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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 5/307 20150101AFI20230216BHJP
   H01Q 5/335 20150101ALI20230216BHJP
   H01Q 5/50 20150101ALI20230216BHJP
   H01Q 1/38 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
H01Q5/307
H01Q5/335
H01Q5/50
H01Q1/38
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019097965
(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公開番号】P2020195006
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】縮谷 真志
(72)【発明者】
【氏名】岡野 徹朗
(72)【発明者】
【氏名】河合 健史
【審査官】佐々木 洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/105380(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第101685906(CN,A)
【文献】特開2006-295876(JP,A)
【文献】特開2014-075646(JP,A)
【文献】特開2011-035519(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0026064(US,A1)
【文献】特開2017-220915(JP,A)
【文献】特開2015-204464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 5/307
H01Q 5/335
H01Q 5/50
H01Q 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の誘電体と、
前記誘電体の所定領域内に配置される、第1周波数帯の電波を受信する第1アンテナエレメントと、
前記誘電体の前記所定領域内に配置される、前記第1周波数帯と異なる第2周波数帯の電波を受信する第2アンテナエレメントと、
前記誘電体の前記所定領域内に配置される、前記第1周波数帯及び前記第2周波数帯と異なる第3周波数帯の電波を受信する第3アンテナエレメントと、
を備え、
前記第2アンテナエレメントは、前記誘電体の前記所定領域内であって前記第1アンテナエレメントが配置されていない部分に配置され、
前記第3アンテナエレメントは、前記誘電体の前記所定領域内であって前記第1アンテナエレメント及び前記第2アンテナエレメントが配置されていない部分に配置され、
前記第2アンテナエレメントは、メアンダ形状のアンテナエレメントであり、
前記第1アンテナエレメントの少なくとも一部は、前記第2アンテナエレメントのメアンダ形状のアンテナエレメントにおいて往復構造をなす導体素子部分に挟まれた箇所に配置され、
前記所定領域の面積は、前記第1アンテナエレメントを含む長方形領域のうち最小の長方形領域の面積と、前記第2アンテナエレメントを含む長方形領域のうち最小の長方形領域の面積と、前記第3アンテナエレメントを含む長方形領域のうち最小の長方形領域の面積との和よりも小さい、
アンテナ装置。
【請求項2】
前記誘電体は、第1面と前記第1面に対して裏面となる第2面とを有し、
前記第2アンテナエレメントは、前記第1面にメアンダ形状の第1部分と前記第2面にメアンダ形状の第2部分とを有するダブルメアンダ形状のアンテナエレメントである、
請求項に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
板状の誘電体と、
前記誘電体の所定領域内に配置される、第1周波数帯の電波を受信する第1アンテナエ
レメントと、
前記誘電体の前記所定領域内に配置される、前記第1周波数帯と異なる第2周波数帯の電波を受信する第2アンテナエレメントと、
前記誘電体の前記所定領域内に配置される、前記第1周波数帯及び前記第2周波数帯と異なる第3周波数帯の電波を受信する第3アンテナエレメントと、
を備え、
前記第2アンテナエレメントは、前記誘電体の前記所定領域内であって前記第1アンテナエレメントが配置されていない部分に配置され、
前記第3アンテナエレメントは、前記誘電体の前記所定領域内であって前記第1アンテナエレメント及び前記第2アンテナエレメントが配置されていない部分に配置され、
