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特許7228326床仕上げ構造およびこれに用いる見切り材
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  • 特許-床仕上げ構造およびこれに用いる見切り材 図1
  • 特許-床仕上げ構造およびこれに用いる見切り材 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】床仕上げ構造およびこれに用いる見切り材
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/00 20060101AFI20230216BHJP
   E04F 17/08 20060101ALI20230216BHJP
   E04F 15/16 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
E04F15/00 S
E04F17/08 B
E04F15/00 D
E04F15/16 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019076612
(22)【出願日】2019-04-12
(65)【公開番号】P2020172827
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000010010
【氏名又は名称】ロンシール工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】富沢 秀行
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-016140(JP,A)
【文献】登録実用新案第3162388(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00-19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水溝を有する床部に敷設される合成樹脂シートからなる床仕上げ材と、
前記床仕上げ材の端部と前記排水溝に隣接して配置される合成樹脂製の見切り材と、を備え、
前記排水溝はその上端内部に溝蓋を載置するための段差が設けられ、前記段差に溝蓋受枠が設置され固定手段により前記段差の立ち上がり部に固定されており、前記見切り材が床部を覆い前記床仕上げ材の端部と接合される接合片と、前記溝蓋受枠に隣接する床部に形成された凹溝に差し込まれる差込片とを有し、前記凹溝が前記固定手段の位置より上側に形成されている床仕上げ構造。
【請求項2】
前記差込片の厚さaに対する前記差込片の差込深さbの比b/aが3.0以上7.0以下である請求項1に記載の床仕上げ構造。
【請求項3】
前記差込片が前記凹溝に接合材により固定されている請求項1または2に記載の床仕上げ構造。
【請求項4】
前記床仕上げ材と前記接合片とが樹脂溶接されている請求項1~3に記載の床仕上げ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
床面に排水溝を有する床仕上げ構造およびこれに用いる見切り材に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室や厨房など、排水溝を有する床部において、仕上げ材として軟質の樹脂シートを使用することがある。仕上げ材に樹脂シートを使用した排水溝を有する床部の床仕上げ構造の具体例としては、次のようなものがある。
排水溝の上部には通常金物の溝蓋(グレーチング)を載置するための段差が設けられ、その段差を覆うように溝蓋受枠が備えられている。排水溝を除く溝蓋受枠の周囲の床部には、樹脂シートである床仕上げ材が接着固定される。ここで、床仕上げ材の端部と溝蓋受枠との間の目地に隙間が生じると、その隙間に水や汚れ、食品ゴミなどが入り込み、床仕上げ材が下地から剥離したり、カビなどが発生したりする恐れがある。これを防ぐため、床仕上げ材の端部と溝蓋受枠との間の目地をコーキング材などで埋めてある。
【0003】
また特許文献1には、従来技術として次のような施工方法が開示されている。
