(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】レーザ光伝送用光ファイバ
(51)【国際特許分類】
G02B 6/02 20060101AFI20230216BHJP
G02B 6/032 20060101ALI20230216BHJP
G02B 6/44 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
G02B6/02 B
G02B6/032 Z
G02B6/02 451
G02B6/44 301A
G02B6/02 431
G02B6/02 421
(21)【出願番号】P 2019053001
(22)【出願日】2019-03-20
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 正俊
(72)【発明者】
【氏名】八若 正義
(72)【発明者】
【氏名】浦松 知史
(72)【発明者】
【氏名】石田 智彦
(72)【発明者】
【氏名】北澤 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 貴久
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-541006(JP,A)
【文献】特表2011-529200(JP,A)
【文献】特開2012-037621(JP,A)
【文献】米国特許第07283714(US,B1)
【文献】特開2012-103513(JP,A)
【文献】特開2005-129863(JP,A)
【文献】特開2006-162869(JP,A)
【文献】特開2013-205573(JP,A)
【文献】特開2007-227713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00- 6/10
G02B 6/245-6/25
G02B 6/44- 6/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、前記コアを覆うように設けられたクラッドと、を有する裸光ファイバを備えたレーザ光伝送用光ファイバであって、
前記クラッドには、ファイバ横断面において、前記コアを囲うように配設されるとともに、各々、ファイバ中心を中心とする半径62.5μmの円に干渉する位置又は前記円の外側の位置に配置された形状が円形の複数の空孔が形成されており、
前記複数の空孔は、内径が同一であり、ファイバ横断面において、それらの孔中心が、ファイバ中心を中心とする円の円周上に周方向に等間隔で配置されて
おり、
一方又は両方の端部において、前記裸光ファイバにおける前記空孔が加熱により埋め込まれて前記クラッドが中実に形成された部分の外周面にクラッドモードストリッパが構成されたレーザ光伝送用光ファイバ。
【請求項2】
請求項1に記載されたレーザ光伝送用光ファイバにおいて、
前記コアがノンドープの純粋石英で形成されているレーザ光伝送用光ファイバ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたレーザ光伝送用光ファイバにおいて、
モードフィールド径が12μm以上20μm以下であるレーザ光伝送用光ファイバ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載されたレーザ光伝送用光ファイバにおいて、
波長1.0μmよりも長波長域の光伝送においてシングルモード動作するように構成されているレーザ光伝送用光ファイバ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載されたレーザ光伝送用光ファイバにおいて、
前記裸光ファイバの前記クラッドを被覆するように設けられたジャケットを更に備え、前記ジャケットの屈折率が前記クラッドの屈折率よりも低いレーザ光伝送用光ファイバ。
【請求項6】
請求項1乃至
5のいずれかに記載されたレーザ光伝送用光ファイバにおいて、
前記複数の空孔は、ファイバ横断面において、それらの孔中心が、ファイバ中心を中心とする半径62.5μmの円の円周上に配置されているレーザ光伝送用光ファイバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光伝送用光ファイバに関する。
【背景技術】
【0002】
クラッドに、コアを囲うように配設された複数の空孔が形成された光ファイバが知られている(例えば、特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-37782号公報
