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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】断線診断装置および断線診断方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/54 20200101AFI20230216BHJP
【FI】
G01R31/54
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021033209
(22)【出願日】2021-03-03
(65)【公開番号】P2022134220
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2022-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 全寛
(72)【発明者】
【氏名】福本 憲作
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 泰盛
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-356556(JP,A)
【文献】特開昭61-003073(JP,A)
【文献】特開2010-230563(JP,A)
【文献】特開2003-240810(JP,A)
【文献】特開2010-256155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/50-31/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗とコンデンサとを含むフィルタを介してアナログ信号線に接続される入力ポートと、
前記入力ポートと電源との間に設けられる第1スイッチと、
前記入力ポートとグランドとの間に設けられる第2スイッチと、
前記アナログ信号線から前記入力ポートまでの間の断線の有無を判定する断線診断を行なう演算部とを備え、
前記演算部は、前記断線診断中において、
前記第1スイッチおよび前記第2スイッチが開いた状態における前記入力ポートの電圧を診断前電圧として測定し、
前記診断前電圧に基づいて前記第1スイッチおよび前記第2スイッチのどちらを診断用スイッチとするのかを決定し、
決定された前記診断用スイッチを第1時間継続して閉じた後、前記診断用スイッチを開き、
前記診断用スイッチを開いてから第2時間が経過した時点の前記入力ポートの電圧に基づいて前記断線の有無を判定する、断線診断装置。
【請求項2】
前記演算部は、前記電源の電圧よりも低い電圧を基準値として、前記診断前電圧が前記基準値以上である場合は前記第1スイッチを前記診断用スイッチとし、前記診断前電圧が前記基準値未満である場合は前記第2スイッチを前記診断用スイッチとする、請求項1に記載の断線診断装置。
【請求項3】
前記演算部は、前記電源の電圧よりも低い電圧を基準値として、前記診断前電圧が前記基準値以上である場合は前記第2スイッチを前記診断用スイッチとし、前記診断前電圧が前記基準値未満である場合は前記第1スイッチを前記診断用スイッチとする、請求項1に記載の断線診断装置。
【請求項4】
前記基準値は、前記電源の電圧の半分の値である、請求項2または3に記載の断線診断装置。
【請求項5】
前記演算部は、前記診断前電圧と前記電源の電圧との差が前記診断前電圧よりも大きい場合には前記第1スイッチを前記診断用スイッチとし、前記診断前電圧と前記グランドの電位との差が前記診断前電圧よりも小さい場合には前記第2スイッチを前記診断用スイッチとする、請求項1に記載の断線診断装置。
【請求項6】
抵抗とコンデンサとを含むフィルタを介してアナログ信号線に接続される入力ポートと、前記入力ポートと電源との間に設けられる第1スイッチと、前記入力ポートとグランドとの間に設けられる第2スイッチとを備える装置を用いて、前記アナログ信号線から前記入力ポートまでの間の断線の有無を判定する断線診断方法であって、
前記第1スイッチおよび前記第2スイッチが開いた状態における前記入力ポートの電圧を診断前電圧として測定するステップと、
前記診断前電圧に基づいて前記第1スイッチおよび前記第2スイッチのどちらを診断用スイッチとするのかを決定するステップと、
決定された前記診断用スイッチを第1時間継続して閉じた後、前記診断用スイッチを開くステップと、
