(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】固形状セメント分散剤及びその製造方法、並びにセメント組成物
(51)【国際特許分類】
C04B 24/18 20060101AFI20230216BHJP
C04B 24/26 20060101ALI20230216BHJP
C04B 24/10 20060101ALI20230216BHJP
C04B 28/04 20060101ALI20230216BHJP
C08F 216/16 20060101ALI20230216BHJP
C08F 220/04 20060101ALI20230216BHJP
C08F 220/12 20060101ALI20230216BHJP
C08F 220/28 20060101ALI20230216BHJP
C08L 33/14 20060101ALI20230216BHJP
C08L 97/00 20060101ALI20230216BHJP
C04B 103/40 20060101ALN20230216BHJP
【FI】
C04B24/18 B
C04B24/26 B
C04B24/26 E
C04B24/26 F
C04B24/26 H
C04B24/10
C04B28/04
C08F216/16
C08F220/04
C08F220/12
C08F220/28
C08L33/14
C08L97/00
C04B103:40
(21)【出願番号】P 2019056299
(22)【出願日】2019-03-25
【審査請求日】2022-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 明彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】兼中 翼
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-256161(JP,A)
【文献】特開2019-038731(JP,A)
【文献】特開2011-240223(JP,A)
【文献】国際公開第99/062838(WO,A1)
【文献】特開昭51-046385(JP,A)
【文献】特開2003-277113(JP,A)
【文献】特開2005-272216(JP,A)
【文献】特開平10-095976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00-28/36
C09K 23/50
C08L 33/14-33/16
C08L 97/00-97/02
C08F 216/16-216/20
C08F 220/04-220/06
C08F 220/12-220/18
C08F 220/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A):リグニンスルホン酸又はその塩の含有量が55~100重量%のリグニン誘導体、
及び
成分(B):下記一般式(1)で表される単量体に由来する構成単位(I)、下記一般式(2)で表される単量体に由来する構成単位(II)、及び下記一般式(3)で表される単量体に由来する構成単位(III)からなる群から選択される少なくとも2種の構成単位を有する共重合体
を少なくとも含
む液状物の乾燥固形化物であり、
その平均粒子径が10~1000μmである固形状セメント分散剤。
【化1】
(前記一般式(1)中、R
1
~R
3
は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表す。pは、0~2の整数を表す。qは、0~1の整数を表す。A
1
Oは、同一又は異なっていてもよい、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表す。nは、1~300の整数を表す。R
4
は、水素原子又は炭素原子数1~30の炭化水素基を表す。)
【化2】
(前記一般式(2)中、R
5
~R
7
は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、又は-(CH
2
)
r
COOM
2
基を表す。但し、-(CH
2
)
r
COOM
2
基を表す場合、-COOM
1
基又は他の-(CH
2
)
r
COOM
2
基と無水物基を形成してもよい。無水物基を形成する場合、それらの基のM
1
又はM
2
は存在しない。M
1
~M
2
は、それぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、又は置換アルキルアンモニウム基を表す。rは、0~2の整数を表す。)
【化3】
(前記一般式(3)中、R
8
~R
10
は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表す。R
11
は、炭素原子数1~4のヘテロ原子を含んでよい炭化水素基を表す。sは、0~2の整数を表す。)
【請求項2】
前記共重合体の重量平均分子量(Mw)が、5000以上である請求項1に記載の固形状セメント分散剤。
【請求項3】
前記平均粒子径が30~300μmである請求項1又は2に記載の固形状セメント分散剤。
【請求項4】
前記成分(A)の含有量が、40重量%以上である請求項1~3のいずれか1項に記載の固形状セメント分散剤。
【請求項5】
前記成分(B)の含有量が、1~60重量%である請求項1~4のいずれか1項に記載の固形状セメント分散剤。
【請求項6】
還元性糖類及び/又は糖変性物の含有量が、1~40重量%である請求項1~5のいずれか1項に記載の固形状セメント分散剤。
【請求項7】
成分(A):リグニンスルホン酸又はその塩の含有量が55~100重量%のリグニン誘導体、
及び
成分(B):下記一般式(1)で表される単量体に由来する構成単位(I)、下記一般式(2)で表される単量体に由来する構成単位(II)、及び下記一般式(3)で表される単量体に由来する構成単位(III)からなる群から選択される少なくとも2種の構成単位を有する共重合体
を少なくとも含む液状物を乾燥固形化して、その平均粒子径が10~1000μmである固形状セメント分散剤を製造する、固形状セメント分散剤の製造方法。
【化4】
(前記一般式(1)中、R
1
~R
3
は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表す。pは、0~2の整数を表す。qは、0~1の整数を表す。A
1
Oは、同一又は異なっていてもよい、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表す。nは、1~300の整数を表す。R
4
は、水素原子又は炭素原子数1~30の炭化水素基を表す。)
【化5】
(前記一般式(2)中、R
5
~R
7
は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、又は-(CH
2
)
r
COOM
2
基を表す。但し、-(CH
2
)
r
COOM
2
基を表す場合、-COOM
1
基又は他の-(CH
2
)
r
COOM
2
基と無水物基を形成してもよい。無水物基を形成する場合、それらの基のM
1
又はM
2
は存在しない。M
1
~M
2
は、それぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、又は置換アルキルアンモニウム基を表す。rは、0~2の整数を表す。)
【化6】
(前記一般式(3)中、R
8
~R
10
は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表す。R
11
は、炭素原子数1~4のヘテロ原子を含んでよい炭化水素基を表す。sは、0~2の整数を表す。)
【請求項8】
前記共重合体の重量平均分子量(Mw)が、5000以上である請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載の固形状セメント分散剤を含有するセメント組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形状セメント分散剤及びその製造方法、並びにセメント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
リグニンは、樹木中に存在する天然高分子物質であり、木材の約30%を占めている。リグニンは、クラフトパルプ製造における廃液(クラフトパルプ廃液)、亜硫酸パルプ製造における廃液(亜硫酸パルプ廃液)等に多く含まれている。近年の環境負荷低減の観点から、リグニンはバイオマス資源の一つとして注目される傾向にある。
【0003】
クラフトパルプ廃液中に含まれているクラフトリグニン、亜硫酸パルプ廃液中に含まれるリグニンスルホン酸は、それぞれ異なった物性を有しており、様々な用途に使用されている。
また、クラフトリグニンを亜硫酸塩とホルムアルデヒドによりスルホメチル化したリグニン誘導体、リグニンスルホン酸又はリグニンスルホン酸の塩を部分的に脱スルホン化したリグニン誘導体、及び限外濾過処理によって精製したリグニン精製物は、リグニン系分散剤として、染料、セメント、無機顔料、有機顔料、石膏、石炭-水スラリー、農薬、窯業など広範囲な工業分野で多用されている。
【0004】
さらに、バイオマス資源としてのリグニンの有効利用を図ることを目的とし、セメント、染料、油田掘削用泥水など用途を問わず、各種の被分散体の分散性を向上させ得るリグニン誘導体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に開示されたリグニン誘導体は、リグニンスルホン酸系化合物と水溶性単量体の反応物である。実施例によれば、リグニン誘導体は、共重合体水溶液として得られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、分散剤のうち、セメント分散剤は、投入直後の分散性(初期分散性)を向上させる目的で使用される場合と、投入から所定時間経過した後の分散性(分散保持性)を向上させる目的で使用される場合がある。このうち、投入直後の初期分散性を向上させる目的でセメント分散剤を使用する場合、投入直後に均一に拡散することが効果の発現の点から好ましいと考えられる。そのため、固形状のセメント分散剤よりも液状のセメント分散剤が好ましい形態と考えられる。
