(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】タンパク質含有粉末の水分散性改良剤
(51)【国際特許分類】
A23L 29/00 20160101AFI20230216BHJP
C09K 23/44 20220101ALI20230216BHJP
【FI】
A23L29/00
C09K23/44
(21)【出願番号】P 2019044118
(22)【出願日】2019-03-11
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小島 昂大
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/123113(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/143057(WO,A1)
【文献】特開2005-110593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23C
A23J
C09K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)
飽和脂肪酸の炭素数が12~16であるジグリセリン飽和脂肪酸エステル、(b)
ポリグリセリンの平均重合度が5~10であるポリグリセリンオレイン酸エステル並びに(c)水及び/又は多価アルコールを含有するタンパク質含有粉末の水分散性改良剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質含有粉末の水分散性改良剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向の高まりから、筋肉合成の促進や美容上の効果を謳った粉末プロテイン、粉末コラーゲン等のタンパク質を主成分とする粉末状の食品素材(タンパク質含有粉末)の需要が増加している。このようなタンパク質含有粉末は、水、牛乳等の飲料に分散させて摂取されることが多いが、一方でタンパク質は一般的に水への分散性が悪く、タンパク質含有粉末を水に加えた場合、水に濡れた部分が被膜を形成して内部への水の浸透を阻害し、「ままこ」(又は「ダマ」)と呼ばれる塊を形成して均一に分散しないという問題があった。
【0003】
タンパク質含有粉末の水分散性を改良する方法としては、例えば、タンパク含有粉末と糖類とを含む高タンパク含有粉末組成物に、ジグリセリン脂肪酸エステルを含む水溶液を加えて造粒する方法(特許文献1)、粉末状プロテインにポリ-γ-グルタミン酸またはその塩を添加する方法(特許文献2)等が提案されている。
【0004】
しかし、上記各方法でも「ままこ」の形成を十分に抑制できない場合があることから、タンパク質含有粉末の水分散性を改良し得る新たな方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-116494号公報
【文献】特開2007-104920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、タンパク質含有粉末に添加することにより、該粉末の水分散性を向上させることのできるタンパク質含有粉末の水分散性改良剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、タンパク質含有粉末に対し、ジグリセリン飽和脂肪酸エステルとポリグリセリンオレイン酸エステルとを水及び/又は多価アルコールに分散した製剤を添加することにより、該粉末の水分散性が向上することを見出し、この知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、(a)ジグリセリン飽和脂肪酸エステル、(b)ポリグリセリンオレイン酸エステル並びに(c)水及び/又は多価アルコールを含有するタンパク質含有粉末の水分散性改良剤からなっている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るタンパク質含有粉末の水分散性改良剤は、タンパク質含有粉末に添加することにより、該粉末の水分散性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るタンパク質含有粉末の水分散性改良剤(以下「本発明の水分散性改良剤」ともいう)は、少なくとも(a)ジグリセリン飽和脂肪酸エステル、(b)ポリグリセリンオレイン酸エステル並びに(c)水及び/又は多価アルコール(以下それぞれ「(a)成分」、「(b)成分」及び「(c)成分」ともいう)を含有する。
【0011】
