(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】有機性廃水の処理方法及び有機性廃水の処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 3/12 20230101AFI20230216BHJP
【FI】
C02F3/12 B
C02F3/12 A
C02F3/12 H
C02F3/12 F
(21)【出願番号】P 2019131426
(22)【出願日】2019-07-16
【審査請求日】2021-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】葛 甬生
(72)【発明者】
【氏名】楠本 勝子
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-069482(JP,A)
【文献】特開2004-141802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/12
C02F 11/00-11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を含む原水を好気性処理槽内で好気的に処理して好気性処理液を得る好気性処理と、
前記好気性処理液を固液分離して処理水と分離汚泥とを得る固液分離処理と、
前記分離汚泥の一部を第1返送汚泥として引き抜いて前記好気性処理槽へ返送する第1返送処理と、
前記第1返送汚泥を引き抜いた後の前記分離汚泥の少なくとも一部を第2返送汚泥とし、前記第2返送汚泥を分解可能な微小動物を含む汚泥培養槽内に、前記第1返送汚泥の汚泥流量の2~30流量%となる
ように供給し、前記汚泥培養槽内のHRTが前記好気性処理槽のHRTに対して0.15~6倍となるように
溶存酸素濃度1mg/L以上で曝気処理した後に、前記曝気処理後の前記微小動物を含む汚泥培養液を前記好気性処理槽へ返送する第2返送処理と
を含む有機性廃水の処理方法。
【請求項2】
前記好気性処理が、
前記原水を高負荷処理槽内で処理して高負荷処理液を得る高負荷処理と、
前記高負荷処理槽で得られる高負荷処理液を低負荷処理槽において前記高負荷処理槽の負荷条件よりも低い負荷条件で処理する低負荷処理と
を少なくとも含み、
前記第1返送処理が、
前記第1返送汚泥を少なくとも前記低負荷処理槽へ返送することを含み、
前記第2返送処理が、
前記第2返送汚泥を前記低負荷処理槽へ返送するとともに、前記汚泥培養槽のHRTが前記低負荷処理槽のHRTに対して0.15~6倍となるように、溶存酸素濃度(DO)1mg/L以上、水温20℃以上で曝気処理することを含む請求項1に記載の有機性廃水の処理方法。
【請求項3】
前記汚泥培養槽を2段以上直列に配置することを含む請求項1または2に記載の有機性廃水の処理方法。
【請求項4】
前記第1返送汚泥に対する前記第2返送汚泥の流量比を測定することと、
前記流量比が30流量%を超える場合に前記第2返送汚泥の流量を低減させ、前記流量比が2流量%を下回る場合に前記第2返送汚泥の流量を増加させるように調整することを含む請求項1~3のいずれか1項に記載の有機性廃水の処理方法。
【請求項5】
前記好気性処理槽内及び前記汚泥培養液の少なくともいずれかに担体を添加することを含む請求項1~4のいずれか1項に記載の有機性廃水の処理方法。
【請求項6】
有機物を含む原水を好気的に処理して好気性処理液を得る好気性処理槽と、
前記好気性処理液を固液分離して処理水と分離汚泥とを得る固液分離槽と、
前記分離汚泥の一部を第1返送汚泥として引き抜いて前記好気性処理槽へ返送する第1返送手段と、
前記分離汚泥を分解可能な微小動物を含み、第1返送汚泥を引き抜いた後の前記分離汚泥の少なくとも一部を第2返送汚泥とし、前記第1返送汚泥の汚泥流量の2~30流量%となる
ように供給して汚泥培養槽内のHRTが前記好気性処理槽のHRTに対して0.15~6倍となるように
溶存酸素濃度1mg/L以上で曝気処理する汚泥培養槽と、
前記曝気処理後の前記微小動物を含む汚泥培養液を前記汚泥培養槽から前記好気性処理槽へ返送する第2返送手段と
を備える有機性廃水の処理装置。
【請求項7】
前記原水の流量を測定する原水測定手段と、
前記第1返送汚泥の流量を測定する第1返送汚泥測定手段と、
前記第2返送汚泥の流量を測定する第2返送汚泥測定手段と、
少なくとも前記原水の流量変動が生じた場合に、前記第1返送汚泥に対する前記第2返送汚泥の流量比を測定し、前記流量比が30流量%を超える場合に前記第2返送汚泥の流量を低減させ、前記流量比が2流量%を下回る場合に前記第2返送汚泥の流量を増加させるように制御する制御手段と
