(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】空調システム、空調システムの制御装置
(51)【国際特許分類】
F24F 13/02 20060101AFI20230216BHJP
F24F 1/0007 20190101ALI20230216BHJP
F24F 3/00 20060101ALI20230216BHJP
F24F 11/74 20180101ALI20230216BHJP
【FI】
F24F13/02 D
F24F1/0007 381
F24F3/00 Z
F24F11/74
F24F13/02 A
(21)【出願番号】P 2019031224
(22)【出願日】2019-02-25
【審査請求日】2021-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】三輪 純一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 聡
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-020129(JP,A)
【文献】特開2017-083139(JP,A)
【文献】特開2003-065559(JP,A)
【文献】特開2011-089745(JP,A)
【文献】特開平06-201154(JP,A)
【文献】特開平11-051445(JP,A)
【文献】特開2008-020127(JP,A)
【文献】特開2001-090991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/02
F24F 1/0093
F24F 3/00
F24F 11/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の空気を吸い込み温度調整がなされた風を送り出す第一空調機本体及び第二空調機本体と、
前記第一空調機本体に接続されて、
前記第一空調機本体から送り出された前記風が導入される第一ダクトと、
前記第一ダクトに設けられて、室内に前記風を供給する送風口と、
前記第二空調機本体に
一端が接続されて、
前記第二空調機本体から送り出された前記風が導入される第二ダクトと、
前記第二ダクト
を流れてきた前記風により加熱又は冷却されることで前記室内に熱を放射する放射パネルと、
前記第二ダクトの他端に形成されて前記放射パネルが収容され、前記第二ダクトを流れてきた前記風を前記室内に供給するパネル側送風口を有したパネル収容空間と、
前記第一ダクトと前記第二ダクトとを連通する連通部と、
前記連通部を開閉する開閉部と、を備える
空調システム。
【請求項2】
前記第一ダクトに設けられ、前記送風口に供給される前記風の流量を調整する第一流量調整部と、
前記第二ダクトに設けられ、前記放射パネルに供給される前記風の流量を調整する第二流量調整部と、をさらに備える
請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記送風口に設けられ、前記送風口から前記室内に供給された風を、前記室内の内面に沿って前記放射パネルが設けられた側に案内する案内部、をさらに備える
請求項1又は2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記開閉部の開閉動作を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記第一空調機本体及び前記第二空調機本体の何れか一方で前記風の供給が停止された場合、前記開閉部を開く
請求項1から
3の何れか一項に記載の空調システム。
【請求項5】
前記第一空調機本体及び前記第二空調機本体のそれぞれの故障発生を検知するための検知部をさらに備え、
前記制御部は、前記第一空調機本体及び前記第二空調機本体の何れか一方に故障が発生したことを前記検知部からの検知信号に基づいて検知した場合、前記開閉部を開く
請求項
4に記載の空調システム。
【請求項6】
請求項1から
3の何れか一項に記載の空調システムを制御する空調システムの制御装置であって、
前記第一空調機本体及び前記第二空調機本体の運転状態を判定する運転状態判定部と、
前記運転状態判定部で判定された前記第一空調機本体及び前記第二空調機本体の運転状態に基づき、前記開閉部の開閉動作を制御する開閉制御部と、
を備える空調システムの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空調システム、空調システムの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射パネル(ふく射パネル)を用いた放射空調装置は、室内機で温度調整した空気をダクトに通過させ、放射パネルを加熱または冷却する。放射パネルから室内空間に熱が放射されることで、室内空間の放射空調がなされる。