排水溝路が形成された床面上に合成樹脂シートを敷設する場合に、床面を構成するモルタル又はコンクリートの打設によって上部内縁に溝蓋受枠が配設された排水溝路を形成した後、溝蓋受枠の立ち上がり縁の外側側面に接する部分のモルタル又はコンクリートを切削することにより、立ち上がり縁の長手方向に沿う所定深さの凹溝を形成する。然る後、凹溝内全体に接着剤を塗布し、合成樹脂シートと同一素材で形成した合成樹脂製L形アングルの一片縁を凹溝内に装入し、凹溝内に固定して該L形アングルの他片縁の端縁を排水溝の外側方向に突出させる一方、床面上に敷設される合成樹脂シートの端縁と、L形アングルの他片縁の端縁とを突き合せた状態で、床面上にあらかじめ塗布された接着剤によって合成樹脂シートの裏面及びL形アングルの他片縁の裏面を床面に接着する。そして合成樹脂シートの端縁と、L形アングルの他片縁の端縁との突き合せ部を樹脂溶接手段により水密状に溶着する。このような施工方法により得られる床仕上げ構造は、床仕上げ材(合成樹脂シート)と排水溝の溝蓋受枠との間に見切り材を介在させ、見切り材と床仕上げ材の端部とを樹脂溶接することで水密な状態としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-16140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前者の床仕上げ構造においては、床仕上げ材の端部断面と受枠との間のわずかな隙間にコーキング材を充填しているため、床仕上げ材の上を繰り返し歩行またはキャスター走行することによりコーキング材充填部へかかる負荷および経時による弾性シール材の劣化のため生じた亀裂から水や汚れ等が侵入してしまう恐れがあり、耐久性が充分でなかった。また後者の床仕上げ構造においては、溝蓋受枠の立ち上がり縁の外側側面に接する部分のモルタル又はコンクリートを切削して凹溝を成形するため、溝蓋受枠をモルタル又はコンクリートに固定するために段差壁面に打ち込まれたビスやアンカーなどが障害となる場合があった。
【0006】
本発明は上記問題を解決するものであり、排水溝を有する床部において耐久性及び施工性に優れた床仕上げ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の課題を解決するために本発明が用いた手段は、排水溝を有する床部に敷設される合成樹脂シートからなる床仕上げ材と、前記床仕上げ材の端部と前記排水溝に隣接して配置される合成樹脂製の見切り材と、を備え、前記排水溝はその上端内部に溝蓋を載置するための段差が設けられ、前記段差に溝蓋受枠が設置され固定手段により前記段差の立ち上がり部に固定されており、前記見切り材が床部を覆い前記床仕上げ材の端部と接合される接合片と、前記溝蓋受枠に隣接する床部に形成された凹溝に差し込まれる差込片とを有し、前記凹溝が前記固定手段の位置より上側に形成されている床仕上げ構造である。
【0008】
さらには、上記床仕上げ構造において前記差込片の厚さaに対する前記差込片の差込深さbの比b/aが3.0以上7.0以下としたことであり、前記差込片が前記凹溝に弾性シール材により固定されていることであり、前記床仕上げ材と前記接合片とが樹脂溶接されていることである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、床仕上げ材端部からの水の侵入による剥離を生じることなく、耐久性及び施工性に優れた床仕上げ構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る床仕上げ構造の断面図である。
図2図1の床仕上げ材構造に用いた見切り材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図1,2を用いて説明するが、本実施形態に限定されるものではない。
【0012】
図1は本発明の一実施形態である床仕上げ構造の一部の断面を示すものである。床仕上げ構造1は、排水溝2を備える床部3の上に合成樹脂シートからなる床仕上げ材4が敷設されている。排水溝2の上端内側には溝蓋を載置するための段差6が設けられており、段差6の上に沿うようにして金属製の溝蓋受枠7が配置され、固定手段8により段差6の立ち上がり部6-1に固定されている。
【0013】
