(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】ガス絶縁開閉装置
(51)【国際特許分類】
H02B 13/035 20060101AFI20230216BHJP
H02G 5/06 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
H02B13/035 301B
H02G5/06 361Z
(21)【出願番号】P 2020015289
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2022-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 眞光
(72)【発明者】
【氏名】椎木 元晴
(72)【発明者】
【氏名】永田 真一
(72)【発明者】
【氏名】高尾 浩史
(72)【発明者】
【氏名】岡成 信明
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-90534(JP,A)
【文献】特開昭50-85887(JP,A)
【文献】実開昭51-9227(JP,U)
【文献】特開昭54-155440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 13/035 - 13/075
H02G 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成され、内部に絶縁ガスが封入されるタンクと、
前記タンクの内部に配置され、前記タンクの軸方向に伸びる導体と、
前記タンクの内部を前記軸方向に仕切るとともに、前記導体を支持する仕切部材と、を有し、
前記軸方向において前記仕切部材に隣接する前記軸方向の第1範囲において前記導体を前記導体の下方の前記タンクに投影した領域を前記タンクの下部領域とし、前記軸方向の第1範囲において前記導体を前記導体の上方の前記タンクに投影した領域を前記タンクの上部領域としたとき、前記下部領域における前記タンクの厚さは前記上部領域における前記タンクの厚さより厚く、
前記タンクは、前記下部領域に形成された前記タンクの支持部材を有する
、
ガス絶縁開閉装置。
【請求項2】
筒状に形成され、内部に絶縁ガスが封入されるタンクと、
前記タンクの内部に配置され、前記タンクの軸方向に伸びる導体と、
前記タンクの内部を前記軸方向に仕切るとともに、前記導体を支持する仕切部材と、を有し、
前記軸方向において前記仕切部材に隣接する前記軸方向の第1範囲において前記導体を前記導体の下方の前記タンクに投影した領域を前記タンクの下部領域とし、前記軸方向の第1範囲において前記導体を前記導体の上方の前記タンクに投影した領域を前記タンクの上部領域としたとき、前記下部領域における前記タンクの厚さは前記上部領域における前記タンクの厚さより厚く、
前記タンクは、前記下部領域に形成された凹部と、前記凹部の底部を閉塞する閉塞板と、を有し、
前記閉塞板は、前記タンクの形成材料より融点が高い材料で形成される
、
ガス絶縁開閉装置。
【請求項3】
筒状に形成され、内部に絶縁ガスが封入されるタンクと、
前記タンクの内部に配置され、前記タンクの軸方向に伸びる導体と、
前記タンクの内部を前記軸方向に仕切るとともに、前記導体を支持する仕切部材と、を有し、
前記軸方向において前記仕切部材に隣接する前記軸方向の第1範囲において前記導体を前記導体の下方の前記タンクに投影した領域を前記タンクの下部領域とし、前記軸方向の第1範囲において前記導体を前記導体の上方の前記タンクに投影した領域を前記タンクの上部領域としたとき、前記下部領域における前記タンクの厚さは前記上部領域における前記タンクの厚さより厚く、
前記タンクは、前記下部領域の内周面に配置された所定厚さの内周部材を有し、
前記内周部材は、前記タンクの形成材料より融点が高い材料で形成される
、
ガス絶縁開閉装置。
【請求項4】
前記軸方向の第1範囲は、前記仕切部材と前記タンクとの当接位置から前記タンクの内側に前記タンクの内径の長さの範囲である、
