(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】速結端子
(51)【国際特許分類】
H01R 4/2404 20180101AFI20230216BHJP
【FI】
H01R4/2404
(21)【出願番号】P 2018165903
(22)【出願日】2018-09-05
【審査請求日】2021-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000115773
【氏名又は名称】リズム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】北嶋 芳一
(72)【発明者】
【氏名】疋田 文彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 義明
【審査官】藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-035771(JP,A)
【文献】実開昭55-151077(JP,U)
【文献】実開昭61-077564(JP,U)
【文献】特開2000-012109(JP,A)
【文献】特開平08-339866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/24- 4/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2本の電線を受容するケースと、
前記ケースに係合するコネクタと、
前記ケースに前記コネクタが係合された状態を維持する係合維持機構と、
前記ケースに係合された前記コネクタの移動を規制するストッパ兼ロック機構と、を備えており、
前記コネクタは、前記ケースに受容されている前記電線に突き
刺さり、前記少なくとも2本の電線のそれぞれを電気的に接続する突き刺し刃を含んでおり、
前記係合維持機構は、前記ケースに係合したコネクタを、前記突き刺し刃が前記電線に突き刺さる前の仮係合状態、及び、前記突き刺し刃が前記電線に突き刺さった本係合状態の少なくとも2段階で維持でき、
前記ストッパ兼ロック機構は、前記ケースに係合した前記コネクタを、前記仮係合状態で一旦止め前記本係合状態の位置に移動しないように留めることができるとともに、前記ケースに係合した前記コネクタが、前記本係合状態のとき、前記仮係合状態の位置に戻ることを規制することができ
、
前記ケースは、前記少なくとも2本の電線をそれぞれ受容し所定位置に案内する少なくとも2個の電線受容溝と、前記電線受容溝が設けられている底壁と、前記底壁の後端縁に設けられた後壁であって、前記電線が挿入される電線挿入口が設けられている後壁と、前記底壁の左側縁に設けられた左側壁と、前記底壁の右側縁に設けられた右側壁と、前記電線挿入口から挿入され前記電線受容溝に受容されている電線を前記底壁に向かって押圧する接触片と、を含んでおり、
前記突き刺し刃は、前記コネクタに少なくとも2個配設され、互いに電気的に接続されており、前記電線受容溝のそれぞれに受容されている前記電線にそれぞれ突き刺さり、前記電線内の芯線と電気的に接触するものであり、
前記係合維持機構は、
前記コネクタに設けられたコネクタ係合片であって、前記コネクタが前記ケースに係合されたときに、前記ケースの前記左側壁及び前記右側壁とそれぞれ対応する位置に位置付けられているコネクタ係合片と、
前記ケースの前記左側壁及び前記右側壁にそれぞれ設けられ、前記コネクタ係合片と係合する側壁係合部と、を含んでおり、
前記コネクタは、前記本係合状態のとき、前記接触片を前記電線が存在する方向へ押し付ける押圧アームを備えている、速結端子。
【請求項2】
前記コネクタ係合片は、一対の脚部と、これら脚部の先端部に架け渡された連結ロック部とを含み、
前記側壁係合部は、前記コネクタ係合片を受け入れる凹溝と、前記凹溝内に設けられた、前記連結ロック部を係止するロック爪とを含み、
前記ロック爪は、第1の位置に設けられた第1ロック爪と、前記第1ロック爪よりも前記底壁側である第2の位置に設けられた第2ロック爪と、を含んでおり、
前記第1の位置は、前記コネクタを前記仮係合状態に維持できる位置であり、
前記第2の位置は、前記コネクタを前記本係合状態に維持できる位置である、請求項
1に記載の速結端子。
【請求項3】
前記ケースと前記コネクタとを連結する可撓性を有する連結帯を更に備えている、請求項1
又は2に記載の速結端子。
【請求項4】
前記連結帯は、ねじ挿通孔を有するねじ止め片であって、透かし孔により輪郭部が形成されているねじ止め片を含んでおり、
前記ねじ止め片は、前記ケースに一体化されているケース連結部と、前記透かし孔を跨いで前記連結帯に架け渡されている架け渡し部であって、切断予定箇所となる架け渡し部とを有している、請求項
3に記載の速結端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、速結端子に関し、詳しくは、電線を迅速に接続する速結端子に関する。
【背景技術】
【0002】
電線は、電気伝導体の材料で形成された芯線と、この芯線を覆う絶縁被覆層とを備えている。このような電線は色々な機器に使われている。当該機器の製造過程、当該機器を使用可能状態とするためのセッティング過程あるいは当該機器の修理過程においては、電線同士を接続する必要が生じる場合がある。電線を接続するには、例えば、電線の絶縁被覆層を剥がして芯線を露出させ、一方の電線の露出した芯線と他方の電線の露出した芯線とを撚って合わせて接続する。場合によっては、撚られた部分に半田付けを行うこともある。その後、この撚られた部分を絶縁性のテープなどで保護して絶縁性を確保しなければならない。このようにして電線同士が接続されるが、非常に手間がかかる。
【0003】
そこで、電線同士の接続をより容易にするために、電線を差し込み操作するだけで接続操作が完了する速結端子(特許文献1等参照)を利用することが知られている。
【0004】
従来の速結端子は、例えば、電線を挿入する電線挿入口が複数設けられているケースと、各電線挿入口の内部に配設された端子板と、各端子板を連結する連結板と、電線挿入口から挿入された電線を端子板に圧接して接続させる圧接ばねと、を備えている。
【0005】
