(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】震災対応支援システム
(51)【国際特許分類】
G01V 1/00 20060101AFI20230216BHJP
G08B 25/14 20060101ALI20230216BHJP
G08B 21/10 20060101ALI20230216BHJP
G06Q 50/26 20120101ALI20230216BHJP
【FI】
G01V1/00 D
G08B25/14 A
G08B21/10
G06Q50/26
(21)【出願番号】P 2018226515
(22)【出願日】2018-12-03
【審査請求日】2021-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南部 世紀夫
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-188170(JP,A)
【文献】特開2015-222285(JP,A)
【文献】特開2012-026848(JP,A)
【文献】特開平08-329043(JP,A)
【文献】特開2011-179967(JP,A)
【文献】特開2016-075972(JP,A)
【文献】特開2003-287574(JP,A)
【文献】特開2006-258639(JP,A)
【文献】特開2017-111747(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0245210(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00
G08B 25/14
G08B 21/10
G06Q 50/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地震発生時の被災地域内外の対応要員による震災対応行動を支援するために用いられる震災対応支援システムであって、
被災地域の個々の建物の属性情報が登録されたデータ管理手段と、
地震発生直後の被災地域の地震動強さ分布情報を取得する地震動強さ分布取得手段と、
取得した地震動強さ分布情報と、
前記データ管理手段に登録された個々の建物の
前記属性情報に基づいて、個々の建物の被害可能性を推定する被害可能性推定手段と、
位置の近い建物同士がまとまるよう被災地域を複数の領域に分割し、分割した領域毎に、被害可能性別に建物の数を集計する建物数集計手段と、
領域毎に集計した建物の総計と被害可能性別の小計を所定のグラフで背景地図上の対応する領域に表示する表示手段と
、
背景地図を拡大、縮小または移動して、前記表示手段の表示スケールおよび表示範囲の少なくとも一方を変更する表示変更手段とを備え、
前記建物数集計手段は、前記表示変更手段による表示スケールおよび表示範囲の少なくとも一方の変更に応じて、位置の近い建物同士がまとまるよう被災地域を複数の領域に再分割し、再分割した領域毎に、被害可能性別に建物の数を再集計し、
前記表示手段は、前記表示変更手段による表示スケールおよび表示範囲の少なくとも一方の変更に応じて、領域毎に再集計した建物の総計と被害可能性別の小計を所定のグラフで、表示スケールおよび表示範囲の少なくとも一方を変更した後の背景地図上の対応する領域に再表示することを特徴とする震災対応支援システム。
【請求項2】
表示した背景地図上に存在する建物の
前記属性情報のリストを所定の順序で表示する建物リスト表示手段と、
表示したリストから選択した建物を、標準形態より誇張または拡大した形態で背景地図上の対応する位置またはその近傍に表示するとともに、背景地図上の対応する位置またはその近傍から当該建物の
前記属性情報を吹き出し表示する選択建物表示手段とをさらに備えることを特徴とする請求項
1に記載の震災対応支援システム。
【請求項3】
文字情報を入力する文字入力手段と、入力された文字情報と建物の
前記属性情報が部分一致している建物をデータ管理手段から検索する文字検索手段と、
検索して得られた建物の
前記属性情報のリストを表示する検索結果表示手段とをさらに備えることを特徴とする請求項1
または2に記載の震災対応支援システム。
【請求項4】
背景地図上に、車両が通行した車両通行実績情報を重ねて表示する車両通行実績表示手段をさらに備えることを特徴とする請求項1~
3のいずれか一つに記載の震災対応支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震発生時の震災対応行動を支援する震災対応支援システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、大規模地震の直後は被災地の混乱や停電などにより、被災地の実被害に関する情報の発信が大幅に遅れ、被災地内外の対応要員は迅速かつ効率的な対応行動をとることが困難である。そのため限られた情報から被災地の被害を推定し、それに基づき対応行動をとることが行われている。
【0003】
