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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】天井健全性評価機構及び天井構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/00 20060101AFI20230216BHJP
   G08B 21/10 20060101ALI20230216BHJP
   G08B 23/00 20060101ALI20230216BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20230216BHJP
【FI】
E04B9/00 R
G08B21/10
G08B23/00 510Z
G01M99/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019015525
(22)【出願日】2019-01-31
(65)【公開番号】P2020122347
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】生富 直孝
(72)【発明者】
【氏名】岡沢 理映
(72)【発明者】
【氏名】森井 雄史
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-252460(JP,A)
【文献】特開2009-187367(JP,A)
【文献】特開2018-189578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/00 - 9/36
E04B 1/00 - 1/99
G01M 99/00
G08B 19/00 - 19/02
G08B 21/00 - 21/24
G08B 23/00
G08B 25/00 - 25/14
G08B 26/00
G08B 27/00
G08B 29/00 - 29/28
G08B 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外力を受けた際に発光物質に化学反応させて発光又は着色する発光部と、
前記発光部を固定する取付部と、
壁と天井との間に相対的な変位が生じた際に前記発光部を押圧して外力を与えて発光又は着色させる押圧部と、を備え
前記取付部は、前記壁に設けられ、
前記押圧部は、前記天井に設けられていることを特徴とする天井健全性評価機構。
【請求項2】
外力を受けた際に発光物質に化学反応させて発光又は着色する発光部と、
前記発光部を固定する取付部と、
壁と天井との間に相対的な変位が生じた際に前記発光部を押圧して外力を与えて発光又は着色させる押圧部と、を備え
前記取付部は、前記天井に設けられ、
前記押圧部は、前記壁に設けられていることを特徴とする天井健全性評価機構。
【請求項3】
前記押圧部は、地震発生時に前記壁と前記天井との間の距離が所定値以上近接した際に前記発光部を押圧することを特徴とする、
請求項1又は2に記載の天井健全性評価機構。
【請求項4】
前記天井と前記壁との間の隙間を覆うと共に、前記発光部を視認するための小窓が設けられた見切部を更に備えることを特徴とする、
請求項1から3のうちいずれか1項に記載の天井健全性評価機構。
【請求項5】
請求項1からのうちいずれか1項に記載の天井健全性評価機構を備えることを特徴と
する、
天井構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震発生後における建物の天井の健全性を評価するための天井健全性評価機構及び天井構造に関する。
【背景技術】
【0002】
地震力に対する建物の天井の健全性を評価するために、天井構造を振動台に載置して加振する実験が行われる。この実験において、天井には、変位センサや加速度センサ等の複数のセンサ類が取り付けられる。そして、加振時に生じる各センサ類の応答のデータに基づいて天井の振動に対する健全性の評価が行われる。
【0003】
これに関連して、地震発生後の実際の建物の天井の健全性を評価するために、例えば、特許文献1に記載された装置がある。この装置は、天井の損傷状況を取得して、在室者等に天井が崩落する可能性があることを警告するものである。この装置は、天井構成部材の動きを検知する検知手段と、検知手段が所定値以上の動きを検知した場合に警告を発する警告手段とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-084105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、実際の建物の天井にセンサ類を取り付けて地震後の天井の健全性を評価することは、手間やコストがかかり、現実的でない。特許文献1に記載された装置によれば、天井の構成部材毎にセンサ類を固定する必要があり、施工コストが増加する。そして、この装置を継続的に機能させるためには、センサ類の定期的な維持、管理が必要となり、管理コストが増加する。また、この装置のセンサ類を継続的に稼働させるための電源を確保する必要がある。
