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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】ルパタジン含有貼付剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4545 20060101AFI20230216BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230216BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20230216BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230216BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230216BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230216BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230216BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20230216BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
A61K31/4545
A61K47/32
A61K9/70 401
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/26
A61K47/44
A61P11/02
A61P17/04
A61P29/00
A61P37/08
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019557502
(86)(22)【出願日】2018-04-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-20
(86)【国際出願番号】 JP2018016692
(87)【国際公開番号】W WO2018194183
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2017082559
(32)【優先日】2017-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000215958
【氏名又は名称】帝國製薬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502369311
【氏名又は名称】ノウコア・ヘルス・ソシエダッド・アノニマ
【氏名又は名称原語表記】Noucor Health S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138900
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】川上 智
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 学
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0035828(US,A1)
【文献】特表2009-500398(JP,A)
【文献】特開2011-074031(JP,A)
【文献】Allergo J Int,2014年,Vol.23,p.87-95
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/4545
A61K 9/70
A61K 47/00-47/69
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着性基剤としてアクリル系粘着剤を用いたことを特徴とするルパタジンを含有する外用貼付剤であって、さらに可溶化剤、軟化剤、及び界面活性剤を含有することを特徴と前記可溶化剤が、炭素数2~7の有機酸である、外用貼付剤。
【請求項2】
ルパタジンの含有量が膏体重量を基準として、3~20重量%である請求項1に記載の外用貼付剤。
【請求項3】
可溶化剤の添加量が膏体重量を基準として、3~20重量%である請求項1又は2に記載の外用貼付剤。
【請求項4】
軟化剤の添加量が膏体重量を基準として、5~25重量%である請求項1~3のいずれか1項に記載の外用貼付剤。
【請求項5】
界面活性剤の添加量が膏体重量を基準として、3~10重量%である請求項1~4のいずれか1項に記載の外用貼付剤。
【請求項6】