を備える請求項6に記載の有機性廃水の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性廃水の処理方法及び有機性廃水の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生物化学的酸素要求量(BOD)の高い有機性廃水処理としては一般的に活性汚泥処理が用いられる場合が多い。活性汚泥処理は維持管理が容易でありランニングコストが低い。活性汚泥処理は流入原水中のBODの安定除去が可能であり、常時良好な処理水質が得られる等の利点もある。そのため、活性汚泥処理は生活廃水、工場廃水等の種々の有機性廃水処理に多く用いられている。
【0003】
しかしながら、活性汚泥処理ではBOD除去に伴う余剰汚泥が発生することが知られている。特にBOD濃度の高い排水は余剰汚泥の発生量も多くなるため、余剰汚泥の処分に伴うコストの処理全体に占める比率が高くなってきており、余剰汚泥の削減が大きな課題となってきている。
【0004】
余剰汚泥の削減方法としては、高負荷及び低負荷を組み合わせた多段処理を行う方法がある。例えば、前段の高負荷槽となる第1生物処理槽で分散菌を発生させ、後段の低負荷槽となる第2生物処理槽で原生動物や後生動物の分散菌の捕食を利用して汚泥減容を行う食物連鎖による汚泥減容化方法が開示されている(特開2010-69482号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載される生物処理方法には、処理効率向上と余剰汚泥の発生量の低減を図るために第1生物処理槽と第2生物処理槽のBOD負荷及びpHを所定の範囲内に制御する必要があることが記載されている。この点、原水の性状が比較的安定している場合には、各生物処理槽のBOD負荷及びpHを制御することは比較的容易である。
【0007】
しかしながら、何らかの原因により原水に大きな濃度変動が生じると、生物処理槽のBOD負荷及びpHを制御することが難しくなり、第1の生物処理槽での分散菌の発生が不安定となる場合がある。その結果、分散菌捕食による食物連鎖の汚泥減容化の効果が十分に得られなくなる。また、原水の性状変動により、第1の生物処理槽で分散菌が発生しすぎて、第2の生物処理槽に分散菌が残留すると、処理水質の悪化を招くリスクがある。特許文献1には、第1、第2生物処理槽へ汚泥を返送することについても一応記載があるが、汚泥の返送比率及びいずれの生物処理槽に汚泥を返送するかについては適宜設定できるとの記載があるだけで具体的な提案はなく、原水の性状変動を考慮した設計もなされていない。
【0008】
上記課題を鑑み、本発明は、原水の性状変動が生じても常時安定した処理水質を維持でき、余剰汚泥の発生量の低減が可能な有機性廃水の処理方法及び有機性廃水の処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討した結果、原水の性状変動に大きく影響を受けることなく常時安定した処理水質を維持しながら余剰汚泥の発生量を低減するためには、好気性処理槽内に流入する原水中の有機物を分解する細菌と、この細菌を捕食する微生物とをバランス良く共存させることが重要であり、そのためには、余剰汚泥を処理して好気性処理槽へと返送する汚泥培養槽の処理条件を、好気性処理槽の処理条件との関係において、一定の関係を有するように制御することが有効であることを見出した。
【0010】
以上の知見を基礎として完成した本発明の実施の形態に係る有機性廃水の処理方法は一側面において、有機物を含む原水を好気性処理槽内で好気的に処理して好気性処理液を得る好気性処理と、好気性処理液を固液分離して処理水と分離汚泥とを得る固液分離処理と、分離汚泥の一部を第1返送汚泥として引き抜いて好気性処理槽へ返送する第1返送処理と、第1返送汚泥を引き抜いた後の分離汚泥の少なくとも一部を第2返送汚泥とし、第2返送汚泥を分解可能な微小動物を含む汚泥培養槽内に、第1返送汚泥の汚泥流量の2~30流量%となる第2返送汚泥を供給し、汚泥培養槽内の水理学的滞留時間(HRT)が好気性処理槽のHRTに対して0.15~6倍となるように曝気処理した後に、曝気処理後の微小動物を含む汚泥培養液を好気性処理槽へ返送する第2返送処理とを含む。
【0011】
本発明の実施の形態に係る有機性廃水の処理方法は一実施態様において、好気性処理が、原水を高負荷処理槽内で処理して高負荷処理液を得る高負荷処理と、高負荷処理槽で得られる高負荷処理液を低負荷処理槽において高負荷処理槽の負荷条件よりも低い負荷条件で処理する低負荷処理とを少なくとも含み、第1返送処理が、第1返送汚泥を少なくとも低負荷処理槽へ返送することを含み、第2返送処理が、第2返送汚泥を低負荷処理槽へ返送するとともに、汚泥培養槽のHRTが低負荷処理槽のHRTに対して0.15~6倍となるように、溶存酸素濃度(DO)1mg/L以上、水温20℃以上で曝気処理することを含む。
【0012】
本発明の実施の形態に係る有機性廃水の処理方法は別の一実施態様において、汚泥培養槽を2段以上直列に配置することを含む。
【0013】