前記診断用スイッチを開いてから第2時間が経過した時点の前記入力ポートの電圧に基づいて前記断線の有無を判定するステップとを含む、断線診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アナログ信号線の断線の有無を判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば特開昭61-3073号公報(特許文献1)には、アナログ信号線と、アナログ信号線に接続されるマイコンとを備えるシステムにおいて、アナログ信号線とマイコンとの接続部分の電圧を判定用電圧として、判定用電圧に基づいてアナログ信号線の断線の有無を検出する断線診断処理を行なう方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭61-3073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アナログ信号線とマイコンとの間には、ノイズ対策用としてRCフィルタが配置されている場合がある。この場合、RCフィルタに含まれるコンデンサの容量が大きいために、断線診断処理中において判定用電圧が収束するのに長い時間を要し、診断処理時間が長期化することが懸念される。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、アナログ信号線の断線診断に要する時間を短縮することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示による断線診断装置は、抵抗とコンデンサとを含むフィルタを介してアナログ信号線に接続される入力ポートと、入力ポートと電源との間に設けられる第1スイッチと、入力ポートとグランドとの間に設けられる第2スイッチと、アナログ信号線から入力ポートまでの間の断線の有無を判定する断線診断を行なう演算部とを備える。演算部は、断線診断中において、第1スイッチおよび第2スイッチが開いた状態における入力ポートの電圧を診断前電圧として測定し、診断前電圧に基づいて第1スイッチおよび第2スイッチのどちらを診断用スイッチとするのかを決定し、決定された診断用スイッチを第1時間継続して閉じた後、診断用スイッチを開き、診断用スイッチを開いてから第2時間が経過した時点の入力ポートの電圧に基づいて断線の有無を判定する。
【0007】
本開示による断線診断方法は、抵抗とコンデンサとを含むフィルタを介してアナログ信号線に接続される入力ポートと、入力ポートと電源との間に設けられる第1スイッチと、入力ポートとグランドとの間に設けられる第2スイッチとを備える装置を用いて、アナログ信号線から入力ポートまでの間の断線の有無を判定する断線診断方法である。この断線診断方法は、第1スイッチおよび第2スイッチが開いた状態における入力ポートの電圧を診断前電圧として測定するステップと、診断前電圧に基づいて第1スイッチおよび第2スイッチのどちらを診断用スイッチとするのかを決定するステップと、決定された診断用スイッチを第1時間継続して閉じた後、診断用スイッチを開くステップと、診断用スイッチを開いてから第2時間が経過した時点の入力ポートの電圧に基づいて断線の有無を判定するステップとを含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、アナログ信号線の断線診断に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】回路基板の構成の一例を模式的に示す図(その1)である。
図2】断線診断処理の一例を示すフローチャート(その1)である。
図3】断線診断処理中における入力ポートの電圧の変化の一例を示すタイミングチャート(その1)である。
図4】断線診断処理の一例を示すフローチャート(その2)である。
図5】断線診断処理中における入力ポートの電圧の変化の一例を示すタイミングチャート(その2)である。
図6】回路基板の構成の一例を模式的に示す図(その2)である。
図7】断線診断処理中における入力ポートの電圧の変化の一例を示すタイミングチャート(その3)である。
図8】回路基板の構成の一例を模式的に示す図(その3)である。
図9】断線診断処理中における入力ポートの電圧の変化の一例を示すタイミングチャート(その4)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0011】
<全体構成>
