(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】マット材、巻付体及びマット材の挿入方法
(51)【国際特許分類】
F01N 1/24 20060101AFI20230216BHJP
F01N 13/14 20100101ALI20230216BHJP
F02B 77/13 20060101ALI20230216BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20230216BHJP
G10K 11/168 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
F01N1/24 F
F01N1/24 A
F01N13/14
F02B77/13 G
G10K11/16 110
G10K11/168
(21)【出願番号】P 2018200155
(22)【出願日】2018-10-24
【審査請求日】2021-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】苅谷 悟
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-086211(JP,A)
【文献】特開2001-184076(JP,A)
【文献】特開2018-163233(JP,A)
【文献】特開平11-202873(JP,A)
【文献】特開平05-222912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/24
F01N 13/14
F02B 77/13
G10K 11/16
G10K 11/168
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と、前記第1主面と反対側の第2主面と、第1端部と、前記第1端部と反対側の第2端部を有する平面視矩形状のマット材であって、
前記マット材は、前記第1端部から所定の距離だけ前記第2端部に向かう領域である第1領域と、前記第1領域に隣接する第2領域とを有し、
前記第1領域には複数の貫通孔が形成されており、
前記マット材は、前記第1主面を内側にして少なくとも2周巻回されることになり、
前記第1領域は、巻回された前記マット材において、1周目に位置することになり、
前記第2領域は、巻回された前記マット材において、2周目に位置することにな
り、
前記貫通孔は、前記第1領域のみに形成されていることを特徴とするマット材。
【請求項2】
前記マット材を側面視した際に、前記第1領域は、円状又は楕円状に巻回されることになる請求項1に記載のマット材。
【請求項3】
前記マット材を側面視した際に、前記第1領域は円状に巻回されることになり、
前記第1領域の長さをL
1とし、前記マット材の厚さをTとすると、
前記第2領域の長手方向の長さが、(L
1+2π×T)×0.95~(L
1+2π×T)×1.05である請求項2に記載のマット材。
【請求項4】
前記マット材は、無機繊維からなり、前記第1領域の前記第1主面には、無機材料層が形成されている請求項1~3のいずれかに記載のマット材。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のマット材を筒状体に挿入するマット材の挿入方法であって、前記マット材の第1主面が内側になるように、前記マット材の第1領域を巻回する、第1領域巻回工程と、
前記第1領域巻回工程の後、前記マット材の第2領域を、前記マット材の第1領域の第2主面を1周するように巻回する、第2領域巻回工程と、
前記第2領域巻回工程の後、前記マット材の長手方向と垂直な方向を挿入方向として前記マット材を前記筒状体に挿入する挿入工程とを含むことを特徴とするマット材の挿入方法。
【請求項6】
前記第1領域巻回工程及び前記第2領域巻回工程では、挿入方向側の前記マット材が凸状になるように前記マット材を螺旋状に巻回する請求項5に記載のマット材の挿入方法。
【請求項7】
前記第1領域巻回工程及び前記第2領域巻回工程では、挿入方向側の前記マット材が凹状になるように前記マット材を螺旋状に巻回する請求項5に記載のマット材の挿入方法。
【請求項8】
前記筒状体は、消音器である請求項5~7のいずれかに記載のマット材の挿入方法。
【請求項9】
第1主面と、前記第1主面と反対側の第2主面と、第1端部と、前記第1端部と反対側の第2端部を有する平面視矩形状のマット材と、前記第1主面が接するように前記マット材が巻き付けられた管状体とからなる巻付体であって、
前記マット材は、前記管状体に少なくとも2周するように巻き付けられており、
前記第1主面と前記管状体とが接する1周目の前記マット材の領域は第1領域であり、
2周目の前記マット材の領域は、第2領域であり、
前記第1領域には複数の貫通孔が形成されており、
前記管状体の側壁には、管状体貫通孔が形成されて
おり、
前記貫通孔は前記第1領域のみに形成されていることを特徴とする巻付体。
【請求項10】
前記管状体は、底部の形状が円状又は楕円状である請求項9に記載の巻付体。
【請求項11】
前記管状体は、パンチングメタルからなる請求項9又は10に記載の巻付体。
【請求項12】
前記マット材は、無機繊維からなり、前記第1領域の前記第1主面には、無機材料層が形成されている請求項9~11のいずれかに記載の巻付体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マット材、巻付体及びマット材の挿入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等のエンジンの周囲に配置されるエンジンカバーや、エキゾーストマニホールドカバー、消音器等には、これらの部材から発せられる熱や音等を遮蔽、吸収するために防音断熱材が配設されている。
【0003】