本発明の実施の形態に係る有機性廃水の処理方法は更に別の一実施態様において、第1返送汚泥に対する第2返送汚泥の流量比を測定することと、流量比が30流量%を超える場合に第2返送汚泥の流量を低減させ、流量比が2流量%を下回る場合に第2返送汚泥の流量を増加させるように調整することを含む。
【0014】
本発明の実施の形態に係る有機性廃水の処理方法は更に別の一実施態様において、好気性処理槽内及び汚泥培養液の少なくともいずれかに担体を添加することを含む。
【0015】
本発明の実施の形態に係る有機性廃水の処理装置は一側面において、有機物を含む原水を好気的に処理して好気性処理液を得る好気性処理槽と、好気性処理液を固液分離して処理水と分離汚泥とを得る固液分離槽と、分離汚泥の一部を第1返送汚泥として引き抜いて好気性処理槽へ返送する第1返送手段と、分離汚泥を分解可能な微小動物を含み、第1返送汚泥を引き抜いた後の分離汚泥の少なくとも一部を第2返送汚泥とし、第1返送汚泥の汚泥流量の2~30流量%となる第2返送汚泥を供給して汚泥培養槽内のHRTが好気性処理槽のHRTに対して0.15~6倍となるように曝気処理する汚泥培養槽と、曝気処理後の微小動物を含む汚泥培養液を汚泥培養槽から好気性処理槽へ返送する第2返送手段とを備える。
【0016】
本発明の実施の形態に係る有機性廃水の処理装置は一実施態様において、原水の流量を測定する原水測定手段と、第1返送汚泥の流量を測定する第1返送汚泥測定手段と、第2返送汚泥の流量を測定する第2返送汚泥測定手段と、少なくとも原水の流量変動が生じた場合に、第1返送汚泥に対する第2返送汚泥の流量比を測定し、流量比が30流量%を超える場合に第2返送汚泥の流量を低減させ、流量比が2流量%を下回る場合に第2返送汚泥の流量を増加させるように制御する制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、原水の性状変動が生じても常時安定した処理水質を維持でき、余剰汚泥の発生量の低減が可能な有機性廃水の処理方法及び有機性廃水の処理装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施の形態に係る有機性廃水の処理フローを表す概略図である。
【
図2】第2の実施の形態に係る有機性廃水の処理フローを表す概略図である。
【
図3】第3の実施の形態に係る有機性廃水の処理フローを表す概略図である。
【
図4】汚泥培養槽の処理条件を変更する際の処理フローを表すフローチャートである。
【
図5】従来の有機性廃水の処理フローを表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであってこの発明の技術的思想は構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。
【0020】
(第1の実施の形態)
本発明の実施の形態に係る有機性廃水の処理装置は、
図1に示すように、原水を好気的に処理して好気性処理液を得る好気性処理槽1と、好気性処理液を固液分離して処理水と分離汚泥とを得る固液分離槽2と、分離汚泥の一部を第1返送汚泥として引き抜いて好気性処理槽へ返送する第1返送手段3と、第1返送汚泥を引き抜いた後の分離汚泥の少なくとも一部を第2返送汚泥とし、第2返送汚泥を供給して曝気処理する汚泥培養槽4と、曝気処理後の微小動物を含む汚泥培養液を汚泥培養槽4から好気性処理槽1へ返送する第2返送手段5とを備える。
【0021】
原水としては、生活廃水、下水、食品工場、化学工場、パルプ工場などの有機物を含有する種々の有機性廃水が用いられる。好気性処理槽1としては、好気性処理槽内に流入する原水中の有機物(BOD)を分解可能な細菌、細菌を捕食する微生物等を含む活性汚泥が内部に収容され、曝気により原水を好適に処理して好気性処理液を得る装置であれば特に限定されないが、例えば、曝気槽が利用できる。原水の処理効率を向上させるために複数の好気性処理槽1を直列又は並列にして多段処理を行ってもよい。
【0022】
好気性処理槽1で処理された好気性処理液は、固液分離槽2へ供給され、固液分離槽2内において、処理水と分離汚泥とに分離される。分離汚泥の一部は、第一返送汚泥として、配管等で構成された第1返送手段3を介して好気性処理槽1へ返送される。第2返送手段5は、第1返送汚泥が引き抜かれた後の残りの余剰汚泥のうち、第1返送汚泥に対して予め設定された汚泥量を第2返送汚泥として汚泥培養槽へ供給する。分離汚泥の残部は余剰汚泥として系外へ排出される。
【0023】
汚泥培養槽4は、固液分離槽2で分離された分離汚泥を分解可能なアブラミミズ等の微小動物を含み、第1返送汚泥の汚泥流量の2~30流量%となる第2返送汚泥を供給して汚泥培養槽4内のHRTが好気性処理槽1のHRTに対して0.15~6倍となるように曝気処理する処理槽である。汚泥培養槽4内に収容されたアブラミミズ等の微小動物が第2返送汚泥を捕食することにより、余剰汚泥の発生量が著しく減少する。