前記有機酸が、酢酸、乳酸、プロピオン酸、吉草酸、レブリン酸、及びヘキサン酸から選択されるものである請求項1~5のいずれか1項に記載の外用貼付剤。
【請求項7】
軟化剤が、脂肪酸エステルである請求項1~のいずれか1項に記載の外用貼付剤。
【請求項8】
前記脂肪酸エステルが、オレイン酸オレイル、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸イソプロピル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジカプリル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジメチルシクロヘキシル、フタル酸ジエチルヘキシル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジエチルヘキシル、セバシン酸ジノニル、セバシン酸ジイソオクチル、セバシン酸ポリプロピレン、セバシン酸ジメトキシ-シクロヘキシル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジエチルヘキシル、アジピン酸ジノニル、アジピン酸ポリプロピレン、アジピン酸ジメチルシクロヘキシル、及びアジピン酸ジブトキシエチルから選択される脂肪酸エステルの1種、または2種以上である請求項に記載の外用貼付剤。
【請求項9】
界面活性剤が、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類から選択される1種又は2種以上の組み合わせである請求項1~のいずれか1項に記載の外用貼付剤。
【請求項10】
粘着性基剤としてアクリル系粘着剤を用い、さらに可溶化剤として炭素数2~7の有機酸、軟化剤として脂肪酸エステル及び界面活性剤を含有させたことを特徴とするルパタジンを含有する外用貼付剤。
【請求項11】
有機酸が乳酸及びレブリン酸のいずれかであり、軟化剤がオレイン酸オレイル及びミリスチン酸イソプロピルである請求項10に記載の外用貼付剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルパタジンを含有する外用貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
化学名が8-クロロ―11-[1-[(5-メチル-3-ピリジニル)メチル]ピペリジン-4-イリデン]-6,11-ジヒドロ-5H-ベンゾ[5,6]シクロヘプタ[1,2-b]ピリジンであるルパタジン(一般名:Rupatadine)は、血小板活性化因子(PAF)拮抗作用及び抗ヒスタミン作用を有するN-アルキルピリジン誘導体である(特許文献1)。
当該化合物には、抗アレルギー作用及び抗炎症作用があり、その効能または効果は、花粉症を含むアレルギー性鼻炎及び蕁麻疹、皮膚疾患(湿疹、皮膚炎、皮膚掻痒症)に伴う掻痒の改善である。また、第二世代の抗ヒスタミン剤として、その薬理学的に許容される塩であるルパタジンフマル酸塩を有効成分として含有する錠剤が、世界50カ国以上の国において承認され、販売されている。
【0003】
日本においては、ルパタジンフマル酸塩(ルパタジン)を含有する錠剤はいまだ未承認であるが、承認に向けて臨床開発が、現在検討されつつある。
【0004】
ところで、アレルギー疾患の治療に用いられている第二世代の抗ヒスタミン剤の多くは少なくとも鎮静作用を有していることから、服用にあたって、眠気等の副作用を生じることがあるという問題を抱えている。
したがって、使用上の注意として「これらの第二世代の抗ヒスタミン剤を投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に注意させること」が付されている。
【0005】
ルパタジンは、第二世代の抗ヒスタミン剤に分類され、鎮静作用が少なく、眠気等の副作用は著しく改善されている。しかしながら、経口投与による服用では、消化管粘膜から吸収された後、肝臓による初回通過効果を受けるため、生物学的利用率が低下する懸念がある。この点に関し、貼付剤を用いた場合には、皮膚から吸収された薬物は血流により全身循環されるため、初回通過効果を回避でき、生物学的利用率の改善が可能となる。さらに貼付剤の場合は経口投与と比較して、長時間に亘り安定的に薬物を投与することが可能となる。このような理由から、より少ない体内への吸収量でルパタジンの薬効を発揮することができ、且つ、長期間安定的に薬物の投与が可能な貼付剤の開発が望まれている。
