(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
A47C 27/15 20060101AFI20230216BHJP
A47C 7/14 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
A47C27/15 A
A47C7/14 Z
(21)【出願番号】P 2019066912
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長澤 勇
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-001366(JP,U)
【文献】特開平02-077211(JP,A)
【文献】特開2001-353048(JP,A)
【文献】特開2016-196225(JP,A)
【文献】特開2003-169725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 - B60N 2/90
A47C 27/00 - A47C 27/22
A47C 7/00 - A47C 7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の臀部を支持するシートクッションと、乗員の背中を支持するシートバックと、を備えた車両用シートにおいて、
前記シートクッションの内部または前記シートバックの内部の少なくとも一方に、可撓性を有する気体非透過性材料の袋状にて形成され、粉体を収容する収容部と、
前記収容部に気体を送気するとともに、前記収容部から気体を吸気する送吸気部と、
前記送吸気部を制御する制御部と、を備え、
前記送吸気部は、
前記収容部に気体を送気することにより前記収容部に収容された粉体を流体化させて、前記収容部の形状を軟質化にし、
前記収容部から気体を吸気することにより前記収容部に収容された粉体を固体化させて、前記収容部の形状を硬質化にし、
前記収容部は、
前記車両用シートに着座した乗員と対向する表面側に、前記粉体を収容する表面袋体と、
前記表面袋体の裏面側に、前記粉体を収容する裏面袋体との複数の袋体を有
し、
前記制御部は、前記表面袋体への送吸気と前記裏面袋体への送吸気とを独立して行う、
ことを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記制御部は、
第1の時期に前記送吸気部に前記裏面袋体を吸気させる制御を行い、
前記第1の時期よりも後の第2の時期に前記送吸気部に前記表面袋体に吸気させる制御を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記制御部は
、
前記第
2の時期よりも後の第
3の時期に前記送吸気部に前記裏面袋体に
送気させる制御を行う、
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記制御部は、乗員が着座を開始したときに、前記送吸気部により裏面袋体から気体を吸気して裏面袋体を硬質化させる、請求項1記載の車両用シート。
【請求項5】
前記制御部は、乗員の着座が完了したときに、硬質化した前記裏面袋体に支持された前記表面袋体から前記送吸気部により気体を吸気し、前記表面袋体を乗員の臀部に応じた形状に硬質化させる、請求項1又は請求項4に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記制御部は、乗員の臀部に応じた形状に硬質化した表面袋体を支持する裏面袋体に対し、前記送吸気部により裏面袋体に気体を送気して裏面袋体を軟質化させる、請求項1、請求項4又は請求項5のいずれかに記載の車両用シート。
【請求項7】
乗員の姿勢を検出する姿勢検出部と、を更に備え、
前記制御部は、
前記姿勢検出部により検出された乗員の姿勢に基づいて、前記送吸気部に前記表面袋体と前記裏面袋体との吸気をさせる制御を行う、
ことを特徴とする請求項1から
6のいずれかに記載の車両用シート。
【請求項8】
前記制御部は、
前記姿勢検出部により乗員の姿勢の変化が少ないと検出されると、前記送吸気部に前記裏面袋体の吸気をさせる制御を行う、
ことを特徴とする請求項
7に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される車両用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートは、乗員それぞれの着座姿勢を考慮することなく、メーカーの推奨する着座姿勢で製造されている。乗員がメーカーの推奨する着座姿勢で着座していない場合、乗員の体の各部に疲れを感じる。また、この種の車両用シートは、運転者の体型も考慮されていない。