地震の直後にはいくつかの機関が様々な形で地震動強さに関する情報を提供している。例えば気象庁は、全国の観測点震度、市区町村毎・区域毎・都道府県毎の最大震度、約1kmメッシュの推計震度分布等の情報を提供している。防災科学技術研究所や産業技術総合研究所は、約250mメッシュの推計地震動強さ分布等の情報を提供している。
【0004】
GIS(地理情報システム)等を用いて、上記の地震動強さに関する情報を地図と重ねることで、地震動強さ分布地図として提供するシステムやサービスには、様々なものがある(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
GIS(地理情報システム)等を用いて、上記の地震動強さ分布地図に、広域に多数分布する建物群の位置情報をプロットすることで、有用な情報として提供するシステムやサービスには、様々なものがある。
【0006】
さらに、個々の建物の地震による被害を推定し、その結果をマーカーの色や形で区別し、GIS等を用いて地震動強さ分布地図にプロットすることで、有用な情報として提供するシステムやサービスには、様々なものがある(例えば、
図6のプロット地図[コピーライト(c) 2018 Google, ZENRIN]や特許文献2、3を参照)。
【0007】
一方、災害時は道路等が被害を受けて通行不能になる場合があり、通行不能個所を推定するために、カーナビ等のプローブデータを集約した車両通行実績情報を提供するシステムやサービスには、様々なものがある(例えば、非特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-133996号公報
【文献】特開平11-143941号公報
【文献】特開2006-258639号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】ITS Japanホームページ、「通行実績情報」、[online]、[平成30年11月15日検索]、インターネット<URL:http://disaster-system.its-jp.org/map4/map/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のプロット図(
図6を参照)による表現では、建物群が十分まばらに分布している場合は、建物のマーカー同士が重ならず空間的分布を直感的に把握することができる。しかし、建物群が密に分布している場合は、建物のマーカー同士が接したり重なったりするため、どの程度密なのかを把握しにくくなる。
【0011】
GIS等では利用者がズームレベル(縮尺)を任意に変更することができるので、十分ズームイン(拡大)すれば建物のマーカー同士が重ならなくなるが、同時に広域の分布を把握することはできなくなる。
【0012】
個々の建物の被害推定結果を区別してプロットする場合、ある地域的広がりの中で、被害の可能性が高い建物が多いのか低い建物が多いのかを、一瞥して把握することはできない。
【0013】
これらの問題により、大規模地震発生時の対応行動の迅速性・効率性が低下するおそれがあった。
【0014】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、地震発生時の震災対応行動の迅速性・効率性を向上することのできる震災対応支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る震災対応支援システムは、地震発生時の被災地域内外の対応要員による震災対応行動を支援するために用いられる震災対応支援システムであって、被災地域の個々の建物の属性情報が登録されたデータ管理手段と、地震発生直後の被災地域の地震動強さ分布情報を取得する地震動強さ分布取得手段と、取得した地震動強さ分布情報と、データ管理手段に登録された個々の建物の属性情報に基づいて、個々の建物の被害可能性を推定する被害可能性推定手段と、位置の近い建物同士がまとまるよう被災地域を複数の領域に分割し、分割した領域毎に、被害可能性別に建物の数を集計する建物数集計手段と、領域毎に集計した建物の総計と被害可能性別の小計を所定のグラフで背景地図上の対応する領域に表示する表示手段とを備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る他の震災対応支援システムは、上述した発明において、背景地図を拡大、縮小または移動して、表示スケールおよび表示範囲の少なくとも一方を変更する表示変更手段をさらに備え、建物数集計手段は、表示変更手段による表示スケールおよび表示範囲の少なくとも一方の変更に応じて、位置の近い建物同士がまとまるよう被災地域を複数の領域に分割し、分割した領域毎に、被害可能性別に建物の数を集計し、表示手段は、表示変更手段による表示スケールおよび表示範囲の少なくとも一方の変更に応じて、領域毎に集計した建物の総計と被害可能性別の小計を所定のグラフで背景地図上の対応する領域に表示することを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