図1は、本実施の形態による回路基板1の構成の一例を模式的に示す図である。本実施の形態による回路基板1は、基板外部のサーミスタ2に接続される。なお、サーミスタ2は、温度に応じて抵抗値が変化する特性を有しており、対象物の温度検出などに用いることができる。
【0012】
回路基板1は、アナログ信号線LAと、電源13と、抵抗R2と、フィルタ(RCフィルタ)Fと、制御装置10とを備える。制御装置10は、本開示による断線診断装置に対応し得る。
【0013】
アナログ信号線LAの一端には、回路基板1の外部に設けられるサーミスタ2が接続される。電源13は、抵抗R2を介してアナログ信号線LAに接続される。アナログ信号線LAには、電源13の電圧Vを抵抗R2とサーミスタ2とによって分圧した電圧(アナログ信号)が印加される。したがって、アナログ信号線LAの電圧は、サーミスタ2の抵抗値に応じて変化する。
【0014】
フィルタFは、アナログ信号線LAと制御装置10との間に配置され、アナログ信号線LAから制御装置10に入力されるノイズを除去する。フィルタFは、抵抗R1とコンデンサCとの組合せによって実現され、抵抗R1の抵抗値とコンデンサCの容量とによって決まるカットオフ周波数を超える周波数の信号を除去するローパスフィルタ(RCフィルタ)として機能する。
【0015】
制御装置10は、入力ポート11と、電源12と、プルアップ用の第1スイッチS1と、プルダウン用の第2スイッチS2と、内部グランド15と、演算部20とを含む。入力ポート11は、フィルタFを介して、アナログ信号線LAに接続される。
【0016】
第1スイッチS1および第2スイッチS2は、電源12と内部グランド15との間に直列に接続される。入力ポート11は、第1スイッチS1と第2スイッチS2との接続ノードに接続される。すなわち、第1スイッチS1は、入力ポート11と電源12との間に設けられる。第2スイッチS2は、入力ポート11と内部グランド15との間に設けられる。
【0017】
演算部20は、入力ポート11の電圧に基づいて、アナログ信号線LAから入力ポート11までの間の断線(たとえばフィルタFに含まれる抵抗R1のオープン故障)の有無を判定する断線診断処理を実行する。
【0018】
<断線診断処理>
上述のように、アナログ信号線LAと制御装置10との間には、ノイズ対策用のフィルタFが配置されている。後に詳述するように本実施の形態においては入力ポート11の電圧(アナログ値)を用いて断線診断処理が行なわれるが、フィルタFに含まれるコンデンサCの容量が大きいために、断線診断処理中において入力ポート11の電圧が収束するのに長い時間を要し、診断処理時間が長期化することが懸念される。
【0019】
そこで、本実施の形態による制御装置10は、診断用のスイッチとして、上述の2つのスイッチ、すなわち、プルアップ用の第1スイッチS1とプルダウン用の第2スイッチS2とを備えている。そして、演算部20は、実際の診断を行なう前に入力ポート11の電圧を一度測定し、その測定値に応じて、診断に用いるスイッチを第1スイッチS1および第2スイッチS2のどちらにするのかを決定することで、診断処理時間を短縮する。
【0020】
図2は、演算部20が行なう断線診断処理の一例を示すフローチャートである。なお、以下では、スイッチについて用いる「オフ状態」とはスイッチを開いた状態を意味し、「オン状態」とはスイッチを閉じた状態を意味する。
【0021】
まず、演算部20は、診断前測定を行なう(ステップS10)。具体的には、演算部20は、第1スイッチS1および第2スイッチS2の双方をオフ状態にした状態で、入力ポート11の電圧を測定する。以下では、ステップS10の診断前測定で測定された入力ポート11の電圧を「診断前電圧」とも称する。
【0022】
次いで、演算部20は、電源12の電圧Vの半分の値(=V/2)を基準値として、診断前電圧が基準値V/2以上であるか否かを判定する(ステップS12)。
【0023】
診断前電圧が基準値V/2以上である場合(ステップS12においてYES)、演算部20は、診断に用いるスイッチを第1スイッチS1とする。具体的には、演算部20は、第2スイッチS2をオフ状態に維持したまま、第1スイッチS1をオン状態にする(ステップS20)。これにより、入力ポート11が第1スイッチS1を介して電源12に接続され、入力ポート11に電源12の電圧Vが印加される。
【0024】