一方、セメント分散剤を運搬する場合、運搬効率の観点から、液状のセメント分散剤よりも固形状のセメント分散剤が好ましい形態と考えられる。
【0007】
即ち、セメント分散剤は、運搬の観点と使用の観点から好ましい形態が異なる。セメント分散剤を輸出等して長距離運搬する際には、コスト削減の観点から運搬性が重要な課題となる。
そのため、初期分散性が液状のセメント分散剤と同等又はそれ以上であり、運搬性に適する固形状のセメント分散剤の開発が望まれている。
【0008】
本発明の課題は、初期分散性が液状のセメント分散剤と同等又はそれ以上であり、運搬性に適する固形状セメント分散剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、高純度のリグニン誘導体を含む、平均粒子径が10~1000μmの固形状物にすることにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明者らは、下記の〔1〕~〔9〕を提供する。
〔1〕成分(A):リグニンスルホン酸又はその塩の含有量が55~100重量%のリグニン誘導体、を少なくとも含み、その平均粒子径が10~1000μmである固形状セメント分散剤。
〔2〕成分(B):下記一般式(1)で表される単量体に由来する構成単位(I)、下記一般式(2)で表される単量体に由来する構成単位(II)、及び下記一般式(3)で表される単量体に由来する構成単位(III)からなる群から選択される少なくとも2種の構成単位を有する共重合体、をさらに含む上記〔1〕に記載の固形状セメント分散剤。
【化1】
(前記一般式(1)中、R
1~R
3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表す。pは、0~2の整数を表す。qは、0~1の整数を表す。A
1Oは、同一又は異なっていてもよい、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表す。nは、1~300の整数を表す。R
4は、水素原子又は炭素原子数1~30の炭化水素基を表す。)
【化2】
(前記一般式(2)中、R
5~R
7は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、又は-(CH
2)
rCOOM
2基を表す。但し、-(CH
2)
rCOOM
2基を表す場合、-COOM
1基又は他の-(CH
2)
rCOOM
2基と無水物基を形成してもよい。無水物基を形成する場合、それらの基のM
1又はM
2は存在しない。M
1~M
2は、それぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、又は置換アルキルアンモニウム基を表す。rは、0~2の整数を表す。)
【化3】
(前記一般式(3)中、R
8~R
10は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表す。R
11は、炭素原子数1~4のヘテロ原子を含んでよい炭化水素基を表す。sは、0~2の整数を表す。)
〔3〕前記平均粒子径が30~300μmである上記〔1〕又は〔2〕に記載の固形状セメント分散剤。
〔4〕前記成分(A)の含有量が、40重量%以上である上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の固形状セメント分散剤。
〔5〕前記成分(B)の含有量が、1~60重量%である上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の固形状セメント分散剤。
〔6〕還元性糖類及び/又は糖変性物の含有量が、1~40重量%である上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の固形状セメント分散剤。
〔7〕成分(A):リグニンスルホン酸又はその塩の含有量が55~100重量%のリグニン誘導体、を少なくとも含む液状物を乾燥固形化して、その平均粒子径が10~1000μmである固形状セメント分散剤を製造する、固形状セメント分散剤の製造方法。
〔8〕前記液状物が、成分(B):下記一般式(1)で表される単量体に由来する構成単位(I)、下記一般式(2)で表される単量体に由来する構成単位(II)、及び下記一般式(3)で表される単量体に由来する構成単位(III)からなる群から選択される少なくとも2種の構成単位を有する共重合体、をさらに含む上記〔7〕に記載の製造方法。
【化4】
(前記一般式(1)中、R
1~R
3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表す。pは、0~2の整数を表す。qは、0~1の整数を表す。A
1Oは、同一又は異なっていてもよい、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表す。nは、1~300の整数を表す。R
4は、水素原子又は炭素原子数1~30の炭化水素基を表す。)
【化5】
(前記一般式(2)中、R
5~R
7は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、又は-(CH
2)
rCOOM
2基を表す。但し、-(CH
2)
rCOOM
2基を表す場合、-COOM
1基又は他の-(CH
2)
rCOOM
2基と無水物基を形成してもよい。無水物基を形成する場合、それらの基のM
1又はM
2は存在しない。M
1~M
2は、それぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、又は置換アルキルアンモニウム基を表す。rは、0~2の整数を表す。)
【化6】
(前記一般式(3)中、R
8~R
10は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表す。R
11は、炭素原子数1~4のヘテロ原子を含んでよい炭化水素基を表す。sは、0~2の整数を表す。)
〔9〕上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の固形状セメント分散剤を含有するセメント組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、初期分散性が液状のセメント分散剤と同等又はそれ以上であり、運搬性に適する固形状セメント分散剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
なお、本明細書中、「AA~BB」と表記する場合、AA以上BB以下を表す。また、「(メタ)アクリル」と表記する場合、アクリル及び/又はメタクリルを表す。
【0012】
[1.固形状セメント分散剤]
本発明の固形状セメント分散剤は、成分(A):リグニンスルホン酸又はその塩の含有量が55~100重量%のリグニン誘導体を少なくとも含み、その平均粒子径が10~1000μmである。
上記した通り、セメント分散剤は、投入直後に均一に拡散するため、固形状よりも液状のほうが初期分散性に優れると考えられる。本発明者等は、液状のセメント分散剤と同等又はそれ以上の初期分散性を有する固形状のセメント分散剤を検討したところ、高純度のリグニン誘導体を含むセメント分散剤は、液状よりも固形状の方が、初期分散性に優れることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0013】
固形状セメント分散剤の「固形状」とは、セメント分散剤の水分量が50質量%以下であるこという。セメント分散剤の水分量は、30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
なお、セメント分散剤の水分量は、赤外線水分計(株式会社ケツト科学研究所製)を用いて測定し得る。
本発明の固形状セメント分散剤は、粉末状、及びペレット状の剤形が好ましい。
【0014】
固形状セメント分散剤の平均粒子径は、10~1000μmである。平均粒子径は、15~300μmが好ましく、20~250μmがより好ましい。
なお、平均粒子径は、粉末サンプル3gをレーザー回折式粒度分布測定装置(マスターサイザー3000(Malvern社製))により、乾式条件で測定し得られた分子量分布より、横軸を粒度(μm)、縦軸を体積(%)として表し、蓄積分布が50%となる値である。
【0015】
固形状セメント分散剤において、還元性糖類及び/又は糖変性物の含有量は、1~40重量%が好ましく、1~30重量%がより好ましく、1~15重量%がさらに好ましい。還元性糖類及び/又は糖変性物の含有量が斯かる範囲にあると、リグニンスルホン酸又はその塩との相互作用により、分散性を向上し得る。
ここで、「還元性糖類」とは、還元性を示す糖類をいい、塩基性溶液中でアルデヒド基又はケトン基を生じる糖類をいう。還元性糖類としては、例えば、すべての単糖類;マルトース、ラクトース、アラビノース、スクロースの転化糖等の二糖類;多糖類が挙げられる。還元性糖類は、通常、セルロース、ヘミセルロース、及びそれらの分解物を含む。セルロース及びヘミセルロースの分解物としては、例えば、ラムノース、ガラクトース、アラビノース、キシロース、グルコース、マンノース、フルクトース等の単糖類;キシロオリゴ糖、セロオリゴ糖等のオリゴ糖類が挙げられる。