本発明の(a)成分であるジグリセリン飽和脂肪酸エステルは、平均重合度2のポリグリセリンであるジグリセリンと飽和脂肪酸とのエステルであり、エステル化反応等、自体公知の方法で製造することができる。該エステルは、モノエステル体、ジエステル体、トリエステル体のいずれであってもよく、あるいはそれらの混合物であってもよいが、モノエステル体を50質量%以上含有するものが好ましく、70質量%以上含有するものがより好ましい。そのようなジグリセリン飽和脂肪酸エステルは、例えば、自体公知の方法で製造されたジグリセリン飽和脂肪酸エステルを、さらに流下薄膜式分子蒸留装置又は遠心式分子蒸留装置等を用いて分子蒸留するか、又はカラムクロマトグラフィーもしくは液液抽出等自体公知の方法を用いて精製し、モノエステル体の含有量の割合を高めることにより製造することができる。
【0012】
ジグリセリン飽和脂肪酸エステルを構成する飽和脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする飽和脂肪酸であれば特に制限はなく、例えば、炭素数6~24の直鎖の飽和脂肪酸(例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等)が挙げられる。これらの中でも、炭素数12~18の飽和脂肪酸(例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等)が好ましく、炭素数12~16の飽和脂肪酸が特に好ましい。ジグリセリン飽和脂肪酸エステルは、これら飽和脂肪酸の1種のみを含むものであってもよく、2種以上を含むものであってもよい。
【0013】
ジグリセリン飽和脂肪酸エステルとしては、例えば、ポエムDL-100(商品名;ジグリセリンラウリン酸エステル;モノエステル体含有量約75質量%;理研ビタミン社製)、ポエムDM-100(商品名;ジグリセリンミリスチン酸エステル;モノエステル体含有量約80質量%;理研ビタミン社製)、ポエムDP-95RF(商品名;ジグリセリンパルミチン酸エステル;モノエステル体含有量約80質量%;理研ビタミン社製)、ポエムDS-100A(商品名;ジグリセリンステアリン酸エステル;モノエステル体含有量約80質量%;理研ビタミン社製)等が商業的に販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0014】
本発明の(b)成分であるポリグリセリンオレイン酸エステルは、グリセリン2分子以上が縮合してなる化合物であるポリグリセリンと、炭素数18の一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸とのエステルであり、エステル化反応等、自体公知の方法で製造することができる。
【0015】
ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンの平均重合度に特に制限はないが、例えば、平均重合度2~10のもの、具体的には、ジグリセリン(平均重合度2)、トリグリセリン(平均重合度3)、テトラグリセリン(平均重合度4)、ペンタグリセリン(平均重合度5)、ヘキサグリセリン(平均重合度6)、ヘプタグリセリン(平均重合度7)、オクタグリセリン(平均重合度8)、デカグリセリン(平均重合度10)等が挙げられる。これらの中でも、平均重合度4~10のものが好ましい。
【0016】
ポリグリセリンオレイン酸エステルとしては、例えば、SYグリスターMO-3S(商品名;テトラグリセリンオレイン酸エステル;阪本薬品工業社製)、サンソフトA-171E(商品名;ペンタグリセリンオレイン酸エステル;太陽化学社製)、SYグリスターMO-5S(商品名;ヘキサグリセリンオレイン酸エステル;阪本薬品工業社製)、ポエムJ-0381V(商品名;デカグリセリンオレイン酸エステル;理研ビタミン社製)等が商業的に販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0017】
本発明の(c)成分である水としては、飲用可能なものであれば特に制限はなく、例えば、蒸留水、イオン交換樹脂処理水、逆浸透膜(RO)処理水又は限外ろ過膜(UF)処理水等の精製水、水道水、地下水、涌水等の天然水、アルカリイオン水等が挙げられる。
【0018】