る他の震災対応支援システムは、上述した発明において、表示した背景地図上に存在する建物の属性情報のリストを所定の順序で表示する建物リスト表示手段と、表示したリストから選択した建物を、標準形態より誇張または拡大した形態で背景地図上の対応する位置またはその近傍に表示するとともに、背景地図上の対応する位置またはその近傍から当該建物の属性情報を吹き出し表示する選択建物表示手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る他の震災対応支援システムは、上述した発明において、文字情報を入力する文字入力手段と、入力された文字情報と建物の属性情報が部分一致している建物をデータ管理手段から検索する文字検索手段と、検索して得られた建物の属性情報のリストを表示する検索結果表示手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る他の震災対応支援システムは、上述した発明において、背景地図上に、車両が通行した車両通行実績情報を重ねて表示する車両通行実績表示手段をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る震災対応支援システムによれば、地震発生時の被災地域内外の対応要員による震災対応行動を支援するために用いられる震災対応支援システムであって、被災地域の個々の建物の属性情報が登録されたデータ管理手段と、地震発生直後の被災地域の地震動強さ分布情報を取得する地震動強さ分布取得手段と、取得した地震動強さ分布情報と、データ管理手段に登録された個々の建物の属性情報に基づいて、個々の建物の被害可能性を推定する被害可能性推定手段と、位置の近い建物同士がまとまるよう被災地域を複数の領域に分割し、分割した領域毎に、被害可能性別に建物の数を集計する建物数集計手段と、領域毎に集計した建物の総計と被害可能性別の小計を所定のグラフで背景地図上の対応する領域に表示する表示手段とを備えるので、被災地域に広く分布する多数の建物の被害の概略を素早く把握することが可能となり、地震発生時の震災対応行動の迅速性・効率性を向上することができるという効果を奏する。
【0021】
また、本発明に係る他の震災対応支援システムによれば、背景地図を拡大、縮小または移動して、表示スケールおよび表示範囲の少なくとも一方を変更する表示変更手段をさらに備え、建物数集計手段は、表示変更手段による表示スケールおよび表示範囲の少なくとも一方の変更に応じて、位置の近い建物同士がまとまるよう被災地域を複数の領域に分割し、分割した領域毎に、被害可能性別に建物の数を集計し、表示手段は、表示変更手段による表示スケールおよび表示範囲の少なくとも一方の変更に応じて、領域毎に集計した建物の総計と被害可能性別の小計を所定のグラフで背景地図上の対応する領域に表示するので、背景地図の表示スケールや表示範囲を変更しても、建物の被害の概略を容易に把握することができるという効果を奏する。
【0022】
また、本発明に係る他の震災対応支援システムによれば、表示した背景地図上に存在する建物の属性情報のリストを所定の順序で表示する建物リスト表示手段と、表示したリストから選択した建物を、標準形態より誇張または拡大した形態で背景地図上の対応する位置またはその近傍に表示するとともに、背景地図上の対応する位置またはその近傍から当該建物の属性情報を吹き出し表示する選択建物表示手段とをさらに備えるので、表示した背景地図上に存在する建物の属性情報を容易に把握することができるとともに、選択した建物の背景地図上での位置および属性情報を容易に把握することができるという効果を奏する。
【0023】
また、本発明に係る他の震災対応支援システムによれば、文字情報を入力する文字入力手段と、入力された文字情報と建物の属性情報が部分一致している建物をデータ管理手段から検索する文字検索手段と、検索して得られた建物の属性情報のリストを表示する検索結果表示手段とをさらに備えるので、例えば建物の名称等を入力して検索することにより、被害の大小にかかわらず迅速な対応を要する重要な建物などの所定の建物を多数の建物の中から迅速に抽出することができるという効果を奏する。
【0024】
また、本発明に係る他の震災対応支援システムによれば、背景地図上に、車両が通行した車両通行実績情報を重ねて表示する車両通行実績表示手段をさらに備えるので、被害を受けて通行不能になった道路等を把握することが可能となり、震災対応行動の迅速性・効率性を向上することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明に係る震災対応支援システムの実施の形態を示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、被害可能性別建物数の集計分類地図である。
【
図3】
図3は、被害可能性別建物数の集計分類地図の拡大図である。
【
図4】
図4は、被害可能性別建物数の集計分類地図におけるリスト表示を示す図である。