特許文献1には、遮音性能を向上させるために、表面に溝又は窪みが設けられた繊維集合体から成る遮音材であって、上記遮音材の表面に対し直角方向からみた該溝又は窪みの面積が該遮音材全面積の1~15%であり、且つ該溝又は窪みの深さが該遮音材の厚さの1~4~3/4である遮音材が開示されている。この特許文献1では、上記溝又は上記窪みを圧縮加工や切削加工等により設けることが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、広い周波数領域において、良好な吸音特性を有し、また、目的等に応じて所望の周波数域での吸音特性を高くするため、マット状の多孔質体の音源と対向する側の面に皮膜が設けられ、上記皮膜と多孔質体とを連通する貫通孔が設けられた層と、音源と対向する側の面に皮膜が設けられ、貫通孔は設けられていない層とを積層してなる吸音構造体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-202873号公報
【文献】特許第3741413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に係る遮音材では、1枚の材料に切削加工等により溝又は窪みを設けるため、切削加工等が終了すれば、直ぐに遮音材として使用することができ、取り扱い性は良い。しかしながら、上記遮音材では、所定の深さを有する有底孔を切削加工等により形成する必要があるため、製造に手間がかかり、生産性がよくないという問題がある。
【0007】
一方、特許文献2に係る吸音構造体では、2枚の多孔質体のうち、1枚に貫通孔を形成すればよいので、簡単に各部材を製造することができるが、1枚に貫通孔を形成した後、両者を接着剤により貼り合わせる必要があるため、取り扱い性が良くないという問題がある。
また、接着剤を用いるため、層間に接着剤層が形成され、吸音性を阻害することが懸念される。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、取り扱い性がよく、生産性に優れたマット材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明のマット材は、
第1主面と、上記第1主面と反対側の第2主面と、第1端部と、上記第1端部と反対側の第2端部を有する平面視矩形状のマット材であって、
上記マット材は、上記第1端部から所定の距離だけ上記第2端部に向かう領域である第1領域と、上記第1領域に隣接する第2領域とを有し、
上記第1領域には複数の貫通孔が形成されており、
上記マット材は、上記第1主面を内側にして少なくとも2周巻回されることになり、
上記第1領域は、巻回された上記マット材において、1周目に位置することになり、
上記第2領域は、巻回された上記マット材において、2周目に位置することになることを特徴とする。
【0010】
本発明のマット材は、貫通孔を有する第1領域と、第1領域に隣接する第2領域を有する。
本発明のマット材は、第1主面を内側にして、少なくとも2周巻回されることになる。
この際、第1領域は、巻回されたマット材において、1周目に位置することになり、第2領域は、巻回された上記マット材において、2周目に位置することになる。
すなわち、第1領域が巻回され、その外側(第1領域の第2主面側)を第2領域が巻回されることになる。
そのため、第1領域の第2主面側の貫通孔の底部には、第2領域の第1主面が位置することになる。つまり、巻回されたマット材では、マット材の内側に第1領域の貫通孔と第2領域の第1主面からなる有底孔が形成されることになる。
本発明のマット材を用いることにより、内側に有底孔を有する巻回されたマット材を容易に作製することができる。
【0011】
なお、本発明のマット材において、第1領域及び第2領域は、本発明のマット材を少なくとも2周することにより定まり、1周目に巻回される領域が第1領域であり、2周目に巻回される領域が第2領域である。
【0012】
本発明のマット材は、上記マット材を側面視した際に、上記第1領域は、円状又は楕円状に巻回されることが望ましい。
円状又は楕円状に巻回されたマット材は、外部からの圧力が集中しにくくなり、破損しにくくなる。
【0013】
本発明のマット材は、上記マット材を側面視した際に、上記第1領域は円状に巻回されることになり、上記第1領域の長さをL1とし、上記マット材の厚さをTとすると、上記第2領域の長手方向の長さが、(L1+2π×T)×0.95~(L1+2π×T)×1.05であることが望ましい。
第1領域が円状に巻回される場合、マット材の厚さ、及び、第1領域の長さに基づき、第2領域の長さを容易に設計することができる。
【0014】
本発明のマット材は、無機繊維からなり、上記第1領域の上記第1主面には、無機材料層が形成されていることが望ましい。
無機材料層が形成された本発明のマット材を、第1主面を内側にして巻回すると、本発明のマット材は良好な吸音機能を示す。
無機材料層が形成された本発明のマット材を巻回した場合、マット材の第1領域の第1主面は、音を受ける面になる。
マット材の第1領域の第1主面が音を受けると、その音は、第1領域の貫通孔の側壁、及び、第1領域の貫通孔の底部に位置する第2領域の第1主面まで到達することになる。その後、音は、反射され、減衰するともにマット材内で吸収されることになる。
また、一部の音は、マット材の第1領域の内部を通り、貫通孔が形成されていない第1領域の第1主面から外部に出ようとする。しかし、マット材の第1領域の第1主面には、無機材料層が形成されているので、この外部に出ようとする音は、無機材料層により反射される。その結果、音が外に漏れることを防ぐことができ、効率よく音を吸収することができる。
【0015】
本発明のマット材の挿入方法は、
本発明のマット材を筒状体に挿入するマット材の挿入方法であって、
上記マット材の第1主面が内側になるように、上記マット材の第1領域を巻回する、第1領域巻回工程と、
上記第1領域巻回工程の後、上記マット材の第2領域を、上記マット材の第1領域の第2主面を1周するように巻回する、第2領域巻回工程と、
上記第2領域巻回工程の後、上記マット材の長手方向と垂直な方向を挿入方向として上記マット材を上記筒状体に挿入する挿入工程とを含むことを特徴とする。
【0016】
本発明のマット材の挿入方法により、内側に有底孔を有する巻回されたマット材を容易に作製することができ、巻回されたマット材を容易に筒状体に挿入することができる。
【0017】
本発明のマット材の挿入方法では、上記第1領域巻回工程及び上記第2領域巻回工程では、挿入方向側の上記マット材が凸状になるように上記マット材を螺旋状に巻回してもよい。
挿入方向側のマット材が凸状であると、巻回されたマット材を筒状体に挿入しやすくなる。
【0018】