溝蓋受枠7に隣接する床部には、凹溝9が成形されている。凹溝9は溝蓋受枠7を段差6の立ち上がり部6-1に固定している固定手段8よりも上部に位置する。凹溝9はほぼ一定の深さで溝蓋受枠の周囲の床部に成形される。凹溝9が固定手段8よりも上部に位置するため、溝蓋受枠7を段差6の立ち上がり部6-1に固定した後に溝蓋受枠7の立ち上がり縁の外側側面に接する部分の床部3を切削して凹溝9を成形する際に、固定手段8が障害となることなく容易に成形可能となる。
【0014】
図1において、凹溝9と床仕上げ材4の間には見切り材5が配置されている。見切り材5は床仕上げ材4の端部と接合される接合片5-1と、凹溝9の内部に差し込まれる差込片5-2とを有した、断面が略L字形状の合成樹脂製のアングル材である。見切り材5と溝蓋受枠7との間に生じた目地には、接合材10が充填されており、接合材10は凹溝9の内部にも充填され、差込片5-2は凹溝9の内部に固定された状態となっている。また、床仕上げ材4および見切り材5の接合片5-1は、接着剤(図示なし)で床部3に固定されており、床仕上げ材4の端部と見切り材5の接合片5-1の端部とは合成樹脂製の溶接棒11により接合されている。
床仕上げ構造1においては、床部3及び床部3に成形された凹溝9に見切り材5が固定されており、見切り材5と床仕上げ材4および見切り材5と溝蓋受枠7との目地部分も水密に処理されているため、耐久性に優れた床仕上げ構造となっている。
【0015】
本発明の床仕上げ構造に使用される合成樹脂シートからなる床仕上げ材4としては、特に制限はないが、ポリ塩化ビニル樹脂などのビニル系樹脂シート、熱可塑性エラストマーなどのポリオレフィン系樹脂シート、ゴム系シートなどが挙げられる。中でも、施工性や耐久性からビニル系樹脂シートが好ましい。床仕上げ材4の厚さは特に制限はないが、通常1mm~5mm程度の厚さのものが使用される。
【0016】
見切り材5は、床仕上げ材4と同種の合成樹脂からなるものが好ましい。例えば、床仕上げ材4がビニル系樹脂シートの場合には、見切り材5もビニル系樹脂製のものを使用することが好ましい。
【0017】
図2は見切り材5の斜視図を示したものであるが、接合片5-1と差込片5-2とはコーナー部5-3を介して連続しており、接合片5-1と差込片5-2はおよそ垂直の関係にある。接合片5-1は床部3の上に接着固定され、その端部と床仕上げ材4の端部とが接合される。そのため接合片5-1の厚さは床仕上げ材4の厚さと同じであることが好ましい。
差込片5-2の差込深さbは凹溝9の深さと同等かそれよりも小さいものが好ましい。差込深さbは5mm~15mm程度が好ましい。差込片5-2の厚さaは差込深さに応じて適宜設定されることが好ましい。差込片の厚さaに対する前記差込片の差込深さbの比b/aが3.0以上7.0以下であることが好ましい。3.0未満であると、差込片5-2の凹溝9との接合強度が充分に得られず耐久性に劣る恐れがあり、7.0を超えると凹溝9内に差込片5-2が収まらない可能性がある。
【0018】
また、見切り材5の接合片5-1と差込片5-2とは、相互に兼ねるものとすることができる。例えば、二つの異なる厚さの床仕上げ材4´、4´´に対応できるよう、接合片5-1の厚さを床仕上げ材4´と、差込片5-2の厚さを床仕上げ材4´´と、それぞれの床仕上げ材4の厚さと同じにしておくことで、見切り材5はいずれの床仕上げ材にも対応することが可能となる。この場合、接合片5-1の幅cは差込片5-2の差込深さbと同じであることが好ましい。
【0019】
図1の床部3はモルタル又はコンクリートからなり、凹溝9は床部3をダイヤモンドカッターなどにより切削することにより成形される。凹溝9は溝蓋受枠7の周囲を囲うように成形される。凹溝9は深さが5mm~15mm程度が好ましく、幅が3mm~7mm程度が好ましい。凹溝9内に見切り材5の差込片5-2を差し込んだ際に適度な隙間を有することで、凹溝9内にシーリング材などの接合材10を充填しやすくなり、また凹溝9内に接合材10を充填した後に見切り材5の差込片5-2を差し込んだ場合に接合材10が凹溝9の内面と差込片5-2との間に充分に行き渡ることができる。
【0020】