このような速結端子によれば、一方の電線挿入口に電線を差し込むと、芯線が圧接ばねにより端子板に押し付けられる。また、他方の電線挿入口に電線を差し込むと、芯線が圧接ばねにより端子板に押し付けられる。各端子板は、連結板により連結されているので、それぞれの電線は、連結板を介して電気的に接続される。つまり、電線を電線挿入口に差し込むだけで、電線の接続が完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の速結端子を用いる場合、電線挿入口に挿入する電線については、前処理として、所定範囲の絶縁被覆層を剥がす作業が必要である。つまり、芯線を露出させておく必要がある。しかも、絶縁被覆層を剥がす範囲は、適切な長さの範囲に調整する必要がある。つまり、絶縁被覆層を剥がす範囲が、長すぎると芯線が露出した部分がケースの外側にまで出てしまい、短絡のおそれがあり、短すぎると絶縁被覆層が端子板と芯線との接続を邪魔して良好な接続状態が得られないおそれがあるからである。このように、速結端子を用いる場合であっても、前処理に手間がかかり、作業時間が比較的長くなる。また、絶縁被覆層を剥がすと、剥がされた絶縁被覆層の破片がゴミとして発生し、当該ゴミの処理が必要となる。
【0008】
本発明は、上記の事情に基づいてなされたものであり、その目的とするところは、電線の接続に際し、電線の接続作業時間を削減でき、ゴミの発生を抑制することができる速結端子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明によれば、少なくとも2本の電線を受容するケースと、前記ケースに係合するコネクタと、前記ケースに前記コネクタが係合された状態を維持する係合維持機構と、を備えており、前記コネクタは、前記ケースに受容されている前記電線に突き刺ささり、前記少なくとも2本の電線のそれぞれを電気的に接続する突き刺し刃を含んでおり、前記係合維持機構は、前記ケースに係合したコネクタを、前記突き刺し刃が前記電線に突き刺さる前の仮係合状態、及び、前記突き刺し刃が前記電線に突き刺さった本係合状態の少なくとも2段階で維持できる、速結端子が提供される。
【0010】
また、前記ケースは、前記少なくとも2本の電線をそれぞれ受容し所定位置に案内する少なくとも2個の電線受容溝を含んでおり、前記突き刺し刃は、前記コネクタに少なくとも2個配設され、互いに電気的に接続されており、前記電線受容溝のそれぞれに受容されている前記電線にそれぞれ突き刺ささり、前記電線内の芯線と電気的に接触する構成とすることが好ましい。
【0011】
また、前記ケースは、前記電線受容溝が設けられている底壁と、前記底壁の後端縁に設けられた後壁であって、前記電線が挿入される電線挿入口が設けられている後壁と、前記底壁の左側縁に設けられた左側壁と、前記底壁の右側縁に設けられた右側壁と、前記電線挿入口から挿入され前記電線受容溝に受容されている電線を前記底壁に向かって押圧する接触片と、を含んでおり、前記係合維持機構は、前記コネクタに設けられたコネクタ係合片であって、前記コネクタが前記ケースに係合されたときに、前記ケースの前記左側壁及び前記右側壁とそれぞれ対応する位置に位置付けられているコネクタ係合片と、前記ケースの前記左側壁及び前記右側壁にそれぞれ設けられ、前記コネクタ係合片と係合する側壁係合部と、を含んでいる構成とすることが好ましい。
【0012】
また、前記コネクタ係合片は、一対の脚部と、これら脚部の先端部に架け渡された連結ロック部とを含み、前記側壁係合部は、前記コネクタ係合片を受け入れる凹溝と、前記凹溝内に設けられた、前記連結ロック部を係止するロック爪とを含み、前記ロック爪は、第1の位置に設けられた第1ロック爪と、前記第1ロック爪よりも前記底壁側である第2の位置に設けられた第2ロック爪と、を含んでおり、前記第1の位置は、前記コネクタを前記仮係合状態に維持できる位置であり、前記第2の位置は、前記コネクタを前記本係合状態に維持できる位置である構成とすることが好ましい。
【0013】
また、前記コネクタを前記ケースに係合させる際に、前記コネクタを前記仮係合状態で一旦止め、前記仮係合状態から前記本係合状態に移行したあと、前記本係合状態で前記コネクタをロックするストッパ兼ロック機構を更に備えている構成とすることが好ましい。
【0014】
また、前記コネクタは、前記本係合状態のとき、前記接触片を前記電線が存在する方向へ押し付ける押圧アームを更に備えている構成とすることが好ましい。
【0015】
また、前記ケースと前記コネクタとを連結する可撓性を有する連結帯を更に備えている構成とすることが好ましい。
【0016】
また、前記連結帯は、ねじ挿通孔を有するねじ止め片であって、透かし孔により輪郭部が形成されているねじ止め片を含んでおり、前記ねじ止め片は、前記ケースに一体化されているケース連結部と、前記透かし孔を跨いで前記連結帯に架け渡されている架け渡し部であって、切断予定箇所となる架け渡し部とを有している構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の速結端子は、突き刺し刃が、各電線に突き刺さることにより、各電線の絶縁被覆層を剥がす作業を省略して各電線を電気的に接続することができる。このため、本発明によれば、電線の接続に際し、電線の接続作業時間を削減でき、ゴミの発生を抑制することができる速結端子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る速結端子を示した斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る速結端子の初期状態を示した斜視図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る速結端子の初期状態を示した平面図である。
【
図4】
図3のB1線に沿った断面を矢印IV方向に見た場合の断面図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る仮係合状態の速結端子に電線を挿入した態様を示した斜視図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態に係る本係合状態の速結端子を示した斜視図である。
【
図8】