本発明のマット材の挿入方法では、上記第1領域巻回工程及び上記第2領域巻回工程では、挿入方向側の上記マット材が凹状になるように上記マット材を螺旋状に巻回してもよい。
巻回されたマット材を筒状体に挿入する際に、マット材と筒状体との摩擦により、巻回されたマット材が、挿入方向と逆の方向にずれることがある。
このようなずれをあらかじめ計算し、挿入方向側のマット材を凹状とすることにより、筒状体に挿入後の巻回されたマット材の側面を揃えることができる。
【0019】
本発明のマット材の挿入方法では、上記筒状体は、消音器であることが望ましい。
本発明のマット材の挿入方法を用いることにより、効率的に消音器を製造することができる。
【0020】
本発明の巻付体は、第1主面と、上記第1主面と反対側の第2主面と、第1端部と、上記第1端部と反対側の第2端部を有する平面視矩形状のマット材と、上記第1主面が接するように上記マット材が巻き付けられた管状体とからなる巻付体であって、
上記マット材は、上記管状体に少なくとも2周するように巻き付けられており、
上記第1主面と上記管状体とが接する1周目の上記マット材の領域は第1領域であり、
2周目の上記マット材の領域は、第2領域であり、
上記第1領域には複数の貫通孔が形成されており、
上記管状体の側壁には、管状体貫通孔が形成されていることを特徴とする。
【0021】
本発明の巻付体では、マット材は、貫通孔を有する第1領域と、第1領域に隣接する第2領域を有する。
本発明の巻付体では、マット材の第1主面を内側にして、第1領域が管状体に巻付けられ、その外側(すなわち第1領域の第2主面側)を第2領域が巻き付けられている。マット材の第1領域の第2主面側の貫通孔の底部には、マット材の第2領域の第1主面が位置する。そのため、本発明の巻付体では、マット材の第1領域の貫通孔とマット材の第2領域の第1主面とが有底孔を形成している。
このような巻付体は、第1領域に貫通孔を形成したマット材を用いることにより容易に作製することができる。
【0022】
本発明の巻付体では、上記管状体は、底部の形状が円状又は楕円状であることが望ましい。
管状体の底部の形状が円状又は楕円状であると、マット材は、管状体に円状又は楕円状に巻き付いている。
このように巻き付けられたマット材は、外部からの圧力が集中しにくくなり、破損しにくくなる。
【0023】
本発明の巻付体では、上記管状体は、パンチングメタルからなることが望ましい。
パンチングメタルは、消音器における消音機構として機能する。
そのため、本発明の巻付体をそのまま消音器の部品として使用することができる。
【0024】
本発明の巻付体では、上記マット材は、無機繊維からなり、上記第1領域の上記第1主面には、無機材料層が形成されていることが望ましい。
本発明の巻付体は、筒状の消音器に挿入されることになる。この際、マット材の第1領域の第1主面は、管状体の管状体貫通孔を通った音を受ける面になる。
マット材の第1領域の第1主面が音を受けると、その音は、第1領域の貫通孔の側壁、及び、第1領域の貫通孔の底部に位置する第2主面の第1領域まで到達することになる。その後、音は、反射され、減衰するともにマット材内で吸収されることになる。
また、一部の音は、マット材の第1領域の内部を通り、貫通孔が形成されていない第1領域の第1主面から外部に出ようとする。しかし、マット材の第1領域の第1主面には、無機材料層が形成されているので、この外部に出ようとする音は、無機材料層により反射される。その結果、音が外に漏れることを防ぐことができ、効率よく音を吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係るマット材の一例を模式的に示す斜視図である。
図1(b)は、
図1(a)に示すマット材が巻回された状態を模式的に示す斜視図である。
図1(c)は、
図1(b)に示すマット材の貫通孔部分を拡大した拡大図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態に係るマット材を円状に巻回する場合の一例を模式的に示す側面図である。
【
図3】
図3(a)は、第1端部及び第2端部が斜めに形成されている本発明の第1実施形態に係るマット材の一例を模式的に示す側面図である。
図3(b)は、
図3(a)に示すマット材を巻回した状態を示す側面図である。
【
図4】
図4(a)及び(b)は、本発明のマット材の製造方法の一例を模式的に示す工程図である。
【
図5】
図5(a)~(c)は、本発明の第1実施形態に係るマット材の挿入方法の一例を順に模式的に示す工程図である。
【
図6】
図6(a)及び(b)は、本発明の第1実施形態に係るマット材の挿入方法の変形例を示す工程図である。
【
図7】
図7(a)~(c)は、本発明の第1実施形態に係るマット材の挿入方法の別の変形例を示す工程図である。
【
図8】
図8(a)は、本発明の第2実施形態に係るマット材の一例を模式的に示す斜視図である。
図8(b)は、
図8(a)に示すマット材が巻回された状態を模式的に示す斜視図である。
図8(c)は、
図8(b)に示すマット材の貫通孔部分を拡大した拡大図である。
【
図9】
図9は、本発明の第2実施形態に係るマット材の消音機能の原理を模式的に説明する模式図である。
【
図10】
図10は、本発明の第3実施形態に係る巻付体の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図11】
図11(a)は、本発明の第3実施形態に係る巻付体に用いられるマット材の一例を模式的に示す斜視図である。
図11(b)は、
図11(a)に示すマット材が巻回された状態を模式的に示す斜視図である。
【
図12】
図12は、本発明の第3実施形態に係る巻付体に用いられる管状体の一例を模式的に示す斜視図である。
【0026】
(発明の詳細な説明)
以下、本発明のマット材について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0027】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係るマット材について図面を用いながら説明する。
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係るマット材の一例を模式的に示す斜視図である。
図1(b)は、