【
図5】
図5は、被害可能性別建物数の集計分類地図における検索表示を示す図である。
【
図6】
図6は、従来の被害可能性別建物のプロット地図の一例を示す図である(コピーライトは(c) 2018 Google, ZENRIN)。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、地震時に、被災地域に広く分布する多数の建物の被害を短時間で推定し、その結果を関連する情報とともに、情報端末へわかり易く表示することにより、迅速かつ効率的に多数の建物の調査や支援等を行えるようにするものである。
【0027】
特に、大規模な地震では広範囲にわたって多くの建物が被害を生ずる。被害の迅速な調査や復旧のために、被害の大きい建物はどの地域に多いのか、空間的分布の概略を素早く把握する必要がある。その際に本発明は極めて有効である。空間的分布を把握することにより、対応要員は何人程度必要なのか、地域外から対応要員を派遣する場合はどこからどこへ、どのルートを通って派遣するのか、どの地域・建物から調査や復旧を開始するのか等の、効率的な対応方策を立案・実施することができる。
【0028】
以下に、本発明に係る震災対応支援システムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0029】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る震災対応支援システム10は、データ管理手段12と、地震動強さ分布取得手段14と、被害可能性推定手段16と、建物数集計手段18と、表示手段20と、これら各手段の動作制御を行う管理制御手段22とを備える。この震災対応支援システム10は、地震発生時の被災地域内外の対応要員による震災対応行動を支援するためのものであり、例えば震災対応統制室に設置される。
【0030】
データ管理手段12は、被災地域の個々の建物の属性情報の保持および登録管理を行うものである。建物の属性情報には、例えば、建物の名称、位置、構造種別、階数、築年等が含まれている。このデータ管理手段12は、例えばデータベースなどにより構成することができる。
【0031】
地震動強さ分布取得手段14は、地震発生直後の被災地域の地震動強さ分布情報を取得するものである。地震動強さ分布情報は、例えば、震度、最大加速度、最大速度、SI値などの情報である。取得する地震動強さ分布情報は、例えば、気象庁、防災科学技術研究所、産業技術総合研究所などの機関から地震発生直後に速やかに提供される情報であることが好ましい。また、取得する地震動強さ分布情報は、より高分解能であることが望ましい。
【0032】
被害可能性推定手段16は、地震動強さ分布取得手段14により取得した地震動強さ分布情報と、データ管理手段12に保持された個々の建物の属性情報に基づいて、個々の建物の被害可能性(被害の可能性)を推定するものである。建物の被害可能性を推定する方法としては、例えば以下の参考文献1に記載の方法を適用することができる。
【0033】
[参考文献1] 「東日本大震災における建物被災度判定結果の分析と想定地震に対する建物被災度推定への応用」、奈良岡浩二ほか著、清水建設研究所報第91号、2014年1月
【0034】
建物数集計手段18は、位置の近い建物同士がまとまるよう被災地域を複数の領域に分割し、分割した領域毎に、被害可能性別に建物の数を集計するものである。この場合、被災地域を、相互に概ね同程度の大きさの複数の領域に分割することが望ましい。
【0035】
表示手段20は、背景地図を画面に表示するとともに、領域毎に集計した建物の総計と被害可能性別の小計を、円グラフ(所定のグラフ)で背景地図上の対応する領域に表示するものである。近傍に他の建物がない単独の建物については、一つの独立した建物として表示する。表示手段20は、例えばディスプレイなどで構成することができる。
【0036】
図2は、表示手段20によって表示された画面の一例である。この例では、windows(登録商標)のブラウザを用いて背景地図等を表示しているが、本発明はこれに限るものではない。表示する背景地図は、例えばGISなどの地図情報を利用することができる。なお、本発明は円グラフに限るものではなく、建物の総計と被害可能性別の小計を併記した棒グラフや帯グラフで表示してもよい。また、表示手段20は、地震動強さ分布取得手段14により取得した地震動強さ分布情報を背景地図上に重ねて表示してもよい。
【0037】
管理制御手段22は、上記の各手段12~20の動作制御を行うものであり、例えばCPUと各種メモリからなるコンピュータ(情報端末)を含んで構成することができる。この管理制御手段22は、表示変更手段24、建物リスト表示手段26、選択建物表示手段28、文字入力手段30、文字検索手段32、検索結果表示手段34、車両通行実績表示手段36の各手段を有している。
【0038】
