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特許7228544有効成分としてヤブラン(Liriope platyphylla)の抽出物を含む、ニコチン中毒の予防又は治療用の組成物
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  • 特許-有効成分としてヤブラン(Liriope  platyphylla)の抽出物を含む、ニコチン中毒の予防又は治療用の組成物 図1
  • 特許-有効成分としてヤブラン(Liriope  platyphylla)の抽出物を含む、ニコチン中毒の予防又は治療用の組成物 図2A
  • 特許-有効成分としてヤブラン(Liriope  platyphylla)の抽出物を含む、ニコチン中毒の予防又は治療用の組成物 図2B
  • 特許-有効成分としてヤブラン(Liriope  platyphylla)の抽出物を含む、ニコチン中毒の予防又は治療用の組成物 図3
  • 特許-有効成分としてヤブラン(Liriope  platyphylla)の抽出物を含む、ニコチン中毒の予防又は治療用の組成物 図4
  • 特許-有効成分としてヤブラン(Liriope  platyphylla)の抽出物を含む、ニコチン中毒の予防又は治療用の組成物 図5
  • 特許-有効成分としてヤブラン(Liriope  platyphylla)の抽出物を含む、ニコチン中毒の予防又は治療用の組成物 図6
  • 特許-有効成分としてヤブラン(Liriope  platyphylla)の抽出物を含む、ニコチン中毒の予防又は治療用の組成物 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】有効成分としてヤブラン(Liriope platyphylla)の抽出物を含む、ニコチン中毒の予防又は治療用の組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/88 20060101AFI20230216BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20230216BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 25/34 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230216BHJP
   A61K 125/00 20060101ALN20230216BHJP
   A61K 127/00 20060101ALN20230216BHJP
   A61K 131/00 20060101ALN20230216BHJP
   A61K 133/00 20060101ALN20230216BHJP
   A61K 135/00 20060101ALN20230216BHJP
【FI】
A61K36/88
A23L33/105
A61P3/04
A61P25/20
A61P25/22
A61P25/24
A61P25/34
A61P43/00 111
A61K125:00
A61K127:00
A61K131:00
A61K133:00
A61K135:00
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020098119
(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公開番号】P2020200320
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2020-07-09
(31)【優先権主張番号】10-2019-0067288
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】301040648
【氏名又は名称】コーリア リサーチ インスティテュート オブ ケミカル テクノロジー
(73)【特許権者】
【識別番号】516373203
【氏名又は名称】リパブリック オブ コリア(マネージメント ルーラル デベロップメント アドミニストレーション)
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュンウク セオ
(72)【発明者】
【氏名】ミンハン カ
(72)【発明者】
【氏名】イン ソ リュ
(72)【発明者】
【氏名】テ ワン キム
(72)【発明者】
【氏名】リ ナ リム
(72)【発明者】
【氏名】デ ユン リー
(72)【発明者】
【氏名】ユン-ソブ リー
(72)【発明者】
【氏名】ゲウム-ソグ キム
(72)【発明者】
【氏名】ダヒェ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ジェ-スク バン
【審査官】菊池 美香
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第2009-0106844(KR,A)
【文献】J Food Sci Nutr, 2003, Vol.8, pp.289-293
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/88
A23L 33/105
A61P 3/04
A61P 25/20
A61P 25/22
A61P 25/24
A61P 25/34
A61P 43/00