【0024】
汚泥培養槽4では、アブラミミズ等の微小動物を増殖させるのに重要な水温、DO、HRTの諸条件を適切に維持することが極めて重要である。特に、原水の濃度、水温、流量等の変動を考慮した有機性廃水の処理を行うためには、汚泥培養処理液の返送先である好気性処理槽1との処理条件との関係において一定の条件を満たすように汚泥培養槽4の処理条件を調節することが重要である。
【0025】
汚泥培養槽4の役割としては、汚泥培養槽4で増殖させた微小動物によって汚泥培養槽4内の汚泥を捕食させて汚泥減容化を図ることにある。しかしながら、それ以上に、汚泥培養槽4で増殖させた微小動物を、有機物分解除去の主たる反応槽である好気性処理槽1に送り込んで、送り込んだ先の好気性処理槽1で汚泥を捕食させて余剰汚泥の増殖を抑制することもまた、常時安定した処理水質を維持でき、且つ余剰汚泥の発生量の低減可能とする点において特に重要である。
【0026】
その際、汚泥培養槽4のHRTが好気性処理槽1のHRTに対して過少となり、特にその比が0.15を下回る場合には、汚泥培養槽4内での処理が不足しすぎて、汚泥培養槽4において微小動物が十分増殖しない場合がある。また、たとえ汚泥培養槽4単独のHRTが十分であったとしても、好気性処理槽1のHRTが長すぎると、汚泥培養槽4から送り込んだ微小動物が、好気性処理槽1における他の微生物によって淘汰されてしまい、系全体として一定の微生物量を維持することが困難となる。
【0027】
一方で、汚泥培養槽4のHRTが好気性処理槽1のHRTに対して過大となり、特にその比が6を超えると、汚泥培養槽4の容積が増大し、設備コストの増大につながる。更にこの場合、処理系内微生物量の比率が高くなり、処理水質の不安定化を招く要因となる。
【0028】
汚泥培養槽4単独でみた場合の槽容量及びHRTが適正であったとしても、好気性処理槽1のHRTが短すぎると、汚泥培養槽4から送り込んだ微小動物が好気性処理槽1でも過剰に維持されてしまう。微小動物が多いと一見、汚泥減容が進んで良いように思われがちであるが、微小動物が多すぎると本来の水処理に必要な量の微生物まで捕食されてしまい、好気性処理槽1の微生物バランスが崩れて処理水質が悪化してしまう。即ち、汚泥培養槽4の処理条件を、好気性処理槽1の処理条件とのバランスにおいて適正に決定することが極めて重要であるといえる。
【0029】
このようなHRTのバランスを考慮した上で汚泥培養槽4に供給する第2返送汚泥の汚泥量(汚泥流量)と第1返送汚泥の汚泥量(汚泥流量)とのバランスを考慮することもまた重要である。第2返送汚泥の汚泥流量が第1返送汚泥に対して少なすぎて、特に、第1汚泥の汚泥流量の2流量%を下回ってしまうと、系全体の汚泥が汚泥培養槽4を通過する割合が低すぎて、余剰汚泥の低減効果が得られる十分な微小動物を汚泥培養槽4内に維持することができない場合がある。
【0030】
一方で、第2返送汚泥の汚泥流量が第1返送汚泥の汚泥流量に対して多すぎる、特に、30流量%を上回ってしまうと、系全体の微小動物の割合が多くなりすぎ、その結果、水処理に必要な細菌及び微生物が減ってしまい、処理水質を良好に維持できない場合がある。また、第2返送汚泥の汚泥流量が高すぎると、汚泥培養槽4のHRTを適切に維持するためには容積を大きくせざるを得ず、装置のコスト高につながってしまう。
【0031】
本実施形態では、好気性処理槽1のHRTに対する汚泥培養槽4内のHRTの比(汚泥培養槽HRT/好気性処理槽HRT)は、0.3~6倍となるように調整することがより好ましく、更に好ましくは0.3~3倍である。第2返送汚泥は、汚泥培養槽HRT/好気性処理槽HRTが0.15~3倍の場合に、第1の返送汚泥の汚泥流量に対して3~30流量%程度、より好ましくは4~15流量%程度、汚泥培養槽4へ返送することが好ましい。汚泥培養槽HRT/好気性処理槽HRTが3倍を超えて6倍以下の場合には、第1の返送汚泥の汚泥流量に対して2~10流量%程度、汚泥培養槽4へ返送することが好ましい。このように汚泥培養槽4と好気性処理槽1の処理条件を調整することで、汚泥培養槽4内に収容されるアブラミミズ等の微小動物の安定増殖が可能となる。
【0032】
汚泥培養槽4へ供給される第2返送汚泥は、浮遊物質(MLSS)濃度が高いほど、供給する汚泥容量を少なくでき、汚泥培養槽4の容量をコンパクト化しながら必要なHRTを確保することができ、高い汚泥減容効果が得られる。第2返送汚泥のMLSSは、6000mg/L以上であることが好ましく、更に好ましくは8000~15000mg/L以上である。
【0033】
汚泥培養槽4内でアブラミミズ等の微小動物を好気性処理槽1の返送に際してより安定的かつ確実に増殖させるためには、溶存酸素濃度(DO)を1mg/L以上とすることが好ましく、より好ましくは2~5mg/Lである。DOが高いほどアブラミミズ等の微小動物が増殖しやすく、活性汚泥を十分に捕食し、高い汚泥減容効果が得られる。