請求項1
から3のいずれか1項に記載のガス絶縁開閉装置。
【請求項5】
前記絶縁ガスの圧力が所定圧力を超えたとき前記絶縁ガスを前記タンクの外部に放出する放圧装置を有する、
請求項1から
4のいずれか1項に記載のガス絶縁開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ガス絶縁開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高電圧送電システムの系統切替を行うためにガス絶縁開閉装置(Gas-Insulated Switchgear:GIS)が広く利用されている。ガス絶縁開閉装置は、タンクと、導体と、スペーサと、を有する。タンクの内部には、絶縁ガスが封入される。導体は、タンクの内部に配置され、タンクの軸方向に伸びる。スペーサは、タンクの内部を軸方向に仕切るとともに、導体を支持する。
【0003】
導体とタンクとの間の地絡や、三相の導体間の短絡が発生すると、ガス絶縁開閉装置の内部でアーク放電が発生する。ガス絶縁開閉装置には、アーク放電に対する高い信頼性が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】CIGRE Session 1998 - WG 21/23/33‐03,ASSESSMENT OF THE BEHAVIOUR OF GAS-INSULATED ELECTRICAL COMPONENTS IN THE PRESENCE OF AN INTERNAL ARC, by G. BABUSCI. E. COLOMBO. R. SPEZIALI. G. ALDROVANDI. R. BERGMANN. M. LISSANDRIN. G. CORDIOLI. C. PIAZZA.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、アーク放電に対して高い信頼性を有するガス絶縁開閉装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のガス絶縁開閉装置は、タンクと、導体と、仕切部材と、を有する。タンクは、筒状に形成され、内部に絶縁ガスが封入される。導体は、タンクの内部に配置され、タンクの軸方向に伸びる。仕切部材は、タンクの内部を軸方向に仕切るとともに、導体を支持する。軸方向において仕切部材に隣接する軸方向の第1範囲において導体を導体の下方のタンクに投影した領域をタンクの下部領域とする。軸方向の第1範囲において導体を導体の上方のタンクに投影した領域をタンクの上部領域とする。下部領域におけるタンクの厚さは、上部領域におけるタンクの厚さより厚い。タンクは、下部領域に形成されたタンクの支持部材を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】第1の実施形態のガス絶縁開閉装置の側面断面図。
【
図3】第1の実施形態のガス絶縁開閉装置の正面断面図。
【
図5】第1の実施形態の第1変形例のガス絶縁開閉装置の側面断面図。
【
図6】第1の実施形態の第1変形例のガス絶縁開閉装置の正面断面図。
【
図7】第1の実施形態の第2変形例のガス絶縁開閉装置の側面断面図。
【
図8】第1の実施形態の第2変形例のガス絶縁開閉装置の正面断面図。
【
図9】第1の実施形態の第3変形例のガス絶縁開閉装置の側面断面図。
【
図10】第1の実施形態の第3変形例のガス絶縁開閉装置の正面断面図。
【
図11】第1の実施形態の第4変形例のガス絶縁開閉装置の側面断面図。
【
図12】第1の実施形態の第4変形例のガス絶縁開閉装置の正面断面図。
【
図13】第1の実施形態の第5変形例のガス絶縁開閉装置の側面断面図。
【
図14】第1の実施形態の第5変形例のガス絶縁開閉装置の正面断面図。
【
図15】第2の実施形態のガス絶縁開閉装置の側面断面図。
【
図16】第2の実施形態のガス絶縁開閉装置の正面断面図。
【