前記第2アンテナエレメントは、メアンダ形状のアンテナエレメントであり、
前記誘電体は、第1面と前記第1面に対して裏面となる第2面とを有し、
前記第2アンテナエレメントは、前記第1面にメアンダ形状の第1部分と前記第2面にメアンダ形状の第2部分とを有するダブルメアンダ形状のアンテナエレメントであり、
前記所定領域の面積は、前記第1アンテナエレメントを含む長方形領域のうち最小の長方形領域の面積と、前記第2アンテナエレメントを含む長方形領域のうち最小の長方形領域の面積と、前記第3アンテナエレメントを含む長方形領域のうち最小の長方形領域の面積との和よりも小さい、
アンテナ装置。
【請求項4】
前記第1部分のサイズと、前記第2部分のサイズとが異なっている、
請求項2または3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第1周波数帯はAM(Amplitude Modulation)放送の周波数帯であり、前記第2周波数帯はFM(Frequency Modulation)放送の周波数帯であ、前記第3周波数帯はDAB(Digital Audio Broadcasting)放送またはDTV(Digital Television)放送の周波数帯である、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記第3アンテナエレメントは、L字形状のアンテナである、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記第2アンテナエレメントに接続される第1整合部と、
前記第3アンテナエレメントに接続される第2整合部と、
を備え、
前記第1整合部が前記第3周波数帯の信号に対してハイインピーダンスとなるように設計され、前記第2整合部が前記第2周波数帯の信号に対してハイインピーダンスとなるように設計されている、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両が移動中でもAM(Amplitude Modulation)放送電波、FM(Frequency Modulation)放送電波、DAB(Digital Audio Broadcasting)放送電波(またはDTV(Digital Television)放送電波)等を受信できるように、様々な車両に搭載する車載用アンテナが使用されている。車両に搭載する機器が増えていることから、車載用アンテナの面積の狭小化が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-253436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両において、AM放送電波、FM放送電波、DAB放送電波(またはDTV放送電波)を受信できるようにするには、AM放送電波とFM放送電波とを受信するアンテナ装置とDAB放送電波(またはDTV放送電波)を受信するアンテナ装置を用意することで実現できる。しかしながら、車両にアンテナ装置を搭載できる空間は限られており、アンテナ装置をできるだけ小さくすることが好ましい。
【0005】
本発明は、アンテナの面積を低減しつつ、感度の低下を抑制したマルチバンド対応のアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、以下の手段を採用する。
即ち、第1の態様は、
板状の誘電体と、
前記誘電体の所定領域内に配置される、第1周波数帯の電波を受信する第1アンテナエレメントと、
前記誘電体の前記所定領域内に配置される、前記第1周波数帯と異なる第2周波数帯の電波を受信する第2アンテナエレメントと、
前記誘電体の前記所定領域内に配置される、前記第1周波数帯及び前記第2周波数帯と異なる第3周波数帯の電波を受信する第3アンテナエレメントと、
を備え、
前記第2アンテナエレメントは、前記誘電体の前記所定領域内であって前記第1アンテナエレメントが配置されていない部分に配置され、
前記第3アンテナエレメントは、前記誘電体の前記所定領域内であって前記第1アンテナエレメント及び前記第2アンテナエレメントが配置されていない部分に配置され、
前記所定領域の面積は、前記第1アンテナエレメントを含む長方形領域のうち最小の長方形領域の面積と、前記第2アンテナエレメントを含む長方形領域のうち最小の長方形領域の面積と、前記第3アンテナエレメントを含む長方形領域のうち最小の長方形領域の面積との和よりも小さい、
アンテナ装置とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アンテナの面積を低減しつつ、感度の低下を抑制したマルチバンド対応のアンテナ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、比較例のアンテナ装置の構成例を示す図である。