次いで、演算部20は、第1スイッチS1をオン状態に切り替えた時点から予め定められたオン継続時間(第1時間)が経過したか否かを判定する(ステップS22)。オン継続時間が経過していない場合(ステップS22においてNO)、演算部20は、処理をステップS20に戻し、第1スイッチS1をオン状態に維持する。
【0025】
オン継続時間が経過した場合(ステップS22においてYES)、演算部20は、第1スイッチS1をオフ状態に戻す(ステップS24)。
【0026】
次いで、演算部20は、第1スイッチS1をオフ状態に戻してから予め定められた待ち時間(第2時間)が経過したか否かを判定する(ステップS26)。なお、待ち時間は、断線が生じていない正常時において入力ポート11の電圧Vが定常値に収束するのに要する時間を考慮して決められる。
【0027】
待ち時間が経過していない場合(ステップS26においてNO)、演算部20は、処理をステップS26に戻し、待ち時間が経過するまで待つ。
【0028】
待ち時間が経過した場合(ステップS26においてYES)、演算部20は、判定用測定を行なう(ステップS28)。具体的には、演算部20は、待ち時間が経過した時点の入力ポート11の電圧を測定する。以下では、ステップS20の判定用測定で測定された入力ポート11の電圧を「判定用電圧」とも称する。
【0029】
次いで、演算部20は、判定用電圧が第1閾値VU以上であるか否かを判定する(ステップS30)。第1閾値VUは、基準値V/2よりも大きく、かつ電圧V未満の値に設定される。たとえば、第1閾値VUを、電圧V近傍の値(電圧Vよりも僅かに低い値)に設定してもよい。
【0030】
判定用電圧が第1閾値VU以上である場合(ステップS30においてYES)、演算部20は、アナログ信号線LAとの間で断線が生じていると判定する(ステップS60)。判定用電圧が第1閾値VU未満である場合(ステップS30においてNO)、演算部20は、アナログ信号線LAとの間で断線が生じておらず、正常であると判定する(ステップS70)。
【0031】
診断前電圧が基準値V/2未満である場合(ステップS12においてNO)、演算部20は、診断に用いるスイッチを第2スイッチS2とする。具体的には、演算部20は、第1スイッチS1をオフ状態に維持したまま、第2スイッチS2をオン状態にする(ステップS40)。これにより、入力ポート11が第2スイッチS2を介して内部グランド15に接続され、入力ポート11が接地される。
【0032】
次いで、演算部20は、第2スイッチS2をオン状態に切り替えた時点から予め定められたオン継続時間が経過したか否かを判定する(ステップS42)。ステップS42で用いられるオン継続時間は、ステップS22で用いられるオン継続時間と同じ値であっても異なる値であってもよい。オン継続時間が経過していない場合(ステップS42においてNO)、演算部20は、処理をステップS40に戻し、第2スイッチS2をオン状態に維持する。
【0033】
オン継続時間が経過した場合(ステップS42においてYES)、演算部20は、第2スイッチS2をオフ状態に戻す(ステップS44)。
【0034】
次いで、演算部20は、第2スイッチS2をオフ状態に戻してから予め定められた待ち時間が経過したか否かを判定する(ステップS46)。ステップS46で用いられる待ち時間は、ステップS26で用いられる待ち時間と同じ値であっても異なる値であってもよい。
【0035】
待ち時間が経過していない場合(ステップS46においてNO)、演算部20は、処理をステップS46に戻し、待ち時間が経過するまで待つ。
【0036】
待ち時間が経過した場合(ステップS46においてYES)、演算部20は、判定用測定を行なう(ステップS48)。具体的には、演算部20は、待ち時間が経過した時点の入力ポート11の電圧を判定用電圧として測定する。
【0037】
次いで、演算部20は、判定用電圧が第2閾値VD以上であるか否かを判定する(ステップS50)。第2閾値VDは、基準値V/2よりも小さく、かつ0ボルト(グランドレベル)よりも大きい値に設定される。たとえば、第2閾値VDを、0ボルト近傍の値(グランドレベルよりも僅かに高い値)に設定してもよい。
【0038】
判定用電圧が第2閾値VD以上である場合(ステップS50においてYES)、演算部20は、アナログ信号線LAとの間で断線が生じておらず、正常であると判定する(ステップS70)。判定用電圧が第2閾値VD未満である場合(ステップS50においてNO)、演算部20は、アナログ信号線LAとの間で断線が生じていると判定する(ステップS60)。
【0039】
