(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】歯間清掃用具
(51)【国際特許分類】
A61C 15/04 20060101AFI20230216BHJP
【FI】
A61C15/04 503
(21)【出願番号】P 2020011200
(22)【出願日】2020-01-27
【審査請求日】2021-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2019017793
(32)【優先日】2019-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高村 春菜
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2004-0010876(KR,A)
【文献】中国実用新案第201026244(CN,Y)
【文献】米国特許出願公開第2012/0279518(US,A1)
【文献】中国実用新案第204411003(CN,U)
【文献】登録実用新案第3092091(JP,U)
【文献】中国実用新案第206197376(CN,U)
【文献】中国実用新案第204016529(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の係合部を有し、歯間清掃用のフロスの一側を支持する第1の操作部材と、
第2の係合部を有し、前記フロスの他側を支持する第2の操作部材と、
を備え、
前記第1の係合部と前記第2の係合部との係合により前記第1の操作部材と前記第2の操作部材が結合している結合状態において前記フロスを使用可能であり、
前記第1の係合部と前記第2の係合部との係合の解除により、前記結合状態から、前記第1の操作部材と前記第2の操作部材が分離している分離状態に状態が変化するようになっており、
前記第1の操作部材および前記第2の操作部材は、使用者により把持される把持部、および、前記フロスを支持し、前記結合状態において前記フロスと共に開口を形成するヘッド部、を有しており、
前記結合状態においては、前記第1の操作部材および前記第2の操作部材の各々の前記ヘッド部における前記フロスの支持点間の離隔方向に沿って、前記フロスが支持されるようになっており、
前記把持部の長手方向は、前記結合状態における前記フロスの支持点間の離隔方向と直交するようになっており、
前記ヘッド部は、前記把持部の長手方向、および前記結合状態において前記第1の操作部材と前記第2の操作部材が並べられる幅方向により形成される平面に直交し、前記把持部を通る
仮想面上に設けられる、歯間清掃用具。
【請求項2】
前記把持部は、前記結合状態において前記第1の操作部材と前記第2の操作部材が並べられる幅方向の外側に向かって張り出す張出部を有する、請求項1に記載の歯間清掃用具。
【請求項3】
前記フロス、または、前記フロスおよび前記ヘッド部の少なくとも一部は、前記歯間清掃用具の他の部分に対して着脱可能に設けられる、
請求項1又は2に記載の歯間清掃用具。
【請求項4】
前記第1の係合部および前記第2の係合部は、磁性体を含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載の歯間清掃用具。
【請求項5】
前記第1の係合部および前記第2の係合部は、互いに嵌り合う嵌め合い構造を含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の歯間清掃用具。
【請求項6】
前記分離状態から、前記第1の係合部と前記第2の係合部との係合により、前記結合状態に状態が変化する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の歯間清掃用具。
用具。
【請求項7】
前記結合状態から前記分離状態への状態の変化は、不可逆変化である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の歯間清掃用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯間清掃用具に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内の齲蝕および歯周疾患などの予防には、口腔内を清潔に保つことが有用である。口腔内を清潔に保つための清掃用具として、歯ブラシが広く用いられている。また、歯ブラシの毛先が届きにくい歯間を清掃するための歯間清掃用具も普及しつつある。歯間清掃用具としては、フロスと呼ばれる線材の両端を支持するヘッド部、およびヘッド部に連結される把持部を有する糸楊枝が知られている。当該糸楊枝には、把持部の長手方向とフロスの方向が一致するF字型の糸楊枝、および把持部の長手方向とフロスの方向が直交するY字型の糸楊枝などがある。