図17】参考形態のガス絶縁開閉装置の側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態のガス絶縁開閉装置を、図面を参照して説明する。
本願において、直交座標系のZ方向、X方向およびY方向が以下のように定義される。Z方向は鉛直方向であり、+Z方向は上方向である。X方向およびY方向は水平方向である。Y方向は主母線10の軸方向であり、X方向は線路側母線6の軸方向である。
【0010】
図1は、ガス絶縁開閉装置の側面図例である。ガス絶縁開閉装置1は主に、主母線10(10a,10b)と、遮断器4と、線路側母線6と、ブッシング7と、を有する。主母線10はY方向に伸び、線路側母線6はX方向に伸びる。線路側母線6は、ブッシング7を介して送電線に接続される。遮断器4および線路側母線6は直列に接続される。複数の遮断器4および線路側母線6が、主母線10に対して並列に接続される。遮断器4は、主母線10と線路側母線6との間を開閉する。
【0011】
ガス絶縁開閉装置1の導体は、絶縁ガスを封入したタンクの内部に配置される。以下の各図では、例として、ガス絶縁開閉装置1の基本的な内部構造が記載される。以下の各図では、一例としてガス絶縁開閉装置1の内部構造が記載されるが、ガス絶縁開閉装置の他の構成機器にも同様に形成される。
【0012】
(第1の実施形態)
図2および
図3は、第1の実施形態のガス絶縁開閉装置の断面図である。
図2は、
図3のB-B線における側面断面図である。
図3は、
図2のA-A線における正面断面図である。ガス絶縁開閉装置1は、タンク12と、導体15と、絶縁ガス19と、スペーサ(仕切部材)17と、を有する。
【0013】
タンク12は、アルミニウム等の金属材料により形成される。タンク12は、金属管や金属板を加工・溶接して形成される。タンク12は、鋳造される鋳物タンクであってもよい。タンク12の内部には絶縁ガス19が封入される。タンク12は、筒部12pと、フランジ13と、を有する。筒部12pは、略円筒状に形成される。本願では、タンク12の軸方向を単に軸方向と呼び、タンク12の径方向を単に径方向と呼ぶ場合がある。フランジ13は、筒部12pの軸方向の両端部に形成される。フランジ13は、タンク12の径方向の外側に向かって広がる。タンク12は接地される。
【0014】
導体15は、アルミニウム等の金属材料により、丸棒状に形成される。導体15は、タンク12の軸方向に伸びる。単相のガス絶縁開閉装置の場合には、1本の導体15がタンク12の中心軸に沿って配置される。
図4は、三相のガス絶縁開閉装置の正面断面図である。三相のガス絶縁開閉装置の場合には、3本の導体15a,15b,15cが、タンク12の中心軸の周りに配置される。
【0015】
絶縁ガス19は、例えば6フッ化硫黄(SF6)ガスである。絶縁ガス19は、タンク12の内部に封入される。絶縁ガス19は、導体15とタンク12との間の絶縁性を向上させる。絶縁ガス19は、三相の導体間の絶縁性を向上させる。
【0016】
スペーサ17は、エポキシ樹脂等の絶縁材料により形成される。スペーサ17は、円錐状または円盤状に形成される。スペーサ17の周縁部は、隣り合うタンク12のフランジ13の間に挟持され、フランジ13に固定される。スペーサ17は、タンク12の内部を軸方向に仕切る。スペーサ17は、絶縁ガス19をタンク12の内部に封止する。スペーサ17によりタンク12が軸方向において複数のユニットに分割されるので、タンク12のユニット単位でのメンテナンスが可能になる。スペーサ17の中央部には金属製電極18があり、種々の接触構造により、導体15と電気的機械的に接続される。
【0017】
ガス絶縁開閉装置1のアーク放電について説明する。第一に、アーク放電による絶縁ガス19の圧力上昇について説明する。
導体15とタンク12との間の地絡や、三相の導体間の短絡が発生すると、ガス絶縁開閉装置1の内部でアーク放電が発生する。アーク放電により、導体15およびタンク12が絶縁ガス19と反応し、反応熱が発生する。アーク放電による反応熱や、アーク放電自体の熱により、絶縁ガス19の温度および圧力が上昇する。ガス絶縁開閉装置1には、アーク放電による絶縁ガス19の圧力上昇に対する強度が求められる。