【0034】
DO値は、好気性処理槽1の運転条件として調整してもよいが、汚泥培養槽4では好気性処理槽1よりも更にDOを厳密に制御することで、より好ましい微小動物の増殖効果及び高い汚泥減容効果が得られる。そのため、好気性処理槽1でDO調整をするか否かにかかわらず、DO制御装置等を用いて汚泥培養槽4のDO調整をすることが好ましい。
【0035】
汚泥培養槽4の水温は20℃以上とすることが好ましく、より好ましくは20~35℃である。汚泥培養槽4の水温が高いほどアブラミミズ等の微小動物が増殖しやすく、微小動物が活性汚泥を十分に捕食できるため汚泥減容効果も高くなる。処理水温域は、好気性処理槽1の運転条件として調整してもよいが、汚泥培養槽4の水温域を調整する方が、より高い微小動物の増殖効果及び汚泥減容効果が得られる。例えば、汚泥培養槽4に水温制御装置を配置して、水温を20℃以上となるように制御することが好ましい。
【0036】
汚泥培養槽4には少量の原水を流入させてもよいが、但し、原水中の未分解の有機物が汚泥培養槽4に残留すると微小動物の増殖に影響する場合があるため、原水を汚泥培養槽4中に流入させる場合には、流入原水量を厳密に制御する必要がある。汚泥培養槽4と好気性処理槽1のDO、水温、HRTが適切な範囲で制御されていたとしても、原水を流入させる汚泥培養槽4の方が、汚泥培養槽4には原水を流入させない場合に比べて微小動物の増殖効果と汚泥減容効果の両者のバランスをとることが難しくなるためである。
【0037】
汚泥培養槽4は、2段以上直列に配置することが好ましい。汚泥培養槽4を2段以上直列に配置した場合、第2返送汚泥中に未分解の有機物が残留していても、前段の汚泥培養槽4で分解されることから、後段の汚泥培養槽4がアブラミミズ等の微小動物にとって好ましい増殖環境となる。これにより、微小動物をより安定して増殖でき、これにより余剰汚泥の系外への排出量を少なくしながらより効率の良い処理を行うことができる。
【0038】
汚泥培養槽4の汚泥はなるべく有機物が残存しない環境におく方が微小動物の増殖及び活性化に有利であるため、第2返送汚泥の返送の際には、好気性処理槽1のうち、比較的BODの残留が少ない下流側部分に流入させることが好ましい。即ち、汚泥培養槽4から好気性処理槽1へと供給される第2返送汚泥は、第1返送汚泥の返送位置よりも下流の位置となるように返送位置が定められることが好ましい。好気性処理槽1が一槽の場合は、第2返送汚泥は好気性処理槽1の処理後半部に流入させることが好ましい。好気性処理槽1が多段の場合は、汚泥培養槽4からの第2返送汚泥の少なくとも一部を2段目以降の好気性処理槽1に流入させることが好ましい。
【0039】
好気性処理槽1は活性汚泥方式を採用することが可能であるが、微生物担体を投入した流動担体方式としても同様な汚泥減容効果が得られる。
【0040】
微生物担体として、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド、光硬化性樹脂等の合成高分子、カラギーナン、アルギン酸ソーダ等の高分子を用いたゲル担体、ポリエチレンやポリウレタン、ポリポロピレン等からなる流動担体が挙げられる。
【0041】
担体の形状としては球形、四角形、円筒形の何れも使用可能であり、その有効径は好気性処理槽1の出口に設けられるスクリーンより安定して分離できる3~10mmが好ましい。担体比重は曝気状態において均一に流動可能となる1.01~1.05であるものが好ましい。また、担体充填量は生物反応槽に対し、均一に混合流動可能となる、5~30V/V%、好ましくは10~20V/V%とすることが効果的である。
【0042】
(処理方法)
第1の実施の形態に係る有機性廃水の処理方法は、まず、原水を好気性処理槽1内へ供給し、好気性処理槽1において原水を好気的に処理する。好気性処理槽1では、以下に限定されないが、例えば、HRTが0.5~1.5日、DOが1.0~4.0mg/L、MLSS2500~5000として原水を好気的に処理して好気性処理液を得る。好気性処理液は、固液分離により処理水と分離汚泥とに分離する。
【0043】
余剰汚泥の一部は第1返送汚泥として好気性処理槽1へ返送する。汚泥培養槽4には、第1返送汚泥の汚泥流量に対して2~30流量%となる第2返送汚泥を供給する。汚泥培養槽4では典型的にはDOが1mg/L以上、HRTが好気性処理槽1のHRTに対して0.15~6倍となるように曝気処理が行われて、曝気処理後の微小動物を含む汚泥培養液が汚泥培養槽4から好気性処理槽1へと送られる。
【0044】