【0006】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、電源を必要とせずに装置構成を簡略化し、施工コストを低減しつつも建物の天井の健全性を確実に評価することができる天井健全性評価機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達するために、本発明に係る天井健全性評価機構は、外力を受けた際に発光物質に化学反応させて発光又は着色する発光部と、前記発光部を固定する取付部と、壁と天井との間に相対的な変位が生じた際に前記発光部を押圧して外力を与えて発光又は着色させる押圧部と、を備え、前記取付部は、前記壁に設けられ、前記押圧部は、前記天井に設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、地震力が加わって建物の天井と壁とが相対的に近接した場合、壁又は天井に取付部を介して取り付けられた発光部が相対的に近接する押圧部によって押圧される。発光部は、外力が加わると内部で発光物質が化学反応して発光又は着色するため、発光部の発光等を確認すると天井に外力が加わったと評価することができる。発光部は、化学反応により発光又は着色するため、電源を必要とせず装置構成が簡略化されると共に、維持管理も簡略化される。また、建物の新築や修繕の際に壁に取付部を介して発光部を設けることで、天井の裏面側に発光部を隠すように構成し、センサの美観性を向上させることができる。
また、本発明に係る天井健全性評価機構は、外力を受けた際に発光物質に化学反応させて発光又は着色する発光部と、前記発光部を固定する取付部と、壁と天井との間に相対的な変位が生じた際に前記発光部を押圧して外力を与えて発光又は着色させる押圧部と、を備え、前記取付部は、前記天井に設けられ、前記押圧部は、前記壁に設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、地震力が加わって建物の天井と壁とが相対的に近接した場合、壁又は天井に取付部を介して取り付けられた発光部が相対的に近接する押圧部によって押圧される。発光部は、外力が加わると内部で発光物質が化学反応して発光又は着色するため、発光部の発光等を確認すると天井に外力が加わったと評価することができる。発光部は、化学反応により発光又は着色するため、電源を必要とせず装置構成が簡略化されると共に、維持管理も簡略化される。また、既設の建物に天井に取付部を介して発光部を設けることで、既存の天井構造を変更することなく追加して天井健全性評価機構を取り付けることができる。
【0009】
本発明に係る天井健全性評価機構は、前記押圧部が地震発生時に前記壁と前記天井との間の距離が所定値以上近接した際に前記発光部を押圧するように構成されていてもよい。
【0010】
本発明に係る天井健全性評価機構は、前記天井と前記壁との間の隙間を覆うと共に、前記発光部を視認するための小窓が設けられた見切部を更に備えるように構成されていてもよい。
【0011】
本発明によれば、天井と壁との間の隙間を覆う見切部の天井側に発光部が設けられており、室内側から発光部の発光を視認できるように見切部に小窓が設けられているため、発光部が見切部に隠蔽されて美観性を向上させつつも、小窓を介して発光部が発光又は発光後に着色したことを視認して天井の健全性をも評価することができる。
【0016】
本発明に係る天井構造は、上記天井健全性評価機構を備えるように構成されていてもよい。
【0017】
本発明によれば、地震力が加わった後に発光する天井健全性評価機構を用いて天井の健全性を評価可能な天井構造を実現することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電源を必要とせずに装置構成を簡略化し、施工コストを低減しつつも建物の天井の健全性を確実に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る天井健全性評価機構の構成を示す平面図である。
図2】天井健全性評価機構の構成を示す側面図である。
図3】天井健全性評価機構の構成を示す正面図である。
図4】取付部の構成を示す拡大図である。
図5】変形例に係る天井健全性評価機構の構成を示す拡大図である。