本発明の(c)成分である多価アルコールとしては、1分子中に2つ以上のヒドロキシ基をもつ化合物であれば特に制限はなく、例えば、キシロース、ブドウ糖、果糖等の単糖類、ショ糖、乳糖、麦芽糖等のオリゴ糖類、デキストリンあるいは水飴等のでん粉分解物、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース等のマルトオリゴ糖類、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖等の異性化糖、蜂蜜等の転化糖、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、還元水飴等の糖アルコール類、グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール等が挙げられる。
【0019】
本発明の(c)成分としては、前記水と多価アルコールのいずれか一方のみを用いてもよく、製剤の粘度調整等の目的でこれらを併用し、多価アルコール水溶液として用いてもよい。
【0020】
本発明の水分散性改良剤中の前記(a)~(c)成分の含有量に特に制限はなく、求める製剤の性状に応じて適宜調整することができるが、例えば、本発明の水分散性改良剤を粘稠なゲル状製剤とする場合、該剤100質量%中、(a)成分の含有量が1~20質量%、好ましくは5~15質量%であり、(b)成分の含有量が1~15質量%、好ましくは3~10質量%であり、(c)成分の含有量が65~98質量%、好ましくは75~92質量%である。なお、この場合、後述するタンパク質含有粉末への添加の際には5~20倍に希釈してから使用することが好ましい。
【0021】
本発明の水分散性改良剤の性状に特に制限はなく、例えば、液状、ゲル状、ペースト状等の任意の性状に調製することができる。
【0022】
本発明の水分散性改良剤の製造方法に特に制限はなく、例えば、前記(a)~(c)成分を所望により60~80℃に加温しながら攪拌し、均一に混合することにより製造することができる。
【0023】
本発明の水分散性改良剤は、前記(a)~(c)成分以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で他の任意の成分を含有していてもよい。そのような成分としては、例えば、(a)成分及び(b)成分以外の食品用乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、(a)成分及び(b)成分以外のポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン等)、酸化防止剤等が挙げられる。
【0024】
本発明の水分散性改良剤は、タンパク質含有粉末に添加することにより、該粉末の水分散性を向上させることができる。
【0025】
本発明の水分散性改良剤の添加対象となるタンパク質含有粉末は、タンパク質を主成分とする粉末状の食品素材であれば特に制限はなく、例えば、公知の方法により乳、卵、食肉、植物等から水分及び他の成分を除去してタンパク質成分を濃縮及び乾燥して粉末化したもの(脱脂粉乳等)、公知の方法により乳、卵、食肉、植物等に含まれるタンパク質成分を分離し、分解処理をした後、水分を除去して濃縮及び乾燥して粉末化したもの等が挙げられる。
【0026】
タンパク質含有粉末に含まれるタンパク質の種類は、動植物由来で食用可能なものであれば特に制限はなく、例えば、乳タンパク質(ホエータンパク質、カゼイン等)、卵タンパク質、ゼラチン、各種食肉由来のタンパク質等の動物性タンパク質;とうもろこしタンパク質、小麦タンパク質、米タンパク質、えんどう豆タンパク質、その他各種豆タンパク質、菜種タンパク質等の植物性タンパク質;卵タンパク質分解物、魚タンパク質分解物、肉タンパク質分解物、コラーゲンペプチド、食肉ペプチド等の動物性タンパク質分解物;砂糖大根分解物等の植物性タンパク質分解物等が挙げられる。これらの中でも、乳タンパク質が好ましい。
【0027】
タンパク質含有粉末は、タンパク質以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で他の任意の成分を含有していてもよい。そのような成分としては、例えば、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類、香料、酸化防止剤、ココアパウダーその他の食品素材等が挙げられる。
【0028】
本発明の水分散性改良剤をタンパク質含有粉末に添加する方法は、該粉末の表面に該剤を付着させる方法であれば特に制限はないが、例えば、流動層乾燥機等を用いてタンパク質含有粉末を流動状態とし、そこに本発明の水分散性改良剤をそのまま、又はこれを適宜水に希釈して調製した水溶液を噴霧して混合する方法が挙げられる。本発明の水分散性改良剤を添加したタンパク質含有粉末は、その後さらに5~10分流動させて乾燥処理することが好ましい。本発明の水分散性改良剤の添加時及び乾燥時の温度条件に特に制限はないが、例えば、排気温度が35~45℃となるような条件でタンパク質含有粉末を流動させることが好ましい。