図2図2は、実施形態のアンテナ装置の構成例を示す図である。
図3図3は、実施形態のアンテナ装置の機能ブロックの例を示す図である。
図4図4は、各アンテナエレメントの例を示す図である。
図5図5は、アンテナ装置の車両への搭載例を示す図である。
図6図6は、変形例のアンテナ装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。実施形態の構成は例示であり、発明の構成は、開示の実施形態の具体的構成に限定されない。発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0010】
〔比較例〕
図1は、比較例のアンテナ装置の構成例を示す図である。アンテナ装置900は、基板905、アンテナエレメント911、マッチング回路921、アンテナアンプ950を備える。アンテナエレメント911は、第1周波数帯の電波および第1周波数帯と異なる第2周波数帯の電波を受信する。ここでは、第1周波数帯はAM放送の周波数帯であり、第2周波数帯はFM放送の周波数帯であるとする。アンテナ装置900は、主として、自動車等の車両に搭載される。
【0011】
基板905は、アンテナエレメント911、マッチング回路921、アンテナアンプ950が配置される板状の誘電体である。基板905の代わりとして、アンテナ装置900が搭載される車両のガラス(フロントガラス、ルーフガラス、ドアガラス、リアガラス等)が、使用されてもよい。
【0012】
アンテナエレメント911は、基板905に配置される板状の導体である。導体は、例えば、銅、アルミニウム等の金属である。アンテナエレメント911は、マッチング回路921と配線によって接続される。
【0013】
マッチング回路921は、アンテナエレメント911とアンテナアンプ950との間に配置され、第1周波数帯の電波および第2周波数帯の電波を受信するように、アンテナエレメント911と後段とを整合する回路である。マッチング回路921は、例えば、コイルあるいはコンデンサ等を含む電子部品である。
【0014】
アンテナアンプ950は、アンテナエレメント911で受信された信号を増幅して出力する回路である。また、アンテナアンプ950は、受信信号を、第1周波数帯の信号と、第2周波数帯の信号とに分波して、出力する。アンテナアンプ950は、アンテナエレメント毎に信号を増幅して出力する。アンテナアンプ950は、増幅した信号を、周波数帯毎に受信機に対して出力する。
【0015】
アンテナ装置900では、1つのアンテナエレメント911で受信した信号を、第1周波数帯の信号と第2周波数帯の信号とに分波するため、分波ロスが発生し、感度が低下する。
【0016】
DAB放送電波(またはDTV放送電波)を受信するには、AM放送及びFM放送の電波を受信するアンテナ装置900とは別に、DAB放送電波(またはDTV放送電波)を
受信するアンテナ装置を用意することが求められる。車両において、これらの放送電波を受信するには、2つのアンテナ装置を設置する空間を確保することが求められるが、搭載する機器が増えている車両において空間の確保は困難である。
【0017】
〔実施形態〕
(構成例)
図2は、本実施形態のアンテナ装置の構成例を示す図である。アンテナ装置100は、基板105、第1アンテナエレメント111、第2アンテナエレメント112、第3アンテナエレメント113、第1マッチング回路121、第2マッチング回路122、第3マッチング回路123、アンテナアンプ150を備える。第1アンテナエレメント111、第2アンテナエレメント112及び第3アンテナエレメント113は、基板105の所定領域内(図2の点線で囲まれた長方形領域)に配置される。第1アンテナエレメント111は、第1周波数帯の電波を受信する。第2アンテナエレメント112は、第1周波数帯と異なる第2周波数帯の電波を受信する。第3アンテナエレメント113は、第1周波数帯及び第2周波数帯と異なる第3周波数帯の電波を受信する。ここでは、第1周波数帯はAM放送の周波数帯であり、第2周波数帯はFM放送の周波数帯であり、第3周波数帯はDAB放送の周波数帯であるとする。AM放送の周波数帯は、中波帯(300kHz-3000kHz)に含まれる。FM放送の周波数帯は、超短波帯(30MHz-300MHz)に含まれる。DAB放送の周波数帯は、超短波帯または極超短波帯(300MHz-3000MHz)に含まれる。各周波数帯は、これらに限定されるものではない。アンテナ装置100は、主として、自動車等の車両に搭載される。第3周波数帯はDTV放送の周波数帯であってもよい。DTV放送の周波数帯は、極超短波帯に含まれる。アンテナ装置100がこれらの周波数帯の電波を受信することで、車両においてAM放送、FM放送、DAB(DTV)放送を視聴することができる。
【0018】