図6】変形例に係る取付部の構成を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る天井健全性評価機構の実施形態について説明する。
【0021】
天井健全性評価機構は、化学反応により発光する発光体を用いて地震発生後の天井の健全性を簡便に評価するセンサである。天井健全性評価機構1は、例えば、建物を新築したり改修したりする際に予め天井部分に設けられる。天井健全性評価機構は、例えば、吊り天井等の天井構造に適用される。
【0022】
図1から図4に示されるように、天井健全性評価機構1は、例えば、天井Qの角部に設けられる。天井Qと壁Pとの間には、例えば、隙間が所定の間隔(10[cm]程度)で設けられている。天井健全性評価機構1は、例えば、外力を受けた際に発光物質に化学反応させて発光する発光部10と、発光部10を壁Pに固定する取付部20と、天井Qに設けられた押圧部30とを備える。発光部10、取付部20、及び押圧部30は、天井Qの角部において互いに直交する方向に2つ設けられている。
【0023】
発光部10は、いわゆるケミカルライトが用いられる。発光部10は、例えば、ポリエチレン製の可撓性の円柱状の密閉された第1容器を備える。第1容器は、例えば、径が20[mm]程度で、全長が70[mm]程度に形成されている。第1容器内には、ガラス製の円柱状の密閉された第2容器(アンプル)が設けられている。第1容器内には、第1薬液(例えば、過酸化水素水)が封入されている。第2容器内には、発光物質の第2薬液(例えば、シュウ酸ジフェニル)が封入されている。
【0024】
所定以上の外力が加わって第1容器が所定以上に撓んで変形した場合、第1容器内の第2容器が割れて、第2容器内の第2薬液が第1容器内に漏れ出し、第1容器内の第1薬液と混合する。第1薬液と第2薬液とが混合して混合液となった場合、化学反応により混合液が発光する。発光部10は、例えば、発光開始から数時間発光が継続する。発光部10は、発光時間が終了した後、化学反応により生じた着色が残存するものであってもよい。発光部10は、例えば、取付部20を介して壁Pに固定されている。
【0025】
取付部20は、壁P側に固定されている。取付部20は、壁Pに固定するための台座21と、台座21に設けられた見切部22と、見切部22に設けられた挟持部23とを備える。台座21は、例えば、矩形の板状体に形成されている。台座21は、例えば、鉄板を用いて形成されている。台座21は、例えば、アンカーボルト及びナット(不図示)等を用いて壁Pに鉛直方向に固定されている。台座21は、例えば、壁Pの角部において直交方向にそれぞれ設けられている。
【0026】
台座21の下端部には、水平方向に直交して見切部22が形成されている。見切部22は、壁Pと天井Qとの間の隙間を隠すための化粧用部材である。見切部22は、例えば、矩形の板状体に形成されている。見切部22は、例えば、表面側が室内側に、裏面側が天井裏側になるように形成されている。見切部22の上に天井Qが載置される。見切部22の裏面には、発光部10を固定するための挟持部23が設けられている。
【0027】
挟持部23は、壁P側に設けられている。挟持部23は、発光部10の一端側を挟持する。挟持部23は、一対の発光部10の径方向が互いに直交する方向に向くように形成されている。挟持部23は、見切部22の裏側の面から上方に突出して形成されている。挟持部23は、上方に起立した一対の起立片24を備える。一対の起立片24は、例えば、発光部10を径方向に挟持するような距離で離間して設けられている。一対の起立片24は、例えば、先端部に互いに内側方向に距離が狭まるように半円状に湾曲するストッパ25が形成されている。
【0028】
これにより、一対の起立片24の上方から発光部10を押し込むと、一対のストッパ25が発光部10の下部に当接しながら一対の起立片24の間の距離が広がる。更に発光部10を押し込むと、発光部10は、見切部22に当接し、一対の起立片24の間の距離が元の状態に復元しようとし、発光部10を両側から挟持する。一対のストッパ25が発光部10の上方への移動を規制するため、発光部10は上方に離脱することはない。
【0029】
発光部10が挟持部23に取り付けられた状態で、発光部10の他端と天井Qの端部Q1とは離間している。地震力が加わって、壁側に取り付けられた発光部10と天井Qとの間の距離が相対的に近接した際に、天井Qの端部Q1において発光部10の他端と接触する領域を押圧部30と呼ぶ。押圧部30は、地震発生時に壁Pと天井Qとの間の距離が相対的に所定値以上変位した際に発光部10の他端を押圧して外力を与えて発光部10を発光させる。押圧部30は、発光部10の他端に対して所定距離(例えば、3[cm]程度)離間して配置されている。天井Qの素材が軟質である場合、押圧部30に金属板等を取り付けて補強してもよい。