また、「糖変性物」とは、糖が酸化、スルホン化等の化学変性を受けてなる変性物をいう。糖変性物は、例えば、ヒドロキシル基、アルデヒド基、カルボニル基、及びスルホ基等の官能基が糖の骨格中に導入された糖誘導体、当該糖誘導体2つ(2種)以上が結合した化合物が挙げられる。
【0016】
固形状セメント分散剤中の還元性糖類及び/又は糖変性物の含有量は、リグニン誘導体中の還元性糖類及び/又は糖変性物の含有量に、固形状セメント分散剤中のリグニン誘導体の含有量の割合を乗じて算出し得る。なお、リグニン誘導体中の還元性糖類及び/又は糖変性物の含有量は後述する。
【0017】
[1-1.成分(A)]
本発明の固形状セメント分散剤は、成分(A)を少なくとも含む。
成分(A)は、リグニンスルホン酸又はその塩の含有量が55~100重量%のリグニン誘導体である。ここで、リグニンスルホン酸は、リグニン又はその誘導体の少なくとも一部がスルホン酸(塩)基で置換されている化合物をいう。
【0018】
リグニン誘導体の化学構造を、一般式などで一律に特定することは困難である。その理由は、リグニン誘導体を構成するリグニンスルホン酸系化合物の骨格であるリグニンが非常に複雑な分子構造をしているためである。
【0019】
本発明の固形状セメント分散剤中、成分(A)の含有量は、40重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましく、60重量%以上がさらに好ましい。成分(A)の含有量が40重量%以上であると、良好な粉体流動性を有する固形状物を収率よく得られる。
【0020】
リグニン誘導体中のリグニンスルホン酸又はその塩の含有量は、55重量%以上であり、60重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましく、80重量%以上がさらに好ましい。リグニンスルホン酸又はその塩の含有量が斯かる範囲のリグニン誘導体を用いることにより、セメント分散剤とした際に、液状よりも固形状の方が初期分散性に優れる。また、その上限値は特に限定されないけれども、通常、98重量%以下であり、好ましくは90重量%以下である。
リグニン誘導体中のリグニンスルホン酸の含有量は、パールベンソン法(ニトロソ化法)により算出できる。
【0021】
リグニン誘導体中の還元性糖類及び/又は糖変性物の含有量は、1~40重量%が好ましく、1~30重量%がより好ましく、1~15重量%がさらに好ましい。還元性糖類及び/又は糖変性物の含有量が斯かる範囲のリグニン誘導体を用いることにより、セメント分散剤とした際に、液状よりも固形状の方が初期分散性に優れる。
還元性糖類及び/又は糖変性物の含有量は、Somogyi-Nelson法により算出し得る。
【0022】
リグニン誘導体としては、調製したものを使用してもよく、市販品を用いてもよい。ここで、リグニン誘導体の調製方法を以下に例示する。しかしながら、リグニン誘導体は、下記の調製方法で調製されたものに限定されない。
【0023】
(リグニン誘導体の調製方法)
リグニン誘導体の調製方法としては、例えば、リグノセルロース原料を亜硫酸処理して調製する方法、好ましくは、リグノセルロース原料を亜硫酸蒸解処理して調製する方法が挙げられる。
【0024】
リグノセルロース原料は、構成体中にリグノセルロースを含むものであれば特に限定されるものではない。例えば、木材、非木材等のパルプ原料が挙げられる。
木材としては、例えば、エゾマツ、アカマツ、スギ、ヒノキ等の針葉樹木材;シラカバ、ブナ等の広葉樹木材が挙げられる。木材の樹齢、採取部位は問わない。そのため、互いに樹齢の異なる樹木から採取された木材や、互いに樹木の異なる部位から採取された木材を組み合わせて用いてもよい。
非木材としては、例えば、竹、ケナフ、葦、稲が挙げられる。
リグノセルロース原料は、これらの材料を1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
亜硫酸処理は、亜硫酸及び亜硫酸塩の少なくともいずれかをリグノセルロース原料に接触させて行うことができ、中間生成物を得る処理である。亜硫酸処理の条件は、特に限定されず、リグノセルロース原料に含まれるリグニンの側鎖のα炭素原子にスルホン酸(塩)基が導入され得る条件であればよい。
【0026】
亜硫酸処理は、亜硫酸蒸解法により行うことが好ましい。これにより、リグノセルロース原料中のリグニンをより定量的にスルホン化することができる。
亜硫酸蒸解法は、亜硫酸及び亜硫酸塩の少なくともいずれかの溶液(例えば、水溶液:蒸解液)中で、リグノセルロース原料を高温下で反応させる方法である。当該方法は、サルファイトパルプの製造方法として工業的に確立されており、実施されている。そのため、亜硫酸処理を亜硫酸蒸解法により行うことにより、経済性及び実施容易性を高めることができる。
【0027】
亜硫酸塩の塩としては、亜硫酸蒸解を行う場合、例えば、マグネシウム塩、カルシウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩が挙げられる。
【0028】
亜硫酸及び亜硫酸塩の少なくともいずれかの溶液における亜硫酸(SO2)濃度は、特に限定されないけれども、溶液100mLに対するSO2の質量(g)の比率は、1g/100mL以上が好ましく、亜硫酸蒸解を行う場合には2g/100mL以上がより好ましい。上限は、20g/100mL以下が好ましく、亜硫酸蒸解を行う場合には15g/100mL以下がより好ましい。SO2濃度は、1~20g/100mLが好ましく、亜硫酸蒸解を行う場合には2~15g/100mLがより好ましい。
【0029】
亜硫酸処理のpH値は特に限定されないが、10以下が好ましく、亜硫酸蒸解を行う場合には5以下がより好ましい。pH値の下限は、0.1以上が好ましく、亜硫酸蒸解を行う場合には0.5以上がより好ましい。亜硫酸処理の際のpH値は、0.1~10が好ましく、亜硫酸蒸解を行う場合には0.5~5がより好ましい。
【0030】
亜硫酸処理の温度は特に限定されないが、170℃以下が好ましく、亜硫酸蒸解を行う場合には150℃以下がより好ましい。下限は、70℃以上が好ましく、亜硫酸蒸解を行う場合には100℃以上がより好ましい。亜硫酸処理の温度条件は、70~170℃が好ましく、亜硫酸蒸解を行う場合には100~150℃がより好ましい。
亜硫酸処理の処理時間は特に限定されなく、亜硫酸処理の諸条件にもよるが、0.5~24時間が好ましく、1.0~12時間がより好ましい。
【0031】
亜硫酸処理においては、カウンターカチオン(塩)を供給する化合物を添加することが好ましい。カウンターカチオンを供給する化合物を添加することにより、亜硫酸処理におけるpH値を一定に保つことができる。カウンターカチオンを供給する化合物としては、例えば、MgO、Mg(OH)2、CaO、Ca(OH)2、CaCO3、NH3、NH4OH、NaOH、NaHCO3、Na2CO3が挙げられる。カウンターカチオンは、マグネシウムイオンが好ましい。
【0032】
亜硫酸処理において、亜硫酸及び亜硫酸塩の少なくともいずれかの溶液を用いる場合、溶液には必要に応じて、SO2のほかに、上記カウンターカチオン(塩)、蒸解浸透剤(例えば、アントラキノンスルホン酸塩、アントラキノン、テトラヒドロアントラキノン等の環状ケトン化合物)を含ませてもよい。
【0033】
亜硫酸処理を行う際に用いる設備に限定はなく、例えば、一般に知られている溶解パルプの製造設備等を用いることができる。
【0034】
亜硫酸及び亜硫酸塩の少なくともいずれかの溶液から中間生成物を分離するには、常法に従って行えばよい。分離方法としては、例えば、亜硫酸蒸解後の亜硫酸蒸解排液の分離方法が挙げられる。
【0035】
次に、中間組成物を洗浄及び脱水する工程を経て亜硫酸処理物を得る。洗浄及び脱水により、中間組成物に含まれる、亜硫酸処理により除去しきれない成分を除去し得る。
【0036】
洗浄は、亜硫酸蒸解法により得られる未晒亜硫酸パルプの洗浄と同様にして行えばよい。洗浄は、一段階の洗浄であってもよく、多段階の洗浄であってもよい。多段階の洗浄をすることにより、洗浄を十分に行うことができる。なお、多段階の洗浄を行う場合、脱水はその都度行ってもよく、一部の回のみ行ってもよい。
洗浄は、通常、洗浄機を用いる。洗浄に使用する洗浄機は、特に限定されるものではない。例えば、置換洗浄型洗浄機、希釈脱水洗浄型洗浄機が挙げられる。
【0037】
脱水は、通常の条件で行うことができ、例えば、亜硫酸蒸解法において得られる洗浄後の未晒亜硫酸パルプの脱水と同様にして行えばよい。
脱水は、通常、脱水機を用いる。脱水に使用する脱水機は、特に限定されるものではない。例えば、ドラム型絞り脱水機、ロータリープレス、連続圧搾脱水機が挙げられる。
【0038】
その後、洗浄、脱水した亜硫酸処理物を分離精製して、所望のリグニン誘導体が得られる。分離精製は、例えば、アルカリ酸化処理する工程、限外濾過処理工程が挙げられる。
【0039】
アルカリ酸化処理する場合、亜硫酸処理物をアルカリ酸化処理した後、不溶物を遠心分離し、上澄み液として回収し得る。
【0040】
アルカリ酸化処理は、亜硫酸処理物をアルカリ性条件下におけばよい。アルカリ性条件下におくとは、通常、pH値が8以上、好ましくはpH値が9以上の水溶液下におくことをいう。pH値の上限は、通常、14である。
【0041】
アルカリ酸化処理においては、通常、アルカリ性物質を亜硫酸処理物に接触させる。アルカリ性物質は、特に限定されないが、例えば、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニアが挙げられる。中でも、水酸化ナトリウムが好ましい。
なお、アルカリ性物質は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
亜硫酸処理物にアルカリ性物質を接触させる方法としては、亜硫酸処理物の分散液又は溶液(例えば、水分散液、水溶液)を調製し、該分散液又は溶液中にアルカリ性物質を添加する方法や、亜硫酸処理物にアルカリ性物質の溶液又は分散液(例えば、水分散液、水溶液)を添加する方法が例示される。