図7のVIII-VIII線に沿った断面図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る速結端子の初期状態を示した平面図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態に係る速結端子を筐体にねじ止めする手順を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る速結端子2について、図面を参照しながら以下に説明する。
【0020】
速結端子2は、
図1に示すように、第1の電線L1及び第2の電線L2が挿入されるケース4と、このケース4に係合され、ケース4に挿入された第1の電線L1及び第2の電線L2を電気的に接続するコネクタ6とを備えている。第1の電線L1及び第2の電線L2は、電気伝導体で形成された芯線1と、芯線1を被覆する絶縁体で形成された絶縁被覆層3とを含む。この芯線1は、例えば、金属製の多数の細線が撚り合わされた撚り線を用いることが好ましい。
【0021】
ここで、ケース4においては、第1の電線L1及び第2の電線L2が挿入される一端部8の側を後側とし、一端部8とは反対の他端部10の側を前側とし、コネクタ6が載置される側を上側とし、この上側の反対側を下側とする。また、一端部8から他端部10へ向かってみた場合の両側部については、
図1において表されている側(第1の側壁36の側)を左側とし、この左側の反対側を右側とする。なお、他の図面においても、このケース4の前後左右上下の関係を参考にすることとする。
【0022】
速結端子2は、初期状態では、
図2、
図3に示すように、ケース4とコネクタ6とは、係合が解かれている。この
図2から明らかなように、ケース4とコネクタ6とは、可撓性を有する連結帯12により互いに連結されている。このため、ケース4とコネクタ6とが係合されている場合は、連結帯12は湾曲した状態となる(
図1参照)。
【0023】
ケース4は、絶縁性及び弾性を有する樹脂により形成されている。このケース4は、上記した連結帯12と連続する底壁14を有している。この底壁14は、矩形状をなしており、連結帯12よりも厚い。底壁14の一端部8には上側へ延びる後壁16が設けられている。この後壁16には、
図1に示すように、第1の電線L1が挿入される第1電線挿入口18及び第2の電線L2が挿入される第2電線挿入口20が並列に設けられている。
【0024】
なお、電線が所定位置に安定して保持できれば、電線単位で仕切る必要はないので、電線挿入口は、必ずしも電線毎に複数設ける必要はない。
【0025】
ケース4の他端部10には、
図2に示すように、第1電線挿入口18と対向する位置に位置付けられた馬蹄形の枠22で形成された第1ガイド孔24と、第2電線挿入口20と対向する位置に位置付けられた馬蹄形の枠26で形成された第2ガイド孔28とが設けられている。第1電線挿入口18から挿入された第1の電線L1は、その先端部が第1ガイド孔24の部分から突出する。つまり、第1ガイド孔24は第1の電線L1の先端部の出口となる。また、第2電線挿入口20から挿入された第2の電線L2は、その先端部が第2ガイド孔28の部分から突出する。つまり、第2ガイド孔28は第2の電線L2の先端部の出口となる。
【0026】
底壁14上において、第1電線挿入口18の部分から第1ガイド孔24の部分までの間には、電線受容溝として、例えば、断面がV字型の第1V字溝30が設けられており、第2電線挿入口20の部分から第2ガイド孔28の部分までの間には、電線受容溝として、例えば、断面がV字型の第2V字溝32が設けられている。なお、電線受容溝は、電線を受容し案内する溝であればよく、その断面形状としては、V字型に限定されるものではない。V字型の他、U字型、矩形状等であっても構わない。また、電線受容溝の形状(第1V字溝30及び第2V字溝32の形状)は、同形状であっても相似状であっても構わない。
【0027】
第1V字溝30は、
図3に示されるような第1電線挿入口18の中心から第1ガイド孔24の中心を結ぶ第1の基準線B1に沿う方向に延びている。また、第2V字溝32は、
図3に示されるような第2電線挿入口20の中心から第2ガイド孔28の中心を結ぶ第2の基準線B2に沿う方向に延びている。
【0028】
ここで、本実施形態においては、第1V字溝30と第2V字溝32とは同形状であるので、第1V字溝30についてのみ説明し、第2V字溝32については説明を省略する。
【0029】
第1V字溝30は、
図4に示すように、第1電線挿入口18から第1ガイド孔24にまで延びている。第1V字溝30は、第1電線挿入口18の部分が一番深く、底壁14の全長の2/3程度の部分(変化点34)までは、第1ガイド孔24の側へいくに従いV字溝の深さは徐々に浅くなっていく。そして、変化点34から第1ガイド孔24の部分までは、一定の深さのV字溝が形成されている。また、第1V字溝30は、第1電線挿入口18の部分が最も幅が広く、変化点34までは、第1ガイド孔24の側へいくに従いV字溝の幅は徐々に狭くなっていく。そして、変化点34から第1ガイド孔24の部分までは、一定の幅のV字溝が形成されている。なお、変化点34は、底壁14の全長の2/3程度の部分に限定されるものではなく、任意の部分に設定することができる。
【0030】
第1の電線L1は、第1電線挿入口18から挿入され、第1V字溝30の上を移動させられることにより第1の電線L1の軸線が、第1の基準線B1に重ね合わされながら、第1ガイド孔24に導かれる。上記のように、V字溝は、幅が広い部分から徐々に狭くなっていくので、挿入される電線の径が異なっていてもV字溝上を移動する過程で、電線の軸線と基準線とを重ね合わせることができる。
【0031】
第2の電線L2は、第1の電線L1と同様に、第2電線挿入口20から挿入され、第2V字溝32の上を移動させられることにより第2の電線L2の軸線が、第2の基準線B2に重ね合わされながら、第2ガイド孔28に導かれる。
【0032】
また、底壁14の左側の端縁部には、上側に延びる第1の側壁36が設けられており、底壁14の右側の端縁部には、上側に延びる第2の側壁38が設けられている。ここで、ケース4においては、第1の側壁36及び第2の側壁38の形状は
図3に示す中心線Cを対称軸として左右対称であるので、第1の側壁36についてのみ説明し、第2の側壁38についての詳しい説明は省略する。
【0033】
第1の側壁36は、