表示変更手段24は、背景地図を拡大、縮小または移動して、その表示態様を変更するものである。表示変更手段24は、例えばGISのユーザ・インターフェイスなどを用いて構成することができる。表示態様は、背景地図の表示スケールおよび表示範囲の少なくとも一方である。表示態様の変更に応じて、上記の建物数集計手段18は領域の再分割、建物の数の再集計を行い、上記の表示手段20は再表示を行うようになっている。
【0039】
例えば、ユーザが表示変更手段24で背景地図の表示態様を
図2から
図3に変更すると、上記の建物数集計手段18は、変更後の表示態様に応じて、位置の近い建物同士がまとまるよう被災地域を複数の領域に再分割し、再分割した領域毎に、被害可能性別に建物の数を再集計する。また、上記の表示手段20は、変更後の表示態様に応じて、領域毎に再集計した建物の総計と被害可能性別の小計を円グラフで背景地図上の対応する領域に再表示する。
【0040】
建物リスト表示手段26は、表示中の背景地図上に存在する建物の属性情報のリストを、所定の順序で表示するものである。例えば、
図4に示すように、ユーザが表示変更手段24で背景地図を一定縮尺以上に拡大すると、この背景地図の表示範囲内に存在する各建物の名称等の属性情報が、同じ表示画面内にリストとして表示される。その際、リストの順番は大小関係をもつ属性の昇順(または降順)となるようにしてもよい。
【0041】
選択建物表示手段28は、表示したリストから選択した建物を、標準形態より誇張または拡大した形態で、背景地図上の対応する位置等に表示するとともに、背景地図上の対応する位置等から当該建物の属性情報を吹き出し表示するものである。例えば、
図4に示すように、ユーザがリスト内の建物の名称等の属性情報を選択入力すると、背景地図上で当該建物が誇張または拡大表示され、併せて当該建物の属性情報が吹き出し表示される。
【0042】
文字入力手段30は、文字検索用の文字情報を入力するためのものである。この文字入力手段30は、
図5に示すように、表示画面内に設けられた入力欄と、この入力欄に文字情報を入力する図外のキーボード装置などで構成している。
【0043】
文字検索手段32は、入力欄に入力された文字情報と建物の属性情報が部分一致している建物を、データ管理手段12から検索するものである。
【0044】
検索結果表示手段34は、検索して得られた建物の属性情報のリストを表示するものである。上記の検索によって、入力欄の文字列と部分一致しているものがヒットすると、検索結果表示手段34は、
図5に示すように、それら建物の名称等をリストとして表示する。ユーザがリスト内の建物を選択入力すると、上記の選択建物表示手段28は、選択入力した建物を、標準形態より誇張または拡大した形態で、背景地図上の対応する位置等に表示するとともに、背景地図上の対応する位置等から当該建物の属性情報を吹き出し表示する。
【0045】
車両通行実績表示手段36は、背景地図上に、車両が通行した車両通行実績情報を重ねて表示するものである。上述したように、災害時は道路等が被害を受けて通行不能になる場合がある。そこで、例えば、上記の非特許文献1に示した車両通行実績情報提供サービス等を利用して、車両通行実績情報を取得する。取得した車両通行実績情報から、通行不能個所、通行可能個所を推定することができる。車両通行実績情報を背景地図上に重ねて表示すれば、通行可能な道路等を容易に把握することができる。これにより、ユーザは対象建物までの経路を迅速かつ効率的に設定可能である。
【0046】
次に、上記構成の動作および作用について説明する。
地震が発生し、地震動強さ分布取得手段14が地震動強さ分布情報を取得すると、被害可能性推定手段16は地震動強さ分布情報とデータ管理手段12から個々の建物の被害可能性を推定する。建物数集計手段18は位置の近い建物同士がまとまるよう被災地域を複数の領域に分割し、領域毎に被害可能性別に建物の数を集計する。表示手段20は領域毎に集計した建物の総計と被害可能性別の小計を、対応する領域に円グラフで表示する。
【0047】
このようにすれば、被災地域に広く分布する多数の建物の被害の概略を素早く把握することが可能となり、地震発生時の震災対応行動の迅速性・効率性を向上することができる。
【0048】
また、上記の表示変更手段24で背景地図の表示スケールや表示範囲を変更しても、建物数集計手段18による再集計と、表示手段20による再表示の作用により、表示変更後の建物の被害の概略を容易に把握することができる。
【0049】
また、上記の建物リスト表示手段26、選択建物表示手段28によって、建物の属性情報のリスト表示、吹き出し表示、建物の位置表示を、同じ表示画面内にわかり易くコンパクトに表示することで、これらの情報を容易に把握することができる。これにより、大規模地震直後の混乱期にあっても、大きな間違いのない適切な対応方策を立案・実施することが可能となる。
【0050】
また、建物の名称等のリストを被害程度の降順に表示することにより、被害が大きく迅速な対応を要する建物の調査や復旧を、優先的に進めることができる。また、現地の対応要員は、背景地図を大縮尺で表示することにより、たとえ現地の地理に不案内な者であっても、対象建物の位置や道順を容易に把握することができる。