【0043】
アルカリ酸化処理の温度は特に限定されないが、40℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。上限は、150℃以下が好ましい。
【0044】
アルカリ酸化処理におけるアルカリ性物質の量は、亜硫酸処理物の固形分質量に対して、或いは、アルカリ処理抽出物を水性溶媒(例えば、水)に分散した水溶液又は分散液を調製する場合、水溶液又は分散液の質量に対して、0.5~20質量%が好ましく、1.0~15質量%がより好ましい。
【0045】
アルカリ酸化処理の時間は特に限定されないが、0.1時間以上が好ましく、0.5時間以上がより好ましい。上限は、10時間以下が好ましく、6時間以下がより好ましい。
【0046】
アルカリ酸化処理に先立ち、必要に応じて、亜硫酸処理物の溶解、分散処理、濃度の調整(水等の水性溶媒の溶液又は分散液の調製)を行ってもよい。分散処理は、ディスクリファイナーの通過、ミキサー、ディスパーザーへの添加、ニーダー処理等により行うことができる。濃度の調整は、例えば、水等の水性溶媒を用いて行うことができる。
【0047】
限外濾過処理工程は、限外濾過膜(以下、「UF膜」ともいう)を用いて行い得る。UF膜としては、公知のUF膜を用いることができる。例えば、中空糸膜、スパイラル膜、チューブラー膜、平膜が挙げられる。
UF膜の素材は公知のものを用いることができる。例えば、酢酸セルロース、芳香族ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、セラミックが挙げられる。なお、UF膜は市販品であってもよい。
【0048】
UF膜の分画分子量は、5,000~30,000が好ましく、10,000~25,000がより好ましく、15,000~23,000がさらに好ましい。分画分子量が5,000以上のUF膜を用いると、黒液の分離速度が過度に遅くなることを防止し得る。また、分画分子量が30,000以下のUF膜を用いると、黒液からリグニンが分離されなくなることを防止し得る。
【0049】
UF膜を用いた限外濾過処理による濃縮倍率は任意に設定できる。すなわち、濃縮液の流出量が任意の量になった時に、限外濾過処理を停止すれば良い。好ましくは2~6倍に濃縮することが好ましい。2~6倍に濃縮とは、原液(黒液)量が1/2~1/6量になることを意味する。
【0050】
限外濾過処理時の黒液の温度は特に限定されない。例えば、20~80℃が好ましく、UF膜材質の耐熱面を考慮すると、20~70℃がより好ましい。
限外濾過処理時の黒液のpH値は、2~11が好ましい。
限外濾過処理時の黒液の固形分濃度(w/w)は、2~30%が好ましく、5~15%がより好ましい。
【0051】
[1-2.成分(B)]
本発明の固形状セメント分散剤は、成分(B)を含有することが好ましい。
成分(B)は、一般式(1)で表される単量体に由来する構成単位(I)、一般式(2)で表される単量体に由来する構成単位(II)、及び一般式(3)で表される単量体に由来する構成単位(III)からなる群から選択される少なくとも2種の構成単位を有する共重合体である。
【0052】
本発明の固形状セメント分散剤中、成分(B)の含有量は、1~60重量%が好ましく、1~50重量%以上がより好ましく、1~40重量%以上がさらに好ましい。成分(B)の含有量が斯かる範囲であると、乾燥後により良好な水溶性を有する固形状セメント分散剤が得られる。
以下、各構成単位の詳細を記載する。
【0053】
(構成単位(I))
構成単位(I)は、下記一般式(1)で表される単量体に由来する構成単位である。
【0054】
【0055】
一般式(1)中、R1~R3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表す。pは、0~2の整数を表す。qは、0~1の整数を表す。A1Oは、同一又は異なっていてもよい、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表す。nは、1~300の整数を表す。R4は、水素原子又は炭素原子数1~30の炭化水素基を表す。
R1は、水素原子であることが好ましい。R2は、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましい。R3は、水素原子が好ましい。
【0056】
一般式(1)中、A1Oは、同一又は異なっていてもよい、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表す。該オキシアルキレン基(アルキレングリコール単位)としては、例えば、オキシエチレン基(エチレングリコール単位)、オキシプロピレン基(プロピレングリコール単位)、オキシブチレン基(ブチレングリコール単位)が挙げられる。中でも、オキシエチレン基、オキシプロピレン基が好ましい。
【0057】
上記「同一又は異なっていてもよい」とは、一般式(1)中にA1Oが複数含まれる場合(nが2以上の場合)、それぞれのA1Oが同一のオキシアルキレン基であってもよく、互いに異なる(2種類以上の)オキシアルキレン基であってもよいことを意味する。一般式(1)中にA1Oが複数含まれる場合の態様としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基からなる群から選択される2以上のオキシアルキレン基が混在する態様が挙げられる。より詳細には、オキシエチレン基とオキシプロピレン基とが混在する態様、又はオキシエチレン基とオキシブチレン基とが混在する態様であることが好ましく、オキシエチレン基とオキシプロピレン基とが混在する態様であることがより好ましい。
異なるオキシアルキレン基が混在する態様において、2種類以上のオキシアルキレン基の付加は、ブロック状の付加であってもよく、ランダム状の付加であってもよい。
【0058】
一般式(1)中のnは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1~300の整数を表す。nは、1~200であることが好ましい。平均付加モル数とは、単量体1モルに付加しているオキシアルキレン基のモル数の平均値を意味する。
【0059】
一般式(1)中、R4は、水素原子又は炭素原子数1~30の炭化水素基を表す。R4は、水素原子又は炭素原子数1~10の炭化水素基が好ましく、水素原子又は炭素原子数1~5の炭化水素基がより好ましく、水素原子又はメチル基がさらに好ましい。R4の炭素原子数がこの範囲であれば、炭素原子数が大きくなりすぎないため、セメント組成物用添加剤の分散性が良好に発揮される。
【0060】
一般式(1)で表される単量体の製造方法としては、例えば、アリルアルコール、メタリルアルコール、3-メチル-3-ブテン-1-オール等の不飽和アルコールにアルキレンオキサイドを1~300モル付加する方法が挙げられる。この方法で製造され得る単量体としては、例えば、(ポリ)エチレングリコールアリルエーテル、(ポリ)エチレングリコールメタリルエーテル、(ポリ)エチレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールアリルエーテル、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールメタリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールアリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールメタリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコールアリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコールメタリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレングリコールアリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレングリコールメタリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールアリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールメタリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコールアリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコールメタリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテルが挙げられる。
これらの中でも、親水性及び疎水性のバランスの観点から、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アリルエーテル、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アリルエーテル、(ポリ)エチレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテルが好ましい。
【0061】