A61K 125/00
A61K 127/00
A61K 131/00
A61K 133/00
A61K 135/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分としてヤブランの抽出物のみを含む、ニコチン中毒の予防又は治療用の医薬組成物。
【請求項2】
前記抽出物がヤブランの花、葉、茎、実、及び根からなる群から選択されるいずれか1種から抽出されている、請求項1に記載のニコチン中毒の予防又は治療用の医薬組成物。
【請求項3】
前記ニコチン中毒が、耐性、欲求及び離脱症状からなる群から選択されるいずれか1つである、請求項1に記載のニコチン中毒の予防又は治療用の医薬組成物。
【請求項4】
前記離脱症状が、抑うつ、不安、不眠症及び体重増加からなる群から選択されるいずれか1つである、請求項に記載のニコチン中毒の予防又は治療用の医薬組成物。
【請求項5】
前記抽出物が、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)タンパク質の発現を低減する、請求項1に記載のニコチン中毒の予防又は治療用の医薬組成物。
【請求項6】
前記抽出物が、ドーパミントランスポーター(DAT)タンパク質の発現を増加させる、請求項1に記載のニコチン中毒の予防又は治療用の医薬組成物。
【請求項7】
前記抽出物が、ニコチンによって増加した自発運動活性を抑制する、請求項1に記載のニコチン中毒の予防又は治療用の医薬組成物。
【請求項8】
有効成分としてヤブランの抽出物のみを含む、ニコチン中毒の予防又は改善用の健康機能性食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1. 技術分野
本発明は、有効成分としてヤブラン(Liriope platyphylla)の抽出物を含む、ニコチン中毒の予防又は治療用の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
2. 背景技術
保健福祉部の報告によると、韓国の成人人口の22.6%(男性39.3%、女性5.5%)が慢性的に喫煙することが知られている。喫煙により引き起こされる有害物質への曝露により、平均余命は、約8~10年短縮され、現在、喫煙は、がんの主要な原因として挙げられている。統計的に、がんによる死亡者の3人に1人が喫煙者である。特に、韓国の男性の肺がんの90%が喫煙に起因していることが知られている。さらに、喫煙は、種々のがん、例えば膀胱がん、膵臓がん、咽頭がん、子宮頸がん、及び食道がんの発症に直接的又は間接的に関与することが知られている。
【0003】
喫煙の悪影響にもかかわらず、喫煙を継続する理由は、ニコチンの中毒性である(Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci、2008)。ニコチン中毒は、耐性、欲求、離脱症状、やめられない、並びに社会的及び職業上の能力の減退などの症状を示す。ニコチン離脱は、抑うつ、不眠症、不安、恐れ、落ち着きのなさ、体重増加、及び心拍数の低下などの症状を引き起こす。
【0004】
喫煙時、ニコチンは身体のあらゆる部分を介して即時に吸収され、約7秒後に脳に到達し、急速に作用し、ニコチンのこの即効作用が、喫煙行動を正に増強させる。ニコチンは、脳に到達し、ニコチン性アセチルコリン受容体に作用してコリン作動性神経伝達を強化させる。特に、ニコチンは、中脳辺縁系ドーパミン系内のニコチン性アセチルコリン受容体に直接作用することによって、腹側被蓋野から側坐核へのドーパミン放出を促進し、報酬及び幸福感を誘発する。いくつかの実験的証拠によると、ニコチンは、他の中毒性薬物の作用と類似の神経化学的かつ機能的作用を有している。特に、ニコチンによるドーパミン作動性神経伝達の増大は、ニコチン中毒症状を引き起こす上で重要な役割を果たす。
【0005】
ドーパミン(4-(2-アミノエチル)ベンゼン-1,2-ジオール)は、カテコールアミン系有機化合物であり、中枢神経系にみられる神経伝達物質である。ドーパミンは、主としてニューロン及び副腎髄質細胞において合成される。ドーパミンについて、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)を使用してチロシンからL-DOPAが合成され、次いでDOPAデカルボキシラーゼを使用して、ドーパミンが産生される。ニューロンで産生されたドーパミンは、シナプス小胞キャリアによって神経終末に輸送され、そこで貯蔵される。ドーパミンが、適切な電気刺激によって放出されると、それは、後シナプスニューロンに存在するドーパミン受容体と結合し、その結果ドーパミン受容体媒介シグナル伝達が生じる。放出されたドーパミンは、ドーパミントランスポーター(DAT)タンパク質によって前シナプスニューロンに再取り込みされる。ニコチンのような物質は、ドーパミンを合成するチロシンヒドロキシラーゼ(TH)を増加させ、ドーパミントランスポーター(DAT)の作用を抑制し、それによってシナプス間隙のドーパミン濃度を増加させ、覚醒効果を示す。
【0006】