【0030】
見切部22は、壁Pと天井Qと間の隙間を下面側から覆うと共に、挟持部23の位置に発光部10を視認するための小窓26が形成されている。小窓26は、例えば、矩形に形成された貫通孔である。小窓26は、発光部10よりも小さい寸法で且つ、挟持部23よりも狭い幅の寸法で形成されている。小窓26には、例えば、透明又は半透明の材料が嵌め込まれていてもよい。小窓26は、発光部10の光を透過するほどに見切部22の厚さを薄くするように削られて形成されていてもよい。
【0031】
上記構成により、基準以上の地震力が生じて天井Qが壁Pに所定値以上近接した場合、押圧部30が発光部10の他端を押圧する。発光部10は、一端が壁Pに、他端が押圧部30に押圧され、第1容器が撓む。その際、第1容器内の第2容器が割れて第1容器内の第1薬液と第2容器内の第2薬液とが混合され、混合液が化学反応により発光開始する。地震が収まった後、室内側から見切部22の小窓26を点検すると、小窓26から発光部10が発光していることが確認される。
【0032】
天井健全性評価機構1によれば、地震発生後に発光部10が発光しているか否かを確認することにより、天井Qに所定以上の力が加わった状態であるか否かという健全性を評価することができる。このため、天井健全性評価機構1によれば、地震発生後に室内からの避難や入室禁止、天井の修理等の措置を講じるための評価をすることができる。天井健全性評価機構1によれば、簡便な構成により地震後の天井の健全性を評価することができ、施工コストを低減化することができる。天井健全性評価機構1によれば、発光部10が化学反応により発光するため、電源を必要とせず配線や電池交換などの作業を省略し、施工コストや管理コストを低減化することができる。
【0033】
[変形例]
上述した天井健全性評価機構1は、建物を新築する場合や改修する場合に適用される。天井健全性評価機構は、既存の建物の天井に後付けで設けられるものであってもよい。以下の説明では、上記実施形態と同一の構成については、同一の名称及び符号を用い、重複する説明については適宜省略する。
【0034】
図5及び図6に示されるように、変形例に係る天井健全性評価機構1Aは、取付部20Aが天井Q側に設けられている。天井Qと壁Pとの間には隙間が設けられており、隙間を覆うように見切部22Aが壁P側に設けられている。取付部20Aは、例えば天井Qの表面側に取り付けられる保持部23Aと、保持部23Aに設けられ、発光部10を固定するための挟持部23Bとを備える。
【0035】
保持部23Aは、例えば、天井Qの角部の表面側(室内側)に取り付けられる。保持部23Aは、例えば断面が欠円アーチ状の筒状体に形成されている。保持部23Aの一端側は開口し、他端側はエンド部材23Cにより閉じられるように形成されている。エンド部材23Cには、例えば、筒状の挟持部23Bが螺入されることにより嵌め込まれている。挟持部23Bは、保持部23Aの内部側に取り付けられている。挟持部23Bには、発光部10の一端側が嵌め込まれる。
【0036】
保持部23Aの一端側には、発光部10のブレを防止するように発光部10を保持する形状に形成されたブレ防止部材23Dが設けられている。保持部23Aに発光部10が取り付けられた状態で、発光部10の他端と壁Pとは所定距離(例えば、3[cm]程度)離間している。地震力が生じて壁Pにおいて発光部10の他端の当接する位置を押圧部30Aと呼ぶ。壁Pの素材が軟質である場合、押圧部30Aに金属板等を取り付けて補強してもよい。
【0037】
上記構成により、所定以上の地震力が生じて天井Qが壁Pに所定値以上近接した場合、押圧部30Aが発光部10の他端を押圧する。発光部10は、一端が保持部23A(天井Q)に、他端が押圧部30に押圧されて撓み、上述したように内部で化学反応が生じて発光が開始する。地震が収まった後、室内側から発光部10を点検すると、発光部10が発光又は着色していることが確認される。
【0038】
上述したように天井健全性評価機構1Aによれば、既存の建物に後付けで発光部10を取り付けることで、簡便に天井の健全性を評価することができる。
【0039】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0040】
1、1A 天井健全性評価機構
10 発光部
20、20A 取付部
21 台座
22、22A 見切部
23、23B 挟持部
23A 保持部
23C エンド部材
23D ブレ防止部材
24 起立片
25 ストッパ
26 小窓
30、30A 押圧部
P 壁
Q 天井
Q1 端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6