また、一般式(1)で表される単量体の他の製造方法としては、(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸と、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール、メトキシ(ポリ)エチレングリコール、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール等の(ポリ)アルキレングリコールと、をエステル化する方法が挙げられる。この方法で製造され得る単量体としては、例えば、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート;メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート等のメトキシ(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。
これらの中でも、(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレートが好ましく、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0062】
共重合体が構成単位(I)を有する場合、構成単位(I)を1種のみ有するものであってもよく、互いに異なる単量体に由来する2種以上の構成単位(I)を有していてもよい。
【0063】
(構成単位(II))
構成単位(II)は、下記一般式(2)で表される単量体に由来する構成単位である。
【0064】
【0065】
一般式(2)中、R5~R7は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、又は-(CH2)rCOOM2基を表す。但し、-(CH2)rCOOM2基を表す場合、-COOM1基又は他の-(CH2)rCOOM2基と無水物基を形成してもよい。無水物基を形成する場合、それらの基のM1又はM2は存在しない。M1~M2は、それぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、又は置換アルキルアンモニウム基を表す。rは、0~2の整数を表す。
R5は、水素原子が好ましい。R6は、水素原子、メチル基又は(CH2)rCOOM2が好ましい。R7は、水素原子が好ましい。
【0066】
M1及びM2は、同一若しくは異なっていてもよい、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基又は置換アルキルアンモニウム基である。M1、M2は、それぞれ、水素原子、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属が好ましい。
【0067】
rは、0~2の整数を表す。rは、0又は1が好ましく、0がより好ましい。
【0068】
一般式(2)で表される単量体としては、例えば、不飽和モノカルボン酸系単量体、不飽和ジカルボン酸系単量体等が挙げられる。不飽和モノカルボン酸系単量体の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等と、これらの一価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩が挙げられる。不飽和ジカルボン酸の具体例としては、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸等と、これらの一価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩等、又は、これらの無水物が挙げられる。一般式(2)で表される単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸が好ましい。
【0069】
共重合体が構成単位(II)を有する場合、構成単位(II)を1種のみ有するものであってもよく、互いに異なる単量体に由来する2種以上の構成単位(II)を有していてもよい。
【0070】
(構成単位(III))
構成単位(III)は、下記一般式(3)で表される単量体に由来する構成単位である。
【0071】
【0072】
一般式(3)中、R8~R10は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表す。R11は、炭素原子数1~4のヘテロ原子を含んでよい炭化水素基を表す。sは、0~2の整数を表す。
炭素原子数1~3のアルキル基の例は、R1~R3における例と同様である。R8は、水素原子が好ましい。R9は、水素原子が好ましい。R10は、水素原子が好ましい。
【0073】
一般式(3)中、R11は、炭素原子数1~4のヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基を表す。炭素原子数は、1~3が好ましく、2~3がより好ましく、3がさらに好ましい。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、リン原子、ケイ素原子が挙げられる。これらの中でも、酸素原子が好ましい。炭素原子数1~4の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基が挙げられる。R11が含むヘテロ原子の数は、1つであってもよく、2つ以上であってもよい。2つ以上のヘテロ原子を含む場合、それぞれのヘテロ原子は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0074】
R11は、ヘテロ原子を含む炭素原子数1~4の炭化水素基が好ましく、酸素原子を含む炭素原子数1~4の炭化水素基がより好ましい。該基としては、例えば、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、4-ヒドロキシブチル基、及びグリセリル基が挙げられる。これらの中でも、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基が好ましい。
【0075】
一般式(3)中、sは、0~2の整数を表す。sは、0が好ましい。
【0076】
一般式(3)で表される単量体としては、例えば、不飽和モノカルボン酸のモノエステル体が挙げられる。不飽和モノカルボン酸モノエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセリル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中でも、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0077】
共重合体が構成単位(III)を有する場合、構成単位(III)を1種のみ有するものであってもよく、互いに異なる単量体に由来する2種以上の構成単位(III)を有していてもよい。
【0078】
共重合体が、上記構成単位(I)~(III)からなる群より選択される少なくとも2つの構成単位を有すると、成分(A)との共存性が高まり、セメント組成物中で成分(A)をより均一に分散することができる。
【0079】
共重合体は、構成単位(I)~(III)とは別に、構成単位(IV)を有していてもよい。
【0080】
(構成単位(IV))
構成単位(IV)は、上記一般式(1)~(3)で表される単量体と共重合可能な単量体に由来する構成単位である。上記一般式(1)~(3)で表される単量体と共重合可能な単量体は、上記一般式(1)~(3)により表される単量体と構造上区別される。構成単位(IV)を構成する単量体は特に限定されなく、例えば、下記の各単量体を挙げることができる。
なお、これらの単量体は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることが可能である。
【0081】
一般式(IV-1)で表される単量体;
【0082】
【0083】
一般式(IV-1)で表される単量体としては、例えば、4,4’-ジヒドロキシジフェニルプロパン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン等のビスフェノール類の3及び3’位アリル置換物等が挙げられる。
【0084】
一般式(IV-2)で表される単量体;
【0085】
【0086】
上記一般式(IV-2)で表される単量体としては、例えば、4,4’-ジヒドロキシジフェニルプロパン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン等のビスフェノール類の3位アリル置換物等が挙げられる。
【0087】
一般式(IV-3)で表される単量体;
【0088】
【0089】
一般式(IV-3)で表される単量体としては、例えば、アリルフェノールが挙げられる。
【0090】
マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1~30のアルコールとのハーフエステル、ジエステル類;
【0091】
上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1~30のアミンとのハーフアミド、ジアミド類;
【0092】
上記アルコール又はアミンに、炭素原子数2~18のアルキレンオキシドを1~500モル付加させた(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテル又は(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミンと、上記不飽和ジカルボン酸類との、ハーフエステル、ハーフアミド、ジエステル類、ジアミド類;
【0093】
上記不飽和ジカルボン酸類と、炭素原子数2~18のグリコール又はこれらのグリコールの付加モル数2~500のポリアルキレングリコールと、のハーフエステル、ジエステル類;
【0094】
マレアミド酸と、炭素原子数2~18のグリコール又はこれらのグリコールの付加モル数2~500のポリアルキレングリコールと、のハーフアミド類;
【0095】