図1(a)に示すマット材が巻回された状態を模式的に示す斜視図である。
【0028】
図1(a)に示すように、マット材10は、第1主面11と、第1主面11と反対側の第2主面12と、第1端部13と、第1端部13と反対側の第2端部14を有する平面視矩形状である。
マット材10は、第1端部13から距離L
1だけ第2端部14に向かう領域である第1領域15と、第1領域15に隣接する第2領域16とを有する。
そして、第1領域15には複数の貫通孔21が形成されている。
【0029】
図1(b)に示すように、マット材10は、第1主面11を内側にして少なくとも2周巻回されることになる。
巻回されたマット材10において、第1領域15は1周目に位置することになり、第2領域16は2周目に位置することになる。
つまり、第1領域15が巻回され、その外側(第1領域15の第2主面12側)を第2領域16が巻回されることになる。
【0030】
そのため、
図1(c)に示すように、第1領域15の第2主面12側の貫通孔21の底部21aには、第2領域16の第1主面11が位置することになる。つまり、巻回されたマット材10では、マット材10の内側に第1領域15の貫通孔21と第2領域16の第1主面11からなる有底孔22が形成されることになる。
マット材10を用いることにより、内側に有底孔22を有する巻回されたマット材10を容易に作製することができる。
【0031】
本発明の第1実施形態に係るマット材では、マット材の厚さ(
図1(a)中、符号「T」で示す幅)は、1.5~25mmであることが望ましく、5~10mmであることがより望ましい。
マット材の厚さが1.5mm未満であるとマット材の強度が弱くなりやすい。
マット材の厚さが25mmを超えると、マット材を巻回しにくくなる。
【0032】
本発明の第1実施形態に係るマット材では、マット材は、無機繊維からなることが望ましい。
無機繊維としては、アルミナ繊維、アルミナ-シリカ繊維、シリカ繊維、グラスウール、ロックウール等が挙げられる。これらの中では、アルミナ-シリカ繊維であることが望ましい。
これらの無機繊維は耐熱性が高く、このような無機繊維により形成されたマット材は、温度変化によって形状変化しにくい。
【0033】
さらに、無機繊維にアルミナ-シリカ繊維を用いる場合、アルミナとシリカの組成比は、重量比でアルミナ(Al2O3):シリカ(SiO2)=60:40~80:20であることが望ましく、アルミナ(Al2O3):シリカ(SiO2)=70:30~74:26であることがより望ましい。
【0034】
また、無機繊維からなるマット材は、種々の方法により得ることができるが、ニードリング法又は抄造法により製造することが望ましい。
【0035】
ニードリング法によって得られる無機繊維からなるマット材は交絡構造を呈する。この構造を得るためには、無機繊維はある程度の平均繊維長を有することが必要である。よって、ニードリング法に用いられる無機繊維の平均繊維長は、1~150mmであることが望ましく、10~80mmであることがより望ましい。
無機繊維の平均繊維長が1mm未満であると、無機繊維の繊維長が短すぎるため、無機繊維同士の交絡が不充分となり、マット材の強度が得られにくくなり、マット材の形状保持性が低下しやすくなる。
繊維の平均繊維長が150mmを超えると、繊維の繊維長が長すぎるため、マット材を構成する繊維本数が減少するため、緻密性が低下する。
【0036】
抄造法によって得られる無機繊維からなるマット材では、無機繊維の平均繊維長は、0.1~20mmであることが好ましい。
無機繊維の平均繊維長が0.1mm未満であると、無機繊維の繊維長が短すぎるため、マット材としての形状保持性が低下してしまう。さらに、マット材として繊維集合体にしたときに無機繊維同士に好適な絡み合いが起こらず、充分な面圧を得ることが困難になる。
無機繊維の平均繊維長が20mmを超えると、無機繊維の繊維長が長すぎるため、抄造工程で水に無機繊維を分散したスラリー溶液中の無機繊維同士の絡み合いが強くなりすぎるため、マット材としたときに無機繊維が不均一に集積しやすくなり、せん断強度も低下しやすくなる。
【0037】
無機繊維長の測定は、ニードリング法や抄造法ともにピンセットを使用して、マット材から無機繊維が破断しないように抜き取り、光学顕微鏡を使用して繊維長を測定する。
本明細書において、平均繊維長とは、マット材から無機繊維300本を抜き取り、繊維長を計測した平均長さを意味する。マット材から無機繊維を破断せずに抜き取れない場合、マット材を脱脂処理して、脱脂済みマット材を水の中へ投入し、無機繊維同士の絡みをほぐしながら無機繊維が破断しないように採取すると良い。
【0038】
マット材を形成する無機繊維の平均繊維径は、1~20μmであることが望ましく、2~15μmであることがより望ましく、3~10μmであることがさらに望ましい。
無機繊維の平均繊維径が1μm未満であると、強度が弱く、衝撃等により無機繊維が裁断されやすくなる。
無機繊維の平均繊維径が20μmを超えると、繊維径が太すぎ無機繊維自体のヤング率が高くなりマット材の柔軟性が低くなりやすくなる。
【0039】
本発明の第1実施形態に係るマット材において貫通孔は、柱状に形成されていることが望ましい。柱状としては、円柱状、楕円柱状、三角柱状、四角柱状、五角柱状、六角柱状、八角柱状等の形状が挙げられる。
また、その底面の面積は、0.20~15mm2であることが望ましく、2.0~7.0mm2であることがより望ましい。
【0040】
本発明の第1実施形態に係るマット材では、貫通孔は等間隔で配列されていることが望ましい。
このような配列としては特に限定されないが、以下のような配列パターンが挙げられる。
すなわち、貫通孔は、正三角形を縦横に連続的に並べた平面において、貫通孔の中心が正三角形の頂点に位置するように配列されていてもよい。
また、貫通孔は、正方形を縦横に連続的に並べた平面において、貫通孔の中心が正方形の頂点に位置するように配列されていてもよい。
また、貫通孔は、正六角形を縦横に連続的に並べた平面において、貫通孔の中心が正六角形の頂点に位置するように配列されていてもよい。
【0041】
また、本発明の第1実施形態に係るマット材では、貫通孔は、第1領域の全面に形成されていてもよく、第1領域の一部のみに形成されていてもよい。
【0042】
