(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】舶用内燃機関
(51)【国際特許分類】
F02M 37/00 20060101AFI20230216BHJP
F02M 43/00 20060101ALI20230216BHJP
F02D 19/12 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
F02M37/00 341H
F02M37/00 331B
F02M43/00
F02D19/12 A
(21)【出願番号】P 2018178063
(22)【出願日】2018-09-21
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】303047034
【氏名又は名称】株式会社ジャパンエンジンコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋口 純
(72)【発明者】
【氏名】三柳 晃洋
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和久
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-179403(JP,A)
【文献】特開2006-009631(JP,A)
【文献】特開2015-187407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00-37/54
F02M 43/00
F02D 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室を区画するシリンダと、
前記燃焼室内に臨むよう設けられ、燃料に併せて水を噴射可能な燃料噴射弁と、
前記燃料噴射弁へ供給される水を貯留する水タンクと、
前記燃料噴射弁から排出されるドレンが流通するドレン路と、
前記ドレンを貯留する燃料油ドレンタンクと、
前記水タンクおよび前記燃料噴射弁の間に接続される給水管と、
前記給水管に設けられ、前記水タンクから前記燃料噴射弁まで水を圧送する水ポンプと、を備え、
前記ドレン路は、前記燃料噴射弁と前記水タンクとの間に接続され
、
前記ドレン路は、前記燃料噴射弁から前記燃料油ドレンタンクに至る第1経路と、前記燃料噴射弁から前記水タンクに至る第2経路との間で切替可能に構成され、
前記ドレン路を前記第1経路または前記第2経路に設定する切替弁と、
前記水ポンプの作動状況を検知するとともに、その検知結果に対応した信号を前記切替弁に入力するセンサと、をさらに備え、
前記切替弁は、
前記水ポンプが作動していないときには、前記燃料噴射弁から燃料のみが噴射されているものとして前記ドレン路を前記第1経路に設定するとともに、
前記水ポンプが作動しているときには、前記燃料噴射弁から燃料に併せて水が噴射されているものとして前記ドレン路を前記第2経路に設定する
ことを特徴とする舶用内燃機関。
【請求項2】
請求項
1に記載の舶用内燃機関において、
前記センサは、前記水ポンプの出口圧力を検出し、
前記切替弁は、前記出口圧力が所定圧以下のときには、前記ドレン路を前記第1経路に設定する一方、前記出口圧力が所定圧を上回るときには、前記ドレン路を前記第2経路に設定する
ことを特徴とする舶用内燃機関。
【請求項3】
請求項
1に記載の舶用内燃機関において、
前記センサは、前記ドレンに含まれる水分を判定するとともに、その判定結果に対応した信号を前記切替弁に入力する水分センサ
であって、
前記切替弁は、前記水分が所定値以下のときには、前記ドレン路を前記第1経路に設定する一方、前記水分が所定値を上回るときには、前記ドレン路を前記第2経路に設定する
ことを特徴とする舶用内燃機関。
【請求項4】
請求項
1から3のいずれか1項に記載の舶用内燃機関において、
前記燃料噴射弁以外に供給するための水を貯留する第2の水タンクを備える
ことを特徴とする舶用内燃機関。
【請求項5】
請求項
1から4のいずれか1項に記載の舶用内燃機関において、
前記水タンクは、油水分離機能を有しており、
前記水タンクは、前記ドレン路を介して導入された前記ドレンのうち、前記油水分離機能を通じて分離された水分を前記水タンクに蓄えるように構成されている
ことを特徴とする舶用内燃機関。
【請求項6】
請求項
1から5のいずれか1項に記載の舶用内燃機関において、
前記ドレン路には油水分離機能が設けられ、
前記ドレン路は、前記ドレンのうち、前記油水分離機能を通じて分離された水分を前記水タンクへ導くように構成されている
ことを特徴とする舶用内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、舶用内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
舶用内燃機関においては、NOxの排出量を削減するために、1つの燃料噴射弁から燃料に併せて水を噴射することが広く知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、燃料噴射弁に対して水を注入することにより、1つの燃料噴射弁から燃料と水を層状に噴射すること(いわゆる層状水噴射)が開示されている。同文献によれば、燃料、水、燃料の順番で燃焼室内に供給されることで、火炎の温度上昇が抑えられ、NOxの発生が抑制される。