図2に示すように、底壁14の側縁の全体から上側に所定の高さ(第1の高さH1)だけ延びる矩形のベースプレート部40と、このベースプレート部40の外側部分に配設され、第1の高さH1よりも高い第2の高さH2を有する外側プレート部42とを備えている。上記のように、ベースプレート部40と外側プレート部42とでは高さが異なっているので、ベースプレート部40の頭部40aにおいて、第1の側壁36の厚さ方向における段差が形成されている。また、外側プレート部42は、
図2に示すように、ベースプレート部40の前後方向に沿って、第1外側プレート部42aと、第2外側プレート部42bの2つに分かれている。このため、第1の側壁36は、平面視した場合に、外側プレート部42が存在しない部分は上下方向の下側に凹んだ形状となっている。しかも、この外側プレート部42が存在しない部分は、ベースプレート部40の外表面が露出した状態となっており、第1の側壁36の厚さ方向にも凹んだ形状となっている。つまり、第1の側壁36の外側部分には、第1外側プレート部42a及び第2外側プレート部42bの間に凹溝46が形成されている。
【0034】
また、この凹溝46内のベースプレート部40の外表面(以下、溝内面48という)には、
図2に示すように、第1ロック爪50及び第2ロック爪52が設けられている。これら第1ロック爪50及び第2ロック爪52は、溝内面48から突出した断面が三角形状の突起である。詳しくは、第1ロック爪50及び第2ロック爪52は、溝内面48からの突出長さが、上側から下側に向かって漸増するような傾斜面50a、52aと、下端に溝内面48に対し直交する平坦面と、を有している突起である。
【0035】
上記した第1ロック爪50は、ベースプレート部40の上端部分に配設されており、第2ロック爪52は、第1ロック爪50よりも底壁14側で、且つ、第1ロック爪50よりもケース4の他端部10側に位置付けられている。
【0036】
なお、第1外側プレート部42aには、
図2に示すように、鉤状突起54を有している。この鉤状突起54は、リード線等を引っかけることに用いられる。
【0037】
ここで、第2の側壁38における各部は、
図3中において、以下の参照符号で示した。すなわち、ベースプレート部は41、ベースプレート部41の頭部は41a、外側プレート部は43、第1外側プレート部は43a、第2外側プレート部は43b、凹溝は47、溝内面は49、第1ロック爪は51、第2ロック爪は53で示した。
【0038】
ケース4の一端部8には、コネクタ6を後述する仮係合状態で一旦止めるとともに、コネクタ6をケース4に、後述する本係合させた場合に、コネクタ6が外れないようにロックする留め具56が設けられている。留め具56は、
図1に示すように、ケース4の一端部8におけるケース4の両側であって、ケース4の底壁14に対応する位置に、基端部58a、60aが一体的に取り付けられている一対の脚部58、60と、これら一対の脚部58、60の先端部58b、60b同士を連結するハンドル部62とを含んでいる。このハンドル部62は、
図4に示すように、ケース4の後壁16とは反対側である後方へ僅かに傾いている。また、ハンドル部62における、ケース4の後壁16の側である前方には、ロック爪64が設けられている。
【0039】
なお、
図1に示すように、留め具56の下側の両側部には、鉤状突起66、68が設けられている。この鉤状突起66、68は、リード線等を引っかけることに用いられる。
【0040】
また、
図2及び
図3に示すように、ケース4は、その中央部分に円柱状をなす第1ガイド突起70及び第2ガイド突起72を有している。第1ガイド突起70は、ケース4の一端部8の側の所定位置に設けられており、第2ガイド突起72は、ケース4の他端部10の側の所定位置に設けられている。これら第1ガイド突起70及び第2ガイド突起72は、コネクタ6の位置合わせに利用される。
【0041】
更に、後壁16の上端縁から左右のベースプレート部40、41の上端縁に沿って上壁74が設けられている。この上壁74は、ケース4の一端部8の側において、ベースプレート部40、41の全長の一部のみの範囲に設けられている。つまり、上壁74の前後方向の長さは、第1の側壁36、第2の側壁38及び底壁14よりも短く、これら第1の側壁36、第2の側壁38及び底壁14の1/5程度の長さである。
【0042】
上壁74の他端部10の側の端縁76からは、
図3に示すように、第1の電線L1と接触する第1接触片78と、第2の電線L2と接触する第2接触片80とが延びている。ここで、第1接触片78と第2接触片80とは、同じ構造であるので、第1接触片78についてのみ説明し、第2接触片80については、説明を省略する。
【0043】
第1接触片78は、
図4に示すように、上壁74と一体化している基端部82と、基端部82から延びる傾斜部84と、傾斜部84から延びる先端部86とを含んでいる。
【0044】
傾斜部84は、基端部82から先端部86へいくに従い底壁14との距離が近くなるように勾配をもって形成されている。
【0045】
先端部86は、勾配はなく、底壁14とほぼ平行に延びている。この先端部86は、
図3に示すように、その中央に、細長い切欠(以下、刃挿入切欠88という)が設けられている。この刃挿入切欠88は、後述する第1の突き刺し刃150が挿通される隙間であり、第1の基準線B1と重なっている。
【0046】
また、この先端部86における底壁14に面した底壁対向面86aには、V字溝(以下、接触片側V字溝92という)が設けられている。この接触片側V字溝92の中心線は、刃挿入切欠88の中心線、すなわち第1の基準線B1と重なっている。
【0047】
ここで、第2接触片80における各部は、
図3中において、以下の参照符号で示した。すなわち、基端部は83、傾斜部は85、先端部は87、刃挿入切欠は89で示した。
【0048】
なお、接触片において、突き刺し刃が挿通される部分の形状は、特に限定されるものではなく、切欠の他、孔等であっても構わない。
【0049】
第1接触片78及び第2接触片80は、両側及び先端が固定された状態ではないので、上下方向に可動である。
【0050】
ここで、ケース4の底壁14における上記した刃挿入切欠88と対向する位置には、第1の突き刺し刃150の先端を受け入れる受入孔94が設けられている。また、ケース4の底壁14における上記した刃挿入切欠89と対向する位置には、後述する第2の突き刺し刃152の先端を受け入れる受入孔95が設けられている。
【0051】
次に、コネクタ6について説明する。コネクタ6は、