【0003】
また、分離された2つの把持部の各々がフロスを支持する、分離型の歯間清掃用具の研究も行われている。例えば、特許文献1~3には、このような分離型の歯間清掃用具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3158023号公報
【文献】特開2008-22936号公報
【文献】米国特許第00591229号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、いずれの分離型の歯間清掃用具も、2つの把持部が分離した分離状態では使用可能であるものの、2つの把持部が結合した結合状態での使用が困難であった。このため、上記の分離型の歯間清掃用具では使用方法の自由度が低い。
【0006】
本発明は、使用方法の自由度が向上された歯間清掃用具に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点は、第1の係合部を有し、歯間清掃用のフロスの一側を支持する第1の操作部材と、第2の係合部を有し、前記フロスの他側を支持する第2の操作部材と、を備え、前記第1の操作部材と前記第2の操作部材が分離している分離状態から、前記第1の係合部と前記第2の係合部との係合により前記第1の操作部材と前記第2の操作部材が結合している結合状態に状態が変化する、歯間清掃用具に関する。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように本発明の歯間清掃用具によれば、使用方法の自由度を向上することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態による歯間清掃用具の外観を示す説明図である。
【
図2】各歯間清掃用具の清掃効率を示す説明図である。
【
図3】歯間清掃用具の分離状態を示す説明図である。
【
図4】歯間清掃用具の使用態様を示す説明図である。
【
図5】歯間清掃用具の平面図、および歯間清掃用具をI-I線で切断した場合に得られる断面図である。
【
図6】第1の変形例による歯間清掃用具の構成を示す説明図である。
【
図7】
図6に示したII-II線断面を示す説明図である。
【
図8】第2の変形例による歯間清掃用具の結合状態を示す説明図である。
【
図9】第2の変形例による歯間清掃用具の分離状態を示す説明図である。
【
図10】第3の変形例による歯間清掃用具の結合状態を示す説明図である。
【
図11】第3の変形例による歯間清掃用具の分離状態を示す説明図である。
【
図12】第4の変形例による歯間清掃用具の結合状態を示す説明図である。
【
図13】第4の変形例による歯間清掃用具の分離状態を示す説明図である。
【
図14】第5の変形例による歯間清掃用具の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0011】
<歯間清掃用具の概略構成>
本発明の実施形態は、口腔内、特に歯間を清掃するための歯間清掃用具に関する。まず、
図1を参照し、本発明の実施形態による歯間清掃用具の概略構成を説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態による歯間清掃用具1の外観を示す説明図である。
図1に示したように、本発明の実施形態による歯間清掃用具1は、第1の操作部材として用いられる操作部材10Aと、第2の操作部材として用いられる操作部材10Bと、フロス20と、を備える。
【0013】
操作部材10Aおよび操作部材10Bは使用者によって把持および操作される部材である。具体的には、操作部材10Aは、フロス20の一側を支持するヘッド部110A、および使用者により把持される把持部120Aを有する。また、操作部材10Bは、フロス20の他側を支持するヘッド部110B、および使用者により把持される把持部120Bを有する。
図1においては、操作部材10Aおよび操作部材10Bが結合している歯間清掃用具1の結合状態を示している。
【0014】