【0018】
電気学会 電気規格調査会標準規格、ガス絶縁開閉装置、JEC-2350:2016、5.14.1 容器の強度の解説には、以下の内容が記載されている。アーク放電等の内部故障による圧力上昇に耐えるということは、最高使用圧力に主保護故障除去時間までの内部故障によるガス圧力上昇値を加えた最終圧力値が、容器の強度以内であることを示す。なお、使用者の仕様として後備保護故障除去時間までの圧力上昇に耐えることを要求される場合もある。内部故障によるガス圧力上昇の計算式として、次の数式1が一般的に用いられる。
【0019】
【0020】
ΔPはガス圧力上昇(MPa)、Cは係数(単相0.3、三相0.2×√3)、Iは故障電流(定格短時間耐電流)(kA)、tは故障除去時間(ms)、Vは容器の容量(リットル)である。
内圧に対する容器の強度の計算式として、次の数式2が一般的に用いられる。
【0021】
【0022】
Pは容器の強度(MPa)、tは主胴板厚(mm)、σは材料の規定最小引張強さ(N/mm2)、ηは溶接効率、Dは容器の内径(mm)である。
絶縁ガス19の圧力上昇に対するガス絶縁開閉装置1の強度を確保するため、数式2を満たすように、容器であるタンク12の最小板厚tが決定される。
【0023】
第二に、アーク放電によるバーンスルー現象について説明する。
アークとタンク12とが接触するアーク脚部では、アークの熱によりタンク12の金属材料が溶融する。アーク電流の大きさと通電時間によっては、タンク12に穴が開くバーンスルー現象が発生する。バーンスルー現象を防ぐために必要なタンク12の最小板厚を算出するため、種々の実験式が報告されているが、例えば、非特許文献1に記載された以下の数式3が使用される。
【0024】
【0025】
tbはバーンスルー時間、hは容器の厚さ、Isは短絡電流である。パラメータkは、容器材料がアルミニウムの場合が173(ms kA/mm2)、鉄の場合が750(ms kA/mm2)とされている。
バーンスルーを防止するため、数式3を満たすように、容器であるタンク12の最小板厚hが決定される。数式2から求めたタンク12の最小板厚tおよび数式3から求めたタンク12の最小板厚hのうち、大きい方がタンク12の最小板厚に設定される。
【0026】
タンク12の板厚が、数式2および数式3から求めた最小板厚以上の場合でも、タンク12に穴が開く場合がある。
タンク12の内部で発生したアークは、電磁力により軸方向に移動して、スペーサ17の近傍に滞留する。アークは、主にスペーサ17の近傍で導体15と長時間接触する。アークと導体15とが接触する部分では、アークの熱により導体15の金属材料が溶融する。溶融した金属材料は、タンク12の底部に落下する。短絡電流が大きい場合や事故電流の継続時間が長い場合には、落下する溶融金属の量が増加する。タンク12の底部に滞留した溶融金属により、タンク12の金属材料が溶融する。これにより、タンク12に穴が開くと考えられる。タンク12の厚さ全体の金属材料が溶融する途上、未溶解部の厚さが絶縁ガス19の圧力に耐えられなくなり、穴が開く場合もある。これらの現象を2次的バーンスルーと呼ぶことにする。
実施形態のガス絶縁開閉装置1により、2次的バーンスルーが抑制される。
【0027】
図2に示されるように、軸方向(Y方向)においてスペーサ17に隣接する第1範囲20yが定義される。軸方向の第1範囲20yは、スペーサ17とタンク12との当接位置から、タンク12の内側にタンク12の内径12dの長さの範囲である。言い換えれば、軸方向の第1範囲20yは、タンク12の軸方向の端部における、タンク12の内径12dの長さの範囲である。軸方向の第1範囲20yにおいて、導体15の下方のタンク12に導体15を投影した領域を、タンク12の下部領域20とする。軸方向の第1範囲20yにおいて、導体15の上方のタンク12に導体15を投影した領域を、タンク12の上部領域21とする。下部領域20および上部領域21の軸方向の長さは、第1範囲20yの軸方向の長さであって、タンク12の内径12dの長さに等しい。