【0004】
また特許文献2には、燃料と水を層状に噴射する代わりに、燃料と水を混ぜ合わせて成る水エマルジョン燃料を用いることが開示されている。同文献によれば、水エマルジョン燃料を使用すると、排気中のNOxを削減することができる。
【0005】
さらに、前記特許文献2には、燃料噴射ポンプ装置から排出されるドレン(水エマルジョン燃料ドレン)を燃料供給ラインに戻すことにより、戻したドレンを水エマルジョン燃料として再利用することも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-130070号公報
【文献】特許第4897064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明者らは、前記特許文献2に記載されているように、燃料に併せて水を噴射する場合であっても、燃料噴射弁から排出されるドレンを燃料として再利用することを検討した。
【0008】
しかし、燃料に併せて水を噴射する場合、ドレン中に過度の水分が含まれる可能性がある。この場合、燃料として用いるには不適格であるのに加えて、エネルギーロス等、内燃機関を運転する上で種々の問題を招き得ることが新たに判った。
【0009】
例えば、ドレン中に多量の水が含まれていた場合、これまでの手法では、ドレンを廃油用のタンクに導くとともに、これを脱水・脱気処理した上で焼却処理せざるを得なかった。そのため、造水装置等を利用して生成された水が無駄になるばかりでなく、脱水・脱気処理、および焼却処理を行う分だけエネルギーロスとなる。
【0010】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、燃料に併せて水を噴射可能な舶用内燃機関において、燃料噴射弁から排出されるドレンを適切に再利用することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ここに開示する技術は、舶用内燃機関に係る。この舶用内燃機関は、燃焼室を区画するシリンダと、前記燃焼室内に臨むよう設けられ、燃料に併せて水を噴射可能な燃料噴射弁と、前記燃料噴射弁へ供給される水を貯留する水タンクと、前記燃料噴射弁から排出されるドレンが流通するドレン路と、を備え、前記ドレン路は、前記燃料噴射弁と前記水タンクとの間に接続されている。
【0012】
前記の構成によると、燃料噴射弁は、燃料に併せて水を噴射可能に構成されている。ここで、「燃料に併せて水を噴射可能」とは、少なくとも、燃料のみの噴射と、燃料および水の噴射とが両方とも実行可能であることを指す。また、「燃料および水の噴射」の語には、燃料と水を層状に噴射することと、燃料と水を混ぜ合わせた燃料を噴射することの両方が含まれる。
【0013】
そして、燃料噴射弁から排出されるドレンは、ドレン路を介して水タンクに導かれるようになる。例えば、燃料噴射弁から燃料に併せて水が噴射されるとき、油水混合物として排出されるドレンは、水タンクに導かれることになる。
【0014】
ドレンが導かれる水タンクは、飲料水等を貯留するためのタンクではなく、燃料噴射弁へ供給される水を貯留するためのタンクであるから、油水混合物の導入が許容される。また、ドレンを燃料として再利用するのではなく、燃料に併せて噴射される水として再利用することで、ドレンを無駄にすることなく再利用することが可能となる。
【0015】
また、前記舶用内燃機関は、前記ドレンを貯留する燃料油ドレンタンクを備え、前記ドレン路は、前記燃料噴射弁から前記燃料油ドレンタンクに至る第1経路と、前記燃料噴射弁から前記水タンクに至る第2経路との間で切替可能に構成され、前記ドレン路を前記第1経路または前記第2経路に設定する切替弁をさらに備え、前記切替弁は、前記燃料噴射弁から燃料のみが噴射されているときには、前記ドレン路を前記第1経路に設定するとともに、前記燃料噴射弁から燃料に併せて水が噴射されているときには、前記ドレン路を前記第2経路に設定する、としてもよい。
【0016】
前記の構成によると、前記切替弁は、燃料噴射弁から燃料に併せて水が噴射されているときには、ドレン路を第2経路に設定する。これにより、油水混合物として排出されるドレンは、水タンクに導かれることになる。
【0017】
また、燃料噴射弁から燃料のみが噴射されているときには、油分を主体とするドレンが排出されるようになる。水タンクは、油水混合物の導入を許容するものの、油分の過度の混入は避けることが望ましい。
【0018】
そこで、前記切替弁は、燃料噴射弁から燃料のみが噴射されているときには、ドレン路を第1経路に設定する。これにより、燃料噴射弁から排出されるドレンを、水タンクではなく燃料油ドレンタンクに導くことができる。
【0019】
このように、燃料噴射弁からの噴射態様に応じてドレンの供給先を切り替えることで、燃料噴射弁から排出されるドレンを適切に再利用することができる。
【0020】