本発明の第1実施形態に係るマット材では、第1領域の長さL1は、特に限定されないが、10~60cmであることが望ましく、15~30cmであることがより望ましい。
【0043】
上記の通り、本発明の第1実施形態に係るマット材は巻回されることになる。
マット材は、円状、楕円状、三角形状、四角形状等に巻回されてもよい。これらの中では、円状又は楕円状が望ましく、円状であることがより望ましい。
【0044】
本発明の第1実施形態に係るマット材の第2領域の長さは、マット材の厚さ及び巻回の形状に合わせ適宜決定することが望ましい。
マット材が円状に巻回される場合を例に挙げ、マット材の第2領域の長さを説明する。
【0045】
図2は、本発明の第1実施形態に係るマット材を円状に巻回する場合の一例を模式的に示す側面図である。
図2に示すように、マット材10を円状に巻回する場合、第1領域15の長さをL
1とすると、第1領域15の第1主面11が形成する円の円周はL
1となり、半径は、L
1/2πと算出されることになる。
また、マット材10の厚さをTとすると、第1領域15の第2主面12が形成する円の半径は、T+L
1/2πと計算されることになる。
マット材10の第2領域16は、この外側に巻回されることになるので、第2領域16の長さは、2π×(T+L
1/2π)=L
1+T×2πと計算されることになる。
【0046】
なお、マット材10の伸縮性や柔軟性により、マット材10の巻回しやすさは異なる。
そのため、2周目となる第2領域の長さは、マット材10の伸縮性や柔軟性に基づき調整することが望ましい。マット材10の伸縮性や柔軟性を考慮すると、第2領域16の長さは、(L1+2π×T)×0.95~(L1+2π×T)×1.05であることが望ましい。
【0047】
また、マット材10を円状に巻回する場合、L1は100~600mmであることが望ましく、150~300mmであることがより望ましい。
【0048】
マット材を楕円状や多角形状に巻回する場合も、第1領域15の長さにより第2領域16の長さも決定されることになる。
この場合も、マット材の伸縮性や柔軟性に基づき第2領域の長さを調整することが望ましい。
【0049】
本発明の第1実施形態に係るマット材では、マット材を巻回した際に内周面に段差が生じないような形状で第1端部及び第2端部が形成されていてもよい。
すなわち、第1端部では、第1主面の端部が、第2主面の端部よりも外側に配置されるように、直線状又は曲線状に形成されていてもよい。
また、第2端部では、第1主面の端部が、第2主面の端部よりも内側に配置されるように、直線状又は曲線状に形成されていてもよい。
【0050】
第1端部及び第2端部が斜めに形成されている本発明の第1実施形態に係るマット材の形状を以下に図面を用いて詳述する。
図3(a)は、第1端部及び第2端部が斜めに形成されている本発明の第1実施形態に係るマット材の一例を模式的に示す側面図である。
図3(b)は、
図3(a)に示すマット材を巻回した状態を示す側面図である。
【0051】
図3(a)に示すように、マット材10では、第1端部13側の第1主面11の端部11aが、第1端部13側の第2主面12の端部12aよりも外側に配置されるように、第1端部13が斜めに形成されていてもよい。また、第2端部14側の第1主面11の端部11bが、第2端部14側の第2主面12の端部12bよりも内側に配置されるように、第2端部14が斜めに形成されていてもよい。
【0052】
第1端部13及び第2端部14がこのような形状であると、
図3(b)に示すように、第1主面11が内側になるようにマット材10を巻回した際に、マット材10の内周面に段差が生じにくくなる。
第1端部13及び第2端部14が斜めに形成されている場合、その角度は特に限定されず、マット材10の材質、長さ、厚さ、巻回される形状に応じて適宜決定することが望ましい。
【0053】
本発明の第1実施形態に係るマット材は、巻回された後、その形状を保持するために無機バインダ等により固定されてもよく、テープ等により固定してもよい。
【0054】
無機バインダを用いて固定する場合には、マット材の第1領域の第2主面に無機バインダを塗布してからマット材を巻回し、その後、無機バインダを乾燥させることによってマット材を固定してもよい。
無機バインダとしは特に限定されずアルミナゾル、シリカゾル等が使用できる。
【0055】
次に、本発明の第1実施形態に係るマット材の製造方法の一例を説明する。
以下の説明する本発明のマット材の製造方法は、(1)繊維層作製工程及び(2)貫通孔形成工程を含む。
図4(a)及び(b)は、本発明のマット材の製造方法の一例を模式的に示す工程図である。
【0056】
(1)繊維層作製工程
図4(a)に示すように、本工程では、繊維層10´を準備する。繊維層10´を準備する方法は特に限定されない。以下に、その一例である抄造法による繊維層10´を準備する方法を説明する。以下に説明する抄造法は、混合液調製ステップと、脱水ステップと、加熱加圧ステップとを含んでいる。
【0057】
(混合液調製ステップ)
繊維と、無機バインダと、水とを混合し、撹拌機で撹拌することにより混合液を調製する。この際、必要に応じて無機粒子や、有機バインダも混合してもよい。なお、本ステップで用いる繊維の望ましい種類等は、既に説明しているのでここでの説明は省略する。
【0058】
(脱水ステップ)
混合液調整ステップにより得られた混合液を底面にろ過用のメッシュが形成された成形器に流し込む。その後、混合液中の水を、メッシュを介して脱水することにより原料シートを作製する。
【0059】
(加熱加圧ステップ)
原料シートを加熱加圧し、繊維層を作製する。また、加熱加圧の際、原料シートに熱風を通気させて乾燥する熱処理をしてもよくし、あるいは熱処理をせずに湿潤状態としてもよい。
以上のステップを経て繊維層を準備することができる。
【0060】
なお、上記の通り、本発明の第1実施形態に係るマット材は、少なくとも2周巻回されることになり、1周目が第1領域となり、2周目が第2領域となる。
繊維層作製工程では、第1領域となる領域15´及び第2領域となる領域16´を決定する。
【0061】
(2)貫通孔形成工程
図4(b)に示すように、本工程では、上記(1)繊維層作製工程にて作製した繊維層10´の第1領域となる領域15´に、貫通孔21を形成する。貫通孔21の形状等は既に説明しているのでここでの説明は省略する。