【0029】
本発明の水分散性改良剤のタンパク質含有粉末への添加量は、該剤の配合等によっても異なるが、例えば、タンパク質含有粉末100質量部に対する(a)成分の添加量に換算して、0.01~1質量部であることが好ましく、0.05~0.5質量部であることがより好ましい。
【0030】
本発明の水分散性改良剤を添加したタンパク質含有粉末は水分散性に優れるため、例えば、低温(5~10℃)の水、牛乳、清涼飲料水等に対しても容易に分散させることができる。
【0031】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
[水分散性改良剤の調製]
(1)原材料
<(a)成分>
1)ジグリセリンラウリン酸エステル(商品名:ポエムDL-100;モノエステル体含有量約75質量%;理研ビタミン社製)
2)ジグリセリンミリスチン酸エステル(商品名:ポエムDM-100;モノエステル体含有量約80質量%;理研ビタミン社製)
3)ジグリセリンパルミチン酸エステル(商品名:ポエムDP-95RF;モノエステル体含有量約80質量%;理研ビタミン社製)
<(b)成分>
4)ペンタグリセリンオレイン酸エステル(商品名:サンソフトA-171E;太陽化学社製)
5)ヘキサグリセリンオレイン酸エステル(商品名:SYグリスターMO-5S;阪本薬品工業社製)
6)デカグリセリンオレイン酸エステル(商品名:ポエムJ-0381V;理研ビタミン社製)
<(c)成分>
7)果糖ブドウ糖液糖(商品名:ハイフラクトM-75;日本コーンスターチ社製)
8)水(上水)
【0033】
(2)原材料の配合
前記原材料を用いて調製した水分散性改良剤1~12の配合組成を表1に示した。このうち、水分散性改良剤1~6は本発明の実施例であり、水分散性改良剤7~12はそれらに対する比較例である。
【0034】
【0035】
(3)水分散性改良剤の調製方法
表1に示した配合割合に従い、前記原材料を500mL容のガラス製ビーカーに入れ、70℃に加温しながら攪拌混合した後、室温まで放冷し、水分散性改良剤1~12を各200g得た。
【0036】
[ホエータンパク質含有粉末による評価]
(1)水分散性改良剤の添加
前記水分散性改良剤1~12を水で希釈し、水分散性改良剤7.5%水溶液1~12を得た。なお、水分散性改良剤9のみ水への溶解性が不十分であったため40℃の温水を使用し、その他の水分散性改良剤については常温(20℃)の水を使用した。流動層乾燥機(商品名:フローコーター;型式:FL-MINI;フロイント産業社製)にホエータンパク質含有粉末(商品名:PROGEL 800;Friesland Campina社製)150gを仕込み、排気温度が35~40℃となるように調整しながら温風で流動させ、ここに前記水分散性改良剤7.5%水溶液1~12各20gを噴霧して混合した。噴霧完了後、さらに5分間同条件で流動させて乾燥し、ホエータンパク質含有粉末1~12を得た。
【0037】
(2)牛乳への分散試験
200mL容のガラス製ビーカーに5℃の牛乳140mLを入れ、ここに前記ホエータンパク質含有粉末1~12を各7g加えた。スパチュラで30秒間攪拌して混合した後、これを14mesh(目開き1.18mm)のステンレス製篩を通しながらボウルに流し入れたところ、篩を通過しなかった粗大な「ままこ」が一定量篩上に残った。その後、さらに水100mLを該篩にかけ、篩及び「ままこ」に付着した牛乳を洗い流した。「ままこ」が付着した篩を5分間静置して余分な水分を切った後、該篩の質量を測定し、その質量から篩自体の質量を差し引いて、篩上に残った粗大な「ままこ」の質量を算出した。また、対照として前記(1)の処理を行っていないホエータンパク質含有粉末(未処理品)についても同様の試験を行った。
【0038】
(3)水分散改良効果の評価
各ホエータンパク質含有粉末について前記分散試験を5回ずつ実施し、「ままこ」の質量の平均値を求めた。この平均値に基づき、下記の基準に従って水分散性改良効果の評価を記号化した。結果を表2に示す。
〔記号化基準〕
◎:極めて良好 平均値3.5未満
○:良好 平均値3.5以上、4.0未満
△:やや悪い 平均値4.0以上、5.0未満
×:悪い 平均値5.0以上
【0039】
【0040】
表2の結果から明らかなように、本発明の実施例である水分散性改良剤1~6を添加したホエータンパク質含有粉末は、いずれも「ままこ」の平均質量が軽く、より多くのホエータンパク質含有粉末が「ままこ」を形成することなく牛乳に分散していた。一方、比較例の水分散性改良剤7~12を添加したホエータンパク質含有粉末7~12は、「ままこ」の平均質量が重く、牛乳への分散が不十分であった。特に、ホエータンパク質含有粉末9及び10については対照よりも分散性が悪化していた。
