(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】DS/FH信号の受信のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
H04B 1/7156 20110101AFI20230216BHJP
H04L 27/26 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
H04B1/7156
H04L27/26 420
(21)【出願番号】P 2019503930
(86)(22)【出願日】2017-07-27
(86)【国際出願番号】 EP2017069076
(87)【国際公開番号】W WO2018019960
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-05-19
(32)【優先日】2016-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2017-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511247389
【氏名又は名称】キネテイツク・リミテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マクラウド,マルコム・デイビッド
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-502665(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0260506(US,A1)
【文献】米国特許第05872810(US,A)
【文献】Weining Song et al.,Novel Fast Acquisition Algorithm for DS/FH System,2011 International Conference on Business Management and Electronic Information,2011年05月,pp.460-462
【文献】Danny M. Frai and Arie Reichman,Fast Acquisition CDMA receiver for burst transmission system,Proceedings of the 2004 11th IEEE International Conference on Electronics, Circuits and Systems, 2004 (ICECS 2004),2004年12月,pp.342-345
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/7156
H04L 27/26
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信機において信号を処理するための方法であって、信号はチップの周波数ホップシーケンスから成り、方法は、
a)受信信号を、複数(k個)の個別の処理サブチャネルに分割するステップであって、各々が1つまたは複数のホップ周波数に対応する、ステップと、
b)各サブチャネル内で、
i)前記受信信号から任意のサブ搬送波周波数を減算し、
ii)チップ整合フィルタを使用して(i)からの信号をフィルタリングし、
iii)フィルタリングされた信号からサンプルのサブセットを選択し、
iv)ステップ(iii)からのサンプルされた信号を既知の基準信号と相関させて
、捕捉モードの間に、複数の相関器出力を生成するステップと、
c)
捕捉モードの間に、各サブチャネルから
の複数の相関器出力
のそれぞれを、
異なる共通の離散時間フーリエ変換(DTFT)の入力へ提供するステップと、
d)受信機における更なる処理のために所定の閾値を上回るピークを有するステージ(c)の共通DTFTの1つまたは複数の出力を選択するステップとを実施することによって信号を捕捉することを備える、方法。
【請求項2】
少なくとも捕捉モードの間、ステップ(b)(iii)で生成されるサンプルがバッファに格納され、相関器が、所与のサブチャネルに対する基準符号からのデータに対応するバッファからのデータを相関させるように配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
バッファがステップ(b)(iii)からの各最新の入力で更新され、そして最古のサンプルが廃棄され、バッファがこのように更新される度に、相関が繰り返される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
相関器が、複数のM個の個別のサブ相関器を有するセグメント化された相関器であって、各サブ相関器がデータ内のバッファの連続サブセットを相関させるように配置され、各サブ相関器がその出力をサブチャネルDTFTに提供し、更にサブチャネルDTFTの出力がサブチャネルの出力を構成する、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
M個の共通DTFTのバンクが使用され、各々がサブチャネルDTFTから対応する出力を受け入れるように配置される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
受信信号のドップラーシフトに対応する特定の共通DTFTを、所定の閾値を上回る最大出力によって示されるように識別するように、M個の共通DTFTの出力が検査される、請求項3から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
共通DTFTが、期待される入力信号の自己相関の主ローブの半値パワー幅の、0.05と0.7との間、または0.2と0.5との間、または0.5の隣接出力間の時間間隔を有するように配置される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
入力信号を処理する方法であって、まず請求項1から7のいずれか一項によって信号を捕捉することと、次いで、一旦信号が捕捉されると、少なくとも1つの相関器が使用される追跡モードに切り替わることであって、少なくとも1つの相関器が、単一の共通DTFTに各サブチャネルに関する単一の複素出力を提供することと、入力周波数および遅延の変動を追跡および補償するように単一の共通DTFTの出力を使用することとを備える、方法。
【請求項9】
相関累算ステージまで入力信号を処理するために、単一の処理チャンネルが使用され、
各サブチャネルに対して個別の
相関累算が行われ、
各累算器からの出力が、単一の共通DTFTに提供され、入力信号から、いかなるドップラーまたは受信機局部発振器における欠陥によって引き起こされるドップラー様の周波数も除去するために、共通DTFTのPrompt出力によって駆動される位相ロックループが使用される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
共通DTFTが、基準信号に関する出力ピークの遅延の測定を提供するように適合される1つまたは複数の出力を有する、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
共通DTFT出力がEarly、PromptおよびLate出力を備え、処理チャンネル内でドップラーまたは受信機局部発振器における欠陥によって引き起こされるドップラー様の周波数を除去するために、Prompt出力が位相ロックループによって使用される、請求項9に従属した場合の請求項10に記載の方法。
【請求項12】
EarlyおよびLate出力が、入力信号チップのサンプリングのタイミングを制御するために使用される遅延ロックループを駆動するために使用される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
チップ整合フィルタリング、サンプリングおよび基準信号との乗算が単一のベースバンド周波数で行われることを可能にするように、入力信号からホップ周波数を除去するために、基準ホップパターンが使用される、請求項8から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