図3に示されるように、下部領域20および上部領域21のX方向の長さは、導体15の外径15dの長さに等しい。
【0028】
図2に示されるように、下部領域20におけるタンク12の厚さ20tは、上部領域21におけるタンク12の厚さ21tより厚い。本願において「タンクの厚さ」とは、タンク12のフランジ13を除いた部分における径方向の厚さを言う。下部領域20以外の領域(上部領域21を含む)におけるタンク12の厚さは、数式2および数式3から求めた最小板厚と同等である。下部領域20におけるタンク12の厚さは、数式2および数式3から求めた最小板厚よりも厚い。下部領域20には、上部領域21よりもタンク12の厚さが厚い厚肉部が形成される。厚肉部は、少なくとも下部領域20に形成されていればよく、下部領域20より広い領域に形成されてもよい。
図3の例では、厚肉部が、X方向において下部領域20より広い領域に形成されている。厚肉部を有するタンク12は、鋳造により一体に形成される。
【0029】
図4に示される三相のガス絶縁開閉装置の場合には、三相の導体15a,15b,15cのそれぞれの下方が下部領域20a,20b,20cである。三相の導体15a,15b,15cのそれぞれの上方が上部領域21a,21b,21cである。下部領域20a,20b,20cにおけるタンク12の厚さ20tは、上部領域21a,21b,21cにおけるタンク12の厚さ21tより厚い。
図4の例では、厚肉部が、三相の導体15a,15b,15cのX方向の両端部の間の全体に形成されている。
【0030】
このように、第1の実施形態のガス絶縁開閉装置1では、下部領域20におけるタンク12の厚さ20tが、上部領域21におけるタンク12の厚さ21tより厚い。
前述されたように、アークの熱により、スペーサ17の近傍における導体15の金属材料が溶融する。溶融金属は、タンク12の下部領域20に落下する。第1の実施形態のガス絶縁開閉装置1では、下部領域20におけるタンク12の厚さが厚い。落下した溶融金属が下部領域20に滞留しても、タンク12に穴が開くこと(2次的バーンスルー)が抑制される。したがって、ガス絶縁開閉装置1は、アーク放電に対して高い信頼性を有する。
【0031】
タンク12の内径12dが大きい場合には、導体15とタンク12との間隔が大きくなる。このとき、溶融した導体15の金属材料が、鉛直下方から軸方向に離れた位置に落下する可能性がある。下部領域20の軸方向(Y方向)の長さは、タンク12の内径12dの長さに等しい。そのため、溶融金属が下部領域20の範囲内に落下する可能性が高い。タンク12の周方向における下部領域20の長さが、タンク12の内径12dの長さであってもよい。
【0032】
第1の実施形態の第1変形例について説明する。
図5および
図6は、第1の実施形態の第1変形例のガス絶縁開閉装置の断面図である。
図5は、
図6のB-B線における側面断面図である。
図6は、
図5のA-A線における正面断面図である。第1の実施形態と同様である点についての第1変形例の説明は省略される。
【0033】
図6に示されるように、タンク12は、支持部材25を有する。支持部材25は、ガス絶縁開閉装置の設置面に対してタンク12を支持する。支持部材25は、鋳造によりタンク12と一体に形成される。支持部材25は、下部領域20を含むタンク12の下方に形成される。支持部材25のX方向の長さは、下部領域20のX方向の長さ以上である。支持部材25の下端面は水平面である。
【0034】
図5に示されるように、支持部材25の軸方向の長さは、下部領域20の軸方向の長さと同等か、それ以上である。支持部材25は、タンク12の外周面から下方に突出して形成される。下部領域20におけるタンク12の厚さ20tは、上部領域21におけるタンク12の厚さ21tより厚い。下部領域20におけるタンク12の厚さ20tは、支持部材25のZ方向の高さである。
【0035】
