(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】放射線遮蔽壁
(51)【国際特許分類】
G21F 3/00 20060101AFI20230216BHJP
E04B 1/92 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
G21F3/00 Z
E04B1/92
(21)【出願番号】P 2019045701
(22)【出願日】2019-03-13
【審査請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】内田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】中村 清
(72)【発明者】
【氏名】井ノ上 弘行
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-232845(JP,A)
【文献】特開2012-077547(JP,A)
【文献】特開2013-129570(JP,A)
【文献】特開2015-114107(JP,A)
【文献】特開2017-096059(JP,A)
【文献】特開2017-138266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 3/00
E04B 1/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート製の下部プレキャストコンクリートパネルと、
該下部プレキャストコンクリートパネルの上方に配置され、鉄筋コンクリート製の上部プレキャストコンクリートパネル
と、を備えた放射線遮蔽壁であって、
前記下部プレキャストコンクリートパネル
は、前記下部プレキャストコンクリートパネルの主筋
が上方に突出し
、コンクリートから露出した上部主筋部
を有し、
前記上部プレキャストコンクリートパネル
は、コンクリートに埋設された継手部を有しており、
前記上部プレキャストコンクリートパネルは、前記継手部を前記下部プレキャストコンクリートパネルの前記上部主筋部が挿通するように前記下部プレキャストコンクリートパネル上に配置され、前記継手部に前記上部主筋部が挿通された状態で前記上部プレキャストコンクリートパネルと前記下部プレキャストコンクリートパネルを一体化すべく前記継手部の内部、および前記上部プレキャストコンクリートパネルと前記下部プレキャストコンクリートパネルのとの間にグラウト材が充填され
ていることを特徴とする放射線遮蔽壁。
【請求項2】
前記グラウト材は、無収縮重量モルタルであることを特徴とする請求項1に記載の放射線遮蔽壁。
【請求項3】
前記下部プレキャストコンクリートパネルの上面には、前記放射線遮蔽壁の板厚方向の一方側の面が前記板厚方向の他方側の面よりも高い段部が形成され、
前記上部プレキャストコンクリートパネルの下面には、前記下部プレキャストコンクリートパネルの上面に形成された前記段部と対応した形状を有する段部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の放射線遮蔽壁。
【請求項4】
前記
上部主筋部及び前記継手部は、前記板厚方向の一方側及び他方側の両方に配置されていることを特徴とする請求項
3に記載の放射線遮蔽壁。
【請求項5】
前記放射線遮蔽壁の前記板厚方向の一方側を向く面には、前記板厚方向の一方側の前記継手部に前記グラウト材を注入する注入管及び前記板厚方向の他方側の前記継手部に前記グラウト材を注入する注入管がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項
3または4に記載の放射線遮蔽壁。
【請求項6】
前記上部プレキャストコンクリートパネルは、前記継手部に前記上部プレキャストコンクリートパネルの主筋が挿通されており、
前記上部プレキャストコンクリートパネルの主筋は、前記継手部、前記上部主筋部と、前記継手部の内部に前記グラウト材が充填されることで一体化されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の放射線遮蔽壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線遮蔽壁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、原子力発電施設や医療施設、中間貯蔵建屋等の建築物の壁等には、放射線遮蔽壁が採用されている(下記の特許文献1参照)。例えば、コンクリート製のプレキャストコンクリートパネルが上下に連設され、下側のプレキャストコンクリートパネルの上端部に山型の凸部(打継キー)が設けられ、上側のプレキャストコンクリートパネルの下端部に凸部と対応した形状の凹部が設けられている。