【0003】
このような問題を解決するため、例えば、特許文献1は、可撓性を有する気体非透過性材料によって形成され内部に粉体を流動可能な状態で充填した袋体を座部及び背当部に配置した車両用シートを開示している。特許文献1に開示されている車両用シートは、着座者の体重により袋体内の粉体を流動させ座部及び背当部の表面を乗員の着座姿勢に合わせた凹凸面に形成し、袋体内からを吸引することによって袋体内の粉体の位置を固定させ座部及び背当部の表面の凹凸面を維持している。
【0004】
また、特許文献2には、表皮部材とクッション体との間に粉体として発泡プラスチック粒子を充填した複数の気密袋を配置した車両用シートを開示している。特許文献2に開示されている車両用シートは、複数の気密袋内を減圧して発泡プラスチック粒子同士を密着、固化させることによって表皮部材の全面を乗員の着座姿勢に合わせた凹凸面を維持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-229930公報
【文献】実開平4-115448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示されている車両用シートは、表面形状を着座時における乗員の着座姿勢に合わせた凹凸面で維持しているため、車両走行中の乗員の着座姿勢の変化、例えば腰掛け位置の調整、ルームミラーの調整による姿勢の変化等により発生する座面の移動を許容し難かった。
【0007】
本発明の目的には、上記課題を解決するものであり、表面形状を着座時の乗員の着座姿勢に合わせた形状を維持しつつ、乗員の着座姿勢の変化を許容できる車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の車両用シートは、乗員の臀部を支持するシートクッションと、乗員の背中を支持するシートバックと、を備えた車両用シートにおいて、前記シートクッションの内部または前記シートバックの内部の少なくとも一方に、可撓性を有する気体非透過性材料の袋状にて形成され、粉体を収容する収容部と、前記収容部に気体を送気するとともに、前記収容部から気体を吸気する送吸気部と、を備え、前記送吸気部は、前記収容部に気体を送気することにより前記収容部に収容された粉体を流体化させて、前記収容部の形状を軟質化にし、前記収容部から気体を吸気することにより前記収容部に収容された粉体を固体化させて、前記収容部の形状を硬質化にし、前記収容部は、前記車両用シートに着座した乗員と対向する表面側に、前記粉体を収容する表面袋体と、前記表面袋体の裏面側に、前記粉体を収容する裏面袋体との複数の袋体を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、表面形状を着座時の乗員の着座姿勢に合わせた形状に維持しつつ、乗員の着座姿勢の変化を許容することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用シートを備えた車両における車内の斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る車両用シートの斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る車両用シートのシートクッションにおいて、車両の前後方向を断面方向としたときの縦断面概念図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る車両用シートの電気的構成を示すブロック図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る車両用シートのシートクッション制御処理を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施形態に係る車両用シートのシートクッションにおいて、車両の幅方向を断面方向としたときの横断面概念
図1である。
【
図7】本発明の実施形態に係る車両用シートのシートクッションにおいて、車両の幅方向を断面方向としたときの横断面概念
図2である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態に係る車両用シートについて、
図1~
図7を参照しながら説明する。ただし、以下に説明される実施形態は、本発明のいくつかの例を示すものであって、本発明の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本発明の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0012】