また、前記舶用内燃機関は、前記水タンクおよび前記燃料噴射弁の間に接続される給水管と、前記給水管に設けられ、前記水タンクから前記燃料噴射弁まで水を圧送する水ポンプと、前記水ポンプの作動状況を検知するとともに、その検知結果に対応した信号を前記切替弁に入力するセンサと、を備え、前記切替弁は、前記水ポンプが作動していないときには、前記ドレン路を前記第1経路に設定する一方、前記水ポンプが作動しているときには、前記ドレン路を前記第2経路に設定する、としてもよい。
【0021】
前記水ポンプが作動していないときには、水タンクから燃料噴射弁まで水が圧送されておらず、燃料噴射弁から燃料のみが噴射されていると考えられる。一方で、水ポンプが作動しているときには、水タンクから燃料噴射弁まで水が圧送されるため、燃料噴射弁から燃料に併せて水が噴射されていると考えられる。
【0022】
前記の構成によると、水ポンプの作動状況に応じて、燃料噴射弁における噴射態様を判定することができる。その判定に基づいて切替弁を制御することで、燃料噴射弁から排出されるドレンを再利用する上で有利になる。
【0023】
また、前記センサは、前記水ポンプの出口圧力を検出し、前記切替弁は、前記出口圧力が所定圧以下のときには、前記ドレン路を前記第1経路に設定する一方、前記出口圧力が所定圧を上回るときには、前記ドレン路を前記第2経路に設定する、としてもよい。
【0024】
この構成によると、水ポンプの出口圧力を通じて、水ポンプの作動状況を判定することが可能となる。切替弁を適切に制御することができるようになるため、燃料噴射弁から排出されるドレンを再利用する上で有利になる。
【0025】
また、前記舶用内燃機関は、前記ドレンに含まれる水分を判定するとともに、その判定結果に対応した信号を前記切替弁に入力する水分センサを備え、前記切替弁は、前記水分が所定値以下のときには、前記ドレン路を前記第1経路に設定する一方、前記水分が所定値を上回るときには、前記ドレン路を前記第2経路に設定する、としてもよい。
【0026】
ドレンに含まれる水分が少ないときは、燃料噴射弁から燃料のみが噴射されていると考えられる。一方で、ドレンに含まれる水分が多いときは、燃料噴射弁から、燃料に併せて水が噴射されていると考えられる。
【0027】
前記の構成によると、ドレンに含まれる水分の多寡に応じて、燃料噴射弁における噴射態様を判定することができる。その判定に基づいて切替弁を制御することで、燃料噴射弁から排出されるドレンを再利用する上で有利になる。
【0028】
また、前記舶用内燃機関は、前記燃料噴射弁以外に供給するための水を貯留する第2の水タンクを備える、としてもよい。
【0029】
この構成によると、燃料噴射弁へ供給される水を貯留するための水タンクとは別に、飲料水の貯留等、他の用途に用いられる第2の水タンクを備えたから、水タンクへの油水混合物の導入が許容されるようになる。これにより、燃料噴射弁から排出されるドレンを再利用する上で有利になる。
【0030】
また、前記水タンクは、油水分離機能を有しており、前記水タンクは、前記ドレン路を介して導入された前記ドレンのうち、前記油水分離機能を通じて分離された水分を前記水タンクに蓄えるように構成されている、としてもよい。
【0031】
この構成によると、水タンクに導入されるドレンは、当該タンクの油水分離機能によって油分と水分とに分離される。そうして分離された油分については、例えば燃料油ドレンタンクに送り込むことで、燃料噴射弁から排出されるドレンを再利用する上で有利になる。
【0032】
また、前記ドレン路には油水分離機能が設けられ、前記ドレン路は、前記ドレンのうち、前記油水分離機能を通じて分離された水分を前記水タンクへ導くように構成されている、としてもよい。
【0033】
この構成によると、ドレン路を流れるドレンは、このドレン路に持たせた油水分離機能によって油分と水分とに分離される。これにより、燃料噴射弁から排出されるドレンを再利用する上で有利になる。
【発明の効果】
【0034】
以上説明したように、前記の舶用内燃機関によると、燃料噴射弁から排出されるドレンを適切に再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、舶用内燃機関の全体構成を例示する図である。
【
図2】
図2は、舶用内燃機関の燃焼室に関連した構成を例示する縦断面図である。
【
図3】
図3は、ドレン路の切替について例示した説明図である。
【
図4】
図4は、ドレン路の切替手順を例示するフローチャートである。
【
図5】
図5は、舶用内燃機関の変形例を示す
図1対応図である。
【
図6】
図6は、ドレン路の切替手順の変形例を示す
図4対応図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は例示である。
図1は、舶用内燃機関(以下、単に「エンジン1」という)の概略構成を例示する図である。また、
図2は、エンジン1の燃焼室14に関連した構成を例示する縦断面図である。
【0037】
エンジン1は、複数のシリンダ11を備えた直列多気筒式の舶用ディーゼル機関である(
図1および
図2には、1つのシリンダ11のみを示す)。このエンジン1は、ユニフロー掃気方式を採用した2ストローク1サイクル機関として構成されており、タンカー、コンテナ船、自動車運搬船等、大型の船舶に搭載される。エンジン1の出力軸は、不図示のプロペラに連結されている。エンジン1が運転することにより、その出力がプロペラに伝達されて船舶が推進するようになっている。