基板105は、第1アンテナエレメント111、第2アンテナエレメント112、第3アンテナエレメント113、第1マッチング回路121、第2マッチング回路122、第3マッチング回路123、アンテナアンプ150が配置される板状の誘電体である。基板105は、平面状であっても曲面状であってもよい。基板105は、リジット基板、フレキシブル基板を含む。基板105は、板状の誘電体の一例である。基板105の代わりとして、アンテナ装置100が搭載される車両のガラス(フロントガラス、ルーフガラス、ドアガラス、リアガラス等)が、使用されてもよい。ガラスは、板状の誘電体の一例である。
【0019】
第1アンテナエレメント111は、基板105における所定領域(図2の点線で囲まれた長方形領域)に配置される板状の導体である。導体は、例えば、銅、アルミニウム等の金属である。第1アンテナエレメント111は、第2アンテナエレメント112及び第3アンテナエレメント113と重複しないように、所定領域に配置される。第1アンテナエレメント111は、第1マッチング回路121と配線によって接続される。第1アンテナエレメント111と配線との接続点は、給電点である。第1周波数帯の波長は、車両に搭載されるアンテナ装置100の第1アンテナエレメント111と比べて十分大きい。例えば、1000kHzの電波の波長は300mである。そのため、第1周波数帯の電波に対しては、第1アンテナエレメント111の面積が大きいほど、感度が向上する。アンテナの感度(ゲイン)は、例えば、所定距離離れた位置から送信される所定電力の無線信号を当該アンテナで受信したときの受信信号の電力の大きさで表される。
【0020】
第1マッチング回路121は、第1アンテナエレメント111とアンテナアンプ150との間に配置され、第1周波数帯(AM放送の電波の周波数帯)の電波を受信するように、第1アンテナエレメント111と後段とを整合する回路である。第1マッチング回路121は、例えば、コイルあるいはコンデンサ等を含む電子部品である。
【0021】
第2アンテナエレメント112は、基板105における所定領域(図2の点線で囲まれた長方形領域)に配置される板状の導体である。導体は、例えば、銅、アルミニウム等の金属である。第2アンテナエレメント112は、第1アンテナエレメント111及び第3アンテナエレメント113と重複しないように、所定領域に配置される。第2アンテナエレメント112は、第2マッチング回路122と配線によって接続される。第2アンテナエレメント112と配線との接続点は、給電点である。第2アンテナエレメント112は、メアンダ形状を有する。メアンダ形状は、導体を矩形波状に複数回折り曲げた往復構造を有する形状である。メアンダ形状を採用することで、効率よく電波を受信することができる。メアンダ形状におけるアンテナエレメントのサイズ(アンテナ長、アンテナ幅、折り曲げ回数、折り曲げ部の間隔、導線径等)は、受信する電波の周波数帯に依存して決定される。第2アンテナエレメント112の形状は、メアンダ形状に限定されるものではなく、他の形状であってもよい。
【0022】
第2マッチング回路122は、第2アンテナエレメント112とアンテナアンプ150との間に配置され、第2周波数帯(FM放送の周波数帯)の電波を受信するように、第2アンテナエレメント112と後段とを整合する回路である。また、第2マッチング回路122は、第3周波数帯の信号に対してハイインピーダンスとなるよう設計されている。第2マッチング回路122は、例えば、コイルあるいはコンデンサ等を含む電子部品である。
【0023】
第3アンテナエレメント113は、基板105における所定領域(図2の点線で囲まれた長方形領域)に配置される板状の導体である。導体は、例えば、銅、アルミニウム等の金属である。第3アンテナエレメント113は、第1アンテナエレメント111及び第2アンテナエレメント112と重複しないように、所定領域に配置される。第3アンテナエレメント113は、第3マッチング回路123と配線によって接続される。第3アンテナエレメント113と配線との接続点は、給電点である。第3アンテナエレメント113は、L字形状を有する。L字形状は、導体をL字状に折り曲げた構造を有する形状である。L字形状におけるアンテナエレメントのサイズ(アンテナ長、アンテナ幅等)は、受信する電波の周波数帯に依存して決定される。第3アンテナエレメント113がL字形状であることで、省スペース化に寄与する。第3アンテナエレメント113の形状は、L字形状に限定されるものではなく、他の形状であってもよい。
【0024】
第3マッチング回路123は、第3アンテナエレメント113とアンテナアンプ150との間に配置され、第3周波数帯(DAB放送の周波数帯)の電波を受信するように、第3アンテナエレメント113と後段とを整合する回路である。第3マッチング回路123は、第2周波数帯の信号に対してハイインピーダンスとなるよう設計されている。第3マッチング回路123は、例えば、コイルあるいはコンデンサ等を含む電子部品である。