凹溝9の内部及び見切り材5と溝蓋受枠7との間に生じた目地に充填される接合材10としては、床仕上げ材4や見切り材5の接合片5-1を床部3に固定する接着剤と同様のものを使用してもよく、また別途シーリング材やコーキング材といった弾性シール材を使用してもよい。施工後にも適度な弾性を有する弾性シール材は、歩行などにより目地部に外力が加えられた際、応力を緩和することができ、また硬化時の収縮ひずみが少なく見切り材5または溝蓋受枠7との境界部に隙間が生じにくいため好ましい。具体的には、硬化後の接合材10が、JIS K7215に準拠して測定したショア硬度でHAD40~HAD80の範囲であるものが好ましく、HAD50~HAD70の範囲であるものがより好ましい。なお、接着剤は通常HADが90以上(HDDが20以上)である。接着剤としてはアクリル樹脂系、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系などが使用でき、弾性シール材としてはアクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、アクリルウレタン系、シリコーン系、変性シリコーン系などが使用できる。また接合材10は、凹溝9の内部にも塗布または充填して見切り材5の差込片5-2を凹溝9の内部に固定することができる。
【0021】
床仕上げ材4の端部と見切り材5の接合片5-1の端部とは、合成樹脂製の溶接棒11により樹脂溶接されていることが好ましい。溶接棒11は床仕上げ材4および見切り材5と同様の材質のものが好ましく、ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ゴム系などのものが挙げられる。溶接棒11を用いた溶接方法は、通常シートの端部同士の突き合せ部分に切り欠き溝を設け、そこに溶接機で溶接棒を加熱しながら溶接した後、溶接棒の余分な部分をカットして取り除くというものである。また溶接棒以外にも、シーム液を用いて床仕上げ材4の端部と見切り材5の接合片5-1の端部とを溶着することもできる。溶接棒11による樹脂溶接の方がより高い水密性を得ることができる。
【0022】
溝蓋受枠7を段差6の立ち上がり部6-1に固定している固定手段8は、図1のようなビスやボルトであったり、排水溝2を有する床部3をモルタルやコンクリートを流して形成する際に埋め込まれたアンカーであってもよい。
【0023】
続いて本発明の床仕上げ構造の施工方法について説明する。
排水溝の上部内側に形成された段差に載置された溝蓋受枠の周囲を囲うように、ダイヤモンドカッター等を用いてモルタル又はコンクリートからなる床部に凹溝を成形する。この際、段差の壁部に溝蓋受枠を固定するために埋め込まれている固定手段よりも上部に凹溝が配置されるように、およそ一定の深さで凹溝を成形する。具体例を挙げると、差込片の厚さaが2mm、差込深さbが10mmの見切り材を使用する場合、深さ15mm、幅5mmの凹溝を溝蓋受枠の周囲に形成する。凹溝内に接合材を塗布し、床部に接着剤を塗布した後、あらかじめ排水溝に合わせてカットしておいた見切り材の差込片を凹溝に差し込んだ状態で見切り材の接合片を床部に接着する。見切り材のコーナー部と溝蓋受枠との目地にも接合材を隙間なく充填する。周囲の床部に床仕上げ材を敷設して接着し、見切り材の接合片と床仕上げ材の端部とを接合する。
【0024】
見切り材の接合片と床仕上げ材の端部との接合方法としては、図1のような床仕上げ構造においては、まず見切り材5の接合片5-1と重なる部分の床仕上げ材4をカットして、見切り材5の接合片5-1の端部と床仕上げ材4の端部4-1とが突き合わされた状態とする。突き合わされた見切り材5の接合片5-1の端部と床仕上げ材4の端部4-1との継目部分の表面に専用の工具で溝堀りをする。溶接棒11を熱風溶接機で加熱しながら溝部分に溶接していく。溶接後、床仕上げ材4と見切り材5の表面より突出した部分の溶接棒11をカットし、床仕上げ材4及び見切り材5と段差のないように仕上げる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明によれば、排水溝を有する床部において、耐久性及び施工性に優れた床仕上げ構造を提供することが可能となり、厨房や浴室などの床仕上げ構造として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 床仕上げ構造
2 排水溝
3 床部
4 床仕上げ材
4-1 端部
5 見切り材
5-1 接合片
5-2 差込片
5-3 コーナー部
6 段差
6-1 立ち上がり部
6-2 底部
7 溝蓋受枠
8 固定手段
9 凹溝
10 接合材
11 溶接棒
図1
図2