このような放射空調装置は、室内機で温度調整した空気を室内に吹き出す対流式空調装置に比較すると、運転開始時の室内温度変化速度が低い。そのため、室内が所定の設定温度に到達するまでの立ち上がりに時間が掛かる。
【0003】
これに対し、例えば特許文献1には、対流式空調装置(室内空調手段)と、放射空調装置(放射空調手段)と、対流式空調装置と放射空調装置を切り替え可能な切り替え手段とを備えた構成が開示されている。このような構成によれば、冷暖房が必要な時は、対流式空調装置で一気に室内空調する。快適温度に到達して室内空調が安定したら、空調切り替え操作手段により放射空調装置に切り替え、放射空調によって室温を維持する。これにより、立ち上がりは短時間で室内空調ができ、快適な温度になれば後は放射空調で無気流の快適な室内空調ができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示されたような構成において、対流式空調装置及び放射空調装置の何れか一方が故障した場合には、対流式空調装置及び放射空調装置の他方で空調運転を継続することができる。
しかし、対流式空調装置のみで空調運転を継続した場合、対流式空調装置で温度調整された調和空気が吹き出して室内に気流が生成される。室内の利用者によっては、気流を不快であると感じる場合もあり、室内の快適性が低下してしまう。
また、放射空調装置のみで空調運転を継続した場合、運転開始時の立ち上がりに時間が掛かる。さらに、冷房運転時、放射空調のみの場合、冷房運転時に、放射パネルの表面に結露が生じる場合もある。したがって、この場合においても、室内の快適性が低下してしまうことがある。
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、室内の快適性をさらに向上させることができる空調システム、空調システムの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
この発明の第一態様によれば、空調システムは、第一空調機本体及び第二空調機本体と、第一ダクトと、送風口と、第二ダクトと、放射パネルと、パネル収容空間と、連通部と、開閉部と、を備える。第一空調機本体及び第二空調機本体は、室内の空気を吸い込み温度調整がなされた風を送り出す。前記第一ダクトは、前記第一空調機本体に接続されて、前記第一空調機本体から送り出された前記風が導入される。前記送風口は、前記第一ダクトに設けられて、室内に前記風を供給する。前記第二ダクトは、前記第二空調機本体に一端が接続されて、前記第二空調機本体から送り出された前記風が導入される。前記放射パネルは、前記第二ダクトを流れてきた前記風により加熱又は冷却されることで前記室内に熱を放射する。パネル収容空間は、前記第二ダクトの他端に形成されて前記放射パネルが収容され、前記第二ダクトを流れてきた前記風を前記室内に供給するパネル側送風口を有している。前記連通部は、前記第一ダクトと前記第二ダクトとを連通する。前記開閉部は、前記連通部を開閉する。
【0007】
このように構成することで、第一空調機本体から送り出された風は、第一ダクトを通り、送風口から室内に供給される。第二空調機本体から送り出された風は、第二ダクトを通り、放射パネルを加熱又は冷却する。加熱又は冷却された放射パネルは、放射により室内を加熱又は冷却する。開閉部により連通部を開くと、第一ダクトと第二ダクトとが連通する。
例えば、故障等によって第一空調機本体からの風の供給が停止された場合、連通部を開いて第一ダクトと第二ダクトとを連通させると、第二空調機本体から送り出された風の一部は、連通部を通して第一ダクトに流れ込む。これにより、第二空調機本体から送り出された風を、送風口から室内に供給することができる。また、故障等によって第二空調機本体からの風の供給が停止された場合、連通部を開いて第一ダクトと第二ダクトとを連通させると、第一空調機本体から送り出された風の一部は、連通部を通して第二ダクトに流れ込む。これにより、放射パネルは、第一空調機本体から送り出された風によって加熱又は冷却され、室内の放射空調が行われる。
また、空調システムの運転開始時には、第一空調機本体から送り出された風を、第一ダクトを通して送風口から室内に供給するとともに、第二空調機本体から送り出された風を、第二ダクトを通して放射パネルを加熱又は冷却する。これにより、室内の温度を効率良く調整することができ、立ち上がりが早くなる。