このように、第1変形例のタンク12は、下部領域20に形成されたタンク12の支持部材25を有する。支持部材25により、下部領域20におけるタンク12の厚さが厚くなるので、2次的バーンスルーによりタンク12に穴が開くことが抑制される。したがって、ガス絶縁開閉装置1は、アーク放電に対して高い信頼性を有する。
【0036】
第1の実施形態の第2変形例について説明する。
図7および
図8は、第1の実施形態の第2変形例のガス絶縁開閉装置の断面図である。
図7は、
図8のB-B線における側面断面図である。
図8は、
図7のA-A線における正面断面図である。第1の実施形態と同様である点についての第2変形例の説明は省略される。
【0037】
図8に示されるように、タンク12は、外周部材27を有する。外周部材27は、下部領域20の外周面に配置される。外周部材27は、タンク12と同じアルミニウム等の金属材料により形成される。外周部材27は、所定厚さの金属板であり、タンク12の外周面に対して溶接等により固定される。外周部材27がタンク12と同じ材料で形成されるので、タンク12に対する外周部材27の溶接が容易になる。外周部材27は、金属材料のコーティング(溶射)等によりタンク12の外周面に形成されてもよい。
【0038】
図7に示されるように、下部領域20におけるタンク12の厚さ20tは、上部領域21におけるタンク12の厚さ21tより厚い。下部領域20におけるタンク12の厚さ20tは、タンク12の筒部12pの厚さと外周部材27の厚さとの和である。
【0039】
このように、第2変形例のタンク12は、下部領域20の外周面に配置された所定厚さの外周部材27を有する。外周部材27により、下部領域20におけるタンク12の厚さが厚くなるので、2次的バーンスルーによりタンク12に穴が開くことが抑制される。したがって、ガス絶縁開閉装置1は、アーク放電に対して高い信頼性を有する。
【0040】
第1の実施形態の第3変形例について説明する。
図9および
図10は、第1の実施形態の第3変形例のガス絶縁開閉装置の断面図である。
図9は、
図10のB-B線における側面断面図である。
図10は、
図9のA-A線における正面断面図である。第1の実施形態と同様である点についての第3変形例の説明は省略される。
【0041】
図10に示されるように、タンク12は、凹部(ハンドホール)30と、閉塞板(蓋)34と、を有する。凹部30は、下部領域20に形成される。凹部30は、タンク12の径方向の外側に向かって窪む。凹部30の底部は開口される。凹部30は、タンク12と同じ形成材料により、タンク12と一体に形成される。閉塞板34は、凹部30の底部の開口を閉塞する。閉塞板34は、凹部30に対して着脱可能であってもよい。閉塞板34を取り外すことにより、凹部30を通って、タンク12の内部のメンテナンスが可能になる。
【0042】
図9に示されるように、下部領域20におけるタンク12の厚さ20tは、上部領域21におけるタンク12の厚さ21tより厚い。下部領域20におけるタンク12の厚さ20tは、閉塞板34の厚さである。閉塞板34は、タンク12の形成材料より融点が高い材料で形成される。例えば、閉塞板34は、タンク12の形成材料であるアルミニウムより融点が高い鉄材料で形成される。閉塞板34は、タンク12と同じ材料で形成されていてもよい。
【0043】
このように、第3変形例のタンク12は、下部領域20に形成された凹部30と、凹部30の底部を閉塞する閉塞板34と、を有する。閉塞板34は、タンク12の形成材料より融点が高い材料で形成される。前述されたように、アークの熱により導体15の金属材料が溶融して、タンク12の底部の閉塞板34に落下する。閉塞板34の融点が高いので、閉塞板34が溶融してタンク12に穴が開くこと(2次的バーンスルー)が抑制される。したがって、ガス絶縁開閉装置1は、アーク放電に対して高い信頼性を有する。
【0044】
第1の実施形態の第4変形例について説明する。
図11および
図12は、第1の実施形態の第4変形例のガス絶縁開閉装置の断面図である。