【0051】
また、上記の文字入力手段30、文字検索手段32、検索結果表示手段34によって、被害の大小にかかわらず迅速な対応を要する重要な建物などの所定の建物を多数の建物の中から迅速に検索、抽出することができる。これにより、重要な建物の調査や復旧を、優先的に進めることが可能となる。
【0052】
また、上記の車両通行実績表示手段36によって、被害を受けて通行不能になった道路等を把握することが可能となるので、震災対応行動の迅速性・効率性を向上することができる。
【0053】
上記の実施の形態において、大規模地震時の対応行動の迅速性・効率性をさらに向上させるため、震災対応支援システム10が以下のような機能を有してもよい。例えば、背景地図上に表示する建物群を、一定の地震動強さ以上の地域に存在する建物群のみに絞り込めるようにする。また、背景地図上に表示する建物群を、建物の属性情報(例えば所有者)別に絞り込めるようにする。また、背景地図上に地震動強さ分布情報を併せて表示する場合には、それの表示/非表示を選択切替可能としてもよい。
【0054】
以上説明したように、本発明に係る震災対応支援システムによれば、地震発生時の被災地域内外の対応要員による震災対応行動を支援するために用いられる震災対応支援システムであって、被災地域の個々の建物の属性情報が登録されたデータ管理手段と、地震発生直後の被災地域の地震動強さ分布情報を取得する地震動強さ分布取得手段と、取得した地震動強さ分布情報と、データ管理手段に登録された個々の建物の属性情報に基づいて、個々の建物の被害可能性を推定する被害可能性推定手段と、位置の近い建物同士がまとまるよう被災地域を複数の領域に分割し、分割した領域毎に、被害可能性別に建物の数を集計する建物数集計手段と、領域毎に集計した建物の総計と被害可能性別の小計を所定のグラフで背景地図上の対応する領域に表示する表示手段とを備えるので、被災地域に広く分布する多数の建物の被害の概略を素早く把握することが可能となり、地震発生時の震災対応行動の迅速性・効率性を向上することができる。
【0055】
また、本発明に係る他の震災対応支援システムによれば、背景地図を拡大、縮小または移動して、表示スケールおよび表示範囲の少なくとも一方を変更する表示変更手段をさらに備え、建物数集計手段は、表示変更手段による表示スケールおよび表示範囲の少なくとも一方の変更に応じて、位置の近い建物同士がまとまるよう被災地域を複数の領域に分割し、分割した領域毎に、被害可能性別に建物の数を集計し、表示手段は、表示変更手段による表示スケールおよび表示範囲の少なくとも一方の変更に応じて、領域毎に集計した建物の総計と被害可能性別の小計を所定のグラフで背景地図上の対応する領域に表示するので、背景地図の表示スケールや表示範囲を変更しても、建物の被害の概略を容易に把握することができる。
【0056】
また、本発明に係る他の震災対応支援システムによれば、表示した背景地図上に存在する建物の属性情報のリストを所定の順序で表示する建物リスト表示手段と、表示したリストから選択した建物を、標準形態より誇張または拡大した形態で背景地図上の対応する位置またはその近傍に表示するとともに、背景地図上の対応する位置またはその近傍から当該建物の属性情報を吹き出し表示する選択建物表示手段とをさらに備えるので、表示した背景地図上に存在する建物の属性情報を容易に把握することができるとともに、選択した建物の背景地図上での位置および属性情報を容易に把握することができる。
【0057】
また、本発明に係る他の震災対応支援システムによれば、文字情報を入力する文字入力手段と、入力された文字情報と建物の属性情報が部分一致している建物をデータ管理手段から検索する文字検索手段と、検索して得られた建物の属性情報のリストを表示する検索結果表示手段とをさらに備えるので、例えば建物の名称等を入力して検索することにより、被害の大小にかかわらず迅速な対応を要する重要な建物などの所定の建物を多数の建物の中から迅速に抽出することができる。
【0058】
また、本発明に係る他の震災対応支援システムによれば、背景地図上に、車両が通行した車両通行実績情報を重ねて表示する車両通行実績表示手段をさらに備えるので、被害を受けて通行不能になった道路等を把握することが可能となり、震災対応行動の迅速性・効率性を向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上のように、本発明に係る震災対応支援システムは、地震発生時の震災対応行動を支援するシステムに有用であり、特に、震災対応行動の迅速性・効率性を向上するのに適している。
【符号の説明】
【0060】
10 震災対応支援システム
12 データ管理手段
14 地震動強さ分布取得手段
16 被害可能性推定手段
18 建物数集計手段
20 表示手段
22 管理制御手段
24 表示変更手段
26 建物リスト表示手段
28 選択建物表示手段
30 文字入力手段
32 文字検索手段
34 検索結果表示手段
36 車両通行実績表示手段