図2に示すように、絶縁性及び弾性を有する樹脂製の本体部96と、本体部96に一部が埋め込まれた金属製の接続部材90とを含んでいる。
【0052】
本体部96は、連結帯12におけるケース4とは反対側に連続しているプレート本体98と、プレート本体98の両側に設けられた一対のコネクタ係合片100、102と、を有している。
【0053】
プレート本体98は、
図3に示すように、ケース4の平面視形状とほぼ同じ矩形状をなしており、連結帯12よりも厚い(
図2、
図4参照)。このプレート本体98は、
図1に示すように、ケース4の上部に覆い被さるようにしてケース4と係合される。プレート本体98は、ケース4と係合される際に、ケース4と対向する面(以下、ケース対向面104という)と、ケース4とは反対側に位置する面(以下、外面106という)とを有している。
【0054】
プレート本体98は、
図3に示すように、その中央部分に円形状をなす第1の位置合わせ貫通孔108及び第2の位置合わせ貫通孔110が並列に設けられている。第1の位置合わせ貫通孔108は、ケース4の第1ガイド突起70と係合するように所定位置に設けられており、第2の位置合わせ貫通孔110は、ケース4の第2ガイド突起72と係合するように所定位置に設けられている。つまり、ケース4とコネクタ6とを係合する際に、第1の位置合わせ貫通孔108と第1ガイド突起70とが係合し、第2の位置合わせ貫通孔110と第2ガイド突起72とが係合することにより、コネクタ6がケース4に相対する所定位置に案内される。
【0055】
プレート本体98においては、第1の位置合わせ貫通孔108を挟んだ両側に、矩形状の矩形貫通孔112、114が設けられている。これら矩形貫通孔112、114においては、プレート本体98の先端部116の側の短辺118、120から延びる押圧アーム122、124が設けられている。この押圧アーム122、124は、
図4に示すように、先端部側にいくほどケース対向面104から突出するように勾配をもって形成されている。また、押圧アーム122、124の先端部126、130には、断面が半円形状に突出した膨出部128、132が形成されている。この押圧アーム122、124は、矩形貫通孔112、114の一方の短辺118、120にのみ基端部134、136が連結されており、矩形貫通孔112、114の他方の短辺138、140及び両長辺142、144、146、148とは接続されていない。このため、
図4の矢印Mで示すように、先端部が可動である。これら押圧アーム122、124は、コネクタ6がケース4と本係合された際に、第1接触片78及び第2接触片80にそれぞれ当接する所定位置に位置付けられており、第1接触片78及び第2接触片80に所定の押圧力を作用させる働きをする。
【0056】
また、プレート本体98においては、第2の位置合わせ貫通孔110の周囲に、金属製の接続部材90が配設されている。この接続部材90は、プレート本体98内に埋め込まれている埋設部154と、この埋設部154の両側部に立設されており、プレート本体98のケース対向面104から突出している第1の突き刺し刃150及び第2の突き刺し刃152と、を含む。つまり、プレート本体98から突出している第1の突き刺し刃150及び第2の突き刺し刃152は、プレート本体98内で埋設部154を介して電気的に接続されている。
【0057】
第1の突き刺し刃150は、
図4に示すように、埋設部154側はストレート形状をなしており、先端部157が三角形状となっている。また、第2の突き刺し刃152は、第1の突き刺し刃150と同じ形状をなしており、埋設部154側はストレート形状をなしており、先端部が三角形状となっている。
【0058】
なお、突き刺し刃の形状は、電線に突き刺すことができる形状であれば良く、上記したような形状に限定されるものではない。
【0059】
ここで、第1の突き刺し刃150及び第2の突き刺し刃152は、幅方向の寸法Wに対する厚さ方向の寸法が極めて小さい薄い刀身を備えている。第1の突き刺し刃150及び第2の突き刺し刃152は、コネクタ6がケース4に組み合わされた際に、第1の突き刺し刃150が第1接触片78の刃挿入切欠88に対応する位置に位置付けられており、第2の突き刺し刃152が第2接触片80の刃挿入切欠89に対応する位置に位置付けられている。また、第1の突き刺し刃150は、その幅方向と第1の基準線B1が延びる方向とが一致する所定位置に配設されており、第2の突き刺し刃152は、その幅方向と第2の基準線B2が延びる方向とが一致する所定位置に配設されている。なお、第1の突き刺し刃150及び第2の突き刺し刃152においては、幅方向に延びる仮想線であって、厚さ方向の中央を通る仮想線を第1の突き刺し刃150及び第2の突き刺し刃152の中心線とする。
【0060】
埋設部154は、
図3において仮想線で示すように、平面視が、第2の位置合わせ貫通孔110を避ける切欠部156を有するほぼ矩形状をなしている。
【0061】
以上のような接続部材90は、製造の過程でプレート本体98の樹脂内に埋設部154が埋め込まれる。
【0062】
プレート本体98の先端部116には、
図1に示すように、段差部158が設けられている。詳しくは、プレート本体98の先端部116の厚さ方向のほぼ半分の厚さの範囲において、ケース対向面104側が外面106側よりも突出して段差が形成されている。この段差部158は、プレート本体98の先端部116の全幅にわたって形成されている。ここで、段差部158は、ケース4にコネクタ6が本係合された際に、ハンドル部62のロック爪64と係合する。
【0063】
また、プレート本体98の両側には、
図2に示すように、コネクタ係合片100、102が一体的に設けられている。このコネクタ係合片100、102は、基端部がプレート本体98の側面に取り付けられている一対の脚部160、162、164、166と、脚部の先端側において、これら脚部間に架け渡された連結ロック部168、170とを有している。つまり、コネクタ係合片100、102は、中央に矩形の開口172、174が設けられている。このコネクタ係合片100、102は、ケース4にコネクタ6が組み合わされた際に、第1の側壁36の凹溝46及び第2の側壁38の凹溝47と対応する位置に設けられている。コネクタ係合片100、102の幅は、第1の側壁36の凹溝46及び第2の側壁38の凹溝47の幅と同じ寸法に設定してある。連結ロック部168、170は、開口172、174の縁に相当する部分が、脚部160、162、164、166と同じ厚さを有する平坦部176、178を有し、先端にいくほど厚さが薄くなるような勾配が設けられている。つまり、連結ロック部168、170は、先端部に傾斜面180、182を有している。この傾斜面180、182は、プレート本体98の側に設けられている。また、コネクタ係合片100、102の両側部の先端側は、僅かに面取りされており、平面視した場合にわずかに先細りとなっている。