【文献】特開2012-150404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高出力レーザ光伝送用のシングルモード光ファイバでは、高出力のレーザ光による非線形効果を抑制するため、モードフィールド径が大きくなるようにファイバパラメータを設計している。一般的には、モードフィールド径が10数μmとされることが多いが、この場合、コアとクラッドとの屈折率差小さくなるため、曲げに対する損失や側圧に対する損失が発生しやすいという問題がある。
【0005】
本発明の課題は、曲げに対する損失や側圧に対する損失が小さいレーザ光伝送用光ファイバを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、コアと、前記コアを覆うように設けられたクラッドと、を有する裸光ファイバを備えたレーザ光伝送用光ファイバであって、前記クラッドには、ファイバ横断面において、前記コアを囲うように配設されるとともに、各々、ファイバ中心を中心とする半径62.5μmの円に干渉する位置又は前記円の外側の位置に配置された形状が円形の複数の空孔が形成されており、前記複数の空孔は、内径が同一であり、ファイバ横断面において、それらの孔中心が、ファイバ中心を中心とする円の円周上に周方向に等間隔で配置されており、一方又は両方の端部において、前記裸光ファイバにおける前記空孔が加熱により埋め込まれて前記クラッドが中実に形成された部分の外周面にクラッドモードストリッパが構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、クラッドに、ファイバ横断面において、コアを囲うように配設されるとともに、各々、ファイバ中心を中心とする半径62.5μmの円に干渉する位置又は前記円の外側の位置に配置された複数の空孔が形成されているので、モードフィールド径が大きくても、それらの複数の空孔によるレーザ光の閉じ込め効果により、曲げに対する損失や側圧に対する損失を小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】実施形態に係るレーザ光伝送用光ファイバの斜視図である。
【
図1B】実施形態に係るレーザ光伝送用光ファイバの横断面図である。
【
図2】実施形態に係るレーザ光伝送用光ファイバ第1変形例の横断面図である。
【
図3A】実施形態に係るレーザ光伝送用光ファイバ第2変形例の横断面図である。
【
図3B】実施形態に係るレーザ光伝送用光ファイバ第3変形例の横断面図である。
【
図3C】実施形態に係るレーザ光伝送用光ファイバ第4変形例の横断面図である。
【
図4】実施形態に係るレーザ光伝送用光ファイバの端部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0010】
図1A及びBは、実施形態に係るレーザ光伝送用光ファイバ10を示す。実施形態に係るレーザ光伝送用光ファイバ10は、例えばレーザ加工機等のレーザ光伝送ケーブルに組み込まれるものである。
【0011】
実施形態に係るレーザ光伝送用光ファイバ10は、裸光ファイバ11と、その裸光ファイバ11を覆うように設けられたジャケット12とを備える。実施形態に係るレーザ光伝送用光ファイバ10のファイバ横断面における形状は円形であることが好ましく、その外径は例えば0.3mm以上1.4mm以下である。実施形態に係るレーザ光伝送用光ファイバ10のファイバ長は、その用途により異なるが、例えば5m以上100m以下である。
【0012】
裸光ファイバ11は、ファイバ中心部に設けられたコア111と、そのコア111を覆うように設けられたクラッド112とを有する。裸光ファイバ11のファイバ横断面における形状は円形であることが好ましく、その外径は例えば200μm以上360μm以下である。
【0013】
裸光ファイバ11は、コア111が相対的に高屈折率であり、クラッド112が相対的に低屈折率である。裸光ファイバ11は、例えば、コア111がレーザ光に対する耐性が高いノンドープの純粋石英で形成され且つクラッド112が屈折率を低下させるドーパント(F、B等)がドープされた石英で形成されていることが好ましいが、コア111が屈折率を上昇させるドーパント(Ge等)がドープされた石英で形成され且つクラッド112がノンドープの純粋石英で形成されていてもよい。コア111とクラッド112との比屈折率差Δは、例えば0.1%以上0.5%以下である。
【0014】
裸光ファイバ11のコア111のファイバ横断面における形状は円形であることが好ましく、その直径は例えば12μm以上20μm以下であるが、裸光ファイバ11におけるモードフィールド径も、それとほぼ同等であって、例えば12μm以上20μm以下である。このモードフィールド径は、JIS C6825:2009のファーフィールド走査法に基づいて測定されるものである。そして、裸光ファイバ11は、波長1.0μmよりも長波長域の光伝送においてシングルモード動作するように構成されていることが好ましい。