図11は、
図12のB-B線における側面断面図である。
図12は、
図11のA-A線における正面断面図である。第1の実施形態と同様である点についての第4変形例の説明は省略される。
【0045】
図12に示されるように、タンク12は、凹部30を有する。凹部30は、下部領域20に形成される。凹部30は、タンク12の径方向の外側に向かって窪む。凹部30の底部は底壁39により閉塞される。凹部30および底壁39は、タンク12と同じ形成材料により、タンク12と一体に形成される。
【0046】
図11に示されるように、下部領域20におけるタンク12の厚さ20tは、上部領域21におけるタンク12の厚さ21tより厚い。下部領域20におけるタンク12の厚さ20tは、凹部30の底壁39の厚さである。底壁39により、下部領域20におけるタンク12の厚さが厚くなるので、2次的バーンスルーによりタンク12に穴が開くことが抑制される。したがって、ガス絶縁開閉装置1は、アーク放電に対して高い信頼性を有する。
【0047】
第1の実施形態の第5変形例について説明する。
図13および
図14は、第1の実施形態の第5変形例のガス絶縁開閉装置の断面図である。
図13は、
図14のB-B線における側面断面図である。
図14は、
図13のA-A線における正面断面図である。第1の実施形態と同様である点についての第5変形例の説明は省略される。
【0048】
図14に示されるように、タンク12は、内周部材40を有する。内周部材40は、下部領域20の内周面に配置される。内周部材40は、所定厚さの金属板であり、タンク12の内周面に対して溶接等により固定される。内周部材40は、金属材料のコーティング等によりタンク12の内周面に形成されてもよい。
【0049】
図13に示されるように、下部領域20におけるタンク12の厚さ20tは、上部領域21におけるタンク12の厚さ21tより厚い。下部領域20におけるタンク12の厚さ20tは、タンク12の筒部12pの厚さと内周部材40の厚さとの和である。内周部材40は、タンク12の形成材料より融点が高い材料で形成される。例えば、内周部材40は、タンク12の形成材料であるアルミニウムより融点が高い鉄材料で形成される。内周部材40は、タンク12と同じ材料で形成されてもよい。
【0050】
このように、第2変形例のタンク12は、下部領域20の内周面に配置された所定厚さの内周部材40を有する。内周部材40により、下部領域20におけるタンク12の厚さが厚くなるので、2次的バーンスルーによりタンク12に穴が開くことが抑制される。したがって、ガス絶縁開閉装置1は、アーク放電に対して高い信頼性を有する。
内周部材40の形成材料の融点が高いので、内周部材40の厚さを薄くしても、2次的バーンスルーが抑制される。内周部材40の厚さを薄くすることにより、内周部材40と導体15との間の絶縁距離が確保される。
【0051】
(第2の実施形態)
図15および
図16は、第2の実施形態のガス絶縁開閉装置の断面図である。
図15は、
図16のB-B線における側面断面図である。
図16は、
図15のA-A線における正面断面図である。第2の実施形態のガス絶縁開閉装置201は、袖部材50を有する点で、第1の実施形態とは異なる。第1の実施形態と同様である点についての第2の実施形態の説明は省略される。
【0052】
図15に示されるように、タンク12の筒部12pは、一定の厚さに形成される。
図16に示されるように、袖部材50は、所定厚さの金属管であり、導体15の外周面に配置される。袖部材50は、金属材料のコーティング等により導体15の外周面に形成されてもよい。
図15に示されるように、軸方向(Y方向)においてスペーサ17に隣接する第2範囲50yが定義される。軸方向の第2範囲50yは、導体15のスペーサ17側の端部から、タンク12の内側に導体15の外径15dの長さの範囲である。袖部材50は、少なくとも軸方向の第2範囲50yにおいて導体15の外周面を覆う。袖部材50は、軸方向の第2範囲50yより広い範囲で、導体15の外周面を覆ってもよい。