[車両用シートの概略構成]
本発明の実施形態に係る車両用シート10の概略構成について
図1及び
図2を用いて説明する。
【0013】
図1は、車両用シート10を備えた車両1における車内の斜視図である。また、
図2は、車両用シート10の斜視図である。
【0014】
図1に示すように、車両1における車内には、インストルメントパネル2よりも後方に設置されているフロントシート3と、フロントシート3よりも後方に設置されているリアシート4とが配置されている。また、フロントシート3は、運転席用のフロントシート3aと、助手席用のフロントシート3bとを有している。本実施形態に係る車両用シート10は、フロントシート3またはリアシート4の少なくともいずれか一方に適用されるものである。
【0015】
図2に示すように、車両用シート10は、車両本体の構造体上に固定されているシートクッション20と、シートクッション20の後端側から上方に向かって延びるように設けられたシートバック30と、シートバック30の上端に設けられたヘッドレスト40と、を備えている。
【0016】
また、シートクッション20は、乗員の臀部及び脚部を支持するものであり、シートバック30は、乗員の腰部及び背中を支持するものである。ヘッドレスト40は、乗員の頭部を支持するものである。
【0017】
[シートクッションの構成]
次に、本発明の実施形態に係るシートクッション20の構成について
図3に基づいて説明する。
図3は、車両用シート10のシートクッション20において、車両1の前後方向を断面方向としたときの縦断面概念図である。尚、以下の説明においては、適宜
図2を参酌する。
【0018】
図3に示すように、シートクッション20は、乗員の臀部及び脚部が接する座面21と、粉体を収容する袋状の収容部22と、収容部22に気体を送吸気する送吸気部23とを備えている。
【0019】
また、シートクッション20の下方であって、シートクッション20を支持する支持部(図示せず)には、シートクッション20にかかる圧力を検出するシート圧力センサ21bが設けられている。
【0020】
座面21は、布、本革又は合成皮革等の表皮部材21aで覆われている。
【0021】
収容部22は、座面21の下方に設けられており、車両用シート10に着座した乗員の臀部と対向する表面側の表面袋体22aと、表面袋体22aの裏面側の裏面袋体22bとを有している。
なお、本実施形態においては、2つの袋体のみから構成されているが、3以上の袋体から構成されていてもよい。
【0022】
表面袋体22a及び裏面袋体22bは、送吸気部23から送吸気されてきた気体を内部に流通させるための接続部24を有している。
【0023】
本実施形態においては、表面袋体22a及び裏面袋体22bに気体を送吸気する気体は、空気(外気)に対応しているが、紛体の流体化・固定化を高める媒体となるような媒体ガスであってもよい。
【0024】
また、表面袋体22a及び裏面袋体22bは、可撓性を有する気体非透過性材料、例えば樹脂、ゴム等で袋状に形成することによって内部の気密性を保っており、内部に粉体を収容している。
【0025】
表面袋体22a及び裏面袋体22bは、内部の気密性が保たれているため、内部を気体で満たすことによって粉体を流動可能な状態で収容できる。また、表面袋体22a及び裏面袋体22bは、内部から気体を排気することによって、粉体同士を密着させ、粉体の位置を固定した状態で収容できる。
【0026】
表面袋体22aは、裏面袋体22bと比較して、内部に紛体の量を多く収容している。このため、表面袋体22aの厚さは、
図3に示すように、裏面袋体22bよりも厚く構成されている。さらには、表面袋体22aは、裏面袋体22bと比較して、可撓性の高い材料で形成されていることが望ましい。
【0027】
送吸気部23は、表面袋体22aに気体を送吸気する第1コンプレッサ23aと、裏面袋体22bに気体を送吸気する第2コンプレッサ23bとのコンプレッサから構成されている。
【0028】
第1コンプレッサ23aは、流通管25を介して表面袋体22aの接続部24と接続されており、流通管25を介して表面袋体22aに気体を送吸気することができる。同様にして、第2コンプレッサ23bも、流通管25を介して裏面袋体22bの接続部24と接続されており、流通管25を介して裏面袋体22bに気体を送吸気することができる。
【0029】
第1コンプレッサ23aは、表面袋体22aに気体を送気することにより、表面袋体22aの内部に収容された粉体を流体化させて、表面袋体22aの形状を軟質化にする。
また、第1コンプレッサ23aは、表面袋体22aから気体を吸気することにより、表面袋体22aの内部に収容された粉体を固体化させ、表面袋体22aの形状を固体化することにより硬質化にする。