共通DTFTが、少なくとも2つのEarly出力、少なくとも2つのLate出力およびPrompt出力を備える、少なくとも5つの出力を有する、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
共通DTFTが、期待される入力信号の自己相関の主ローブの半値パワー幅の、0.05と0.7との間、または0.2と0.5との間、または0.5の隣接出力間の時間間隔を有するように配置される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
各共通DTFT上の共通DTFT出力の数が1、2または3個の出力を備える、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
各サブチャネルが、単一のホップ周波数を受信するように配置され、ステップ(b)(i)での減算が、信号を零周波数にするための複素指数との乗算を備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
該または各サブチャネルが、複数のホップ周波数を受信するように配置され、ステップ(b)(i)での減算が、信号を零周波数にするための複数の複素指数との乗算を備える、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
装置であって、
少なくとも1つのプロセッサと、コンピュータプログラムコードを含む少なくとも1つのメモリとを備え、
少なくとも1つのメモリとコンピュータプログラムコードは、少なくとも1つのプロセッサにより、装置に請求項1から18のいずれか一項に記載の方法を
実行させるように
構成される、装置。
【請求項20】
請求項19の装置を備える、衛星航法システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信機、周波数ホッピング信号および拡散符号を使用して周波数拡散された信号など、特に、複素変調信号を受信するために使用されるものに関する。
【背景技術】
【0002】
周波数ホッピングのような周波数ダイバーシチ技術および拡散符号を含むスペクトル拡散技術を使用して、スペクトル利用の効率性を達成することが現代の信号において常套である。例えば、前者はGSMで使用され、そして後者はCDMA移動電話伝送プロトコルおよびGNSSシステムで使用される。
【0003】
両技術に関しては、受信機が、対象の信号を最初に受信したときに、まず信号を捕捉する(すなわちホッピングシーケンスまたは拡散符号内の現在の時間位置を確定する)必要性がある。捕捉に続いて、信号によって同報されているメッセージを回復するために、または信号のタイミング変化を測定するために、信号は次いで追跡されなければならない。
【0004】
両技術を同時に使用することは十分に可能である。例えば、将来のGNSS信号において、拡散符号に加えて周波数ホッピングを使用する可能性は、論文「CBFH:Coherent Binary Frequency-Hopping Multiplexing for BeiDou B2 Signal」Z.Zhou、J.Wei、Z.Tang、T.YanおよびX Xia著、J.Sunら(編)、China Satellite Navigation Conference(CSNC)2014、37頁、Proceedings、第II巻、Lecture Notes in Electrical Engineering304、Springer-Verlag Berlin Heidelberg2014発行に記述されている。しかしながら、要求される受信機の複雑さおよび処理労力も増加する。受信機は、既知の送信された拡散符号の受信機自身のコピーを有することになり、かつ周波数ホッピングパターンも知っていることになる。しかしながら、上に述べたように、捕捉が行われる前には、それは、受信信号がホッピングシーケンスまたは符号のどこにいるかを知らないことになる。用途によっては、受信を更に複雑にする他の問題もあるであろう。受信機または送信機の相対移動によって引き起こされる受信信号のドップラー周波数変化が1つのそのような問題である。受信機局部発振器(LO)の欠陥によって引き起こされる「ドップラー様の」周波数誤差が別の問題である。捕捉プロセスは、したがって、時間にわたるおよび、用途によっては(ドップラー変動により)周波数にわたる、求められている信号の探索を備える。これは通常、ある種の相関プロセスを使用してなされ、ここで受信信号が、既知の信号(「基準信号」)のローカルコピーと相関される。
【0005】
無線伝送システムでは、送信機は、情報を乗せた信号を発生し、次いでそれを搬送波周波数fCARRを持つ「搬送波」上へ変調する。無線受信機の最初のステージが次いで、受信信号からこの搬送波周波数を減算する。「ベースバンド」信号(すなわち、搬送波周波数に周波数シフトされる前の送信機における信号、および搬送波周波数が再び減算された後の受信機における信号)を分析することによって、そのような無線システムの分析が実施されることができることが普通の当業者によって認識されるであろう。無線伝送プロセスの影響が次いで、(最も単純な場合において)未知の伝搬遅延、振幅変化および位相シフト、ならびに雑音の加算としてモデル化される。これは、以下のように進められる手法である。
【0006】
相関のプロセスはデジタル領域で記述されることになり、デジタル領域では全ての信号がサンプル値のストリームとして表される。送信機は、持続期間内のL個のサンプルの既知の基準信号
【数1】
を送信したものとされる。この信号は伝送プロセスによって遅延され、未知の振幅変化および位相シフトによって変更され、そして雑音もそれに加算される。受信機での結果的な入力信号は、
【数2】
によって与えられ、式中v
nはサンプルnに存在する雑音であり、aは受信信号の未知の振幅であり、そしてφはラジアンによる位相シフト角である。式(2)において、既知の基準信号の最終サンプルはサンプル時間nに到達する。
【0007】
周波数オフセットが無視される場合、サンプル時間mでの相関器のタスクは以下の出力:
【数3】
を計算することであり、式中*は複素共役演算を意味し、そしてs
mは時間mでの受信信号サンプルである。
【0008】
入力信号の既知の基準セクションが受信機に到達する時間が知られていないので、相関器は、一旦始動されると、(あるサンプル時間、例えばm1に)相関器出力の大きさが所定の閾値を超えるまで繰り返しこの計算を行わされる。この時点で、基準信号は検出されたと言われ、そしてその到達時間はサンプル時間m1であると推定される)。式(2)によって記述される受信信号に関しては、これは、サンプル時間m1=nに生じるはずである。
【0009】
上述した相関が受信入力(すなわち、サンプルn)における基準信号の実際の出現時間と異なるサンプル時間(n+p)に行われる場合を考える。雑音を無視すると、相関器出力Cn+mと基準信号の実際の出現時間に対するサンプル時間オフセットpとの間の関係は、Cppと表記される基準信号の自己相関関数(ACF)として知られている。ACFの大きさは、p=0のときに最大であり、そしてpの大きさ(正または負)が増加するにつれて減少し、相関器出力が減少されるという結果になる。それは次いで、基準信号の存在を正しく検出する確率を減少させる。検出確率の減少が許容可能に小さいことを保証するために、生じるのが許されるpの最悪(すなわち最大)値は、十分に小さく保たれなければならない。これは、相関間の時間間隔が十分に小さくされることを保証することによって達成される。
【0010】
基準信号が、しばしば「チップ」として既知の個々のパルスの連続から成り、各チップに少数の値の1つが乗算されており、しばしばただ2つの値+1および-1が使用されるように選ばれる場合がしばしばある。乗算値のストリームは、拡散符号として知られ、そして典型的に疑似ランダム(PR)符号であり、これは、ランダムな値のストリームと同様の特性を有する値のストリームである。それで、例えば各チップが矩形パルスである場合、ACFの形状は三角形であり、(ピーク高さの半分での)幅がチップ持続期間に等しい。この幅に基づいて、相関間の時間間隔は典型的に、検出確率の十分に小さい損失を保証するために、チップ持続期間の0.25および0.5倍間であるように選ばれる。
【0011】