このように、故障発生時や運転開始時における、室内の快適性をさらに向上させることができる。
さらに、放射パネルを加熱又は冷却した風をパネル側送風口から室内に供給することで、熱エネルギーを有効利用し、空調効率を高めることができる。
【0008】
この発明の第二態様によれば、第一態様に係る空調システムは、第一流量調整部と、第二流量調整部と、をさらに備えるようにしてもよい。前記第一流量調整部は、前記第一ダクトに設けられ、前記送風口に供給される前記風の流量を調整する。前記第二流量調整部は、前記第二ダクトに設けられ、前記放射パネルに供給される前記風の流量を調整する。
このように構成することで、連通部を開いて第一ダクトと第二ダクトとを連通させた状態で、第一流量調整部、第二流量調整部で流量調整を行うと、連通部を通る風の量を調整することができる。
例えば、故障等によって第一空調機本体からの風の供給が停止された場合、連通部を開くとともに、第二流量調整部における流量を少なくする。すると、第二空調機本体から第二ダクトを通して放射パネルに流れる風の流量が減る。これに対し、連通部を通して第二ダクトから第一ダクトに送り込まれ、送風口に供給される風の流量は増える。これにより、送風口から室内に供給される風の量を増加させることができる。
また例えば、故障等によって第二空調機本体からの風の供給が停止された場合、連通部を開くとともに、第一流量調整部における風の流量を少なくする。すると、第一空調機本体から第一ダクトを通して送風口に流れる風の流量が減る。これに対し、連通部を通して第一ダクトから第二ダクトに送り込まれ、放射パネルに供給される風の流量が増える。これにより、放射パネルに付与する熱量を高めることができる。
【0009】
この発明の第三態様によれば、第一又は第二態様に係る空調システムは、前記送風口に設けられ、前記送風口から前記室内に供給された風を、前記室内の内面に沿って前記放射パネルが設けられた側に案内する案内部、をさらに備えるようにしてもよい。
このように構成することで、案内部により、送風口から室内に供給された風を、室内の内面に沿って放射パネルが設けられた側に案内すると、放射パネルの結露が防止される。
【0011】
この発明の第四態様によれば、第一から第三態様の何れか一つの態様に係る空調システムは、前記開閉部の開閉動作を制御する制御部をさらに備えるようにしてもよい。前記制御部は、前記第一空調機本体及び前記第二空調機本体の何れか一方で前記風の供給が停止された場合、前記開閉部を開くようにしてもよい。
このように構成することで、第一空調機本体及び第二空調機本体の何れか一方に故障等が生じた場合、制御部で開閉部を開くことで、第一ダクトと第二ダクトとを自動的に連通させることができる。これにより、第一空調機本体からの風の供給が停止された場合であっても、第二空調機本体から送り出された風が送風口から室内に供給される。また、第二空調機本体からの風の供給が停止された場合であっても、第一空調機本体から送り出された風によって放射パネルが加熱又は冷却され、室内の放射空調が行われる。
【0012】
この発明の第五態様によれば、第四態様に係る空調システムは、前記第一空調機本体及び前記第二空調機本体のそれぞれの故障発生を検知するための検知部をさらに備えるようにしてもよい。前記制御部は、前記第一空調機本体及び前記第二空調機本体の何れか一方に故障が発生したことを前記検知部からの検知信号に基づいて検知した場合、前記開閉部を開くようにしてもよい。
このように構成することで、第一空調機本体、第二空調機本体の故障発生を検知部で自動的に検知し、制御部で開閉部を開くことができる。
【0013】
この発明の第六態様によれば、空調システムの制御装置は、第一から第三態様の何れか一つの態様に係る空調システムを制御する空調システムの制御装置であって、運転状態判定部と、開閉制御部と、を備える。前記運転状態判定部は、前記第一空調機本体及び前記第二空調機本体の運転状態を判定する。前記開閉制御部は、前記運転状態判定部で判定された前記第一空調機本体及び前記第二空調機本体の運転状態に基づき、前記開閉部の開閉動作を制御する。
このように構成することで、運転状態判定部は、第一空調機本体及び第二空調機本体の運転状態、例えば、第一空調機本体及び第二空調機本体の何れか一方に故障等が生じた場合や、運転開始時等であることを判定する。開閉制御部は、運転状態判定部が検知した第一空調機本体及び第二空調機本体の運転状態に基づいて、開閉制御部で開閉部を開くことで、第一ダクトと第二ダクトとを自動的に連通させることができる。
【発明の効果】
【0014】
上記空調システム、空調システムの制御装置によれば、室内の快適性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明の一実施形態における空調システムの概略構成を示す模式図である。