このような操作部材10Aおよび操作部材10Bは、完全に対称な構造であってもよいし、概ねは対称な構造であり一部に非対称構造を有してもよい。本明細書では、操作部材10Aおよび操作部材10Bに関して共通する説明をする際に、操作部材10Aおよび操作部材10Bを操作部材10と総称する場合がある。同様に、ヘッド部110Aおよびヘッド部110Bをヘッド部110と総称し、把持部120Aおよび把持部120Bを把持部120と総称する場合がある。他の構成についても、末尾にアルファベットを付して区別している構成を、アルファベットを用いない名称で総称する場合がある。
【0015】
また、本明細書では、把持部120の長手方向を前後方向(
図1に示したX軸方向)と称し、把持部120に対してヘッド部110が位置する方向を前方向と称し、ヘッド部110に対して把持部120が位置する方向を後方向と称する。また、操作部材10Aおよび操作部材10Bが並べられた方向を幅方向(
図1に示したY軸方向)と称し、前後方向および幅方向に直交する方向を上下方向(
図1に示したZ軸方向)と称する。
【0016】
操作部材10のヘッド部110は、把持部120との境界位置から幅方向の外側に向けて湾曲する湾曲領域112(112A、112B)、さらに、上下方向の一側(以下、下方向とも称する)に延出する延出領域114(114A、114B)を有し、延出領域114の先端部にフロス20の支持端が位置する。上述したヘッド部110のうちの主に湾曲領域112の存在により、ヘッド部110Aおよびヘッド部110Bは、歯間清掃用具1の結合状態においてフロス20と共に開口Sを形成する。当該開口Sの形成により、フロス20が2つの歯の間に挿入される際に2つの歯のうちの手前側の歯が当該開口Sを通るように位置できるので、フロス20を歯間に挿入し易い。
【0017】
操作部材10の把持部120は、幅方向の外側に向かって張り出す張出部122を有する。当該張出部122は、上下方向に沿って離隔する上面および下面を有する。当該上面および下面が幅方向の外側に張り出している分、使用者の指と当該上面および下面との接触面積を広く確保できるので、使用者が把持部120を把持し易くなる。なお、
図1においては把持部120のうちの張出部122以外の領域が直線形状である例を示しているが、把持部120の形状は
図1に示した例に限定されない。例えば、把持部120の外形は、
図1に示したXY平面またはXZ平面において屈曲形状、曲線形状または蛇行形状を描く領域があってもよい。
【0018】
フロス20は、ヘッド部110Aおよびヘッド部110Bの支持端間で支持される線材である。歯間清掃用具1の結合状態において、フロス20は、ヘッド部110Aおよびヘッド部110Bの支持端間の離隔方向に沿って支持される。フロス20は、歯間清掃用具1の結合状態における歯間への挿入のし易さの観点から、
図1に示したように直線形状となるように支持されてもよい。また、フロス20に若干の弛みがあっても歯間へフロス20を挿入することは可能であるので、フロス20は、ヘッド部110Aおよびヘッド部110Bの支持端間の離隔方向が長軸方向となるように支持されてもよい。なお、ヘッド部110Aおよびヘッド部110Bの支持端間の離隔方向は、例えば歯間清掃用具1の幅方向であり、歯間清掃用具1の前後方向に直交する方向であってもよい。
【0019】
このようなフロス20は、例えば、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン、またはポリテトラフルオロエチレンであってもよい。特に、フロス20はポリエチレンであることが好ましい。フロス20をポリエチレンで形成した場合、複数回に亘ってフロス20を使用しても切れ難いという効果を得ることが可能である。
【0020】
<背景>
ここで、本発明の実施形態の背景を説明する。歯間清掃用具としては、把持部の長手方向とフロスの方向が一致するF字型、把持部の長手方向とフロスの方向が直交するY字型、および切断されたフロスを直接手指で持って使用する糸巻型、などが知られている。一般的に、Y字型は歯間への挿入性に優れ、F字型は製造コストの面で優れ、糸巻型は歯間への挿入後の操作性に優れる。清掃効率の観点からは、糸巻型が最も優れ、Y字型、F字型がそれに続く。以下、各歯間清掃用具の清掃効率を具体的に説明する。
【0021】
図2は、各歯間清掃用具の清掃効率を示す説明図である。
図2に示したように、F字型およびY字型では、フロスが略直線形状を有するので、歯とフロスの接触面積が制限され易い。一方、糸巻型では、歯に巻き付けるようにフロスを操ることができるので、歯とフロスの接触面積が広くなり、清掃効率が高い。ただし、糸巻型では、歯間へフロスを挿入し難く、また、指先が口腔内に入ってしまうなど、人前で使用し難い。
【0022】