図3は、断線診断処理中における入力ポート11の電圧の変化の一例を示すタイミングチャートである。図3において、上側に本実施の形態(本開示)による変化が示され、下側に比較例による変化が示される。
【0040】
まず、時刻t1にて、第1スイッチS1および第2スイッチS2をオフした状態で診断前電圧が測定され、診断前電圧と基準値V/2とが比較される。図3に示す例では、診断前電圧が基準値V/2よりも高く、0(グランドレベル)よりも電源12の電圧Vに近いため、時刻t1にて第1スイッチS1がオン状態にされる。これにより、入力ポート11が電源12に接続され、入力ポート11の電圧は電圧Vに向けて上昇し始める。
【0041】
この際、断線時(たとえば抵抗R1のオープン故障時)には、入力ポート11がアナログ信号線LAから遮断された状態で、電源12の電圧Vが第1スイッチS1を介してコンデンサCに印加されることになる。これにより、コンデンサCの両端電圧(すなわち入力ポート11の電圧)が電圧Vに向けて増加し、やがて電圧Vにほぼ張り付いた状態となる。一方、正常時には、入力ポート11はアナログ信号線LAに接続されており、入力ポート11にアナログ信号線LAからの電圧が入力されている状態である。この影響で、入力ポート11の電圧の上昇速度は、断線時に比べて低くなる。
【0042】
そして、時刻t1からオン継続時間が経過した時刻t2にて、第1スイッチS1はオフ状態に戻される。この際、断線時は、入力ポート11がアナログ信号線LAから遮断されているため、入力ポート11の電圧は電圧Vに張り付いた状態で維持される。一方、正常時には、コンデンサCの電荷が抵抗R1を通ってアナログ信号線LAに流れ出て消費されるため、入力ポート11の電圧は徐々に低下し、やがて診断前電圧のレベルに収束する。
【0043】
このような特性に鑑み、時刻t2から待ち時間が経過した時刻t3にて判定用電圧が測定される。そして、判定用電圧が第1閾値VU以上である場合は断線が生じていると判定される。判定用電圧が第1閾値VU未満である場合はアナログ信号線LAが正常であると判定される。
【0044】
図3の下側には、上述したように比較例による変化が示される。この比較例では、本実施の形態による制御装置10に対して、第1スイッチS1を備えずに第2スイッチS2のみを有する。そして、この比較例では、診断を行なう際には、時刻t1から時刻t4までの期間、第2スイッチS2をオン状態にし、その後の時刻t5にて測定された判定用電圧を閾値VDと比較することで断線診断が行なわれる。
【0045】
しかしながら、この比較例において、時刻t1の診断前電圧が基準値V/2よりも大きい(すなわち0ボルトよりも電源12の電圧Vに近い)ため、第2スイッチS2をオン状態にしてから入力ポート11の電圧が0ボルト付近に低下するまでにはある程度の時間を要し、この時間を見越してオン継続時間を長めに設定しておく必要がある。その結果、診断処理時間が長期化してしまう。
【0046】
これに対し、本実施の形態による演算部20は、判定用電圧を測定する前に診断前電圧を測定し、診断前電圧と基準値V/2とを比較した結果に応じて、診断に用いるスイッチを第1スイッチS1にするのか、それとも第2スイッチS2にするのかを決定する。そのため、断線診断の判定精度を確保しつつ、断線診断に要する時間を短縮することができる。
【0047】
具体的には、本実施の形態による演算部20は、診断前電圧が基準値V/2以上である場合(すなわち診断前電圧が0ボルトよりも電源12の電圧Vに近い場合)には第1スイッチS1をオン状態にして入力ポート11の電圧を電圧Vに近づける。一方、診断前電圧が基準値V/2未満である場合(すなわち診断前電圧が電源12の電圧Vよりも0ボルトに近い場合)には、演算部20は、第2スイッチS2をオン状態にして入力ポート11の電圧を0ボルトに近づける。これにより、比較例に比べて、入力ポート11の電圧をより早期に電圧Vあるいは0ボルトに収束させることができるので、オン継続時間および待ち時間を短縮することができる。その結果、本実施の形態においては、比較例に比べて、診断処理に要する時間(オン継続時間および待ち時間を合計した判定時間)を短縮することができる。
【0048】
[変形例1]
上述の実施の形態においては、診断前電圧が基準値V/2以上である場合に第1スイッチS1を用いて断線診断を行ない、そうでない場合に第2スイッチS2を用いて断線診断を行なう。
【0049】
これに対し、診断前電圧が基準値V/2以上である場合に第2スイッチS2を用いて断線診断を行ない、そうでない場合に第1スイッチS1を用いて断線診断を行なうに変形してもよい。