【0064】
このコネクタ6のコネクタ係合片100、102と、上記したケース4の凹溝46、47、第1ロック爪50、51及び第2ロック爪52、53とは、ケース4にコネクタ6が係合された状態を維持する係合維持機構を協働して形成している。
【0065】
上記したような構造の速結端子2は、例えば、接続部材90を所定位置に配置し、その状態で樹脂の射出成形を行うことにより形成する。これにより、
図2に示すような、接続部材90を含むコネクタ6と、ケース4とが係合されていない初期状態の速結端子2が得られる。
【0066】
なお、速結端子2の形成方法としては、上記した射出成形に限定されるものではなく、他の形成方法を採用することも可能である。また、例えば、接続部材90をコネクタ6の所定位置にねじにより固定したり、フックにより固定したりして、速結端子2を形成することもできる。
【0067】
得られた初期状態の速結端子2においては、
図4中の矢印Pの方向にコネクタ6を移動させてケース4の上に配置する。このとき、連結帯12は湾曲する。そして、コネクタ6とケース4とを係合させる。このとき、プレート本体98の両側のコネクタ係合片100、102の先端部分が、それぞれ第1の側壁36の凹溝46及び第2の側壁38の凹溝47に合致する。これと同時に、コネクタ6の第1の位置合わせ貫通孔108が、ケース4の第1ガイド突起70と係合し、コネクタ6の第2の位置合わせ貫通孔110が、ケース4の第2ガイド突起72と係合し、コネクタ6とケース4の位置合わせがなされる。
【0068】
次に、この状態からコネクタ6をケース4側へ向かって軽く押し込むと、コネクタ係合片100、102は、第1の側壁36の凹溝46及び第2の側壁38の凹溝47に沿ってスライドする。そして、コネクタ係合片100、102の連結ロック部168、170における傾斜面180、182の部分が第1ロック爪50、51の傾斜面50a、51aに沿って移動し、これに伴って各コネクタ係合片100、102が第1ロック爪50、51に乗り上げる。更に進むと、連結ロック部168、170が第1ロック爪50、51を乗り越え、連結ロック部168、170における平坦部176、178と、第1ロック爪50、51の下端の平坦面とが当接しロックされた状態となる。
【0069】
ここで、コネクタ6をケース4側へそれ以上押そうとすると、プレート本体98の先端部116のケース対向面104と、ケース4のハンドル部62に設けられたロック爪64の上面とが当接するので、コネクタ6のケース4側への移動は阻止される。これにより、コネクタ6とケース4とは、一旦、上記した状態で止まり、
図1に示すような、仮係合状態となる。
【0070】
この仮係合状態では、接続部材90の第1の突き刺し刃150及び第2の突き刺し刃152の先端は、第1接触片78及び第2接触片80の刃挿入切欠88、89に僅かに進入するだけで、底壁対向面86aよりも突出しない位置にある。詳しくは、接続部材90の第1の突き刺し刃150及び第2の突き刺し刃152の先端は、第1接触片78の接触片側V字溝92の部分及び第2接触片80の接触片側V字溝の部分まで達していない状態にある(
図6参照)。つまり、第1の突き刺し刃150及び第2の突き刺し刃152が第1の電線L1及び第2の電線L2に突き刺さる前の状態である。本発明の速結端子2は、この仮係合状態で出荷することが好ましい。これにより、作業現場での速結端子2の組み立ての作業を省略できるからである。
【0071】
次に、この仮係合状態の速結端子2に接続対象である第1の電線L1及び第2の電線L2を挿入する。具体的には、
図1の矢印N1、N2で示すように、第1の電線L1及び第2の電線L2を第1電線挿入口18及び第2の電線L2へそれぞれ挿入させる。このとき、第1の電線L1は、底壁14の第1V字溝30にガイドされてケース内を進行していく。途中で第1の電線L1と第1接触片78が接触する。第1接触片78は、弾性を有するので、第1の電線L1の進行に伴い押し上げられる一方、第1の電線L1に対し押圧力を作用させ第1の電線L1を底壁14側へ押し付ける。また、第1の電線L1は、第1接触片78の接触片側V字溝92にもガイドされてケース内を進行していく。そして、
図5及び
図6に示すように、第1の電線L1の先端部L1tが第1ガイド孔24から突出する。このように、底壁14の第1V字溝30及び第1接触片78の接触片側V字溝92にガイドされながらケース4内を進行することにより、第1の電線L1は、その軸線が第1の基準線B1と合わせられる。その結果、第1の電線L1の軸線と接続部材90における第1の突き刺し刃150の中心線とが一致する。
【0072】
一方、第2の電線L2についても第1の電線L1と同様にして、ケース4に挿入され、第2の電線L2の軸線と接続部材90における第2の突き刺し刃152の中心線とが一致する。
【0073】
次に、本係合を行い、第1の電線L1と第2の電線L2とを電気的に接続する作業を行う。本係合を行う場合、まず、
図6の矢印Qで示すように、ハンドル部62を後方へ倒す。これにより、ハンドル部62のロック爪64が、プレート本体98の先端部116と干渉することがなくなる。この状態から、コネクタ6をケース4に向かって押し込む。そうすると、コネクタ6がケース4側に移動し、コネクタ係合片100、102の連結ロック部168、170における傾斜面180、182の部分が第2ロック爪52、53の傾斜面52a、53aに沿って移動し、これに伴って各コネクタ係合片100、102が第2ロック爪52、53に乗り上げる。更に進むと、連結ロック部168、170が第2ロック爪52、53を乗り越え、連結ロック部168、170における平坦部176、178と、第2ロック爪52、53の下端の平坦面とが当接しロックされる。それとともに、プレート本体98の先端部116の段差部158とケース4のハンドル部62に設けられたロック爪64の下面とが当接し、プレート本体98の先端部116もロックされる。このとき、第1の突き刺し刃150及び第2の突き刺し刃152が第1の電線L1及び第2の電線L2に突き刺さり、