本発明の第1の実施の形態に係る有機性廃水の処理装置及び処理方法によれば、第2返送汚泥を分解可能な微小動物を含む汚泥培養槽4内に、第1返送汚泥の汚泥流量の2~30流量%となる第2返送汚泥を供給し、汚泥培養槽4内のHRTが好気性処理槽1のHRTに対して0.15~6倍となるように曝気処理した後に、曝気処理後の微小動物を含む汚泥培養液を好気性処理槽1へ返送する第2返送処理を行う。これにより、BODを除去する活性汚泥と活性汚泥を捕食する微小動物を一定量、かつ、それぞれが活性の高い状態で好気性処理槽1内に維持することができる。また、BODを除去する活性汚泥が常に一定量、高活性で好気性処理槽1内に維持されるため、原水の流量・濃度変動によってBOD負荷が変動しても安定した好気性処理が可能である。BODの除去量によって余剰汚泥の発生量も変動するが、本発明の第1の実施の形態に係る有機性廃水の処理装置及び処理方法によれば、活性汚泥を捕食する微小動物も一定量、高活性で維持されているため、原水の流量・濃度変動によって余剰汚泥の発生量が変動しても安定した汚泥減容が可能となる。その結果、原水の性状変動が生じても好気性処理槽1内における処理を安定化することができ、常時安定した処理水質を維持しながら余剰汚泥の発生量の低減が可能となる。
【0045】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係る有機性廃水の処理装置は、
図2に示すように、好気性処理を行う処理槽として原水を高負荷処理槽内で処理して高負荷処理液を得る高負荷処理槽1aと、高負荷処理槽1aで得られる高負荷処理液を高負荷処理槽1aの負荷条件よりも低い負荷条件で処理する低負荷処理槽1bとを含む。
【0046】
第1返送手段3は、第1の返送汚泥を少なくとも低負荷処理槽1bへ返送する。第1返送手段3は、第1の返送汚泥を必要に応じて更に高負荷処理槽1aへ返送してもよい。第2返送手段5は、第2返送汚泥を低負荷処理槽1bへ返送する。汚泥培養槽4内のHRTは、低負荷処理槽1bのHRTに対して0.15~6倍となるように調整され、汚泥培養槽4は、溶存酸素量(DO)1mg/L以上、水温20℃以上で曝気処理される。他は第1の実施の形態に係る有機性廃水の処理装置と同様であるので記載を省略する。
【0047】
高負荷処理槽1aでは、原水中のBOD(有機成分)の約50%以上を酸化分解するための処理が行われ、高負荷処理液が得られる。例えば、高負荷処理槽1aのBOD負荷条件を、1~10kg-BOD/m3/dとし、より具体的には3.0~8.0kg-BOD/m3/d、更に具体的には3.0~5.0kg-BOD/m3/dとする。高負荷処理槽1aでは、活性汚泥の共存下で、DO1.0mg/L以上で曝気処理することにより、原水中のBODが酸化除去される。高負荷処理槽1a内に第1の実施の形態で説明した微生物担体を収容してもよい。
【0048】
低負荷処理槽1b内には高負荷処理槽1aで処理された高負荷処理液が供給され、アブラミミズ等の微小動物の捕食により高負荷処理液中の汚泥を減容化処理するとともに高負荷処理液中のT-N(全窒素)を除去することを目的とした処理が行われる。例えば、低負荷処理槽1bのBOD負荷条件を、0.05~1.5kg-BOD/m3/dとし、より具体的には0.1~1.2kg-BOD/m3/d、更に具体的には0.1~1.0kg-BOD/m3/dとする。低負荷処理槽1b内においても第1の実施の形態で説明した微生物担体を収容してもよい。
【0049】
(処理方法)
第2の実施の形態に係る有機性廃水の処理方法は、まず、原水を高負荷処理槽1aへ供給し、高負荷処理槽1a内において例えばBOD負荷条件2~20kg-BOD/m3/d、HRT0.1~1.0日、MLSS500~2000mg/Lで処理を行って、高負荷処理液を得る。この高負荷処理液を、低負荷処理槽1b内で例えばBOD負荷条件1~5kg-BOD/m3/d、HRT0.2~2.0日、MLSS2000~10000mg/Lで処理を行って低負荷処理液を得る。低負荷処理液は固液分離槽2内で固液分離されて処理水と分離汚泥が得られる。
【0050】
分離汚泥の一部は第1返送汚泥として低負荷処理槽1b及び/又は高負荷処理槽1aへ供給される。汚泥培養槽4内には、第1返送汚泥の汚泥流量に対して2~30流量%となる第2返送汚泥が供給される。汚泥培養槽4では、典型的にはDOが1mg/L以上、HRTが低負荷処理槽1bのHRTに対して0.15~6倍となるように曝気処理が行われて、汚泥培養液が得られる。汚泥培養液は低負荷処理槽1bへ返送される。
【0051】
第2の実施の形態に係る有機性廃水の処理装置によれば、好気性処理を高負荷処理槽1aと低負荷処理槽1bとで多段に処理することによって、有機性廃水の処理をより安定的に行うことができる。
【0052】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係る有機性廃水の処理装置は、
図3に示すように、原水の流量及び濃度の少なくともいずれか測定する原水測定手段51と、第1返送汚泥の流量を測定する第1返送汚泥測定手段53と、第2返送汚泥の流量を測定する第2返送汚泥測定手段54と、制御手段6とを備える点が、
図2に示す処理装置と異なる。他は第2の実施の形態に係る有機性廃水の処理装置と同様であるので記載を省略する。
