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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】多価制御性T細胞調節因子
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230216BHJP
   C07K 14/55 20060101ALI20230216BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230216BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20230216BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230216BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20230216BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20230216BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230216BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230216BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K14/55 ZNA
C07K16/28
C07K16/00
C07K19/00
A61K38/17 100
A61K38/20
A61K39/395 N
A61K47/68
A61P21/00
A61P29/00
A61P37/06
A61P17/00
A61P1/04
A61P17/02
A61P17/06
A61P3/10
A61P25/00
A61P17/14
A61P27/02
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2019531303
(86)(22)【出願日】2017-12-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 US2017066163
(87)【国際公開番号】W WO2018112069
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-12-10
(31)【優先権主張番号】62/433,533
(32)【優先日】2016-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518256614
【氏名又は名称】デリニア,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グレーブ,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジュンミン
(72)【発明者】
【氏名】ナガラジャン,ニランジャナ
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ジョン
【審査官】平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0304574(US,A1)
【文献】国際公開第2016/014428(WO,A2)
【文献】国際公開第2015/118016(WO,A1)
【文献】特表平11-500915(JP,A)
【文献】特表2015-523967(JP,A)
【文献】国際公開第2014/145907(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/012085(WO,A2)
【文献】Felipe Andres Cordero da Luz et al.,Mediators of Inflammation,2014年,Vol 2014,Article ID 342410
【文献】HA J. et al.,Frontiers in Immunology,2016年10月,Vol.7,Article 394
【文献】植田充美監修,抗体医薬の最前線,株式会社シーエムシー出版,2007年,pp.4-11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
A61K 38/00-38/58
A61K 39/00-39/44
A61K 47/00-47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) N末端のヒトIL-2タンパク質ドメイン、
b) 免疫グロブリンFcタンパク質ドメイン、及び
c) C末端の、インターロイキン1受容体様1(ST2)に結合するタンパク質ドメインであって、ST2に特異的な抗体又はその抗原結合断片である、前記C末端の、ST2に結合するタンパク質ドメイン
を含む、融合タンパク質。
【請求項2】
少なくとも1つのペプチドリンカードメインをさらに含む、請求項1記載の融合タンパク質。
【請求項3】
ヒトIL-2タンパク質ドメインが、配列番号2のアミノ酸配列と比較してT3A、N88R、N88G、D20H、C125S、Q126L、及びQ126Fから成る群から選択される置換を有するヒトIL-2を含む、請求項1又は2記載の融合タンパク質。
【請求項4】
免疫グロブリンFcタンパク質ドメインが、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号8又は配列番号9のヒトIgG1 Fc変異体から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか1項記載の融合タンパク質。
【請求項5】
ペプチドリンカードメインが、配列番号6のアミノ酸配列を含む、請求項2~4のいずれか1項記載の融合タンパク質。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項記載の融合タンパク質をコードする、核酸。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項記載の融合タンパク質を含む、二量体タンパク質。
【請求項8】
第1の融合タンパク質と第2の融合タンパク質とを含む二量体タンパク質であって、
a. 各融合タンパク質が、免疫グロブリン(IgG)Fcタンパク質ドメイン、並びに
i. N末端のヒトIL-2タンパク質ドメイン、及び
ii. C末端の、インターロイキン1受容体様1(ST2)に結合するタンパク質ドメインであって、ST2に特異的な抗体又はその抗原結合断片である、前記C末端の、ST2に結合するタンパク質ドメイン
から成る群から選択される少なくとも1つの追加のタンパク質ドメインを含み、且つ、
b. 二量体タンパク質が、少なくとも1つのN末端のヒトIL-2タンパク質ドメイン、及び少なくとも1つの前記C末端の、ST2に結合するタンパク質ドメインを含む、
前記二量体タンパク質。
【請求項9】
a. 第1の融合タンパク質が、N末端のヒトIL-2タンパク質ドメイン、第1の免疫グロブリンFcタンパク質ドメイン、及び第1のペプチドリンカーを含み、且つ、
b. 第2の融合タンパク質が、前記C末端のST2に結合するタンパク質ドメイン、第2の免疫グロブリンFcタンパク質ドメイン、及び第2のペプチドリンカードメインを含む、
請求項8記載の二量体タンパク質。
【請求項10】
融合タンパク質の少なくとも1つが、少なくとも1つのペプチドリンカードメインをさらに含む、請求項8記載の二量体タンパク質。
【請求項11】
ヒトIL-2タンパク質ドメインが、配列番号2のアミノ酸配列と比較して、T3A、N88R、N88G、D20H、C125S、Q126L、及びQ126Fから成る群から選択される置換を有するヒトIL-2を含む、請求項8~10のいずれか1項記載の二量体タンパク質。
【請求項12】
免疫グロブリンFcタンパク質ドメインが、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号8又は配列番号9のヒトIgG1 Fc変異体から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項8~11のいずれか1項記載の二量体タンパク質。
【請求項13】
ペプチドリンカードメインが、配列番号6のアミノ酸配列を含む、請求項8~12のいずれか1項記載の二量体タンパク質。
【請求項14】
IgG Fcタンパク質がシステイン残基を含み、且つ、第1の融合タンパク質と第2の融合タンパク質とが、IgG Fcタンパク質ドメインのシステイン残基を介して互いに連結されている、請求項8~13のいずれか1項記載の二量体タンパク質。
【請求項15】
ST2-制御性T細胞と比較して、ST2+制御性T細胞を選択的に標的とする、請求項7~14のいずれか1項記載の二量体タンパク質。
【請求項16】
請求項1~5のいずれか1項記載の融合タンパク質、又は請求項7~15のいずれか1項記載の二量体タンパク質を含む、医薬組成物。
【請求項17】
それを必要とする対象において状態を処置するための、請求項16記載の医薬組成物。
【請求項18】
対象に前記医薬組成物を投与することが、対象におけるST2-制御性T細胞のレベルと比較して、対象におけるST2+制御性T細胞のレベルのより大きな増加をもたらす、請求項17記載の医薬組成物。
【請求項19】
対象に前記医薬組成物を投与することが、対象のST2-制御性T細胞と比較して、対象におけるST2+制御性T細胞を選択的に活性化する、請求項17又は18記載の医薬組成物。
【請求項20】
状態が炎症性ミオパシーである、請求項17記載の医薬組成物。
【請求項21】
炎症性ミオパシーが、筋ジストロフィー、多発性筋炎、皮膚筋炎から成る群から選択される、請求項20記載の医薬組成物。
【請求項22】
状態が、脂肪組織の炎症性状態、結腸の炎症性状態、及び肺の炎症性状態から成る群から選択される、請求項17記載の医薬組成物。
【請求項23】
脂肪組織が内臓脂肪組織である、請求項22記載の医薬組成物。
【請求項24】
状態が自己免疫疾患である、請求項17記載の医薬組成物。
【請求項25】
自己免疫疾患が、移植片対宿主病、尋常性天疱瘡、全身性エリテマトーデス、強皮症、潰瘍性大腸炎、クローン病、乾癬、1型糖尿病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、円形脱毛症、ブドウ膜炎、視神経脊髄炎、及びデュシェンヌ型筋ジストロフィーから成る群から選択される、請求項24記載の医薬組成物。
【請求項26】
対象におけるST2-制御性T細胞と比較して、ST2+制御性T細胞を選択的に活性化するための、請求項16記載の医薬組成物。
【請求項27】
約1μg/kg~約250μg/kgの前記融合タンパク質又は二量体タンパク質を含む、請求項17~26のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記医薬組成物が、静脈内投与のために製剤化されたものである、請求項17~27のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記医薬組成物が、皮下投与のために製剤化されたものである、請求項17~27のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項30】
対象がヒトである、請求項17~29のいずれか1項記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2016年12月13日に出願された米国仮特許出願第62/433,533号の優先権を主張し、その内容はその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の提出
本出願に関連する配列表は、EFS-Webを介して電子フォーマットで提出され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。配列表を含むテキストファイルの名前は、127754_00502_Sequence_Listingである。テキストファイルのサイズは91KBであり、テキストファイルは2017年12月13日に作成された。
【0003】
技術分野
本発明は、多価制御性T細胞調節因子に関する。
【背景技術】
【0004】
炎症性ミオパシーは、慢性的な筋肉の炎症及び筋力低下によって特徴付けられる状態である。筋ジストロフィーは、突然変異したジストロフィン遺伝子によって引き起こされる変性性筋疾患であるが、進行的変性の根本的な原因は筋肉の炎症である。これらの疾患に関連する炎症は、筋線維を損傷し、疲労、疼痛、及び進行性の筋肉変性を引き起こし得る。制御性T細胞(Treg)は、T細胞の特殊なサブセットである。Tregは、免疫系の活性化を抑制し、それによって免疫系の自己寛容を制御する。規定の分子マーカーを発現するTregのサブセット、例えば、受容体ST2は、炎症を起こした組織、例えば、傷害を受けた骨格筋及び炎症を起こした肺に見られる。ST2を発現するTregの拡大及び活性化は、急性筋傷害、及び筋ジストロフィーに関連した筋肉の炎症の消散に関与している。さらに、ST2+ Tregは、組織、例えば、内臓脂肪、結腸、及び肺に見られ、それらの組織において免疫調節機能及び組織修復機能を有する。
【発明の概要】
【0005】
一部の実施形態では、本開示は、以下を含む融合タンパク質:ヒトIL-2タンパク質ドメイン、免疫グロブリンFcタンパク質ドメイン、及びインターロイキン1受容体様1(ST2)に結合するタンパク質ドメインを提供する。特定の実施形態では、ST2に結合するタンパク質ドメインは、ヒトIL-33タンパク質ドメインである。特定の実施形態では、ST2に結合するタンパク質ドメインは、ST2に特異的な抗体、又はその抗原結合断片である。特定の実施形態では、融合タンパク質は、少なくとも1つのペプチドリンカードメインを含む。特定の実施形態では、ヒトIL-2タンパク質ドメインは、配列番号2のアミノ酸配列と比較して、T3A、N88R、N88G、D20H、C125S、Q126L、及びQ126Fからなる群から選択される置換を有するヒトIL-2を含む。特定の実施形態では、免疫グロブリンFcタンパク質ドメインは、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号8又は配列番号9のヒトIgG1 Fc変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、ヒトIL-33タンパク質ドメインは、配列番号10のアミノ酸配列と比較して、C208S、C227S、C232S及びC259Sからなる群から選択される置換を有するヒトIL-33を含む。特定の実施形態では、ペプチドリンカードメインは、配列番号6のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、融合タンパク質は、第1のペプチドリンカードメイン及び第2のペプチドリンカードメインをさらに含む。
【0006】
本明細書に記載される融合タンパク質の特定の実施形態では、各ドメインは、アミノ末端(N末端)及びカルボキシ末端(C末端)を有し、ここで、融合タンパク質は、ヒトIL-2タンパク質ドメインのC末端がペプチド結合を介して第1のペプチドリンカードメインのN末端に融合するように構成され、IgG Fcタンパク質ドメインのN末端は、ペプチド結合を介して第1のペプチドリンカードメインのC末端に融合し、第2のペプチドリンカードメインのN末端は、ペプチド結合を介してIgG Fcタンパク質ドメインのC末端に融合し、ST2に結合するタンパク質ドメインのN末端は、ペプチド結合を介して第2のペプチドリンカードメインのC末端に融合する。
【0007】
本明細書に記載される融合タンパク質の特定の実施形態では、各ドメインは、アミノ末端(N末端)及びカルボキシ末端(C末端)を有し、ここで、融合タンパク質は、ST2に結合するタンパク質ドメインのC末端がペプチド結合を介して第1のペプチドリンカードメインのN末端に融合するように構成され、IgG Fcタンパク質ドメインのN末端は、ペプチド結合を介して第1のペプチドリンカードメインのC末端に融合し、第2のペプチドリンカードメインのN末端は、ペプチド結合を介してIgG Fcタンパク質ドメインのC末端に融合し、ヒトIL-2タンパク質ドメインのN末端は、ペプチド結合を介して第2のペプチドリンカードメインのC末端に融合する。特定の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号22、配列番号23、配列番号24、又は配列番号25のアミノ酸配列を含む。
【0008】
一部の実施形態では、本開示は、本明細書に記載される融合タンパク質をコードする核酸を提供する。一部の実施形態では、本開示は、本明細書に記載される融合タンパク質を含む二量体タンパク質を提供する。一部の実施形態では、本開示は、第1の融合タンパク質及び第2の融合タンパク質を含む二量体タンパク質を提供し、各融合タンパク質は、免疫グロブリン(IgG)Fcタンパク質ドメイン、並びにヒトIL-2タンパク質ドメイン、及びインターロイキン1受容体様1に結合するタンパク質ドメイン(ST2)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるタンパク質ドメインを含み、二量体タンパク質は、少なくとも1つのヒトIL-2タンパク質ドメイン及びST2に結合する少なくとも1つのタンパク質ドメインを含む。
【0009】
特定の実施形態では、第1の融合タンパク質は、ヒトIL-2タンパク質ドメイン、第1の免疫グロブリンFcタンパク質ドメイン、及び第1のペプチドリンカーを含む。第2の融合タンパク質は、ST2に結合するタンパク質ドメイン、第2の免疫グロブリンFcタンパク質ドメイン、及び第2のペプチドリンカードメインを含む。特定の実施形態では、各ドメインはアミノ末端(N末端)及びカルボキシ末端(C末端)を有する。第1の融合タンパク質は、ヒトIL-2タンパク質ドメインのC末端がペプチド結合を介して第1のペプチドリンカードメインのN末端に融合するように構成され、第1のIgG Fcタンパク質ドメインのN末端は、ペプチド結合を介して第1のペプチドリンカードメインのC末端に融合し、第2の融合タンパク質は、第2のIgG Fcタンパク質ドメインのC末端がペプチド結合を介して第2のペプチドリンカードメインのN末端に融合するように構成され、ST2に結合するタンパク質ドメインのN末端は、ペプチド結合を介して第2のペプチドリンカードメインのC末端に融合する。特定の実施形態では、ST2に結合するタンパク質ドメインは、ヒトIL-33タンパク質ドメインである。特定の実施形態では、ST2に結合するタンパク質ドメインは、ST2に特異的な抗体、又はその抗原結合断片である。特定の実施形態では、二量体タンパク質の少なくとも1つの融合タンパク質は、少なくとも1つのペプチドリンカードメインをさらに含む。特定の実施形態では、ヒトIL-2タンパク質ドメインは、配列番号2のアミノ酸配列と比較して、T3A、N88R、N88G、D20H、C125S、Q126L、及びQ126Fからなる群から選択される置換を有するヒトIL-2を含む。特定の実施形態では、免疫グロブリンFcタンパク質ドメインは、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号8又は配列番号9のヒトIgG1 Fc変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、ヒトIL-33タンパク質ドメインは、配列番号10のアミノ酸配列と比較して、C208S、C227S、C232S及びC259Sからなる群から選択される置換を有するヒトIL-33を含む。特定の実施形態では、ペプチドリンカードメインは、配列番号6のアミノ酸配列を含む。
【0010】
本明細書に記載される二量体タンパク質の特定の実施形態では、第1の融合タンパク質は配列番号12のアミノ酸配列を含み、第2の融合タンパク質は配列番号13のアミノ酸配列を含む。第1の融合タンパク質は配列番号14のアミノ酸配列を含み、第2の融合タンパク質は配列番号15のアミノ酸配列を含む。第1の融合タンパク質は配列番号16のアミノ酸を含み、第2の融合タンパク質は配列番号15のアミノ酸配列を含む。第1の融合タンパク質は配列番号17のアミノ酸配列を含み、第2の融合タンパク質は配列番号15のアミノ酸配列を含む。第1の融合タンパク質は配列番号18のアミノ酸配列を含み、第2の融合タンパク質は配列番号12のアミノ酸配列を含む。第1の融合タンパク質及び第2の融合タンパク質はそれぞれ配列番号19のアミノ酸配列を含む。第1の融合タンパク質及び第2の融合タンパク質はそれぞれ配列番号20のアミノ酸配列を含む。第1の融合タンパク質及び第2の融合タンパク質はそれぞれ配列番号22のアミノ酸配列を含み、二量体タンパク質は配列番号29のアミノ酸配列をさらに含む。第1の融合タンパク質及び第2の融合タンパク質はそれぞれ配列番号23のアミノ酸配列を含み、二量体タンパク質は配列番号30のアミノ酸配列をさらに含む。第1の融合タンパク質は配列番号26のアミノ酸配列を含み、第2の融合タンパク質は配列番号24のアミノ酸配列を含み、二量体タンパク質は配列番号29のアミノ酸配列をさらに含む。第1の融合タンパク質は配列番号27のアミノ酸配列を含み、第2の融合タンパク質は配列番号25のアミノ酸配列を含み、二量体タンパク質は配列番号30のアミノ酸配列をさらに含む。第1の融合タンパク質は配列番号26のアミノ酸配列を含み、第2の融合タンパク質は配列番号16のアミノ酸配列を含み、二量体タンパク質は配列番号29のアミノ酸配列をさらに含む。第1の融合タンパク質は配列番号27のアミノ酸配列を含み、第2の融合タンパク質は配列番号16のアミノ酸配列を含み、二量体タンパク質は配列番号30のアミノ酸配列をさらに含む。第1の融合タンパク質は配列番号26のアミノ酸配列を含み、第2の融合タンパク質は配列番号14のアミノ酸配列を含み、二量体タンパク質は配列番号29のアミノ酸配列をさらに含む。第1の融合タンパク質は配列番号27のアミノ酸配列を含み、第2の融合タンパク質は配列番号14のアミノ酸配列を含み、二量体タンパク質は配列番号30のアミノ酸配列をさらに含む。第1の融合タンパク質は配列番号28のアミノ酸配列を含み、第2の融合タンパク質は配列番号24のアミノ酸配列を含み、二量体タンパク質は配列番号29のアミノ酸配列をさらに含む。又は、第1の融合タンパク質は配列番号28のアミノ酸配列を含み、第2の融合タンパク質は配列番号25のアミノ酸配列を含み、二量体タンパク質は配列番号30のアミノ酸配列をさらに含む。
【0011】
本明細書に記載される二量体タンパク質の特定の実施形態では、IgG Fcタンパク質はシステイン残基を含み、第1の融合タンパク質及び第2の融合タンパク質は、IgG Fcタンパク質ドメインのシステイン残基を介して互いに連結されている。特定の実施形態では、二量体タンパク質は、ST2-制御性T細胞と比較して、ST2+制御性T細胞を選択的に標的とする。一部の実施形態では、本開示は、本明細書に記載される融合タンパク質又は本明細書に記載される二量体タンパク質を含む医薬組成物を提供する。