(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類に対して炭素原子数2~18のアルキレンオキシドが1~500モル付加した、(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート類(但し、一般式(1)~(3)で表される単量体を除く);
【0096】
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;
【0097】
ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;
【0098】
トリエチレングリコールジマレート、ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類;
【0099】
ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2-(メタ)アクリロキシエチルスルホネート、3-(メタ)アクリロキシプロピルスルホネート、3-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピルスルホネート、3-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピルスルホフェニルエーテル、3-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシスルホベンゾエート、4-(メタ)アクリロキシブチルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2-メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類、並びに、それらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩;
【0100】
メチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1~30のアミンとのアミド類;
【0101】
スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、p-メチルスチレン等のビニル芳香族類;
【0102】
1,5-ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類(但し、一般式(3)で表される単量体を除く。);
【0103】
ブタジエン、イソプレン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2-クロル-1,3-ブタジエン等のジエン類;
【0104】
(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;
【0105】
(メタ)アクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル等の不飽和シアン類;
【0106】
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エステル類;
【0107】
(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類(但し、一般式(3)で表される単量体を除く。);
【0108】
ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;トリアリルシアヌレート等のシアヌレート類;
【0109】
(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類;
【0110】
メトキシポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル等のビニルエーテル又はアリルエーテル類(但し、一般式(1)で表される単量体を除く。);
【0111】
ポリジメチルシロキサンプロピルアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサンアミノプロピレンアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサン-ビス-(プロピルアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン-ビス-(ジプロピレンアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン-(1-プロピル-3-アクリレート)、ポリジメチルシロキサン-(1-プロピル-3-メタクリレート)、ポリジメチルシロキサン-ビス-(1-プロピル-3-アクリレート)、ポリジメチルシロキサン-ビス-(1-プロピル-3-メタクリレート)等のシロキサン誘導体(但し、一般式(3)で表される単量体を除く。)。
【0112】
共重合体は、構成単位(IV)を1種のみ有するものであってもよく、互いに異なる単量体に由来する2種以上の構成単位(IV)を有していてもよい。
【0113】
共重合体において、各構成単位(I)~(IV)は、それぞれ、1種類の単量体から構成される構成単位であってもよく、2種類以上の単量体を組み合わせて構成される構成単位であってもよい。これらの中でも、共重合体は、構成単位(I)及び構成単位(II)の組み合わせである共重合体、又は構成単位(I)~(III)の組み合わせである共重合体が好ましい。
【0114】
(共重合体の調製方法)
共重合体は、それぞれ所定の単量体を、公知の方法によって共重合して調製し得る。該方法としては、例えば、溶媒中での重合、塊状重合等の重合方法が挙げられる。
【0115】
溶媒中での重合に使用される溶媒としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン、n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等が挙げられる。原料単量体及び得られる共重合体の溶解性の観点から、水及び低級アルコールの少なくともいずれかの溶媒を用いることが好ましく、水を用いることがより好ましい。
【0116】
溶媒中で重合反応を行う場合、各単量体と重合開始剤を各々反応容器に連続滴下してもよく、各単量体の混合物と重合開始剤を各々反応容器に連続滴下してもよい。また、反応容器に溶媒を仕込み、単量体と溶媒の混合物と、重合開始剤溶液を各々反応容器に連続滴下してもよく、単量体の一部又は全部を反応容器に仕込み、重合開始剤を連続滴下してもよい。
【0117】
重合反応に使用し得る重合開始剤は、特に限定されない。水溶媒中で重合反応を行う際に使用し得る重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;t-ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等の水溶性過酸化物が挙げられる。この際、L-アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、モール塩等の促進剤を併用してもよい。低級アルコール、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、エステル類又はケトン類等の有機溶媒中で重合反応を行う際に使用し得る重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド等のパーオキサイド;クメンパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。この際、アミン化合物等の促進剤を併用してもよい。水-低級アルコール混合溶剤中で重合反応を行う場合に使用し得る重合開始剤は、前述の重合開始剤、又は重合開始剤と促進剤との組合せの中から適宜選択すればよい。
重合温度は、用いる溶媒、重合開始剤の種類等の重合条件によって適宜異なるけれども、通常は40~120℃である。
【0118】
重合反応においては、必要に応じて連鎖移動剤を用いて分子量を調整することができる。連鎖移動剤としては、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、2-メルカプトエタンスルホン酸等の既知のチオール系化合物;亜リン酸、次亜リン酸、又はそれらの塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、又はそれらの塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)の低級酸化物又はそれらの塩等が挙げられる。
これらの連鎖移動剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0119】
共重合体を得る際に水溶媒中で重合反応を行う場合、重合反応時のpHは通常不飽和結合を有する単量体の影響で強酸性となる。但し、これを適当なpHに調整してもよい。重合反応の際にpHの調整が必要な場合、リン酸、硫酸、硝酸、アルキルリン酸、アルキル硫酸、アルキルスルホン酸、(アルキル)ベンゼンスルホン酸等の酸性物質を用いてpHの調整を行えばよい。これら酸性物質の中では、pH緩衝作用がある等の理由から、リン酸を用いることが好ましい。但し、エステル系の単量体が有するエステル結合の不安定さを解消するために、pH2~7で重合反応を行うことが好ましい。また、pHの調整に用い得るアルカリ性物質に特に限定はなく、NaOH、Ca(OH)2等のアルカリ性物質が一般的である。pH調整は、重合反応前の単量体に対して行ってもよく、重合反応後の共重合体溶液に対して行ってもよい。また、これらは重合反応前に一部のアルカリ性物質を添加して重合を行った後、さらに共重合体に対してpH調整(例えば、pH3~7となるように調整)を行ってもよい。
【0120】
