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  • 特許-梁床構造 図1
  • 特許-梁床構造 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】梁床構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/02 20060101AFI20230216BHJP
   E04B 5/38 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
E04B5/02 T
E04B5/38 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018093768
(22)【出願日】2018-05-15
(65)【公開番号】P2019199714
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-04-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】門脇 秀宜
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-024349(JP,A)
【文献】特開平11-350607(JP,A)
【文献】特開昭61-098843(JP,A)
【文献】特開2000-248678(JP,A)
【文献】特開昭55-009974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 5/00-5/02,5/38-5/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁と、
前記梁の上部に設けられたハーフPC床版と、
前記ハーフPC床版の上側に打設されたトッピングコンクリートと、を有する梁床構造において、
前記ハーフPC床版の上側に互いに平行となるように載置され、前記トッピングコンクリートに埋設された複数の形鋼を有し、
前記形鋼は、上下に配置されるフランジを備え、前記形鋼の上側フランジの上端面前記トッピングコンクリートの上端面と面一となるように設けられるとともに、前記梁が延びる方向と直交する方向に延びる向きに配置され、長さ方向の中間部が前記梁の直上に配置されていることを特徴とする梁床構造
【請求項2】
前記ハーフPC床版には、前記形鋼の少なくとも下部側が挿入される溝部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の梁床構造
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梁床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物貯蔵庫のような載荷重の大きい(例えば、4.5t/m)床の複層建屋を計画する際に、スパンの制約から床受梁の梁せいを大きくしなければならないことがある。床受け梁の梁せいを大きくすると、階高に影響するとともに、建物全体の建設コストが高くなるという問題がある。これに対し、例えば特許文献1に記載されているような高耐力の合成床版を採用して梁せいを抑えたり、合成床版を一方向版として採用して梁を省略したりする計画が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-226252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
SC構造の合成床版は、優れた性能を期待することができるが、例えば、下端鋼板をすべて現場溶接したり、特殊な製作物を製作したりすることがある。このため、建方精度にばらつきが生じたり、工期が長くなったりして、品質管理、工程管理に労力がかかるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、高耐力を確保できるとともに、品質管理および工程管理を容易に行うことができる梁床構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る梁床構造は、梁と、前記梁の上部に設けられたハーフPC床版と、前記ハーフPC床版の上側に打設されたトッピングコンクリートと、を有する梁床構造において、前記ハーフPC床版の上側に互いに平行となるように載置され、前記トッピングコンクリートに埋設された複数の形鋼を有し、前記形鋼は、上下に配置されるフランジを備え、前記形鋼の上側フランジの上端面前記トッピングコンクリートの上端面と面一となるように設けられるとともに、前記梁が延びる方向と直交する方向に延びる向きに配置され、長さ方向の中間部が前記梁の直上に配置されていることを特徴とすることを特徴とする。
【0007】
本発明では、ハーフPC床版の上側のトッピングコンクリートに複数の形鋼が埋設されていることにより、合成床版を下部側ではハーフPC床版が応力を負担し、上部側では形鋼が応力を負担する高耐力な構造とすることができる。
そして、形鋼は、梁が延びる方向と直交する方向に延びる向きに配置され、長さ方向の中間部が梁の直上に配置されていることにより、曲げモーメントが最大となる梁の上側に形鋼の長さ方向の中間部が配置されるため、梁の上側に作用する応力を形鋼が負担することができる。
また、複数の形鋼は、平行に配列されていることにより、合成床版が一方向版となり、形鋼が延びる方向の梁を省略することができる。
また、形鋼は、ハーフPC床版の上部に載置された構成であるため、形鋼とハーフPC床版とを接合するための溶接やボルト接合が不要となり、品質管理および工程管理を容易に行うことができる。
【0008】
また、本発明に係る梁床構造では、前記ハーフPC床版の上部には、前記形鋼の少なくとも下部側が挿入される溝部が形成されていてもよい。
このような構成とすることにより、ハーフPC床版に対する形鋼の位置決めを容易に行うことができるため、品質管理および工程管理を容易に行うことができる。
また、ハーフPC床版の上面が平坦面である場合と比べて、ハーフPC床版とトッピングコンクリートとの定着面を大きくすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高耐力を確保できるとともに、品質管理および工程管理を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態による合成床版および梁床構造の一例を示す図で桁間方向に沿った鉛直面による断面図である。