ヤブランは、ユリ科に属する多年生植物であり、根茎及び種子で繁殖する植物である。韓国では、主として500m以下の低い標高に分布し、その葉は通年常緑である(Huh、M. K.、H. W. Huh、J. S. Choi、及びB. K. Lee (2007) Genetic diversity and population structure of Liriope platyphylla (Liliaceae) in Korea、J. Life Sci. 17、328~333)。ヤブランは、韓国及び中国において解熱、利尿、強壮、抗炎症、鎮咳、及び去痰作用を有することが昔から知られており、主として、生薬において感冒のような疾患を治療するために使用されている。ヤブランは、糖尿病治療、記憶増強、微生物抑制、及び炎症抑制のような機能を有することが知られており、最近では多くの研究が行われている。これらの作用の中で、抗微生物薬及び抗炎症薬としての機能は、最も長い期間研究されてきた分野である。喘息のマウスモデルにおいて、ヤブランは、気道の炎症及び過敏性を阻害する作用を示し、またTh1/Th2のサイトカインの不均衡を調節する免疫調節剤としての機能が知られていた(Krentz、A. J.、M. B Patel、及びC. J. Bailey、2008、New drugs for type 2 diabetes mellitus: what is their place in therapy Drugs 68、2131~2162)。さらに、ヤブランは、神経成長因子の分泌を促進することによってニューロンの活性化を誘導した(Hurら、2004、Induction of nerve growth factor by butanol fraction of Liriope platyphylla in C6 and primary astrocyte cells、Biological and Pharmaceutical Bulletin、1257~1260)。ニコチン中毒症状の予防及び治療に関連する特許は以下の通りである:ニコチン中毒及び離脱症状の予防及び治療のためのアカネ(Rubia akaneNakai)の抽出物を含む組成物(韓国特許第10-0676403号)、ニコチン中毒及び離脱症状の予防及び治療のためのサンソウニン(Zizyphi spinosi Semen)の抽出物を含む組成物(韓国特許第10-0663181号)、ニコチン中毒及び離脱症状の予防及び治療のためのカラトウキ(Angelica sinensis)から単離された低級アルコール溶解性抽出物又は精油画分を含む医薬組成物(韓国特許第10-0571852号)、ニコチン中毒及び離脱症状の予防及び治療のためのオニノダケ(Angelica gigas Nakai)から単離された低級アルコール溶解性抽出物を含む医薬組成物(韓国特許第10-0571853号)、ニコチン中毒及び離脱症状の予防及び治療のためのトウキ(Angelica acutloba)から単離された低級アルコール溶解性抽出物又は精油画分を含む医薬組成物(韓国特許第10-0571851号)、並びに、緑茶抽出物及び紅茶抽出物を含有するニコチンを解毒するための組成物とその調製方法(韓国特許第10-1900304号)。
【0007】
しかしながら、これまでのところ、ニコチン中毒症状の改善に対するヤブランの効果を開示した文献は報告されていない。さらに、ヤブランに関連するニコチン中毒症状の予防又は治療のための組成物及び健康機能性食品の特許は、今日まで知られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、有効成分としてヤブランの抽出物を含む、ニコチン中毒の予防又は治療用の医薬組成物を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、有効成分としてヤブランの抽出物を含む、ニコチン中毒の予防又は改善用の健康機能性食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、有効成分としてヤブランの抽出物を含む、ニコチン中毒の予防又は治療用の医薬組成物を提供する。
【0011】
本発明はまた、溶媒として、水、C1~C2の低級アルコール、又はその混合物を使用して抽出されたヤブラン抽出物を有効成分として含む、ニコチン中毒の予防又は治療用の医薬組成物を提供する。
【0012】
本発明はまた、有効成分としてヤブランの花、葉、茎、実、及び根からなる群から選択されるいずれか1種を使用して抽出されたヤブラン抽出物を含む、ニコチン中毒の予防又は治療用の医薬組成物を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、有効成分としてヤブランの抽出物を含む、ニコチン中毒の予防又は改善用の健康機能性食品を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、有効成分としてヤブランの抽出物を含む、ニコチン中毒の予防又は治療用の医薬組成物に関する。ヤブラン抽出物は、ニコチンによって増加したチロシンヒドロキシラーゼ(TH)タンパク質の発現を正常レベルまで低減し、また、ニコチンによって低下したドーパミントランスポーター(DAT)タンパク質の発現を、正常レベルまで増加させ、かつニコチン中毒によって増加した自発運動活性を著しく抑制する効果を示す。したがって、ヤブラン抽出物は、ニコチン中毒の予防及び治療のための医薬組成物の有効成分として有効に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、ヤブラン抽出物の処置濃度に応じた、PC-12細胞の生存率を確認するために行われたMTTアッセイの結果を示す図である。