【0012】
一部の実施形態では、本開示は、状態を処置する方法を提供し、本方法は、それを必要とする対象に治療有効量の請求項28に記載の医薬組成物を投与することを含む。特定の実施形態では、投与は、対象におけるST2-制御性T細胞のレベルと比較して、対象におけるST2+制御性T細胞のレベルのより大きな増加をもたらす。特定の実施形態では、投与は、対象におけるST2-制御性T細胞と比較して、対象におけるST2+制御性T細胞を選択的に活性化する。特定の実施形態では、治療有効量は、約1μg/kg~約250μg/kgである。
【0013】
特定の実施形態では、状態は炎症性ミオパシーである。特定の実施形態では、炎症性ミオパシーは、筋ジストロフィー、多発性筋炎、皮膚筋炎からなる群から選択される。特定の実施形態では、状態は、脂肪組織の炎症性状態、結腸の炎症性状態、及び肺の炎症性状態からなる群から選択される。特定の実施形態では、脂肪組織は内臓脂肪組織である。特定の実施形態では、状態は自己免疫疾患である。特定の実施形態では、自己免疫疾患は、移植片対宿主病、尋常性天疱瘡、全身性エリテマトーデス、強皮症、潰瘍性大腸炎、クローン病、乾癬、1型糖尿病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、円形脱毛症、ブドウ膜炎、視神経脊髄炎、及びデュシェンヌ型筋ジストロフィーからなる群から選択される。特定の実施形態では、投与は静脈内である。特定の実施形態では、投与は皮下である。特定の実施形態では、対象はヒトである。
【0014】
一部の実施形態では、本開示は、対象におけるST2-制御性T細胞と比較して、ST2+制御性T細胞を選択的に活性化する方法を提供し、本方法は、治療有効量の請求項28に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む。特定の実施形態では、治療有効量は、約1μg/kg~約250μg/kgである。特定の実施形態では、投与は静脈内である。特定の実施形態では、投与は皮下投与である。特定の実施形態では、対象はヒトである。
【0015】
一部の実施形態では、本開示は、a)免疫グロブリンFcドメインに共有結合されるIL-2受容体に結合する第1の部分、及びb)免疫グロブリンFcドメインに共有結合されるST2に結合する第2の部分を含む化合物を提供する。
【0016】
一部の実施形態では、本開示は、a)IL-2受容体に結合する第1の部分、及びb)ST2に結合する第2の部分を含む化合物を提供し、IL-2受容体に結合する第1の部分が、野生型IL-2と比較して対象におけるIL-2受容体に結合する部分の安定性を増加させる突然変異を野生型IL-2と比較して含む。
【0017】
一部の実施形態では、本開示は、a)IL-2受容体に結合する第1の部分、及びb)ST2に結合する第2の部分を含む化合物を提供し、IL-2受容体に結合する第1の部分が、IL2Rβγ受容体と比較してIL2Rαβγ受容体に選択的に結合する。
【0018】
一部の実施形態では、本開示は、a)IL-2受容体に結合する第1の部分、及びb)ST2に結合する第2の部分を含む化合物を提供し、IL-2受容体に結合する第1の部分が、野生型IL-2と比較してN88Rである置換において野生型IL-2と相違する。
【0019】
本明細書に記載される化合物の一部の実施形態では、第1の部分はポリペプチドを含む。一部の実施形態では、IL-2受容体に結合する第1の部分は、野生型IL-2に対して少なくとも90%の同一性を有するペプチド配列を含む。一部の実施形態では、野生型IL-2と比較して対象におけるIL-2受容体に結合する部分の安定性を増加させる突然変異は、野生型IL-2と比較してC125Sである置換である。一部の実施形態では、IL-2受容体に結合する第1の部分は、野生型IL-2と比較してT3Aである置換において野生型IL-2と相違する。一部の実施形態では、IL-2受容体に結合する第1の部分は、配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有する。一部の実施形態では、IL-2受容体に結合する第1の部分は、配列番号1を含む。一部の実施形態では、IL-2受容体に結合する第1の部分は、配列番号1である。
【0020】
一部の実施形態では、ST2に結合する第2の部分はポリペプチドを含む。一部の実施形態では、ST2に結合する第2の部分は、野生型IL-33に対して少なくとも90%の同一性を有するペプチド配列を含む。一部の実施形態では、ST2に結合する第2の部分は、配列番号10に対して少なくとも90%の同一性を有する。一部の実施形態では、ST2に結合する第2の部分は、ST2に対する抗体、又はその抗原結合断片である。一部の実施形態では、ST2に結合する第2の部分は、配列番号10を含む。一部の実施形態では、ST2に結合する第2の部分は、配列番号10である。一部の実施形態では、IL-2受容体に結合する第1の部分、及びST2に結合する第2の部分は共有結合している。一部の態様では、IL-2受容体に結合する第1の部分及びST2に結合する第2の部分は、ジスルフィド結合によって共有結合している。
【0021】
本明細書に記載される化合物の一部の実施形態では、化合物は2つの多量体化部分をさらに含む。一部の態様では、第1の多量体化部分は、IL-2受容体に結合する第1の部分に共有結合し、第2の多量体化部分は、ST2に結合する第2の部分に共有結合している。一部の実施形態では、2つの多量体化部分は互いに共有結合している。一部の実施形態では、2つの多量体化部分はポリペプチド配列である。一部の実施形態では、2つの多量体化部分は免疫グロブリンFcドメインである。一部の実施形態では、免疫グロブリンFcドメインは、対応する野生型免疫グロブリンFcドメインと比較して、エフェクター機能が欠損している。一部の実施形態では、免疫グロブリンFcドメインはIgG1免疫グロブリンFcドメインである。一部の実施形態では、IgG1免疫グロブリンFcドメインは、野生型IgG1免疫グロブリンFcドメインと比較してN297Aである置換において野生型IgG1免疫グロブリンFcドメインと相違する。一部の実施形態では、各免疫グロブリンFcドメインは配列番号7を含む。一部の実施形態では、各免疫グロブリンFcドメインは配列番号7である。
【0022】
本明細書に記載される化合物の一部の実施形態では、化合物は、IL-2受容体に結合し、第1の多量体化部分に共有結合する第1の部分に共有結合するリンカーペプチドを含む。一部の実施形態では、化合物は、ST2に結合し、第2の多量体化部分に共有結合している第2の部分に共有結合するリンカーペプチドを含む。一部の実施形態では、化合物は、IL-2受容体に結合し、第1の多量体化部分に共有結合している第1の部分に共有結合する第1のリンカーペプチド、及びST2に結合し、第2の多量体化部分に共有結合している第2の部分に共有結合する第2のリンカーペプチドを含む。一部の実施形態では、IL-2受容体に結合する第1の部分は第1のリンカーペプチドのN末端にあり、第1の多量体化部分は第1のリンカーペプチドのC末端にあり、ST2に結合する第2の部分は第2のリンカーペプチドのN末端にあり、第2の多量体化部分は第2のリンカーペプチドのC末端にある。一部の実施形態では、第1のリンカーペプチド及び第2のリンカーペプチドはそれぞれ6~20アミノ酸残基である。一部の実施形態では、第1のリンカーペプチド及び第2のリンカーペプチドはそれぞれ12~17アミノ酸残基である。一部の実施形態では、第1のリンカーペプチド及び第2のリンカーペプチドは、それぞれ独立してセリン又はグリシンであるアミノ酸残基の各配列である。一部の実施形態では、第1のリンカーペプチド及び第2のリンカーペプチドはそれぞれ15アミノ酸残基である。一部の実施形態では、第1のリンカーペプチド及び第2のリンカーペプチドはそれぞれGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号6)である。一部の態様では、化合物は、ST2-制御性T細胞と比較して、ST2+制御性T細胞を選択的に標的とする。
【0023】
特定の態様では、本開示は状態を処置する方法であって、それを必要とする対象に治療有効量の請求項1~40のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含む、方法に関する。一部の実施形態では、投与は、対象におけるST2-制御性T細胞数と比較して、対象におけるST2+制御性T細胞数を増加させる。一部の実施形態では、投与は、対象におけるST2-制御性T細胞と比較して、対象におけるST2+制御性T細胞を選択的に活性化する。一部の実施形態では、治療有効量は、約1μg/kg~約250μg/kgである。一部の実施形態では、状態は炎症性ミオパシーである。一部の実施形態では、炎症性ミオパシーは筋ジストロフィーである。一部の実施形態では、炎症性ミオパシーは多発性筋炎である。一部の実施形態では、炎症性ミオパシーは皮膚筋炎である。一部の実施形態では、状態は脂肪組織の炎症性状態である。一部の実施形態では、脂肪組織は内臓脂肪組織である。一部の実施形態では、状態は結腸の炎症性状態である。一部の実施形態では、状態は肺の炎症性状態である。一部の実施形態では、投与は静脈内である。一部の実施形態では、投与は皮下投与である。一部の実施形態では、対象はヒトである。
【0024】
参照による組み込み
本明細書中で言及されるすべての刊行物、特許、及び特許出願は、あたかもそれぞれ個々の刊行物、特許、又は特許出願が具体的であり、個別に、参照により組み込まれることが示されるのと同程度に参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】IL-2Rαβγ及びST2を発現する細胞の重複を示す図である。
図2】本開示の例示的な化合物を示す概略図である。
図3A-C】図3A:IL2R結合部分、ST2結合部分、及びそれらの間のリンカーを有する化合物を示す概略図である。図3B:多量体化部分に共有結合したIL2R結合部分、多量体化部分に共有結合したST2結合部分、及び多量体化部分間の共有結合を有する例示的な化合物を示す概略図である。図3C:多量体化部分に共有結合したIL2R結合部分、多量体化部分に共有結合したリンカーに共有結合したST2結合部分、及び多量体化部分間の共有結合を有する例示的な化合物を示す概略図である。
図3D-E】図3D:多量体化部分に共有結合したリンカーに共有結合したIL2R結合部分、多量体化部分に共有結合したST2結合部分、及び多量体化部分間の共有結合を有する例示的な化合物を示す概略図である。図3E:多量体化部分に共有結合したリンカーに共有結合したIL2R結合部分、多量体化部分に共有結合したリンカーに共有結合したST2結合部分、及び多量体化部分間の共有結合を有する例示的な化合物を示す概略図である。
図3F】a)ST2結合部分に共有結合した多量体化部分に共有結合したIL2R結合部分、b)IL2R結合部分に共有結合した多量体化部分に共有結合したST2結合部分、及びc)多量体化部分間の共有結合を有する例示的な化合物を示す概略図である。
図4-1】図4A~4J:IgG1 Fc領域を含む二量体タンパク質を示す概略図である。二量体タンパク質は、IL-33変異体(C208S、C227S、C232S、C259S)、又はIL-33変異体とIL-2変異体(N88R、C125S)の様々な組合せを含む。タンパク質名において、「N」はN末端を示し、「C」はC末端を示し、「v」は変異体を示し、「B」は二価を示し、「M」は一価を示す。
図4-2】図4-1の続きである。
図5図5A~5E:IgG1 Fc領域を含む二量体タンパク質を示す概略図である。二量体タンパク質は、IL-2変異体(N88R、C125S)、及びST2に結合する抗原結合断片(Fab)(Ab2又はAb4)を含む。各図は2つの異なる二量体タンパク質を表し、一方はFab領域としてAb2を含有し、他方はFab領域としてAb4を含有する。タンパク質名において、「N」はN末端を示し、「C」はC末端を示し、「v」は変異体を示し、「B」は二価を示し、「M」は一価を示す。
図6A-1】ヒトST2と、IL-2v/IL-33vの二重特異性及び一価のIL-33分子との間の結合を示すBiacoreセンサーグラムを示す図である。
図6A-2】図6A-1の続きである。
図6B-1】マウスST2と、IL-2v/IL-33vの二重特異性及び一価のIL-33分子との間の結合を示すBiacoreセンサーグラムを示す図である。
図6B-2】図6B-1の続きである。
図7】ヒトIL2Rアルファと、IL-2v/IL-33vの二重特異性及び一価のIL-33分子との間の結合を示すBiacoreセンサーグラムを示す図である。
図8A-1】ヒトST2とAb2/IL-2vの二重特異性分子との間の結合を示すBiacoreセンサーグラムを示す図である。
図8A-2】図8A-1の続きである。
図8B-1】ヒトST2とAb4/IL-2vの二重特異性分子との間の結合を示すBiacoreセンサーグラムを示す図である。
図8B-2】図8B-1の続きである。
図9A-1】ヒトIL2RアルファとAb2/IL-2vの二重特異性分子との間の結合を示すBiacoreセンサーグラムを示す図である。
図9A-2】図9A-1の続きである。
図9B-1】ヒトIL2RアルファとAb4/IL-2vの二重特異性分子との間の結合を示すBiacoreセンサーグラムを示す図である。
図9B-2】図9B-1の続きである。
図10図10A:ある濃度範囲の一価N88R-Fc、一価IL-33-Fc、又は二重特異性IL2vNM-IL33vCMのいずれかで刺激されたマウス脾臓細胞懸濁液中のST2+制御性T細胞におけるpSTAT5活性を示す図である。図10B:ある濃度範囲の一価N88R-Fc、一価IL-33-Fc、又は二重特異性IL2vNM-IL33vCMのいずれかで刺激されたマウス脾臓細胞懸濁液中のST2-制御性T細胞におけるpSTAT5活性を示す図である。
図11図11A及び11B:IL33-IL2二重特異性タンパク質中のIL-33部分の生物活性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
制御性T細胞(Treg)は、他の免疫細胞、例えば、CD4+の従来型T細胞(Tconv)及びCD8+細胞の活性を抑制するCD4+CD25+ T細胞のクラスである。Tregは免疫系ホメオスタシスの中心であり、自己抗原に対する寛容性を維持し、外来抗原に対する免疫応答を調節する。Tregは、インターロイキン2(IL-2)によって強力に活性化されるが、IL-2はまた、他の多数の細胞型を活性化し、これは重大な毒性をもたらす可能性がある。特定の分子マーカーの発現によって、及び異なる免疫学的応答におけるそれらの役割によって定義され得るTregのサブセットがあることが明らかになってきた。1つのTregサブセットはST2+ Tregサブセットである。ST2+ Tregについての特徴付ける細胞表面マーカーはST2であって、インターロイキン1受容体様1タンパク質(IL1RL1)としても公知であるサイトカイン受容体の成分であり、これはIL-33受容体のサブユニットである。IL-33は、急性炎症性応答に関連する炎症性サイトカインである「アラルミン」として分類される。ST2+ Tregは、組織、例えば、筋肉、内臓脂肪、結腸、及び肺に見られ、免疫調節及び組織修復機能を有する。
【0027】
骨格筋は、通常、T細胞を欠失しているが、急性の筋肉傷害後、多数のST2+ Tregが急速に多数の筋肉組織に移動する。筋肉組織へのこれらのTregの動員、及び増殖因子アンフィレグリン(AREG)の産生は、筋肉サテライト細胞の活性化及び組織修復と関連している。Treg欠損は傷害後の筋肉修復を損ない、IL-2-IL-2R複合体を用いた筋肉中のTregの拡大は、ジストロフィン欠損筋ジストロフィーの動物モデルにおける転帰の改善をもたらす。AREGを産生するTregのかなりの割合はST2+である。ST2+ Tregはまた、インフルエンザウイルス感染後に炎症を起こした肺組織と関連しており、感染後の肺組織修復と関連している。ST2受容体に対するリガンドであるIL-33でのST2+ Tregの処理は、AREG産生及び組織修復を増加させる。したがって、ST2+ Tregの数又はST2+ Tregの活性を増強することは、自己免疫疾患及び炎症性疾患、例えば、炎症性ミオパシー、炎症性筋疾患を処置又は予防し、傷害又はストレス後の組織治癒を改善することができる。
【0028】
例えば、ST2+ Tregの役割は、筋肉の炎症の動物モデルにおいて確立されている。これらの動物モデルの1つは、野生型マウスにおける急性筋肉傷害(Burzynら、2013、Cell 155(6): 1282~1295頁)であり、第2のモデルは、ジストロフィンの遺伝的欠損によって引き起こされる慢性的な筋肉の炎症モデルであるmdxマウス筋ジストロフィーモデル(mdxマウス; Villaltaら、2014、Sci Transl Med 5 (258): 258ra142)である。ST2+ Tregの役割はまた、炎症性腸疾患のマウスモデルにおいても確立されている(Schieringら、2014、Nature 513(7519):564~568頁)。
【0029】
ST2+ Treg数を選択的に拡大し、及び/又はST2+ Treg活性を増強することができる化合物及び方法を提供することによって、本開示は、炎症性疾患及び変性疾患の新規な処置を可能にする。例えば、本開示は、IL-2受容体(IL-2R又はIL2R)に結合する第1の部分、及びST2に結合する第2の部分を有する化合物を提供する。IL-2Rは、T細胞、NK細胞、好酸球、単球を含む様々な異なる免疫細胞型上に発現するヘテロ三量体タンパク質である。この広範な発現パターンは、免疫系において多面的効果及びIL-2処置の高い全身毒性を提供し、IL-2R+細胞の標的化を厄介にし得る。
【0030】
IL2-Rは、3つの異なるIL-2Rタンパク質:α(アルファ)、β(ベータ)、及びγ(ガンマ)の異なる組合せによって生成される3つの形態を有する。これらの受容体鎖は集合して3つの異なる受容体形態を生成する:(1)シグナル伝達をしない低親和性受容体、IL2Rα、(2)CD4+従来のT細胞(Tconv)、NK細胞、好酸球、及び単球に広く発現される、IL2Rβ、及びIL2Rγで構成される中間親和性受容体(IL2Rβγ)、並びに(3)活性化T細胞上で一過性に発現され、構成的にTreg細胞上で発現されるIL2Rα、IL2Rβ、及びIL2Rγで構成される高親和性受容体(IL2Rαβγ)。従来のT細胞(Tconv)は、抗原によって活性化され、免疫攻撃に参加するものである。従来のT細胞には、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、及びメモリーT細胞が含まれる。IL-2における突然変異は、異なるIL-2R受容体形態に対するIL-2の結合親和性を変化させることができる。したがって、本開示は、高親和性受容体(IL2Rαβγ)に選択的に結合する部分を含ませることによって、Treg、例えばST2+ Tregを選択的に活性化及び拡大する化合物を提供する。例示的な部分には、限定されないが、野生型IL-2と比較して、結合を修飾する1つ以上の突然変異を含むIL-2変異体が含まれ、それにより、IL-2変異体が、中間親和性受容体及び低親和性受容体と比較して、高親和性受容体(IL2Rαβγ)に選択的に結合する。
【0031】
本開示の方法及び組成物は、IL-2受容体に結合する第1の部分、及びST2に結合する第2の部分を含む化合物であって、化合物がST2+ Tregを活性化及び拡大するその能力においてはるかに選択的であり、強力であることを可能にする化合物に関する。一部の実施形態では、これらの化合物は、IL-2受容体又はその特定のアイソフォームとST2の両方を発現する細胞を標的とする。例えば、IL2Rαβγアイソフォームに特異的に結合する化合物は、ST2を発現するTreg細胞に結合することができる。図1は、Tregの混合集団におけるIL-2Rαβγ及びST2の発現ドメイン、並びに本開示の化合物が結合し得る重複領域の例を示す。一部の実施形態では、第1及び第2の部分は、例えば、免疫グロブリンFcドメインによって共有結合している。一部の実施形態では、化合物はまた、IL-2受容体結合部分と免疫グロブリンFcドメインとを接続するリンカー、及び/又はST2結合部分と免疫グロブリンFcドメインとを接合するリンカーを含む。一部の実施形態では、化合物は、免疫に関与する白血球、例えば白血球又はリンパ球の活性を調節することができる。免疫グロブリンFcドメインは、分子のインビボでの安定性を増加させることができ、リンカーは、部分とFcドメインを共有結合させる。IL2受容体及びST2に結合する部分を提供することによって、本明細書に記載される化合物は、IL2受容体とST2の両方を発現する細胞(例えば、T制御性細胞)を標的とすることができる。一部の実施形態では、Fcドメインはそのエフェクター機能が欠損している。例示的な化合物は、IL-2受容体に結合する第1の部分、及びST2に結合する第2の部分を含み、IL-2受容体に結合する第1の部分は、リンカーを介して第1のエフェクター欠損Fcドメインに共有結合し、ST2に結合する第2の部分は、リンカーを介して第2のエフェクター欠損Fcドメインに共有結合し、第1のエフェクター欠損Fcドメイン及び第2のエフェクター欠損Fcドメインは、ジスルフィド結合を介して共有結合している。このような化合物の例を図2に示す。さらなる例示的な化合物を図3A~3Eに示す。これらは、リンカー及び多量体化ドメイン(例えば、Fcドメインであり得る)の様々な組合せで、ST2結合部分及びIL2R結合部分を含む化合物を示す。このような化合物の別の例を図3Fに示す。ここでは、IL2部分及びST2結合部分は、それぞれIgG Fcタンパク質のN末端及びC末端にある。このようなタンパク質は逆向きであり得、ST2結合部分がN末端にあり、IL2部分がC末端にあり、ST-2結合部分とそれらの各Fcドメインの一方若しくは両方との間、又はIL2R結合部分とそれらの各Fcドメインの一方若しくは両方との間にペプチドリンカーを組み込み得る。状態、例えば、炎症性ミオパシーなどの炎症性状態を処置するための例示的な方法は、それを必要とする対象に治療有効量の本明細書に記載される化合物を投与するステップを含む。例示的な状態には、限定されないが、筋ジストロフィー及び皮膚筋炎が含まれる。
【0032】
IL-2受容体に結合する部分
上記のように、本開示は、IL-2受容体に結合する第1の部分、及びST2に結合する第2の部分を含む化合物を提供する。IL-2受容体に結合する部分は、全長の野生型IL-2、より短いもの、又はより長いものを含むポリペプチドであり得る。IL-2受容体結合部分は、配列番号2:(APTSSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILNGINNYKNPKLTRMLTFKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNLAQSKNFHLRPRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFXQSIISTLT)に示されるように、野生型IL-2配列又はIL-2の変異体を有することができる。IL-2変異体は、野生型IL-2アミノ酸配列とは異なる1つ以上の置換、欠失、又は挿入を含有し得る。残基は、本明細書において、1文字のアミノ酸コード、それに続くIL-2アミノ酸の位置によって表され、例えば、K35は、野生型IL-2配列の35位がリシン残基である。置換は、本明細書において、1文字のアミノ酸コード、それに続くIL-2アミノ酸の位置、続いて1文字のアミノ酸コードの置換によって表され、例えば、K35Aは、アラニン残基による、配列番号2の35位のリシン残基の置換である。