貫通孔21を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、カッター、レーザー、ドリル等を用いて繊維層10´を貫通する方法が挙げられる。
【0062】
以上の工程を経て、第1領域15及び第2領域16を有し、第1領域15に複数の貫通孔21が形成されているマット材10を製造することができる。
【0063】
次に、本発明の第1実施形態に係るマット材の使用方法である、本発明の第1実施形態に係るマット材の挿入方法について説明する。
【0064】
本発明の第1実施形態に係るマット材の挿入方法は、上記本発明の第1実施形態に係るマット材を筒状体に挿入するマット材の挿入方法である。
この挿入方法は、(1)第1領域巻回工程、(2)第2領域巻回工程及び(3)挿入工程を含む。以下各工程について図面を用いながら説明する。
図5(a)~(c)は、本発明の第1実施形態に係るマット材の挿入方法の一例を順に模式的に示す工程図である。
【0065】
(1)第1領域巻回工程
本工程では、
図5(a)に示すように、マット材10の第1主面11が内側になるように、マット材10の第1領域15を巻回する。
なお、
図5(a)では、マット材10は円形に巻回されているが、マット材10は、円状以外に、楕円状、三角形状、四角形状等に巻回されてもよい。
【0066】
(2)第2領域巻回工程
本工程では、
図5(b)に示すように、マット材10の第2領域16を、マット材10の第1領域15の第2主面12を1周するように巻回する。
これにより、第1領域15の第2主面12側の貫通孔21の底部には、第2領域16の第1主面11が位置することになる。つまり、第2領域巻回工程後のマット材10では、マット材10の内側に第1領域15の貫通孔21と第2領域16の第1主面11からなる有底孔22が形成されることになる。
【0067】
(3)挿入工程
本工程では、
図5(c)に示すように、マット材10の長手方向と垂直な方向を挿入方向として、マット材10を筒状体40に挿入する。
【0068】
筒状体40の内径は、特に限定されないが、巻回されたマット材10の直径の90~110%の大きさであることが望ましく、95~105%の大きさであることがより望ましい。
筒状体の内径が、巻回されたマット材の直径の90%未満であると、巻回されたマット材を筒状体に挿入しにくくなる。
筒状体の内径が、巻回されたマット材の直径の110%を超えると、巻回されたマット材が筒状体から脱落しやすくなる。
【0069】
以上の工程を経ることにより、内側に有底孔22を有する巻回されたマット材10を容易に作製することができ、巻回されたマット材10を容易に筒状体40に挿入することができる。
【0070】
なお、第1領域巻回工程及び第2領域巻回工程では、以下のように第1領域及び第2領域を巻回してもよい。
図6(a)及び(b)は、本発明の第1実施形態に係るマット材の挿入方法の変形例を示す工程図である。
図7(a)~(c)は、本発明の第1実施形態に係るマット材の挿入方法の別の変形例を示す工程図である。
【0071】
本発明の第1実施形態に係るマット材の挿入方法の第1領域巻回工程及び第2領域巻回工程では、
図6(a)に示すように、挿入方向側(
図6(a)中、矢印で示す方向)のマット材10が凸状になるようにマット材10を螺旋状に巻回してもよい。
挿入方向側のマット材10が凸状であると、
図6(b)に示すように、巻回されたマット材10を筒状体40に挿入しやすくなる。
【0072】
本発明の第1実施形態に係るマット材の挿入方法の第1領域巻回工程及び第2領域巻回工程では、
図7(a)に示すように、挿入方向側(
図7(a)中、矢印で示す方向)のマット材10が凹状になるようにマット材10を螺旋状に巻回してもよい。
【0073】
筒状体40にマット材10を挿入すると、
図7(b)に示すように、マット材10と筒状体40との摩擦により、筒状体40と接触するマット材10の部分が挿入方向と反対方向にずれることになる。
【0074】
このようなずれをあらかじめ計算して、挿入方向側のマット材10を凹状とすることにより、
図7(c)に示すように、筒状体40に挿入後の巻回されたマット材10の側面を揃えることができる。
【0075】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るマット材を説明する。
図8(a)は、本発明の第2実施形態に係るマット材の一例を模式的に示す斜視図である。
図8(b)は、
図8(a)に示すマット材が巻回された状態を模式的に示す斜視図である。
図8(c)は、
図8(b)に示すマット材の貫通孔部分を拡大した拡大図である。
【0076】
図8(a)に示すように、マット材110は、第1主面111と、第1主面111と反対側の第2主面112と、第1端部113と、第1端部113と反対側の第2端部114を有する平面視矩形状であり、無機繊維からなる。
マット材110は、第1端部113から距離L
2だけ第2端部114に向かう領域である第1領域115と、第1領域115に隣接する第2領域116とを有する。
そして、第1領域115の第1主面111には、無機材料層131が形成されている
【0077】
上記本発明の第1実施形態に係るマット材10と、本発明の第2実施形態に係るマット材110との違いは、マット材110が無機繊維からなることが必須であり、第1領域115の第1主面111に無機材料層131が形成されていることである。その他の構成は同じであってもよい。
【0078】
図8(b)に示すように、マット材110は、第1主面111を内側にして少なくとも2周巻回されることになる、
巻回されたマット材110において、第1領域115は1周目に位置することになり、第2領域116は2周目に位置することになる。
つまり、第1領域115が巻回され、その外側(第1領域115の第2主面112側)に第2領域116が巻回されることになる。
【0079】
そのため、第1領域115の第2主面112側の貫通孔121の底部121aには、第2領域116の第1主面111が位置することになる。つまり、巻回されたマット材110では、マット材110の内側に第1領域115の貫通孔121と第2領域116の第1主面111からなる有底孔122が形成されることになる。
【0080】