【0025】
第1マッチング回路121、第2マッチング回路122、第3マッチング回路123は、それぞれ、整合部の一例である。
【0026】
第1アンテナエレメント111の少なくとも一部は、第2アンテナエレメント112のメアンダ形状の往復構造をなす導体部分に挟まれた領域に配置される。これにより、第1アンテナエレメント111が第2アンテナエレメント112との間で容量結合することで、アンテナ装置100は、AM放送の周波数帯域に対して、第1アンテナエレメント111の面積と第2アンテナエレメント112の面積の和の面積の平板アンテナエレメントと同等の感度を得ることができる。
【0027】
アンテナアンプ150は、各アンテナエレメントで受信された信号を増幅して出力する
回路である。アンテナアンプ150は、アンテナエレメント毎に信号を増幅して出力する。アンテナアンプ150は、増幅した信号を、周波数帯毎に受信機に対して出力する。
【0028】
図3は、本実施形態のアンテナ装置の機能ブロックの例を示す図である。アンテナ装置100は、第1アンテナエレメント111、第2アンテナエレメント112、第3アンテナエレメント113、第1マッチング回路121、第2マッチング回路122、第3マッチング回路123、アンテナアンプ150を備える。アンテナアンプ150は、第1周波数帯に対する、入力フィルタ151、第1増幅器152、出力フィルタ153、第2周波数帯に対する、入力フィルタ154、第2増幅器155、出力フィルタ156、第3周波数帯に対する、入力フィルタ157、第3増幅器158、出力フィルタ159を含む。アンテナ装置100からの出力信号は、周波数帯毎に受信機200に入力される。受信機200は、車両の車載器に搭載されるラジオ、テレビなどである。当該ラジオ等は、AM放送、FM放送、DAB放送(DTV放送)を受信できる。車載器は、カーナビゲーションシステム、オーディオ機器等である。
【0029】
入力フィルタ151は、第1マッチング回路121と第1増幅器152との間に配置される。入力フィルタ151は、第1アンテナエレメント111からの信号におけるノイズ等を除去し、処理した信号を、第1増幅器152に対して出力する。
【0030】
第1増幅器152は、入力フィルタ151と出力フィルタ153との間に配置される。第1増幅器152は、入力される入力フィルタ151からの第1周波数帯の信号を増幅し、出力フィルタ153に対して出力する。
【0031】
出力フィルタ153は、第1増幅器152と受信機200との間に配置される。出力フィルタ153は、第1増幅器152からの信号におけるノイズ等を除去し、処理した信号を、受信機200に対して出力する。
【0032】
入力フィルタ154は、第2マッチング回路122と第2増幅器155との間に配置される。入力フィルタ154は、第2アンテナエレメント111からの信号におけるノイズ等を除去し、処理した信号を、第2増幅器155に対して出力する。
【0033】
第2増幅器155は、入力フィルタ154と出力フィルタ156との間に配置される。第2増幅器155は、入力される入力フィルタ154からの第2周波数帯の信号を増幅し、出力フィルタ156に対して出力する。
【0034】
出力フィルタ156は、第2増幅器155と受信機200との間に配置される。出力フィルタ156は、第2増幅器155からの信号におけるノイズ等を除去し、処理した信号を、受信機200に対して出力する。
【0035】
入力フィルタ157は、第3マッチング回路123と第3増幅器158との間に配置される。入力フィルタ157は、第3アンテナエレメント113からの信号におけるノイズ等を除去し、処理した信号を、第3増幅器158に対して出力する。
【0036】
第3増幅器158は、入力フィルタ157と出力フィルタ159との間に配置される。第3増幅器155は、入力される入力フィルタ157からの第3周波数帯の信号を増幅し、出力フィルタ159に対して出力する。
【0037】
出力フィルタ159は、第3増幅器158と受信機200との間に配置される。出力フィルタ159は、第3増幅器158からの信号におけるノイズ等を除去し、処理した信号を、受信機200に対して出力する。
【0038】
図4は、各アンテナエレメントの例を示す図である。図4において、長方形Aは、第1アンテナエレメント111を含む最小の長方形領域である。長方形Aの各辺は、第1アンテナエレメント111の一部と接している。長方形Bは、第2アンテナエレメント112を含む最小の長方形領域である。長方形Bの各辺は、第2アンテナエレメント112の一部と接している。また、長方形Bの内部に、第2アンテナエレメント112のメアンダ形状の往復構造をなす導体部分に挟まれる複数の領域10が存在する。長方形Cは、第3アンテナエレメント113を含む最小の長方形領域である。L字形状の第3アンテナエレメント113の一方の辺の外側と、一方の辺に直交する他方の辺の外側とを2辺とする長方形Cは、L字形状の第3アンテナエレメント113を含む長方形領域のうち最小の長方形領域である。長方形Cの各辺は、第3アンテナエレメント113の一部と接している。また、長方形Cの内部に、第3アンテナエレメント112の導体部分以外の領域20が存在する。