【0033】
本明細書中の化合物は、野生型IL-2の特異性と類似する又は類似しない、異なるIL-2受容体クラスに対する特異性を呈することができる。本明細書中の化合物は、野生型IL-2と比較して、安定性又は生物学的効果の増加を呈することができる。例えば、突然変異は、野生型IL-2と比較して、特定のIL-2受容体に対する特異性が増加した化合物を提供することができる。一部の実施形態では、化合物は、例えば、そのIL-2結合部分を介して、IL2Rβγ受容体と比較して、IL2Rαβγ受容体に選択的に結合する。一部の実施形態では、この選択的結合は、野生型IL-2配列と比較した場合、IL-2配列中の1つ以上の突然変異によるものである。例えば、IL-2 N88Rは、IL2Rβγ受容体よりもIL2Rαβγ受容体への結合に選択的である。IL-2は、IL2Rβγを発現するNK細胞の増殖の3,000分の1に減少した刺激を呈しながら、野生型IL-2と同程度に効果的に、IL2Rαβγ発現PHA活性化T細胞の増殖を刺激することができる。IL2Rαβγに対する増加した選択性を呈する他の突然変異には、置換D20H、N88I、N88G、Q126L、及びQ126Fが含まれる。
【0034】
一部の実施形態では、IL-2受容体結合部分は、本開示の化合物の安定性を増強する突然変異を含む。例えば、IL-2 C125S突然変異は、不対システイン残基を排除することによって安定性を促進し、それによってIL-2ポリペプチドのミスフォールディングを妨げる。ミスフォールディングは、タンパク質凝集をもたらし、インビボでのポリペプチドのクリアランスを増加させ得る。一部の実施形態では、IL-2ポリペプチドは、グリコシル化部位を作製又は除去する突然変異を含む。例えば、IL-2突然変異T3Aは、O結合型グリコシル化部位を除去する。一部の実施形態では、T3A突然変異を有するIL-2変異体はまた、N88R突然変異及び/又はC125S突然変異を含む。一部の実施形態では、IL-2変異体は、配列番号3のように、T3A、N88R、及びC125Sの突然変異を含む。
【0035】
一部の実施形態では、置換は、3、20、88、125、及び126位のうちの1つ以上で起こる。一部の実施形態では、置換は、上記位置の1、2、3、4又は5つの位置で起こる。一部の実施形態では、IL-2変異体は、88及び125位に突然変異、例えば、N88R及びC125Sを含む。一部の実施形態では、IL-2受容体結合部分は、配列番号1:APTSSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILNGINNYKNPKLTRMLTFKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNLAQSKNFHLRPRDLISRINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFSQSIISTLTに記載のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、IL-2変異体は、配列番号3:APASSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILNGINNYKNPKLTRMLTFKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNLAQSKNFHLRPRDLISRINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFSQSIISTLTのように、3、88、及び125位に突然変異、例えば、T3A、N88R及びC125Sを含む。一部の実施形態では、IL-2変異体は、野生型IL-2配列と比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個の突然変異(例えば、置換)を含む。
【0036】
本明細書中の化合物は、野生型IL-2アミノ酸配列(配列番号2)に対して、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含むIL-2変異体を含む。本明細書における化合物は、野生型IL-2アミノ酸配列に対して60%~99%同一であるアミノ酸配列、例えば、野生型IL-2アミノ酸配列に対して80%~99%同一であるアミノ酸配列、野生型IL-2アミノ酸配列に対して85%~99%同一であるアミノ酸配列、野生型IL-2アミノ酸配列に対して90%~99%同一であるアミノ酸配列、又は野生型IL-2アミノ酸配列(配列番号2)に対して95%~99%同一であるアミノ酸配列を含むIL-2変異体を含む。本明細書中の化合物は、野生型IL-2アミノ酸配列(配列番号2)に対して、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるN88R突然変異を有するアミノ酸配列を含むIL-2変異体を含む。本明細における化合物は、野生型IL-2アミノ酸配列に対して60%~99%同一であるN88R突然変異を有するアミノ酸配列、例えば、野生型IL-2アミノ酸配列(配列番号2)に対して80%~99%同一であるアミノ酸配列、野生型IL-2アミノ酸配列(配列番号2)に対して85%~99%同一であるアミノ酸配列、野生型IL-2アミノ酸配列(配列番号2)に対して90%~99%同一であるアミノ酸配列、又は野生型IL-2アミノ酸配列(配列番号2)に対して95%~99%同一であるアミノ酸配列を含むIL-2変異体を含む。
【0037】
実施形態はまた、Treg細胞を選択的に刺激し、野生型IL-2アミノ酸配列(配列番号2)に対して、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるN88R及びC125S突然変異を有するアミノ酸配列を含むIL-2変異体を含む。本明細における化合物は、野生型IL-2アミノ酸配列(配列番号2)に対して60%~99%同一であるN88R及びC125S突然変異を有するアミノ酸配列、例えば、野生型IL-2アミノ酸配列(配列番号2)に対して80%~99%同一であるアミノ酸配列、野生型IL-2アミノ酸配列(配列番号2)に対して85%~99%同一であるアミノ酸配列、野生型IL-2アミノ酸配列(配列番号2)に対して90%~99%同一であるアミノ酸配列、又は野生型IL-2アミノ酸配列(配列番号2)に対して95%~99%同一であるアミノ酸配列を含むIL-2変異体を含む。
【0038】
化合物はまた、Treg細胞を選択的に刺激し、野生型IL-2アミノ酸配列(配列番号2)に対して、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むIL-2変異体を含む。化合物はまた、Treg細胞を選択的に刺激し、野生型IL-2アミノ酸配列(配列番号2)に対して60%~99%同一であるアミノ酸配列、例えば、野生型IL-2アミノ酸配列(配列番号2)に対して80%~99%同一であるアミノ酸配列、野生型IL-2アミノ酸配列(配列番号2)に対して85%~99%同一であるアミノ酸配列、野生型IL-2アミノ酸配列(配列番号2)に対して90%~99%同一であるアミノ酸配列、又は野生型IL-2アミノ酸配列(配列番号2)に対して95%~99%同一であるアミノ酸配列を含むIL-2変異体を含む。
【0039】
様々な方法及びソフトウェアプログラム、例えば、NCBI BLAST、Clustal W、MAFFT、Clustal Omega、AlignMe、Praline、又は他の適切な方法若しくはアルゴリズムを使用して、2つ以上のペプチド間又は核酸間の相同性を決定することができる。一部の実施形態では、同一性パーセントは、以下のパラメーターに基づいてFastDBによって計算される:1のミスマッチペナルティ、1のギャップペナルティ、0.33のギャップサイズペナルティ、及び30のジョイニングペナルティ。
【0040】
有用なアルゴリズムの例はPILEUPである。PILEUPは、プログレッシブペアワイズアラインメントを使用して、一群の関連配列から多重配列アラインメントを作製する。アルゴリズムはまた、アライメントを作成するために使用されるクラスタリング関係を示すツリーをプロットすることができる。PILEUPパラメーターの非限定的な例は、3.00のデフォルトギャップウェイト、0.10のデフォルトギャップ長ウェイト、及び加重エンドギャップを含む。
【0041】
有用なアルゴリズムの別の例は、BLASTアルゴリズムである。BLASTプログラムの非限定的な例は、WU-BLAST-2プログラムである。WU-BLAST-2は、いくつかの検索パラメーターを使用するが、ほとんどは、例えば、デフォルト値に設定される。調整可能なパラメーターは、例えば、以下の値に設定される:オーバーラップ範囲=1.0、オーバーラップフラクション=0.125、ワード閾値(T)=11。HSP S及びHSP S2のパラメーターは動的値であり、対象とする配列が検索されている特定配列の組成及び特定データベースの組成に応じて、プログラム自体によって確立される。これらの値は、感度を増加させるために調整され得る。
【0042】
追加の有用なアルゴリズムはギャップ付きBLASTである。ギャップ付きBLASTは、BLOSUM-62置換スコア、9に設定された閾値Tパラメーター、ギャップなしの伸長を開始するための2ヒット法、ギャップ長kに10+kのコストを負荷、16に設定されたXu、並びにデータベース検索段階で40に、及びアルゴリズムの出力段階で67に設定されたXgを使用する。ギャップ付きアライメントは、例えば、約22ビットに対応するスコアによって開始される。
【0043】
追加の有用なツールは、Clustalであり、これは多重配列アラインメントのために一般的に使用される一連のコンピュータープログラムである。Clustalの最近のバージョンには、ClustalW、ClustalX、及びClustal Omegaがある。Clustal法を使用したタンパク質配列のペアワイズアラインメント及び配列の同一性パーセントの計算のためのデフォルトパラメーターは、KTUPLE=1、GAP PENALTY=3、WINDOW=5及びDIAGONALS SAVED=5である。核酸の場合、これらのパラメーターは、KTUPLE=2、GAP PENALTY=5、WINDOW=4、及びDIAGONALS SAVED=4である。
【0044】
突然変異は、選ばれた部位に又はランダムに組み込むことができる。例えば、標的コドン又は領域でのランダム突然変異誘発は、活性についてスクリーニングされるべき突然変異体を提供することができる。公知の配列を有するDNAの所定部位に置換突然変異を生じさせるための技法には、例えば、M13プライマー変異誘発法及びPCR変異誘発法が含まれる。突然変異体のスクリーニングは、例えば、本明細書に記載されるアッセイを使用して遂行することができる。
【0045】
アミノ酸置換は、単一又は複数の残基であり得る。挿入は、例えば、約1~約20個以上のアミノ酸残基であり得る。欠失は、例えば、約1~約20個以上のアミノ酸残基であり得る。置換、欠失、挿入、又はそれらの任意の組合せは、サンプル化合物において起こり得る。
【0046】
ST2に結合する部分
ST2(インターロイキン1受容体様1)は、膜結合サイトカイン受容体であり、IL-1受容体ファミリーのメンバーである。ヒトST2は、3つのIg様ドメインを有する310アミノ酸(aa)の細胞外ドメイン(ECD)、21 aaの膜貫通セグメント、及び細胞内TIRドメインを有する207 aaの細胞質ドメインからなる(Tominaga, S.ら、1992、Biochim. Biophys. Acta 1171:215頁;及びLi, H.ら、2000、Genomics 67:284頁)。ST2はIL-33に結合し、IL-1受容体アクセサリータンパク質(1RAcP)とヘテロ二量体化する。一部の実施形態では、本開示の化合物は、ST2に結合する結合部分を含む。ST2に結合する部分は、全長の野生型IL-33、より短いもの、又はより長いものを含むポリペプチドであり得る。ST2結合部分は、配列番号10(SITGISPITEYLASLSTYNDQSITFALEDESYEIYVEDLKKDEKKDKVLLSYYESQHPSNESGDGVDGKMLMVTLSPTKDFWLHANNKEHSVELHKCEKPLPDQAFFVLHNMHSNCVSFECKTDPGVFIGVKDNHLALIKVDSSENLCTENILFKLSET)に示される野生型IL-33配列を有し得、又はそれはIL-33の変異体であり得る。IL-33変異体は、野生型IL-33アミノ酸配列とは異なる1つ以上の置換、欠失、又は挿入を含有することができる。本明細書において、残基は、1文字のアミノ酸コード、それに続くIL-33アミノ酸位置によって指定される。本明細書において、置換は、1文字アミノ酸コード、それに続くIL-33アミノ酸位置、それに続く置換1文字アミノ酸コードによって指定される。一部の実施形態では、IL-33配列は、例えば、野生型配列の残基112~170のヒトIL-33配列である。
【0047】
本明細書中の化合物は、ST2に対して若しくはST2-1RAcP受容体複合体に対して増加した又は減少した親和性を有し得る。一部の化合物は、ST2に対して増強された親和性を有し得る。他の化合物は、1RAcPに対する親和性が低下している可能性があり、これは、IL-33受容体を活性化する能力の低下をもたらす。本明細書中の化合物は、野生型IL-33と比較して安定性又は生物学的効果の増大を提示し得る。
【0048】
IL-33受容体サブユニットST2又はIL1RAcPに対する親和性が変化したIL-33変異体を作製することができる。一部の実施形態では、IL-33アミノ酸配列は、野生型IL-33配列と比較して、1つ以上の以下の位置:E119、Y122、D131、E144、Y146、D149、Y163、H246、N222及びN226で突然変異することができる。一部の実施形態では、それらのうちの1つ以上におけるアミノ酸置換は、ST2に対するIL-33の親和性を調節することができる。一部の実施形態では、IL-33アミノ酸配列を突然変異させて、IL1RAcP:H168、N171、E200、H201、H224、D244、K251及びE261(すべて野生型IL-33配列と比較して)との接触を変化さえることができる。一部の実施形態では、それらのうちの1つ以上におけるアミノ酸置換は、IL-33のIL-1RAcPに対する親和性を調節し、したがって、受容体を活性化する能力を調節することができる。
【0049】
一部の実施形態では、ST2結合部分は、例えば、野生型IL-33アミノ酸配列(配列番号10)に対して、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含むIL-33の変異体を含む。本明細書中の化合物は、野生型IL-33アミノ酸配列(配列番号10)に対して60%~99%同一であるアミノ酸配列、例えば、野生型IL-33アミノ酸配列(配列番号10)に対して80%~99%同一であるアミノ酸配列、野生型IL-33アミノ酸配列(配列番号10)に対して85%~99%同一であるアミノ酸配列、野生型IL-33アミノ酸配列(配列番号10)に対して90%~99%同一であるアミノ酸配列、又は野生型IL-33アミノ酸配列(配列番号10)に対して95%~99%同一であるアミノ酸配列を含むIL-33変異体を含む。一部の実施形態では、ST2結合部分は、野生型IL-33アミノ酸配列(配列番号10)に対して100%同一である。
【0050】
ST2結合リガンドは、ST2に対して結合親和性を有する抗体及び抗原結合抗体断片を含み得る。本明細書で使用されるとき、「抗体」は、特定の標的抗原、例えば、ST2に結合する少なくとも1つの相補的決定領域を含むタンパク質である。抗体は、しばしば、少なくとも1つの免疫グロブリン可変領域、例えば、免疫グロブリン可変ドメインを提供するアミノ酸配列、又は免疫グロブリン可変ドメイン配列を含む。例えば、抗体は、重(H)鎖可変領域(本明細書ではVHと略記する)及び軽(L)鎖可変領域(本明細書ではVLと略記する)を含み得る。別の例では、抗体は2つの重(H)鎖可変領域及び2つの軽(L)鎖可変領域を含む。免疫グロブリンの軽鎖は、カッパ型又はラムダ型であり得る。例えば、抗体は、モノクローナル抗体、修飾抗体、キメラ抗体、再構成抗体、又はヒト化抗体であり得る。用語「モノクローナル抗体」とは、本明細書で使用されるとき、特定のエピトープと免疫反応することができる1種類の抗原結合部位のみを含有する抗体分子の集団を指す。抗体は、商業的供給源から入手することができ、又は公知の方法を使用して産生することができる。抗体は、任意の免疫グロブリン型、例えば、IgG、IgM、IgY、IgA1、IgA2、IgD、又はIgEであり得る。一実施形態では、抗体はヒト抗体であり得る。
【0051】
本発明における使用に適した抗原結合抗体断片には、限定されないが、Fab断片、F(ab')2断片、Fd断片、Fv断片、dAb断片、一本鎖Fv、二量体化可変領域(V領域)断片(ダイアボディ)、ジスルフィド安定化V領域断片(dsFv)、アフィボディ、抗体模倣物、及びペイロードへの特異的結合を保持する1つ以上の単離された相補性決定領域(CDR)、例えば、ST2が含まれる。本明細書で使用されるとき、「単離された」CDRは、天然に存在する抗体とは無関係のCDRである。
【0052】
ポリクローナル抗体は、免疫原としての本発明のタンパク質を用いて、適切な対象を免疫することによって調製され得る。免疫された対象における抗体力価は、標準的な技術、例えば、固定化されたポリペプチドを使用する酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を用いて経時的にモニターされ得る。免疫後の適切な時点で、例えば、特異的抗体力価が最も高い場合、抗体産生細胞を対象から得て、これを使用し、標準的な方法、例えば、元々はKohler及びMilstein (1975) Nature 256:495~497頁に記載されたハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら、1983、Immunol. Today 4:72頁を参照されたい)、EBV-ハイブリドーマ技術(Coleら、77-96頁 In Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R. Liss, Inc., 1985を参照されたい)又はトリオーマ技術によってモノクローナル抗体(mAb)を調製することができる。ハイブリドーマを産生するための技術は周知である(一般的に、Current Protocols in Immunology、Coliganら編集, John Wiley & Sons、New York、1994を参照されたい)。本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞は、例えば、標準的なELISAアッセイを用いて、目的のポリペプチド(すなわち、ST2)に結合する抗体についてハイブリドーマ培養上清をスクリーニングすることによって検出される。
【0053】
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを調製する代わりに、ST2に対して指向されるモノクローナル抗体は、目的のポリペプチドを用いて組換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリー(例えば、抗体ファージディスプレイライブラリー)をスクリーニングすることによって同定及び単離することができる。ファージディスプレイライブラリーを作製及びスクリーニングするキットは市販されている(例えば、Pharmacia Recombinant Phage Antibody System、カタログ番号27-9400-01;及びStratagene SurfZAP Phage Display Kit、カタログ番号240612)。さらに、抗体ディスプレイライブラリーを作製及びスクリーニングにおける使用に特に適している方法及び試薬の例は、例えば、米国特許第5,223,409号;PCT国際公開番号WO 92/18619;PCT国際公開番号WO 91/17271;PCT国際公開番号WO 92/20791;PCT国際公開番号WO 92/15679;PCT国際公開番号WO 93/01288;PCT国際公開番号WO 92/01047号;PCT国際公開番号WO 92/09690;PCT国際公開番号WO 90/02809号;Fuchsら(1991) Bio/Technology 9:1370~1372頁; Hayら(1992) Hum. Antibod. Hybridomas 3:81~85頁; Huseら(1989) Science 246:1275~1281頁; Griffithsら(1993) EMBO J. 12:725~734頁に見出すことができる。
【0054】
ST2に特異的に結合する組換え抗体も調製され得る。組換え抗体は、限定されないが、ヒト部分と非ヒト部分の両方を含むキメラ及びヒト化モノクローナル抗体、一本鎖抗体及び多重特異性抗体を含む。キメラ抗体は、異なる部分が異なる動物種、例えば、マウスmAb由来の可変領域及びヒト免疫グロブリン定常領域を有するものに由来する分子である(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるCabillyら、米国特許第4,816,567号;及びBossら、米国特許4,816,397号を参照されたい)。一本鎖抗体は、抗原結合部位を有し、一本鎖ポリペプチドからなる。それらは、当該技術分野において公知である技術、例えば、Ladnerら 米国特許第4,946,778号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる); Birdら、(1988) Science 242:423~426頁; Whitlowら、(1991) Methods in Enzymology 2:1~9頁; Whitlowら、(1991) Methods in Enzymology 2:97~105頁;及びHustonら、(1991) Methods in Enzymology Molecular Design and Modeling: Concepts and Applications 203:46~88頁に記載される方法を用いて産生され得る。
【0055】