【0015】
クラッド112には、ファイバ横断面において、コア111を囲うように配設された複数の空孔113が形成されている(
図1A及びBでは6個)。複数の空孔113のそれぞれは、ファイバ中心を中心とする半径62.5μmの円Cに干渉する位置に配置されている。そして、複数の空孔113は、ファイバ横断面において、それらの孔中心が、ファイバ中心を中心とする半径62.5μmの円Cの円周上に配置されていてもよく、また、その円Cの円周の内側又は外側に配置されていてもよい。また、複数の空孔113のそれぞれは、
図2に示すように、ファイバ中心を中心とする半径62.5μmの円Cの外側の位置に配置されていてもよい。複数の空孔113のファイバ中心から孔中心までの距離は同一であることが好ましい。
【0016】
複数の空孔113のそれぞれのファイバ横断面における形状は円形であることが好ましく、その内径は、好ましくは20μm以上50μm以下、より好ましくは30μm以上40μm以下である。複数の空孔113の内径は同一であることが好ましい。
【0017】
複数の空孔113は、ファイバ横断面において、それらの孔中心が、ファイバ中心を中心とする円の円周上に周方向に等間隔で配置されていることが好ましい。空孔113の数は、6個に限定されるものではなく、好ましくは4個以上20個以下、より好ましくは6個以上12個以下であり、具体的には、
図3Aに示すように8個であってもよく、
図3に示すように10個であってもよく、
図3Cに示すように12個であってもよい。
【0018】
このように実施形態に係るレーザ光伝送用光ファイバ10によれば、裸光ファイバ11のクラッド112に、ファイバ横断面において、コア111を囲うように配設されるとともに、各々、ファイバ中心を中心とする半径62.5μmの円Cに干渉する位置又はその円Cの外側の位置に配置された複数の空孔113が形成されているので、モードフィールド径が大きくても、それらの複数の空孔113によるレーザ光の閉じ込め効果により、曲げに対する損失や側圧に対する損失を小さく抑えることができる。また、クラッド112に複数の空孔113が形成されていることにより、曲げ等に起因するクラッドモード光の漏れが抑制されるため、ファイバヒューズの発生閾値が高くなるとともに、仮にファイバヒューズが発生しても、その伝搬速度が遅いものとなるので、それによりレーザ光源の損傷を回避することができる。
【0019】
ジャケット12は、PFAなどのフッ素樹脂や紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂等で形成された単一層で構成されていてもよく、また、例えばシリコーン樹脂の内側バッファ層と、それを被覆するナイロン樹脂やフッ素樹脂の外側被覆層との2層で構成されていてもよい。裸光ファイバ11のクラッド112を被覆するように設けられたジャケット12の屈折率は、曲げ等に起因するクラッドモード光をクラッド112に閉じ込め、その漏れによる焼損を抑止する観点から、クラッド112の屈折率よりも低いことが好ましい。ジャケット12の厚さは、例えば50μm以上450μm以下である。
【0020】
実施形態に係るレーザ光伝送用光ファイバ10は、光コネクタの内部に配置される一方又は両方の端部において、
図4に示すように、先端から所定長のジャケット12が剥がされて裸光ファイバ11が露出し、その部分の空孔113が加熱により埋め込まれてクラッド112が中実に形成され、その部分の裸光ファイバ11の外周面に、粗面化等の処理が施されてクラッドモードストリッパ114が構成されていてもよい。このようにすれば、空孔113に阻害されることなく、端部のクラッドモードストリッパ114において、クラッドモード光を有効に除去することができる。
【0021】
なお、上記実施形態では、複数の空孔113がコア111を囲うように単一層で配設された構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、複数の空孔がコアを囲うように同心円状に複数層で配設された構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、レーザ光伝送用光ファイバの技術分野について有用である。
【符号の説明】
【0023】
10 レーザ光伝送用光ファイバ
11 裸光ファイバ
111 コア
112 クラッド
113 空孔
114 クラッドモードストリッパ
12 ジャケット