【0030】
第2コンプレッサ23bは、裏面袋体22bに気体を送気することにより、裏面袋体22bの内部に収容された粉体を流体化させて、裏面袋体22bの形状を軟質化にする。
また、第2コンプレッサ23bは、裏面袋体22bに気体を吸気することにより、裏面袋体22bの内部に収容された粉体を固体化させて、裏面袋体22bの形状を硬質化にする。
【0031】
[車両用シートの電気的構成]
次に、本発明の実施形態に係る車両用シート10の電気的構成について
図4に基づいて説明する。
図4は、車両用シート10の電気的構成を示すブロック図である。
【0032】
図4に示すように、車両用シート10には、コントローラ100が備えられている。
コントローラ100は、シート圧力センサ21bと、第1コンプレッサ23aと、第2コンプレッサ23bと、車両1の進行方向を撮影する車外撮影用カメラ101と、車両1内の乗員を撮影する車内撮影用カメラ102とに通信可能に接続されている。
【0033】
車内撮影用カメラ102は、車両用シート10に着座している乗員の姿勢を検出する姿勢検出部を構成している。また、シート圧力センサ21bによっても、圧力分布によって、着座している乗員の姿勢を推定できる。
【0034】
コントローラ100は、不図示のプロセッサ、メモリ及びストレージ等から構成されており、車両用シート10に含まれる各種構成要素を統括的に制御し、車両用シート10の各種機能を実現するための制御処理を実行する。プロセッサは、本実施形態におけるプログラムをストレージから呼び出してメモリに展開し、これらを所定順序で実行することにより、乗員の着座姿勢の制御に関するシートクッション制御処理を実行する。
【0035】
コントローラ100は、第1コンプレッサ23a及び第2コンプレッサ23bに気体の送吸気をさせる送吸制御をする。特に、本実施形態においては、コントローラ100は、第1コンプレッサ23aが表面袋体22aから気体を吸気する時期と、第2コンプレッサ23bが裏面袋体22bから気体を吸気する時期とが異なるように制御を行う。
【0036】
コントローラ100は、シート圧力センサ21bからシートクッション20にかかっている圧力、又は、車内撮影用カメラ102から乗員の映像を取得した場合、取得した圧力又は映像に基づいて乗員の着座姿勢を検出する。
【0037】
そして、コントローラ100は、検出した着座姿勢に基づいて、第1コンプレッサ23a及び第2コンプレッサ23bに気体の送吸気をさせる送吸制御をする。特に、本実施形態においては、検出した着座姿勢の変化が少ないと検出されると、第2コンプレッサ23bに裏面袋体22bの吸気をさせる制御を行う。
【0038】
[車両用シートの動作]
次に、本発明の実施形態に係る車両用シート10の動作(シートクッション制御処理)について
図5~
図7を用いて説明する。尚、以下の説明においては、適宜
図3~
図4を参酌する。
【0039】
図5は、車両用シート10のシートクッション制御処理を示すフローチャートである。
図6及び
図7は、車両用シート10のシートクッション20において、車両1の幅方向を断面方向としたときの横断面概念図であり、シートクッション20の状態の変化を時系列に示している。
【0040】
図5に示すように、最初に、コントローラ100は、車両起動直後にシート圧力センサ21bでシートクッション20表面の圧力が検出されているかどうかを判定する(ステップS701)。すなわち、乗員が車両用シート10に着座しているか否かを判定する。ステップS701の判定の結果、コントローラ100がシート圧力センサ21bでシートクッション20表面の圧力が検出されていないと判定した場合(ステップS701のNo)、コントローラ100は後述するステップS710を実行する。
【0041】
なお、本実施形態では、ステップS701において、コントローラ100は、シート圧力センサ21bによって乗員が車両用シート10に着座しているか否かを判定しているが、車内撮影用カメラ102から乗員の映像によって乗員が車両用シート10に着座しているか否かを判定してもよい。
【0042】
ステップS701の判定の結果、コントローラ100がシート圧力センサ21bでシートクッション20表面の圧力が検出されていると判定した場合(ステップS701のYes)、コントローラ100は第2コンプレッサ23bに裏面袋体22bから気体を吸気させ、裏面袋体22bの形状を硬質化させる(ステップS702)。
【0043】
具体的には、
図6(a)に示すように、ステップS702の実行前では、乗員50の着座前における表面袋体22a及び裏面袋体22bの内部は、気体で満たされている。
