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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】転圧機械
(51)【国際特許分類】
   E01C 19/26 20060101AFI20230216BHJP
【FI】
E01C19/26
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019174497
(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公開番号】P2021050539
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2021-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 祐斗
(72)【発明者】
【氏名】田中 正道
(72)【発明者】
【氏名】切田 勝之
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-209026(JP,A)
【文献】特開2006-056326(JP,A)
【文献】特開2017-066784(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0017232(US,A1)
【文献】特開2013-076264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の骨格を形成してなるフレームと、
前記機体に回転可能に設けられる車輪と、
前記フレームに搭載され、前記車輪を駆動する駆動装置と、
前記駆動装置が収容される領域を覆うカバーと、
を備える転圧機械において、
前記駆動装置には、内燃機関から排出される排ガスを浄化する排ガス浄化装置が含まれ、
前記カバーは、
前記駆動装置が収納される領域のうちの第1範囲を覆う第1カバーと、
前記駆動装置が収納される領域のうちの第2範囲を覆う第2カバーと、からなり、
前記排ガス浄化装置は、前記第1範囲に位置し、前記フレームに設けられた支持部材に取り付けられ、
前記第1カバーは、前記第1範囲を覆った状態で前記支持部材に固定されており、
前記第2カバーは、回動支持機構を介して前記支持部材に取り付けられ、回動することで前記第2範囲を覆う閉止状態と前記第2範囲を開放する開放状態との間を遷移することを特徴とする転圧機械。
【請求項2】
前記支持部材は、後端に上方及び後方に傾斜して延びる補助支持部材を有し、
前記第2カバーは、前記第1カバーよりも後側に位置し、後側の端部が上下方向に移動可能に、前記回動支持機構を介して前記補助支持部材に取り付けられる
ことを特徴とする、請求項1に記載の転圧機械。
【請求項3】
前記第2カバーは、機体前側及び機体後側のいずれか一方の端部が前記回動支持機構を介して前記支持部材に支持されており、
前記第2カバーの機体左右方向外側の少なくとも一方側には、前記第2カバーを回動させるための第1把持部及び第2把持部が配設され、
前記第2把持部は、前記第2カバーが前記閉止状態のときに、前記第1把持部よりも前記回動支持機構から機体前後方向に離間した位置に取り付けられている
ことを特徴とする、請求項1に記載の転圧機械。
【請求項4】
前記駆動装置は、
所定の頻度で点検を要する第1点検機器と、
前記第1点検機器と比較して高い頻度で点検を要する第2点検機器と、を含み、
前記第1範囲には、前記第1点検機器が位置し、
前記第2範囲には、前記第2点検機器が位置してなる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の転圧機械。
【請求項5】
前記第1カバーは、締結部材が前記フレームに螺合することで固定されてなる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の転圧機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は転圧機械に係り、特にエンジンカバーの利便性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
道路や鉄道の盛土工事、敷地造成などの大規模土工現場において、高い締固め能力を有していることから、土工用振動ローラが広く用いられている。