下側のプレキャストコンクリートパネルの凸部に、上側のプレキャストコンクリートパネルの凹部が嵌め込まれている。これにより、下側のプレキャストコンクリートパネルと上側のプレキャストコンクリートパネルとの接合面は凹凸形状をなすため、下側のプレキャストコンクリートパネルと上側のプレキャストコンクリートパネルとの間を通過しようとする放射線が凹凸により遮蔽される構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなプレキャストコンクリートパネルを用いた放射線遮蔽壁において、強度や耐久性の向上が望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、強度や耐久性を向上することができるプレキャストコンクリートパネルを用いて構築された放射線遮蔽壁を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る放射線遮蔽壁は、鉄筋コンクリート製の下部プレキャストコンクリートパネルと、該下部プレキャストコンクリートパネルの上方に配置され、鉄筋コンクリート製の上部プレキャストコンクリートパネルと、を備えた放射線遮蔽壁であって、前記下部プレキャストコンクリートパネルは、前記下部プレキャストコンクリートパネルの主筋が上方に突出し、コンクリートから露出した上部主筋部を有し、前記上部プレキャストコンクリートパネルは、コンクリートに埋設された継手部を有しており、前記上部プレキャストコンクリートパネルは、前記継手部を前記下部プレキャストコンクリートパネルの前記上部主筋部が挿通するように前記下部プレキャストコンクリートパネル上に配置され、前記継手部に前記上部主筋部が挿通された状態で前記上部プレキャストコンクリートパネルと前記下部プレキャストコンクリートパネルを一体化すべく前記継手部の内部、および前記上部プレキャストコンクリートパネルと前記下部プレキャストコンクリートパネルのとの間にグラウト材が充填されていることを特徴とする。
【0007】
このように構成された放射線遮蔽壁では、上部プレキャストコンクリートパネルの下面及び下部プレキャストコンクリートパネルの上面には、放射線遮蔽壁の一方側の方が他方側よりも高い段部が形成されている。上部プレキャストコンクリートパネルの下面と下部プレキャストコンクリートパネルの上面との間(隙間)には、グラウト材が充填された目地部が形成されている。これにより、当該隙間を通過しようとする放射線を、段部(コンクリート)で遮蔽することができる。また、段部により打ち継ぎキーとしての形状を保持することもできる。
この放射線遮蔽壁は、鉄筋コンクリート製であり、下部プレキャストコンクリートパネルの上部主筋部は、上部プレキャストコンクリートパネルの下部に設けられた継手部に挿通され、継手部の内部でグラウト材に定着されている。これにより、プレキャストコンクリートパネルどうしが適切に連結されているとともに、プレキャストコンクリートパネルは鉄筋コンクリート製であるため強度や耐久性を高めることができる。
【0008】
また、本発明に係る放射線遮蔽壁では、前記グラウト材は、無収縮重量モルタルであることが好ましい。
【0009】
このように構成された放射線遮蔽壁では、グラウト材は無収縮重量モルタルであるため、無収縮重量モルタル自体が放射線を遮蔽する。無収縮重量モルタルで遮蔽できなかった分の放射線を段部(コンクリート)で遮蔽すればよいため、下部プレキャストコンクリートパネル及び上部プレキャストコンクリートパネルの板厚を薄くすることができる。
【0010】
また、本発明に係る放射線遮蔽壁では、前記下部プレキャストコンクリートパネルの上面には、前記放射線遮蔽壁の板厚方向の一方側の面が前記板厚方向の他方側の面よりも高い段部が形成され、前記上部プレキャストコンクリートパネルの下面には、前記下部プレキャストコンクリートパネルの上面に形成された前記段部と対応した形状を有する段部が形成されていてもよい。
また、本発明に係る放射線遮蔽壁では、前記上部主筋部及び前記継手部は、前記板厚方向の一方側及び他方側の両方に配置されていてもよい。
【0011】
このように構成された放射線遮蔽壁では、主筋及び継手部は放射線遮蔽壁の板厚方向の一方側及び他方側の両方に配置されているため、放射線遮蔽壁の強度を確保することができる。
【0012】
また、本発明に係る放射線遮蔽壁は、前記放射線遮蔽壁の前記板厚方向の一方側を向く面には、前記板厚方向の一方側の前記継手部に前記グラウト材を注入する注入管及び前記板厚方向の他方側の前記継手部に前記グラウト材を注入する注入管がそれぞれ設けられていてもよい。
【0013】
このように構成された放射線遮蔽壁では、放射線遮蔽壁の板厚方向の一方側から、注入管を介して、板厚方向の両側の継手部にグラウト材を充填することができるため、作業性が良い。