図2A図2aは、PC-12細胞をヤブラン抽出物で濃度別に処置した後の細胞生存率を示す図である。0: ヤブラン抽出物非処置群、1: 1μg/mlの濃度でヤブラン抽出物により処置されたPC-12細胞、10: 10μg/mlの濃度でヤブラン抽出物により処置されたPC-12細胞、100: 100μg/mlの濃度でヤブラン抽出物により処置されたPC-12細胞、1000: 1000μg/mlの濃度でヤブラン抽出物により処置されたPC-12細胞。
図2B図2bは、PC-12細胞をニコチンで濃度別に処置した後の細胞生存率を示す図である。0: ニコチン非処置群、1: 1μMの濃度でニコチンにより処置されたPC-12細胞、10: 10μMの濃度でニコチンにより処置されたPC-12細胞、100: 100μMの濃度でニコチンにより処置されたPC-12細胞、1000: 1000μMの濃度でニコチンにより処置されたPC-12細胞。
図3図3は、ヤブラン抽出物で処置されたPC-12細胞中のチロシンヒドロキシラーゼ(TH)タンパク質及びドーパミントランスポーター(DAT)タンパク質の発現レベルを示す図である。
図4図4は、ニコチン処置によって増加したチロシンヒドロキシラーゼ(TH)タンパク質の発現に対するヤブラン抽出物の回復効果を示す図である。
図5図5は、ニコチン処置によって低下したドーパミントランスポーター(DAT)タンパク質の発現に対するヤブラン抽出物の回復効果を示す図である。
図6図6は、ニコチン処置によって増加した自発運動活性に対するヤブラン抽出物の低減効果を示す図である。0+SAL: 生理食塩液を投与されたラット、200+SAL: 200mg/mlのヤブラン抽出物及び1ml/kgの生理食塩液を投与されたラット、400+SAL: 400mg/mlのヤブラン抽出物及び1ml/kgの生理食塩液を投与されたラット、0+NIC: 1ml/kgの0.4mg/mlニコチンを投与されたラット、200+NIC: 200mg/mlのヤブラン抽出物及び1ml/kgの0.4mg/mlニコチンを投与されたラット、400+NIC: 400mg/mlのヤブラン抽出物及び1ml/kgの0.4mg/mlニコチンを投与されたラット。
図7図7は、10分ごとにラットの自発運動活性を測定することによる、ニコチン中毒ラットの自発運動活性に対するヤブラン抽出物の低減効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書において以下、本発明に使用される用語を説明する。
【0017】
本発明において使用される用語「中毒」は、有害物質により引き起こされる耐性、欲求及び離脱症状の症状を意味する。
【0018】
本発明において使用される用語「耐性」は、中毒状態で以前と同じ満足感を経験するためには、より強度の高い又はより長く続く刺激を必要とすることを意味する。
【0019】
本発明において使用される用語「欲求」は、中毒状態で特定の標的行動又は思考につながるように動機付けられた状態を意味する。
【0020】
本発明において使用される用語「離脱症状」は、中毒状態でその強迫行動を止められた場合に起こる耐えがたい苦痛の症状を意味する。
【0021】
本発明において使用される用語「予防」は、本発明の組成物の投与によって、ニコチン中毒を回避又は最小化する任意の作用を意味する。
【0022】
本発明において使用される用語「治療」及び「改善」は、本発明の組成物の投与によって、中毒症状を改善又は有利に変化させる、すべての作用を意味する。
【0023】
本発明において使用される用語「投与」は、本発明の組成物を、任意の適切な様式で提供することを意味する。
【0024】
本明細書では以下、本発明を詳細に説明する。
【0025】
本発明は、有効成分としてヤブランの抽出物を含む、ニコチン中毒の予防又は治療用の医薬組成物を提供する。
【0026】
ヤブラン抽出物は、好ましくは、以下の工程:
1)抽出溶媒を添加することによってヤブランを抽出する工程、
2)工程2)の抽出物を、ろ過する工程、及び
3)工程3)のろ過された抽出物を減圧下で濃縮し、そしてそれを乾燥させることによってヤブランの抽出物を調製する工程
を含む調製方法によって調製されるが、必ずしもそれに限定されない。
【0027】
上記の調製方法において、工程1)のヤブランは、培養又は購入のいずれかによって得られる。
【0028】
上記の調製方法において、工程1)のヤブランは、花、葉、茎、実、及び根からなる群から選択される任意の1種以上の部分であり得るが、必ずしもそれに限定されない。
【0029】
本発明の特定の実施形態によれば、ヤブランの根が好ましい。
【0030】
上記の調製方法において、工程1)の抽出溶媒は、水、アルコール、又はその混合物でもよい。前記アルコールは、好ましくはC1~C2低級アルコールである。本明細書において低級アルコールは、好ましくはメタノール又はエタノールである。エタノールは、合成の、エチルアルコール又はエタノールでもよい。さらに、エタノールは、20%~70%エタノールであり得るが、必ずしもそれに限定されない。
【0031】
上記の調製方法において、工程1)の抽出方法は、振とう抽出、ソックスレー抽出、又は還流抽出でもよい。このとき、抽出温度は、40~95℃、好ましくは50~90℃、より好ましくは60~85℃とし得るが、必ずしもそれに限定されない。抽出時間は、1~20時間、好ましくは2~10時間、より好ましくは4~8時間であるが、必ずしもそれに限定されない。抽出は、好ましくは1~5回反復され、より好ましくは1~3回反復されるが、必ずしもそれに限定されない。抽出温度、抽出時間、又は抽出回数の条件外の範囲では十分に抽出を行うことができないので、ヤブラン抽出物中の有効成分の含有量が減少することがあり得る。あるいは、抽出収率がそれ以上増加しないため、抽出効率が低下することがあり得る。