【0038】
ここに開示するエンジン1は、窒素酸化物(NOx)の抑制を主目的として、各シリンダ11の燃料噴射弁15から燃料と水を噴射する燃料・水噴射ディーゼル機関として構成されている。よって、エンジン1は、複数のシリンダ11を有する主機10と、各燃料噴射弁15に燃料を供給する燃料供給システム20と、に加えてさらに、各燃料噴射弁15に水を供給する水供給システム30を備えた構成とされている。エンジン1はまた、燃料噴射弁15から排出される燃料油ドレンを処理するべく、燃料油ドレンシステム40を備えている。
【0039】
(1)全体構成
以下、エンジン1の要部について説明する。
【0040】
-主機-
主機10は、複数のシリンダ11と、各シリンダ11の蓋となるシリンダカバー12と、を有している。各シリンダ11内には、ピストン(不図示)が往復動可能に挿入されている。各シリンダ11の内壁、シリンダカバー12の内壁、およびピストンの頂面によって、シリンダ11毎に燃焼室14が区画されている。
【0041】
主機10は、燃焼室14毎に3つの燃料噴射弁15を有している。各燃料噴射弁15は、燃焼室14内に臨むように設けられており、燃料に併せて水を噴射可能に構成されている。
【0042】
具体的に、燃料噴射弁15は、燃料供給に関連する要素として、高圧燃料管21を介して燃料ポンプ22に接続された燃料通路15aと、燃料通路15aの先端に設けられた油溜め部15bと、燃焼室14内に臨み、かつ油留め部15bに連通する噴口15cと、噴口15cを開閉する針弁15dと、を有している。
【0043】
さらに、燃料噴射弁15は、水の供給に関連する要素として、給水管39を介して噴射水供給ポンプ33に接続された水通路15eと、水通路15eの内圧の高まりに応じて開放される水逆止弁15fと、を有している。水通路15eの先端は、燃料通路15aの途中(油溜め部15bの手前)に接続されている。
【0044】
例えば、噴射水供給ポンプ33が作動していないときには、水通路15eにおける圧の大きさは、水逆止弁15fを開放するほど高くはならない。この場合、水通路15eは閉塞されたままとなり、燃料噴射弁15からは燃料のみが噴射される。
【0045】
一方、噴射水供給ポンプ33が作動しているときには、水通路15eの内圧が高くなる。このとき、燃料通路15aにおける内圧次第では、水逆止弁15fを開放することが可能となる。この場合、水通路15e内の水は、燃料通路15a内の燃料を押し除けつつ、燃料通路15aに流入することになる。
【0046】
その結果、燃料噴射弁15では、油溜め部15b付近に燃料が満たされ、燃料通路15aと水通路15eとの合流部付近に水が満たされ、この合流部よりも上流側には燃料が満たされることになる。これにより、燃料通路15a内においては、あたかも「燃料・水・燃料」の順に層状をなすように配置される。
【0047】
そして、針弁15dが噴口15cを開放すると、燃料通路15a内の順番に従って、燃料と水が燃焼室14内に噴射される(層状水噴射)。もちろん、本開示は、燃料と水が3層を成す構成に限定されない。
図2に示すように、5層以上としてもよい。
【0048】
燃料噴射弁15には、ドレンを排出するためのドレン口(不図示)が設けられている。このドレン口には燃料油ドレン管42が接続されている。燃料油ドレン管42は、燃料噴射弁15から排出されるドレン(燃料噴射弁ドレン)を流通させるように構成されている。燃料油ドレン管42は、高圧燃料管21および燃料ポンプ22にも接続されており、それぞれから排出されたドレンを流通させることができる。
【0049】
-燃料供給システム-
燃料供給システム20は、前述の高圧燃料管21および燃料ポンプ22に加えて、燃料ポンプ22に燃料を供給する燃料供給管23と、閉止弁24と、を有している。燃料供給管23を通じて燃料ポンプ22に供給された燃料は、この燃料ポンプ22によって圧送されることにより、高圧燃料管21を通じて燃料噴射弁15に供給される。高圧燃料管21は3本に分岐しており、それぞれが燃料噴射弁15に接続されている。
【0050】
燃料供給システム20はまた、燃料戻り管25と、閉止弁26と、を有している。燃料ポンプ22によって加圧された燃料の一部が、燃料戻り管25に戻されるようになっている。
【0051】
-水供給システム-
エンジン1には、海水から清水を生成すると共に、生成された清水を各所へ供給するように構成された種々の機器が接続されている。そうして接続された機器の一部が、前述の水供給システム30を構成している。
【0052】
具体的に、エンジン1が搭載される船舶には、海水を蒸留して清水を生成する造水装置201と、同装置により生成された清水を圧送するための蒸留水ポンプ202と、蒸留水ポンプ202により圧送された清水を蓄える清水タンク203と、清水タンク203に蓄えられた清水を圧送するための清水ポンプ204と、清水ポンプ204により圧送される清水を一時的に蓄える圧力タンク205と、が設けられている。圧力タンク205に蓄えられる清水は、燃料噴射弁15以外の各所に供給されるようになっており、その供給先において様々な用途に使用される。
【0053】