このため、表面袋体22a及び裏面袋体22bの形状は軟質化していることになる。軟質化した表面袋体22a及び裏面袋体22bの形状は、シートクッション20表面に接触する形状に合せて変形自在となっている。
【0044】
図6(b)に示すように、ステップS702の実行後では、乗員50の着座直後における裏面袋体22bは、第2コンプレッサ23bに内部の気体が吸気されることによって、裏面袋体22bの形状を硬質化させている。
このため、表面袋体22aの形状は軟質化しており、裏面袋体22bの形状は硬質化していることになる。これにより、乗員50が着座を開始した直後においては、軟質化している表面袋体22aの形状は、着座している乗員50の臀部の形状に合わせて変形し、硬質化している裏面袋体22bは、表面袋体22aを支持することができる。
【0045】
次に、コントローラ100は、
図5に示すように、ステップS701にてシート圧力センサ21bで圧力が検出してから所定時間経過したかを判定する(ステップS703)。ステップS703の判定の結果、コントローラ100が所定時間(例えば、30秒)を経過していないと判定した場合(ステップS703のNo)、コントローラ100は再度ステップS703を実行する。
【0046】
ステップS703の判定の結果、コントローラ100が所定時間を経過していると判定した場合(ステップS703のYes)、コントローラ100は第1コンプレッサ23aに表面袋体22aから気体を吸気させる(ステップS704)。
【0047】
なお、本実施形態では、ステップS703において、コントローラ100は、所定時間経過の判定の代わりに、乗員の着座姿勢の変化に基づいて判定してもよい。例えば、コントローラ100は、車内撮影用カメラ102から乗員の映像によって乗員の着座が完了したと判定したときに、ステップS704を実行するようにしてもよい。
【0048】
図6(c)に示すように、ステップS704の実行後では、表面袋体22a及び裏面袋体22bの両者の形状は、硬質化していることになる。
【0049】
また、コントローラ100は、
図5に示すように、第2コンプレッサ23bに裏面袋体22bに気体を送気させる(ステップS705)。
【0050】
図7(a)に示すように、ステップS705の実行後では、表面袋体22aの形状は、着座している乗員50の臀部の形状に合った状態で硬質化している。また、裏面袋体22bの形状は、表面袋体22aの移動を許容できる状態で軟質化している。
このため、裏面袋体22bは、表面袋体22aの形状が維持する乗員50の臀部の形状を崩すことなく、着座姿勢の揺れ、例えばカーブを曲がる際に発生する遠心力による揺れ、ルームミラーを直す動作により発生する揺れ等の乗員の着座姿勢の変化を許容できる。
【0051】
次に、コントローラ100は、
図5に示すように、シート圧力センサ21b又は車内撮影用カメラ102を介して検出した乗員の着座姿勢が安定したかどうかを判定する(ステップS706)。ステップS706の判定の結果、コントローラが乗員の着座姿勢が安定していないと判定した場合(ステップS706のNo)、コントローラ100は再度ステップS706を実行する。
【0052】
ステップS706の判定の結果、コントローラが乗員の着座姿勢が安定していると判定した場合(ステップS706のYes)、コントローラ100は第2コンプレッサ23bに裏面袋体22bから気体を吸気させる(ステップS707)。
【0053】
図7(b)に示すように、ステップS707の実行後では、表面袋体22a及び裏面袋体22bの形状は、硬質化していることになる。
これにより、乗員50の着座姿勢が安定したときには、最適な車両用シート10形状を保持することができる。
【0054】
次に、コントローラ100は、
図5に示すように、シート圧力センサ21bでシートクッション20表面の圧力が検出されているかどうかを判定する(ステップS708)。ステップS708の判定の結果、コントローラ100がシート圧力センサ21bでシートクッション20表面の圧力が検出されていると判定した場合(ステップS708のYes)、コントローラ100はステップS709を実行する。また、コントローラ100は、シート圧力センサ21bでシートクッション20表面の圧力が検出されていないと判定した場合(ステップS708のNo)、コントローラ100はステップS710を実行する。
【0055】
コントローラ100は、所定のイベントが発生したか否かを判定する(ステップS709)。ステップS709の判定の結果、コントローラ100が所定のイベントが発生していないと判定した場合(ステップS708のNo)、コントローラ100は再度ステップS708を実行し、所定のイベントが発生したと判定した場合(ステップS708のYes)、コントローラ100はステップS705を実行する。