この外用貼付剤の提供は、ルパタジンを含有する薬剤(製剤)の選択肢の広がりに繋がるものであり、患者のコンプライアンスの観点からも極めて有用なものといえるが、これまでルパタジンについての外用貼付剤化の検討は何らなされていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第2730612号掲載公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、これまで何ら検討のなされていないルパタジンの外用貼付剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するべく本発明者らは種々検討し、ルパタジン含有の貼付剤を開発するにあたって、粘着性基剤について検討を行った結果、数ある粘着性基剤のなかでも、ルパタジンの貼付剤としては、アクリル系粘着性基剤が最も好ましいことを新規に見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
しかして本発明は、その基本的態様として、
(1)粘着性基剤としてアクリル系粘着剤を用いたことを特徴とするルパタジンを含有する外用貼付剤;
である。
【0010】
より具体的な本発明は、
(2)さらに可溶化剤、軟化剤及び界面活性剤のいずれかを含有することを特徴とする上記(1)に記載の外用貼付剤;
である。
【0011】
さらに具体的な本発明は、
(3)ルパタジンの含有量が膏体重量を基準として、3~20重量%である上記(1)又は(2)に記載の外用貼付剤;
(4)可溶化剤の添加量が膏体重量を基準として、3~20重量%である上記(2)に記載の外用貼付剤;
(5)軟化剤の添加量が膏体重量を基準として、5~25重量%である上記(2)に記載の外用貼付剤;
(6)界面活性剤の添加量が膏体重量を基準として、3~10重量%である上記(2)に記載の外用貼付剤;
(7)前記可溶化剤が、炭素数2~7の有機酸である上記(2)に記載の外用貼付剤;
(8)前記有機酸が、酢酸、乳酸、プロピオン酸、吉草酸、レブリン酸、及びヘキサン酸から選択されるものである上記(7)に記載の外用貼付剤;
(9)前記軟化剤が、脂肪酸エステルである上記(2)に記載の外用貼付剤;
(10)前記脂肪酸エステルが、オレイン酸オレイル、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸イソプロピル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジカプリル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジメチルシクロヘキシル、フタル酸ジエチルヘキシル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジエチルヘキシル、セバシン酸ジノニル、セバシン酸ジイソオクチル、セバシン酸ポリプロピレン、セバシン酸ジメトキシ-シクロヘキシル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジエチルヘキシル、アジピン酸ジノニル、アジピン酸ポリプロピレン、アジピン酸ジメチルシクロヘキシル、及びアジピン酸ジブトキシエチルから選択される脂肪酸エステルの1種、又は2種以上である上記(9)に記載の外用貼付剤;
(11)前記界面活性剤が、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類から選択される1種又は2種以上の組み合わせである上記(2)に記載の外用貼付剤;
である。
【0012】
したがって、最も好ましい本願発明は、
(12)粘着性基剤としてアクリル系粘着剤を用い、さらに可溶化剤として炭素数2~7の有機酸、軟化剤として脂肪酸エステル及び界面活性剤のいずれかを含有させたことを特徴とするルパタジンを含有する外用貼付剤;
であり、なかでも、
(13)有機酸が乳酸及びレブリン酸のいずれかであり、軟化剤がオレイン酸オレイル及びミリスチン酸イソプロピルである上記(12)に記載の外用貼付剤;
である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、膏体物性に優れるため、適用皮膚への粘着性が良好であり、有効成分であるルパタジンの経皮吸収性の良好な外用貼付剤が提供される。
これまで、経皮吸収製剤であるルパタジンを含有する外用貼付剤が登場していなかった現状下で、特に本発明は粘着性基剤としてアクリル系粘着剤を使用することで他の粘着性基剤と比較して優れた経皮吸収性を示すものであり、その医療上の効果は顕著なものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、前記した通りその基本は、粘着性基剤としてアクリル系粘着剤を用いたことを特徴とするルパタジンを含有する外用貼付剤である。
通常、本発明の外用貼付剤に有効成分として含有されるルパタジンは、ルパタジンの遊離塩基の形態であり、そのフマル酸塩は経口投与剤型を有する錠剤に配合されている。しかしながら、本発明の外用貼付剤中は、ルパタジンの遊離塩基を含有させるのが好ましい。