図1に示すように、造水装置201から圧力タンク205に至る給水管206のうち、蒸留水ポンプ202と清水タンク203との間の部位が、二股に分岐している。そうして分岐した給水管206は、水供給システム30を構成する噴射水タンク31に接続されている。
【0054】
よって、造水装置201によって生成された清水は、燃料噴射弁15に供給される水を蓄える噴射水タンク31と、燃料噴射弁15以外の各所に供給される水を蓄える清水タンク203と、に分配されることになる。噴射水タンク31は「水タンク」の例示であり、清水タンク203は「第2の水タンク」の例示である。
【0055】
水供給システム30はまた、噴射水タンク31および燃料噴射弁15の間に接続される給水管39を備えている。この給水管39には、噴射水タンク31から燃料噴射弁15に向かって順に、噴射水タンク31から供給される水を濾過するフィルタ32と、噴射水タンク31から燃料噴射弁15まで水を圧送する前述の噴射水供給ポンプ33と、噴射水供給ポンプ33によって圧送される水を一時的に蓄える圧力タンク34と、を有している。噴射水供給ポンプ33は、「水ポンプ」の例示である。
【0056】
給水管39のうち、圧力タンク34よりも下流側の部位は、シリンダ11毎に分岐している(
図1では1つのみ図示)。そうして分岐した各々には、閉止弁35が設けられている。
【0057】
前述のように、燃焼室14毎に3つの燃料噴射弁15が設けられている。そこで、3つの燃料噴射弁15の各々に水を供給するべく、シリンダ11毎に分岐した各給水管39は、閉止弁35の下流側に設けた水噴射ポンプ36において3本に分岐している。水噴射ポンプ36において分岐した給水管39は、各燃料噴射弁15の水通路15eに接続されている。この水噴射ポンプ36には、当該水噴射ポンプ36から漏れ出したドレン水を導くための水ドレン管37が接続されている。水ドレン管37は、シリンダ11毎に合流しており、水噴射ポンプ36と噴射水タンク31とを相互に接続している。水ドレン管37は、水噴射ポンプ36等において生じたドレン水を噴射水タンク31に送り戻すことができる。噴射水タンク31へ戻されたドレン水は、燃料噴射弁15からの噴射に再利用することができる。また、水ドレン管37には、閉止弁38が設けられている。
【0058】
噴射水供給ポンプ33が作動すると、燃料噴射弁15へ注水される。水通路15eにおける圧を高めることで、前述のように燃料噴射弁15から水を噴射することが可能となる。
【0059】
また、燃料噴射弁15における噴射状況を判定するためには、噴射水供給ポンプ33の作動状況を用いることが考えられる。そこで、給水管39には、噴射水供給ポンプ33の作動状況を検知するための圧力センサ101が設けられている。この圧力センサ101は、噴射水供給ポンプ33の出口圧力を検出するように構成されている。これにより、例えば噴射水供給ポンプ33の出口圧力が所定圧以下の場合には、噴射水供給ポンプ33が作動しておらず、燃料噴射弁15には注水されていないと判断することができる。この場合は、燃料噴射弁15から燃料のみが噴射されていると判定され得る。圧力センサ101は、「センサ」の例示である。
【0060】
一方、噴射水供給ポンプ33の出口圧力が所定圧を超える場合には、噴射水供給ポンプ33が作動しており、燃料噴射弁15に注水されていると判断することができる。この場合は、燃料噴射弁15から燃料に併せて水が噴射されていると判定され得る。
【0061】
なお、圧力センサ101による判定に用いる「所定圧」は、例えば、噴射水供給ポンプ33の使用圧力の下限としてもよい。このように設定することで、より的確に判定することが可能となる。
【0062】
圧力センサ101の検知信号は、燃料油ドレン管42に設けた切替弁43に入力されるようになっている。切替弁43は、電磁式の三方弁であって、圧力センサ101からの検知信号に応じて作動するように構成されている。切替弁43の動作について詳述するべく、以下、燃料油ドレン管42に係る構成について説明する。
【0063】
-燃料油ドレンシステム-
燃料油ドレンシステム40は、高圧燃料管21、燃料ポンプ22および燃料噴射弁15の各々から排出されるドレンを貯留する燃料油ドレンタンク41と、ドレンが流通する燃料油ドレン管42と、を有している。
【0064】
詳しくは、燃料油ドレンタンク41は、大気に開放しており、不図示のボイラー、および主機10の主機燃料セットリングタング等に接続されている。燃料油ドレンタンク41に貯留されるドレンは、ボイラーにおいて焼却処理を施したり、燃料油ドレンタンク41から排出して主機10で再利用したりすることができる。
【0065】
また、燃料油ドレン管42は、高圧燃料管21に接続された第1ドレン管42aと、燃料ポンプ22に接続された第2ドレン管42bと、燃料噴射弁15に接続された第3ドレン管42cと、が合流して成る。
【0066】
さらに詳しくは、第1ドレン管42aは、高圧燃料管21から排出されるドレン(高圧燃料管ドレン)を流通させるように構成されており、ドレンの状況を目視するためのホッパ44と、高圧燃料管21におけるリークを検出するためのリーク検出機構45と、を介して第2ドレン管42bと合流している。
【0067】