共重合体は、液状物として調製し得る。液状の溶媒としては、水性溶媒が例示される。水性溶媒としては、水、炭素数1~6のアルコール(エチルアルコール、メチルアルコール、エチレングリコール及びジエチレングリコール等)及び炭素数1~6のケトン(メチルイソブチルケトン及びアセトン等)等が挙げられる。これらの水性溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。水性溶媒としては、水が好ましい。
共重合体における固形分濃度の下限は、5重量%以上が好ましく、15重量%以上がより好ましい。また、その上限は、70重量%以下が好ましく、65重量%以下がより好ましい。
【0121】
成分(B)は、共重合体の原料である上記一般式(1)~(3)からなる群から選択される少なくとも1種の単量体を含んでいてもよい。共重合体を得る際には、必要に応じて反応溶媒の除去、濃縮、精製等の処理を行ってもよい。これらの処理方法は、従来公知の方法であってもよい。
【0122】
共重合体の重量平均分子量(Mw)の下限は、5000以上が好ましく、6000以上がより好ましい。成分(B)としてこの重量平均分子量を有する共重合体を用いることにより、セメント組成物分散剤とした際にセメント組成物の分散性が十分発揮され得る。そのため、流動性又は作業性を改善し得る。重量平均分子量の上限は、60000以下が好ましく、50000以下がより好ましい。成分(B)としてこの重量平均分子量を有する共重合体を用いることにより、セメント組成物中の粒子の凝集作用が抑制され、作業性を良好にし得る。重量平均分子量は、5000~60000が好ましく、6000~50000がより好ましい。
【0123】
共重合体の分子量分布(Mw/Mn)の下限は、1.0以上が好ましく、1.2以上がより好ましい。上限は、3.0以下が好ましく、2.5以下がより好ましい。分子量分布は、1.0~3.0の範囲が好ましく、1.2~3.0の範囲がより好ましく、1.2~2.5の範囲がさらに好ましい。
【0124】
重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)にてポリエチレングリコール換算の公知の方法にて測定することができる。GPCの測定条件は特に限定されるものではなく、例えば、以下の条件を挙げることができる。なお、後段の実施例における重量平均分子量は、この条件で測定した値である。
測定装置;東ソー製
使用カラム;Shodex Column OH-pak SB-806HQ、SB-804HQ、SB-802.5HQ
溶離液;0.05mM硝酸ナトリウム/アセトニトリル 8/2(v/v)
標準物質;ポリエチレングリコール(東ソー社製又はGLサイエンス社製)
検出器;示差屈折計(東ソー社製)
検量線;ポリエチレングリコール基準
【0125】
[1-3.他の成分]
本発明の固形状セメント分散剤は、本発明の効果を妨げない範囲において、上記の成分(A)及び成分(B)以外の任意成分を含有してもよい。
任意成分としては、例えば、水溶性高分子、硬化促進剤、増粘剤、高分子エマルジョン、空気連行剤、セメント湿潤剤、膨張剤、防水剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、消泡剤、AE剤、界面活性剤等の公知のセメント組成物用添加剤が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0126】
水溶性高分子としては、ポリアルキレングリコールがある。より具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリブチレングリコール等が挙げられる。水溶性高分子の含有量は、成分(A)に対して、0.01~50重量%であることが好ましい。
【0127】
硬化促進剤としては、塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム等の可溶性カルシウム塩類;塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物類;チオ硫酸塩;ギ酸;ギ酸カルシウム等のギ酸塩類が挙げられる。硬化促進剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。硬化促進剤の含有量は、成分(A)に対して、0.01~50重量%であることが好ましい。
【0128】
[2.固形状セメント分散剤の製造方法]
本発明の固形状セメント分散剤の製造方法は、成分(A):リグニンスルホン酸又はその塩の含有量が55~100重量%のリグニン誘導体、を少なくとも含む液状物を乾燥固形化して、その平均粒子径が10~1000μmである固形状セメント分散剤を製造する方法である。
各成分の詳細は、[1.固形状セメント分散剤]に記載した内容と同様である。
【0129】
乾燥方法としては、公知の方法で行い得る。例えば、カルシウム、マグネシウム等の二価金属の水酸化物で中和して多価金属塩とした後に乾燥する方法;シリカ系微粉末等の無機粉体に担持して乾燥する方法;乾燥装置(例えば、ドラム型乾燥装置、ディスク型乾燥装置又はベルト式乾燥装置)の支持体上に薄膜状に乾燥固化する方法;スプレードライヤによって乾燥固化する方法が挙げられる。
【0130】
[3.セメント組成物]
本発明のセメント組成物は、上記(1)に記載の固形状セメント分散剤を含有する。より詳細には、セメント組成物は、固形状セメント分散剤を、セメント等の水硬性材料に添加して調製したセメントペースト、モルタル、コンクリート、プラスター等である。
【0131】
水硬性材料としては、例えば、セメント、石膏(半水石膏、二水石膏等)、ドロマイトが挙げられる。最も一般的な水硬性材料はセメントである。
【0132】
セメントとしては、特に限定はない。例えば、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形)、各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の1種以上を原料として製造されたセメント)等が挙げられる。セメントには、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体、石膏等が添加されていてもよい。
【0133】
また、セメント組成物は骨材を含んでいてもよい。骨材は、細骨材及び粗骨材のいずれであってもよい。骨材としては、例えば、砂、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等、珪石質、珪砂粉(シリカパウダー)、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材が挙げられる。
【0134】
セメント組成物における固形状セメント分散剤の添加量については、特に限定はない。例えば、セメント組成物が、モルタル又はコンクリートである場合、次の添加量であると、固形状セメント分散剤がセメントマトリックス中に均一に分散されると共に、フレッシュコンクリートの増粘が抑制され、流動性が良好なセメント組成物を調製し得る。なお、添加量は、水硬性材料(セメント)の全重量に対する比率である。
【0135】
固形状セメント分散剤の添加量(配合量)の下限は、0.001重量%以上が好ましく、0.01重量%以上がより好ましく、0.1重量%以上がさらに好ましい。また、その上限は、30重量%以下が好ましく、25重量%以下がより好ましく、20重量%以下がさらに好ましい。即ち、0.001~30重量%が好ましく、0.01~25重量%がより好ましく、0.1~20重量%がさらに好ましい。
【0136】
上記のセメント組成物は、例えば、レディーミクストコンクリート、コンクリート2次製品(プレキャストコンクリート)用のコンクリート、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート、軽量気泡コンクリート、Autoclaved Lightweight aerated Concrete、吹付けコンクリート等のコンクリートとして有効である。
また、中流動コンクリート(スランプ値が22~25cmの範囲のコンクリート)、高流動コンクリート(スランプ値が25cm以上で、スランプフロー値が50~70cmの範囲のコンクリート)、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等の高い流動性が要求されるモルタル又はコンクリート、としても有効である。
【実施例】
【0137】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を好適に説明するためのものであって、本発明を限定するものではない。なお、物性値等の測定方法は、別途記載がない限り、上記に記載した測定方法である。また、「部」とは、特に断りがない限り、質量部を示す。
【0138】
[リグニン誘導体中のリグニンスルホン酸の含有量(重量%)]:50mLの試料水溶液を、125mL容メスフラスコにとり、1mLの酢酸及び1mLの亜硝酸ナトリウム溶液を加えた後、室温で15分間攪拌した。その後、2mLの水酸化アンモニウムを加え、10分間攪拌し得られた溶液を10cmの光路長のセルを使用して430nmの吸収(Ar)をUV-1700(島津製作所製)を用いて測定し、下記式からリグニンスルホン酸の含有量(C)を算出した。
ここで、試料水溶液は、430nmにおける吸収量(Ar)が検出限界を超えない程度に希釈し、室温(20~25℃)で12時間以上静置後、清澄な上澄み液をピペットで採取して調製した。また、ブランク試料は、50mLの純粋を、125mL容メスフラスコにとり、1mLの酢酸及び1mLの亜硝酸ナトリウム溶液を加えた後、室温で15分間攪拌した。その後、2mLの水酸化アンモニウムを加え、10分間攪拌し得られた溶液とした。
【0139】
【数1】
(式中、aは吸光係数を示し、bは光路長を示し、Abはブランクの430nmの吸収を示す。)
【0140】