このように、各歯間清掃用具には長短があり、各歯間清掃用具の長所を併せ持つ新たな歯間清掃用具が望まれた。本発明の実施形態による歯間清掃用具1はこのような観点から創作されたものであり、本発明の実施形態による歯間清掃用具1は、歯間への挿入性、および清掃効率を併せ持つ。以下、このような本発明の実施形態による歯間清掃用具1について改めて詳細に説明を進める。
【0023】
<歯間清掃用具の詳細>
図1を参照して説明したように、本発明の実施形態による歯間清掃用具1は、結合状態において、把持部120の長手方向とフロス20の方向が直交するY字型として機能する。一方、本発明の実施形態による歯間清掃用具1は、結合状態と、操作部材10Aおよび操作部材10Bが分離している分離状態との間で両方向に変化することが可能である。以下、
図3を参照して歯間清掃用具1の分離状態を説明する。
【0024】
図3は、歯間清掃用具1の分離状態を示す説明図である。把持部120Aおよび把持部120Bは、前後方向において互いに離隔する2つの磁性体124を有する。
図1に示した結合状態は、把持部120Aが有する磁性体124と、把持部120Bが有する磁性体124との接着により実現される。一方、使用者により例えば把持部120Aの張出部122Aおよび把持部120Bの張出部122Bに逆方向の力が加えられると、接着していた磁性体124が分離することにより、
図3に示したように歯間清掃用具1が分離状態となる。分離状態においては、ヘッド部110Aおよびヘッド部110Bの支持端間の離隔距離を短くすることが可能であり、ヘッド部110Aおよびヘッド部110Bの支持端間の離隔距離を短くするとフロス20に弛みが生じるので、歯に巻き付けるようにフロスを操ることが可能である。
【0025】
すなわち、使用者は、
図4の左図に示したように、結合状態でフロス20を歯間に挿入することにより、Y字型が有する歯間への挿入性のメリットを享受することができる。一方、使用者は、挿入後には
図4の右図に示したように分離状態で歯間を清掃することにより、糸巻型が有する清掃効率のメリットを享受することができる。他の観点では、結合状態でも分離状態でも歯間清掃用具1を使用可能であるので、本発明の実施形態による歯間清掃用具1は、分離状態でしか使用できない他の分離型の歯間清掃用具に比べて、使用方法の自由度が高いと言える。さらに、使用者は、歯間清掃用具1の非使用時には歯間清掃用具1を結合状態に戻しておくことにより、歯間清掃用具1の収まりを良くすることが可能である。
【0026】
なお、把持部120Aが有する2つの磁性体124は第1の係合部の一例であり、把持部120Bが有する2つの磁性体124は第2の係合部の一例である。把持部120Aは、第1の係合部として1つの磁性体を有してもよいし、3以上の磁性体を有してもよい。同様に、把持部120Bは、第2の係合部として1つの磁性体を有してもよいし、3以上の磁性体を有してもよい。把持部120Aおよび把持部120Bの結合は、磁性体124以外の第1の係合部および第2の係合部の係合により実現されてもよい。例えば、第1の係合部は嵌め合い構造の一方であり、第2の係合部は当該嵌め合い構造の他方であってもよい。
【0027】
以下、
図5を参照して、本発明の実施形態による歯間清掃用具1の具体的な設計例を説明する。
【0028】
図5は、歯間清掃用具1の平面図、および歯間清掃用具1をI-I線で切断した場合に得られる断面図である。
図5に示した長さL1は、フロス20の支持点間の長さである。長さL1は、最も頬舌径が大きい歯の頬舌径以上であることが、フロス20を歯間に挿入することを可能とするために、望ましい。最も頬舌径が大きい歯は一般的に大臼歯であり、大臼歯の頬舌径は概ね10~12mmであることが知られている。このため、長さL1は12mm以上であることが好ましい。一方、大臼歯の舌側の面は舌に接し、大臼歯の頬側の面と頬粘膜との間隔は14mm程度である。このため、長さL1を大臼歯の頬舌径である12mmと上記間隔14mmとの合計値である26mm以下とすることで、フロス20の挿入の際に頬が邪魔になり難い。
【0029】
図5に示した長さL2は、ヘッド部110の先端から開口Sの後端までの平面視における長さである。長さL2は、上述したように、フロス20が2つの歯の間に挿入される際に2つの歯のうちの手前側の歯が当該開口Sを通れるように設計されることが望ましい。最も近遠心径が大きい歯は一般的に大臼歯であり、大臼歯の近遠心径は概ね10~12mmであることが知られている。このため、長さL2は、大臼歯の近遠心径である12mmを上回ることが好ましい。一方、長さL2が大き過ぎると操作性が損なわれるので、長さL2は25mm以下であることが好ましく、20mm以下であることが更に好ましく、16mmがより好ましい。