【0015】
ルパタジンの含有量は、一概に限定できないが、経皮吸収により目的とする薬効を発揮するのに十分な量であればよく、膏体重量を基準として3~20重量%、好ましくは5~17重量%であれば良い。
【0016】
本発明にあっては、かかる有効成分であるルパタジンを膏体成分である粘着性基剤に含有させた外用貼付剤であるが、本発明者らの検討の結果、粘着性基剤としてアクリル系粘着剤を使用するのがよいことが判明した。
外用貼付剤の粘着剤成分としては、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(以下、SISと略記する)、イソプレン、ポリイソブチレン(以下、PIBと略記する)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(以下、SBSと略記する)、及びスチレン-ブタジエンゴム(以下、SBRと略記する)等のゴム系粘着性基剤、ポリオルガノシロキサン等のシリコン系粘着性基剤等も知られているが、本発明の有効成分であるルパタジンの場合にあっては、アクリル系粘着剤が皮膚透過性、粘着性等の点で最も好ましいことが判明した。
【0017】
そのようなアクリル系粘着剤としては、2-エチルヘキシルアクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート等に代表される(メタ)アクリル酸誘導体を少なくとも一種含有させて共重合したものであれば特に限定されない。
具体的には、例えば、医薬品添加物辞典2013(日本医薬品添加剤協会編集)に粘着剤として収載されているアクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸2-エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体溶液、アクリル酸エステル-酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸2-エチルヘキシル-メタクリル酸2-エチルヘキシル・メタクリル酸ドデシル共重合体、アクリル酸メチル-アクリル酸2-エチルヘキシル共重合樹脂エマルジョン、及びアクリル樹脂アルカノールアミン液に含有するアクリル系高分子等の粘着剤、更に市販品であるDURO-TAKアクリル系粘着剤シリーズ(Henkel社製)、オイドラギットシリーズ(Evonik Rohm社製)等が使用できる。
【0018】
本発明の外用貼付剤にあっては、膏体成分として、アクリル系粘着剤に加え、さらに可溶化剤、軟化剤及び/又は界面活性剤を含有させるのが良いことが判明した。
本発明者らの検討によれば、ルパタジンのアクリル系粘着剤に対する溶解性は、ある程度確保されてはいるものの、基剤からの皮膚透過性をより十分に確保するためには、溶解剤を用いて基剤中へのより均一な溶解性を確保するのが良いことが判明した。
【0019】
そのような可溶化剤としては、特に炭素数2~7の有機酸を挙げることができる。炭素数8以上の有機酸ではルパタジンの膏体成分中への充分な溶解性を確保することが困難な場合があり、その結果、膏体からのルパタジンの皮膚透過性の低下が懸念される。
そのような炭素数2~7の有機酸としては、酢酸、乳酸、プロピオン酸、吉草酸、レブリン酸(4-オキソペンタン酸)、及びヘキサン酸等を挙げることができ、なかでもレブリン酸及び乳酸(DL-乳酸)が好結果を与えた。
【0020】
かかる可溶化剤の配合量は、経皮吸収により目的とする薬効を発揮するのに十分な量であればよく、膏体重量を基準として3~20重量%、好ましくは5~15重量%であれば良い。
可溶化剤の配合量が3重量%未満の場合、製剤への薬物の溶解性が低下し、結晶析出等好ましくない影響が出る場合があり、20重量%を超えて配合した場合、製剤の物性に影響する場合がある。
【0021】
また、本発明の外用貼付剤にあっては、膏体成分として軟化剤を一緒に配合することが好ましく、そのような軟化剤として、種々の軟化剤がある中で、特に脂肪酸エステル類が好結果を与えた。
そのような軟化剤としては、オレイン酸オレイル、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸イソプロピル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジカプリル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジメチルシクロヘキシル、フタル酸ジエチルヘキシル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジエチルヘキシル、セバシン酸ジノニル、セバシン酸ジイソオクチル、セバシン酸ポリプロピレン、セバシン酸ジメトキシ-シクロヘキシル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジエチルヘキシル、アジピン酸ジノニル、アジピン酸ポリプロピレン、アジピン酸ジメチルシクロヘキシル、及びアジピン酸ジブトキシエチルから選択される脂肪酸エステルを挙げることができ、これら脂肪酸エステルの1種、または2種以上を組み合わせて用いるのが良い。