また、第2ドレン管42bは、燃料ポンプ22から排出されるドレン(燃料ポンプドレン)を流通させるように構成されており、第1ドレン管42aとの合流部よりも下流側の部位が燃料油ドレンタンク41に接続されている。すなわち、高圧燃料管ドレンおよび燃料ポンプドレンは、第2ドレン管42bを介して燃料油ドレンタンク41に導かれるようになっている。
【0068】
一方、第3ドレン管42cは、燃料噴射弁15から排出されるドレン(燃料噴射弁ドレン)を流通させるように構成されており、1つのシリンダ11につき、3つの燃料噴射弁15の各々から延びるドレン管が合流して成る。この合流部には、ドレンの状況を目視するためのホッパ46が設けられている。
【0069】
第3ドレン管42cによって区画される管路(ドレン路)Pのうち、上記ホッパ46よりも下流側の部位は、燃料噴射弁15から燃料油ドレンタンク41に至る第1経路P1と、燃料噴射弁15から噴射水タンク31に至る第2経路P2と、の間で切り替わるようになっている。すなわち、ドレン路Pのうち、第2経路P2に相当する部位は、燃料噴射弁15と、噴射水タンク31と、の間に接続されているに等しい。
【0070】
第1経路P1と第2経路P2との切替は、前述の切替弁43が実行する。この切替弁43を作動させることによって、ドレン路Pを第1経路P1または第2経路P2に設定することができる(
図3も参照)。
【0071】
また、ドレン路Pは、第1経路P1または第2経路P2に切り替わるように構成された経路と、第3経路P3とに分岐している。この第3経路P3は、逆止弁47を介して水ドレン管37に接続されている。すなわち、
図1に示すように、ドレン路Pは、3つの燃料噴射弁15の各々から延びる管路がホッパ46にて合流した後に、第3経路P3と、それ以外の経路と、に分岐する。
【0072】
ここで、前者の経路(第3経路P3)は、水ドレン管37を介して噴射水タンク31に至る。後者の経路(第3経路P3以外の経路)は、前述のように、切替弁43の作動状況に応じて、第1経路P1と、第2経路P2とのいずれかに設定される。
【0073】
なお、燃料油ドレンシステム40に係る構成として、前述の噴射水タンク31は、油水分離機能を備えている。この機能は、噴射水タンク31の内部構造に工夫を凝らして実現してもよいし、
図1に示すように、噴射水タンク31の内外に油水分離装置31aを設けて実現してもよい。
【0074】
噴射水タンク31は、第2経路P2を介して導入されたドレンのうち、油水分離機能を通じて分離された水分については、そのまま噴射水タンク31に蓄える。一方、この油水分離機能を通じて分離された油分については、噴射水タンク31から排出して燃料油ドレンタンク41へ導くように構成されている(
図3も参照)。
【0075】
-コントローラ-
コントローラ100は、少なくとも、燃料ポンプ22を作動させるための油圧を制御する電磁弁、および噴射水供給ポンプ33を作動させるための油圧を制御する電磁弁に対して電気的に接続されている。コントローラ100は、エンジン1の回転数および負荷等、エンジン1の運転状態を示す信号を受けて制御信号を生成し、これを上述した各電磁弁に出力してエンジン1の運転を制御する。なお、コントローラ100は、主機10用のコントローラとは別に設置してもよい。
【0076】
例えば、エンジン1の運転状態が低負荷域にあるとき、コントローラ100は、層状水噴射を実施せず、燃料噴射弁15から燃料のみを噴射させる。ここで、「低負荷域」とは、エンジン1が実現可能な負荷の範囲を低負荷域、中負荷域、高負荷域に3分したときの低負荷域と定義してもよい。この場合、燃料噴射弁ドレンには、主に、油分が含まれることになる。
【0077】
一方で、エンジン1の負荷が中負荷域または高負荷域にあるとき、コントローラ100は、層状水噴射を実施する。これにより、燃焼室14内に燃料と水が供給されて、火炎の温度上昇が抑制される。その結果、NOxの生成を抑制することができる。この場合、燃料噴射弁ドレンには、燃料のみを噴射させる場合と比較して多量の水分が含まれることになる。燃料噴射弁ドレンは、油水混合物となる。
【0078】
(2)ドレンの再利用について
図3は、ドレン路Pの切替について例示した説明図である。
【0079】
本願発明者らは、
図2に示すように、燃料に併せて水を噴射する場合であっても、燃料噴射弁ドレンを燃料として再利用することを検討した。
【0080】
しかし、燃料に併せて水を噴射する場合、燃料噴射弁ドレン中に過度の水分が含まれる可能性がある。この場合、燃料として用いるには不適格であるのに加えて、エネルギーロス等、エンジン1を運転する上で種々の問題を招き得ることが新たに判った。
【0081】
例えば、燃料噴射弁ドレン中に多量の水が含まれていた場合、これまでの手法(特に、層状水噴射に関連した手法)では、燃料噴射弁ドレンを廃油用のタンクへ導くとともに、これを脱水・脱気処理した上で焼却処理せざるを得なかった。そのため、造水装置201を利用して生成された清水が無駄になるばかりでなく、脱水・脱気処理、および、焼却処理を行う分だけエネルギーロスとなる。
【0082】
また、
図2に示すような層状水噴射は、前述のように、エンジン1の負荷が低いときには実行されない。この場合、脱水・脱気処理等がそもそも不要であり、廃油しては燃料が無駄になる。よって、燃料噴射弁15からの噴射態様に応じて、燃料噴射弁ドレンの取り扱いを適切に変更することが求められる。