図2図1のA-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態による合成床版および梁床構造について、図1および2に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態による合成床版1は、構造物11の鉄骨梁(梁)12の上側に設けられている。
鉄骨梁12は、構造物11の梁間方向(図1の紙面に直交する方向)に延びる向きで、構造物11の桁行方向(図1の左右方向)に間隔をあけて複数設けられている。
【0014】
図1および図2に示すように、合成床版1は、鉄骨梁12の上側に設けられたハーフPC床版2と、ハーフPC床版2の上側に打設されたトッピングコンクリート3と、ハーフPC床版2の上側に載置され、トッピングコンクリート3に埋設された複数の形鋼4と、を有している。
【0015】
ハーフPC床版2は、プレキャストプレストレスト床版でPS鋼線21によってプレストレスが導入されている。PS鋼線21は、桁行方向に延びる向きに配置されている。
ハーフPC床版2は、構造物11の桁行方向および梁間方向に複数配列され、それぞれ桁行方向に隣り合う鉄骨梁12の間に架けられている。ハーフPC床版2は、桁行方向の一方側の端部2aが桁行方向に隣り合う鉄骨梁12のうちの桁行方向の一方側の鉄骨梁12の上部に接合され、桁行方向の他方側の端部2bが桁行方向に隣り合う鉄骨梁12のうちの桁行方向の他方側の鉄骨梁12の上部に接合されている。
ハーフPC床版2の下面は、平坦面に形成されている。ハーフPC床版2の上面は、桁行方向に延びて上側に開口する溝部22が梁間方向に間隔をあけて複数形成されている。溝部22には、形鋼4の下部側が挿入されるように構成されている。溝部22の幅寸法は、形鋼4の幅寸法よりもやや大きく形成されている。溝部22の底部221は、平坦面に形成されている。
【0016】
形鋼4は、H形鋼4やI形鋼4などで、2つのフランジが上下に配置され、桁行方向に延びる向きに配置されている。形鋼4は、梁間方向に間隔をあけて複数設けられている。
形鋼4は、下部側が溝部22に挿入され、溝部22の底部221に載置されている。形鋼4の底面(下フランジの下面)41と、溝部22の底部221とは面接触している。形鋼4は複数設けられ、それぞれ溝部22の底面に載置されている。
形鋼4は、ハーフPC床版2の上部に載置されているだけで、ハーフPC床版2とは溶接やボルト接合されていない。
形鋼4の長さ寸法は、桁行方向に隣り合う梁の間隔よりも短く設定されている。形鋼4は、長さ方向の中間部4aが鉄骨梁12の直上に配置され、長さ方向の両端部4b,4cが桁行方向に隣り合う鉄骨梁12の間に配置されている。
形鋼4は、桁行方向にも配列されていて、桁行方向に隣り合う形鋼4,4は、桁行方向に対向する端部4b,4cどうしが離間している。桁行方向に隣り合う形鋼4の間の部分は、ハーフPC床版2の桁行方向の中間部2cの上方となり、ハーフPC床版2の桁行方向の中間部2cの上方には、形鋼4が配置されていない。
【0017】
トッピングコンクリート3は、ハーフPC床版2の上部全体に現場にて打設され、上端面が形鋼4の上端面と同じ高さとなるように設けられている。トッピングコンクリート3は、ハーフPC床版2の桁行方向の中間部2cの上方の形鋼4が配置されていない部分にも打設されている。
トッピングコンクリート3は、ひび割れ防止用の鉄筋を設ける程度で、配筋を行わなくてもよい。
【0018】
次に、上述した本実施形態による合成床版および梁床構造の作用・効果について図面を用いて説明する。
上述した本実施形態による合成床版1では、ハーフPC床版2の上側のトッピングコンクリート3に複数の形鋼4が埋設されていることにより、合成床版1を下部側ではハーフPC床版2が応力を負担し、上部側では形鋼4が応力を負担する高耐力な構造とすることができる。
また、複数の形鋼4は、平行に配列されていることにより、合成床版1が一方向版となり、桁行方向に延びる鉄骨梁を省略することができる。これにより、室内の天井高を高く確保することができる。
また、形鋼4は、ハーフPC床版2の上部に載置された構成であるため、形鋼4とハーフPC床版2とを接合するための溶接やボルト接合が不要となり、品質管理および工程管理を容易に行うことができる。
【0019】
また、上述した本実施形態による梁床構造では、形鋼4は、鉄骨梁12が延びる方向と直交する方向に延びる向きに配置され、長さ方向の中間部4aが鉄骨梁12の直上に配置されている。
本実施形態による梁床構造では、上方からの荷重よって生じるモーメントが、上側では鉄骨梁12の鉛直方向上側の領域(内端上端)、下側では桁行方向に隣り合う鉄骨梁12の中間部の鉛直方向上側の領域(中央下端)で最大となる。
本実施形態では、曲げモーメントが最大となる鉄骨梁12の上側に形鋼4の長さ方向の中間部4aが配置されるため、鉄骨梁12の上側に作用する応力を形鋼4が負担することができる。
【0020】
また、ハーフPC床版2の上部には、形鋼4の下部側が挿入される溝部22が形成されていることにより、ハーフPC床版2に対する形鋼4の位置決めを容易に行うことができるため、品質管理および工程管理を容易に行うことができる。ハーフPC床版2の上面が平坦面である場合と比べて、ハーフPC床版2とトッピングコンクリート3との定着面を大きくすることができる。
【0021】
以上、本発明による合成床版および梁床構造の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、ハーフPC床版2の上部には、形鋼4の下部側が挿入される溝部22が形成されているが、溝部22が形成されていなくてもよい。また、ハーフPC床版2の上部に溝部22が形成される場合は、溝部22の形状は適宜設定されてよい。溝部22には、形鋼4の下部側のみでなく上部側も挿入されるように構成されていてもよい。
また、上記の実施形態では、トッピングコンクリート3は、ハーフPC床版2の上部全体に打設され、上端面が形鋼4の上端面と同じ高さとなるように設けられているが、トッピングコンクリート3の上端面が形鋼4の上端面よりも上側となっていてもよい。
また、形鋼4には、トッピングコンクリート3と定着するためのスタッドなどが適宜設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0022】
1 合成床版
2 ハーフPC床版
3 トッピングコンクリート
4 形鋼
4a 中間部
12 鉄骨梁(梁)
22 溝部
図1
図2