【0030】
図5に示した長さL3は、ヘッド部110の湾曲領域112の上面から延出領域114の下端までの長さである。長さL3が大きいほど、フロス20が歯間に挿入された際に把持部120が他の歯に当たり難くなる。一方、長さL3が大き過ぎると、分離状態における操作性が損なわれる。このような観点から、長さL3は8mm以上が好ましく、10mm以上が更に好ましく、12~20mmであることがより好ましい。
【0031】
図5に示した角度Qは、湾曲領域112に対する延出領域114の延出角度である。角度Qは、奥側の歯への到達性の観点、および分離状態における操作性の観点から、90度以上130度以下であることが好ましく、特に110度以上である好ましく、120度以下であることが好ましい。
【0032】
なお、ヘッド部110は、湾曲領域112と延出領域114を明確に区別せず、湾曲領域においても、上下方向の一側に延出するよう、形成してもよい。その場合、湾曲領域112の上面から延出した下端までの長さ(上記L3相当)は、前述のL3と同様の観点から、8mm以上が好ましく、10mm以上が更に好ましく、また20mm以下が好ましい。また、ヘッド部110の把持部120に対する角度(上記角度Q相当)は、上記角度Qと同様の観点から、90度以上が好ましく、110度以上が更に好ましく、また180度未満が好ましく、170以下が更に好ましい。
【0033】
<変形例>
以上、本発明の実施形態を説明した。以下では、本発明の実施形態の幾つかの変形例を説明する。なお、以下に説明する各変形例は、単独で本発明の実施形態に適用されてもよいし、組み合わせで本発明の実施形態に適用されてもよい。また、各変形例は、本発明の実施形態で説明した構成に代えて適用されてもよいし、本発明の実施形態で説明した構成に対して追加的に適用されてもよい。
【0034】
(第1の変形例)
第1の変形例は、フロス20を着脱可能な構成に関する。以下、
図6および
図7を参照して、第1の変形例による歯間清掃用具2の構成を説明する。
【0035】
図6は、第1の変形例による歯間清掃用具2の構成を示す説明図である。
図6に示したように、第1の変形例による歯間清掃用具2は、操作部材12Aと、操作部材12Bと、を備える。各操作部材12は、把持部120およびヘッド部210を備え、ヘッド部210は、湾曲領域212および延出領域214を有する。
【0036】
第1の変形例による歯間清掃用具2では、操作部材12Aの延出領域214A、および操作部材12Bの延出領域214Bに、フロス20が着脱可能に取り付けられている。フロス20が着脱可能に取り付けられる構成を、
図7を参照して具体的に説明する。
【0037】
図7は、
図6に示したII-II線断面を示す説明図である。
図7に示したように、延出領域214は、中空領域Hを形成する側壁部216、および中空領域Hに連通する側開口部218を有する。中空領域Hに、フロス20の一端を支持するフロス支持ユニット230が挿入される。フロス支持ユニット230は2つの爪部232を有する。当該2つの爪部232が側開口部218を介して露出し、かつ、当該2つの爪部232が側壁部216に係合することにより、フロス20およびフロス支持ユニット230が延出領域214に取り付けられる。
【0038】
一方、使用者が2つの爪部232を押圧することにより、2つの爪部232が側開口部218に埋没し、2つの爪部232と側壁部216との係合が解除されるので、当該係合が解除された状態で使用者はフロス支持ユニット230を延出領域214から取り外すことが可能である。
【0039】
このように、第1の変形例によれば、フロス20およびフロス支持ユニット230が着脱可能であるので、フロス20およびフロス支持ユニット230を交換しながら、歯間清掃用具2を繰り返し使用することが可能である。
【0040】
なお、フロス20の着脱を可能とするための構成は、フロス支持ユニット230に限られない。例えば、フロス20が両端に玉止めを有し、延出領域の先端に幅方向に沿った溝が形成される場合、玉止めが幅方向の外側に位置するように当該溝にフロス20を挿入することにより、フロス20を延出領域に取り付けることが可能である。または、フロス20を挟み込むことにより支持する構成を有する歯間清掃用具では、フロス20の挟み込みと、挟み込みの解除との切替えにより、フロス20を着脱することが可能である。
【0041】
(第2の変形例)