【
図2】この発明の実施形態における制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】上記制御装置における空調装置部の制御の流れを示すフローチャートである。
【
図4】上記空調システムにおいて、運転開始時における風の流れを示す図である。
【
図5】上記空調システムにおいて、対流空調機本体が故障した場合における風の流れを示す図である。
【
図6】上記空調システムにおいて、放射空調機本体が故障した場合における風の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の一実施形態における空調システム、空調システムの制御装置を図面に基づき説明する。
図1は、この実施形態における空調システムの概略構成を示す模式図である。
図1に示すように、この実施形態の空調システム10は、空調装置部11と、制御装置50と、を備える。
【0017】
空調装置部11は、対流空調装置20と、放射空調装置30と、連通部40と、を主に備える。空調システム10は、建物に設けられた室2の内面、例えば天井、床、壁等に設けられている。この実施形態では、空調システム10は、室2の天井3に設けられている。
【0018】
対流空調装置20は、対流空調機本体(第一空調機本体)21と、対流空調ダクト(第一ダクト)22と、送風口25と、を備えている。
【0019】
対流空調機本体21は、室内熱交換器21aと、送風ファン21bと、を有する。室内熱交換器21a、及び送風ファン21bは、対流空調機本体21の筐体21cに収容されている。対流空調機本体21は、天井3に設けられた吸込口21dから室2内の空気を吸い込む。室内熱交換器21aは、室外機(図示無し)から供給された冷媒と空気とを熱交換することで、吸い込んだ空気を加熱又は冷却する。送風ファン21bは、室内熱交換器21aにより加熱又は冷却されることで温度調整がなされた空気による風W1を、対流空調ダクト22内に送り出す。
【0020】
対流空調ダクト22の一端は、対流空調機本体21に接続されている。対流空調ダクト22は、対流空調機本体21から送り出される風W1が導入される。
【0021】
送風口25は、対流空調ダクト22の他端に形成されている。送風口25は、天井3に開口している。
【0022】
放射空調装置30は、放射空調機本体(第二空調機本体)31と、放射空調ダクト(第二ダクト)33と、放射パネル35と、を備えている。
【0023】
放射空調機本体31は、室内熱交換器31aと、送風ファン31bと、を有する。室内熱交換器31a、及び送風ファン31bは、放射空調機本体31の筐体31cに収容されている。放射空調機本体31は、天井3に設けられた吸込口31dから室2内の空気を吸い込む。室内熱交換器31aは、室外機(図示無し)から供給された冷媒と空気とを熱交換することで、吸い込んだ空気を加熱又は冷却する。送風ファン31bは、室内熱交換器31aにより加熱又は冷却されることで温度調整がなされた空気による風W2を、放射空調ダクト33内に送り出す。この実施形態において、放射空調機本体31は、対流空調機本体21に対し、天井3の表面に沿った水平方向において第一側に配置されている。
【0024】
放射空調ダクト33の一端は、放射空調機本体31に接続されている。放射空調ダクト33には、放射空調機本体31から送り出される風W2が導入される。放射空調ダクト33の延伸方向の一部33cは、対流空調ダクト22と並行して設けられている。放射空調ダクト33の他端には、放射パネル35が収容されるパネル収容空間33sが形成されている。
【0025】
放射パネル35は、パネル収容空間33s内に設けられている。放射パネル35は、天井3の表面の面内で、送風口25に対し間隔をあけて設けられている。放射パネル35は、放射空調ダクト33を流れてきた風W2により加熱又は冷却される。この実施形態において、放射パネル35は、その下面35bが、室2内に臨むように設けられ、天井3の表面の一部を形成している。
【0026】
この実施形態において、平面視における放射パネル35の外形は、直方体形状とされている。放射パネル35内部には、中空部35sが形成されている。放射パネル35は、放射空調ダクト33を流れてきた風W2を中空部35s内に導入するための空気導入口(図示無し)を有する。
【0027】
放射パネル35は、空気導入口から中空部35s内に流れ込んだ風W2により加熱又は冷却される。加熱又は冷却された放射パネル35は、その熱を室2内に放射する。また、放射パネル35の中空部35s内に流れ込んだ風W2は、下面35bに形成された空気導出口(パネル側送風口)35eから室2内に供給される。