また、本発明に係る放射線遮蔽壁では、前記上部プレキャストコンクリートパネルは、前記継手部に前記上部プレキャストコンクリートパネルの主筋が挿通されており、前記上部プレキャストコンクリートパネルの主筋は、前記継手部、前記上部主筋部と、前記継手部の内部に前記グラウト材が充填されることで一体化されていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る放射線遮蔽壁によれば、強度や耐久性を向上することができるプレキャストコンクリートパネルを用いて構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る放射線遮蔽壁を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る放射線遮蔽壁の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係る放射線遮蔽壁について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る放射線遮蔽壁を示す斜視図である。
図1に示すように、本実施形態に係る放射線遮蔽壁100は、鉄筋コンクリート(RC)製のプレキャストコンクリートパネルが複数配列されて構成されている。
放射線遮蔽壁100は、例えば、原子力発電施設や医療施設、中間貯蔵建屋等の建築物に、放射線を遮蔽する目的で設置されるものである。
以下の説明において、水平方向のうち放射線遮蔽壁100の厚さ方向を板厚方向と称する。板厚方向のうち、
図1に示す紙面左側且つ下側を向く方を一方側と称し、紙面右側且つ上側を向く方を他方側と称する。水平方向のうち板厚方向と直交する方向を幅方向と称する。
【0017】
プレキャストコンクリートパネル1は、少なくとも上下方向に配列されている。なお、プレキャストコンクリートパネル1は幅方向にも配列されていてもよい。
【0018】
図2は、放射線遮蔽壁100の上下方向及び板厚方向に沿う縦断面図である。
図2に示すように、上下に配列されたプレキャストコンクリート1のうち、上側に配置されたプレキャストコンクリートパネル1を上部プレキャストコンクリートパネル1Aと称し、下側に配置されたプレキャストコンクリートパネル1を下部プレキャストコンクリートパネル1Bと称する。
放射線遮蔽壁100の上下の接合部分では、上部プレキャストコンクリートパネル1Aと、下部プレキャストコンクリートパネル1Bと、上部プレキャストコンクリートパネル1Aと下部プレキャストコンクリートパネル1Bとを接合する接合構造2と、を備えている。
【0019】
上下のプレキャストコンクリートパネル1A,1Bは、鉄筋コンクリート製であり、予め工場等で製造された板材である。
【0020】
上部プレキャストコンクリートパネル1Aは、複数の主筋11Aと、複数の第一鉄筋12Aと、複数の第二鉄筋13Aと、コンクリート部14Aと、を有している。
【0021】
主筋11Aは、上下方向に延びている。複数の主筋11Aが、幅方向及び板厚方向に間隔を有して配置されている。
【0022】
第一鉄筋12Aは、幅方向に延びている。複数の第一鉄筋12Aが、板厚方向及び上下方向に間隔を有して配置されている。
【0023】
第二鉄筋13Aは、板厚方向に離間して配置された第一鉄筋12Aにまたがって配置されている。
【0024】
コンクリート部14Aの内部に、複数の主筋11A、複数の第一鉄筋12A及び複数の第二鉄筋13Aが配置されている。
【0025】
コンクリート部14Aの下面15dは、板厚方向の一方側の面15aが、板厚方向の他方側の面15bよりも高い位置に配置されている。面15a,15bは、水平面に沿って配置されている。本実施形態では、面15aと面15bとの上下方向の高さH1は、50mm程度である。
【0026】
面15aにおける板厚方向の他方側の端部と面15bにおける板厚方向の一方側の端部とは、面15cにより接続されている。面15cは、上下方向及び幅方向に沿って配置されている。
【0027】
換言すると、コンクリート部14Aの下面15dでは、面15aが面15bよりも高い位置に配置され、面15aと面15bとが面15cで接続された段部15eをなしている。
【0028】
下部プレキャストコンクリートパネル1Bは、上部プレキャストコンクリートパネル1Aの下方に隙間Sを有して配置されている。
【0029】
下部プレキャストコンクリートパネル1Bは、主筋11Bと、幅方向に延びる複数の第一鉄筋12Bと、板厚方向に離間して配置された第一鉄筋12Bにまたがって配置された複数の第二鉄筋(不図示。以下同じ。)と、コンクリート部14Bと、を有している。
【0030】
主筋11Bは、上下方向に延びている。複数の主筋11Bが、幅方向及び板厚方向に間隔を有して配置されている。
【0031】
コンクリート部14Bの内部に、複数の主筋11B、複数の第一鉄筋12B及び複数の第二鉄筋が配置されている。
【0032】