この土工用振動ローラには、エンジンが搭載されており、該エンジンの上方を覆うようにエンジンフードが配設されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-209026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示される技術のように、エンジン全体を覆うエンジンフード(エンジンカバー)を用いると、エンジンカバーの質量が大きくなる。このように質量の大きいエンジンカバーを機体に配設すると、作業者がエンジンカバーを開閉する際に多大な労力を必要とする虞がある。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、カバー(エンジンカバー)の開閉にかかる労力を軽減することができる転圧機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の転圧機械は、機体の骨格を形成してなるフレームと、前記機体に回転可能に設けられる車輪と、前記フレームに搭載され、前記車輪を駆動する駆動装置と、前記駆動装置が収容される領域を覆うカバーと、備える転圧機械において、前記駆動装置には、内燃機関から排出される排ガスを浄化する排ガス浄化装置が含まれ、前記カバーは、前記駆動装置が収納される領域のうちの第1範囲を覆う第1カバーと、前記駆動装置が収納される領域のうちの第2範囲を覆う第2カバーと、からなり、前記排ガス浄化装置は、前記第1範囲に位置し、前記フレームに設けられた支持部材に取り付けられ、前記第1カバーは、前記第1範囲を覆った状態で前記支持部材に固定されており、前記第2カバーは、回動支持機構を介して前記支持部材に取り付けられ、回動することで前記第2範囲を覆う閉止状態と前記第2範囲を開放する開放状態との間を遷移することを特徴とする。
【0007】
これにより、駆動装置が収納される領域のうち、第1範囲及び第2範囲を第1カバー及び第2カバーによって覆うことにより、第1範囲及び第2範囲のうちいずれか一方のみについて点検や整備等をする際に、第1カバー及び第2カバーのうちいずれか一方のみを開放して点検や整備等をすることができる。特に、第1範囲を覆った状態で第1カバーをフレームに固定し、回動することで第2範囲を開閉するようフレームに対して相対的に回動可能に第2カバーを取り付けることで、例えば第2範囲に位置する機器等が第1範囲に位置する機器等と比較して故障しやすい場合であっても、オペレータが第2カバーを開閉する際に必要とされる労力を軽減して修理等を容易に行うことが可能とされる。また、第1範囲に位置する機器を支持する部材と第2カバーを支持する部材とを当該支持部材で併用することが可能とされる。さらに、内燃機関から排出される排ガスを浄化する排ガス浄化装置が第1範囲に位置することで、オペレータが誤って排ガス浄化装置の点検や整備等をすることを抑制することが可能とされる。
【0008】
その他の態様として、前記支持部材は、後端に上方及び後方に傾斜して延びる補助支持部材を有し、前記第2カバーは、前記第1カバーよりも後側に位置し、後側の端部が上下方向に移動可能に、前記回動支持機構を介して前記補助支持部材に取り付けられるのが好ましい
【0009】
その他の態様として、前記第2カバーは、機体前側及び機体後側のいずれか一方の端部が前記回動支持機構を介して前記支持部材に支持されており、前記第2カバーの機体左右方向外側の少なくとも一方側には、前記第2カバーを回動させるための第1把持部及び第2把持部が配設され、前記第2把持部は、前記第2カバーが前記閉止状態のときに、前記第1把持部よりも前記回動支持機構から機体前後方向に離間した位置に取り付けられているのが好ましい。
【0010】
これにより、第1把持部及び回動支持機構から第1把持部より離間して位置する第2把持部を第2カバーの機体左右方向外側の少なくとも一方側に配設することで、オペレータは、例えば第2カバーを閉止する際に第1把持部を把持して第2把持部が手の届く高さになるまで第2カバーを回動させたあと、第2把持部を把持して第2カバーを回動させることができる。すなわち、オペレータが第2カバーを開閉する際に必要とされる労力をより軽減することが可能とされる。
【0011】
その他の態様として、前記駆動装置は、所定の頻度で点検を要する第1点検機器と、前記第1点検機器と比較して高い頻度で点検を要する第2点検機器と、を含み、前記第1範囲には、前記第1点検機器が位置し、前記第2範囲には、前記第2点検機器が位置してなるのが好ましい。
【0012】