【0041】
[コラーゲンペプチド含有粉末による評価]
(1)水分散性改良剤の添加
前記水分散性改良剤4を常温(20℃)の水で希釈し、水分散性改良剤7.5%水溶液を得た。流動層乾燥機(商品名:フローコーター;型式:FL-MINI;フロイント産業社製)にコラーゲンペプチド含有粉末(商品名:SCP-80NY;新田ゼラチン社製)150gを仕込み、排気温度が35~40℃となるように調整しながら温風で流動させ、ここに前記水分散性改良剤7.5%水溶液20gを噴霧して混合した。噴霧完了後、さらに5分間同条件で流動させて乾燥し、コラーゲンペプチド含有粉末1を得た。
【0042】
(2)牛乳への分散試験
200mL容のガラス製ビーカーに5℃の牛乳140mLを入れ、ここに前記コラーゲンペプチド含有粉末1を7g加えた。スパチュラで30秒間攪拌して混合した後、これを14mesh(目開き1.18mm)のステンレス製篩を通しながらボウルに流し入れたところ、篩を通過しなかった粗大な「ままこ」が一定量篩上に残った。その後、さらに水100mLを該篩にかけ、篩及び「ままこ」に付着した牛乳を洗い流した。「ままこ」が付着した篩を5分間静置して余分な水分を切った後、該篩の質量を測定し、その質量から篩自体の質量を差し引いて、篩上に残った粗大な「ままこ」の質量を算出した。また、対照として前記(1)の処理を行っていないコラーゲンペプチド含有粉末(未処理品)についても同様の試験を行った。
【0043】
(3)水分散改良効果の評価
各コラーゲンペプチド含有粉末について前記分散試験を5回ずつ実施し、「ままこ」の質量の平均値を求めた。この平均値に基づき、下記の基準に従って水分散性改良効果の評価を記号化した。結果を表3に示す。
〔記号化基準〕
◎:極めて良好 平均値2.0未満
○:良好 平均値2.0以上、3.0未満
△:やや悪い 平均値3.0以上、4.0未満
×:悪い 平均値4.0以上
【0044】
【0045】
表3の結果から明らかなように、本発明の実施例である水分散性改良剤4を添加したコラーゲンペプチド含有粉末は、対照と比べて「ままこ」の平均質量が軽く、より多くのコラーゲンペプチド含有粉末が「ままこ」を形成することなく牛乳に分散していた。
【0046】
[大豆タンパク含有粉末による評価]
(1)水分散性改良剤の添加
<添加例1>
前記水分散性改良剤4を常温(20℃)の水で希釈し、水分散性改良剤7.5%水溶液を得た。流動層乾燥機(商品名:フローコーター;型式:FL-MINI;フロイント産業社製)に大豆タンパク質含有粉末A(商品名:フジプロ-F;粉末状分離大豆タンパク質;不二製油社製)150gを仕込み、排気温度が35~40℃となるように調整しながら温風で流動させ、ここに前記水分散性改良剤7.5%水溶液20gを噴霧して混合した。噴霧完了後、さらに5分間同条件で流動させて乾燥し、大豆タンパク質含有粉末A-1を得た。
【0047】
<添加例2>
大豆タンパク質含有粉末Aを大豆タンパク質含有粉末B(商品名:フジプロ-CL;粉末状分離大豆タンパク質;不二製油社製)に替えた以外は前記添加例1と同様に操作して、大豆タンパク質含有粉末B-1を得た。
【0048】
(2)水への分散試験
200mL容のガラス製ビーカーに常温(20℃)の水140mLを入れ、ここに前記大豆タンパク質含有粉末A-1又はB-1を各7g加えた。スパチュラで30秒間攪拌して混合した後、これを14mesh(目開き1.18mm)のステンレス製篩を通しながらボウルに流し入れたところ、篩を通過しなかった粗大な「ままこ」が一定量篩上に残った。「ままこ」が付着した篩を5分間静置して余分な水分を切った後、該篩の質量を測定し、その質量から篩自体の質量を差し引いて、篩上に残った粗大な「ままこ」の質量を算出した。また、対照として前記(1)の処理を行っていない大豆タンパク質含有粉末A及びB(未処理品)についても同様の試験を行った。
【0049】
(3)水分散改良効果の評価
各大豆タンパク質含有粉末について前記分散試験を5回ずつ実施し、「ままこ」の質量の平均値を求めた。この平均値に基づき、下記の基準に従って水分散性改良効果の評価を記号化した。結果を表4に示す。
〔記号化基準〕
◎:極めて良好 平均値4.0未満
○:良好 平均値4.0以上、5.0未満
△:やや悪い 平均値5.0以上、6.0未満
×:悪い 平均値6.0以上
【0050】
【0051】
表4の結果から明らかなように、本発明の実施例である水分散性改良剤4を添加した大豆タンパク質含有粉末は、対照と比べて「ままこ」の平均質量が軽く、より多くの大豆タンパク質含有粉末が「ままこ」を形成することなく水に分散していた。