第2の変形例は、分離状態における操作性を向上させるための構成に関する。以下、
図8および
図9を参照し、第2の変形例による歯間清掃用具3の構成を説明する。
【0042】
図8は、第2の変形例による歯間清掃用具3の結合状態を示す説明図である。
図9は、第2の変形例による歯間清掃用具3の分離状態を示す説明図である。
図8および
図9に示したように、第2の変形例による歯間清掃用具3は、操作部材13Aと、操作部材13Bと、フロス20と、を備える。
【0043】
各操作部材13は、フロス20の一側を支持するヘッド部310、および使用者により把持される把持部320を有する。把持部320は、柱形状を有する。
図8および
図9においては、柱形状として円柱形状を示しているが、把持部320は角柱形状を有してもよい。
【0044】
把持部320Aは、
図9に示したように前後方向に沿って相互に離隔する複数の凹部322Aを有し、把持部320Bは前後方向に沿って相互に離隔する複数の凸部322Bを有する。複数の凹部322Aおよび複数の凸部322Bが、互いに係合する係合部として機能し、複数の凹部322Aと複数の凸部322Bとの係合により歯間清掃用具3が結合状態となる。
【0045】
第1の実施形態によるヘッド部110と把持部120との関係と異なり、第2の変形例によるヘッド部310は、
図8に示したように、把持部320の長手方向、および結合状態において操作部材13A(第1の操作部材)と操作部材13B(第2の操作部材)が並べられる幅方向により形成される平面に直交し、把持部を通る仮想面Pに沿って設けられる。つまり、仮想面Pは上下方向に延びており、ヘッド部310は、前後方向および上下方向により形成される、把持部320を通る仮想面Pに沿って設けられる。かかる構成によれば、分離状態において、把持部320を操作する使用者の力がより直線的にフロス20の支持端に伝わるので、操作性を向上することが可能である。
【0046】
(第3の変形例)
第3の変形例は、分離状態における操作性を向上させるための構成に関する。以下、
図10および
図11を参照し、第3の変形例による歯間清掃用具4の構成を説明する。
【0047】
図10は、第3の変形例による歯間清掃用具4の結合状態を示す説明図である。
図11は、第3の変形例による歯間清掃用具4の分離状態を示す説明図である。
図10および
図11に示したように、第3の変形例による歯間清掃用具4は、操作部材14Aと、操作部材14Bと、フロス20と、を備える。
【0048】
各操作部材14は、フロス20の一側を支持するヘッド部410、および使用者により把持される把持部420を有する。把持部420Aは、前後方向に沿って形成された主軸部、および主軸部の前後方向で互いに離隔した位置から幅方向の内側に突出する3つの突出部422Aを有する。把持部420Bは、前後方向に沿って形成された主軸部、および主軸部の前後方向で互いに離隔した位置から幅方向の内側に突出する3つの突出部422Bを有する。
【0049】
突出部422Aおよび突出部422Bは、互いに係合する係合部として機能する。例えば、突出部422Aおよび突出部422Bの先端には磁性体が設けられており、突出部422Aおよび突出部422Bは当該磁性体を介して着脱可能に係合してもよい。
【0050】
このような第3の変形例による歯間清掃用具4では、第2の変形例による歯間清掃用具3と比べて把持部420の主軸部を細く、軽量に形成できる。このため、特に分離状態における操作部材14の操作性を向上することが可能である。
【0051】
(第4の変形例)
ここまで、Y字型の歯間清掃用具に本発明に関する技術が適用される例を説明したが、本発明に関する技術は、F字型の歯間清掃用具にも適用可能である。以下、
図12および
図13を参照して、第4の変形例によるF字型の歯間清掃用具5の構成を説明する。
【0052】
図12は、第4の変形例による歯間清掃用具5の結合状態を示す説明図である。
図13は、第4の変形例による歯間清掃用具5の分離状態を示す説明図である。
図12および
図13に示したように、第4の変形例による歯間清掃用具5は、操作部材15Aと、操作部材15Bと、フロス20と、を備える。
【0053】
各操作部材15は、フロス20を支持するヘッド部510、および使用者により把持される把持部520を有する。ヘッド部510は、把持部520から垂直に延出している。フロス20は、ヘッド部510Aおよびヘッド部510Bの支持端間の離隔方向に沿って支持される。フロス20は、歯間清掃用具1の結合状態における歯間への挿入のし易さの観点から、