これにより、第1点検機器と比較して高い頻度で点検を要する第2点検機器を、フレームに対して相対的に回動可能に取り付けられ回動することで第2範囲を開閉する第2カバーによって覆われた第2範囲に位置させるようにすることで、第1点検機器と比較して第2点検機器の点検を容易に行うことが可能とされる。
【0014】
その他の態様として、前記第1カバーは、締結部材が前記フレームに螺合することで固定されてなるのが好ましい。
これにより、締結部材がフレームに螺合し第1カバーを機体に固定する、換言すると、第1範囲を開放する際は締結部材がフレームに螺合することを解消してから第1カバーが第1範囲を覆うことを開放するように構成することで、第1カバーによる第1範囲の閉止を開放するために必要な労力を第2カバーによる第2範囲の閉止を開放するために必要な労力と比較して高めることが可能とされる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の転圧機械によれば、駆動装置が収納される領域のうち、第1範囲及び第2範囲を第1カバー及び第2カバーによって覆うことにより、第1範囲及び第2範囲のうちいずれか一方のみについて点検や整備等をする際に、第1カバー及び第2カバーのうちいずれか一方のみを開放して点検や整備等をすることができる。特に、第1範囲を覆った状態で第1カバーをフレームに固定し、回動することで第2範囲を開閉するようフレームに対して相対的に回動可能に第2カバーを取り付けたので、例えば第2範囲に位置する機器等が第1範囲に位置する機器等と比較して故障しやすい場合であっても、オペレータが第2カバーを開閉する際に必要とされる労力を軽減して修理等を容易に行うことができる。これにより、カバー(第2カバー)の開閉にかかる労力を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】機体の概略構成図である。
図2】エンジンフードを閉止した状態における機体の後部の後方斜視図である。
図3図2中I-I断面の断面図である。
図4】エンジンフードを開放した状態における機体の後部の後方斜視図である。
図5図4中II-II断面の断面図である。
図6図4中、B部分の拡大図である。
図7】エンジンフードに設けられた被係止部材及び係止部材近傍の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。
図1を参照すると、機体1の概略構成図が示されている。
機体(転圧機械)1は、フロントフレーム3、リアフレーム(フレーム)5、操縦席7、駆動装置9、前輪11及び後輪(車輪)13を備えた土工用振動ローラである。この機体1は、後輪13を駆動することで前後進しつつ、前輪11を用いて地面を締固めることが可能である。
【0018】
フロントフレーム3は、機体1の前部に配設された左右一対の骨格部材である。このフロントフレーム3には、金属製の円筒状に形成された前輪11が備えられている。また、フロントフレーム3は、回動支持体4を介してリアフレーム5に回動可能に取付けられている。
【0019】
リアフレーム5は、機体1の後部に配設された骨格部材である。このリアフレーム5には、上部に操縦席7及び駆動装置9が配設されている。また、リアフレーム5には、ゴム製のタイヤを備えた後輪13が機体左右方向でリアフレーム5を挟むように配設されている。
【0020】
操縦席7は、リアフレーム5の前側上部に配設され、図示はしないが、座席やコントロールパネル及び操作レバーが備えられている。これにより、操縦席7は、オペレータが搭乗して座席に着座し、コントロールパネルや操作レバーを操作することで機体1の走行等の操作をすることが可能である。
【0021】
駆動装置9は、例えばエンジン(第2点検機器、内燃機関)9a、HST(Hydraulic Static Transmission)、ラジエータ(第2点検機器)9b、SCR(Selective Catalytic Reduction)装置(第1点検機器、排ガス浄化装置)9c等の機体1の走行に必要な装置を備えて構成しており、リアフレーム5に配設されている。この駆動装置9は、エンジン9aを駆動することで図示しないHSTを稼働させて後輪13を駆動し、機体1を走行させることが可能である。また、駆動装置9は、エンジン9aが駆動することで排出される排ガス中に含まれるNoxをSCR装置9cによって還元反応させて浄化したあと、機体1の外部に排出することが可能である。
【0022】
図2を参照すると、エンジンフード22を閉止した状態における機体1の後部の後方斜視図が示されている。また、図3を参照すると、図2中I-I断面の断面図が示されている。またさらに、図4を参照すると、エンジンフード22を開放した状態における機体1の後部の後方斜視図が示されている。そして、図5を参照すると、図4中II-II断面の断面図が示されている。