【0083】
一方、この構成例における切替弁43は、ドレン路Pを第1経路P1または第2経路P2に設定することができる。そのことで、燃料噴射弁ドレンは、第1経路P1を介して燃料油ドレンタンク41に導かれるか、或いは、第2経路P2を介して噴射水タンク31に導かれるようになる。
【0084】
具体的に、切替弁43は、エンジン1が中負荷域または高負荷域にあるときのように、燃料噴射弁15から燃料に併せて水が噴射されている場合は、
図3の下図に示すようにドレン路Pを第2経路P2に設定する。
【0085】
詳しくは、切替弁43は、噴射水供給ポンプ33の出口圧力が前述の所定圧を上回る場合、つまり、噴射水供給ポンプ33が作動している場合には、燃料に併せて水が噴射されていると判断されるためドレン路Pを第2経路P2に設定する。このように設定することで、油水混合物としての燃料噴射弁ドレンは、噴射水タンク31に導かれることになる。
【0086】
噴射水タンク31は、飲料水等を貯留するためのタンクではなく、燃料噴射弁15へ供給される水を貯留するためのタンクであるから、油水混合物の導入が許容される。また、燃料噴射弁ドレンを燃料として再利用するのではなく、燃料に併せて噴射される水として再利用することで、ドレンを無駄にすることなく再利用することが可能となる。
【0087】
ここで、噴射水タンク31は、油水混合物の導入を許容するものの、油分の過度の混入は避けることが望ましい。そこで、切替弁43は、エンジン1が低負荷域にあるときのように、燃料噴射弁15から燃料のみが噴射されている場合は、
図3の上図に示すようにドレン路Pを第1経路P1に設定する。
【0088】
詳しくは、切替弁43は、噴射水供給ポンプ33の出口圧力が所定圧以下の場合、つまり、噴射水供給ポンプ33が作動していない場合は、燃料のみが噴射されていると判断されるためドレン路Pを第1経路P1に設定する。このように設定することで、油分を主体とした燃料噴射弁ドレンは、燃料油ドレンタンク41に導かれるようになる。
【0089】
このように、燃料噴射弁15からの噴射態様に応じて燃料噴射弁ドレンの供給先を切り替えることで、燃料噴射弁ドレンを適切に再利用することができる。
【0090】
また、噴射水供給ポンプ33の出口圧力を通じて、その作動状況を判定することで、切替弁43を適切に制御することができるようになる。これにより、燃料噴射弁ドレンを再利用する上で有利になる。
【0091】
また、
図1に示すように、燃料噴射弁15へ供給される水を貯留するための噴射水タンク31とは別に、飲料水の貯留等、他の用途に用いられる清水タンク203を備えたから、噴射水タンク31への油水混合物の導入が許容されるようになる。これにより、燃料噴射弁ドレンを再利用する上で有利になる。
【0092】
また、
図1および
図3に示すように、噴射水タンク31に導入される燃料噴射弁ドレンは、この噴射水タンク31に設けた油水分離装置31aによって油分と水分とに分離される。そうして分離された油分については燃料油ドレンタンク41へ導くことで、燃料噴射弁ドレンを再利用する上で有利になる。
【0093】
-切替手順の具体例-
図4は、ドレン路Pの切替手順を例示するフローチャートである。
【0094】
まず、切替弁43に圧力センサ101の検知信号が入力される(ステップS101)。続いて、水ポンプとしての噴射水供給ポンプ33における出口圧力が、所定圧を超えているか否かを判定する(ステップS102)。
【0095】
ステップS102の判定がYESの場合、噴射水供給ポンプ33が作動しておらず、燃料噴射弁15から燃料のみが噴射されていると判定する(ステップS103)。この判定を受けて、切替弁43は、ドレン路Pを第1経路P1に設定する(ステップS104)。この設定により、燃料噴射弁15から排出されるドレンは、燃料油ドレンタンク41に導かれるようになる(ステップS105)。
【0096】
一方、ステップS102の判定がNOであった場合、噴射水供給ポンプ33が作動しており、燃料噴射弁15から燃料と水が噴射されていると判定する(ステップS106)。この判定を受けて、切替弁43は、ドレン路Pを第2経路P2に設定する(ステップS107)。この設定により、燃料噴射弁15から排出されるドレンは、噴射水タンク31に導かれるようになる(ステップS108)。そうして導かれたドレンに含まれる油分は、油水分離装置31aによって分離されて燃料油ドレンタンク41に導かれる。
【0097】
(4)舶用内燃機関の変形例
図5は、舶用内燃機関の変形例を示す
図1対応図である。この変形例におけるドレン路P’は、前記実施形態と同様に、第1経路P1’と第2経路P2’との間で切り替えることができる。このうち、第2経路P2’は、前記実施形態のように噴射水タンク31に対し直に接続されるのではなく、水ドレン管37を介して噴射水タンク31に接続されている。
【0098】
また、変形例に係る第2経路P2’には、油水分離機能が設けられている。具体的に、第2経路P2’における中途の部位には、燃料噴射弁ドレンを一時的に蓄える油水タンク48と、油水分離装置48aと、が設けられている。油水分離装置48aは、油水分離機能を有しており、油水タンク48に蓄えられた燃料噴射弁ドレンを油分と水分とに分離することができる。