【0022】
本発明の外用貼付剤にあっては、特にオレイン酸オレイル及びミリスチン酸イソプロピルの両者を組み合わせて配合するのがよく、その配合量は、経皮吸収により目的とする薬効を発揮するのに十分な量であればよく、膏体重量を基準として5~25重量%、好ましくは10~22重量%であれば良い。
軟化剤の配合量が5重量%未満であると所望の透過性が得られない場合があり、25重量%より多く配合すると軟化剤が膏体より分離し膏体物性が低下する場合がある。
【0023】
さらに本発明の外用貼付剤にあっては、膏体成分として界面活性剤を配合するのが良いことが判明した。
この界面活性剤は両親媒性であるため、本発明においては経皮吸収性の向上を目的として配合するものであり、具体的には、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類等を挙げることができ、これら界面活性剤の1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
その配合量は、経皮吸収により目的とする薬効を発揮するのに十分な量であればよく、膏体重量を基準として3~10重量%、好ましくは4~8重量%であれば良い。
【0024】
その他、本発明の外用貼付剤にあっては、薬効に影響を与えなければ通常の外用貼付剤に用いられる各種の基剤成分を使用することができる。
かかる基剤成分としては特に限定されないが、例えばポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、及びポリアクリル酸等の水溶性高分子;エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体;無水ケイ酸及び軽質無水ケイ酸等のケイ素化合物;ならびに酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化チタン、シリカ類、酸化マグネシウム、酸化鉄、及びステアリン酸等の無機充填剤等が挙げられる。
さらに必要に応じて防腐剤、清涼剤、殺菌剤、着香剤、及び着色剤等を添加することができる。
【0025】
本発明により提供される貼付剤の支持体としては、特に限定されるものではなく、伸縮性または非伸縮性のものが用いられる。
具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ナイロン、及びポリウレタン等の合成樹脂で形成されたフィルムもしくはシートまたはこれらの積層体、多孔質膜、発泡体、織布、及び不織布、あるいは紙材を用いることができる。
【0026】
また、剥離ライナーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、または紙等を用いることができ、特にポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。
剥離ライナーは、剥離力を至適にするため、必要に応じてシリコン処理をしてもよい。
【0027】
以下に、本発明が提供する貼付剤及び貼付剤製品の製造方法の一例について説明する。
具体的には、混合機を用いて、可溶化剤として炭素数2~7の有機酸、軟化剤としての脂肪酸エステル及び界面活性剤を量り取り、沸点が100℃未満の有機溶剤、例えば酢酸エチルを加え添加剤溶液を調製する。
次に、この添加剤溶液にアクリル系粘着剤及びルパタジンを加え、均一になるまで撹拌混合してルパタジン含有粘着剤溶液(膏体溶液)を得る。
【0028】
次いで、かくして得られた膏体溶液を、剥離フィルム(剥離ライナー)又は支持体上に伸展し、乾燥炉内温度を60℃以上80℃未満に調節した乾燥機で、4~20分間乾燥し、有機溶剤を乾燥除去後、膏体層を支持体又は剥離フィルム(剥離ライナー)と貼り合わせ、本発明の貼付剤を得ることができる。
なお、膏体層の厚みとしては、30~200μmが好ましく、特に好ましくは80~150μmであり、最も好ましくは、100μm程度であるのが良い。
膏体層の厚みが30μm未満であると、薬物放出の持続性が乏しくなるとともに粘着力が低下し、200μmより厚くなると、膏体層中に含有される薬物の量が増え、製造コストが高くなる。
【0029】