【0053】
袖部材50は、導体15の形成材料より、絶縁ガス19との反応熱が小さい材料で形成される。袖部材50は、導体15の形成材料より融点が高い材料で形成される。例えば、導体15の形成材料がアルミニウムであり、絶縁ガス19が6フッ化硫黄(SF6)ガスであるとき、袖部材50の形成材料は鉄または銅などである。
【0054】
このように、第2の実施形態のガス絶縁開閉装置201は、袖部材50を有する。袖部材50は、軸方向においてスペーサ17に隣接する第2範囲50yにおいて導体15の外周面を覆う。袖部材50は、導体15の形成材料より、絶縁ガス19との反応熱が小さい材料で形成される。
前述されたように、タンク12の内部で発生したアークは、電磁力により軸方向に移動して、スペーサ17の近傍に滞留する。アークは、スペーサ17に隣接して配置される袖部材50と接触する。袖部材50の形成材料は、絶縁ガス19との反応熱が小さい。熱による袖部材50の形成材料の溶融が抑制され、溶融金属の落下が抑制される。2次的バーンスルーによりタンク12に穴が開くことが抑制される。したがって、ガス絶縁開閉装置201は、アーク放電に対して高い信頼性を有する。
【0055】
袖部材50は、導体15の形成材料より、融点が高い材料で形成される。
袖部材50の形成材料の溶融が抑制されるので、溶融金属の落下が抑制される。2次的バーンスルーによりタンク12に穴が開くことが抑制される。したがって、ガス絶縁開閉装置201は、アーク放電に対して高い信頼性を有する。
【0056】
参考形態について説明する。
図17は、参考形態のガス絶縁開閉装置の側面断面図である。参考形態は、放圧装置60を有する点で、第1の実施形態と異なる。第1の実施形態と同様である点についての参考形態の説明は省略される。
【0057】
放圧装置60は、タンク12の内部に封入された絶縁ガス19の圧力が所定圧力を超えたとき、絶縁ガス19をタンク12の外部に放出する。放圧装置60は、タンク12の内圧を低下させる。複数の放圧装置60が、タンク12に装着される。
【0058】
前述されたように、アークの熱により導体15の金属材料が溶融して、タンク12の底部に落下する。タンク12の底部に滞留した溶融金属により、タンク12の金属材料が溶融する。これと同時に、アーク放電による反応熱などにより、絶縁ガス19の温度および圧力が上昇する。タンク12の厚さ全体の金属材料が溶融する前に、絶縁ガス19の圧力によりタンク12に穴が開く2次的バーンスルーが発生する。
【0059】
放圧装置60は、タンク12の内圧を低下させる。放圧装置60は通常ガス区画毎にひとつであるが、タンク容積が大きい場合などは内圧の低下速度は低下する。複数の放圧装置60は、タンク12の内圧を迅速に低下させる。2次的バーンスルーによりタンク12に穴が開くことが抑制される。したがって、ガス絶縁開閉装置301は、アーク放電に対して高い信頼性を有する。
【0060】
放圧装置60は、第1の実施形態およびその変形例、並びに第2の実施形態のガス絶縁開閉装置に装着されてもよい。これにより、2次的バーンスルーによりタンク12に穴が開くことが抑制される。したがって、ガス絶縁開閉装置1は、アーク放電に対して高い信頼性を有する。
【0061】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、下部領域20におけるタンク12の厚さ20tが上部領域21におけるタンク12の厚さ21tより厚い。これにより、ガス絶縁開閉装置は、アーク放電に対して高い信頼性を有する。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0063】
1,201…ガス絶縁開閉装置、12…タンク、12d…内径、15…導体、15d…外径、17…スペーサ(仕切部材)、19…絶縁ガス、20…下部領域、20t…厚さ、20y…第1範囲、21…上部領域、21t…厚さ、25…支持部材、27…外周部材、30…凹部、34…閉塞板、40…内周部材、50…袖部材、50y…第2範囲、60…放圧装置。