図7、
図8に示すような、本係合状態となる。
【0074】
ここで、仮係合状態から本係合状態に移行する過程において、接続部材90の第1の突き刺し刃150及び第2の突き刺し刃152は、第1の電線L1及び第2の電線L2の絶縁被覆層3を貫き、内部の芯線1にそれぞれ接触する。更に、第1の突き刺し刃150及び第2の突き刺し刃152は、第1の電線L1及び第2の電線L2を完全に貫き、その先端が底壁14の受入孔94、95に受け入れられる。このようにして、
図8に示すように、電線の芯線部分と接続部材90の突き刺し刃とが接触状態となり、第1の電線L1と第2の電線L2との電気的接続が完成する。
【0075】
ここで、
図8に示すように、本係合状態では、プレート本体98の押圧アーム122、124が、ケース4の第1接触片78及び第2接触片80を介して電線を押圧するとともに、突き刺し刃を電線へ押し付ける力を作用させる。これにより、接続をより確実にする。
【0076】
本実施形態の速結端子2は、第1の電線L1及び第2の電線L2の線径や規格が異なっていたとしても、第1電線挿入口側の第1接触片78及び第2電線挿入口側の第2接触片80が、弾性を有し独立に動くので、それぞれの線種に応じて弾性変形しながら各電線を受け入れる。そして、本実施形態の速結端子2では、各V字溝の形状が、ケース4の中にいくに従いV字溝の深さが徐々に浅くなっていくとともに幅が徐々に狭くなっていく形状をしているので、このV字溝の作用により、電線がV字溝に案内される過程で電線の軸線を突き刺し刃が通る基準線に重ねることができ、この状態で突き刺し刃を電線に突き刺すだけで電線内の芯線に突き刺し刃を確実に接触させることができる。よって、本実施形態の速結端子2は、色々な電線同士の接続が容易に行うことができる。つまり、本実施形態の速結端子2は、対応可能な線種が多く、汎用性に優れている。
【0077】
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係る速結端子202を説明するにあたり、第1の実施形態に係る速結端子2と異なる構成についてのみ説明し、第1の実施形態に係る速結端子2と同じ構成については、同一の参照符号を付して詳細な説明は省略する。
【0078】
第2の実施形態に係る速結端子202は、連結帯212の部分に、速結端子202を装置内等の所定位置にねじ止め固定する際に使用するねじ止め片220を備えている。
【0079】
ねじ止め片220は、
図9に示すように、ほぼ長方形状をなしており、連結帯212の中央部に位置付けられている。ねじ止め片220には、ねじ挿通孔が設けられている。このねじ挿通孔の形状、個数、位置等は任意に選択可能であるが、本実施形態では、例えば、
図9に示すように、内径が同じ円形のねじ挿通孔(以下、円形ねじ挿通孔222、224という)が速結端子202の中心線Cを挟んで2個設けられるとともに、内径の異なる円が組み合わされた形状をなしているねじ挿通孔(以下、複合ねじ挿通孔226という)が速結端子202の中心線C上に1個設けられている。複合ねじ挿通孔226においては、内径が大きい方の円に相当する部分を大径孔228とし、内径が小さい方の円に相当する部分を小径孔230とする。
【0080】
ねじ止め片220の周囲には、部分的に透かし孔が設けられており、ねじ止め片220の輪郭を部分的に形成している。詳しくは、
図9において、ケース4からコネクタ6をみた場合に、速結端子202の中心線Cの左側に縦長のC字状の第1透かし孔232が形成されている。また、上記した中心線Cを対称軸として第1透かし孔232と左右対称の第2透かし孔234が形成されている。更に、コネクタ6の側において、第1透かし孔232と第2透かし孔234との間に細長い長方形状の第3透かし孔236が形成されている。
【0081】
ねじ止め片220は、ケース4の側に幅が狭くなった狭幅部238を有しており、この狭幅部238がケース4と連結されている。また、ねじ止め片220は、コネクタ6の側にて、第1透かし孔232と第3透かし孔236との間に残った第1架け渡し部240と、第3透かし孔236と第2透かし孔234との間に残った第2架け渡し部242とにより、連結帯212と連続している。これら第1架け渡し部240及び第2架け渡し部242は後ほど切断される切断予定箇所となる。
【0082】
本実施形態の速結端子202においては、まず、第1の実施形態と同様にして、ケース4とコネクタ6とを仮係合状態にする。そして、第1の電線L1及び第2の電線L2をケース4内に挿通させた後、本係合状態とし、第1の電線L1と第2の電線L2とを接続させる。次に、第1架け渡し部240及び第2架け渡し部242を切断し、ねじ止め片220を連結帯212から分離する。これにより、ねじ止め片220は、狭幅部238でのみケース4と連結された状態となる。これにより、
図10に示すような、連結帯212から分離し、湾曲していないねじ止め片220がケース4に連結されている状態の速結端子202が得られる。この速結端子202の使用方法について以下に説明する。
【0083】
まず、速結端子202が利用される装置の筐体250等における所定位置にねじ孔252を設けておき、斯かるねじ孔252に固定ねじ244を螺合させる。このとき、
図10(a)に示すように、固定ねじ244の頭部246が筐体250からわずかに浮いた状態にしておく。そして、上記のようにして得られた速結端子202を、
図10(a)中の矢印D方向に移動させる。このとき、ねじ止め片220の大径孔228に固定ねじ244の頭部246が通るように位置合わせし、固定ねじ244の頭部246を大径孔228に通す。その後、
図10(b)中の矢印S方向に速結端子202を移動させる。これにより、固定ねじ244のねじ部248が小径孔230に合致する。これにより、速結端子202を筐体250の所定位置に固定することができる。このとき、固定ねじ244を増す締めしても構わない。
【0084】
なお、本実施形態に係るねじ止め片220においては、上記のように、複合ねじ挿通孔226を用い、固定ねじ244の頭部246を大径孔228に通してから横へ移動させる態様に限定されるものではなく、円形ねじ挿通孔222、224を用いて、ねじ止めしても構わない。
【0085】
本実施形態によれば、第1の電線L1及び第2の電線L2を接続した速結端子202を所定箇所に容易に固定することができる。