【0023】
リアフレーム5の後側上部には、支持フレーム(支持部材、フレーム)15、フロントカバー(第1カバー)21、エンジンフード(第2カバー)22及びインナーフェンダ24が配設されている。支持フレーム15は、駆動装置9のSCR装置9cを支持する骨格部材であり、上側にSCR装置9cが取り付けられている。また、支持フレーム15は、下端がリアフレーム5の機体前後方向前側上端に締結されている。またさらに、支持フレーム15には、機体前後方向後端の上側から上方及び後方に傾斜して延びる補助支持部材15aが形成されている。
【0024】
フロントカバー21は、支持フレーム15の上側に配設されており、SCR装置9cを雨や粉塵から保護するよう、SCR装置9cの上側及び左右方向外側を覆うカバーである。このフロントカバー21の上壁21aは、支持フレーム15の前側の上端から後方に延び、前後方向略中央から下方に傾斜し、後端が補助支持部材15aの後端上側に位置するように延びて形成されている。
【0025】
また、フロントカバー21は、例えば複数のボルト(締結部材)21bを支持フレーム15に螺合することで取り付けられている。したがって、フロントカバー21は、レンチ等の工具を用いてボルト21bと支持フレーム15との螺合状態(固定状態)を解くことで支持フレーム15から取り外すことができる。
【0026】
エンジンフード22は、後述する開閉装置31を介して支持フレーム15に取り付けられた金属製のカバーである。このエンジンフード22の上壁22aは、フロントカバー21の後端から支持フレーム15の後端に向かって延びて形成されている。これにより、エンジンフード22は、駆動装置9のエンジン9a及びラジエータ9bの上側及び左右方向外側を覆うことができる(図2、3参照)。以下、エンジンフード22が駆動装置9のエンジン9a及びラジエータ9bの上側及び左右方向外側を覆う状態を閉止状態という。
【0027】
一方、エンジンフード22は、開放することで(開放状態)、駆動装置9のエンジン9a及びラジエータ9bを機体1の外部から視認することや駆動装置9の後述する第2範囲A2に対応する箇所の点検等をすることができる。
【0028】
また、エンジンフード22の上壁22aの下面には、該下面に沿うように機体前後方向に延びる補強部材25が接合されている。したがって、エンジンフード22は、補強部材25によってエンジンフード22の上壁22aの剛性を高めることができる。
【0029】
図6を参照すると、図4中、B部分の拡大図が示されている。開閉装置31は、エンジンフード22の機体左右方向内側(機体中央側)の端部に配設された左右一対の装置である。この開閉装置31は、回動支持部材(回動支持機構)33、ガスダンパ35及びロックバー37を有している。以下、図3図5及び図6を適宜参照しつつ開閉装置31について説明する。なお、説明の便宜上、機体左右方向右側に配設された開閉装置31についてのみ説明するが、左側に配設された開閉装置31についても同様の構成とする。
【0030】
図3、5によると、回動支持部材33は、支持フレーム15の補助支持部材15aと閉止状態におけるエンジンフード22の機体前後方向前側上端部とに固定された支持部材である。この回動支持部材33は、支持フレーム15とエンジンフード22とを機体左右方向に延びる回動軸C周りで相対的に回動可能に支持している。したがって、エンジンフード22は、回動支持部材33の回動軸Cを軸にして機体前後方向後側(機体外側)の端部を上下方向に移動するように回動することができる。
【0031】
図6によると、ガスダンパ35は、例えば左右方向に2本並んで配設された所謂ショックアブソーバであり、ピストン35aをシリンダ35bから一定速度で突出させるよう付勢している。このガスダンパ35のシリンダ35b側の端部は、補助支持部材15aからさらに機体前後方向後方に突出するように配設された支持ブラケット15bに回動可能に取り付けられている。
【0032】
また、ガスダンパ35のピストン35a側の端部は、補強部材25における、回動支持部材33から所定距離離間した位置に取り付けられている。これにより、ガスダンパ35は、回動支持部材33の回動軸Cを軸にしてエンジンフード22の機体前後方向後側の端部を上方に移動させるよう付勢することができる。
【0033】