コンクリート部14Bの上面16uは、板厚方向の一方側の面16aが、板厚方向の他方側の面16bよりも高い位置に配置されている。面16a,16bは、水平面に沿って配置されている。本実施形態では、面16aと面16bとの上下方向の高さH2は、50mm程度である。
【0033】
面16aにおける板厚方向の他方側の端部と面16bにおける板厚方向の一方側の端部とは、面16cにより接続されている。面16cは、上下方向及び幅方向に沿って配置されている。
【0034】
換言すると、コンクリート部14Bの上面16uでは、面16aが面16bよりも高い位置に配置され、面16aと面16bとが面16cで接続された段部16eをなしている。段部16eは、上部プレキャストコンクリートパネル1Aの段部15eと対応した形状をなしている。
【0035】
上部プレキャストコンクリートパネル1Aの面15aは、下部プレキャストコンクリートパネル1Bの面16aの上方に配置されている。上部プレキャストコンクリートパネル1Aの面15cは、下部プレキャストコンクリートパネル1Bの面16cの板厚方向の他方側に配置されている。上部プレキャストコンクリートパネル1Aの面15bは、下部プレキャストコンクリートパネル1Bの面16bの上方に配置されている。換言すると、上部プレキャストコンクリートパネル1Aと下部プレキャストコンクリートパネル1Bとの間には、放射線遮蔽壁100の板厚方向にわたって隙間Sが形成されている。
ここで、放射線遮蔽壁100の板厚方向のうち下部プレキャストコンクリートパネル1Bの面16aが配置される領域を、第一領域(板厚方向の一方側の領域)A1と称する。また、放射線遮蔽壁100の板厚方向のうち上部プレキャストコンクリートパネル1Aの面15bが配置される領域を、第二領域(板厚方向の他方側の領域)A2と称する。
【0036】
接合構造2は、目地部21と、複数の上部主筋部22と、複数の継手部材(継手部)23と、を有している。
【0037】
目地部21は、隙間Sにグラウト材が充填されて構成されている。グラウト材として、例えば無収縮重量モルタルやエポキシ樹脂等を採用することができる。なお、グラウト材が無収縮重量モルタルであれば、無収縮重量モルタル自体が放射線を遮蔽することができる。目地部21は、放射線遮蔽壁100の板厚方向にわたって設けられている。本実施形態では、目地部21のうち、水平方向の延びる部分の幅H3は20mm程度であり、鉛直方向に延びる部分の幅H4は幅H3よりも広く25mm程度である。
【0038】
複数の主筋11A,11Bは、第一領域A1及び第二領域A2のそれぞれに配置されている。
図2では、第一領域A1の主筋11A,11Bと第二領域A2の主筋11A,11Bとが幅方向に位置をずらして配置されている箇所を示している。
【0039】
下部プレキャストコンクリートパネル1Bの主筋11Bの上端部は、コンクリート部14Bから上方に突出している。上部主筋部22は、主筋11Bにおけるコンクリート部14Bから上方に突出した部分である。
【0040】
複数の継手部材23は、いわゆるモルタル充填継手である。各継手部材23は、連結筒部24と、筒充填部25と、を有している。
【0041】
連結筒部24は、上下両端部が開口した円筒形状をなしている。連結筒部24は、上下方向を軸線方向として配置されている。
【0042】
連結筒部24は、上部プレキャストコンクリートパネル1Aの下部に配置されている。複数の連結筒部24は、第一領域A1及び第二領域A2のそれぞれに配置されている。
【0043】
連結筒部24の下端部の外面24aは、下方に向かうにしたがって次第に径が広くなるように形成されている。連結筒部24の下面24dは、目地部21の上面21uに当接配置されている。本実施形態では、第一領域A1に配置される連結筒部24の方が、第二領域A2に配置される連結筒部24よりも上方に配置されている。
【0044】
上部主筋部22は、連結筒部24の下部に挿通されている。上部プレキャストコンクリートパネル1Aの主筋11Aの下端部(以下、下部主筋部31と称する)は、連結筒部24の上部に挿通されている。
【0045】
筒充填部25は、連結筒部24の内部にグラウト材が充填されて構成されている。換言すると、筒充填部25は、上部主筋部22の外周面と連結筒部24の下部の内周面との間、及び下部主筋部31の外周面と連結筒部24の上部の内周面との間に設けられている。上部主筋部22と下部主筋部31とは、筒充填部25を介して、連結筒部24に固定されている。これにより、上下のプレキャストコンクリートパネル1A,1Bは、上部主筋部22、下部主筋部31及び継手部材23を介して連結されている。
【0046】
連結筒部24の下部及び上部には、それぞれ注入管27及び排出管28が接続されている。注入管27及び排出管28は、管状をなし、板厚方向に延びるように配置されている。注入管27及び排出管28の一端部27a,28aは、コンクリート部14Aの一方側の面に到達している。注入管27及び排出管28の他端部27b,28bは、連結筒部24に到達している。