受信機における選ばれたサンプルレートが、連続したチップが送信されるレートより非常に大きい場合(しばしばある)、相関間の時間間隔は2つ以上のサンプルでもよい。例えば、各チップが長さ1μsの矩形パルスであり、サンプルレートが10MHzである場合、相関は3-5つのサンプルの間隔でのみ実施される必要がある。
【0012】
その場合、国際特許出願WO2015/107111に記述されている方法を使用して、計算負荷の更なる節減が可能であり、その内容は引用により本明細書に含まれる。この方法では、入力信号は、まず、チップ整合フィルタ(CMF)と称される、1つのチップに整合される応答を有するフィルタを使用して、フィルタリングされる。そのようなフィルタの数学的記述は式(3)に与えられたものであるが、値ckがここではただ1つのチップを表すために要求されるサンプル値と置き換えられ、値Lがただ1つのチップを表すために要求されるサンプル数と置き換えられる。例えば、各チップが長さ1μsの矩形パルスであり、サンプルレートが10MHzである場合、Lの値は10個のサンプルであり、10個のサンプル値ckは全て1に等しい。
【0013】
次に、単一の相関を行うために、CMFの出力が、連続したチップ間の時間間隔に等しい間隔でサンプリングされる。サンプルレートがチップレートの整数倍、例えばチップレートのP倍であるというような方途で受信機が設計される場合、これは、P番目ごとのサンプルのみがフィルタ出力からとられることを意味する。例えば、以上の数値例におけるチップレートが1μs当たり1つのチップである場合、10番目ごとのサンプルがフィルタ出力からとられる。これらの選択されたフィルタ出力は次いで、基準パターン(すなわち、チップ値に乗算して基準信号を発生するために使用された乗算値のパターン)と相関される。
【0014】
代替的に、受信機サンプルレートがチップレートの整数倍でないように選ばれる場合、WO2015/107111に記述されるように、サンプル選択ユニット(SSU)が、整合フィルタから出力を受信し、そして相関器の各タップへの入力のために、各チップに関するタイミング基準点に関して所望の理想時間に時間が最も近いサンプルを選択するように配置されてもよい。
【0015】
上で説明したとおり、相関は一般に、許容可能に低い損失で捕捉探索プロセスを達成するために、典型的にチップ持続期間の0.25-0.5倍の遅延間隔で計算される。この繰り返される相関を効率的に実装する方途は、まずSSUを使用して、相関の選ばれたレート(例えばチップレートの2、3または4倍)に等しい平均レートで整合フィルタ出力からサンプルを選択し、そしてそれらのサンプルをバッファに格納することである。次いで各相関を行うために、相関器は、サンプル時間がチップ当たり1つのサンプルの間隔にできるだけ厳密に対応するバッファからサンプルを引き出す。
【0016】
この方法では、CMFの後続のプロセスの相関部分は、本来の相関器においてよりもP倍小さい計算負荷を有する。プロセスのこの部分が全体の計算負荷を支配するので、それは同様にほとんどP倍小さくなる。
【0017】
上で説明したとおり、受信信号は、ドップラーシフトまたは発振器周波数誤差のために周波数がシフトされることがある。この周波数シフトがf
D Hzに等しい場合、受信信号は式(2)から
【数4】
に変更され、式中f
Sはサンプリング周波数である。
これは、相関出力の大きさが係数
【数5】
だけ減少されるようにする。相関出力のそのような減少は、求められている信号を成功裏に検出する確率を減少させるので、それは回避されるべきである。これをするための簡単な方法は、異なる周波数オフセットを有するとされるときの入力信号と相関するように各々が適応された、多数の相関器を実装することである。
もし周波数オフセットf
Dが特定値f
Aを有すると知られていれば、相関器基準信号にその同じ周波数シフトを適用して、c
kを
【数6】
と置き換えることによって、理想的な性能が復元されることがあり得る。
【0018】
代替的に、相関器基準信号は不変のままにされてもよいが、相関器への信号入力が、以下の通り、信号の既知の周波数シフトを相殺するために要求される量だけ周波数シフトされてもよい。
【数7】
【0019】
いずれの場合も、(4)に同等の損なわれてない演算が復元される。
【0020】
しかしながら、f
Dは知られていない。可能な解決策は、多数の相関器を実装することであって、各々が、例えばf
STEPの周波数ステップでf
MINとf
MAXとの間で一様に離間される以下の値:
【数8】
をとる異なる周波数シフトf
Aを有する、相関器を実装することである。
【0021】
各サンプル時間nに、全てのこれらの相関器からの出力の大きさが計算され、そしてそれらの大きさの最大値が選択される。
【0022】
実際の入力周波数オフセットがf
Dであるときに周波数オフセットf
Aを持つ相関器の出力は式(5)によって与えられるが、周波数シフトf
Dが周波数の残余誤差f
ERR=f
D-f
Aと置き換えられる。したがって、雑音の影響を無視すると、最大の出力大きさを与える相関器は、f
ERRが最少の大きさを有するものである。それは、周波数オフセットが信号の実際の周波数オフセットのそれに最も近いものである。f
ERRの大きさが最大であるときに性能の最大損失が生じ、これは、入力信号の真の周波数オフセットが相関器の2つの周波数オフセット値間の中間にあるときである。f
ERRの大きさはそのときf
STEP/2であるので、結果的な利得の最悪ケース損失(すなわち最小利得係数)は
【数9】
である。
【0023】
それ故、fSTEPは、γWORSTによって決定される性能の最大損失が許容可能であることを保証するように選ばれてもよい。
【0024】
この手法で必要とされる相関器数は、
- 利得の許容可能な損失(小さい損失ほど多くの相関器を必要とする)、
- 未知のドップラー周波数の範囲(fMAX-fMIN)、および
- 基準シーケンスの長さL
に依存する。
【0025】
要求される基準シーケンスの長さLは次いで、受信機入力での信号対雑音パワー比(SNR)に依存し、受信機がより低いSNRで信号捕捉を行うことを要求される場合、より大きくなる。
【0026】
単に相関器数を増加させることは、一層の計算パワー、それ故一層の回路およびより大きい消費パワーを要求する望ましくない結果を有する。これらの不利点を回避するために、必要な計算を行う効率的な方途が定められている。1つのそのような方法は、我々が「セグメント化された相関」と称し、論文「Rapid Acquisition Concepts for Voice Activated CDMA Communication」M Sust、R Kaufman、F MolitorおよびA Bjornstor著、Globecom90、1820-1826頁、1990年12月発行に(「Swivelling Matched Filter」という名称で)記述されている。
この方法では、基準シーケンスは、各々長さBのM個のサブセクションに分割される(ここで全基準シーケンスを包含するために、MBが少なくともLでなければならない)。相関プロセス(式(2)に記述される、言い換えれば周波数シフトされない)は次いで、各々1つの出力を生成するM個のサブ相関に分けられる。各サブ相関は、入力のB個のサンプルのみに基準信号の対応するB個のサンプルを乗算する。
【0027】
これらのM個のサブ相関器出力は次いで、上記の論文からとられた
図1に例示されるように更に結合される。図では、サブ相関器はMF0、MF1などでラベルされ、そして結合プロセスは「複素FFTまたはDFT」でラベルされる。
【0028】
図の下部に沿って「()2+()2」でラベルされるプロセスは、結合器の各複素出力の2乗の大きさ(すなわち、I2+Q2、式中IおよびQは複素出力の実および虚部である)を計算する。
【0029】
論文に説明されるように、このアーキテクチャからの出力は、各々異なる周波数シフトf
Aを有する、M個の個別の相関器のセットからのそれらにほぼ同等であり、ここでf
Aの値は
【数10】
である。
【0030】
これらの周波数シフトされた相関器間の周波数間隔は、したがって値fSTEP=(fS/MB)を有する。これは、典型的に(あまりに大きな性能損失をもたらす)あまりに低いγWORSTの値をもたらす。この課題を克服するために、関数「FFTまたはDFT」は、離散時間フーリエ変換(DTFT)と命名されるプロセスと置き換えられてもよい。DTFTでは、出力間の周波数間隔fSTEPは任意に選ばれてもよく、特に、それは(fS/MB)より小さくて、性能のより小さい最悪ケース損失をもたらすように選ばれてもよい。ゼロパディングされたFFTの使用またはCORDICアルゴリズムの使用を含め、そのようなDTFTを実装するいくつかの方途があることが普通の当業者によって認識されるであろう。