ここで、エンジンフード22には、重力により、回動軸Cを軸にしてエンジンフード22の機体前後方向後側の端部を下方に移動させるように回動する力(回動力)が働いている。したがって、ガスダンパ35の付勢力を調整することで、エンジンフード22に加わる回動力と該付勢力がつり合うようにしてオペレータがエンジンフード22の開閉をする際に必要とする力を軽減することができる。
【0034】
また、エンジンフード22の機体左右方向外側には、第1取手(第1把持部)41、第2取手(第1把持部)42及び第3取手(第2把持部)43が配設されている。図2によると、第1取手41は、エンジンフード22が閉止状態のとき、インナーフェンダ24の機体上下方向上方に位置する取手である。この第1取手41は、第2取手42及び第3取手43と比較して最も回動支持部材33に近い位置に取り付けられている。
【0035】
第2取手42は、エンジンフード22が閉止状態のとき、インナーフェンダ24の機体前後方向後方に位置する取手である。この第2取手42は、第1取手41と比較して回動支持部材33から離間した位置であり、第3取手43と比較して回動支持部材33に近い位置に取り付けられている。第3取手43は、エンジンフード22が閉止状態のとき、機体前後方向後側の端部近傍に位置する取手である。この第3取手43は、第1取手41及び第2取手42と比較して最も回動支持部材33から離間した位置に取り付けられている。
【0036】
このように第1取手41、第2取手42及び第3取手43が配設されることにより、エンジンフード22が開放状態のとき、機体上下方向下方から順に第1取手41、第2取手42及び第3取手43が位置する。これにより、オペレータは、開放状態にあるエンジンフード22を閉止するとき、第1取手41及び第2取手42を把持し、下方に引き下げるようにしてエンジンフード22を回動させ、第3取手43が手の届く高さまで下がると、第3取手43を把持し、下方に引き下げるようにしてエンジンフード22をさらに回動させて閉止する。
【0037】
このような手順でエンジンフード22を閉止することにより、第3取手43にオペレータの手が届かないような場合であっても、第1取手41及び第2取手42を把持してエンジンフード22を回動させることができる。また、第3取手43は第1取手41及び第2取手42と比較して最も回動支持部材33から離間した位置に取り付けられているため、第3取手43がオペレータの手の届く高さまで下がるようエンジンフード22を回動させたあと、第3取手43を把持してエンジンフード22をさらに回動させることにより、第1取手41及び第2取手42を把持してエンジンフード22を回動させるときと比較して小さい力でエンジンフード22を回動させることができる。
【0038】
ロックバー37は、一端が補強部材25に回動可能に取付られた棒状の部材である。このロックバー37は、エンジンフード22を開放状態にしたときに他端をリアフレーム5の図示しない係止部に係止させることで、エンジンフード22が重力によって閉止することを防止することができる。
【0039】
図7を参照すると、エンジンフード22に設けられた被係止部材38及び係止部材39近傍の拡大図が示されている。エンジンフード22の機体前後方向後側の端部には、被係止部材38が配設されている。リアフレーム5の被係止部材38に対応する位置には、被係止部材38と係止することが可能な係止部材39が取り付けられている。
【0040】
係止部材39は、レバー39aを機体左右方向左方に引くことで被係止部材38との係止状態(固定状態)を解除することができる。したがって、エンジンフード22は、係止部材39を被係止部材38に係止させることで、機体1の振動等によってエンジンフード22が開閉することを防止することができる。また、被係止部材38及び係止部材39は、ボルト21bと比較して容易に固定状態を解除することができる。
【0041】
インナーフェンダ24は、駆動装置9と後輪13とを隔てる板部材であり、主に後輪13が走行中に巻き上げる砂泥等が駆動装置9側に侵入することを抑制するために設けられている。
【0042】
ところで、図3によると、駆動装置9は、第1範囲A1、第2範囲A2及び第3範囲A3に位置している。第1範囲A1には、SCR装置9cが配設されている。このSCR装置9cは、整備士等の技術者が定期的に(例えば1年に1回、所定の頻度)点検整備(定期点検整備)をする装置であり、機体1を操作するオペレータが誤った点検整備をすると故障の原因となる複雑な装置である。換言すると、第1範囲A1には、駆動装置9のうち、オペレータが日常点検等を目的として触れる必要がない機器(第1点検機器)が配設されている。
【0043】