【0056】
ここで、「所定のイベント」とは、(a)表面袋体22a及び裏面袋体22bの両者の形状が硬質化してから所定時間(例えば、30分毎)が経過したことであったり、(b)乗員が操作可能な操作ボタンを押圧したことであったり、(c)乗員の姿勢の変化が大きくなったこと等が挙げられる。
【0057】
このように、コントローラ100は、シート圧力センサ21bを介してシートクッション20表面から圧力が検出され続けている間、乗員の着座姿勢が安定する前(第1の時期)に実行するステップS705の動作と、乗員の着座姿勢が安定した後(第2の時期)に実行するステップS707の動作と、を繰り返し実行している。
【0058】
ステップS708の判定の結果、コントローラ100がシート圧力センサ21bでシートクッション20表面の圧力が検出されていないと判定した場合(ステップS708のNo)、コントローラ100は第1コンプレッサ23aに表面袋体22aに気体を送気させる(ステップS710)。また、コントローラ100は、第2コンプレッサ23bに裏面袋体22bに気体を送気させて(ステップS711)、シートクッション制御処理を終了する。これによって、表面袋体22a及び裏面袋体22bは、
図6(a)に示すように、車両起動前における表面袋体22a及び裏面袋体22bと同様の状態となる。
【0059】
以上のように、本実施形態では、車両用シート10のシートクッション20の内部に、シートクッション20に着座した乗員50の臀部と対向する表面側の表面袋体22aと、表面袋体22aの裏面側の裏面袋体22bと、から構成される収容部22が設けられている。また、収容部22は内部に粉体を収容している。送吸気部23が収容部22に気体を送気した場合、収容部22は、収容している粉体を流体化させ、形状を軟質化させている。送吸気部23が収容部22に気体を吸気した場合、収容部22は、収容している粉体を固体化させ、形状を硬質化させている。
【0060】
このため、本実施形態では、表面形状を着座時の乗員50の着座姿勢に合わせた形状に維持しつつ、乗員50の着座姿勢の変化を許容することができる。
【0061】
また、本実施形態では、コントローラ100が、第1の時期(乗員50の着座姿勢が安定する前)の場合、第2コンプレッサ23bを介して裏面袋体22bに気体を送気することによって、裏面袋体22bの形状を軟質化させている。また、コントローラ100が、第2の時期(乗員50の着座姿勢が安定した後)の場合、第2コンプレッサ23bを介して裏面袋体22bから気体を吸気することによって、裏面袋体22bの形状を硬質化させている。
【0062】
このため、本実施形態では、乗員50の着座姿勢が安定すると裏面袋体22bの形状が硬質化するため、最適な車両用シート10形状を保持することができる。
【0063】
また、本実施形態では、コントローラ100が、車内撮影用カメラ102を介して乗員50の着座姿勢を検出している。また、コントローラ100は、検出した乗員50の着座姿勢に基づいて、第1コンプレッサ23aに気体を表面袋体22aに送吸気させている。また、コントローラ100は、検出した乗員50の着座姿勢に基づいて、第2コンプレッサ23bに気体を裏面袋体22bに送吸気させている。
【0064】
このため、本実施形態では、乗員50の着座姿勢の変化に応じて、座り心地を変化させることができる。
【0065】
また、本実施形態では、コントローラ100が、検出した乗員50の着座姿勢の変化が少ないと判定すると、第2コンプレッサ23bに裏面袋体22bから気体を吸気させることによって、裏面袋体22bの形状を硬質化させている。
【0066】
このため、本実施形態では、乗員50の着座姿勢をより安定させることができる。
【0067】
[その他]
上述の実施形態においては、車両用シート10のシートクッション20の内部に表面袋体22aと裏面袋体22bとを備えて構成したが、シートクッション20ではなく、シートバック30の内部に表面袋体22aと裏面袋体22bとを備えて構成してもよい。
さらには、車両用シート10のシートクッション20及びシートバック30の両者に表面袋体22aと裏面袋体22bを設けて構成してもよい。
【符号の説明】
【0068】
1:車両、3:フロントシート、4:リアシート、10:車両用シート、20:シートクッション、21:座面、21a:表皮部材、21b:シート圧力センサ(姿勢検出部)、22:収容部、22a:表面袋体、22b:裏面袋体、23:送吸気部、23a:第1コンプレッサ(送吸気部)、23b:第2コンプレッサ(送吸気部)、24:接続部、25:流通管、30:シートバック、40:ヘッドレスト、50:乗員、100:コントローラ(制御部)、101:車外撮影用カメラ、102:車内撮影用カメラ(姿勢検出部)