【0050】
図4は、本変形例1による演算部20が行なう断線診断処理の一例を示すフローチャートである。図4に示すフローチャートは、上述の図2に示すフローチャートのステップS20,S22,S24,S26,S30,S40,S42,S44,S46,S50を、それぞれステップS20A,S22A,S24A,S26A,S30A,S40A,S42A,S44A,S46A,S50Aに変更したものである。図4のその他のステップ(図2に示したステップと同じ番号を付しているステップ)については、既に説明したため詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0051】
診断前電圧が基準値V/2以上である場合(ステップS12においてYES)、演算部20は、診断に用いるスイッチを第2スイッチS2とする。具体的には、演算部20は、第1スイッチS1をオフ状態に維持したまま、第2スイッチS2をオン状態にする(ステップS20A)。これにより、入力ポート11が第2スイッチS2を介して内部グランド15に接続され、入力ポート11が接地される。
【0052】
次いで、演算部20は、第2スイッチS2をオン状態に切り替えた時点から予め定められたオン継続時間が経過したか否かを判定する(ステップS22A)。
【0053】
第2スイッチS2をオン状態に切り替えた時点から予め定められたオン継続時間が経過した場合(ステップS22AにおいてYES)、演算部20は、第2スイッチS2をオフ状態に戻す(ステップS24A)。
【0054】
次いで、演算部20は、第2スイッチS2をオフ状態に戻してから予め定められた待ち時間が経過したか否かを判定する(ステップS26A)。
【0055】
待ち時間が経過した場合(ステップS26AにおいてYES)、演算部20は、入力ポート11の電圧を判定用電圧として測定する(ステップS28)。
【0056】
次いで、演算部20は、判定用電圧が第2閾値VDa以上であるか否かを判定する(ステップS30A)。第2閾値VDaは、基準値V/2よりも小さく、かつ0ボルト(グランドレベル)よりも大きい値に設定される。本変形例1においては、第2閾値VDaを、上述の実施の形態で用いた第2閾値VD(たとえばグランドレベルよりも僅かに高い値)よりも、さらに高い値に設定される。
【0057】
判定用電圧が第2閾値VDa以上である場合(ステップS30AにおいてYES)、演算部20は、アナログ信号線LAとの間で断線が生じておらず、正常であると判定する(ステップS70)。判定用電圧が第2閾値VDa未満である場合(ステップS30AにおいてNO)、演算部20は、アナログ信号線LAとの間で断線が生じていると判定する(ステップS60)。
【0058】
診断前電圧が基準値V/2未満である場合(ステップS12においてNO)、演算部20は、診断に用いるスイッチを第1スイッチS1とする。具体的には、演算部20は、第2スイッチS2をオフ状態に維持したまま、第1スイッチS1をオン状態にする(ステップS40A)。これにより、入力ポート11が第1スイッチS1を介して電源12に接続され、入力ポート11に電源12の電圧Vが印加される。
【0059】
次いで、演算部20は、第1スイッチS1をオン状態に切り替えた時点から予め定められたオン継続時間が経過したか否かを判定する(ステップS42A)。
【0060】
オン継続時間が経過した場合(ステップS42AにおいてYES)、演算部20は、第1スイッチS1をオフ状態に戻す(ステップS44A)。
【0061】
次いで、演算部20は、第1スイッチS1をオフ状態に戻してから予め定められた待ち時間が経過したか否かを判定する(ステップS46A)。
【0062】
待ち時間が経過した場合(ステップS46AにおいてYES)、演算部20は、入力ポート11の電圧を判定用電圧として測定する(ステップS48)。
【0063】
次いで、演算部20は、判定用電圧が第1閾値VUa以上であるか否かを判定する(ステップS50A)。第1閾値VUaは、基準値V/2よりも大きく、かつ電圧V未満の値に設定される。本変形例1においては、第1閾値VUaを、上述の実施の形態で用いた第1閾値VU(電圧Vよりも僅かに低い値)よりも、さらに低い値に設定される。
【0064】
判定用電圧が第1閾値VUa以上である場合(ステップS50AにおいてYES)、演算部20は、アナログ信号線LAとの間で断線が生じていると判定する(ステップS60)。判定用電圧が第1閾値VUa未満である場合(ステップS50AにおいてNO)、演算部20は、アナログ信号線LAとの間で断線が生じておらず、正常であると判定する(ステップS70)。