【0028】
ここで、放射パネル35は、室2内に臨む下面35bに、複数の空気導出口35eを有する。放射パネル35の下面35bは、多孔板のように形成し、空気導出口35eを多数形成するようにしてもよい。これにより、空気導出口37eから室2内に供給される風W2’は、風速(風量)の僅かな微風となり、室2内の利用者にとって感じ難くなる。
【0029】
前記パネル収容空間33sには、室2内に連通するパネル側送風口37が設けられている。パネル側送風口37は、放射空調ダクト33から放射パネル35の中空部35s内に流れ込まなかった残りの風W2を、室2内に供給する。
【0030】
連通部40は、対流空調ダクト22と放射空調ダクト33とを、対流空調ダクト22と放射空調ダクト33の一部33cとの並行する部分で連通する。
【0031】
連通部40には、連通部40を開閉する連通ダンパー(開閉部)41が設けられている。連通ダンパー41で連通部40を閉じた状態では、対流空調ダクト22と放射空調ダクト33とは区画されている。連通ダンパー41で連通部40を開くと、連通部40を通して、対流空調ダクト22と放射空調ダクト33とが連通する。
【0032】
また、空調装置部11は、第一ダンパー(第一流量調整部、案内部)43、及び第二ダンパー(第二流量調整部)45をさらに備える。
第一ダンパー43は、送風口25に設けられている。第一ダンパー43は、対流空調ダクト22に設けられている。第一ダンパー43は、第一ダンパー43の風W1の流れ方向において、連通ダンパー41よりも下流側に設けられている。第一ダンパー43は、送風口25に供給される風W1の流量を調整する。
この実施形態において、第一ダンパー43は、板状(フラップ状)で、一端43aから他端43bに向かって下方に傾斜している。第一ダンパー43は、対流空調ダクト22を流れてきた風の少なくとも一部を、天井面(内面)3fに沿って放射パネル35側に案内する。
【0033】
第二ダンパー45は、放射空調ダクト33に設けられている。第二ダンパー45は、第二ダンパー45の流れ方向において連通ダンパー41よりも下流側に設けられている。第二ダンパー45は、放射パネル35に供給される風W2の流量を調整する。
【0034】
図2は、この発明の実施形態における制御装置の構成を示すブロック図である。
制御装置50は、空調装置部11の連通ダンパー41、第一ダンパー43、第二ダンパー45の開閉動作を制御する。この実施形態で例示する制御装置50は、空調システム10全体の動作を制御するコントローラの一部として備えられていてもよいし、コントローラとは別に設けられていてもよい。
【0035】
制御装置50は、入出力インターフェース(I/F)51と、メモリ52と、記憶装置53と、制御処理部54と、を主に備える。
【0036】
入出力インターフェース(I/F)51は、空調装置部11が接続される。メモリ52は、ワークエリア等として利用される。
【0037】
記憶装置53は、演算プログラム記憶部531と、OSプログラム記憶部532と、支援情報記憶部533と、を主に備えている。
【0038】
演算プログラム記憶部531は、制御処理部54で実行する演算プログラムを記憶する記憶領域である。
OSプログラム記憶部532は、OS(Operating System)プログラムを予め記憶する記憶領域である。
【0039】
支援情報記憶部533は、対流空調機本体21、放射空調機本体31の運転状態の情報に基づいて、連通ダンパー41、第一ダンパー43、及び第二ダンパー45を開閉させるための支援情報を記憶する領域である。支援情報としては、例えば、対流空調機本体21、放射空調機本体31における故障発生の有無と、連通ダンパー41、第一ダンパー43、及び第二ダンパー45の開閉状態との関係を示すマップ、テーブル、及び、数式等を例示できる。
【0040】
支援情報、演算プログラム、および、OSプログラムは、記憶装置53に記憶される。
【0041】
制御処理部54は、各種演算を行うCPU(Central Processing Unit;図示せず)を備えている。制御処理部54は、演算プログラムを実行することで実現される複数の機能部として、運転状態判定部56と、開閉制御部(制御部)57と、を備える。
【0042】
運転状態判定部56は、対流空調機本体21及び放射空調機本体31の運転状態を検知する。このため、
図1に示すように、空調装置部11は、センサ(検知部)58、59を備える。センサ58、59は、対流空調機本体21、放射空調機本体31の各部の状態を検知する。センサ58,59からの検知信号は、入出力インターフェース(I/F)51に伝達される。