また、第1領域115の第1主面111には無機材料層131が形成されているため、巻回されたマット材110の内周面には、無機材料層131が形成されることになる。
【0081】
このように巻回されたマット材110は、良好な吸音機能を示す。
マット材110が良好な吸音機能を示す原理を以下に図面を用いて説明する。
図9は、本発明の第2実施形態に係るマット材の消音機能の原理を模式的に説明する模式図である。
図9に示すように、無機材料層131が形成されたマット材110を巻回した場合、マット材110の第1領域115の第1主面111は、音Sを受ける側の面になる。
マット材110の第1領域115の第1主面111が音を受けると、その音Sは、第1領域115の貫通孔121の側壁、及び、第1領域115の貫通孔121の底部121aに位置する第2領域116の第1主面111まで到達することになる。その後、音Sは、反射され、減衰するともにマット材110内で吸収されることになる。
また、一部の音Sは、マット材110の第1領域115の内部を通り、貫通孔121が形成されていない第1領域115の第1主面111から外部に出ようとする。しかし、マット材110の第1領域115の第1主面111には、無機材料層131が形成されているので、この外部に出ようとする音Sは、無機材料層131により反射される。その結果、音Sが外に漏れることを防ぐことができ、効率よく音Sを吸収することができる。
【0082】
本発明の第2実施形態に係るマット材では、無機材料層の厚さは、0.1~5mmであることが望ましく、0.5~2mmであることがより望ましい。
無機材料層の厚さが、0.1mm未満であると、無機材料層があることによる音の反射効果が得られにくくなる。
無機材料層の厚さが、5mmを超えると、無機材料層の柔軟性が損なわれマット材を必要部位に当接する際にクラックが入るなどし、結果的に開口形状が維持されないことがある。
【0083】
本発明の第2実施形態に係るマット材では、無機材料層は、カルシウム系材料、シリカ系材料、アルミナ系材料、カーボン系材料及びチタン系材料からなる群から選択される少なくとも1種の無機材料からなることが望ましい。
また、無機材料層は、これらの単独の無機材料からなっていてもよく、複数の無機材料からなっていてもよい。
【0084】
このような無機材料の具体例としては、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素を1種類以上含む無機材料や、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素を2種類以上含む混同材料等があげられる。
【0085】
本発明の第2実施形態に係るマット材では、無機材料層の密度は2~6(g/cm3)であることが望ましい。
また、無機材料層の密度は、無機材料層が形成されていない部分のマット材の密度の3倍以上であることが望ましく、さらに、無機材料層の密度は、無機材料層が形成されていない部分のマット材の密度の3~30倍であることが望ましい。
【0086】
次に本発明の第2実施形態に係るマット材の製造方法について説明する。
本発明の第2実施形態に係るマット材の製造方法は、上記本発明の第1実施形態に係るマット材における(1)繊維層作製工程及び(2)貫通孔形成工程を行った後、以下の(3)無機材料層形成工程を行う。
【0087】
(3)無機材料層形成工程
本工程では、貫通孔が形成されたマット材の第1領域の第1主面に無機材料層を形成する。無機材料層の形成の方法は、特に限定されないが、例えば、塗布、印刷等が挙げられる。
塗布により無機材料層を形成する方法を以下に説明する。
【0088】
(無機材料準備ステップ)
本ステップでは、粉末状の無機材料を準備する。なお、無機材料の種類等については、既に説明しているので、ここでの説明は省略する。
【0089】
(無機材料付与ステップ)
本ステップでは、まず、貫通孔が形成されていない第1領域の第1主面に粉末状の無機材料を付与する。
次に、無機材料に水を付与し、無機材料をスラリー状にする。
このように、第1領域の第1主面に粉末状の無機材料を付与してから無機材料をスラリー状にすることで、形成される無機材料層が強固に固定されることになる。
【0090】
(乾燥工程)
本ステップでは、スラリー状の無機材料を乾燥させ無機材料層とする。
乾燥の条件としては、特に限定されないが、70~100℃、5~15分の条件であることが好ましい。
【0091】
以上の工程を経て、本発明の第2実施形態に係るマット材を製造することができる。
【0092】
なお、上記マット材の製造方法では、第1領域の第1主面に粉末状の無機材料を付与してから、無機材料に水を付与し、無機材料をスラリー状にしていた。
しかし、本発明の第2実施形態に係るマット材の製造方法では、第1領域の第1主面にスラリー状の無機材料を直接塗布してもよい。
【0093】
本発明の第2実施形態に係るマット材は、上記本発明の第1実施形態に係るマット材と同様に巻回された後、筒状体に挿入されることになる。
挿入方法としては、上記第1実施形態に係るマット材と同様の方法を適用することができる。
【0094】
筒状体としては、消音器であることが望ましい。
上記の通り、本発明の第2実施形態に係るマット材は、良好な吸音機能を示す。従って、本発明の第2実施形態に係るマット材が挿入された消音器も優れた吸音機能を示すことになる。
また、このようなマット材の挿入方法により、効率的に消音器を製造することができる。
【0095】
消音器としては、自動車のマフラーや、バイクのマフラー等が挙げられる。
【0096】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態である巻付体について説明する。
図10は、本発明の第3実施形態に係る巻付体の一例を模式的に示す斜視図である。
図11(a)は、本発明の第3実施形態に係る巻付体に用いられるマット材の一例を模式的に示す斜視図である。
図11(b)は、
図11(a)に示すマット材が巻回された状態を模式的に示す斜視図である。
図12は、本発明の第3実施形態に係る巻付体に用いられる管状体の一例を模式的に示す斜視図である。
【0097】
図10に示すように、巻付体250は、マット材210と、マット材210が巻き付けられた管状体260とからなる。
【0098】