最後に、得られた貼付剤を所望のサイズに裁断し、包装袋に封入し、本発明の貼付剤製品を得ることができる。
なお、上記の製造方法は具体的な一製造例であり、かかる製造例に限定させるものでなく、種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【実施例
【0030】
以下に、検討した実施例、比較例、及び試験例を記載することにより本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0031】
試験例1:ルパタジン遊離塩基の各成分に対する溶解度の検討
有効成分であるルパタジン遊離塩基(以下、「ルパタジンベース」と記載する場合もある。)の各膏体成分への溶解度を検討した。
可溶化剤としてレブリン酸、軟化剤としてオレイン酸オレイル及びミリスチン酸イソプロピル(IPM)、ならびに界面活性剤としてラウロマクロゴール(BL-4,2:ポリオキシエチレンラウリルエーテル)を選び、各成分に対するルパタジンベースの溶解度を検討した。
なお、比較のため、粘着性基剤であるアクリル系粘着剤に対するルパタジンベースの溶解度も検討した。
【0032】
<試験方法>
(1)HPLC法
レブリン酸、オレイン酸オレイル、ミリスチン酸イソプロピル(IPM)及びラウロマクロゴール(BL-4,2)のそれぞれ5mLに過剰のルパタジンベースを加え撹拌する。混合物を0.45μmのメンブランフィルターでろ過し、未溶解物を取り除き、濾液200μLにメスフラスコを用いてメタノールを加え、所望の容量にメスアップし、混合物をHPLCで測定した。
外部検量線法にてルパタジン濃度を測定し、比重換算によって溶解度を算出した。
【0033】
(2)重量法
アクリル系粘着剤については重量法にて、ルパタジンベースの溶解度を試験した。
アクリル系粘着剤1g(固形分)にルパタジンベースを加え撹拌後、超音波脱気を行った。
粘着剤溶液を100μmの厚みに塗工乾燥し、マイクロスコープ(KEYENCE社製)にて膏体を観察した。
結晶の有無により、溶解度を決定した。
<結果>
これらの試験法によるルパタジンの溶解度は、以下の表1に記載のとおりであった。
【0034】
【表1】
【0035】
注1:OH基含有アクリル系感圧粘着剤
【0036】
上記の結果から、ルパタジンベースは、粘着性基剤であるアクリル系粘着剤に対する溶解度はある程度あるものの、可溶化剤と組み合わせることでより一層の膏体中への均一な溶解性が確保されることが判明した。
【0037】
試験例2:インビトロ(in vitro)ヘアレスラット皮膚透過性試験
後記する各実施例及び比較例の外用貼付剤についてヘアレスラット皮膚透過性試験を以下の方法により行った。
<試験方法>
雄性へアレスラット(HWY系、7~9週齢)の腹部摘出皮膚をフランツ型拡散セルにセットし、円形(φ14mm)に裁断した各試験製剤(実施例及び比較例)を貼付した。試験に当たっては、レセプター側にはポリエチレングリコール400を40%含有したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を満たし、ウォータージャケットには、37℃の温水を還流した。経時的にレセプター液をサンプリングし、皮膚を透過したルパタジンの含有量を液体クロマトグラフ法により測定して、試験開始24時間後の累積透過量を算出した。
<結果>
結果は各表中に記載した。
【0038】
試験例3:膏体の凝集力試験
後記する各実施例及び比較例の外用貼付剤について、膏体の凝集力を以下の方法により評価した。
<試験方法>
製造後1時間経過した各外用貼付剤(実施例及び比較例)の製剤粘着面(膏体面)に指を押し当て、指を引き離した後、皮膚に粘着層(膏体)が付着するかどうか(糊残り)を目視観察した。
評価は、「有」または「無」で行った。
<結果>
結果は各表中に記載した。
【0039】
実施例1-6:膏体成分の構成比の検討
下記表2に記載の処方により、本発明の外用貼付剤について、膏体成分の構成比の評価を行った。
【0040】
【表2】
【0041】
実施例7-10:可溶化剤と軟化剤の比率の検討
下記表3に記載の処方により、本発明の外用貼付剤について、可溶化剤と軟化剤の配合比率の検討・評価を行った。
可溶化剤としてレブリン酸を、軟化剤としてオレイン酸オレイルを選択し、それらの比率の評価を行った。
なお、併せて前記実施例で好結果を与えた実施例3との対比も行った。
【0042】
【表3】
【0043】
上記の表中の結果から、軟化剤としてオレイン酸オレイルを使用した場合、可溶化剤としてレブリン酸の配合量を種々変更させても、有効成分であるルパタジンの良好な皮膚透過性が得られ、かつ膏体物性に優れたものであることが判明した。
【0044】
実施例11-15:可溶化剤である有機酸の検討評価
可溶化剤である炭素数2~7の有機酸の種類による本発明の外用貼付剤の検討・評価を行った。