運転状態判定部56は、センサ58、59からの検知信号に基づき、対流空調機本体21、放射空調機本体31の故障発生を検知する。故障発生の有無は、例えば、風W1、W2の風量等に基づき判断することができる。
【0043】
開閉制御部57は、運転状態判定部56で検知された対流空調機本体21及び放射空調機本体31の運転状態に基づき、連通ダンパー41の開閉動作を制御する。開閉制御部57は、対流空調機本体21及び放射空調機本体31の何れか一方において、風W1、W2の供給が停止された場合、連通ダンパー41を開く制御を行う。また、開閉制御部57は、空調システム10の運転開始時に、連通ダンパー41を開く制御を行う。
【0044】
次に、上記したような空調システム10の運転方法について説明する。
図3は、上記制御装置における空調装置部の制御の流れを示すフローチャートである。
図4は、上記空調システムにおいて、運転開始時における風の流れを示す図である。
空調システム10が運転を開始すると、空調システム10のコントローラ(図示無し)の制御により、対流空調機本体21と、放射空調機本体31の双方が作動する。
図3に示すように、制御装置50は、演算プログラムに基づいて実行される一連の処理をスタートする。空調システム10の運転が開始されると、制御装置50の開閉制御部57は、連通ダンパー41を「開」、第一ダンパー43、及び第二ダンパー45を「開」とする指令信号を、入出力インターフェース(I/F)51を介して空調装置部11に出力する(ステップS1)。
【0045】
すると、
図4に示すように、指令信号を受けた空調装置部11は、連通ダンパー41、第一ダンパー43、及び第二ダンパー45をそれぞれ開く。
この状態で、第一ダンパー43が開いているので、対流空調機本体21から送り出された風W1は、対流空調ダクト22を通り、送風口25から室2内に供給され、室2内を対流空調により空気調和する。また、第二ダンパー45が開いているので、放射空調機本体31から送り出された風W2は、放射空調ダクト33を通って放射パネル35に供給され、放射パネル35を加熱又は冷却する。加熱又は冷却された放射パネル35により、室2内に熱が放射され、室2内が空気調和される。このようにして、対流空調と放射空調とを組み合わせることで、対流空調機本体21による対流空調のみを実行する場合に比較し、空調効率が高まる。
また、連通ダンパー41が開いているので、放射空調機本体31から送り出された風W2の一部は、連通部40を通って対流空調ダクト22に流れ込む。対流空調ダクト22内で、風W2は風W1に合流し、送風口25から室2内に供給される。これにより、対流空調により室2内に供給される風W1の量を増やし、運転開始時における空調効率が高められる。
【0046】
運転開始後、開閉制御部57は、所定の条件を満たしたか否かを一定時間間隔毎に判定する(ステップS2)。ここで、所定の条件としては、例えば、運転開始後から予め定めた時間が経過したか否か、室2内の温度の変化量が運転開始後から予め定めた値に到達したか否か、等がある。
ステップS2で、所定の条件を満たさなければ、一定時間間隔毎に処理を繰り返す。
ステップS2で、所定の条件を満たした場合、開閉制御部57は、連通ダンパー41を「閉」とする指令信号を出力する(ステップS3)。
【0047】
指令信号を受けた空調装置部11は、
図1に示すように、連通ダンパー41を閉じる。
この状態で、対流空調機本体21から送り出された風W1は、対流空調ダクト22のみを通り、送風口25から室2内に供給され、室2内を対流空調により空気調和する。また、放射空調機本体31から送り出された風W2は、放射空調ダクト33のみを通って放射パネル35に供給され、放射パネル35を加熱又は冷却する。加熱又は冷却された放射パネル35により、室2内に熱が放射され、室2内が空気調和される。さらに、放射空調ダクト33を通って放射パネル35に供給される風W2は、放射パネル35の空気導出口37e、及びパネル側送風口37を通って、送風口25から室2内に供給される。
【0048】
この後、運転状態判定部56は、センサ58,59からの検知信号に基づき、対流空調機本体21及び放射空調機本体31の運転状態を監視する。具体的には、運転状態判定部56は、対流空調機本体21又は放射空調機本体31に故障が発生したか否かを、一定時間間隔毎に判定する(ステップS4、S5)。
対流空調機本体21、放射空調機本体31の双方に故障が発生していなければ、ステップS4、S5を所定時間毎に繰り返す。
【0049】
対流空調機本体21に故障が発生したと判定された場合、開閉制御部57は、連通ダンパー41を「開」とする指令信号を、入出力インターフェース(I/F)51を介して空調装置部11に出力する(ステップS6)。
【0050】