【0031】
上記した全ての相関方法は「コヒーレント」として知られている。「インコヒーレント」方法もあり、それは減少された計算負荷の利点を有する。そのような方法の一例は、論文「On Detecting Linear Frequency-Modulated Waveforms in Frequency- and Time-Dispersive Channels: Alternatives to Segmented Replica Correlation」Paul M.Baggenstoss著、IEEE Journal of Oceanic Engineering、第19巻、第4号、1994年10月発行、591頁に記述されている、セグメント化されたレプリカ相関器である。この手法では、相関プロセスは、既に記述したように、一連のサブ相関として再び行われるが、DTFT結合プロセスはない。その代わりに、サブ相関器出力の2乗の大きさが単に合算されて、単一の出力値を与える。しかしながら、インコヒーレント方法の不利点はより乏しい検出性能であり-その結果、任意の所与の検出の確率を達成するために、それらは受信信号のより高い信号対雑音パワー比(SNR)を要求する。
【0032】
上述した先行技術は、周波数ホッピングの使用を通じてでなく、拡散符号の使用を通じてスペクトル拡散された信号のためである。周波数ホッピング技術は通信ではよく知られており、場合によっては周波数ホッピングも拡散符号も両方使用される。
【0033】
そのような信号に関しては、ACFピークの形状および幅は主として、チップレートにでなく、それよりも周波数ホッピング(FH)の帯域幅(周波数拡散)に関連される。(ピーク高さの半分での)ACFピークの幅はこの帯域幅の逆数にほぼ等しい。この幅に基づいて、捕捉の目的のための相関間の時間間隔は典型的に、検出確率の十分に小さい損失を保証するために、FH帯域幅の逆数の0.25および0.5倍間であるように選ばれるべきである。
【0034】
そのような信号の捕捉に対するこれの結果は、(FH帯域幅がチップレートより非常に大きいので)非常に高いレートで相関が計算されなければならないということである。また、入力信号がサンプリングされなければならないレートが非常に高い(それはやはりチップレートよりむしろFH帯域幅に比例する)。相関が従来の方途で計算される場合、上述したように、これらの2つの影響の結合結果は、全体の計算負荷がFH帯域幅とチップレートの比の2乗に比例して増加されるということである。これは、高帯域幅信号にとって潜在的に重大な問題点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0035】
【非特許文献】
【0036】
【文献】CBFH:Coherent Binary Frequency-Hopping Multiplexing for BeiDou B2 Signal」Z.Zhou、J.Wei、Z.Tang、T.YanおよびX Xia著、J.Sunら(編)、China Satellite Navigation Conference(CSNC)2014、37頁、Proceedings、第II巻、Lecture Notes in Electrical Engineering304、Springer-Verlag Berlin Heidelberg2014発行
【文献】「Rapid Acquisition Concepts for Voice Activated CDMA Communication」M Sust、R Kaufman、F MolitorおよびA Bjornstor著、Globecom90、1820-1826頁、1990年12月発行
【文献】「On Detecting Linear Frequency-Modulated Waveforms in Frequency- and Time-Dispersive Channels: Alternatives to Segmented Replica Correlation」Paul M.Baggenstoss著、IEEE Journal of Oceanic Engineering、第19巻、第4号、1994年10月発行、591頁
【文献】Mohammad Zahidul H.BhuiyanおよびElena Simona Lohan(2012).Multipath Mitigation Techniques for Satellite-Based Positioning Applications、Global Navigation Satellite Systems:Signal,Theory and Applications、Prof.Shuanggen Jin(編)、ISBN:978-953-307-843-4、InTech、第17章、405-426頁(Bhuiyan)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
本発明の目的は、軽減された計算負荷で周波数ホップもされ、拡散符号が乗算もされる信号を処理することである。
【課題を解決するための手段】
【0038】
本発明の第1の態様によれば、受信機において信号を処理するための方法であって、信号はチップの周波数ホップシーケンスから成り、方法は、
a)受信信号を、複数(k個)の個別の処理サブチャネルに分割するステップであって、各々が1つまたは複数のホップ周波数に対応する、ステップと、
b)各サブチャネル内で、
i)受信信号から任意のサブ搬送波周波数を減算し、
ii)チップ整合フィルタ(CMF)を使用して(i)からの信号をフィルタリングし、
iii)フィルタリングされた信号からサンプルのサブセットを選択し、
iv)ステップ(iii)からのサンプルされた信号を既知の基準信号と相関させて少なくとも1つの相関器出力を生成するステップと、
c)各サブチャネルからの出力を、少なくとも1つの共通の離散時間フーリエ変換(DTFT)の入力へ提供するステップと、
d)受信機における更なる処理のために所定の閾値を上回るピークを有するステージ(c)の共通DTFTの1つまたは複数の出力を選択するステップとを備える、方法が提供される。
【0039】
本発明は、その最も基本的な形態で、信号を処理して、例えば上で説明したとおりそれを捕捉するための、処理要件を減少させた、手段を可能にする。
【0040】
有利には、信号は、ステップ(a)-(d)で上述したように処理される前にデジタル化される。したがって、上記のプロセスは完全にデジタル領域で生じることになる。最初のデジタル化が周波数ホップ信号の全帯域幅にわたって情報をキャプチャするレートでなされる必要があることになることが普通の当業者によって認識されるであろう。各サブチャネル内では、帯域幅がより小さいことになり、それ故チャネル内の処理が一般に、その特定のチャンネルの帯域幅に相応した、より低いサンプリングレートでなされてもよいことが更に認識されるであろう。サンプルレートの減少は、したがって、CMFに続いて、ステップ(b)(iii)で実施される。CMFおよびCMFから出力されるサンプルのサブセットの後続の選択が一緒にデシメーションプロセスを構成することが認識されるであろう。
【0041】
信号が周波数ホップ信号であるので、任意の一時点で1つのサブチャネルのみが有効信号を有することになることが更に認識されるであろう。これは、任意の選ばれた時間間隔の間にどのサブチャネルが有効信号を受けているかを受信機が知っていることになるので、信号の追跡の間(すなわち信号が最初に捕捉された後)の処理労力を減少させるために利用されることができる。したがって、現在有効信号を処理していないサブチャネルと関連付けられるプロセスは、要求されるまで停止されることができる。もちろん、捕捉の間は、特定のサブチャネルが有効データを有するか否かは知られていないので、全てのサブチャネルがアクティブに保たれることになる。
【0042】
好都合には、用途によっては、特に信号を捕捉するときに、ステップiii)からのサンプルは、サンプルのシーケンスを保持するように配置されるメモリ記憶装置を備える、バッファに記憶されてもよい。信号の捕捉の間、ステップb(iv)の相関プロセスは、バッファにおけるサンプルを基準信号と順次スライディングウィンドウにおいて相関させることを備えてもよく、ここではウィンドウは、行われる各相関に対して1つのサンプルずつ移動する(最初のサンプルを失い、そして最新のサンプルで更新される)。