ヒト化抗体は、非ヒト種由来の1つ以上の相補性決定領域(CDR)、及びヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域を有する非ヒト種由来の抗体分子である(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるQueen、米国特許第5,585,089号を参照されたい)。ヒト化モノクローナル抗体は、当該技術分野において公知である組換えDNA技術によって、例えば、PCT国際公開番号WO 87/02671;欧州特許出願第184,187号;欧州特許出願171,496;欧州特許出願173,494; PCT国際公開番号WO 86/01533;米国特許第4,816,567号;欧州特許出願125,023; Betterら(1988) Science 240:1041~1043頁; Liuら(1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:3439~3443頁; Liuら(1987) J. Immunol. 139:3521~3526頁; Sunら(1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:214~218頁; Nishimuraら(1987) Cancer Res. 47:999~1005頁; Woodら(1985) Nature 314:446~449頁;及び Shawら(1988) J. Natl. Cancer Inst. 80:1553~1559頁); Morrison (1985) Science 229巻:1202~1207頁; Oiら(1986) Bio/Techniques 4:214頁;米国特許5,225,539; Jonesら(1986) Nature 321:552~525頁; Verhoeyanら(1988) Science 239:1534頁;及びBeidlerら(1988) J. Immunol. 141:4053~4060頁に記載される方法を使用することによって産生させることができる。
【0056】
より具体的には、ヒト化抗体は、例えば、内因性免疫グロブリン重鎖及び軽鎖遺伝子を発現することはできないが、ヒト重鎖及び軽鎖遺伝子を発現することができるトランスジェニックマウスを用いて産生させることができる。トランスジェニックマウスは、選択された抗原、例えば、ST2を用いて通常の形式で免疫される。抗原に対して指向されるモノクローナル抗体は、従来のハイブリドーマ技術を用いて得ることができる。トランスジェニックマウスが保有するヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞分化の間に再配列し、その後、クラススイッチ及び体細胞突然変異を受ける。したがって、このような技術を使用して、IgG、IgA及びIgE抗体を産生することが可能である。ヒト抗体を産生するためのこの技術の概要については、Lonberg及びHuszar(1995) Int. Rev. Immunol. 13:65~93頁)を参照されたい。ヒト抗体及びヒトモノクローナル抗体を産生するためのこの技術、並びにこのような抗体を産生するためのプロトコールの詳細な考察については、例えば、米国特許5,625,126;米国特許5,633,425;米国特許5,569,825;米国特許5,661,016;及び米国特許5,545,806を参照されたい。さらに、企業は、上記のものと同様の技術を使用して、選択された抗原(例えば、ST2)に対して指向されるヒト抗体を提供することに従事することができる。
【0057】
ST2を認識する完全ヒト抗体は、「誘導選択」と呼ばれる技術を用いて作製することができる。このアプローチでは、選択された非ヒトモノクローナル抗体、例えば、マウス抗体を使用して、同じエピトープを認識する完全ヒト抗体の選択を誘導する(Jespersら、1994、Bio/technology 12:899~903頁)。
【0058】
ST2抗体は、(例えば、対象の血液又は血清から)産生又は合成後に単離され得、さらに周知の技術により精製され得る。例えば、IgG抗体は、プロテインAクロマトグラフィーを用いて精製することができる。ST2に特異的な抗体は、例えば、アフィニティークロマトグラフィーにより選択される(例えば、部分的に精製される)又は精製され得る。例えば、組換え的に発現され、精製された(又は部分的に精製された)ST2タンパク質が産生され、例えば、共有結合的に又は非共有結合的に固体支持体、例えば、クロマトグラフィーカラムにカップリングされる。次に、カラムを用いて、多数の異なるエピトープに対して指向される抗体を含有する試料からST2に特異的な抗体をアフィニティー精製し、それによって実質的に精製された抗体組成物、すなわち、汚染抗体を実質的に含まないものを生成することができる。
【0059】
ST2に結合する抗体は、当該技術分野において周知である。例えば、US2017/0002079は、XENOMOUSE(登録商標)技術を用いて調製されたヒトST2に対して指向されるST2結合抗体(例えば、Ab1、Ab2、Ab3、Ab4及びAb12-Ab36)の範囲を記載している(その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,114,598号;同第6,162,963号;同第6,833,268号;同第7,049,426号;同第7,064,244号;Greenら、1994、Nature Genetics 7:13~21頁; Mendezら、1997、Nature Genetics 15:146~156頁; Green及びJakobovitis、1998、J. Ex. Med. 188:483~495頁、Kellermann及びGreen、2002年、Current Opinion in Biotechnology13:593~597頁)。特に、その全体が参照により本明細書に組み込まれるUS2017/0002079の実施例2を参照されたい。ヒトST2に対して指向される抗ST2抗体はまた、WO2012/113813(例えば、モノクローナル抗体ral70)及び米国特許第7,087,396号(例えばmonoclonal抗体2A5、FB9及びHB12)に記載されて、これらの各々はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。例えば、米国特許第7,087,396号は、実施例1におけるヒトST2に指向されるモノクローナル抗体の調製を記載している。ST2結合抗体はまた市販されている(例えば、R&D Systems, Inc.、Minneapolis、MN、カタログ番号MAB523及びAF523)。MAB523は、ヒトST2を検出するモノクローナルマウスIgG1抗体である。AF523は、ヒトST2を検出する抗原アフィニティー精製されたポリクローナルヤギIgG1である。
【0060】
IL-2R結合部分とST2結合部分との間の連結
IL-2R結合部分及びST2結合部分は連結している。IL-2受容体に結合する第1の部分、及びST2に結合する第2の部分は、共有結合又は非共有結合で連結している。一部の実施形態では、IL-2受容体に結合する第1の部分、及びST2に結合する第2の部分は共有結合している。例えば、IL-2受容体に結合する第1の部分、及びST2に結合する第2の部分は、スルフィド結合又はジスルフィド結合によって共有結合することができる。一部の実施形態では、IL-2受容体に結合する第1の部分、及びST2に結合する第2の部分を含む化合物は、多量体化部分又は2つの多量体化部分、例えば、Fcドメインを含む。例えば、第1の多量体化部分は、IL-2受容体に結合する第1の部分に共有結合することができ、第2の多量体化部分は、ST2に結合する第2の部分に共有結合することができる。2つの多量体化部分はまた、互いに共有結合することができる。一部の実施形態では、2つの多量体化部分はポリペプチド配列である。例えば、一部の実施形態では、ジスルフィド結合は、IL-2R結合部分に共有結合される第1のFcドメイン、及びST2結合部分に共有結合される第2のFcドメインを共有結合する。
【0061】
免疫グロブリンFcドメイン
一部の実施形態では、多量体化部分は、免疫グロブリンFcドメイン、例えば、対応する野生型免疫グロブリンFcドメインと比較して、エフェクター機能が欠損している免疫グロブリンFcドメインである。免疫グロブリンFcドメインの非限定的な例は、IgG、IgA、IgD、IgM、及びIgE免疫グロブリンFcドメインである。一部の実施形態では、免疫グロブリンFcドメインは、IgG1免疫グロブリンFcドメインである。
【0062】
免疫グロブリンFcドメインは、融合タンパク質に組み込まれた場合、多数の治療上の利点を有する。例えば、免疫グロブリンFcドメインは、融合パートナータンパク質の循環半減期を増加させることができる。
一部の実施形態では、増加した循環半減期は、Fcドメインが融合タンパク質の凝集を妨げ、それによってその安定性を高め、クリアランスを遅くさせることによる。
【0063】
4つのヒトIgGサブクラスは、エフェクター機能(CDC、ADCC)、循環半減期、及び安定性において相違する。IgG1は、Fcエフェクター機能を有し、そして最も豊富なIgGサブクラスである。IgG2は、Fcエフェクター機能が欠損しているが、他のIgG2分子との二量体化、及びヒンジ領域におけるジスルフィド結合のスクランブリングによる不安定性の両方を受ける。IgG3は、Fcエフェクター機能を有し、長く堅いヒンジ領域を有する。IgG4は、Fcエフェクター機能が欠損していて、他のサブクラスよりも短い循環半減期を有する。IgG4二量体は、異なるIgG4分子間のH鎖の交換をもたらすヒンジ領域中に単一のジスルフィド結合のみを有するため、生化学的に不安定である。凝集を防ぐためにIgG2 Fcのヒンジ領域に対して、又は二量体を安定させるためにIgG4 Fcのヒンジ領域に対して、Fc配列修飾を行うことができる。
【0064】
IgG1のエフェクター機能欠損変異体を作製することができる。例えば、アミノ酸置換は、N結合型グリコシル化部位の場所であるN297位で行うことができる。一部の実施形態では、置換はN297Aである。このアスパラギン残基の置換は、グリコシル化部位を除去し、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)及び補体依存性細胞傷害(CDC)活性を有意に低下させ、それによって望ましくない細胞溶解を妨げる。
【0065】
様々な他のエフェクター機能欠損IgG1変異体もまた当業者によって認識され得る。このような変異体の非限定的な一例はIgG1(L234F/L235E/P331S)であり、これはC1q及びFcγR結合部位のアミノ酸を突然変異させる。これらの(又は類似の)Fc変異体は、エフェクター欠損した安定なIL-2選択的アゴニスト-Fc融合タンパク質(IL2SA-Fc)を生成するために使用され得る。Fcタンパク質部分の形態はまた、二量体というよりもむしろ安定な単量体を作製するように操作することができる。これらの修飾Fcタンパク質部分はまた、本開示のIL-2化合物と組み合わせることができる。さらに、IL-2-Fc H鎖ポリペプチドを含む機能的な単量体のヘテロ二量体は、Fc H鎖ポリペプチドと組み合わせられて、IL-2選択的アゴニストとともに二重特異性抗体技術を使用して組み立てることができる。IL-2 Fc融合タンパク質はまた、IgG部分における抗原特異性の有無にかかわらず、無傷のIgG抗体分子を用いて作製することができる。さらに、ヒンジ領域の一部を欠くFc変異体は、本明細書に記載される化合物及び方法とともに使用することができる。
【0066】
一部の実施形態では、免疫グロブリンFc部分の配列は、N297A突然変異を含むIgG1 Fc部分、例えば、以下に示される配列である:DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号7;N297A突然変異は下線付きで示される)である。
【0067】
一部の実施形態では、IgG1 Fc部分は、配列番号7のアミノ酸配列に対して、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0068】
本開示の化合物は、2つのIgポリペプチドがFcドメインを形成し得る条件下で生成することができる。2つのIgポリペプチドは、異なる部分とコンジュゲートすることができる。一部の場合では、1つのIgGポリペプチドはIL-2部分にコンジュゲートされ、第2のIgポリペプチドはIL2受容体以外の細胞表面タンパク質に結合する部分に結合される。一部の実施形態では、結合部分によって結合された細胞表面タンパク質はST2である。
【0069】
リンカー
FcドメインとIL2受容体結合部分又はST2結合部分との間の接合部における連結は、(1)2つのタンパク質配列の直接融合、(2)介在リンカーペプチドとの融合、又は(3)非ペプチド部分による融合であり得る。一部の実施形態では、リンカーは、IL2R結合部分とST2結合部分を直接連結する。リンカーペプチドは、2つのタンパク質部分間のスペーサーとして含まれ得る。リンカーペプチドは、成分タンパク質部分の適切なタンパク質フォールディング、安定性、発現、及び生物活性を促進することができる。長い柔軟なリンカーペプチドは、グリシン、セリン、又はスレオニンで構成することができ、複数のグリシン残基が非常に柔軟な立体配置を提供する。セリン又はスレオニン残基は、ペプチド内又は成分融合タンパク質部分との疎水性相互作用を制限するための極性表面領域を提供する。一部の実施形態では、ペプチドリンカーは、グリシン及びセリンが豊富、例えば、配列GGGGS(配列番号31)が反復している。一部の実施形態では、ペプチドリンカーは、(GGGGS)n(配列番号31)の配列を有し、ここで、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10である。一部の実施形態では、nは、3であり、すなわち、ペプチドリンカーは、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号6)の配列を有する。一部の実施形態では、IL-2受容体結合部分はリンカーペプチドのN末端にあり、免疫グロブリンFcドメインはリンカーペプチドのC末端にある。一部の実施形態では、IL-2受容体結合部分はリンカーペプチドのC末端にあり、免疫グロブリンFcドメインはリンカーペプチドのN末端にある。
【0070】
一部の実施形態では、ペプチドリンカーは、配列番号6のアミノ酸配列に対して、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0071】
医薬組成物
本発明の医薬組成物は、本明細書に記載される任意の化合物を含み得る。一部の実施形態では、医薬組成物は、本開示の化合物と他の化学成分、例えば、担体、安定化剤、希釈剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、及び/又は賦形剤とを含む。医薬組成物は、本開示の化合物の生物への投与を容易にする。医薬組成物は、例えば、静脈内、皮下、筋肉内、経口、非経口、眼内、皮下、経皮、経鼻、膣内、及び局所投与を含む様々な形態及び経路によって、医薬組成物として治療有効量で投与することができる。
【0072】
医薬組成物は、局所的に、例えば、化合物を臓器に直接注射することにより、任意選択的にデポー製剤若しくは持続放出製剤又はインプラントにして投与することができる。医薬組成物は、迅速放出製剤の形態、長期放出製剤の形態、又は中間放出製剤の形態で提供することができる。迅速放出形態は即時放出を提供することができる。長期放出製剤は、制御放出又は持続遅延放出を提供することができる。
【0073】
経口投与のために、医薬組成物は、本開示の化合物を薬学的に許容される担体又は賦形剤と組み合わせることによって製剤化することができる。このような担体を使用して、対象による経口摂取のために、液体、ゲル、シロップ、エリキシル剤、スラリー、又は懸濁液を製剤化することができる。経口用溶解性製剤に使用される溶媒の非限定的な例としては、水、エタノール、イソプロパノール、食塩水、生理食塩水、DMSO、ジメチルホルムアミド、リン酸カリウム緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、リン酸ナトリウム緩衝液、4-2-ヒドロキシエチル-1-ピペラジンエタンスルホン酸緩衝液(HEPES)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸緩衝液(MOPS)、ピペラジン-N,N'-ビス(2-エタンスルホン酸)緩衝液(PIPES)、及び食塩クエン酸ナトリウム緩衝液(SSC)が含まれ得る。経口用溶解性製剤に使用される共溶媒の非限定的な例としては、スクロース、尿素、クレマフォア、DMSO、及びリン酸カリウム緩衝液が含まれ得る。
【0074】
医薬調製物は、静脈内投与用に製剤化することができる。医薬組成物は、油性又は水性ビヒクル中の滅菌懸濁液、溶液又はエマルジョンとして非経口注射に適した形態であり得、処方剤、例えば、懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤を含有し得る。非経口投与用の医薬製剤は、水溶性形態の本開示の化合物の水溶液を含む。本開示の化合物の懸濁液は、油性注射懸濁液として調製することができる。適切な親油性溶媒又はビヒクルとしては、脂肪油、例えば、ゴマ油、又は合成脂肪酸エステル、例えば、オレイン酸エチル若しくはトリグリセリド、又はリポソームが含まれる。懸濁液はまた、化合物の溶解度を高めて、高濃度溶液の調製を可能にする適切な安定化剤又は薬剤を含有することができる。或いは、活性成分は、使用前に、適切なビヒクル、例えば、無菌パイロジェンフリー水で構成するための粉末形態であり得る。
【0075】
本開示の化合物は局所投与することができ、種々の局所投与用組成物、例えば、溶液剤、懸濁剤、ローション剤、ゲル剤、ペースト剤、薬用スティック、バーム剤、クリーム剤、及び軟膏剤に製剤化することができる。このような医薬組成物は、可溶化剤、安定化剤、等張化促進剤、緩衝剤及び防腐剤を含有し得る。
【0076】
本開示の化合物はまた、従来の坐剤基剤、例えば、カカオ脂又は他のグリセリド、並びに合成ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン及びPEGを含有する、直腸組成物、例えば、浣腸剤、直腸ゲル剤、直腸フォーム剤、直腸エアロゾル剤、坐剤、ゼリー坐剤、又は停留浣腸剤に製剤化することができる。組成物の坐剤形態では、低融点ワックス、例えば、脂肪酸グリセリドの混合物、任意選択的にはカカオ脂と組み合わせたものを融解させることができる。
【0077】
本明細書に提供される処置方法又は使用方法を実施する際には、治療有効量の本明細書に記載される化合物を医薬組成物にして、処置すべき疾患又は状態を有する対象に投与する。一部の実施形態では、対象は、哺乳動物、例えば、ヒトである。治療有効量は、疾患の重症度、対象の年齢及び相対的な健康状態、使用される化合物の効力、及び他の要因に応じて幅広く変化し得る。化合物は、混合物の成分として、単独で又は1種以上の治療剤と組み合わせて使用することができる。
【0078】
医薬組成物は、本開示の化合物を薬学的に使用することができる調製物に加工することを容易にする、賦形剤及び助剤を含む1種以上の生理学的に許容される担体を使用して製剤化することができる。選ばれる投与経路に応じて製剤を変更することができる。本明細書に記載される化合物を含む医薬組成物は、例えば、混合、溶解、乳化、カプセル化、封入、又は圧縮プロセスによって製造することができる。
【0079】
医薬組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤、及び遊離塩基又は薬学的に許容される塩の形態として本明細書に記載される化合物を含むことができる。医薬組成物は、可溶化剤、安定化剤、等張化促進剤、緩衝剤及び防腐剤を含有し得る。
【0080】
本明細書に記載される化合物を含む組成物を調製する方法は、化合物を1種以上の不活性な薬学的に許容される賦形剤又は担体とともに製剤化して、固体、半固体、又は液体組成物を形成することを含む。固体組成物としては、例えば、散剤、錠剤、分散性顆粒剤、カプセル剤、及びカシェ剤が挙げられる。液体組成物としては、例えば、化合物が溶解されている溶液、化合物を含むエマルジョン、又は本明細書に開示される化合物を含むリポソーム、ミセル、若しくはナノ粒子を含有する溶液が挙げられる。半固体組成物としては、例えば、ゲル、懸濁液及びクリームが挙げられる。組成物は、液体溶液又は懸濁液、使用前に液体に溶解若しくは懸濁するのに適した固体形態、又はエマルジョンであり得る。これらの組成物はまた、少量の非毒性の補助物質、例えば、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤、及び他の薬学的に許容される添加剤を含有することができる。
【0081】
本発明での使用に適した剤形の非限定的な例としては、液体、粉末、ゲル、ナノ懸濁液、ナノ粒子、マイクロゲル、水性又は油性懸濁液、エマルジョン、及びそれらの任意の組合せが含まれる。
【0082】
本発明での使用に適した薬学的に許容される賦形剤の非限定的な例としては、結合剤、崩壊剤、粘着防止剤、帯電防止剤、界面活性剤、酸化防止剤、コーティング剤、着色剤、可塑剤、防腐剤、懸濁剤、乳化剤、抗菌剤、球形化剤、及びそれらの任意の組合せが含まれ得る。
【0083】
本発明の組成物は、例えば、即時放出形態又は制御放出製剤であり得る。即時放出製剤は、化合物が迅速に作用することを可能にするように製剤化することができる。即時放出製剤の非限定的な例には、容易に溶解可能な製剤が含まれる。制御放出製剤は、活性剤の放出速度及び放出プロファイルが生理学的及び経時治療的要件に合致し得るように適応されている、或いはプログラムされた速度で活性剤を放出させるように製剤化されている医薬製剤であり得る。制御放出製剤の非限定的な例としては、顆粒剤、遅延放出顆粒剤、ヒドロゲル剤(例えば、合成又は天然起源のもの)、他のゲル化剤(例えば、ゲル形成食物繊維)、マトリックスベースの製剤(例えば、製剤を通じて分散される少なくとも1つの活性成分を有するポリマー材料を含む製剤)、マトリックス内の顆粒剤、ポリマー混合物、及び顆粒塊が挙げられる。
【0084】
一部には、制御放出製剤は遅延放出形態である。遅延放出形態は、化合物の作用を長期間遅延させるように製剤化することができる。遅延放出形態は、例えば、約4、約8、約12、約16、又は約24時間、有効用量の1つ以上の化合物の放出を遅延させるように製剤化することができる。
【0085】
制御放出製剤は持続放出形態であり得る。持続放出形態は、例えば、化合物の作用を長期間にわたって持続するように製剤化することができる。持続放出形態は、約4、約8、約12、約16又は約24時間にわたって、本明細書に記載される有効用量の任意の化合物を提供する(例えば、生理学的に有効な血液プロファイルを提供する)ように製剤化することができる。
【0086】