【0032】
上記の調製方法において、工程3)における減圧下での濃縮は、好ましくは真空濃縮器又は真空ロータリーエバポレーターを使用することによって行われる。乾燥は、好ましくは、減圧乾燥、真空乾燥、沸騰乾燥、噴霧乾燥、又は凍結乾燥によって行われるが、必ずしもそれに限定されない。本発明の特定の実施形態では、乾燥は好ましくは、凍結乾燥によって行われる。
【0033】
中毒症状は、耐性、欲求、及び離脱症状からなる群から選択されるいずれか1つであり得るが、必ずしもそれに限定されない。
【0034】
離脱症状は、抑うつ、不安、不眠症、及び体重増加からなる群から選択されるいずれか1つであり得るが、必ずしもそれに限定されない。
【0035】
上記抽出物は、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)タンパク質の発現を低減する。
【0036】
チロシンヒドロキシラーゼ(TH)タンパク質は、L-チロシンに作用し、ヒドロキシ化を引き起こす酵素である。L-チロシンがヒドロキシ化されると、ドーパミンの前駆体であるL-DOPAが生成され、L-DOPAから、DOPAデカルボキシラーゼを使用してドーパミンが産生される。ニコチンは、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)の発現を増加させ、ドーパミンの産生を増加させる機序を介して中毒を引き起こす。したがって、ヤブラン抽出物は、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)タンパク質の発現を低減することによって、ニコチン中毒に対して改善効果を示し得る。
【0037】
上記抽出物は、ドーパミントランスポーター(DAT)タンパク質の発現を増加させる。
【0038】
ニューロンで産生されたドーパミンは、シナプス小胞キャリアによって神経終末に輸送され、そこで貯蔵される。適切な電気刺激によってドーパミンが放出されると、ドーパミンはシナプス後ニューロンに存在するドーパミン受容体と結合し、シグナル伝達がもたらされる。使用されたドーパミンは、ドーパミントランスポーター(DAT)タンパク質によってシナプス前ニューロンへと回復する。ニコチンは、ドーパミントランスポーター(DAT)の作用を阻害して、ドーパミンの再取り込みを抑制し、それによってシナプス間隙のドーパミン濃度を増加させる。したがって、ヤブラン抽出物は、ドーパミントランスポーター(DAT)の発現を増加させてドーパミンの再吸収を促進させることができ、このようにしてニコチン中毒に対する改善効果を示すことができる。
【0039】
上記抽出物は、ニコチンによって増加した自発運動活性を抑制する。
【0040】
ニコチンの反復投与は、自発運動活性の増加によって生ずる行動的増感現象を引き起こす。行動的増感現象とは、少量の中毒性薬物が反復して間欠的に処置される場合に、げっ歯類の自発運動活性及び常同活性が徐々に増加する現象である。行動的増感現象は、活性の漸増が誘導される状態である発症と、いったん誘導された高活性レベルが比較的長期間にわたり維持される状態である発現とからなる。行動的増感現象は、薬物中毒の発症及び薬物性精神神経症の指標として使用される。中毒性薬物による行動的増感現象を担う神経基質は、中枢ドーパミンニューロンとその標的領域の側坐核及び線条体であることが、一般に知られている。ニコチンによる行動的増感現象は、主として2種の系、特に、腹側被蓋野(VTA)から始まり外側核及び嗅結節にある標的部で終わる中脳辺縁ドーパミン系によって媒介される。
【0041】
本発明の好ましい実施形態において、ヤブランの根を乾燥させ、2.1Lの水を300gの乾燥ヤブラン根に添加し、それを、還流装置中、80℃で4時間にて、2回抽出した。還流及びろ過の後、抽出物を減圧下で乾燥凍結させた。その結果、65%の収率で、ヤブランの温水抽出物197gを得た。
【0042】
一方、ヤブラン根を乾燥させ、2.1Lの30%エタノール(v/v)を300gの乾燥ヤブラン根に添加し、それを、還流装置中、70℃で4時間にて、2回抽出した。還流及びろ過の後、抽出物を減圧下で乾燥凍結させた。その結果、63%の収率で、ヤブランの30%エタノール抽出物191gを得た。
【0043】
一方、ヤブラン根を乾燥させ、2.1Lの50%エタノール(v/v)を300gの乾燥ヤブラン根に添加し、それを、還流装置中、60℃で4時間にて、2回抽出した。還流及びろ過の後、抽出物を減圧下で乾燥凍結させた。その結果、57%の収率で、ヤブランの50%エタノール抽出物171gを得た。
【0044】
本発明者らは、ヤブラン抽出物で処置した群におけるチロシンヒドロキシラーゼ(TH)タンパク質の発現が、ニコチンで処置した群と比べて低下し、それによって、ニコチンによって増加したチロシンヒドロキシラーゼ(TH)タンパク質の発現レベルを正常レベルまで回復させることを確認した(図3及び4参照)。
【0045】
本発明者らはまた、ヤブラン抽出物で処置した群におけるドーパミントランスポーター(DAT)タンパク質の発現が、ニコチンで処置した群と比べて増加し、それによって、ニコチンによって低下したドーパミントランスポーター(DAT)タンパク質の発現レベルを正常レベルまで回復させることを確認した(図3及び5参照)。
【0046】
さらに、本発明者らは、ニコチンとヤブラン抽出物を同時に投与された群における自発運動活性が、ニコチン投与によって自発運動活性が増加した群と比べて顕著に低下し、したがってヤブラン抽出物はニコチン中毒行動を緩和できることを確認した。
