範囲の結果は、3Dよりも大きなダイナミックレンジ内にある遠近調節の能力を持った本願に係るデバイスを提供する場合がある。いくつかの実施形態では、屈折力が約100μmから約150μmの動きに対して4Dから6Dの間にある。本願に係るデバイスは、形状変化薄膜の約100μmの動きと、形状変化薄膜に印加された少なくとも0.1gfの力に対して少なくとも3Dである遠近調節範囲を有する場合がある。他の実施形態では、デバイスは、約50μmの動き及び少なくとも約1.0gfの力に対して少なくとも3Dである遠近調節範囲を有する場合がある。
【0086】
本願に開示したデバイスの様々な構成要素の調製の適切な材料又は材料の組み合わせが提供される。他の適切な材料が考えられることは認識されるべきである。米国特許公開第2009/0234449号明細書、米国特許公開第2009/0292355号明細書及び米国特許公開第2012/0253459号明細書(参照によって各々の全体が本願に組み込まれる)は、本願に係るデバイス用のある構成要素を形成するのに適している他の材料のさらなる実施例を提供する。
【0087】
本願において説明される様々なデバイスは、当該技術において既知である様々な外科的方法によって移植される。デバイスの特徴及び構成要素を応じて、デバイスは様々な技術を使用して又は様々な道具を使用して移植される。本願に係るデバイスは、単独で使用される、又は別の眼内レンズ又は患者の自然レンズと結合して使用される。本願において説明されるように、力変換アーム及び/又は安定化ハプティックの相対位置とともにレンズ体の屈折力は、移植に先立って、移植の間に、又は移植後いつでも、調節及び/又は微調整する場合がある。本願に係るデバイスが小さな切開(高々3.5mmである切開)を通じて挿入される場合があることはさらに認識されるべきである。例えばカプセルの前方に及び虹彩の後方に、デバイスが水晶体嚢の外側に位置決めされるように、本願に係るデバイスが移植される場合がある。本願に係るデバイスは、レンズ体の中央部が眼の光軸と連携されるように移植される。力変換アームは、1つ以上の毛様体構造(毛様体又は毛様体筋)に対して位置決めされる場合がある。毛様体構造が、安静時で(resting)遠近調節ではない状態(非遠近調節)にあるときにレンズ体の変形可能領域を含むレンズ体の圧縮を生じさせること無く、力変換アームが毛様体構造と接する(又は接すること無く毛様体構造に非常に密接に関連する)ように、力変換アームは位置決めされる場合がある。しかしながら、毛様体筋の収縮でレンズ体が遠近調節を受けて、毛様体筋の弛緩でレンズ体が非遠近調節を受けて、レンズ体の材料が急速にそれらの安静状態に戻るように、力変換アームは、毛様体構造に対して十分近くに位置決めされる場合がある。力変換アームの相対位置及び長さは、本願において説明される調節のための1つ以上の様々な特徴を使用して、上述された様々な方法によって調節される場合がある。眼内でデバイスをさらに安定させるために、安定化ハプティックは毛様体の溝(あるいは他の領域)内に位置決めされる場合がある。レンズ体の安静時の屈折力(resting power)は、本願において説明される様々な方法及び本願において説明される屈折力調節のための1つ以上の様々な特徴の使用によってさらなる調節及び微調整をさらに受ける場合がある。
【0088】
この明細書が多くの詳細を含んでいるが、これらは、クレームされるもの又はクレームされるかもしれないものの範囲に対する制限として解釈されるのではなく、具体的な実施形態に特有の特徴の記載として解釈されるべきである。別個の実施形態に関連してこの明細書において説明される或る特徴は、単一の実施形態での組み合わせにおいて実施される場合がある。反対に、単一の実施形態に関連して説明される様々な特徴は、多数の実施形態において別々に又はあらゆる適切なサブコンビネーションにおいて実施される場合がある。さらに、或る組み合わせにおいて、及び初めにそういうものとしてクレームされてものにおいて働くような特徴は上述されているが、クレームされた組み合わせからの1つ以上の特徴は、ある場合には組み合わせから削除される場合がある。そして、クレームされた組み合わせは、サブコンビネーション又はサブコンビネーションの変形に関する場合がある。同様に、オペレーションが特別の順に図面に図示されているが、これは、望ましい結果を達成するために、示された特別の順又は連続する順で当該オペレーションが行なわれるか、図示したオペレーションのすべてが行なわれることを要求するものであるとして理解されるべきではない。ほんのいくつかの実施例及び実施形態が開示される。説明される実施例及び実施形態、及び他の実施形態に対する変形例、変更例及び拡張(enhancement)は、開示されたものに基づいてなされることがある。
【0089】
上記の記載及びクレームにおいて、「少なくとも1つの」又は「1つ以上の」のような言い回しが生じることに続いて、要素又は特徴の接続する(conjunctive)リストがあることがある。用語「及び/又は」は、2つ以上の要素又は特徴のリストに生じることがある。それが使用される文脈によって黙示的に又は明示的に矛盾していなければ、言い回しは、リストされた要素又は特徴のいずれかを個々に意味するか、あるいは詳述された要素又は特徴のいずれかと別の詳述された要素又は特徴のいずれかとを組み合わせたものを意味することを意図している。例えば、「A及びBの少なくとも1つ」、「1つ以上のA及びB」、「A及び/又はB」という言い回しは、各々、「A単独、B単独、又は、A及びB」を意味することを意図している。同様の解釈は、3つ以上のアイテムを含むリストを対象にしている(intended for)。例えば、「A、B及びCの少なくとも1つ」、「1つ以上のA、B及びC」、及び、「A、B及び/又はC」という言い回しは、各々、「A単独、B単独、C単独、A及びB、A及びC、B及びC、又は、A及びB及びC」を意味することを意図している。
【0090】
上記において及びクレームにおいて、「に基づいて」という用語の使用は、詳述されていない特徴又は要素が許容可能であるように、「少なくとも部分的に基づいて」を意味することを意図している。
【0091】
優先権書類の相互参照
この出願は、2014年3月28日に出願された同時係属の米国仮出願第61/972,183号及び2014年4月9日に出願された同時係属の米国仮出願第61/977,568号の優先権の利益を要求する。それらの完全開示が、参照によって本願にそれら全体が組み込まれる。