【0047】
注入管27及び排出管28の内部には、それぞれグラウト材が充填された管充填部41,42が形成されている。注入管27及び排出管28の端部27a,28aには、それぞれゴム栓43,44が設けられている。
【0048】
注入管27から注入されたグラウト材は、連結筒部24の下部に到達し、上下のプレキャストコンクリートパネル1A,1Bの隙間Sを流通するとともに、連結筒部24を上方に流通して、排出管28に到達し、余分なグラウト材は排出管28の端部28aから排出されるようになっている(
図2に示す矢印参照)。その後、注入管27及び排出管28の端部27a,28aは、それぞれゴム栓43,44で閉塞される。ゴム栓43,44は、注入管27及び排出管28内のグラウト材の硬化後、改めてグラウト材に置き換えることも可能である。
【0049】
複数ある注入管27のうち低い位置にある注入管27からグラウト材を注入(
図2に示す右向き矢印参照)して、複数ある排出管28のうち高い位置にある排出管28からグラウト材を排出(
図2に示す左向き矢印参照)することが好ましい。これにより、狭い隙間であっても、グラウト材がスムーズに行き渡り確実に充填される。
【0050】
このように構成された放射線遮蔽壁100では、上部プレキャストコンクリートパネル1Aの下面15d及び下部プレキャストコンクリートパネル1Bの上面16uには、第一領域A1の方が第二領域A2よりも高い段部15e,16eが形成されている。上部プレキャストコンクリートパネル1Aの下面15dと下部プレキャストコンクリートパネル1Bの上面16uとの間の隙間Sには、グラウト材が充填された目地部21が形成されている。これにより、当該隙間Sを通過しようとする放射線を、段部15e,16eで遮蔽することができる。また、段部15e,16eにより打ち継ぎキーとしての形状を保持することもできる。
この放射線遮蔽壁100は、鉄筋コンクリート製であり、下部プレキャストコンクリートパネル1Bの上部主筋部22は、上部プレキャストコンクリートパネル1Aの下部に設けられた継手部材23に挿通され、継手部材23の内部で筒充填部25に定着されている。これにより、鉄筋コンクリート製のプレキャストコンクリートパネル1A,1Bどうしが適切に連結されているとともに、プレキャストコンクリートパネル1A,1Bは鉄筋コンクリート製であるため強度や耐久性を高めることができる。
【0051】
また、目地部21に充填されるグラウト材は無収縮重量モルタルであるため、無収縮重量モルタル自体が放射線を遮蔽する。無収縮重量モルタルで遮蔽できなかった分の放射線を段部(コンクリート)15e,16eで遮蔽すればよいため、コンクリート部14A,14Bの板厚を薄くすることができる。
【0052】
また、主筋11A,11B及び継手部材23は第一領域A1及び第二領域A2の両方に配置されているため、放射線遮蔽壁100の強度を確保することができる。
【0053】
また、放射線遮蔽壁100の板厚方向の一方側から、注入管27を介して、板厚方向の両側の連結筒部24にグラウト材を充填することができるため、作業性が良い。
【0054】
なお、上述した実施の形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0055】
また、上記に示す実施形態では、主筋11A,11B及び継手部材23は第一領域A1及び第二領域A2の両方に配置されているため、放射線遮蔽壁100の強度を確保することができるが、本発明はこれに限られない、主筋11A,11B及び継手部材23が第一領域A1及び第二領域A2の少なくとも一方に配置される構成であってもよい。
【0056】
また、上記に示す実施形態では、第一領域A1に配置される継手部材23と第二領域A2に配置される継手部材23とは、幅方向の位置をずらして配置されることで、第二領域Aの連結筒部24に接続された注入管27及び排出管28が第一領域A1の連結筒部24に干渉することがないが、本発明はこれに限られない。第一領域A1に配置される継手部材23と第二領域A2に配置される継手部材23とを幅方向の位置を揃えて配置して、例えば第二領域A2の連結筒部24に接続された注入管27及び排出管28を曲げて、第一領域A1の連結筒部24と干渉しないようにしてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…プレキャストコンクリート
1A…上部プレキャストコンクリート
1B…下部プレキャストコンクリート
2…接合構造
11A,11B…主筋
14A,14B…コンクリート部
15e,16e…段部
21…目地部
22…上部主筋部
23…継手部材(継手部)
24…連結筒部
25…筒充填部
27…注入管
28…排出管
100…放射線遮蔽壁
A1…第一領域
A2…第二領域
S…隙間