【0047】
ヤブラン抽出物は、ニコチンにより増加したチロシンヒドロキシラーゼ(TH)タンパク質の発現を、正常レベルまで低減し、ニコチンによって低下したドーパミントランスポーター(DAT)タンパク質の発現を、正常レベルまで増加させ、ニコチン中毒ラットにおいて増加した自発運動活性を顕著に抑制する効果を示した。したがって、ヤブラン抽出物は、ニコチン中毒の予防及び治療のための医薬組成物の有効成分として有効に使用し得る(図6及び7参照)。
【0048】
本発明の組成物は、医薬組成物の調製に一般的に使用される、適切な担体、賦形剤、及び希釈剤をさらに含むことができる。
【0049】
本発明の組成物は、経口又は非経口で投与することができ、非経口投与は、外用、腹腔内注射、直腸内注射、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、又は胸腔内注射を含むが、必ずしもそれに限定されない。
【0050】
本発明の組成物は、経口投与のために、例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、及びエアロゾル剤に製剤化してもよいし、非経口投与のために、例えば外用剤、座薬、及び無菌注射剤等に製剤化してもよい。上記の組成物中に含み得る、担体、賦形剤、及び希釈剤の例には、ラクトース、ブドウ糖、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアガム、アルギネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び鉱物油が挙げられる。製剤は、一般的に使用される賦形剤又は希釈剤、例えば、フィラー、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、及び界面活性剤を使用して調製することができる。経口投与用の固形製剤は、錠剤、丸薬、散剤、顆粒剤、及びカプセル剤である。これらの固形製剤は、1種以上の適切な賦形剤、例えば、デンプン、炭酸カルシウム、スクロース、又はラクトース、ゼラチン等を混合することによって調製される。単純な賦形剤以外に、滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク等を使用し得る。経口投与用の液体製剤は、懸濁剤、水剤、乳剤、及びシロップ剤であり、上記の製剤は、一般的に使用される単純な希釈剤、例えば水及び流動パラフィンに加えて、種々の賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、及び保存剤を含有し得る。非経口投与用の製剤は、滅菌水溶液、水不溶性賦形剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、座薬、及び注射である。水不溶性賦形剤及び懸濁剤は、1種又は複数の活性化合物に加えて、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、オレイン酸エチル(ethylolate)などの注射可能なエステル等を含有してもよい。座薬は、1種又は複数の活性化合物に加えて、witepsol、macrogol、tween 61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチン等を含有してもよい。
【0051】
本発明の組成物は、経口又は非経口により投与することができ、非経口投与は、腹腔内注射、直腸内注射、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、又は胸腔内注射を含む。
【0052】
本発明の組成物の好ましい投薬量は、患者の状態及び体重、疾患の重症度、剤形、投与経路、並びに期間に応じて当業者により決定され得る。本発明の組成物の有効な投薬量は、好ましくは1日当たり0.0001~1g/kg、より好ましくは1日当たり0.001~200mg/kgであるが、必ずしもそれに限定されない。投与頻度は、1日1回、又は1日数回でもよい。投与頻度は、1日1回、又は1日に数回である。その投薬量は、本発明の範囲を制限することは決してない。
【0053】
本発明の組成物は、単独で又は他の治療剤と併用で投与してもよい。併用投与においては、投与は順次であっても同時であってもよい。
【0054】
さらに、本発明は、有効成分としてヤブランの抽出物を含む、ニコチン中毒の予防及び改善用の健康機能性食品を提供する。
【0055】
上記抽出物は、好ましくは、ヤブランの花、葉、茎、実、及び根からなる群から選択されるいずれか1種の抽出物であるが、必ずしもそれに限定されない。
【0056】
中毒は、耐性、欲求、及び離脱症状からなる群から選択されるいずれか1つであり得るが、必ずしもそれに限定されない。
【0057】
離脱症状は、抑うつ、不安、不眠症、及び体重増加からなる群から選択されるいずれか1つであり得るが、必ずしもそれに限定されない。
【0058】
上記抽出物は、ニコチンによって増加したチロシンヒドロキシラーゼ(TH)タンパク質の発現を低減する。
【0059】
上記抽出物は、ニコチンによって低下したドーパミントランスポーター(DAT)タンパク質の発現を増加させる。
【0060】
上記抽出物は、ニコチンによって増加した自発運動活性を抑制する。
【0061】