【0043】
ステップ(a)の搬送波周波数の減算(「サブ搬送波ワイプオフ」と記述されてもよい)は好ましくは、入力信号をサブチャネル内で0Hzに関して対称であるようにすることになる。各サブチャネルは、単一のホップ周波数を処理するように選ばれてもよく、または2つ以上のホップ周波数を処理するように選ばれてもよく、その場合、減算される搬送波周波数は、処理されるホップ周波数の平均にあるものとされる。
【0044】
各サブチャネルで相関器に使用される基準信号は、そのサブチャネル内の期待される信号に基づいて構築される。各サブチャネルが単一のホップ周波数を処理するように選ばれ、サブ搬送波ワイプオフが本来の基準信号に適用されたホップ周波数シフトを正確に相殺する場合、サブチャネル相関器への基準信号入力の周波数シフトは要求されない。しかしながら、他の場合、基準信号は、減算プロセス後に0Hzでないホップ周波数を補償するために、サブ搬送波周波数の減算に続いて、残余サブチャネル入力信号周波数を整合させるように周波数シフトされてもよい。
【0045】
上で説明したとおり、チャネル入力信号を捕捉するときにとられる処理ステップは、信号を追跡するときのものと異なる。各々の相違が、ここで考察されることになる。
【0046】
捕捉
捕捉の間、各サブチャネルでの相関器は、或る時間期間にわたってステップ(iii)からのサンプルを格納するバッファを備える。時間期間は、適切に強い信号を抽出するために必要とされる要求処理利得(より長いバッファが好都合)および相関に関与する処理労力(より短いバッファが好都合)などのシステム要件によって選ばれる。そのようなトレードオフは普通の当業者によって直ちに認識されるであろう。有利には、セグメント化された相関手法が上述したように使用されてもよい。この手法では、バッファは、各々複数の連続サンプルを保持する、連続セグメントのセットとして処理され、ここで各セグメントにおけるサンプルは、基準信号の対応部分と相関されるように配置される。
【0047】
セグメントサイズは、セグメント内に格納されるサンプルの時間期間にわたる(未知の周波数オフセットによって信号に引き起こされる)最大所望位相誤差などの要因に基づいて選ばれてもよい。信号の周波数ホップ性により、セグメントの多くが、(既知の基準信号の存在によって決定される)有効信号を収容するとは期待されないことになり、それ故任意の単一の相関の間、これらのセグメントが無視されることができる(すなわちそのようなセグメントでサブ相関が行われない)ことが認識されるであろう。これは処理パワーを節減する。セグメント内のサブ相関は、基準信号が存在する間にされる必要があるだけである。一般に、ホップの開始および終了(すなわち入力信号が次にホップする前に所与の周波数に留まる時間帯)は相関器セグメントと時間整合されない。サブ相関は、したがって、基準信号が存在しない期間の間、相関プロセスに好都合にもゼロを供給して、したがって、これらの時間に入力信号を効果的に無視してもよい。これも処理パワーを節減する。
【0048】
各サブチャネルでは、セグメント相関結果(そのセグメントの間にそのサブチャネルにホップがなかったためにゼロであるいずれも含む)が、サブチャネルDTFTへの入力として提供される。各サブチャネルDTFTはM個の出力を提供し、それらは、前述したように、各々異なる周波数シフトf
Aを有する、M個の個別の相関器のセットの出力にほぼ同等であり、ここでf
Aの値は
【数11】
である。
【0049】
最高処理利得、したがって最大検出感度を達成するために、全てのサブチャネルからの結果をコヒーレントに結合することが必要である。これは、入力信号への周波数シフトfAkの影響が全てのサブチャネルに周波数シフトfAkを引き起こすので、各可能な周波数シフトfAkごとに個別になされなければならない。コヒーレント結合プロセスは、したがって、対応する出力、すなわち各サブチャネルDTFTからのインデックスk(ここでkは-M/2から(M/2)-1に及ぶ)を持つ出力を入力としてとらなければならない。
【0050】
必要なコヒーレント結合プロセスを説明するために、最初に、入力周波数シフトがない場合(すなわち、k=0)を考える。前述したように、信号は、電波としての送信のために搬送波周波数fCARR上へ変調される。この周波数fCARRは受信機の初期ステージで減算される。したがって、我々の分析では、ゼロに等しい中心周波数を持つサブチャネルは、実際fCARRに等しい中心周波数で送信された。同様に、我々の分析では、fSUBCARRに等しい中心周波数を持つサブチャネルは、実際fCARR+fSUBCARRに等しい中心周波数で送信された。
【0051】
伝搬遅延がτ秒である場合、周波数fでの電波の位相はexp(-j2πfτ)ラジアンだけ位相がシフトされる。それ故、ゼロに等しい中心周波数を持つサブチャネルの位相シフトはexp(-j2πfCARRτ)ラジアンである一方で、fSUBCARRに等しい中心周波数を持つサブチャネルの位相シフトはexp(-j2π(fCARR+fSUBCARR)τ)ラジアンである。受信機での遅延探索プロセスは、相関する前に受信機における基準信号に整合遅延を適用することによって入力信号における基準信号の存在を検出するものと意図される。しかしながら、値がτに最も近い適用された遅延さえ一般に、それに正確には等しくなく、小さい残余遅延、τR秒を残す。対応して、exp(-j2π(fCARR+fSUBCARR)τR)ラジアンに等しい各サブチャネルにおける位相シフトがある。我々は全てのサブチャネルに共通である位相シフトexp(-j2πfCARRτR)ラジアンを無視することができる、これは搬送波位相シフトとして知られており、全ての無線システムに存在する。それは、残余遅延およびサブチャネル周波数の関数である相対位相シフトexp(-j2πfSUBCARRτR)ラジアンを残す。
【0052】
サブチャネルをコヒーレントに結合するために、これらの位相シフトは、サブチャネル出力を合算する前に相殺されなければならない。もしτ
Rの値が知られていれば、相殺は、各サブチャネルに位相シフトexp(+j2πf
SUBCARRτ
R)を適用することを要求するであろう、なおここでf
SUBCARRはそのサブチャネルの中心周波数である。サブ搬送波の周波数が周波数間隔Δf
SUBで均等に離間されるとするならば、サブ搬送波周波数は、qを整数として、f
SUBCARR(q)=qΔf
SUBと書かれてもよいので、要求される位相シフトはexp(j2πqΔf
SUBτ
R)である。(共通周波数kでの)サブ搬送波出力が
【数12】
でラベルされる場合、要求されるコヒーレント結合出力は、
【数13】
の全てのサブ搬送波にわたる和である。この関数は、信号ラジアン周波数Δf
SUBτ
Rで評価される、サブ搬送波出力
【数14】
から形成される入力ベクトルの離散時間フーリエ変換である。
【0053】
しかしながら、τRの値は知られていない。解決策は、τRの候補値のセットを定め、そして各候補値でDTFTコヒーレント結合を計算することである。τRの候補値の要求される間隔は、検出性能の最悪ケース損失が十分に小さいことを保証するために、分析によって決定される。計算される必要があるDTFT出力の合計数は、それゆえ、τRの値間の間隔で除算した、相関間の遅延間隔に等しい。
【0054】
したがって、M個の共通DTFTのバンクがある。各々N個の出力を持つM個の共通DTFTのバンクは、したがって、N×Mの出力の配列を提供する。ある所定の閾値を上回るこの配列内のピークが、成功裏に捕捉された信号を示し、M軸上のピークの位置が、信号に適用されたドップラー(またはドップラー様の)シフトを示す。N軸上のピークの位置は、真の相関ピークと相関に適用された実際の遅延との間の残余遅延τRを示す。
【0055】
したがって、本方法は、受信信号のドップラーまたはドップラー様のシフト、それ故信号の周波数シフトに対応する特定のDTFTを、最大出力によって示されるように識別するように、M個の共通DTFTの出力を検査するステップを更に含んでもよい。
【0056】
上で説明したとおり、捕捉の間に相関が計算されるレートは、典型的に、チップ持続期間当たり2つの相関である。したがって、ステップ(iii)のサンプル選択プロセスは、それに応じて選択するように配置され、結果として、本来の入力信号デジタル化レートからの、サンプルレートの著しい減少になる。