【0039】
長方形Dは、アンテナ装置100の基板105において、第1アンテナエレメント111、第2アンテナエレメント112及び第3アンテナエレメント113が存在する所定領域である。基板105における所定領域では、第1アンテナエレメント111の一部が、第2アンテナエレメント112のメアンダ形状の往復構造をなす導体部分に挟まれる複数の領域10の一部に配置される。また、基板105における所定領域では、第1アンテナエレメント111の一部、第2アンテナエレメント112の一部が、領域20の一部に配置される。そのため、第1アンテナエレメント111、第2アンテナエレメント112及び第3アンテナエレメント113が存在する所定領域(長方形D)の面積は、長方形Aの面積、長方形Bの面積及び長方形Cの面積の和よりも小さい。よって、アンテナ装置100において、第1アンテナエレメント111、第2アンテナエレメント112及び第3アンテナエレメント113を長方形Dのように配置することで、これらのアンテナエレメントを別々に配置するのと比較して、設置面積を小さくすることができる。
【0040】
また、第1アンテナエレメント111と第2アンテナエレメント112とは近接するため、第1周波数帯(AM放送の周波数帯)の電波を受信する際、第1アンテナエレメント111は、第2アンテナエレメント112との間で容量結合する(換言すれば、容量結合させるために、第1アンテナエレメント111と第2アンテナエレメント112とを近接配置させている)。第1アンテナエレメント111は、第2アンテナエレメント112との間で容量結合することで、第1周波数帯(AM放送の周波数帯)でのアンテナ容量が増大し、アンテナの感度が向上する。第1周波数帯では、第1アンテナエレメント111の面積と第2アンテナエレメント112の面積の和の面積の板状アンテナエレメントと同等の感度を得ることができる。
【0041】
また、第2周波数帯(FM放送の周波数帯)の電波を受信する際、第2アンテナエレメント112からの信号が第2周波数帯の信号を増幅する第2増幅器155で増幅される。第2アンテナエレメント112からの信号が分波されずに第2増幅器155に入力されるため、分波ロスが発生せず、感度が向上する。
【0042】
図5は、アンテナ装置の車両への搭載例を示す図である。図5の例では、アンテナ装置100は、車両の後部上方に設置されるスポイラーの内部に設置される。スポイラーは、車両の揚力を抑制する樹脂製の部品である。アンテナ装置100がスポイラー内部に設置されることで、車両の外観デザインを損なうことなく、アンテナ装置100を設置することができる。アンテナ装置100の出力は、所定の同軸ケーブル等を介して、車両内部の受信機200に接続される。アンテナ装置100の設置位置は、スポイラーの内部に限定されるものではない。アンテナ装置100は、樹脂製ボディーの内部、フロントガラス、ルーフガラス、ドアガラス、リアガラス等に設置されてもよい。
【0043】
(実施形態の作用、効果)
アンテナ装置100は、第1周波数帯の第1アンテナエレメント111、第2周波数帯の第2アンテナエレメント112、第3周波数帯の第3アンテナエレメント113を基板105の所定領域内に備える。第1アンテナエレメント111で受信された電波は、第1周波数帯用の第1増幅器152で増幅されて、受信機200に出力される。第2アンテナエレメント112で受信された電波は、第2周波数帯用の第2増幅器155で増幅されて、受信機200に出力される。また、第3アンテナエレメント113で受信された電波は、第3周波数帯用の第3増幅器158で増幅されて、受信機200に出力される。第1アンテナエレメント111及び第2アンテナエレメント112が配置される基板105の所定領域の面積は、第1アンテナエレメント111を含む長方形領域のうち最小の長方形領域の面積と、第2アンテナエレメント112を含む長方形領域のうち最小の長方形領域の面積と、第3アンテナエレメント113を含む長方形領域のうち最小の長方形領域の面積との和よりも小さい。アンテナ装置100によれば、各アンテナエレメントを別々に設置する構成と比較して、アンテナエレメントの設置面積を小さくすることができる。すなわち、アンテナ装置100は基板105における所定領域の限られた面積を有効に活用できるので、アンテナ装置100の大きさを小さくすることができる。これにより、アンテナ装置100は、車両の見栄え、あるいは、車両への搭載性を向上できる。