ヤブラン抽出物は、ニコチンにより増加したチロシンヒドロキシラーゼ(TH)タンパク質の発現を正常レベルまで低減し、また、ニコチンによって低下したドーパミントランスポーター(DAT)タンパク質の発現を、正常レベルまで増加させ、そして、ニコチン中毒ラットにおいて増加した自発運動活性を顕著に抑制する効果を示した。したがって、ヤブラン抽出物は、ニコチン中毒の予防及び治療のための医薬組成物の有効成分として有効に使用することができる(図6及び7)。
【0062】
本明細書において、「健康機能性食品」は、日々の食事若しくは原材料で頻繁に不足するような栄養素又は人体に有用な機能を有する成分を補充することにより製造された食品を指す。これは、人体の健康を維持することに役立つ食品を意味するが、必ずしもそれに限定されず、任意の健康食品全般を含むことができる。
【0063】
健康機能性食品の形態及び種類は、特に限定されない。具体的には、健康機能性食品は、錠剤、カプセル、散剤、顆粒剤、液剤、及び丸薬の形態でもよい。健康機能性食品は、種々の香味剤、甘味剤、又は天然糖質をさらに含んでもよい。甘味剤は、天然甘味剤、例えば、ソーマチン及びステビア抽出物、又は合成甘味剤、例えばサッカリン及びアスパルテームであり得る。上記の天然糖質は、単糖類、二糖類、多糖類、オリゴ糖、及び糖アルコールであり得る。
【0064】
上記の成分に加えて、本発明の健康機能性食品は、様々な栄養素、ビタミン、ミネラル、香味剤、着色剤、ペクチン酸とその塩、アルギン酸とその塩、有機酸、保護コロイド状増粘剤、pH調節剤、安定剤、防腐剤、グリセリン、アルコール等を含んでもよい。記載のすべての成分は、単独で又は併用で添加され得る。これらの成分の混合比は、本発明の組成物の100重量部当たり0.01~0.1重量部から選択することができる。
【0065】
本発明のヤブラン抽出物は、そのまま、又は他の食品若しくは食品成分と混合して添加してもよい。有効成分の含有量は、使用目的に応じて調節してもよい。総じて、健康機能性食品中の含有量は、食品の総重量のうちの0.01~90重量部であり得る。しかしながら、長期間の投与が健康及び衛生、又は健康状態の調節に必要とされる場合に、含有量は上記の含有量より少量であってもよいが、アラザイムは極めて安全であることが立証されているので、より多い含有量も同様に許容され得る。
【実施例
【0066】
以下に、下記の実施例及び実験例によって、本発明を詳細に記載する。
【0067】
しかしながら、以下の実施例及び実験例は本発明を説明するものにすぎず、本発明の内容は、それらに限定されない。
【0068】
[実施例1]
ヤブラン温水抽出物の調製
ヤブラン根を乾燥させ、2.1Lの水を300gの乾燥ヤブラン根に添加し、それを、還流装置中、80℃で4時間にて、2回抽出した。還流及びろ過の後、抽出物を減圧下で乾燥凍結させた。その結果、65%の収率で、ヤブランの温水抽出物197gを得た。
【0069】
[実施例2]
ヤブランエタノール抽出物の調製
<2-1>ヤブラン30%エタノール抽出物の調製
ヤブラン根を乾燥させ、2.1Lの30%エタノール(v/v)を300gの乾燥ヤブラン根に添加し、それを、還流装置中、70℃で4時間にて、2回抽出した。還流及びろ過の後、抽出物を減圧下で乾燥凍結させた。その結果、63%の収率で、ヤブランの30%エタノール抽出物191gを得た。
【0070】
<2-2>ヤブラン50%エタノール抽出物の調製
ヤブラン根を乾燥させ、2.1Lの50%エタノール(v/v)を300gの乾燥ヤブラン根に添加し、それを、還流装置中、60℃で4時間にて、2回抽出した。還流及びろ過の後、抽出物を減圧下で乾燥凍結させた。その結果、57%の収率で、ヤブランの50%エタノール抽出物171gを得た。
【0071】
実験例1:ニコチン及びヤブラン抽出物の濃度に応じた神経細胞株(PC-12細胞株)の細胞生存率の測定
ニコチン及びヤブラン抽出物の処置濃度に応じた神経細胞株(PC-12細胞株)の細胞生存率を、MTTアッセイによって測定した。
【0072】
具体的には、PC-12細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)、5%ウマ血清、及び1%抗生物質(Thermo fisher、カタログ番号15140122)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で、37℃、5%CO2インキュベーター中で培養した。培養したPC-12細胞を、96ウェルプレートに1×104細胞/ウェルの密度で分布させ、同じ培地及び条件で24時間さらに培養した。次いでPC-12細胞を、ニコチン(1、10、100、及び1000μM/ml)及び実施例1のヤブラン抽出物(1、10、100、及び1000μg/ml)のそれぞれで24時間処置した。その後、20μlの色素溶液(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム、分子内塩MTS)を、プレートの各ウェルに添加し、それを37℃で1時間培養した。反応を終了させるために、25μlの10%SDS(停止液)をプレートの各ウェルに添加し、490nmでOD(光学濃度)を測定した。濃度に応じた細胞生存率を、対照群に対する濃度%として表し、結果を図2a及び2bに示す。
【0073】
その結果、図2aに示されるように、細胞毒性はヤブラン抽出物の処置濃度がμg/mlになるまで現れないことを確認した。
【0074】
さらに、図2bに示されるように、細胞毒性は、ニコチンの処置濃度が増加しても、現れないことを確認した。
【0075】