【0057】
追跡
一旦信号が、上述したように、成功裏に捕捉されると、それから、プロセスは一般に追跡モードに切り替わることになる。これは、拡散符号遅延(別のチャネルからのそれと、または内部クロックと比較して)の精密測定を得ることを伴う。GNSS用途では、このステージでのより良い精度は、改善された位置精度に全く等しい。
【0058】
有利には、サンプルのサブセットの選択は、各サブチャネル内で、着信信号の「最近傍サンプリング」を利用してもよい。この手法では、デジタイザからの入力サンプルストリームは、隣接チップでのサンプル点と比較して異なる点で、およびチップレートの整数倍でないサンプルレートを有するために、各チップの複数(ほぼ4つ、8つ、16個または32個など)のサンプルを備える。サンプルは次いで、相関器の各タップへの入力のために、チップ上のタイミング基準点に関して所望の理想時間に時間が最も近いサンプル出力を選択するように配置されるサンプル選択ユニット(SSU)によって処理される。この「最近傍選択」手法は、引用により組み込まれている上述した国際特許出願WO2015/107111に更に記述されている。それは、結果として、サンプリングレートがチップレートの整数倍であるシステムと比較して、非常に改善された自己相関関数特性になる。
【0059】
受信機が追跡フェーズ動作にあるとき、着信信号のホップパターンが知られていることが認識されるであろう。したがって、各サブチャネルにおける相関器に関して記述したバッファ構造の必要性は必要でない。その代わりに、各サブチャネルは有利には、そのサブチャネルで基準信号の存在と一致する着信データだけを格納および相関させるように配置されてもよい。これは、後に例示するように、処理資源(例えばハードウェアまたはファームウェア)の若干の節減を可能にする。また、周波数オフセットが(ほんの小さな誤差と共に)知られているので、それは相関前に除去されることができ、したがってセグメント化された相関器手法の必要性はない。しかしながら、遅延が実質的に、しかし正確でなく知られているので、各サブチャネルに関する相関結果は依然個別の記憶装置に保持されなければならない。それ故、小さい残余遅延τRがある可能性があり、そしてDTFTを使用してサブチャネル結果をコヒーレントに結合するのに必要な位相関係は正確には知られていない。したがって、各サブチャネルでの全相関が完了したときに、サブ相関出力は共通DTFTに供給されるが、残余遅延τRが小さいので、多くの実施形態において、ゼロに近い残余遅延を有する極めて少ない出力を発生することが必要なだけである。共通DTFTは典型的に、このステージで、任意の所与の時間に、3つの出力を提供するように配置されてもよく、それらはわずかに異なる時間遅延出力に対応する。異なる時間遅延出力は、GNSS用途において遅延追跡ループで典型的に使用される相関プロセスのよく知られているEarly(E)、Prompt(P)およびLate(L)出力に対応してもよい。一部の実施形態は4つ以上の出力を有してもよい。例えば、一部は、Prompt出力、各々Prompt出力に対して異なる時間遅延を有する2つのEarly出力、およびやはり各々Prompt出力に対して異なる時間遅延を有する2つの異なるLate出力を備える、5つの出力を有してもよい。隣接出力間の時間遅延は、0.05と0.7との間、より典型的には0.2と0.5との間、より典型的には期待される入力信号の自己相関の主ローブの半値パワー幅の0.5であってもよい。他の実施形態は共通DTFTの6つ以上の出力を有しても、またはその間で異なる時間間隔を有してもよい。
【0060】
既存の通信およびGNSS受信機のように、受信信号の搬送波周波数は、そのような相関各々のPrompt出力の位相角を測定し、そして結果を位相ロックループ(PLL)に供給することによって追跡されてもよい。
【0061】
DTFTプロセスは、例えばFFTから得られるであろう分解能より微細な分解能で離間される出力サンプルを有するように配置されてもよい。入力にゼロパディングすること、またはCORDICアルゴリズムなどのよく知られている技術が、所望通り出力分解能を増加させるために使用されてもよい。
【0062】
本発明の態様がハードウェアでまたはソフトウェアで実装されてもよいことが認識されるであろう。例えば、1つもしくは複数のFPGAもしくはASICが、本発明のステップを実施するようにプログラムされてもよく、または代替的に、プロセスステップの一部もしくは全てが1つもしくは複数の汎用デジタル信号プロセッサなどで実施されてもよい。
【0063】
周波数ホッピングの適用が信号の帯域幅が著しく増加されることを意味することが理解されるであろう。捕捉前に、ホップの時間整合は知られていないので、受信機が広帯域信号を(ナイキストのサンプリング基準を満たすために)比例して高レートでサンプリングすることが必要である。それ故、基準信号の所与の持続期間に対して(持続期間は充分な検出感度を達成するために選ばれる)、各相関が比例してより多数のサンプルを処理しなければならないということになる。最大検出感度を達成するために、既に説明したように、インコヒーレントよりむしろコヒーレント相関が使用されるべきであり、そして信号の広帯域幅の更なる結果があり、上で説明したとおり、それは相関ピークが比例してより狭いということである。これは、より近い時間間隔で(言い換えれば、より頻繁に)相関出力を計算することを必要とし、典型的に、連続した相関間の間隔は相関ピーク幅の0.25および0.5倍間である。先行技術の相関方法が使用される場合、これらの要因の両方とも信号帯域幅に比例するので、既に記述したそれらの捕捉相関方法の全体の計算負荷は、信号帯域幅の2乗に比例して増加する。本発明は、本明細書に記述したように、既知の先行技術と比較して、計算負荷が軽減されることを可能にする。
【0064】
本発明は、本発明の方法を実装するように配置されるシステムに拡張する。システムは、ハードウェアもしくはソフトウェア、または何らかのその組合せで実装されてもよい。したがって、典型的に、ASIC、FPGAおよび/またはDSPデバイスが本発明の実装に使用されてもよい。システムは、例えば1つまたは複数のアナログデジタル変換器を使用して、受信アナログ信号をデジタル形式に変換するための手段も更に備えてもよい。システムは、処理ステップを実装するために必要に応じて、1つまたは複数の相関器、フィルタ、サンプラ、位相弁別器、数値制御発振器、乗算器、累算器、フーリエ変換器、位相ロックループ、遅延ロックループ、周波数混合器を含んでもよい。システムは、上記概説した処理ステップ内の様々なステージでデジタルデータを記憶するためのメモリ(上記処理デバイス内に含まれても、またはそれらと個別でもよい)を更に含んでもよい。
【0065】
システムは衛星航法システムでもよい。有利には、システムは、複数の衛星からの信号に対する上記概説したステップを実装するように配置されてもよく、航法定点を提供するために、複数の衛星からの、上記概説した処理ステップからの出力を使用してもよい。
【0066】
システムはデータ通信システムの一部を形成してもよい。
【0067】
本発明はここで、以下の図を参照しつつ、専ら例として記述されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【
図1】先行技術のセグメント化された相関器の図である。
【
図2】本発明の実施形態の最上位ブロック図である。
【
図3】前図には図示されない周囲のフィードバックプロセスを併せた、追跡モード動作であるときの本発明の実施形態の簡略ブロック図である。
【
図4】追跡モードであるときの動作のための代替構成の図である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
【0070】
図2は、拡散符号を収容する周波数ホップスペクトル拡散信号を処理するための本発明の実施形態を図示する。信号プロセッサ1が、信号の流れと併せて、簡略形式で図示される。例えば点線ボックス4によって示されるように、k個の入力サブチャネルの各々に事前デジタル化された入力信号2が提供される。入力信号2は、拡散符号および周波数ホップ帯域幅Bによって定められる周波数帯域を有する。各サブチャネル4は、その処理配置が実質的に同様であるが、入力信号の帯域内の個別の周波数帯域を処理するように配置される。したがって、k個のサブチャネルが与えられると、各サブチャネルはサイズB/kの帯域を処理することになる。好都合であるが、必ずではなく、サブチャネルの数kは、受信信号2で利用される離散周波数ホップの数に対応することになる。