薬学的に許容される賦形剤の非限定的な例は、例えば、各々、その全体が参照により組み込まれる、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第19版(Easton, Pa.: Mack Publishing Company、1995)、Hoover, John E.、Remington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、Easton、Pennsylvania 1975、Liberman, H.A.及びLachman, L.、編、Pharmaceutical Dosage Forms、Marcel Decker、New York、N.Y.、1980、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、第7版(Lippincott Williams & Wilkins 1999)に見出すことができる。
【0087】
複数の治療剤は、任意の順序で又は同時に投与することができる。一部の実施形態では、本発明の化合物は、抗生物質と組み合わせて、その前に、又はその後に投与される。同時である場合、複数の治療剤は、単一の統一形態で、又は複数の形態で、例えば複数の別々の丸剤として提供することができる。薬剤は、単一の包装又は複数の包装に、一緒に又は別々に包装することができる。1つ又はすべての治療剤を複数回用量で与えることができる。同時でない場合、複数回用量の間のタイミングは、約1カ月程度に変化させることができる。
【0088】
本明細書に記載される治療剤は、疾患又は状態の発生前、発生中、又は発生後に投与することができ、治療剤を含有する組成物を投与するタイミングは変化させることができる。例えば、組成物は、予防薬として使用することができ、疾患又は状態の発生の可能性を少なくするために、状態又は疾患に対する傾向を有する対象に継続的に投与することができる。組成物は、症状の発症中又は発症後できるだけ早く対象に投与することができる。治療剤の投与は、症状の発症の最初の48時間以内、症状の発症の最初の24時間以内、症状の発症の最初の6時間以内、又は症状の発症の3時間以内に開始することができる。初期投与は、実用的な任意の経路を介して、例えば、本明細書に記載される任意の製剤を使用する、本明細書に記載される任意の経路によることができる。治療剤は、疾患又は状態の発症が検出又は疑われた後に実行可能になり次第、例えば、約1カ月から約3カ月までなどの疾患の処置に必要とされる、ある長さの期間にわたって投与することができる。処置期間は各対象によって変化させることができる。
【0089】
本明細書に記載される医薬組成物は、正確な投薬量の単回投与に適した単位剤形であり得る。単位剤形では、製剤は、適切な量の1種以上の化合物を含有する単位用量に分けられる。単位投薬は、別々の量の製剤を含有する包装の形態であり得る。非限定的な例は、包装された注射剤、バイアル、又はアンプルである。水性懸濁液組成物は、単回用量の再密閉できない容器に包装することができる。複数回投薬の再密閉可能な容器は、例えば、防腐剤と組み合わせて又は防腐剤なしで使用することができる。注射用製剤は、単位剤形で、例えばアンプルで、又は防腐剤を含む複数回投薬の容器で提供することができる。
【0090】
本明細書で提供される医薬組成物は、他の治療法、例えば、化学療法、放射線、外科手術、抗炎症剤、及び選択されたビタミンと組み合わせて投与することができる。他の薬物は、医薬組成物の前、後、又はそれと同時に投与することができる。
【0091】
意図される投与様式に応じて、医薬組成物は、固体、半固体又は液体の剤形、例えば、錠剤、坐剤、丸剤、カプセル剤、散剤、液剤、懸濁剤、ローション剤、クリーム剤、又はゲル剤などの形態で、例えば、正確な投薬量の単回投与に適した単位剤形であり得る。
【0092】
固体組成物について、非毒性の固体担体には、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、及び炭酸マグネシウムが挙げられる。
【0093】
本開示における使用に適した剤形の非限定的な例としては、液剤、エリキシル剤、ナノ懸濁剤、水性又は油性懸濁剤、滴剤、シロップ剤、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。本開示における使用に適した薬学的に許容される賦形剤の非限定的な例としては、造粒剤、結合剤、滑剤、崩壊剤、甘味剤、流動促進剤、粘着防止剤、帯電防止剤、界面活性剤、酸化防止剤、ガム、コーティング剤、着色剤、香味剤、コーティング剤、可塑剤、防腐剤、懸濁剤、乳化剤、植物セルロース材料及び球形化剤、並びにそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0094】
本発明の組成物はキットとして包装することができる。一部の実施形態では、キットは、組成物の投与/使用についての書面による説明書を含む。書面による資料は、例えば、ラベルであり得る。書面による資料は、投与の条件方法を示唆することができる。説明書は、治療の投与から最適な臨床結果を達成するための最良の指針を対象及び監督医に提供する。書面による資料は、ラベルであり得る。一部の実施形態では、ラベルは、規制機関、例えば、米国食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)、又は他の規制機関によって承認され得る。
【0095】
疾患
本開示の化合物は、様々な自己免疫性若しくは免疫関連の疾患又は状態に適用して、例えば、このような疾患又は状態を処置することができる。例えば、本開示は、それを必要とする対象に治療有効量の本開示の化合物を投与することを含む、状態を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、それを必要とする対象に投与される化合物は、IL-2Rに結合する第1の部分、及びST2に結合する第2の部分を含み、第1の部分はリンカーを介して第1のFcドメインに共有結合され、第2の部分はリンカーを介して第2のFcドメインに共有結合され、第1及び第2のFcドメインは共有結合され、さらに第1及び第2のFcドメインはエフェクター機能が欠損している。
【0096】
自己免疫疾患には、臓器、例えば、心臓、腎臓、肝臓、肺、生殖器官、消化器系、又は皮膚に影響を及ぼす疾患が含まれる。自己免疫疾患には、内分泌腺、副腎、甲状腺、唾液腺及び外分泌腺、並びに膵臓を含む腺に影響を及ぼす疾患が含まれる。自己免疫疾患はまた、多腺性であり得る。自己免疫疾患は、1つ以上の組織、例えば、結合組織、筋肉、又は血液を標的にし得る。自己免疫疾患は、神経系又は眼、耳若しくは血管系を標的にし得る。自己免疫疾患はまた、全身性であり得、複数の臓器、組織及び/又は系に影響を及ぼし得る。一部の実施形態では、免疫関連の疾患又は状態は炎症性の疾患又は状態である。一部の実施形態では、炎症性の疾患又は状態は、炎症を起こした筋肉、内臓脂肪、結腸、及び/又は肺組織を含むものである。
【0097】
特定の実施形態では、自己免疫疾患は、移植片対宿主病、尋常性天疱瘡、全身性エリテマトーデス、強皮症、潰瘍性大腸炎、クローン病、乾癬、1型糖尿病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、円形脱毛症、ブドウ膜炎、視神経脊髄炎、及びデュシェンヌ型筋ジストロフィーからなる群から選択される。
【0098】
一部の実施形態では、本開示の化合物は、筋肉組織に影響を及ぼす疾患、例えば、炎症性ミオパシー、筋ジストロフィー、免疫系が関与する筋肉疾患、及び炎症を伴う筋肉疾患を処置する。
【0099】
炎症性ミオパシーは、典型的には、筋肉の炎症及び関連症状、例えば、筋力低下を伴う疾患である。筋力低下は進行性である場合がある。炎症性ミオパシー(例えば、皮膚筋炎)に関連する症状としては、例えば、筋力低下(例えば、近位筋力低下)、皮膚の発疹、歩行又は起立後の疲労、つまずき又は転倒、嚥下困難、発声困難、呼吸困難、筋肉痛、圧痛筋、体重減少、微熱、炎症を起こした肺、光線過敏症、皮膚下又は筋肉内のカルシウム沈着(石灰沈着症)、及び炎症性ミオパシーの生物学的随伴が含まれ得る。
【0100】
炎症性ミオパシーは、アレルギー反応、他の疾患、薬物若しくは毒素への曝露、又は感染性因子への曝露によって引き起こされ得るか、或いは特発性であり得る(公知の原因ではない)。炎症性ミオパシーは、急性炎症性ミオパシー又は慢性炎症性ミオパシーであり得る。炎症性ミオパシーは、成人と小児の両方に影響を及ぼし得る(例えば、若年性皮膚筋炎)。炎症性ミオパシーには、他の臓器又は全身、例えば、皮膚、肺、心臓、眼、及び消化器系に影響を及ぼす症状が含まれる。一部の実施形態では、炎症性ミオパシーは慢性炎症性ミオパシー(例えば、皮膚筋炎、多発性筋炎、又は封入体筋炎)である。
【0101】
一部の実施形態では、炎症性ミオパシーは、アレルギー反応、他の疾患(例えば、癌又は結合組織疾患)、毒性物質への曝露、薬品、又は感染性物質(例えば、ウイルス)によって引き起こされ得る。一部の実施形態では、炎症性ミオパシーは、狼瘡、関節リウマチ、又は全身性硬化症に関連する。一部の実施形態では、炎症性ミオパシーは特発性である。一部の実施形態では、炎症性ミオパシーは、多発性筋炎、皮膚筋炎、封入体筋炎、及び免疫介在性壊死性ミオパシーから選択される。一部の実施形態では、炎症性ミオパシーは皮膚筋炎である。
【0102】
炎症性ミオパシー(例えば、皮膚筋炎)の生物学的付随物としては、例えば、変化した(例えば、上昇した)レベルのサイトカイン(例えば、I型インターフェロン(例えば、IFN-α及び/又はIFN-βなど)、インターロイキン(例えば、IL-6、IL-10、IL-15、IL-17、IL-18など)、TNF-α)、TGF-β、B細胞活性化因子(BAFF)、及びIFN誘導性遺伝子(I型IFN誘導性遺伝子)の過剰発現が含まれる。炎症性ミオパシーの他の生物学的付随物としては、例えば、増加した赤血球沈降速度(ESR)及び/又は上昇したレベルのクレアチンキナーゼが含まれ得る。炎症性ミオパシーのさらなる生物学的付随物としては、自己抗体、例えば、抗シンテターゼ自己抗体(例えば、抗Jo1抗体)、抗シグナル認識粒子抗体(抗SRP)、抗Mi-2抗体、抗p155抗体、抗PM/Sci抗体、及び抗RNP抗体が含まれ得る。
【0103】
筋ジストロフィーは、一次又は二次骨格筋の関与によって特徴付けられる一群の壊滅的な神経筋疾患を表す一群の多様な遺伝性神経筋障害である。筋ジストロフィーの例には、限定されないが、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、肢帯筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、福山型先天性筋ジストロフィー、及びメロシン欠乏性先天性筋ジストロフィーが含まれる。筋ジストロフィーの最も一般的な形態は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)である。DMDは、ジストロフィンをコードする遺伝子における突然変異によって特徴付けられるX連鎖潜性疾患である。ほとんどの患者は、呼吸器不全又は心不全のために30歳前に死亡する。ベッカー型筋ジストロフィー(良性偽肥大型筋ジストロフィーとしても知られる)は、両者はジストロフィン遺伝子における突然変異から生じるという点でDMDに関連する。DMDを患っている生物は、機能性ジストロフィンを産生しない。したがって、DMDは、BMDよりはるかに重症である。
【0104】
対象
本開示の化合物は、それを必要とする対象、例えば脊椎動物に投与される。一部の実施形態では、対象は、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ウシ、サル、カニクイザル、又はヒトである。対象は、例えば、高齢者、成人、青年、青年前、子供、幼児、及び乳児であり得る。一部の実施形態では、対象は、炎症性ミオパシーの動物モデルである。一部の実施形態では、対象は、炎症性ミオパシーを有するヒト、又は炎症性ミオパシーを発症する危険性があるヒトである。一部の実施形態では、対象は、炎症性ミオパシーの家族歴を有する。一部の実施形態では、対象は、炎症性ミオパシーに関連する遺伝子を保有している。一部の実施形態では、対象は、炎症性ミオパシーに関連するバイオマーカーに対して陽性である。一部の実施形態では、対象は、炎症性ミオパシーと診断されている。一部の実施形態では、対象は、炎症性ミオパシーに関連する1つ以上の徴候又は症状、例えば、本明細書に記載される1つ以上の症状を有する。
【0105】
一部の実施形態では、対象は、筋ジストロフィーの動物モデルである。一部の実施形態では、対象は、筋ジストロフィーであるヒト、又は筋ジストロフィーを発症する危険性があるヒトである。一部の実施形態では、対象は、筋ジストロフィーの家族歴を有する。一部の実施形態では、対象は、筋ジストロフィーに関連する遺伝子を保有している。一部の実施形態では、対象は、筋ジストロフィーに関連するバイオマーカーに対して陽性である。一部の実施形態では、対象は、筋ジストロフィーと診断されている。一部の実施形態では、対象は、筋ジストロフィーに関連する1つ以上の徴候又は症状、例えば、本明細書に記載される1つ以上の症状を有する。
【0106】
投薬
本明細書に記載される医薬組成物は、正確な投薬量の単回投与に適した単位剤形であり得る。単位剤形では、製剤は、適切な量の1種以上の化合物を含有する単位用量に分けられる。単位投薬は、別々の量の製剤を含有する包装の形態であり得る。非限定的な例は、バイアル又はアンプル中の液体である。水性懸濁液組成物は、単回用量の再密閉できない容器に包装することができる。複数回投薬の再密閉可能な容器は、例えば、防腐剤と組み合わせて使用することができる。非経口注射用の製剤は、単位剤形で、例えばアンプルで、又は防腐剤を含む複数回投薬の容器で提供することができる。
【0107】
本明細書に記載される化合物は、1用量あたり約0.5μg~約7000μg、約1μg~約1000μg、約1μg~約250μg、約1μg~約25μg、約5μg~約50μg、約0.5μg~約15μg、又は約0.5μg~約10μgの範囲で組成物に存在することができる。
【0108】
本明細書に記載される化合物は、約0.5μg、約1μg、約2μg、約3μg、約4μg、約5μg、約6μg、約7μg、8μg、約9μg、約10μg、約11μg、約12μg、約13μg、約14μg、約15μg、約16μg、約17μg、約18μg、約19μg、約20μg、約21μg、約22μg、約23μg、約24μg、約25μg、約26μg、約27μg、約28μg、約29μg、約30μg、約31μg、約32μg、約33μg、約34μg、約35μg、約37μg、約38μg、約39μg、約40μg、約41μg、約42μg、約43μg、約44μg、約45μg、約46μg、約47μg、約48μg、約49μg、約50μg、約55μg、約60μg、約65μg、約70μg、約75μg、約80μg、約85μg、約90μg、約95μg、約100μg、約125μg、約150μg、約175μg、約200μg、約250μg、約300μg、約350μg、約400μg、約450μg、約500μg、約550μg、約600μg、約650μg、約700μg、約750μg、約800μg、約850μg、約900μg、約950μg、約1000μg、約1050μg、約1100μg、約1150μg、約1200μg、約1250μg、約1300μg、約1350μg、約1400μg、約1450μg、約1500μg、約1550μg、約1600μg、約1650μg、約1700μg、約1750μg、約1800μg、約1850μg、約1900μg、約1950μg、約2000μg、約2500μg、約3000μg、約3500μg、約4000μg、約4500μg、約5000μg、約5500μg、約6000μg、約6500μg、約7000μg、約7500μg、約8000μg、約9000μg、約10,000μg(10mg)、約11mg、約12mg、約13mg、約14mg、約15mg、約16mg、約17mg、約18mg、約19mg、約20mg、約21mg、約22mg、約23mg、約24mg、約25mg、約26mg、約27mg、約28mg、約29mg、約30mg、約31mg、約32mg、約33mg、約34mg、約35mg、約36mg、約37mg、約38mg、約39mg、又は約40mgの量で組成物に存在することができる。これらの値のいずれも、組成物中の化合物の量についての範囲を定義するために使用され得る。例えば、化合物は、約0.5μg~約40mg、約500μg~約10mg、又は約50μg~約5mgの範囲で組成物に存在し得る。
【0109】
一部の実施形態では、用量は、対象の体重で割った薬物の量を用いて、例えば、対象の体重1キログラムあたりのマイクログラム又はミリグラムの薬物として表すことができる。一部の実施形態では、化合物は、約0.5μg/kg、約1μg/kg、約2μg/kg、約3μg/kg、約4μg/kg、約5μg/kg、約6μg/kg、約7μg/kg、約8μg/kg、約9μg/kg、約10μg/kg、約11μg/kg、約12μg/kg、約13μg、約14μg/kg、約15μg/kg、約16μg/kg、約17μg/kg、約18μg/kg、約19μg/kg、約20μg/kg、約25μg/kg、約30μg/kg、約35μg/kg、約40μg/kg、約45μg/kg、約50μg/kg、約55μg/kg、約60μg/kg、約65μg/kg、約70μg/kg、約75μg/kg、約80μg/kg、約85μg/kg、約90μg/kg、約95μg/kg、約100μg/kg、約125μg/kg、約150μg/kg、約175μg/kg、約200μg/kg、約250μg/kg、約300μg/kg、約350μg/kg、約400μg/kg、約450μg/kg、約500μg/kg、約550μg/kg、約600μg/kg、約650μg/kg、約700μg/kg、約750μg/kg、約800μg/kg、約850μg/kg、約900μg/kg、約950μg/kg、約1000μg/kg、約1050μg/kg、約1100μg/kg、約1150μg/kg、約1200μg/kg、約1250μg/kg、約1300μg/kg、約1350μg/kg、約1400μg/kg、約1450μg/kg、約1500μg/kg、約1550μg/kg、約1600μg/kg、約1650μg/kg、約1700μg/kg、約1750μg/kg、約1800μg/kg、約1850μg/kg、約1900μg/kg、約1950μg/kg、約2000μg/kg、約2500μg/kg、約3000μg/kg、約3500μg/kg、約4000μg/kg、約4500μg/kg、又は約5000μg/kgの用量で投与される。これらの値のいずれも化合物の用量の範囲を定義するために使用され得る。例えば、一部の実施形態では、化合物は、約0.5μg/kg~約250μg/kg、1μg/kg~約200μg/kg、5μg/kg~約150μg/kg、約10μg/kg~約100μg/kg、約10μg/kg~約50μg/kg、約15μg/kg~約35μg/kg、又は約0.5μg/kg~約5000μg/kgの範囲の用量で投与される。
【0110】
開示された化合物は、所望の任意の間隔で投与することができる。例えば、化合物は、週1回、週2回、週3回、週4回、週5回、週6回、週7回、週8回、週9回、週10回投与することができる。毎日の投薬間隔は、任意の時間間隔、例えば、1時間毎、2時間毎、3時間毎、4時間毎、5時間毎、6時間毎、7時間毎、8時間毎、9時間毎、10時間毎、11時間毎、又は12時間毎であり得る。化合物は、週に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、5週間に1回、6週間に1回、7週間に1回、又は8週間に1回投与することができる。化合物の投与は、化合物を投与する者又は化合物を受け入れる対象のいずれかに提供するために不規則な投薬スケジュールを有することができる。このように、化合物は、例えば、1日1回、1日2回、又は1日3回投与することができる。
【0111】
投与される量は、各用量において同じ量であり得る、又は投薬量は変わり得る。例えば、第1の量を朝に投薬し、第2の量を夕方に投薬することができる。対象は、高い第1の用量及びより低いその後の用量を受け得る。用量は、疾患の症状若しくはマーカーの改善、又は有害反応の発生に応じて増減させることができる。
【0112】
薬学的に許容される担体の非限定的な例には、食塩水、リンゲル液及びデキストロース溶液が含まれる。液体担体は、液剤、懸濁剤、及びエマルジョンの調製に使用することができる。本明細書に記載される化合物は、薬学的に許容される液体担体、例えば、水、有機溶媒、若しくはその両方の混合物、又は薬学的に許容される油若しくは脂肪に溶解又は懸濁することができる。液体担体は、他の適切な医薬添加剤、例えば、可溶化剤、乳化剤、緩衝剤、防腐剤、甘味剤、香味剤、懸濁剤、増粘剤、着色剤、粘度調整剤、安定化剤、及び浸透圧調整剤を含有することができる。非経口投与用の液体担体の例には、水、アルコール(一価アルコール及び多価アルコールを含み、例えばグリコール)及びそれらの誘導体、並びに油(例えば、分留されたヤシ油及び落花生油)が含まれる。非経口投与について、担体は、油性エステル、例えば、オレイン酸エチル又はミリスチン酸イソプロピルであり得る。滅菌液体担体は、非経口投与用の滅菌液体形態の組成物に使用される。溶液のpHは、約5~約8、例えば、約7~約7.5であり得る。
【0113】
一部の実施形態では、本開示の分子による処置は、野生型IL-2ポリペプチドによる処置よりも耐容性が高い。一部の実施形態では、治療有効用量の本開示の分子による処置は、IL2(C125S)による処置と比較して、下痢の発生率が少ない。一部の実施形態では、治療有効量の本開示の分子による処置は、毛細血管漏出症候群を引き起こさない。一部の実施形態では、治療有効量の本開示の分子による処置は、好中球活性の低下又は感染の危険性の増大を引き起こさない。
【0114】
本開示の化合物は、IL-2受容体に対して高い、中程度の、又は低い親和性を有する。本開示の化合物は、ST2に対して高い、中程度の、又は低い親和性を有する。IL2R及びST2に対して中程度の又は低い親和性を個々に有する化合物は、両方の受容体が細胞上に存在する場合、高い結合力を有することができる。本開示の化合物は、個々のST2又はIL2Rのいずれかへの結合に対して、例えば、約1pmol~約1mmol、約10pmol~約1mmol、約100pmol~約1mmol、約1μmol~約1mmol、約10μmol~約1mmol、約1μmol~約100μmol、約1μmol~約500μmol、約200μmol~約800μmol、約10μmol~約100μmol、又は約500μmol~約1mmolの解離定数(Kd)を有する。本開示の化合物は、ST2とIL-2Rの両方に結合する場合、例えば、個々のKdの95%未満、90%未満、85%未満、80%未満、75%未満、70%未満、65%未満、60%未満、55%未満、50%未満、45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、又は1%未満のより低い見かけのKdを有し得る。
【0115】
薬物動態
用量は、本明細書に記載されるように、所望の薬物動態(PK)又は薬力学プロファイル、例えば、所望の又は有効な血液プロファイルを達成するために調節することができる。