実験例2:ヤブラン抽出物処置に応じたチロシンヒドロキシラーゼ(TH)タンパク質及びドーパミントランスポーター(DAT)タンパク質の発現レベルの測定
PC-12細胞におけるニコチンにより制御されたチロシンヒドロキシラーゼ(TH)タンパク質及びドーパミントランスポーター(DAT)タンパク質の発現に対するヤブラン抽出物の効果を確認するために、ウェスタンブロッティングを行った。
【0076】
具体的には、PC-12細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)、5%ウマ血清、及び1%抗生物質(Thermo fisher、カタログ番号15140122)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で、37℃、5%CO2インキュベーター中で培養した。培養したPC-12細胞を、6ウェルプレートに1×104細胞/ウェルの密度で分布させ、24時間さらに培養した。PC-12細胞を、10μg/mlのニコチン、ヤブラン抽出物、又はその両方で処置し、24時間静置した。ニコチン又はヤブラン抽出物で処置した神経細胞株(PC-12細胞株)を、4℃で30分間、RIPA緩衝液で処置し、13000rpmで30分間の遠心分離によって得た上清からタンパク質を分離した。次いで、試料を、BCAタンパク質定量キット(Thermo fisher、カタログ番号23225)を使用して定量した。試料を10%SDS-PAGEで電気泳動し、タンパク質をPVDF膜に湿式で転写した。膜を5%ウシ血清アルブミン(BSA)ブロッキング溶液に入れ、室温で1時間反応させた。ブロッキング溶液を除去した後、膜をチロシンヒドロキシラーゼ、ドーパミントランスポーター、及びβ-アクチン(TBS-T中、1:1000)と、4℃で終夜反応させた。膜を二次抗体と室温で1時間反応させ、ECLウェスタンブロッティング基質(Thermo fisher、カタログ番号32209)を使用してタンパク質発現を観察した。ニコチン及び/又はヤブラン抽出物の濃度に応じた、チロシンヒドロキシラーゼ及びドーパミントランスポーターの発現レベルを、対照群に対する発現%として表し(表1及び2)、結果を図4及び5に示す。
【0077】
その結果、図4に示されるように、ヤブラン抽出物処置群におけるチロシンヒドロキシラーゼ(TH)タンパク質の発現は、ニコチン処置群における発現と比べて低下し、正常レベルまで回復した。ヤブラン抽出物処置群におけるドーパミントランスポーター(DAT)タンパク質の発現レベルは、ニコチン処置群における発現レベルと比べて増加し、正常レベルまで回復した(図5)。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
[実施例3]
実験動物の準備
体重230~260gのSprague-Dawley雄ラットを購入した(Orient Bio)。韓国毒性学会(Korean Institute of Toxicology)の動物飼育室内の管理条件(温度23±3℃、湿度30~70%、明/暗サイクル12/12時間)でラットを飼育した。実験開始まで、食物及び水を自由に摂取できるように十分な食物及び水をラットに与えた。さらに、測定装置箱への曝露に対するストレスなどの環境要因に関する可変要素を最小化するために、実験開始前の少なくとも3日間、1日当たり30分間、Sprague-Dawley雄ラットを自発運動活性測定装置箱内で馴らした。
【0081】
実験例3:自発運動活性の測定
ヤブラン抽出物が、ニコチンによって自発運動活性を増加させるニコチン中毒現象を抑制できるかどうかを調べた。
【0082】
実験動物の自発運動活性を、赤外線デジタルカメラ(Med associates、USA)で記録した後、Ethovision XT14(Nodlus、Netherland)を使用してビデオトラッキングソフトウェアで定量化した。
【0083】
具体的には、0、200、及び400mg/mlのヤブラン抽出物を、自発運動活性測定の1時間前に、1ml/kgの濃度で経口投与した。経口投与の30分後、実施例3のSprague-Dawley雄ラットを、3lxの照度を有するマット加工透明アクリルケース(43.38cm×43.38cm×30.28cm)に入れ、続いて、30分間馴化させた。馴化後、0.4mg/mlのニコチンを1ml/kgの濃度で腹腔内投与し、実験動物の動きを赤外線デジタルカメラで60分間記録した。黒色の背景に対して白色の被写体という対比の原理を使用し、Ethovision XT14(Nodlus、Netherland)を使用してビデオトラッキングソフトウェアで白色実験動物像の中央点を毎秒数回認識することによって自発運動活性の軌跡をデータ化(dataized)した。次いで、ラットの移動距離(cm)を定量化した(表3)。
【0084】
その結果、ニコチンによって増加した自発運動活性は、ヤブラン抽出物を投与されたラットにおいて有意に抑制された(図6)。具体的には、ニコチン投与群ラットは、毎時約6000cmの自発運動活性を示し、生理食塩液の単独投与の対照群の自発運動活性3000cmと比べて、自発運動活性は有意に増加した。一方、ニコチンと400mg/kg及び200mg/kgの実施例1のヤブラン抽出物を投与した群のラットの自発運動活性は、それぞれ、約2000cm及び3300cmに低下した。結果は、ヤブラン抽出物が、ニコチン中毒行動を緩和することができることを示す。
【0085】
【表3】
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7