図11(a)に示すように、管状体260に巻き付けられる前のマット材210は、第1主面211と、第1主面211と反対側の第2主面212と、第1端部213と、第1端部213と反対側の第2端部214を有する平面視矩形状である。
また、
図11(b)に示すように、マット材210は、2周巻回されることになる。
【0099】
マット材210において、第1主面211と管状体260とが接する1周目のマット材210の領域は第1領域215である。また、2周目のマット材210の領域は、第2領域216である。
さらに第1領域215には複数の貫通孔221が形成されている。
【0100】
図12に示すように、管状体260の側壁には、管状体貫通孔261が形成されている。
【0101】
巻付体250では、マット材210は、貫通孔221を有する第1領域215と、第1領域215に隣接する第2領域216を有する。
また、巻付体250では、マット材210の第1主面211を内側にして、第1領域215が管状体260に巻付けられ、その外側(すなわち第1領域215の第2主面212側)を第2領域216が巻き付けられている。
マット材210の第1領域215の第2主面212側の貫通孔221の底部には、マット材210の第2領域216の第1主面211が位置する。そのため、巻付体250では、マット材210の第1領域215の貫通孔221とマット材210の第2領域216の第1主面211とが有底孔を形成している。
このような巻付体250は、第1領域215に貫通孔221を形成したマット材210を用いることにより容易に作製することができる。
【0102】
本発明の第3実施形態である巻付体におけるマット材は、上記第1実施形態又は第2実施形態に係るマット材であることが望ましい。
マット材の望ましい材料や形状に関しては、上記第1実施形態に係るマット材及び上記第2実施形態係るマット材の望ましい材料や形状と同じである。
【0103】
特に、マット材は、無機繊維からなり、第1主面には、無機材料層が形成されていること(すなわち、上記第2実施形態に係るマット材であること)が望ましい。
この場合、本発明の第3実施形態に係る巻付体を筒状の消音器に挿入することにより消音機能を向上させることができる。その原理を以下に説明する。
本発明の第3実施形態に係る巻付体を筒状の消音器に挿入した場合、マット材の第1領域の第1主面は、管状体の管状体貫通孔を通った音を受ける面になる。
マット材の第1領域の第1主面が音を受けると、その音は、第1領域の貫通孔の側壁、及び、第1領域の貫通孔の底部に位置する第2主面の第1領域まで到達することになる。その後、音は、反射され、減衰するともにマット材内で吸収されることになる。
また、一部の音は、マット材の第1領域の内部を通り、貫通孔が形成されていない第1領域の第1主面から外部に出ようとする。しかし、マット材の第1領域の第1主面には、無機材料層が形成されているので、この外部に出ようとする音は、無機材料層により反射される。その結果、音が外に漏れることを防ぐことができ、効率よく音を吸収することができる。
【0104】
本発明の第3実施形態に係る巻付体では、管状体の形状は特に限定されないが、底部の形状が、円状、楕円状、三角形状、四角形状、五角形状、六角形状、八角形状等であってもよい。これらの中では、円状又は楕円状であることが望ましい。
管状体の底部の形状が円状又は楕円状であると、マット材は、管状体に円状又は楕円状に巻き付いている。
このように巻き付けられたマット材は、外部からの圧力が集中しにくくなり、破損しにくくなる。
【0105】
本発明の第3実施形態に係る巻付体では、管状体は、パンチングメタルからなることが望ましい。
パンチングメタルは、消音器における消音機構として機能する。
そのため、本発明の第3実施形態に係る巻付体をそのまま消音器の部品として使用することができる。
また、パンチングメタルの材料としては、ステンレス鋼、アルミニウム、スチール、チタン、インコネル等であってもよい。
【0106】
管状体の厚さは、特に限定されないが、0.3~3mmであることが望ましく、1~2mmであることがより望ましい。
【0107】
管状体の底面が円状である場合、その半径は、15~100mmであることが望ましく、20~50mmであることがより望ましい。
【0108】
本発明の第3実施形態に係る巻付体の製造方法としては、管状体と、上記第1実施形態に係るマット材又は上記第2実施形態に係るマット材とを準備し、マット材の第1領域の第1主面が管状体と接するように、マット材を管状体に巻き付けることにより製造することができる。
【0109】
マット材の固定方法としては、特に限定されないが、例えば無機バインダ等を用いて固定してもよく、テープ等で固定してもよい。
なお、無機バインダとしは特に限定されず、アルミナゾル、シリカゾル等が使用できる。
【0110】
本発明の第3実施形態に係る巻付体は、筒状体に挿入されて使用されることになる。
筒状体としては、消音器であることが望ましい。
本発明の第3実施形態に係る巻付体を用いることで、消音器の消音機能を向上させることができる。
【0111】
(その他の実施形態)
本発明の第1実施形態~第3実施形態に係るマット材は丁度2周巻回できる長さのマット材であった。
しかし、本発明のマット材は、少なくとも2周巻回できる長さであれば丁度2周巻回できる長さより長くてもよい。
また、マット材の長さは、丁度周回できる長さでなくてもよく、例えば、2周半できる長さであってもよく、2周と3/4周できる長さであってもよい。
【0112】
また、本発明のマット材が、2周以上巻回できる長さである場合も、第1領域及び第2領域は、本発明のマット材を少なくとも2周巻回することにより定まり、1周目に巻回される領域が第1領域であり、2周目に巻回される領域が第2領域である。
【符号の説明】
【0113】
10、110、210 マット材
10´ 繊維層
11、111、211 第1主面
11a、11b 第1主面の端部
12、112、212 第2主面
12a、12b 第2主面の端部
13、113、213 第1端部
14、114、214 第2端部
15、115、215 第1領域
15´ 第1領域となる領域
16、116、216 第2領域
16´ 第2領域となる領域
21、121、221 貫通孔
21a、121a 貫通孔の底部
22、122、222 有底孔
40 筒状体
131 無機材料層
250 巻付体
260 管状体
261 管状体貫通孔