【0053】
原水測定手段51としては、一般的に利用可能な流量計、MLSS計等が利用可能である。原水測定手段51により、原水の流量及び原水中の有機物の濃度の変動を測定することが可能である。原水測定手段51は制御手段6に電気的に接続されており、測定結果が制御手段6へ送られるようになっている。
【0054】
第1返送汚泥測定手段53及び第2返送汚泥測定手段54としては汚泥流量を測定するための流量計等が利用可能である。第1返送汚泥測定手段53及び第2返送汚泥測定手段54は制御手段6に電気的に接続されており、測定結果が制御手段6へ送られるようになっている。低負荷処理槽1bには、槽内のMLSS濃度等を測定するためのMLSS計などの測定手段52が配置されていてもよい。測定手段52で測定された低負荷処理槽1b内のMLSS濃度に基づいて、第1返送汚泥の汚泥流量が最適化されてもよい。
【0055】
制御手段6は、原水測定手段51の測定結果に基づいて、少なくとも原水の流量の変動が生じた場合に、第1返送汚泥に対する第2返送汚泥の流量比を測定し、第1返送汚泥に対する第2返送汚泥の流量比が2~30流量%の範囲となるように第2返送汚泥の汚泥流量を制御するように構成されている。
【0056】
例えば、原水の流量の測定結果が予め設定された閾値を超える場合に、制御手段6が、原水の流量「変動」が生じたと判断し、第1返送汚泥に対する第2返送汚泥の流量比を測定するようにしてもよい。その結果、流量比が30流量%を超える場合に、制御手段6は第2返送汚泥の流量を低減させ、流量比が2流量%を下回る場合に制御手段6は第2返送汚泥の流量を増加させるように、第2返送汚泥の汚泥流量を制御することが好ましい。これにより、原水の性状変動が生じても常時安定した処理水質を維持でき、余剰汚泥の発生量の減容化も図れる。
【0057】
本発明の第3の実施の形態に係る有機性廃水の処理方法における処理フローを
図4のフローチャートを用いて説明する。原水が
図3の高負荷処理槽1a、低負荷処理槽1b、固液分離槽2へと供給されて処理水と分離汚泥が生成される間、ステップS1において、制御手段6は、原水測定手段51により測定された測定結果と、第1返送汚泥測定手段53により測定された第1返送汚泥の汚泥流量を測定する。
【0058】
ステップS2において、制御手段6が、好気性処理槽1(
図3の場合では低負荷処理槽1b)のHRTを算出する。ステップS3において、制御手段6が、汚泥培養槽4へ供給する第1返送汚泥に対する第2返送汚泥の汚泥流量を算出する。なお第1返送汚泥の流量はここでは一定とすることができる。ステップS4において、制御手段6が、第2返送汚泥流量/第1返送汚泥流量で表される流量比R1を算出する。ステップS5において、制御手段6は、流量比R1が2~30流量%の範囲に収まるか否かを判断する。ステップS6において、流量比R1が2~30流量%の範囲外である場合は、ステップS3に戻り、第2返送汚泥の汚泥流量を再設定を行った後、ステップS4~S6を繰り返す。ステップS6において、流量比R1が2~30%の範囲内である場合は、設定が完了する。
【0059】
ステップS3において、第2返送汚泥の汚泥流量が設定された後は、更にステップS8へも進み、制御手段6が、汚泥培養槽HRT/好気性処理槽HRT(
図3の場合は汚泥培養槽HRT/低負荷処理槽HRT)で表される比率R2を算出する。ステップS9において、比率R2が0.15~6.0倍の範囲内となるか否かを判断する。ステップS9においてR2が0.15~6.0倍の範囲内に無い場合は、ステップS3に戻り、第2返送汚泥の汚泥流量を再設定する。ステップS9において、比率R2が0.15~6.0倍の範囲内にある場合には、ステップS10へ進み、設定が完了する。
【0060】
第3の実施の形態に係る有機性廃水の処理装置及び処理方法によれば、制御手段6が、原水の性状変動に応じてより好適な処理条件を調整することができるため、原水の性状変動が比較的大きな場合であっても、原水の性状に応じた最適な処理条件に早期に追従させることが可能となる。
【実施例】
【0061】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
【0062】
有機物(BOD)濃度が500mg/Lの有機性廃水を原水とし、
図1に示す有機性廃水の処理装置を使用して、表1に示す基本処理条件で廃水処理を行った。即ち、実施例1では、原水の供給流量を50L/dとし、好気性処理槽においてはBOD-SS負荷を0.30kg/kg/d、MLSS濃度4000mg/L、DO3.0mg/Lとなる条件で好気的に処理を行った後、固液分離槽にて固液分離を行い、得られた分離汚泥の一部を第1返送汚泥として50L/dで好気性処理槽へ返送した。実施例1では、表1に示すように、汚泥培養槽のHRT比が好気性処理槽に対して0.15倍となるように、且つ第2返送汚泥の第1返送汚泥に対する流量比(第2返送汚泥流量/第1返送汚泥流量)が10流量%となるように、第2返送汚泥の汚泥流量を調整して汚泥培養槽へ第2返送汚泥を供給し、処理後の汚泥培養液を好気性処理槽1へ返送した。第1返送汚泥及び第2返送汚泥のMLSSは8000mg/Lであった。