【0099】
そして、変形例に係る第2経路P2’は、燃料噴射弁ドレンのうち、前述の油水分離機能を通じて分離された油分については燃料油ドレンタンク41へ導く一方、油水分離機能を通じて分離された水分については噴射水タンク31へ導くように構成されている。これにより、燃料噴射弁ドレンを再利用する上で有利になる。
【0100】
なお、
図5に示す変形例において油水タンク48は必須ではない。油水分離装置48a単体で構成してもよい。或いは、油水タンク48の内部構造に工夫を凝らすことで、油水タンク48自体に油水分離機能を持たせてもよい。油水タンク48に油水分離機能を持たせた場合、油水分離装置48aは不要となる。
【0101】
ところで、燃料噴射弁ドレンに含まれる水分が少ないときは、燃料噴射弁15から燃料のみが噴射されていると考えられる。一方で、燃料噴射弁ドレンに含まれる水分が多いときは、燃料噴射弁15から、燃料に併せて水が噴射されていると考えられる。
【0102】
そこで、
図5に示す変形例は、圧力センサ101に代えて、燃料噴射弁ドレンに含まれる水分を判定する水分センサ102を備えている。水分センサ102は、その判定結果に対応した検知信号を切替弁43に入力する。
【0103】
水分センサ102によって検出された水分が所定値以下のときには、燃料のみが噴射されていると判断することができる。このとき、切替弁43は、ドレン路P’を第1経路P1’に設定する。
【0104】
一方、水分センサ102によって検出された水分が所定値を上回るときには、燃料に併せて水が噴射されていると判断することができる。このとき、切替弁43は、ドレン路P’を第2経路P2’に設定する。
【0105】
このように、ドレンに含まれる水分の多寡に応じて、燃料噴射弁15における噴射態様を判定することができる。その判定に応じて切替弁43を制御することで、前記実施形態と同様に、燃料噴射弁15から排出されるドレンを再利用する上で有利になる。
【0106】
-切替手順の変形例-
図6は、ドレン路P’の切替手順の変形例を示す
図4対応図である。
【0107】
まず、切替弁43に水分センサ102の検知信号が入力される(ステップS201)。続いて、燃料噴射弁ドレンに含まれる水分が、所定値を超えているか否かを判定する(ステップS202)。
【0108】
ステップS202の判定がYESの場合、噴射水供給ポンプ33が作動しておらず、燃料噴射弁15から燃料のみが噴射されていると判定する(ステップS203)。この判定を受けて、切替弁43は、ドレン路P’を第1経路P1’に設定する(ステップS204)。この設定により、燃料噴射弁15から排出されるドレンは、燃料油ドレンタンク41に導かれるようになる(ステップS205)。
【0109】
一方、ステップS202の判定がNOであった場合、噴射水供給ポンプ33が作動しており、燃料噴射弁15から燃料と水が噴射されていると判定する(ステップS206)。この判定を受けて、切替弁43は、ドレン路P’を第2経路P2’に設定する(ステップS207)。この設定により、燃料噴射弁15から排出されるドレンは、水ドレン管37を介して噴射水タンク31に導かれるようになる(ステップS208)。噴射水タンク31へと導かれる途中で、ドレンに含まれる油分が油水分離装置48aによって分離される。そうして分離された油分は、燃料油ドレンタンク41に導かれることになる。
【0110】
《他の実施形態》
前記実施形態においては、圧力センサ101の検知信号が切替弁43に入力されるようになっていたが、この構成には限定されない。例えば、圧力センサ101の検知信号をコントローラ100に入力してもよい。この場合、コントローラ100は、入力された検知信号に基づいて制御信号を生成し、そうして生成された制御信号を切替弁43に入力することになる。水分センサ102についても同様である、
また、前記実施形態では、燃料に併せて水を噴射する構成の一例として、層状水噴射を行うエンジン1について説明したが、ここに開示された技術は、層状水噴射には限定されない。例えば、本開示は、燃料と水を混ぜ合わせた水エマルジョン燃料を用いるエンジンに適用することもできる。
【0111】
また、前記実施形態では、噴射水供給ポンプ33が作動しているか否かに応じてドレン路Pを設定するように構成されていたが、この構成には限られない。
【0112】
例えば、切替弁43は、水ポンプとしての水噴射ポンプ36が作動していないときには、ドレン路Pを第1経路P1に設定する一方、水噴射ポンプ36が作動しているときには、ドレン路Pを第2経路P2に設定する、としてもよい。
【0113】
このような構成を実現するためには、例えば、水噴射ポンプ36としてプランジャー式のポンプを採用した場合、プランジャーの動作を監視するとともに、その動作が検出されたか否かに基づいて、切替弁43を制御すればよい。
【符号の説明】
【0114】
1 エンジン(舶用内燃機関)
11 シリンダ
14 燃焼室
15 燃料噴射弁
31 噴射水タンク(水タンク)
31a 油水分離装置
33 噴射水供給ポンプ(水ポンプ)
41 燃料油ドレンタンク
43 切替弁
100 コントローラ
101 圧力センサ(センサ)
P ドレン路
P1 第1経路
P2 第2経路