【0071】
各サブチャネル内、例えば4内で、処理は以下の通りである。入力は、デジタル乗算器6で、所与のサブチャネルと関連付けられるホップ周波数を入力から減算する信号と混合されて、更なる処理のためにベースバンド出力を提供する。ベースバンド信号は次いで、チップ整合フィルタ8を使用してフィルタリングされ、そして結果的な出力が10でサブサンプリングされてサンプルレートを減少させる。サブサンプラ10は、チップの始まりに対して時間(前か後か)、絶対基準時間が最も近いサンプルを選択する最近傍(N/N)サンプラである。サブサンプラが出力サンプルを提供するレートは、プロセッサが現在捕捉モードであるか追跡モードであるかに依存する。捕捉の間、本実施形態はその出力にチップ持続期間当たり2つのサンプルを提供し、そして追跡の間、それはチップ当たり単一のサンプルを供給するが、他の実施形態が、各モードの間、より多くのサンプルを提供してもよいことが認識されるであろう。
【0072】
N/Nサンプラ10からの出力は、複数の連続サンプルを格納するバッファ12に提供される。バッファ12のサイズは、後続の相関プロセスによって達成されるであろう処理利得の程度に影響する。それ故、より大きいバッファは、増加された処理負荷を犠牲にして、増加された相関利得を提供することになる。より小さいバッファは、相応した効果を明らかに有することになる。本実施形態において、バッファは、基準信号の長さの時間期間に等しい時間期間からサンプルを保持するように選ばれる。バッファ12は、そのデータを-要求に応じて-セグメント化された相関器14に提供する。これは、一連のサブ相関器16として作用し、各々がバッファにおけるデータの連続サブセットを受信し、そしてサブセットを、基準符号発生器18によって提供される基準符号の対応するサブセットと相関させる。各サブ相関器は、単一の複素出力値を生成する。
【0073】
受信機が、(捕捉フェーズの間)それが捜している期待される信号に気づいているので、(そのセグメント内の基準信号の存在によって決定される)有効信号を収容するものとされるセグメントのみが相関される必要がある。したがって、一部のサブ相関器、そのサブチャネルに基準信号がないセグメントを処理するものは、ゼロの値を出力する。セグメントサブ相関器の全てからの相関の結果は、M個の出力を有するサブチャネルDTFT20に提供される。サブチャネルDTFT20の出力の周波数間隔は、前述したように、最悪ケース処理損失が許容可能に小さいことを保証するように選ばれる。
【0074】
サブチャネルDTFTのM個の出力は、M個のチャネル幅の(すなわち全チャネルに共通)DTFT22-1-22-Mの対応する入力に供給される。したがって、所与のサブチャネルからのM個のサブチャネルDTFT出力の各々は、異なる共通DTFT22に提供される。
【0075】
共通DTFT22の各々は複数の出力23を提供する。所与の共通DTFTからの出力は、入力信号2にドップラー(ドップラー様を含む)周波数変動によって引き起こされる可能性がある、特定の入力周波数オフセットに関して、および相関のために使用される遅延に対して(上記「残余遅延」と称された)小さい遅延オフセットの選ばれたセットに関して、帯域幅Bの全体にわたる相関の結果を表す。したがって、M個の共通DTFTからの出力の2D配列は、全ドップラー帯域幅にわたり、遅延オフセットの微細グリッド上の相関を提供する。配列にわたるピーク探索が行われ、そして或る所定の閾値を上回るピークが見つけられれば、これは入力信号2の捕捉成功を示す。
【0076】
良好な性能を達成するために、上記した結合されたサブチャネル相関器手法は、従前の広帯域相関器と同じ相関(処理)利得を達成するべきである。これが生じるために、各周波数での対応するサブチャネルDTFT出力(すなわち、各サブチャネルDTFTからの同等の出力)はコヒーレントに結合されるべきである。共通DTFTがこれを達成する。
【0077】
共通DTFTと一緒に、サブチャネルDTFTの配列を備えるアーキテクチャが、2D DTFT-いくつかの処理アーキテクチャが存在する-に等しいことに留意されたい。普通の当業者は、したがって、利用する効果的なアーキテクチャに精通しているであろう。
【0078】
捕捉に続いて、上で説明したとおり、プロセスは追跡モードに入る。
図3は、拡散符号を収容する周波数ホップスペクトル拡散信号を追跡するための本発明の実施形態を図示する。追跡モードであるとき、受信機のタスクは、捕捉の間に見つけられたピークの(或る基準時間または信号に対する)時間遅延を測定することである。
【0079】
本実施形態は、サブチャネル31-(1-K)のセットを有するように構成される受信機30を備え、この場合、入力信号の各ホップ周波数に対して個別のサブチャネルがあるが、前記したように、これは必須ではない。各サブチャネル31-k(ここで(小文字)kは個々のチャネルを表す)は、第1の入力にサブチャネル入力信号を取り、混合器32の第2の入力に供給されてサブチャネルにおける入力信号をベースバンドまで下げる、チャネル中心周波数の複素正弦波を生成するように配置される数値制御発振器50-kからの出力を取る混合器32、およびいかなる感度の損失もなく、サブチャネルにおけるサンプルレートが減少されることを可能にするCMF33を有する。CMF33の出力はサンプル選択ユニット34によってサンプリングされ、そして選ばれたサンプルは、サブチャネルにおける入力信号を既知の基準符号と相関させるための相関器35に提供される。サンプル選択ユニット34は、追跡のために要求される相関を計算するために要求されるサンプルのみを選ぶ。
【0080】
特に、受信機は、ホップパターンおよび基準符号を知っており、したがって、各ホップ周波数からのどのサンプルが周波数ホップ信号の一部を形成するかを知っている。したがって、各サブチャネルからの要求されるサンプルのみがサンプル選択ユニット34によって選択される。それらは次いで乗算器36で基準シーケンスの対応するサンプルの共役で乗算され、そして結果は累算器記憶装置37で累算される。記憶装置における最終結果が要求される相関である。各サブチャネルに対して、異なる遅延値に対する異なる相関結果を累算するために使用される、2つ以上のそのような記憶装置があってもよいが、典型的に1つのみ要求される。
【0081】
各サブチャネルからの相関器35の出力は共通DTFT38に送られる。追跡の間、計算される必要がある共通DTFTの出力数は減少されることができる。典型的に、Early、PromptおよびLate出力に対応して、3つ使用されてもよく、次いで当業者に知られているであろう従前の仕方で処理される。共通DTFTの計算は、相関ピークを逃すことを回避する適切な遅延間隔で丁度これらの3つの出力を生成するように適合されてもよい。これを達成するために、DTFTの3つの出力は典型的に、相関ピークの幅のほぼ半分(すなわち1/(2B)、ここでBは全信号の帯域幅である)だけ隣接出力から時間的に分離されるように選ばれてもよい。これは、従来のBPSK追跡器の半チップ持続期間の間隔に対応する。しかしながら、当業者によく知られているように、間隔は、例えばマルチパスの影響を軽減するために、より広いまたはより一般により狭いように選ばれてもよい。これは、例えば、Mohammad Zahidul H.BhuiyanおよびElena Simona Lohan(2012).Multipath Mitigation Techniques for Satellite-Based Positioning Applications、Global Navigation Satellite Systems:Signal,Theory and Applications、Prof.Shuanggen Jin(編)、ISBN:978-953-307-843-4、InTech、第17章、405-426頁(Bhuiyan)に記述されている。0.05-0.2チップの範囲の相関器間隔が従来のBPSK追跡器に使用され得るのと同じように(Bhuiyan、405頁)、DTFTの3つの出力は、相関ピークの幅のほぼ0.05-0.2倍だけ隣接出力から時間的に分離されるように選ばれてもよい。もちろん、マルチパスの軽減のためにまたは他の目的で、この範囲の外の他の時間間隔が使用されてもよい。