【0116】
薬物動態データ及び薬力学データは、様々な実験技法によって得ることができる。特定の組成物を記載する適切な薬物動態プロファイル及び薬力学プロファイル成分は、ヒト対象における薬物代謝の変動により変化し得る。薬物動態プロファイル及び薬力学プロファイルは、一群の対象の平均パラメーターの決定に基づくことができる。対象の群は、代表的な平均を決定するのに適した任意の妥当な数の対象、例えば、5対象、10対象、15対象、20対象、25対象、30対象、35対象、又はそれ以上を含む。平均は、例えば、測定された各パラメーターについてすべての対象の測定値の平均を計算することによって決定される。用量は、本明細書に記載されるように、所望の薬物動態学プロファイル又は薬力学プロファイル、例えば、所望の又は有効な血液プロファイルを達成するために調節することができる。
【0117】
薬力学的パラメーターは、本発明の組成物を説明するのに適した任意のパラメーターであり得る。例えば、薬力学的プロファイルは、投薬後のある時点、例えば、約0分、約1分、約2分、約3分、約4分、約5分、約6分、約7分、約8分、約9分、約10分、約11分、約12分、約13分、約14分、約15分、約16分、約17分、約18分、約19分、約20分、約21分、約22分、約23分、約24分、約25分、約26分、約27分、約28分、約29分、約30分、約31分、約32分、約33分、約34分、約35分、約36分、約37分、約38分、約39分、約40分、約41分、約42分、約43分、約44分、約45分、約46分、約47分、約48分、約49分、約50分、約51分、約52分、約53分、約54分、約55分、約56分、約57分、約58分、約59分、約60分、約0時間、約0.5時間、約1時間、約1.5時間、約2時間、約2.5時間、約3時間、約3.5時間、約4時間、約4.5時間、約5時間、約5.5時間、約6時間、約6.5時間、約7時間、約7.5時間、約8時間、約8.5時間、約9時間、約9.5時間、約10時間、約10.5時間、約11時間、約11.5時間、約12時間、約12.5時間、約13時間、約13.5時間、約14時間、約14.5時間、約15時間、約15.5時間、約16時間、約16.5時間、約17時間、約17.5時間、約18時間、約18.5時間、約19時間、約19.5時間、約20時間、約20.5時間、約21時間、約21.5時間、約22時間、約22.5時間、約23時間、約23.5時間、約24時間、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約13日、又は約14日で得ることができる。
【0118】
薬物動態パラメーターは、化合物を記載するのに適した任意のパラメーターであり得る。Cmaxは、例えば、約1ng/mL以上、約5ng/mL以上、約10ng/mL以上、約15ng/mL以上、約20ng/mL以上、約25ng/mL以上、約50ng/mL以上、約75ng/mL以上、約100ng/mL以上、約200ng/mL以上、約300ng/mL以上、約400ng/mL以上、約500ng/mL以上、約600ng/mL以上、約700ng/mL以上、約800ng/mL以上、約900ng/mL以上、約1000ng/mL以上、約1250ng/mL以上、約1500ng/mL以上、約1750ng/mL以上、約2000ng/mL以上、約2500ng/mL以上、又は本明細書に記載される化合物の薬物動態プロファイルを記載するのに適した任意の他のCmaxであり得る。Cmaxは、例えば50μg/kgで、静脈内注射によって投与される場合、血液中で、例えば、約5~約10,000ng/mL、約50~約10,000ng/mL、約500~約10,000ng/mL、約5000~約10,000ng/mL、約1000~約5,000ng/mL、約1000~約3,000ng/mL、約5,000~約8,000ng/mL、又は約500~約1000ng/mLであり得る。Cmaxは、例えば50μg/kgで、皮下注射によって投与される場合、血液中で、例えば、約5~約50ng/mL、約50~約500ng/mL、約100~約250ng/mL、約1000~約5000ng/mL、約1000~約2000ng/mL、約2000~約5000ng/mL、約5000~約10000ng/mL又は約5000~約7000ng/mLであり得る。Cmaxは、受け入れた化合物の用量に依存し得る。受け入れた用量は、50μg/kg、100μg/kg、200μg/kg、250μg/kg、300μg/kg、400μg/kg、500μg/kg、600μg/kg、700μg/kg、800μg/kg、900μg/kg、又は1000μg/kgであり得る。
【0119】
本明細書に記載される化合物のTmaxは、例えば、約0.5時間以下、約1時間以下、約1.5時間以下、約2時間以下、約2.5時間以下、約3時間以下、約3.5時間以下、約4時間以下、約4.5時間以下、約5時間以下、約5.5時間以下、約6時間以下、約6.5時間以下、約7時間以下、約7.5時間以下、約8時間以下、約8.5時間以下、約9時間以下、約9.5時間以下、約10時間以下、約10.5時間以下、約11時間以下、約11.5時間以下、約12時間以下、約12.5時間以下、約13時間以下、約13.5以下時間、約14時間以下、約14.5時間以下、約15時間以下、約15.5時間以下、約16時間以下、約16.5時間以下、約17時間以下、約17.5時間以下、約18時間以下、約18.5時間以下、約19時間以下、約19.5時間以下、約20時間以下、又は本明細書に記載される化合物の薬物動態プロファイルを記載するのに適切な任意の他のTmaxであり得る。Tmaxは、例えば、約0.1時間~約24時間、約0.1時間~約0.5時間、約0.5時間~約1時間、約1時間~約1.5時間、約1.5時間~約2時間、約2時間~約2.5時間、約2.5時間~約3時間、約3時間~約3.5時間、約3.5時間~約4時間、約4時間~約4.5時間、約4.5時間~約5時間、約5時間~約5.5時間、約5.5時間~約6時間、約6時間~約6.5時間、約6.5時間~約7時間、約7時間~約7.5時間、約7.5時間~約8時間、約8時間~約8.5時間、約8.5時間~約9時間、約9時間~約9.5時間、約9.5時間~約10時間、約10時間~約10.5時間、約10.5時間~約11時間、約11時間~約11.5時間、約11.5時間~約12時間、約12時間~約12.5時間、約12.5時間~約13時間、約13時間~約13.5時間、約13.5時間~約14時間、約14時間~約14.5時間、約14.5時間~約15時間、約15時間~約15.5時間、約15.5時間~約16時間、約16時間~約16.5時間、約16.5時間~約17時間、約17時間~約17.5時間、約17.5時間~約18時間、約18時間~約18.5時間、約18.5時間~約19時間、約19時間~約19.5時間、約19.5時間~約20時間、約20時間~約20.5時間、約20.5時間~約21時間、約21時間~約21.5時間、約21.5時間~約22時間、約22時間~約22.5時間、約22.5時間~約23時間、約23時間~約23.5時間、又は約23.5時間~約24時間であり得る。
【0120】
本明細書に記載される化合物のAUC(0-inf)(AUC(0-∞)とも呼ばれる)又はAUC(last)は、例えば、約1ng・hr/mL以上、約5ng・hr/mL以上、約10ng・hr/mL以上、約20ng・hr/mL以上、約30ng・hr/mL以上、約40ng・hr/mL以上、約50ng・hr/mL以上、約100ng・hr/mL以上、約150ng・hr/mL以上、約200ng・hr/mL以上、約250ng・hr/mL以上、約300ng・hr/mL以上、約350ng・hr/mL以上、約400ng・hr/mL以上、約450ng・hr/mL以上、約500ng・hr/mL以上、約600ng・hr/mL以上、約700ng・hr/mL以上、約800ng・hr/mL以上、約900ng・hr/mL以上、約1000ng・hr/mL以上、約1250ng・hr/mL以上、約1500ng・hr/mL以上、約1750ng・hr/mL以上、約2000ng・hr/mL以上、約2500ng・hr/mL以上、約3000ng・hr/mL以上、約3500ng・hr/mL以上、約4000ng・hr/mL以上、約5000ng・hr/mL以上、約6000ng・hr/mL以上、約7000ng・hr/mL以上、約8000ng・hr/mL以上、約9000ng・hr/mL以上、約10,000ng・hr/mL以上、約11,000ng・hr/mL以上、約12,000ng・hr/mL以上、約13,000ng・hr/mL以上、約14,000ng・hr/mL以上、約15,000ng・hr/mL以上、約16,000ng・hr/mL以上、約17,000ng・hr/mL以上、約18,000ng・hr/mL以上、約19,000ng・hr/mL以上、約20,000ng・hr/mL以上、又は本明細書に記載される化合物の薬物動態プロファイルを記載するのに適した任意の他のAUC(0-inf)であり得る。化合物のAUC(0-inf)は、例えば、約1ng・hr/mL~約10,000ng・hr/mL、約1ng・hr/mL~約10ng・hr/mL、約10ng・hr/mL~約25ng・hr/mL、約25ng・hr/mL~約50ng・hr/mL、約50ng・hr/mL~約100ng・hr/mL、約100ng・hr/mL~約200ng・hr/mL、約200ng・hr/mL~約300ng・hr/mL、約300ng・hr/mL~約400ng・hr/mL、約400ng・hr/mL~約500ng・hr/mL、約500ng・hr/mL~約600ng・hr/mL、約600ng・hr/mL~約700ng・hr/mL、約700ng・hr/mL~約800ng・hr/mL、約800ng・hr/mL~約900ng・hr/mL、約900ng・hr/mL~約1,000ng・hr/mL、約1,000ng・hr/mL~約1,250ng・hr/mL、約1,250ng・hr/mL~約1,500nng・hr/mL、約1,500ng・hr/mL~約1,750ng・hr/mL、約1,750ng・hr/mL~約2,000ng・hr/mL、約2,000ng・hr/mL~約2,500ng・hr/mL、約2,500ng・hr/mL~約3,000ng・hr/mL、約3,000ng・hr/mL~約3,500ng・hr/mL、約3,500ng・hr/mL~約4,000ng・hr/mL、約4,000ng・hr/mL~約4,500ng・hr/mL、約4,500ng・hr/mL~約5,000ng・hr/mL、約5,000ng・hr/mL~約5,500ng・hr/mL、約5,500ng・hr/mL~約6,000ng・hr/mL、約6,000ng・hr/mL~約6,500ng・hr/mL、約6,500ng・hr/mL~約7,000ng・hr/mL、約7,000ng・hr/mL~約7,500ng・hr/mL、約7,500ng・hr/mL~約8,000ng・hr/mL、約8,000ng・hr/mL~約8,500ng・hr/mL、約8,500ng・hr/mL~約9,000ng・hr/mL、約9,000ng・hr/mL~約9,500ng・hr/mL、約9,500ng・hr/mL~約10,000ng・hr/mL、約10,000ng・hr/mL~約10,500ng・hr/mL、約10,500ng・hr/mL~約11,000ng・hr/mL、約11,000ng・hr/mL~約11,500ng・hr/mL、約11,500ng・hr/mL~約12,000ng・hr/mL、約12,000ng・hr/mL~約12,500ng・hr/mL、約12,500ng・hr/mL~約13,000ng・hr/mL
、約13,000ng・hr/mL~約13,500ng・hr/mL、約13,500ng・hr/mL~約14,000ng・hr/mL、約14,000ng・hr/mL~約14,500ng・hr/mL、約14,500ng・hr/mL~約15,000ng・hr/mL、約15,000ng・hr/mL~約15,500ng・hr/mL、約15,500ng・hr/mL~約16,000ng・hr/mL、約16,000ng・hr/mL~約16,500ng・hr/mL、約16,500ng・hr/mL~約17,000ng・hr/mL、約17,000ng・hr/mL~約17,500ng・hr/mL、約17,500ng・hr/mL~約18,000ng・hr/mL、約18,000ng・hr/mL~約18,500ng・hr/mL、約18,500ng・hr/mL~約19,000ng・hr/mL、約19,000ng・hr/mL~約19,500ng・hr/mL、又は約19,500ng・hr/mL~約20,000ng・hr/mLであり得る。例えば、化合物のAUC(0-inf)は、50μg/kgで静脈内投与した場合には約8500ng・hr/mLであり、50μg/kgで皮下投与した場合には約4000ng・hr/mLであり得る。
【0121】
本明細書に記載される化合物の血漿濃度は、例えば、約1ng/mL以上、約5ng/mL以上、約10ng/mL以上、約15ng/mL以上、約20ng/mL以上、約25ng/mL以上、約50ng/mL以上、約75ng/mL以上、約100ng/mL以上、約150以上ng/mL以上、約200ng/mL以上、約300ng/mL以上、約400ng/mL以上、約500ng/mL以上、約600ng/mL以上、約700ng/mL以上、約800ng/mL以上、約900ng/mL以上、約1000ng/mL以上、約1200ng/mL以上、又は本明細書に記載される化合物の任意の他の血漿中濃度であり得る。血漿濃度は、例えば、約1ng/mL~約2,000ng/mL、約1ng/mL~約5ng/mL、約5ng/mL~約10ng/mL、約10ng/mL~約25ng/mL、約25ng/mL~約50ng/mL、約50ng/mL~約75ng/mL、約75ng/mL~約100ng/mL、約100ng/mL~約150ng/mL、約150ng/mL~約200ng/mL、約200ng/mL~約250ng/mL、約250ng/mL~約300ng/mL、約300ng/mL~約350ng/mL、約350ng/mL~約400ng/mL、約400ng/mL~約450ng/mL、約450ng/mL~約500ng/mL、約500ng/mL~約600ng/mL、約600ng/mL~約700ng/mL、約700ng/mL~約800ng/mL、約800ng/mL~約900ng/mL、約900ng/mL~約1,000ng/mL、約1,000ng/mL~約1,100ng/mL、約1,100ng/mL~約1,200ng/mL、約1,200ng/mL~約1,300ng/mL、約1,300ng/mL~約1,400ng/mL、約1,400ng/mL~約1,500ng/mL、約1,500ng/mL~約1,600ng/mL、約1,600ng/mL~約1,700ng/mL、約1,700ng/mL~約1,800ng/mL、約1,800ng/mL~約1,900ng/mL、又は約1,900ng/mL~約2,000ng/mLであり得る。
【0122】
薬力学パラメーターは、本開示の組成物を記載するのに適した任意のパラメーターであり得る。例えば、薬力学プロファイルは、例えば、約24時間、約48時間、約72時間、又は1週間、Treg細胞数の増加を呈することができる。
【0123】
本発明の方法で投与される化合物について計算することができる薬力学的及び薬物動態学的パラメーターの非限定的な例には、以下が含まれる:a)投与された薬物の量、投薬量Dとして表すことができる、b)投薬間隔、τとして表すことができる、c)薬物が分配される見かけの体積、分配体積Vdとして表すことができ、ここで、Vd=D/C0である、d)所与の体積の血漿中の薬物の量、濃度C0又はCssとして表すことができ、ここで、C0又はCss=D/Vdであり、複数の試料にわたる平均血漿濃度として表すことができる、e)薬物の半減期t1/2、ここで、t1/2=ln(2)/keである、f)薬物が身体から除去される速度ke、ここで、ke=ln(2)/t1/2=CL/Vdである、g)式を平衡にするのに必要とされる注入速度Kin、ここで、Kin=Css.CLである、h)単回投薬の投与後の濃度-時間曲線の積分、これはAUC0-∞として表すことができ、ここで、
【0124】
【数1】
であり、又は定常状態であり、これは、AUCτ,ssとして表すことができ、ここで、
【0125】
【数2】
である、i)単位時間あたりに薬物が除去された血漿の体積、これはCL(クリアランス)として表すことができ、ここで、CL=Vd.ke=D/AUCである、j)薬物の体系的に利用可能な割合、fとして表すことができ、ここで、
【0126】
【数3】
である、k)投与後の薬物のピーク血漿中濃度Cmax、l)薬物がCmaxに達するのにかかる時間、tmax、m)次の用量が投与される前に薬物が達する最低濃度Cmin、及びn)定常状態での1つの投薬間隔内でのピークトラフ変動、
【0127】
【数4】
として表すことができ、ここで、
【0128】
【数5】
である。
【0129】
本開示の化合物は、対象に投与された場合に高い安定性を有し得る。投与された化合物は、約6時間を超える、約7時間を超える、約8時間を超える、約9時間を超える、約10時間を超える、約11時間を超える、約12時間を超える、約13時間を超える、約14時間を超える、約15時間を超える、約16時間を超える、約17時間を超える、約18時間を超える、約19時間を超える、約20時間を超える、約21時間を超える、約22時間を超える、約23時間を超える、約24時間を超える、約25時間を超える、約26時間を超える、約27時間を超える、約28時間を超える、約29時間を超える、約30時間を超える、約31時間を超える、約32時間を超える、約33時間を超える、約34時間を超える、約35時間を超える、約36時間を超える、約37時間を超える、約38時間を超える、約39時間を超える、約40時間を超える、約41時間を超える、約42時間を超える、約43時間を超える、約44時間を超える、約45時間を超える、約46時間を超える、約47時間を超える、約48時間を超える、約49時間を超える、約50時間を超える、約51時間を超える、約52時間を超える、約53時間を超える、約54時間を超える、約55時間を超える、約56時間を超える、約57時間を超える、約58時間を超える、約59時間を超える、約60時間を超える、約61時間を超える、約62時間を超える、約63時間を超える、又は約64時間を超える生理学的な半減期を有し得る。
【0130】
本開示の化合物の半減期は、投与される用量に基づいて変化し得る。例えば、50μg/kgの用量で投与した場合の化合物の半減期は、100μg/kg又は250μg/kgの用量で投与した場合の同じ化合物の半減期よりも短くなり得る。化合物の半減期は、使用される投与経路に基づいて変化し得る。化合物の半減期は、化合物が静脈内というよりもむしろ皮下に投与される場合にはより長くなり得る。例えば、皮下に送達された化合物の半減期は、約15時間~約25時間の間であり得、一方、静脈内に送達された化合物の半減期は、約5~約15時間の間であり得る。一部の実施形態では、50μg/kgで静脈内に投与された場合の化合物の半減期は、約6時間~約14時間、約7時間~約13時間、約8時間~約12時間、又は約9時間~約11時間である。一部の実施形態では、50μg/kgで静脈内に投与された場合の化合物の半減期は、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、又は約15時間である。一部の実施形態では、50μg/kgで皮下に投与された場合の化合物の半減期は、約15時間~約27時間、約16時間~約26時間、約17時間~約25時間、約18時間~約24時間、約19時間~約23時間、又は約20時間~約22時間である。一部の実施形態では、50μg/kgで皮下に投与された場合の化合物の半減期は、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約25時間、約26時間、約27時間、約28時間、約29時間、又は約30時間である。血液からの化合物のクリアランスは、皮下に送達された化合物よりも静脈内に送達された化合物の方が速い場合がある。
【0131】
二量体タンパク質の生成:ヘテロ二量体及びホモ二量体
一部の実施形態では、本開示の化合物は、ヘテロ二量体であり、例えば、第1の融合タンパク質の一部であるIL2R結合部分(例えば、IL-2又はIL-2変異体)、及び第2の融合タンパク質の一部であるST2結合部分(例えば、IL-33、IL-33変異体、ST2に結合する抗体又はその抗原結合断片)を含むヘテロ二量体である。一部の実施形態では、第1及び第2の融合タンパク質のそれぞれは、IgG Fcドメイン、例えば、IgG1 Fcドメイン又はその変異体を含む。ヘテロ二量体は、2つの構成組換えタンパク質を個々に発現させ、それらを精製し、インビトロでそれらを組み合わせてジスルフィド連結したヘテロ二量体を形成することによって生成することができる。ヘテロ二量体Fc融合タンパク質はまた、「ノブ・イントゥー・ホール」アプローチを用いて、2つの構成cDNA構築物をトランスフェクトされた単一細胞中で作製され得る。この戦略により、ホモ二量体の形成を妨げるが、ヘテロ二量体の形成を促進する相補的界面を形成する2つのFcポリペプチド鎖間のCH2-CH3界面に突然変異が導入される。このようにして、ヘテロ二量体Fc融合タンパク質は、組換えタンパク質を発現する宿主細胞内で形成され、ヘテロ二量体タンパク質として分泌され得る。以下は、ヒトIgG1バックグラウンド上でのこのようなFc構築物の2つの例である。突然変異残基T366Y及びY407Tを下線を付して示し、N297A残基に下線を付す。
【0132】
(A)IgG1 Fc(N297A;T366Y):
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLYCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG (配列番号8)
【0133】
(B)IgG1 Fc(N297A;Y407T):
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLTSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG (配列番号9)
【0134】
2つの異なる結合部分、例えばIL-2及びIL-33をそれぞれFc配列(A)及び(B)に付加して、ヘテロ二量体タンパク質を構築することができる。
【0135】
一部の実施形態では、第1の融合タンパク質は、突然変異T350V、L351Y、F405A及びY407Vを含むIgG1 Fcドメイン(例えば、配列番号4)を含み、第2の融合タンパク質は、突然変異T350V、T366L、K392L及びT394W(例えば、配列番号5)を含む。このような突然変異は、適切な対合及び安定性を改善することが報告されている(Von Kreudensteinら、2013、mAbs 5: 646~654頁; WO 2014082179 A1)。例示的なヒトIgG1 Fcドメイン配列が以下に示され、N297A突然変異は下線が付され、T350V、L351Y、F405A、Y407V、T350V、T366L、K392L及びT394W突然変異は下線付して示される。