可溶化剤として、下記表4に記載の有機酸を用いた場合の本発明の外用貼付剤の評価を行った。
【0045】
【表4】
【0046】
注:有機酸の括弧内の数字は、炭素数を表す。
【0047】
上記の表中の結果から、レブリン酸以外の炭素数2~7の有機酸を可溶化剤として用い、軟化剤である脂肪酸エステルと組み合わせて配合した場合に、良好な皮膚透過性が得られ、膏体物性に優れたものであることが判明した。
【0048】
実施例16:アクリル系粘着剤の検討
アクリル系粘着剤の種類を変更した場合における、本発明の外用貼付剤の検討・評価を行った。
アクリル系粘着剤として下記表5中に記載の以下のアクリル系粘着剤を使用した。
アクリル系粘着剤(OH基):OH基含有アクリル系感圧粘着剤(注:先の実施例3で使用)
アクリル系粘着剤(無官能基):官能基なし(無官能基)アクリル系感圧粘着剤
【0049】
【表5】
【0050】
上記の結果から、粘着性基剤としてアクリル系粘着剤を使用した場合には、良好な皮膚透過性が得られ、かつ膏体物性に優れたものであることが判明した。
【0051】
比較例1-7:粘着剤の種類による検討
膏体成分である粘着剤をアクリル系以外の粘着剤とした場合の外用貼付剤の評価を行った。
下記表6の処方に基づく比較例1-7の外用貼付剤を調製し、その評価を行った。
なお、比較例1-7の貼付剤の調製は、具体的には以下のとおりである。
水素添加ロジングリセリンエステルをトルエンに加え撹拌溶解した後、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)を加え更に撹拌した。すべての溶解を確認した後、流動パラフィンを加え粘着剤溶液を調製した。このようにして得られた粘着剤溶液に表中に記載の添加剤及びルパタジンを加え、均一になるまで撹拌混合して、ルパタジン含有粘着剤溶液を得た。次いで、このルパタジン含有粘着剤溶液をPETの剥離ライナー上に伸展した後、溶媒を乾燥により除去し、厚さ100μmの粘着剤層を形成した。次いで、PETフィルムの支持体を貼り合わせることにより、各比較例の貼付剤を得た。
【0052】
【表6】
【0053】
ND:測定せず。
【0054】
上記した結果から、粘着性基剤としてアクリル系粘着剤以外の粘着性基剤を使用した場合には、本発明で使用するアクリル系粘着剤と比べて、有効成分であるルパタジンの皮膚透過性が相当低いものであった。
【0055】
比較例8-12:炭素数2~7以外の有機酸を可溶化剤として用いた場合の検討
可溶化剤として炭素数2~7以外の有機酸(中~長鎖脂肪酸:炭素数8~18)を用いた外用貼付剤の検討・評価を行った。
下記表7に記載の処方による比較例の外用貼付剤を調製し、その評価を行った。
なお、比較例8-12の外用貼付剤の調製は、以下のとおりである。
表中に記載の中~長鎖脂肪酸、軟化剤及び界面活性剤を量り取り、酢酸エチルを加え添加剤溶液を調製した。
このようにして得られた添加剤溶液に、アクリル系粘着剤、及びルパタジンを加え、均一になるまで撹拌混合して、ルパタジン含有粘着剤溶液を得た。次いで、このルパタジン含有粘着剤溶液をPETの剥離ライナー上に伸展した後、溶媒を乾燥により除去し、厚さ100μmの粘着剤層を形成した。次いで、PETフィルムの支持体を貼り合わせることにより、各比較例の貼付剤を得た。
【0056】
【表7】
【0057】
上記の表中の結果から、可溶化剤として炭素数2~7以外の有機酸(中~長鎖脂肪酸:炭素数8~18)を使用した場合では、皮膚透過性の優れた外用貼付剤を得ることはできなかった。
【0058】
以上の実施例及び比較例の結果を纏めて評価すると、本発明の実施例1~16の外用貼付剤は、アクリル系以外の粘着剤を使用した比較例1~7の貼付剤、さらに、炭素数が大きい有機酸を可溶化剤として使用した比較例8~12の貼付剤と比較して、累積透過量が増加する傾向が見られ、本発明の特異性がよく理解できるものであった。
また、本発明の外用貼付剤である実施例1~16に記載の貼付剤において、可溶化剤としてレブリン酸、或いはDL-乳酸を使用し、軟化剤としてオレイン酸オレイル並びにミリスチン酸イソプロピル等の脂肪酸エステルを併用し、更に界面活性剤としてラウロマクロゴール用いた実施例3~10、12及び16の各貼付剤は、24時間後の累積透過量が格段に高いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上のとおり、本発明によりこれまで何ら検討されていなかったルパタジンの外用貼付剤が提供される。
本発明が提供する外用貼付剤は、第二世代の抗ヒスタミン剤であるルパタジンを有効成分として配合するものであるが、膏体物性に優れ、有効成分であるルパタジンの経皮吸収性の良好な外用貼付剤であり、その医療上の効果は多大なものである。