【0082】
更には、マルチパスに対処するための他のよく知られている技術(ダブルデルタ(Double-Delta)技術(Bhuiyan406頁および412-13頁)を含む)が追跡ループにおいて4つ以上の相関器出力を使用する。これを達成するために、DTFTは、要求される4つ以上の出力を提供するように適合され得る。ダブルデルタ技術は典型的に、5つの相関器出力-2つのearly、2つのlateおよび1つのprompt出力を使用する。Bhuiyanに記述されているなどの他の技術が、より多くの相関器出力を要求してもよい。要求される追加的な出力は、普通の当業者によって理解されるであろうDTFTの適切な構成によって提供されることができる。
【0083】
GNSS受信機で従来通りであるように、earlyおよびlate信号は、遅延ロックループ(DLL)40に遅延誤差の推定値を提供する遅延弁別器39に供給される。遅延ロックループは、各サブチャネル上のサンプラ34を駆動して、着信するデシメーションされる信号をサンプリングするために使用されることになるサンプル時間を選択する数値制御発振器(NCO)41を含む。Prompt相関器出力は、搬送波周波数位相ロックループ(PLL)43に入力を提供する位相弁別器42に供給され、位相ロックループはNCO44を有しており、その出力は、乗算器46を使用して着信信号45と混合するために使用される。GNSSおよび通信の両受信機で従来通りであるように、このNCO44は乗算器46と一緒に、信号の周波数オフセットの現在の推定値の負数だけ入力信号の周波数をシフトすることによって、入力信号からいかなる周波数オフセットも除去する。これは「搬送波ワイプオフ」と呼ばれる。
【0084】
図2に戻ると、そこでの相関器が、(捕捉の間、入力信号の未知のドップラー周波数オフセットを扱うことができるように)セグメント化された相関器として動作している一方、システムが(
図3に例示したように)追跡モードで稼働中であるとき、相関器が、セグメント化されていない相関器(追跡中のように、入力信号の残余周波数オフセットが十分に小さいときに適切である)に切り替わり、1つの(複素)出力を提供してよいことが想起されるであろう。この場合、相関プロセスは、式3によって記述されるようである。これは、ただ1つのセグメント(M=1)を持つセグメント化された相関器とみなされてもよく、結果として一点DTFTを経験し、これは出力が入力と同じである自明な関数である)。
【0085】
所与のサブチャネル31-kのための相関器に提供されなければならない基準シーケンスは、ホップ周波数が信号をサブチャネルk内であるようにする期間の間、(周波数ホッピング前に送信機で発生された)本来の基準シーケンスに等しい。他の時間には、サブチャネルkのための基準シーケンスはゼロである。本来の基準シーケンスから各サブチャネルのための基準シーケンスを発生するプロセスは、チップ基準符号48およびホップパターン(すなわちホップ周波数のパターン)49の両方のローカルコピーからの入力により、基準発生ユニット47によって実施される。チップシーケンスおよびホップパターンの両方についてのその知識により、それは、チップシーケンスの適切な部分を、適切な時間にそのサブチャネル上の入力信号との相関のために正しいサブチャネル相関器に導くことができる。
【0086】
式3は、各サブチャネル相関演算が多数の乗算演算を備え、その結果が合計されて単一の出力結果を提供することを示す。
図3では、後の明快さのために、これらの2つの態様は個別に図示され、乗算ユニット36がその出力を累算ユニット37に供給する。
【0087】
図3では、既に述べたように、いかなる時点でも1つのホップ周波数のみがアクティブであるので、いかなる時点でも1つの相関乗算ユニット36のみがアクティブである。したがって、このことは、追跡フェーズの間、要求される処理構成を単純化し、それ故、パワーならびにハードウェア、ファームウェアおよび/またはソフトウェア要件を減少させるために利用されてもよい。
図4は、そのような減少された構成を有する実施形態を図示する。
【0088】
実施形態60は、追跡モードで周波数ホッピング符号変調信号を処理するための装置を備える。したがって、信号が捕捉されており、そして以前の捕捉フェーズの間に符号およびホッピングパターンのタイミングについての知識が得られているとされる。装置は、1つの入力63にデジタル化された入力信号を、および後述することになる更なる「搬送波ワイプオフ」64を受信する入力デジタル混合器62を有する処理チャンネル61を有する。入力混合器62の出力は、符号およびホッピング周波数の両方によって決められる帯域幅を有する信号である。この信号は、ホップ周波数ワイプオフ混合器65の第1の入力に印加される。装置は、着信ホッピングパターンと目下(捕捉フェーズに続いて)同期しているホップパターン発生器81を有する。ホップパターン発生器81は、NCO79を使用して、所与の瞬間に着信周波数の逆のコピーを発生し、逆のコピーはホップ周波数ワイプオフ混合器65の第2の入力に提供される。この混合器65の出力は、したがって、符号変調だけを乗せたベースバンド信号である。
【0089】
この信号はCMF66でフィルタリングされ、次いでサンプラ67によってサンプリングされ、そしてそこからのサンプルが相関器乗算器68に供給される。サンプラ67は、後述するように、NCO69によって駆動され、そして乗算器68にはチップ基準符号71から現在のチップが供給される。乗算器68の出力は、各サブチャネルのための異なる累算器70にスイッチ80を使用して切り替えられる。スイッチ80はホップパターン発生器81によって制御される。
【0090】
各累算器70は、格納された基準符号71との(上述したように処理された)入力信号の乗算の結果を累算する。各累算器からの出力は共通DTFT72に提供され、これは
図3の共通DTFTと同一の仕方で機能する。共通DTFT72は、前の通り、3つの出力-Early、PromptおよびLateを有し、そしてこれらはやはり、相関ピークの幅のほぼ半分の、隣接出力間の相対時間遅延を、有するように配置される。
図3の実施形態でのように、EarlyおよびLate出力は遅延弁別器73に、そしてそこからDLL74に行き、DLL74がNCO69に供給する。
図3ではNCOが異なるサブチャネルの各々上のサンプラにクロックを送るために使用されたのに対して、ここでは、NCO69出力は単一のサブチャネル61上の単一のサンプラ67のみにクロックを送る。
【0091】
共通DTFTからのPrompt出力は位相弁別器76に信号供給し、これが次いで、着信信号に周波数が等しい信号を生成するために使用されるNCO78を駆動するPLL77に信号供給する。このNCO信号はデジタル混合器62で着信信号と混合されて、上述したキャリアワイプオフ機能を遂行する。
【0092】
本実施形態は、したがって、単一のCMF、サンプラ、および相関機能のために、単一の乗算器のみが追跡フェーズの間、使用されることを要求する。それは、
図4に図示されるように、処理のこれらの態様の単一のハードウェア、ファームウェアまたはソフトウェアインスタンスのみが提供される必要があることを意味する。しかしながら、(各サブチャネルに関する相関結果を保持する)累算ユニット70は、既に説明したように、依然個別である必要がある。
【0093】
一旦信号が捕捉されると、捕捉フェーズの間、信号の時間遅延もその周波数オフセットもほんの小さな誤差で知られている。この再構成は、したがって、
図3に図示される実施形態と比較すると、結果として減少された処理要件になり、それ故、追跡フェーズの間、削減されたパワー消費を提供する。
【0094】
上記の例および実施形態は限定的でなく、また記述した実施形態、方法およびプロセスの様々な変更および補正が、依然請求項の範囲内に収まりつつ、なされることができることが認識されるであろう。適切ならば、本明細書に記述した様々な機能およびプロセスが、実施形態の要件および機能性に従って、ハードウェアもしくはソフトウェア、または2つの何らかの組合せで実装されてもよいことも理解されるであろう。ハードウェアは、記述した様々なプロセスステップを実装するように適切に構成またはプログラムされる1つまたは複数の信号プロセッサ、FPGAおよび/またはASICから構成されてもよい。