【0136】
(A)IgG1 Fc(N297A、T350V、L351Y、F405A及びY407V)
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYVYPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFALVSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG (配列番号4)
【0137】
(B)IgG1 Fc(N297A、T350V、T366L、K392L及びT394W)
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYVLPPSRDELTKNQVSLLCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYLTWPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG (配列番号5)
【0138】
例示的なヘテロ二量体を図4A、4B、4C、4D及び4Eに示す。
【0139】
一部の実施形態では、本開示の化合物は、ホモ二量体、例えば、各々がIL2R結合部分(例えば、IL-2又はIL-2変異体)及びST2結合部分(例えば、IL-33、IL-33変異体、ST2に結合する抗体又はその抗原結合断片)を含有する、2つの同一の融合タンパク質を含むホモ二量体である。一部の実施形態では、2つの同一の融合タンパク質のそれぞれは、IgG Fcドメイン、例えば、IgG1 Fcドメイン又はその変異体を含む。特定の実施形態では、IgG1 Fcドメインは、N297A突然変異を含むヒトIgG1 Fcドメイン(例えば、配列番号7)である。例示的なホモ二量体を図1F及び1Gに示す。
【0140】
IL2R結合部分(例えば、IL-2又はIL-2変異体)及びST2結合部分(例えば、IL-33、IL-33変異体、ST2に結合する抗体又は抗原結合断片)は、直接的に又はペプチドリンカー(例えば、G4Sリンカー)を介して、IgG FcドメインのN末端又はC末端に結合され得る。IL2R結合部分及びST2結合部分の様々な組合せを使用することができる。一部の実施形態では、二量体タンパク質は、IgG FcドメインのN末端にIL2R結合部分を含む第1の融合タンパク質、及びIgG FcドメインのC末端にST2結合部分を含む第2の融合タンパク質を含む(例えば、図4Aを参照されたい)。一部の実施形態では、第1の融合タンパク質は、IgG FcドメインのN末端にIL2R結合部分を含み、第2の融合タンパク質は、IgG FcドメインのN末端にST2結合部分を含む(例えば、図4B及び5Dを参照されたい)。一部の実施形態では、第1の融合タンパク質は、IgG FcドメインのC末端にIL2R結合部分を含み、第2の融合タンパク質は、IgG FcドメインのN末端にST2結合部分を含む(例えば、図4C及び5Cを参照されたい)。一部の実施形態では、第1の融合タンパク質は、IgG FcドメインのC末端のIL2R結合部分を含み、第2の融合タンパク質は、IgG FcドメインのC末端のST2結合部分を含む。一部の実施形態では、第1の融合タンパク質は、IgG FcドメインのN末端にST2結合部分、及びIgG FcドメインのC末端にIL2R結合部分を含み、第2の融合タンパク質は、IgG FcドメインのN末端にST2結合部分を含む(例えば、図4D及び5Bを参照されたい)。一部の実施形態では、第1の融合タンパク質は、IgG FcドメインのN末端にST2結合部分、及びIgG FcドメインのC末端にIL2R結合部分を含み、第2の融合タンパク質は、IgG FcドメインのN末端にIL2R結合部分を含む(例えば、図4Eを参照されたい)。一部の実施形態では、第1の融合タンパク質と第2の融合タンパク質はともに、IgG FcドメインのN末端にST2結合部分、及びIgG FcドメインのC末端にIL2R結合部分を含む(例えば、図4F及び図5Aを参照されたい)。一部の実施形態では、第1の融合タンパク質及び第2の融合タンパク質はともに、IgG FcドメインのN末端にIL2R結合部分、及びIgG FcドメインのC末端にST2結合部分を含む(例えば、図4Gを参照されたい)。一部の実施形態では、第1の融合タンパク質は、IgG FcドメインのC末端にIL2R結合部分を含み、第2の融合タンパク質は、IgG FcドメインのN末端にST2結合部分、及びIgG FcドメインのC末端にIL2R結合部分を含む(例えば、図5Eを参照されたい)。
【0141】
一部の実施形態では、二量体タンパク質は、少なくとも1つのIL2R結合部分(例えば、IL-2又はIL-2変異体)及び少なくとも1つのST2結合部分(例えば、IL-33、IL-33変異体、ST2に結合する抗体又はその抗原結合断片)を含む。一部の実施形態では、二量体タンパク質は、ただ1つのIL2R結合部分を含む。一部の実施形態では、二量体タンパク質は、ただ1つのST2結合部分を含む。
【0142】
一部の実施形態では、二量体タンパク質は、少なくとも2つのIL2R結合部分を含む。例えば、一部の実施形態では、第1及び第2の融合タンパク質はそれぞれ、少なくとも1つのIL2R結合部分を含有する。例えば、図4E、4F及び4Gを参照されたい。一部の実施形態では、二量体タンパク質は、少なくとも2つのST2結合部分を含む。例えば、一部の実施形態では、第1及び第2の融合タンパク質はそれぞれ、少なくとも1つのST2結合部分を含有する。例えば、図4D、4F、及び4Gを参照されたい。
【0143】
本明細書に記載される実施形態のいずれかでは、IL2R結合部分及びST2結合部分は、ペプチドリンカー(例えば、G4Sリンカー)を介してIgG Fcドメインに結合され得る。二量体タンパク質は、1、2、3、4つ又はそれ以上のペプチドリンカーを含有し得る。一部の実施形態では、二量体タンパク質は、少なくとも1、2、3又は4つのペプチドリンカーを含む。
【0144】
一部の実施形態では、IL2R結合部分及び/又はST2結合部分は、ペプチド結合を介して、すなわち、結合部分とIgG Fcドメインとの間にペプチドリンカーを付加することなく、IgG Fcドメインに直接的に融合する。一部の実施形態では、二量体タンパク質はペプチドリンカーを含まない。
【0145】
一部の実施形態では、二量体タンパク質の第1の融合タンパク質は、IL-2結合部分(例えば、ヒトIL-2タンパク質ドメイン又はその変異体)のC末端が、ペプチド結合を介して第1のペプチドリンカードメインのN末端に融合し、第1のIgG Fcタンパク質ドメインのN末端が、ペプチド結合を介して第1のペプチドリンカードメインのC末端に融合するように構成される。一部の実施形態では、二量体タンパク質の第2の融合タンパク質は、第2のIgG Fcタンパク質ドメインのC末端が、ペプチド結合を介して第2のペプチドリンカードメインのN末端に融合し、ST2に結合するタンパク質ドメインのN末端が、ペプチド結合を介して第2のペプチドリンカードメインのC末端に融合するように構成される。例えば、図4Aを参照されたい。一部の実施形態では、二量体タンパク質の第2の融合タンパク質は、ST2結合部分のC末端が、ペプチド結合を介して第2のペプチドリンカードメインのN末端に融合し、第2のIgG Fcタンパク質ドメインのN末端が、ペプチド結合を介して第2のペプチドリンカードメインのC末端に融合するように構成される。例えば、図4Bを参照されたい。
【0146】
一部の実施形態では、二量体タンパク質は、配列番号12のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する融合タンパク質を含む。一部の実施形態では、二量体タンパク質は、配列番号13のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する融合タンパク質を含む。一部の実施形態では、二量体タンパク質は、配列番号14のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する融合タンパク質を含む。一部の実施形態では、二量体タンパク質は、配列番号15のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する融合タンパク質を含む。一部の実施形態では、二量体タンパク質は、配列番号16のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する融合タンパク質を含む。一部の実施形態では、二量体タンパク質は、配列番号17のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する融合タンパク質を含む。一部の実施形態では、二量体タンパク質は、配列番号18のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する融合タンパク質を含む。一部の実施形態では、二量体タンパク質は、配列番号19のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する融合タンパク質を含む。一部の実施形態では、二量体タンパク質は、配列番号20のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する融合タンパク質を含む。一部の実施形態では、二量体タンパク質は、配列番号21のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する融合タンパク質を含む。一部の実施形態では、二量体タンパク質は、配列番号22のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する融合タンパク質を含む。一部の実施形態では、二量体タンパク質は、配列番号23のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する融合タンパク質を含む。一部の実施形態では、二量体タンパク質は、配列番号24のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する融合タンパク質を含む。一部の実施形態では、二量体タンパク質は、配列番号25のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する融合タンパク質を含む。一部の実施形態では、二量体タンパク質は、配列番号26のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する融合タンパク質を含む。一部の実施形態では、二量体タンパク質は、配列番号27のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する融合タンパク質を含む。一部の実施形態では、二量体タンパク質は、配列番号28のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する融合タンパク質を含む。一部の実施形態では、二量体タンパク質は、配列番号29のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する融合タンパク質を含む。一部の実施形態では、二量体タンパク質は、配列番号30のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する融合タンパク質を含む。
【0147】
【実施例
【0148】
[実施例1]
ST2及びIL2Rを標的とする二重特異性分子の構築
ST2(IL-33受容体)及びIL-2高親和性受容体を標的とする二重特異性分子を構築した。構築されたすべての分子を以下の表1及び2に列挙する。それらの概略図を図4及び5に示す。
【0149】
表1及び図4の二重特異性分子は、Fc融合タンパク質であり、IL-2高親和性受容体アゴニスト(すなわち、IL-2変異体)及びIL-33変異体である受容体標的化部分で構成される。各分子は、N若しくはC末端に一価又は二価の受容体標的化部分を含有する。ペプチドリンカー(G4S)3は、ヒトIgG1 Fcドメインと受容体標的化部分をつなげる。Fcドメインは、FcgR及びC1q結合を減少させるために置換N297Aを含有し、したがって、Fcエフェクター機能を減少させる。IL-33部分は、ヒトIL-33のSer112-Thr270断片を含み、これはIL-33タンパク質の生物活性型である。さらに、IL-33部分は、置換C208S、C227S、C232S及びC259Sを含有する。システインからセリンへの置換は、酸化によるIL-33の不活性化を防ぐことが報告されている(Cohenら、2015、Nature Commun 6: 8327頁; WO2016/156440)。この変異体は、HEK293細胞における活性IL-33変異体を含有するタンパク質の産生を促進するために選択された。IL-2受容体アゴニストは、野生型ヒトIL-2配列(配列番号2)と比較して、置換N88R及びC125Sを含有する133アミノ酸のヒトIL-2変異体である。
【0150】
表2及び図5の二重特異性分子は、ヒトIL-2変異体(N88R、C125S)及び抗ST2抗体の抗原結合断片(Fab)で構成される。概念の証明として、2つの抗ST2 mAb、Ab2及びAb4は、公開された特許出願(US2017/0002079 A1)から選択された。各二重特異性分子は、抗ST2抗原結合断片と比較して一価又は二価のいずれかであり、N又はC末端でペプチドリンカー(G4S)3を介してIL-2受容体アゴニストに共有結合される。
【0151】
ヘテロ二量体Fcタンパク質の産生は、潜在的なホモ二量体汚染に起因して魅力的であり得る。この実施例におけるすべてのヘテロ二量体分子は、望ましくないホモ二量体対合を減少させるためにFcドメイン上に突然変異を有する。突然変異には、1つの鎖にT350V、L351Y、F405A及びY407Vが含まれ、他の鎖にT350V、T366L、K392L及びT394Wが含まれる。このような突然変異は、適切な対合及び安定性を改善することが報告されている(Von Kreudensteinら、2013、mAbs 5: 646~654頁; WO 2014082179 A1)。
【0152】
【表1】
【0153】
【表2】
【0154】
すべての分子は、一過性にトランスフェクトされたHEK293細胞において産生され、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー、続いてサイズ排除クロマトグラフィーによって精製された。IL2vNM-IL33vCM(図4A)と比較して有意に低下したタンパク質発現レベルに起因して、以下の分子を結合の特徴付けに含めなかった:IL33vNM-IL2vCM(図4C)、IL33vNB-IL2vCM(図4D)、IL2vNB-IL33vCM(図4E)、IL33vNB-IL2vCB(図4F)、及びIL2vNB-IL33vCB(図4G)。
【0155】
[実施例2]
IL33-IL2v二重特異性分子の結合特徴付け
ST2(Sino Biological)及びIL2Ra(Lake Pharma, Inc.)の細胞外ドメイン(ECD)への二重特異性タンパク質の結合は、Biacore T200機器(GE)を用いて表面プラズモン共鳴(SPR)によって評価された。抗His Tag抗体(GenScript)をNHS-EDSカップリングによりCM4チップ(GE)に固定化し、結合反応をHBS-EP+緩衝液(GE)中、25℃で行った。Hisタグ化ST2 ECDタンパク質を抗Hisタグ抗体被覆チップによって捕捉した。
【0156】
ST2結合について、ヒスチジンタグ化ヒト又はマウスST2 ECDタンパク質をリガンドとしてチップ上に捕捉した。二重特異性分子を分析物として50μl/分の流速で60秒間注入し、ヒトST2については200秒間及びマウスST2について120秒間解離させた。二重特異性分子を様々な濃度で調製した(ヒトST2相互作用について3倍希釈で0.12nM~10nM、マウスST2相互作用について3倍希釈で2.5nM~200nM)。チップ表面を10mMグリシンpH1.7で再生した。会合及び解離シグナルは、Biacore評価ソフトウェアバージョン2.0を用いて1:1結合に適合させて、速度定数(ka及びkd)を求め、解離定数(Kd)を計算した。
【0157】
センサーグラムを図6A及び6Bに示す。速度定数及び解離定数は表3に要約する。IL2vNM-IL33vCM及びIL2vNM-IL33vNMは0.17~0.3nMの範囲のKd値でヒトST2に結合し、これは以前に報告されたwt IL-33及びST2相互作用のKd値(Kd=0.4~0.7nM)(Lingelら、2009、Structure 17 (10): 1398~1410頁; Liuら、2013、PNAS 110(37): 14918~14923頁)よりわずかに低かった。これらのタンパク質はマウスST2に結合したが、親和性は低下した。すべての二重特異性分子及び一価のIL-33分子は、ヒトST2に対して同等の親和性を示した。しかしながら、IL2vNM-IL33vCMは、マウスST2に対してIL2vNM-IL33NMよりも高い親和性(>10倍)を示した。さらに、IL33vCMは、IL33vNMよりもマウスST2に対してより高い親和性を示した。これは、C末端IL-33配向がN末端IL-33よりもマウスST2に対してより高い親和性を有することを示した。
【0158】
さらに、IL2vNM-IL33vNM試料は、SDS PAGEによって検出可能なIL2vホモ二量体汚染を含有したが、一方、ホモ二量体は、IL2vNM-IL33vCM試料において検出可能ではなかった。結論として、C末端IL-33二重特異性タンパク質、IL2vNM-IL33vCMはマウスST2に対してより高い親和性を示し、より均一なヘテロ二量体タンパク質として発現された。したがって、それは実施例4におけるマウスT細胞を用いた生物活性アッセイのために選択された。
【0159】
【表3】
【0160】
【表4】
【0161】
二重特異性分子がST2とIL-2Rアルファの両方に同時に結合するかどうかを試験するために、二重特異性分子は、チップ上に固定化されたヒスチジンタグ化ヒトST2によって捕捉された。続いて、ヒトIL2Rアルファは、分析物として50μl/分の流速で50秒間注入され、60秒間解離させた。IL2Rアルファは、様々な濃度で調製された(3倍希釈で2.5nM~200nM)。チップ表面は、10mMグリシンpH1.7で再生された。会合及び解離シグナルは、Biacore評価ソフトウェアバージョン2.0を用いて1:1結合に適合させて、速度定数(ka及びkd)を求め、解離定数(Kd)を計算した。
【0162】
センサーグラムを図7に示し、速度定数及び解離定数を上記の表4に要約する。IL2vNM-IL33vCM及びIL2vNM-IL33vNMは、以前に報告された値(Landgraf BEら、1992、J Biol Chem. 267 (26):18511~9頁; Myszka DGら、1996、Protein Sci. 5(12):2468~78頁; Shanafelt ABら、2000、Nat Biotechnol. (11):1197~202頁)と同等のKd値(26~32nM)でヒトIL2Rアルファに結合された。これらのデータは、IL-2v部分がIL2Ra結合を保持していることを示す。二重特異性分子は、ST2タンパク質に結合しながらIL2Raに結合するため、ST2とIL2Raの両方に同時に結合することができる。
【0163】
[実施例3]
抗ST2/IL2v二重特異性分子の結合特徴付け
ヒトST2及びIL2Raへの抗ST2/IL2v二重特異性タンパク質の結合は、実施例2に記載したのと同様の方法で表面プラズモン共鳴(SPR)によって評価された。
【0164】
ST2結合について、ヒスチジンタグ化ヒトST2 ECDタンパク質をリガンドとしてチップ上に捕捉した。抗ST2 mAbのFab(Ab2)及びIL-2vで構成されるAb2-IL2v二重特異性分子を分析物として50μl/分の流速で400秒間注入し、600秒間解離させた。Ab2-IL2v二重特異性分子を様々な濃度で調製した(3倍希釈で0.012nM~1nM)。抗ST2 mAbのFab、Ab4及びIL-2vで構成されるAb4-IL2v二重特異性分子を分析物として50μl/分の流速で200秒間注入し、400秒間解離させた。Ab4-IL2v二重特異性分子を様々な濃度で調製した(3倍希釈で0.062nM~5nM)。チップ表面を10mMグリシンpH1.7で再生した。一価の抗ST2二重特異性分子の会合及び解離シグナルは、Biacore評価ソフトウェアバージョン2.0を用いて1:1結合に適合させて、速度定数(ka及びkd)を求め、解離定数(Kd)を計算した。
【0165】
センサーグラムを図8A及び8Bに示す。速度定数及び解離定数は以下の表5に要約する。すべての二重特異性分子はST2タンパク質に対して明らかな結合を提示した。一価Ab2-IL2v二重特異性分子のKd値は、特許US2017/0002079 A1に報告されている値34pMと比較して、94pM~137pMの範囲であった。一価Ab4/IL2v二重特異性分子のKd値は、特許US2017/0002079 A1に報告されている値301pMと比較して、289pM~378pMの範囲であった。
【0166】
【表5】
【0167】
二重特異性分子がST2とIL2Raの両方に同時に結合するかどうかを試験するために、二重特異性分子は、チップ上に固定化されたヒスチジンタグ化ヒトST2によって捕捉された。続いて、IL2Rアルファは、分析物として50μl/分の流速で50秒間注入され、60秒間解離させた。IL2Rは、様々な濃度で調製された(3倍希釈で2.5nM~200nM)。チップ表面は、10mMグリシンpH1.7で再生された。会合及び解離シグナルは、Biacore評価ソフトウェアバージョン2.0を用いて1:1結合に適合させて、速度定数(ka及びkd)を求め、解離定数(Kd)を計算した。
【0168】
センサーグラムを図9A及び9Bに示し、速度定数及び解離定数を以下の表6に要約する。それらはすべて、以前に報告された値と同等のKd値(25~43nM)でヒトIL2Rアルファに結合された。これは、IL2v部分がIL2Ra結合を保持していることを示す。二重特異性分子は、ST2タンパク質に結合しながらIL2Raに結合することを示したため、ST2とIL2Raの両方に同時に結合することができる。
【0169】
【表6】
【0170】
[実施例4]
マウスST2+ TregにおけるIL2vNM-IL33vCMの活性
IL-2によるT細胞の活性化は、細胞中のリン酸化STAT5(pSTAT5)のレベルを決定することによってアクセスすることができる。pSTAT5は、細胞を抗pSTAT5抗体で染色し、次に、フローサイトメトリーにより種々のリンパ球サブセットを分離することによって測定された。
【0171】