[リグニン誘導体中の還元性糖類及び/又は糖変性物の含有量(重量%)]:Somogyi-Nelson法により算出した。
【0141】
[固形状セメント分散剤の固形分(重量%)]:赤外線水分計(株式会社ケツト科学研究所製)にて、専用のアルミカップ上に試料を5mg測り取った。これを、該機器にて105℃で加熱後、重量変化率0.05%未満になった際の質量減少数を基に固形分を算出した。
【0142】
[平均粒子径(μm)]:粉末サンプル3gをレーザー回折式粒度分布測定装置(マスターサイザー3000(Malvern社製))により、乾式条件で測定し得られた分子量分布より、横軸を粒度(μm)、縦軸を体積(%)として表し、蓄積分布が50%となる値を算出した。
【0143】
[モルタルフロー(mm)]:調製したモルタルについて、「JIS A 1171(ポリマーセメントモルタルの試験方法)」のフロー試験に準拠して、混練直後のそれぞれのモルタルフローを測定した。
【0144】
(製造例1:成分(A-1)の製造)
Naベース針葉樹未発酵亜硫酸蒸解排液をpH5.0に調整した。これを、分画分子量20000のポリスルホン系限外濾過膜を用いて限外濾過処理を行い、その濃縮液をリグニン誘導体(A-1)とした。
【0145】
(製造例2:成分(A-2)の製造)
Mgベース針葉樹酵母発酵亜硫酸蒸解排液を40%NaOHでpH12とした後、140℃で30分間アルカリ空気酸化した。そして、不溶解物を遠心分離し、その上澄み液をリグニン誘導体(A-2)とした。
【0146】
(製造例3:成分(A-3)の製造)
Naベース針葉樹酵母発酵亜硫酸蒸解排液をpH7.0に調整し、これをリグニン誘導体(A-3)とした。
【0147】
(製造例4:成分(B-1)の調製)
温度計、攪拌装置、還流装置、窒素導入管及び滴下装置を備えたガラス反応容器に、水180部、メタリルアルコールのエチレンオキサイド付加物(エチレンオキサイドの平均付加モル数53個)179部、及び過酸化水素0.6部を投入し、攪拌しながら反応容器を窒素置換した。窒素雰囲気下で40℃に昇温した後、アクリル酸19部、及び水76部を混合したモノマー水溶液と、L-アスコルビン酸1部、3-メルカプトプロピオン酸1部、及び水22部の混合液とを、各々2時間で、40℃に保持した反応容器に連続滴下した。滴下終了後、温度を保持した状態でさらに1時間反応させることにより共重合体の水溶液を得た。液中の共重合体は、共重合体(B-1)(重量平均分子量24,000、Mw/Mn1.55)であった。
【0148】
(製造例5:成分(B-2)の調製)
温度計、攪拌装置、還流装置、窒素導入管及び滴下装置を備えたステンレス製反応容器に水8000kgを仕込み、攪拌下で反応容器を窒素置換した。窒素雰囲気下で100℃に昇温した後、メトキシポリエチレングリコールメタアクリレート(MPEG-MA)(エチレンオキサイドの平均付加モル数14)2500kg(33モル%)、メタクリル酸(MAA)400kg(67モル%)、及び水2670kgを混合したモノマー水溶液と、過硫酸ナトリウム50kg、及び水500kgの攪拌混合液を、各々2時間かけて100℃に保持した反応容器に連続滴下した。温度を100℃に保持した状態で1時間重合反応を行った。その後、反応容器の後段に位置する追加装置にて、65℃まで冷却し、水酸化ナトリウムでpH7に中和すると同時に加水することで、濃度20%の共重合体の水溶液を得た。液中の共重合体は、共重合体(B-2)(重量平均分子量Mw18,000、Mw/Mn1.50)であった。
【0149】
(製造例6:成分(B-3)の調製)
温度計、攪拌装置、還流装置、窒素導入管及び滴下装置を備えたガラス反応容器に、水172部、及びポリエチレングリコールモノアリルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数10)168部を仕込み、攪拌下で反応容器内を窒素置換した。窒素雰囲気下で100℃に昇温した後、アクリル酸38部、及び水149部を混合したモノマー水溶液と、過硫酸アンモニウム3部、及び水47部の混合液とを、各々2時間で、100℃に保持した反応容器に連続滴下した。更に、温度を100℃に保持した状態で1時間反応を行った。その後、31%の水酸化ナトリウム水溶液にてpH7に調製することにより共重合体の水溶液を得た。液中の共重合体は、共重合体(B-3)(重量平均分子量16,100、Mw/Mn1.60)であった。
【0150】
(製造例7:成分(B-4)の調製)
温度計、攪拌装置、還流装置、窒素導入管及び滴下装置を備えたガラス反応容器に水254部を仕込み、攪拌下で反応容器内を窒素置換した。窒素雰囲気下で100℃に昇温した後、メタクリル酸33部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数14個)215部、3-メルカプトプロピオン酸3部、及び水43部を混合したモノマー水溶液と、過硫酸アンモニウム3部、及び水38部の混合液とを、各々2時間で、100℃に保持した反応容器に連続滴下した。更に、温度を100℃に保持した状態で1時間反応を行った。その後、31%の水酸化ナトリウム水溶液にてpH7に調製することにより共重合体の水溶液を得た。液中の共重合体は、共重合体(B-4)(重量平均分子量12,100、Mw/Mn1.40)であった。
【0151】
(製造例8:成分(B-5)の調製)
温度計、攪拌装置、還流装置、窒素導入管及び滴下装置を備えたガラス反応容器に、水654部、及びポリエチレングリコールモノアリルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数10個)17部を投入し、攪拌しながら反応容器を窒素置換した。窒素雰囲気下で80℃に昇温した後、メタクリル酸10部、アクリル酸0.1部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数25個)49部、2-ヒドロキシプロピルアクリレート81部、及び水144部を混合したモノマー水溶液と、過硫酸アンモニウム3部、及び水43部の混合液とを、各々2時間で、80℃に保持した反応容器に連続滴下した。滴下終了後、温度を100℃に保持した状態でさらに1時間反応させることにより共重合体の水溶液を得た。この液を30%NaOH水溶液でpH4に調整した。液中の共重合体は、共重合体(B-5)(重量平均分子量22,000、Mw/Mn2.10)であった。
【0152】
(実施例1:固形状セメント分散剤の製造)
製造例1で製造した成分(A-1)を、ドラムドライヤにより乾燥した粉末状物である。
【0153】
(実施例2~6:固形状セメント分散剤の製造)
表1に記載した処方の、成分(A-1)及び成分(B)の混合物を、ドラムドライヤにより乾燥した粉末状物である。
【0154】
(実施例7:固形状セメント分散剤の製造)
製造例2で製造した成分(A-2)を、ドラムドライヤにより乾燥した粉末状物である。
【0155】
(実施例8~9:固形状セメント分散剤の製造)
表1に記載した処方の、成分(A-2)及び成分(B)の混合物を、ドラムドライヤにより乾燥した粉末状物である。
【0156】
(実施例10:固形状セメント分散剤の製造)
表1に記載した処方の、成分(A)及び成分(B)の混合物を、スプレードライヤにより乾燥した粉末状物である。
【0157】
(比較例1:液状セメント分散剤の製造)
製造例1で製造した成分(A-1)である。
【0158】
(比較例2~6:液状セメント分散剤の製造)
表1に記載した処方の成分(A-1)及び成分(B)の混合物である。
【0159】
(比較例7:液状セメント分散剤の製造)
製造例2で製造した成分(A-2)である。
【0160】
(比較例8:液状セメント分散剤の製造)
製造例3で製造した成分(A-3)である。
【0161】
(比較例9:固形状セメント分散剤の製造)
製造例3で製造した成分(A-3)を、ドラムドライヤにより乾燥した粉末状物である。
【0162】
上記の固形状セメント分散剤又は液状セメント分散剤の詳細について、下記表1に示す。
【0163】
【0164】
上記の固形状セメント分散剤又は液状セメント分散剤について、モルタルを作製し、モルタルフロー試験を行った。モルタルの作製条件を以下に示す。
【0165】
環境温度(20℃)において、表2のように配合したセメント、水、シリカパウダー及び表3に示す固形状又は液状セメント分散剤を投入して、モルタルミキサによる機械練りにより低速60秒間、高速90秒練混ぜて、実施例及び比較例のモルタル(セメント組成物)を得た。このモルタルを用いて、モルタルフロー値の測定を行った。試験結果を表3に示す。
【0166】
【0167】
なお、表2中の記号の詳細を以下に記す。
C:以下のセメント3種を等量混合
普通ポルトランドセメント(宇部三菱セメント株式会社製、比重3.16)
普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製、比重3.16)
普通ポルトランドセメント(株式会社トクヤマ製、比重3.16)
W:水道水
S:細骨材(掛川産陸砂 密度2.58)
【0168】
【0169】
表3からわかる通り、リグニンスルホン酸又はその塩の含有量が50重量%のリグニン誘導体を用いた場合、液状と固形状でほとんど相違はないものであった(比較例8、9参照)。これに対し、リグニンスルホン酸又はその塩の含有量が55重量%以上のリグニン誘導体を用いた場合、固形状とすることで、同等又はそれ以上の初期分散性を示すことがわかる(実施例1~7及び比較例1~7参照)。
また、リグニンスルホン酸又はその塩の含有量が60重量%であるリグニン誘導体を用いた場合であっても、成分(B)を併用することで、初期分散性を向上し得ることがわかる(実施例7~9参照)。
さらに、ドラムドライヤによる乾燥方法でも、スプレードライヤによる乾燥方法でも、同様の結果が得られており、乾燥方法の相違は影響がないことがわかる(実施例3及び10参照)。