第2範囲A2には、駆動装置9のエンジン9aに供給する軽油の供給口やエンジン9aの冷却水が貯留されるタンク、ラジエータ9bを粉塵から保護する保護フィルタ等が配設されている。換言すると、第2範囲A2には、駆動装置9ののうち、軽油や冷却水の補給や残量の確認、保護フィルタの掃除等、オペレータが日常的に点検(日常点検)する機器(第2点検機器)が配設されている。
【0044】
第3範囲A3には、エンジン9a内を流通するオイルの劣化度合いを確認するために設けられた、オイルディップスティック等が配設されている。このオイルディップスティックは、例えば第2範囲A2からオペレータの手が届く範囲に配設されている。換言すると、第3範囲A3には、第2範囲A2と同様に、駆動装置9ののうち、オペレータが日常的に点検する機器が配設されている。なお、オペレータの手がオイルディップスティックに容易に届くよう、インナーフェンダ24に小窓を設けるようにしてもよい。
【0045】
また、図3によると、第1範囲A1、第2範囲A2及び第3範囲A3は、フロントカバー21、エンジンフード22及びインナーフェンダ24によってそれぞれ覆われている。そして、図5のようにエンジンフード22が開放状態のとき、第2範囲A2は、オペレータによって点検することが可能な範囲である。このように、駆動装置9のうち、オペレータが日常的に点検する機器を第2範囲A2に配設し、換言すると、エンジンフード22を開放状態にすることで該機器の点検を可能にすることで、オペレータは、容易に日常点検をすることができる。
【0046】
また、複数のボルト21bを支持フレーム15に螺合することで取り付けられているフロントカバー21を機体1から取り外して第1範囲A1を開放することは、被係止部材38及び係止部材39と比較してボルト21bは螺合状態を解くことが難しいため、被係止部材38と係止部材39との係止状態を解除することでエンジンフード22を開放状態にして第2範囲A2を開放することと比較してオペレータに掛かる負担を大きくすることができる。
【0047】
またさらに、開閉装置31によって開閉可能に構成されたエンジンフード22と比較して、フロントカバー21は、開閉装置31のような装置が備えられていない。したがって、エンジンフード22は、フロントカバー21と比較して容易に開放状態にすることができる。換言すると、フロントカバー21は、エンジンフード22と比較して開放状態にするために必要な労力が多大であるため、オペレータがフロントカバー21を開放状態にすることを抑制することができる。
【0048】
第3範囲A3についても同様に、エンジンフード22を開放状態にすることで、オペレータは、容易に日常点検をすることができる。したがって、駆動装置9のうち、点検や整備の頻度が高い機器を第2範囲A2及び第3範囲A3に配設し、開閉容易なエンジンフード22によって覆うことで、オペレータによる日常点検を容易にしつつ、エンジンフード22を比較的小型にすることができる。
【0049】
以上説明したように、本発明に係る転圧機械では、機体1の骨格を形成してなるリアフレーム5と、機体1に回転可能に設けられる後輪13と、リアフレーム5に搭載され、後輪13を駆動する駆動装置9とを備え、駆動装置9が収納される領域のうちの第1範囲A1を覆うフロントカバー21と、駆動装置9が収納される領域のうちの第2範囲A2を覆うエンジンフード22とを有し、フロントカバー21は、第1範囲A1を覆った状態でリアフレーム5に固定されており、エンジンフード22は、リアフレーム5に対して相対的に回動可能に取り付けられており、回動することで第2範囲A2を開閉する。
【0050】
従って、駆動装置9が収納される領域のうち、第1範囲A1及び第2範囲A2をフロントカバー21及びエンジンフード22によって覆うことにより、第1範囲A1及び第2範囲A2のうちいずれか一方のみについて点検や整備等をする際に、フロントカバー21及びエンジンフード22のうちいずれか一方のみを開放して点検や整備等をすることができる。
【0051】
特に、第1範囲A1を覆った状態でフロントカバー21をリアフレーム5に固定し、回動することで第2範囲A2を開閉するようリアフレーム5に対して相対的に回動可能にエンジンフード22を取り付けたので、第2範囲A2に位置する機器等が第1範囲A1に位置する機器等と比較して故障しやすい場合であっても、オペレータが第2カバーを開閉する際に必要とされる労力を軽減して修理等を容易に行うことができる。
【0052】
そして、リアフレーム5は、駆動装置9のうち第1範囲A1に位置する機器を支持する支持フレーム15を有し、エンジンフード22は、機体前後方向中央側の回動支持部材33が支持フレーム15に回動可能に支持されたので、第1範囲A1に位置する機器を支持する部材とエンジンフード22を支持する部材とを当該支持フレーム15で併用することができる。