図12に示したように直線形状となるように支持されてもよい。また、フロス20に若干の弛みがあっても歯間へフロス20を挿入することは可能であるので、フロス20は、ヘッド部510Aおよびヘッド部510Bの支持端間の離隔方向が長軸方向となるように支持されてもよい。ヘッド部510Aおよびヘッド部510Bの支持端間の離隔方向は、把持部520の長手方向である前後方向に等しい。ただし、支持点間の離隔方向が前後方向に完全に一致しなくてもよく、支持点間の離隔方向が、前後方向に直交する方向よりも、前後方向に近ければよい。
【0054】
図13に示したように、把持部520Aは、凹部521、および凹部521に形成された、前後方向で互いに離隔する2つのピン522Aを有する。把持部520Bは、前後方向で互いに離隔する2つの穴部522Bを有する。凹部521に把持部520Bが嵌合すること、および、2つのピン522Aが2つの穴部522Bに挿入されることにより、把持部520Aと把持部520Bが着脱可能に係合する。すなわち、凹部521および2つのピン522Aは第1の係合部として機能し、把持部520B、特に2つの穴部522Bが第2の係合部として機能する。
【0055】
また、把持部520Bは、結合状態において把持部520Aと重なる領域、および把持部520Aと重ならない領域を有する。
図12において、把持部520Bが把持部520Aと重ならない領域を突出領域524として示している。かかる構成によれば、結合状態において使用者が当該突出領域524に力を加えることで歯間清掃用具5を容易に分離状態にすることが可能である。
【0056】
なお、分離状態においては、
図13の左図および右図に示したように、使用者は操作部材15Aおよび操作部材15Bの位置関係を多様に変化させながら歯間を清掃することができる。
【0057】
(第5の変形例)
ここまで、結合状態および分離状態のいずれにおいても使用可能な歯間清掃用具を説明した。しかし、本発明に関する技術は、結合状態においては使用されず、分離状態において使用される歯間清掃用具にも適用可能である。以下、第5の変形例として、このような歯間清掃用具6の構成を説明する。
【0058】
図14は、第5の変形例による歯間清掃用具6の構成を示す説明図である。
図14に示したように、第5の変形例による歯間清掃用具6は、操作部材16Aと、操作部材16Bと、フロス20と、を備える。
【0059】
操作部材16Aはフロス20の一端を支持し、操作部材16Bはフロス20の他端を支持する。操作部材16Aおよび操作部材16Bは、各々の長手方向に沿って離隔した位置に2つの磁性体124を有する。当該磁性体124が係合部として機能し、操作部材16Aおよび操作部材16Bが着脱可能に結合する。ただし、磁性体124は係合部の一例に過ぎず、嵌め合い構造のような他の構成が係合部として用いられてもよい。
【0060】
このような第5の変形例による歯間清掃用具6は、結合状態では歯間の清掃に使用されないが、分離状態での使用後に再度結合状態に戻れるので、歯間清掃用具6の非使用時の収まりを良くすることができる。
【0061】
(第6の変形例)
上記では、結合状態から分離状態への状態変化、および分離状態から結合状態への状態変化の双方が可能である歯間清掃用具1を説明したが、結合状態から分離状態への状態の変化は不可逆変化であってもよい。例えば、操作部材10Aおよび操作部材10Bが脆弱部を介して一体的に形成されている結合状態において、使用者が加える力により脆弱部が破壊されることで、歯間清掃用具1が分離状態となってもよい。かかる構成においては、使用方法の自由度を確保しつつ、分離状態から結合状態への状態変化のための磁石のような係合部を歯間清掃用具1が有さなくてもよいため製造コストを低減することが可能である。
【0062】
<補足>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的範囲はかかる例に限定されない。本発明の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0063】
1、2、3、4、5、6、 歯間清掃用具
10、12、13、14、15、16 操作部材
110、210、310、410、510 ヘッド部
112、212 湾曲領域
114、214 延出領域
216 側壁部
218 側開口部
120、220、320、520、520 把持部
122 張出部
124 磁性体
322A 凹部
322B 凸部
422 突出部
521 凹部
522A ピン
522B 穴部
524 突出領域
230 フロス支持ユニット
232 爪部