図5は、上記空調システムにおいて、対流空調機本体が故障した場合における風の流れを示す図である。
指令信号を受けた空調装置部11は、連通ダンパー41を開く。
この状態で、
図5に示すように、対流空調機本体21からは、風W1が送り出されない。放射空調機本体31から送り出された風W2の一部は、放射空調ダクト33から連通部40を通して対流空調ダクト22に流入する。流入した風W2は、送風口25から室2内に供給され、室2内を対流空調により空気調和する。また、放射空調機本体31から送り出された風W2の残部は、放射空調ダクト33を通って放射パネル35に供給され、放射パネル35を加熱又は冷却する。加熱又は冷却された放射パネル35により、室2内に熱が放射され、室2内が空気調和される。さらに、放射空調ダクト33を通って放射パネル35に供給される風W2は、放射パネル35の空気導出口37e、及びパネル側送風口37を通って、送風口25から室2内に供給される。
【0051】
このとき、放射空調機本体31の空調能力に余力があれば、放射空調機本体31における空調能力を高めて運転を行うのが好ましい。これにより、送風口25から室2内に供給される風の量、及び、放射パネル35から室2内に放射される熱の量の低下を抑えることができる。
また、この場合、第二ダンパー45を、全開状態よりも開度を小さくしてもよい(第二ダンパー45を閉じしてもよい)。これにより、第二ダンパー45における流量が少なくなる。すると、放射空調機本体31から放射空調ダクト33を通して放射パネル35に流れる風W2の流量が減る。これに対し、連通部40を通して放射空調ダクト33から対流空調ダクト22に送り込まれ、送風口25に供給される風W2の流量が増える。これにより、送風口25から室内に供給される風W2の量を増加させることができる。
【0052】
放射空調機本体31に故障が発生したと判定された場合、開閉制御部57は、連通ダンパー41を「開」とする指令信号を、入出力インターフェース(I/F)51を介して空調装置部11に出力する(ステップS7)。
【0053】
図6は、上記空調システムにおいて、放射空調機本体が故障した場合における風の流れを示す図である。
指令信号を受けた空調装置部11は、連通ダンパー41を開く。
この状態で、
図6に示すように、放射空調機本体31からは、風W2が送り出されない。対流空調機本体21から送り出された風W1の一部は、対流空調ダクト22から連通部40を通して放射空調ダクト33に流入する。流入した風W1は、放射空調ダクト33を通って放射パネル35に供給され、放射パネル35を加熱又は冷却する。加熱又は冷却された放射パネル35により、室2内に熱が放射され、室2内が空気調和される。さらに、放射空調ダクト33を通って放射パネル35に供給される風W1は、放射パネル35の空気導出口37e、及びパネル側送風口37を通って、送風口25から室2内に供給される。また、対流空調機本体21から送り出された風W1の残部は、対流空調ダクト22を通って送風口25から室2内に供給され、室2内を対流空調により空気調和する。
さらに、冷房運転時であれば、第一ダンパー43の開度(角度)を調整することで、送風口25から送り出される風W1を、室2内の天井面3fに沿って放射パネル35が設けられた側に案内するようにしてもよい。これにより、除湿された空気を放射パネル35に沿って流すことで、放射パネル35の結露が防止される。
【0054】
このときも、対流空調機本体21の空調能力に余力があれば、対流空調機本体21における空調能力を高めて運転を行うのが好ましい。これにより、送風口25から室2内に供給される風の量、及び、放射パネル35から室2内に放射される熱の量の低下を抑えることができる。
また、この場合、第一ダンパー43の開度を全開状態よりも小さくしてもよい。これにより、第一ダンパー43における風W1の流量を少なくする。すると、対流空調機本体21から対流空調ダクト22を通して送風口25に流れる風W1の流量が減る。連通部40を通して対流空調ダクト22から放射空調ダクト33に送り込まれ、放射パネル35に供給される風W1の流量が増える。これにより、放射パネル35に付与する熱量を高めることができ、放射パネル35における空調効率を高めることができる。
【0055】
上記一連の処理は、空調システム10の運転が終了されるまで繰り返される。
【0056】