【0053】
そして、エンジンフード22は、第2範囲A2を覆う状態である閉止状態のときに機体前後方向で視て機体1中央側であって上下方向上側の端部が回動支持部材33を介して支持フレーム15に回動可能に支持されており、エンジンフード22の機体左右方向外側には、エンジンフード22が閉止状態のときに回動支持部材33より機体上下方向下方に位置する第1取手41及び第2取手42と、回動支持部材33から第1取手41及び第2取手42より離間して位置する第3取手43とを配設したので、オペレータは、例えばエンジンフード22を閉止する際に第1取手41及び第2取手42を把持して第3取手43が手の届く高さになるまでエンジンフード22を回動させたあと、第3取手43を把持してエンジンフード22を回動させることができる。すなわち、オペレータがエンジンフード22を閉止する際に必要とされる労力をより軽減することができる。
【0054】
そして、駆動装置9は、所定の頻度で点検を要するSCR装置9cと、SCR装置9cと比較して高い頻度で点検を要するエンジン9aやラジエータ9b等に関する機器とを含み、第1範囲A1には、SCR装置9cが位置し、第2範囲A2には、エンジン9aやラジエータ9b等に関する機器が位置してなる。
【0055】
従って、SCR装置9cと比較して高い頻度で点検を要するエンジン9aを、リアフレーム5に対して相対的に回動可能に取り付けられており、回動することで第2範囲A2を開閉するエンジンフード22によって覆われた第2範囲A2に位置させるようにしたので、SCR装置9cと比較してエンジン9aの点検を容易に行うことができる。
【0056】
そして、駆動装置9には、燃料を燃焼して駆動力を生成する内燃機関が含まれ、第1範囲A1には、内燃機関から排出される排ガスを浄化するSCR装置9cが含まれてなる。したがって、SCR装置9cが第1範囲A1に位置するようにしたので、オペレータが誤ってSCR装置9cの点検や整備等をすることを抑制することができる。
【0057】
そして、フロントカバー21は、締結部材であるボルト21bがリアフレーム5に螺合することで固定されてなる、換言すると、第1範囲A1を開放する際はボルト21bがリアフレーム5に螺合することを解消してからフロントカバー21が第1範囲A1を覆うことを開放するように構成したので、フロントカバー21による第1範囲A1の閉止を開放するために必要な労力をエンジンフード22による第2範囲A2の閉止を開放するために必要な労力と比較して高めることができる。
【0058】
以上で本発明に係る転圧機械の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0059】
例えば、本実施形態では、機体1として土工用振動ローラを用いて説明したが、タイヤローラやマカダムローラなど、土工用振動ローラ以外の転圧機械に本発明を適用するようにしてもよい。
また、本実施形態では、第2範囲A2に駆動装置9のエンジン9aに供給する軽油の供給口やエンジン9aの冷却水が貯留されるタンク、ラジエータ9bを粉塵から保護する保護フィルタ等が配設されていると説明したが、これらの機器以外の装置や機器であってもよく、第1範囲A1に配設される装置や機器よりも点検(日常点検)の頻度が高い装置や機器、故障が発生する可能性が高い装置や機器が配設されるようにしてもよい。
【0060】
また、本実施形態では、エンジンフード22の機体左右方向内側の端部に開閉装置31を配設し、機体前後方向後側の端部を上下方向に移動するように回動するようにしたが、エンジンフード22の機体前後方向後側の端部開閉装置を配設し、機体左右方向内側の端部を上下方向に移動するように回動するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 機体
5 リアフレーム(フレーム)
9 駆動装置
9a エンジン(第2点検機器、内燃機関)
9b ラジエータ(第2点検機器)
9c SCR装置(第1点検機器、排ガス浄化装置)
13 後輪(車輪)
15 支持フレーム(支持部材、フレーム)
21 フロントカバー(第1カバー)
21b ボルト(締結部材)
22 エンジンフード(第2カバー)
33 回動支持部材(回動支持機構)
41 第1取手(第1把持部)
42 第2取手(第1把持部)
43 第3取手(第2把持部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7