【0086】
以上、説明したように、本発明に係る速結端子は、電線の絶縁被覆層を剥がさずに、簡単に電線の接続を行うことができる。しかも、本発明に係る速結端子は、仮係合状態を維持できるので、現場では、速結端子の組み立て作業を省略でき、電線をケースに挿入し本係合状態にするだけで電線の接続ができる。このため、本発明によれば、電線の接続作業時間を削減でき、ゴミの発生を抑制することができる。また、本発明に係る速結端子は、線径や線種の異なる電線についても、それぞれの電線の軸線と、突き刺し刃の中心線に相当する基準線とを容易に重ね合わせることができ、突き刺し刃を各電線中の芯線に突き刺し、導通をとることができる。よって、本発明によれば、種々の電線の接続が容易であり汎用性に優れている速結端子を提供することができる。
【0087】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上記した実施形態では、ケースとコネクタとを連結帯で連結した態様について説明したが、本発明は、この態様に限定されるものではなく、連結帯を省略しケースとコネクタとを別体とする態様としても構わない。また、上記した実施形態では、第1の突き刺し刃150及び第2の突き刺し刃152の2つの突き刺し刃をそれぞれ1本の電線に突き刺す態様について説明したが、本発明はこの態様に限定されるものではなく、例えば、2本の電線を並列に配置してケースに入れ、1つの突き刺し刃を一方の電線の側部から隣接する他方の電線に向けて突き刺し、これら2本の電線を1つの突き刺し刃で電気的に接続する態様としても構わない。また、上記した実施形態では、電線を2本接続する態様について説明したが、本発明は、この態様に限定されるものではなく、2本よりも多い数の電線を接続できる態様としても構わない。また、上記した実施形態では、ケース4に第1ガイド孔24及び第2ガイド孔28を設けて電線の出口としたが、本発明は、この態様に限定されるものではなく、これらガイド孔を省略し、出口をなくして、電線の先端部をケース4内に収めた態様としても構わない。また、速結端子の外形的な形状は、上記した実施形態に限定されず、種々変更可能である。
【0088】
<本発明の態様>
本発明の第1の態様は、少なくとも2本の電線を受容するケースと、前記ケースに係合するコネクタと、前記ケースに前記コネクタが係合された状態を維持する係合維持機構と、を備えており、前記コネクタは、前記ケースに受容されている前記電線に突き刺ささり、前記少なくとも2本の電線のそれぞれを電気的に接続する突き刺し刃を含んでおり、前記係合維持機構は、前記ケースに係合したコネクタを、前記突き刺し刃が前記電線に突き刺さる前の仮係合状態、及び、前記突き刺し刃が前記電線に突き刺さった本係合状態の少なくとも2段階で維持できる、速結端子である。
【0089】
本発明の第2の態様は、上記した本発明の第1の態様において、前記ケースは、前記少なくとも2本の電線をそれぞれ受容し所定位置に案内する少なくとも2個の電線受容溝を含んでおり、前記突き刺し刃は、前記コネクタに少なくとも2個配設され、互いに電気的に接続されており、前記電線受容溝のそれぞれに受容されている前記電線にそれぞれ突き刺ささり、前記電線内の芯線と電気的に接触する、速結端子である。
【0090】
本発明の第3の態様は、上記した本発明の第2の態様において、前記ケースは、前記電線受容溝が設けられている底壁と、前記底壁の後端縁に設けられた後壁であって、前記電線が挿入される電線挿入口が設けられている後壁と、前記底壁の左側縁に設けられた左側壁と、前記底壁の右側縁に設けられた右側壁と、前記電線挿入口から挿入され前記電線受容溝に受容されている電線を前記底壁に向かって押圧する接触片と、を含んでおり、前記係合維持機構は、前記コネクタに設けられたコネクタ係合片であって、前記コネクタが前記ケースに係合されたときに、前記ケースの前記左側壁及び前記右側壁とそれぞれ対応する位置に位置付けられているコネクタ係合片と、前記ケースの前記左側壁及び前記右側壁にそれぞれ設けられ、前記コネクタ係合片と係合する側壁係合部と、を含んでいる、速結端子である。
【0091】
本発明の第4の態様は、上記した本発明の第3の態様において、前記コネクタ係合片は、一対の脚部と、これら脚部の先端部に架け渡された連結ロック部とを含み、前記側壁係合部は、前記コネクタ係合片を受け入れる凹溝と、前記凹溝内に設けられた、前記連結ロック部を係止するロック爪とを含み、前記ロック爪は、第1の位置に設けられた第1ロック爪と、前記第1ロック爪よりも前記底壁側である第2の位置に設けられた第2ロック爪と、を含んでおり、前記第1の位置は、前記コネクタを前記仮係合状態に維持できる位置であり、前記第2の位置は、前記コネクタを前記本係合状態に維持できる位置である、速結端子である。
【0092】
本発明の第5の態様は、上記した本発明の第1~第4の態様の何れかにおいて、前記コネクタを前記ケースに係合させる際に、前記コネクタを前記仮係合状態で一旦止め、前記仮係合状態から前記本係合状態に移行したあと、前記本係合状態で前記コネクタをロックするストッパ兼ロック機構を更に備えている、速結端子である。
【0093】
本発明の第6の態様は、上記した本発明の第3~第5の態様の何れかにおいて、前記コネクタは、前記本係合状態のとき、前記接触片を前記電線が存在する方向へ押し付ける押圧アームを更に備えている、速結端子である。
【0094】
本発明の第7の態様は、上記した本発明の第1~第6の態様の何れかにおいて、前記ケースと前記コネクタとを連結する可撓性を有する連結帯を更に備えている、速結端子である。
【0095】
本発明の第8の態様は、上記した本発明の第7の態様において、前記連結帯は、ねじ挿通孔を有するねじ止め片であって、透かし孔により輪郭部が形成されているねじ止め片を含んでおり、前記ねじ止め片は、前記ケースに一体化されているケース連結部と、前記透かし孔を跨いで前記連結帯に架け渡されている架け渡し部であって、切断予定箇所となる架け渡し部とを有している、速結端子である。
【符号の説明】
【0096】
2 速結端子
4 ケース
6 コネクタ
12 連結帯
14 底壁
24 第1ガイド孔
28 第2ガイド孔
30 第1V字溝
32 第2V字溝
90 接続部材
150 第1の突き刺し刃
152 第2の突き刺し刃
B1 第1の基準線
B2 第2の基準線
L1 第1の電線
L2 第2の電線