したがって、上述した実施形態の空調システム10によれば、故障等によって対流空調機本体21からの風W1の供給が停止された場合、連通部40を開いて対流空調ダクト22と放射空調ダクト33とを連通させる。これによって、放射空調機本体31から送り出された風W2の一部を対流空調ダクト22に送り込むことができる。これにより、送風口25からは、放射空調機本体31から送り出された風W2が室内に供給される。また、放射空調機本体31からの風W2の供給が停止された場合、連通部40を開いて対流空調ダクト22と放射空調ダクト33とを連通させる。これによって、対流空調機本体21から送り出された風W1の一部を、連通部40を通して放射空調ダクト33に送り込むことができる。これにより、放射パネル35は、対流空調機本体21から送り出された風W2によって加熱又は冷却され、室内の放射空調が行われる。
また、空調システム10の運転開始時には、対流空調機本体21による対流空調、及び放射空調機本体31による放射空調の双方を実行することで、室2内の温度を効率良く調整することができ、立ち上がりが早くなる。
このようにして、故障発生時や運転開始時における、室内の快適性をさらに向上させることができる。
【0057】
また、連通部40を開いて対流空調ダクト22と放射空調ダクト33とを連通させた状態で、第一ダンパー43、第二ダンパー45で流量調整を行うと、連通部40を通る風W1、W2の量を調整することができる。
【0058】
また、冷房運転時に、第一ダンパー43により、送風口25から室2内に供給された風W2を、室2内の天井面3fに沿って放射パネル35が設けられた側に案内することで、放射パネル35の結露が防止される。
【0059】
また、放射パネル35を加熱又は冷却する風W2を、放射パネル35の空気導出口37e、及びパネル側送風口37から室内に供給することで、熱エネルギーを有効利用し、空調効率を高めることができる。
【0060】
また、対流空調機本体21及び放射空調機本体31の何れか一方に故障等が生じた場合、制御装置50の開閉制御部57で連通ダンパー41を開くことで、対流空調ダクト22と放射空調ダクト33とを自動的に連通させることができる。
【0061】
また、対流空調機本体21、放射空調機本体31の故障発生をセンサ58、59の検知信号に基づいて自動的に検知することで、制御装置50で連通ダンパー41を自動的に開くことができる。
【0062】
空調システムの制御装置50は、運転状態判定部56が検知した対流空調機本体21及び放射空調機本体31の運転状態に基づいて、開閉制御部57で連通ダンパー41を開くことで、対流空調ダクト22と放射空調ダクト33とを自動的に連通させることができる。したがって、対流空調機本体21及び放射空調機本体31の何れか一方に故障等が生じた場合や、運転開始時等であっても、室2内の快適性をさらに向上させることができる。
【0063】
(その他の変形例)
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、対流空調ダクト22、放射空調ダクト33のレイアウトを図示したが、その形状や配置は一例に過ぎない。対流空調ダクト22と放射空調ダクト33とは、その一部において、連通部40によって連通していれば、他のいかなるレイアウトとしてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、第一ダンパー43により、送風口25から室2内に供給された風W1を、室2内の天井面3fに沿って放射パネル35が設けられた側に案内するようにしたが、これに限らない。対流空調ダクト22の流量を調整する第一ダンパー43とは別に、送風口25から室2内に供給された風W1を、室2内の天井面3fに沿って放射パネル35が設けられた側に案内する部材を案内部としても設けてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 建物
2 室
3 天井
3f 天井面(内面)
10 空調システム
11 空調装置部
20 対流空調装置
21 対流空調機本体(第一空調機本体)
21a 室内熱交換器
21b 送風ファン
21c 筐体
21d 吸込口
22 対流空調ダクト(第一ダクト)
25 送風口
30 放射空調装置
31 放射空調機本体(第二空調機本体)
31a 室内熱交換器
31b 送風ファン
31c 筐体
31d 吸込口
33 放射空調ダクト(第二ダクト)
33c 一部
33s パネル収容空間
35 放射パネル
35b 下面
35s 中空部
37 パネル側送風口
37e 空気導出口(パネル側送風口)
40 連通部
41 連通ダンパー(開閉部)
43 第一ダンパー(第一流量調整部、案内部)
43a 一端
43b 他端
45 第二ダンパー(第二流量調整部)
50 制御装置
52 メモリ
53 記憶装置
54 制御処理部
56 運転状態判定部
57 開閉制御部(制御部)
58、59 センサ(検知部)
531 演算プログラム記憶部
532 OSプログラム記憶部
533 支援情報記憶部
W1 風
W2 風
W2’ 風