【0063】
実施例2では、
図1の処理装置において、汚泥培養槽のHRT比が6.0倍となるように、且つ第2返送汚泥の第1返送汚泥に対する流量比(第2返送汚泥流量/第1返送汚泥流量)が2流量%となるようにし、実施例3では、
図1の処理装置において汚泥培養槽のHRT比が0.4となるように、且つ第2返送汚泥の第1返送汚泥に対する流量比(第2返送汚泥流量/第1返送汚泥流量)が30%となるように、第2返送汚泥の汚泥流量を調整して汚泥培養槽へ第2返送汚泥を供給し、処理後の汚泥培養液を好気性処理槽1へ返送した以外は、それぞれ実施例1と同様の処理とした。
【0064】
実施例4では、
図2の処理装置を用いて、容量が5Lの高負荷処理槽と容量が16Lの低負荷処理槽を使用し、高負荷処理槽のBOD-SS負荷を5.0kg/kg/dとし、全体のBOD-SS負荷が0.30kg/kg/dとなるように低負荷処理槽のBOD-SS負荷を調整して処理を行い、汚泥培養槽のHRT比及び第2返送汚泥の流量比を表2に示す条件とするとともに、更に高負荷処理槽に5L/dの返送汚泥を返送した。
【0065】
比較例1は汚泥培養槽を設置しない
図5の従来の処理フローに基づいて処理を行った。比較例2~5は
図1に示す処理装置を用いて、表1及び表2に示す条件で廃水処理を行ったものである。
【0066】
表2中の「微小動物出現頻度」は、好気性処理槽又は低負荷処理槽の入口側から供給される汚泥を一定量サンプリングして顕微鏡で観察した結果、微小動物が適正な場合を◎、〇、×で段階付けした結果を表す。処理水質についてはBOD及びCODMnを測定した結果最も良好なものから順に◎、〇、×で差異をつけた結果を表す。汚泥削減効果は系外へ排出される汚泥流量(L/d)及び汚泥濃度より算出した汚泥量(g/d)を評価した結果、余剰汚泥の発生量が最も少ないものから順に◎、〇、×をつけた結果を示す。総合評価は、微小動物出現頻度、処理水質、汚泥減容効果の各効果を総合的に勘案した評価結果である。
【0067】
【0068】
【0069】
比較例1は汚泥培養槽を有しない従来の活性汚泥処理方式であったため、余剰汚泥削減に寄与する微小動物が殆ど見られず、汚泥削減効果がほぼ無かった。比較例2~4は汚泥培養槽を有するものの、第2返送汚泥の第1返送汚泥に対する汚泥流量の流量比が2~30%、且つ、汚泥培養槽の好気性処理槽に対するHRT比が0.15~6倍を外れた結果、活性汚泥系内にとってバランスの良い微小動物の維持が出来ず、良好な汚泥減容化効果、もしくは安定した処理水質を得ることが出来なかった。
【0070】
実施例1~4は第2返送汚泥の第1返送汚泥に対する汚泥流量の流量比が2~30%、汚泥培養槽の好気性処理槽に対するHRT比が0.15~6倍の好適な範囲に調整された結果を示す。実施例1~4では、系内の微小動物、とくに低負荷処理槽内において適切な量が維持されたことから、汚泥減容効果を良好な処理水質が安定して得られた。特に実施例4では、高負荷処理槽へ第1返送汚泥の一部(5L/d)を更に返送することで、高負荷処理槽のBOD-SS負荷が低下し、低負荷処理槽へ流入する溶解性BOD(S-BOD)が大きく低下し、より良好な処理水質が得られることが分かった。
【0071】
このように、本発明の実施の形態に係る有機性廃水の処理装置及び処理方法によれば、有機性廃水を好気的に処理する好気性処理槽、または高負荷処理槽と低負荷槽処理より構成する2槽式生物反応槽において、好気性処理槽または低負荷処理槽から固液分離した汚泥を第1返送汚泥の汚泥流量の2~30流量%となる流量で別個の汚泥培養槽に供給し、水温20~35℃、DO1mg/L以上、HRT比0.15~6.0倍の条件で曝気処理を行うと、汚泥培養槽においてアブラミミズ等の微小動物が安定して増殖する。このアブラミミズ等の微小動物を低負荷処理槽に供給すれば、低負荷処理槽において、活性汚泥を捕食し、余剰汚泥の発生を抑制することが可能となる。
【0072】
更に、汚泥培養槽HRTを好気性処理槽(低負荷処理槽)HRTの0.15~6倍とすることで汚泥培養槽でのアブラミミズ等の微小動物増殖量、曝気槽でのアブラミミズ等の微小動物による余剰汚泥捕食量及び曝気槽での活性汚泥保持量がバランスよく維持されることから、系内全体において、安定した余剰汚泥量の抑制と良好な処理水質が同時に得られることが可能となる。
【符号の説明】
【0073】
1…好気性処理槽
1a…高負荷処理槽
1b…低負荷処理槽
2…固液分離槽
3…第1返送手段
4…汚泥培養槽
5…第2返送手段
6…制御手段
51…原水測定手段
52…測定手段
53…第1返送汚泥測定手段
54…第2返送汚泥測定手段