【0044】
また、アンテナ装置100は、第1周波数帯の電波を受信する際、第1アンテナエレメント111と第2アンテナエレメント112との間で容量結合することで、アンテナの容量を増大する。アンテナ装置100によれば、アンテナの容量が増大することで、第1周波数帯のアンテナの感度が向上する。
【0045】
アンテナ装置100によれば、第1周波数帯の電波と第2周波数帯の電波とを異なるアンテナエレメントで受信して増幅することで、それぞれの周波数帯の電波の分波ロスが発生しないため、アンテナの感度が向上する。
【0046】
アンテナ装置100は、第2マッチング回路122が第3周波数帯の信号に対してハイインピーダンスとなるように設計され、さらに、第3マッチング回路123が第2周波数帯の信号に対してハイインピーダンスとなるように設計されているので、第2アンテナエレメント112と第3アンテナエレメント113とが独立エレメントとして近傍に配置されても、相互干渉を低減することができる。
【0047】
(変形例)
上記の実施形態の変形例について説明する。当該変形例は、上記の実施形態と共通点を有する。ここでは、主として相違点について説明し、共通点については説明を省略する。
【0048】
図6は、本変形例のアンテナ装置の構成例を示す図である。図6のアンテナ装置100は、基板105、第1アンテナエレメント111、第2アンテナエレメント314、第3アンテナエレメント113、第1マッチング回路121、第2マッチング回路122、第3マッチング回路123、アンテナアンプ150を備える。図6の上の図が、変形例のアンテナ装置100の基板105の表面(第1面)で、下の図が変形例のアンテナ装置100の基板105の裏面(第2面)である。図6の下の裏面の図は、図6の上の表面の図を左右反転して裏返ししたものである。表面の「A」の位置の裏側の位置に裏面の「A」が存在し、表面の「B」の位置の裏側の位置に裏面の「B」が存在する。
【0049】
第2アンテナエレメント314は、表面に配置される第1メアンダ形状部314A及び裏面に配置される第2メアンダ形状部314Bを含む。第2アンテナエレメント314は、第1メアンダ形状部314A及び第2メアンダ形状部314Bでダブルメアンダ形状を
有する。基板105の表面は、上記の実施形態の基板105と同様である。基板105の表面の第1メアンダ形状部314Aは、上記の実施形態の第2アンテナエレメント112と同様である。基板105の裏面は、第2メアンダ形状部314Bを備える。第2メアンダ形状部314Bは、メアンダ形状を有するアンテナエレメントである。第2メアンダ形状部314Bは、表面の第1メアンダ形状部314Aの近傍の貫通孔に通した導体、所謂スルーホール導体等より表面の第1メアンダ形状部314Aと電気的に接続される。第1メアンダ形状部314Aと第2メアンダ形状部314Bとの接続部分は給電点となり第2マッチング回路122と接続される。
【0050】
第2メアンダ形状部314Bのアンテナエレメントのサイズ(アンテナ長、アンテナ幅、折り曲げ回数、折り曲げ部の間隔、導線径等)は、第1メアンダ形状部314Aのアンテナエレメントのサイズと異なる。メアンダ形状のアンテナエレメントで受信できる周波数帯は、アンテナエレメントのサイズに依存する。第1メアンダ形状部314Aと第2メアンダ形状部314Bとで、異なるアンテナエレメントのサイズであることで、第2アンテナエレメント314は、第1メアンダ形状部314Aのアンテナエレメントのサイズに基づく周波数帯の電波と、第2メアンダ形状部314Bのアンテナエレメントのサイズに基づく周波数帯の電波とを受信できるようになる。第2アンテナエレメント314は、第2アンテナエレメント112と比較して、広帯域の電波を受信することができる。
【0051】
以上の実施形態、変形例は、可能な限りこれらを組み合わせて実施され得る。
【符号の説明】
【0052】
10: 領域
100: アンテナ装置
105: 基板
111: 第1アンテナエレメント
112: 第2アンテナエレメント
113: 第3アンテナエレメント
121: 第1マッチング回路
122: 第2マッチング回路
123: 第2マッチング回路
150: アンテナアンプ
151: 入力フィルタ
152: 第1増幅器
153: 出力フィルタ
154: 入力フィルタ
155: 第2増幅器
156: 出力フィルタ
157: 入力フィルタ
158: 第3増幅器
159: 出力フィルタ
200: 受信機
314: 第2アンテナエレメント
314A: 第1メアンダ形状部
314B: 第2メアンダ形状部
900: アンテナ装置
905: 基板
911: アンテナエレメント
921: マッチング回路
950: アンテナアンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6