ST2+ Tregは、いくつかのヒト組織において高レベルで見られるが、血中では非常に低い頻度(<0.01%)で見られる。ヒトドナーから組織を得ることが困難であるために、IL2vNM-IL33vCMの効果は、マウス脾臓由来のST2+ Tregについて最初に評価し、脾臓では、血中に見出されたもの(Tregの0.1~1.0%)よりも高いレベルのST2+ Treg(Tregの5~10%)を有することが見出された。C57B1/6Jマウスから脾臓を単離し、単一な細胞懸濁液は、ある濃度範囲のIL2vNM(一価IL-2変異体Fc融合体)、IL33vCM(一価IL-33変異体Fc融合体)又は二重特異性IL2vNM-IL33vCMのいずれかで刺激された(図10)。IL-2によるTreg活性化は、フローサイトメトリーによって細胞内リン酸化STAT5(pSTAT5)のレベルを決定することによって測定することができる。IL33vCMは、高い非生理学的濃度(10~100nM、図8B)のみで限界レベルのpSTAT5を誘導した。対照的に、IL2vNMは、はるかに低い濃度でpSTAT5を誘導し、ST2+ TregについてEC50は2.4nMであり(図8A)、ST2- TregについてEC50は0.86nMであった(図8B)。IL2vNM-IL33vCM二重特異性タンパク質は、ST2+ TregにおいてpSTAT5誘導を増強し、IL33vCM又はIL2vNMタンパク質のいずれか単独で、より高いレベルが見られた(図8A)が、ST2- Tregにつては見られなかった(図8B)。このアッセイにおけるIL2vNM-IL33vCMのEC50は0.26nMであり、これはIL2vNMのEC50の約10分の1であった。結論として、IL2vNM-IL33vCMはST2+ TregにおいてST2- Tregよりも大きくpSTAT5を誘導し、二重特異性分子がST2+ Tregを優先的に活性化することを実証した。
【0172】
[実施例5]
Fc領域のC末端へのIL-33部分はより活性である
ST2及びIL1RAcP複合体へのIL-33の結合は、アダプターMyD88を介したシグナル伝達を活性化する。IL-33シグナル伝達及び下流作用のメカニズムは様々な細胞型によって変化する。したがって、シグナル伝達レポーター細胞株を選んで、IL-33部分を含有するタンパク質の生物活性を測定した。レポーター細胞株HEK-Blue-IL-33(商標)(InVivoGen Inc)は、ヒトIL-33受容体を過剰発現するHEK293ベースの細胞株であり、これはIL-33活性の高感度読み出しである。表1に列挙されたIL-33含有分子の活性は、製造者のプロトコールに従って、HEK-Blue-IL-33(商標)細胞においてIL-33シグナル伝達を刺激するそれらの能力について試験された。
【0173】
一価のIL-33vNM分子を比較すると、IL33vCMのEC50はIL33vNMのものより3倍高かった(0.053pMと比較して0.016pM、表7、図11A)。追加のIL-33部分をIL-33vNM分子のN末端への付加しても、EC50を増加させなかった(IL-33vNMでの0.053pMと比較して、IL-33vNBでは0.059pM)。IL-2vとIL-33vの両方がペプチドリンカーを介してFcドメインのN末端に融合した二重特異性分子(IL2vNM-IL33vNM)は、一価IL-33vNMよりもかなり低いIL-33活性を有した(0.053pMと比較して0.128pM、図11)。これは、FcドメインのN末端に両方の部分が存在することによる活性の喪失を示唆する。しかしながら、FcドメインのN末端にIL-2及びFcドメインのC末端にIL-33を有する二重特異性分子(IL2vNM-IL33vCM)は、FcドメインのN末端にIL-33を有する分子のいずれよりも良好な活性を有し(表7、0.03pM、図11B)、FcドメインのC末端への一価のIL-33C(IL-33vCM)と比較して、活性においてわずか2分の1の減少を示した。
【0174】
実施例2の速度論的分析と一致して、これらのアッセイは、FcドメインのIL-33C末端を有するIL2vNM-IL33vCMが、IL2vNM-IL33vNMと比較して優れたIL-33生物活性の活性を有することを確立した(図11)。したがって、IL2vNM-IL33vCM分子は、実施例4において上記したように、マウス制御性T細胞を用いたさらなるアッセイのために選択された。
【0175】
【表7】
【0176】
[実施例6]
正常マウスにおけるIL2/IL-33二重特異性分子の活性(先見的)。
正常マウスのTreg集団に対するそれらの活性を決定するために、BALB/cマウスに、0.001、0.01、又は0.1mg/kgの単回用量のIL2vNM、IL33vCM、又は二重特異性IL2vNM-IL33vCMタンパク質のいずれかを静脈内注射する(例えば、図4A)。脾臓及び肝臓は、処置の2、4、6又は8日後に採取し、ST2+ Tregの数及びパーセンテージ(CD4細胞の割合として)を決定する。さらに、ST2+及びST2- Tregサブセットの増殖指数は、Ki67に対する抗体を用いた細胞の細胞内染色によって決定する。
【0177】
二重特異性IL2vNM-IL33vCMが、IL2vNM及びIL33vCMタンパク質よりもST2+ Tregtに対して高い選択性を有する場合、ST2- TregよりもST2+ Tregの大きい拡大が、IL2vNM及びIL33vCMと比較して、二重特異性タンパク質による処理時に観察される。パーセントKi67+細胞によって反映されるように、増殖指数の増加はまた、IL2vNM又はIL33vCMと比較して、二重特異性タンパク質による処理から生じる。Tregにおけるタンパク質の効果は、投与されたタンパク質の薬物動態と相関し得る。投与後に採取した血液試料は、投与された分子の薬物動態を決定するために定量的イムノアッセイによって評価する。
【0178】
[実施例7]
筋肉の炎症のモデルにおける活性(先見的)。
ST2+ Tregの役割は、筋肉の炎症の動物モデルにおいて確立されている。それらの動物モデルの1つは、野生型マウスにおける急性筋肉傷害(Burzynら、2013、Cell 155 (6): 1282~1295頁)であり、第2のモデルは、ジストロフィンの遺伝的欠損によって引き起こされる慢性的な筋肉の炎症のモデルであるmdxマウス筋ジストロフィーモデルである(mdx mice; Villaltaら、2014、Sci Transl Med 5 (258): 258ra142)。
【0179】
急性筋肉傷害は、Burzynらによって報告されているように、C57B1/6Jマウスの後肢筋肉へのカルジオトキシンの注射によってマウスにおいて開始される(上記引用)。0.1mg/kgのIL-2-IL-33二重特異性分子(例えば、図4A及び4B)による処置は、傷害の日に開始され、再度、7日目に開始される。マウスは、1、4、7、及び14日目に屠殺され、筋肉中のTreg、Teff及び他の浸潤性免疫細胞の数をフローサイトメトリーによって決定する。Tregによるアンフィレグリン(AREG)産生は、筋肉修復の重要なメディエーターであり(上記のBurzynら)、AREG+ Tregの頻度及び増殖指数(Ki67+ Treg)は細胞内フローサイトメトリーによって決定する。筋肉の傷害及び修復の測定、例えば、血清中のクレアチンキナーゼレベル及び筋線維の形態学も評価する。
【0180】
マウスのmdx筋ジストロフィーモデルについて、mdxマウスの処置は2週齢で開始する。マウスは、毎週、0.1mg/kgの試験タンパク質で処置し、6週齢で屠殺する。増殖しているTreg(Ki67+)及びAREG+ Tregの数及び頻度は、同齢が合致した未処置の対照と比較して、処置されたマウスの筋肉において測定する。
【0181】
ST2+ Tregの首尾よい活性化は、筋肉におけるTregの数値的増加、より高い割合のKi67+ Treg、又はより高い割合のAREG+ Tregをもたらす。さらに、マウスは、Teff細胞の低下、血清クレアチンキナーゼの減少、及び筋肉形態の改善を提示し得る。
【0182】
[実施例8]
炎症性腸疾患モデルにおける活性(先見的)。
ST2+ Tregの役割は、炎症性腸疾患のマウスモデルにおいて確立されている(Schieringら、2014、Nature 513 (7519):564~568頁)。結腸組織中のST2+ Tregに対する試験タンパク質の効果を、炎症性腸疾患の急性モデルにおいて試験する。C57B1/6Jマウスに、飲料水中の3%デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を7日間給餌する。マウスは、DSS処置の1日目及び4日目に0.1又は0.4mg/kgのIL-2/IL-33二重特異性分子(例えば、図4A及び4B)をIV、IP、又はSCで処置し、DSS処置を1日目に開始する。7日目のDSS処置後、マウスを屠殺し、脾臓、結腸及び腸間膜リンパ節(MLN)を採取する。結腸切片は、疾患の重症度及び結腸炎スコアについて組織学的に分析する。ST2+ Treg集団を脾臓、結腸及びMLNにおいて測定する。
【0183】
処置が成功すると、対照と比較して処置されたマウスの体重減少、疾患スコア又は組織学の改善が生じ得る。疾患の改善は、処置されたマウスの結腸及びMLNにおけるKi67+増殖ST2+ Tregの特異的増加を伴い得る。
【0184】
本発明の好ましい実施形態が本明細書において示され、説明されてきたが、このような実施形態が例としてのみ提供されていることは当業者には明らかである。多数の変形、変更、及び置換は、当業者であれば、本発明から逸脱することなく、ここでは想起される。本明細書に記載された本発明の実施形態に対する種々の代替物が本発明の実施において用いられ得ることが理解されるべきである。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を画定し、これらの特許請求の範囲内の方法及び構造並びにそれらの同等物がそれらによって包含されることが意図される。
以下、本発明の実施形態を示す。
(1)a)ヒトIL-2タンパク質ドメイン、
b)免疫グロブリンFcタンパク質ドメイン、及び
c)インターロイキン1受容体様1(ST2)に結合するタンパク質ドメイン
を含む、融合タンパク質。
(2)ST2に結合するタンパク質ドメインが、ヒトIL-33タンパク質ドメインである、(1)に記載の融合タンパク質。
(3)ST2に結合するタンパク質ドメインが、ST2に特異的な抗体又はその抗原結合断片である、(1)又は(2)に記載の融合タンパク質。
(4)少なくとも1つのペプチドリンカードメインをさらに含む、(1)~(3)のいずれか一に記載の融合タンパク質。
(5)ヒトIL-2タンパク質ドメインが、配列番号2のアミノ酸と比較してT3A、N88R、N88G、D20H、C125S、Q126L、及びQ126Fからなる群から選択される置換を有するヒトIL-2を含む、(1)~(4)のいずれか一に記載の融合タンパク質。
(6)免疫グロブリンFcタンパク質ドメインが、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号8又は配列番号9のヒトIgG1 Fc変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、(1)~(5)のいずれか一に記載の融合タンパク質。
(7)ヒトIL-33タンパク質ドメインが、配列番号10のアミノ酸配列と比較してC208S、C227S、C232S及びC259Sからなる群から選択される置換を有するヒトIL-33を含む、(2)~(6)のいずれか一に記載の融合タンパク質。
(8)ペプチドリンカードメインが、配列番号6のアミノ酸配列を含む、(4)~(7)のいずれか一に記載の融合タンパク質。
(9)第1のペプチドリンカードメイン及び第2のペプチドリンカードメインをさらに含む、(1)~(8)のいずれか一に記載の融合タンパク質。
(10)各ドメインがアミノ末端(N末端)及びカルボキシ末端(C末端)を有し、融合タンパク質が、
a)ヒトIL-2タンパク質ドメインのC末端が、ペプチド結合を介して第1のペプチドリンカードメインのN末端に融合し、
b)IgG Fcタンパク質ドメインのN末端が、ペプチド結合を介して第1のペプチドリンカードメインのC末端に融合し、
c)第2のペプチドリンカードメインのN末端が、ペプチド結合を介してIgG Fcタンパク質ドメインのC末端に融合し、且つ、
d)ST2に結合するタンパク質ドメインのN末端が、ペプチド結合を介して第2のペプチドリンカードメインのC末端に融合するように構成される、(9)に記載の融合タンパク質。
(11)各ドメインがアミノ末端(N末端)及びカルボキシ末端(C末端)を有し、融合タンパク質が、
a.ST2に結合するタンパク質ドメインのC末端が、ペプチド結合を介して第1のペプチドリンカードメインのN末端に融合し、
b.IgG Fcタンパク質ドメインのN末端が、ペプチド結合を介して第1のペプチドリンカードメインのC末端に融合し、
c.第2のペプチドリンカードメインのN末端が、ペプチド結合を介してIgG Fcタンパク質ドメインのC末端に融合し、且つ、
d.ヒトIL-2タンパク質ドメインのN末端が、ペプチド結合を介して第2のペプチドリンカードメインのC末端に融合するように構成される、(9)に記載の融合タンパク質。
(12)配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号22、配列番号23、配列番号24、又は配列番号25のアミノ酸配列を含む、(1)に記載の融合タンパク質。
(13)(1)~(12)のいずれか一に記載の融合タンパク質をコードする、核酸。
(14)(1)~(12)のいずれか一に記載の融合タンパク質を含む、二量体タンパク質。
(15)第1の融合タンパク質及び第2の融合タンパク質を含む二量体タンパク質であって、
a.各融合タンパク質が、免疫グロブリン(IgG)Fcタンパク質ドメイン、並びに
i.ヒトIL-2タンパク質ドメイン、及び
ii.インターロイキン1受容体様1(ST2)に結合するタンパク質ドメイン
からなる群から選択される少なくとも1つの追加のタンパク質ドメインを含み、且つ、
b.二量体タンパク質が、少なくとも1つのヒトIL-2タンパク質ドメイン、及びST2に結合する少なくとも1つのタンパク質ドメインを含む、二量体タンパク質。
(16)a.第1の融合タンパク質が、ヒトIL-2タンパク質ドメイン、第1の免疫グロブリンFcタンパク質ドメイン、及び第1のペプチドリンカーを含み、且つ、
b.第2の融合タンパク質が、ST2に結合するタンパク質ドメイン、第2の免疫グロブリンFcタンパク質ドメイン、及び第2のペプチドリンカードメインを含む、(15)に記載の二量体タンパク質。
(17)a.各ドメインが、アミノ末端(N末端)及びカルボキシ末端(C末端)を有し、
b.第1の融合タンパク質が、
i.ヒトIL-2タンパク質ドメインのC末端が、ペプチド結合を介して第1のペプチドリンカードメインのN末端に融合し、且つ、
ii.第1のIgG Fcタンパク質ドメインのN末端が、ペプチド結合を介して第1のペプチドリンカードメインのC末端に融合するように構成され、且つ、
c.第2の融合タンパク質が、
i.第2のIgG Fcタンパク質ドメインのC末端が、ペプチド結合を介して第2のペプチドリンカードメインのN末端に融合し、且つ、
ii.ST2に結合するタンパク質ドメインのN末端が、ペプチド結合を介して第2のペプチドリンカードメインのC末端に融合するように構成される、(16)に記載の二量体タンパク質。
(18)ST2に結合するタンパク質ドメインが、ヒトIL-33タンパク質ドメインである、(15)~(17)のいずれか一に記載の二量体タンパク質。
(19)ST2に結合するタンパク質ドメインが、ST2に特異的な抗体又はその抗原結合断片である、(15)~(18)のいずれか一に記載の二量体タンパク質。
(20)融合タンパク質の少なくとも1つが、少なくとも1つのペプチドリンカードメインをさらに含む、(15)に記載の二量体タンパク質。
(21)ヒトIL-2タンパク質ドメインが、配列番号2のアミノ酸配列と比較して、T3A、N88R、N88G、D20H、C125S、Q126L、及びQ126Fからなる群から選択される置換を有するヒトIL-2を含む、(15)~(20)のいずれか一に記載の二量体タンパク質。
(22)免疫グロブリンFcタンパク質ドメインが、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号8又は配列番号9のヒトIgG1 Fc変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、(15)~(21)のいずれか一に記載の二量体タンパク質。
(23)ヒトIL-33タンパク質ドメインが、配列番号10のアミノ酸配列と比較して、C208S、C227S、C232S及びC259Sからなる群から選択される置換を有するヒトIL-33を含む、(18)~(22)のいずれか一に記載の二量体タンパク質。
(24)ペプチドリンカードメインが、配列番号6のアミノ酸配列を含む、(15)~(20)のいずれか一に記載の二量体タンパク質。
(25)a.第1の融合タンパク質が配列番号12のアミノ酸配列を含み、且つ、第2の融合タンパク質が配列番号13のアミノ酸配列を含み、
b.第1の融合タンパク質が配列番号14のアミノ酸配列を含み、且つ、第2の融合タンパク質が配列番号15のアミノ酸配列を含み、
c.第1の融合タンパク質が配列番号16のアミノ酸を含み、且つ、第2の融合タンパク質が配列番号15のアミノ酸配列を含み、
d.第1の融合タンパク質が配列番号17のアミノ酸配列を含み、且つ、第2の融合タンパク質が配列番号15のアミノ酸配列を含み、
e.第1の融合タンパク質が配列番号18のアミノ酸配列を含み、且つ、第2の融合タンパク質が配列番号12のアミノ酸配列を含み、
f.第1の融合タンパク質及び第2の融合タンパク質がそれぞれ、配列番号19のアミノ酸配列を含み、
g.第1の融合タンパク質及び第2の融合タンパク質がそれぞれ、配列番号20のアミノ酸配列を含み、
h.第1の融合タンパク質及び第2の融合タンパク質がそれぞれ、配列番号22のアミノ酸配列を含み、且つ、二量体タンパク質が配列番号29のアミノ酸配列をさらに含み、
i.第1の融合タンパク質及び第2の融合タンパク質がそれぞれ、配列番号23のアミノ酸配列を含み、且つ、二量体タンパク質が配列番号30のアミノ酸配列をさらに含み、
j.第1の融合タンパク質が配列番号26のアミノ酸配列を含み、第2の融合タンパク質が配列番号24のアミノ酸配列を含み、且つ、二量体タンパク質が配列番号29のアミノ酸配列をさらに含み、
k.第1の融合タンパク質が配列番号27のアミノ酸配列を含み、第2の融合タンパク質が配列番号25のアミノ酸配列を含み、且つ、二量体タンパク質が配列番号30のアミノ酸配列をさらに含み、
l.第1の融合タンパク質が配列番号26のアミノ酸配列を含み、第2の融合タンパク質が配列番号16のアミノ酸配列を含み、且つ、二量体タンパク質が配列番号29のアミノ酸配列をさらに含み、
m.第1の融合タンパク質が配列番号27のアミノ酸配列を含み、第2の融合タンパク質が配列番号16のアミノ酸配列を含み、且つ、二量体タンパク質が配列番号30のアミノ酸配列をさらに含み、
n.第1の融合タンパク質が配列番号26のアミノ酸配列を含み、第2の融合タンパク質が配列番号14のアミノ酸配列を含み、且つ、二量体タンパク質が配列番号29のアミノ酸配列をさらに含み、
o.第1の融合タンパク質が配列番号27のアミノ酸配列を含み、第2の融合タンパク質が配列番号14のアミノ酸配列を含み、且つ、二量体タンパク質が配列番号30のアミノ酸配列をさらに含み
p.第1の融合タンパク質が配列番号28のアミノ酸配列を含み、第2の融合タンパク質が配列番号24のアミノ酸配列を含み、且つ、二量体タンパク質が配列番号29のアミノ酸配列を含み、又は、
q.第1の融合タンパク質が配列番号28のアミノ酸配列を含み、第2の融合タンパク質が配列番号25のアミノ酸配列を含み、且つ、二量体タンパク質が配列番号30のアミノ酸配列をさらに含む、(15)に記載の二量体タンパク質。
(26)IgG Fcタンパク質がシステイン残基を含み、且つ、第1の融合タンパク質及び第2の融合タンパク質が、IgG Fcタンパク質ドメインのシステイン残基を介して互いに連結されている、(15)~(25)のいずれか一に記載の二量体タンパク質。
(27)ST2 - 制御性T細胞と比較して、ST2 + 制御性T細胞を選択的に標的とする、(14)~(26)のいずれか一に記載の二量体タンパク質。
(28)(1)~(12)のいずれか一に記載の融合タンパク質、又は(14)~(27)のいずれか一に記載の二量体タンパク質を含む、医薬組成物。
(29)それを必要とする対象に治療有効量の(28)に記載の医薬組成物を投与することを含む、状態を処置する方法。
(30)投与することが、対象におけるST2 - 制御性T細胞のレベルと比較して、対象におけるST2 + 制御性T細胞のレベルのより大きな増加をもたらす、(29)に記載の方法。
(31)投与することが、対象のST2 - 制御性T細胞と比較して、対象におけるST2 + 制御性T細胞を選択的に活性化する、(29)又は(30)に記載の方法。
(32)治療有効量が、約1μg/kg~約250μg/kgである、(29)に記載の方法。
(33)状態が炎症性ミオパシーである、(29)に記載の方法。
(34)炎症性ミオパシーが、筋ジストロフィー、多発性筋炎、皮膚筋炎からなる群から選択される、(33)に記載の方法。
(35)状態が、脂肪組織の炎症性状態、結腸の炎症性状態、及び肺の炎症性状態からなる群から選択される、(29)に記載の方法。
(36)脂肪組織が内臓脂肪組織である、(35)に記載の方法。
(37)状態が自己免疫疾患である、(29)に記載の方法。
(38)自己免疫疾患が、移植片対宿主病、尋常性天疱瘡、全身性エリテマトーデス、強皮症、潰瘍性大腸炎、クローン病、乾癬、1型糖尿病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、円形脱毛症、ブドウ膜炎、視神経脊髄炎、及びデュシェンヌ型筋ジストロフィーからなる群から選択される、(37)に記載の方法。
(39)投与が静脈内である、(29)~(39)のいずれか一に記載の方法。
(40)投与が皮下である、(29)~(39)のいずれか一に記載の方法。
(41)対象がヒトである、(29)~(40)のいずれか一に記載の方法。
(42)治療有効量の(28)に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、対象におけるST2 - 制御性T細胞と比較して、ST2 + 制御性T細胞を選択的に活性化する方法。
(43)治療有効量が、約1μg/kg~約250μg/kgである、(42)に記載の方法。
(44)投与が静脈内である、(42)又は(43)に記載の方法。
(45)投与が皮下である、(42)又は(43)に記載の方法。
(46)対象がヒトである、(42)~(45)のいずれか一に記載の方法。
図1
図2
図3A-C】
図3D-E】
図3F
図4-1】
図4-2】
図5
図6A-1】
図6A-2】
図6B-1】
図6B-2】
図7
図8A-1】
図8A-2】
図8B-1】
図8B-2】
図9A-1】
図9A-2】
図9B-1】
図9B-2】
図10
図11
【配列表】
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