【0065】
図5は、本変形例1による断線診断処理による入力ポート11の電圧の変化の一例を示すタイミングチャートである。図5において、上側に本変形例1による変化が示され、下側に比較例による変化が示される。
【0066】
図5に示す例では、時刻t1にて測定された診断前電圧が基準値V/2よりも小さく、診断前電圧よりも診断前電圧と電源12の電圧Vとの差分のほうが大きいため、第1スイッチS1をオン状態にする。これにより、入力ポート11が電源12に接続され、入力ポート11の電圧は電圧Vに向けて上昇し始める。
【0067】
この際、入力ポート11が、診断前電圧との電位差が小さい内部グランド15ではなく、診断前電圧との電位差のより大きい電源12に接続される。そのため、断線時の入力ポート11の電圧は急速に電圧Vに近づき、正常時の入力ポート11の電圧との間に大きさな差が早期に生じる。この特性に鑑みて、本変形例1で用いる第1閾値VUaを、上述の実施の形態で用いた第1閾値VU(電圧Vよりも僅かに低い値)よりも、さらに低い値に設定することで、オン継続時間および待ち時間を短縮することができる。
【0068】
図5の下側には、比較例による変化が示される。この比較例において、時刻t1で測定された診断前電圧が基準値V/2よりも小さく、診断前電圧と0ボルトとの差分が小さいため、入力ポート11の電圧は緩やかにしか低下せず0ボルトに張り付くまでには時間がかかり、この時間を見越してオン継続時間を長めに設定しておく必要がある。その結果、診断処理時間が長期化してしまう。
【0069】
これに対し、本実施の形態による演算部20は、診断前電圧が基準値V/2未満である場合(すなわち診断前電圧よりも診断前電圧と電圧Vとの差分のほうが大きい場合)には、第1スイッチS1をオン状態にして入力ポート11に電圧Vを印加する。一方、診断前電圧が基準値V/2以上である場合(すなわち診断前電圧と電圧Vとの差分よりも診断前電圧のほうが大きい場合)には、演算部20は、第2スイッチS2をオン状態にして入力ポート11の電圧を0ボルトに近づける。これにより、比較例に比べて、入力ポート11の電圧をより急速に電圧Vあるいは0ボルトに近づけることができるとともに、断線時の入力ポート11の電圧と正常時の入力ポート11の電圧との間に大きな差を早期に生じさせることができるため、オン継続時間および待ち時間を短縮することができる。その結果、本実施の形態においては、比較例に比べて、診断処理に要する時間を短縮することができる。
【0070】
[変形例2]
図6は、本変形例2による回路基板1Aの構成の一例を模式的に示す図である。本実施の形態による回路基板1Aは、基板外部の増幅器3に接続される。
【0071】
回路基板1Aは、上述の図1に示す回路基板1に対して、電源13および抵抗R2を取り除いて、抵抗R3を追加したものである。回路基板1Aのその他の構成は、上述の図1に示す回路基板1と同じであるため、ここでの詳細な説明は繰返さない。
【0072】
アナログ信号線LAの一端には、増幅器3が接続され、増幅器3からの電圧(アナログ信号)が入力される。また、アナログ信号線LAは、抵抗R3を介してグランドに接続される。
【0073】
本変形例2による演算部20は、上述の実施の形態で説明した断線診断処理(図2)、あるいは上述の変形例1で説明した断線診断処理(図4)と同様の処理を行なう。
【0074】
図7は、本変形例2による演算部20が上述の変形例1で説明した断線診断処理(図4)を行なった場合の入力ポート11の電圧の変化の一例を示すタイミングチャートである。
【0075】
回路基板1Aにおいて、入力ポート11の電圧は、アナログ信号線LAから入力される信号の電圧となる。
【0076】
図7に示す例では、時刻t1にて測定された診断前電圧が基準値V/2よりも低いため、第1スイッチS1がオン状態にされる。これにより、入力ポート11が電源12に接続され、入力ポート11の電圧は電圧Vに向けて上昇し始める。
【0077】
この際、断線時(たとえば抵抗R1のオープン故障時)には、入力ポート11がアナログ信号線LAから遮断された状態であるため、入力ポート11の電圧は電圧Vに向けて急速に上昇する。一方、正常時には、入力ポート11はアナログ信号線LAに接続されており、入力ポート11にアナログ信号線LAからの信号が入力されている状態であるため、入力ポート11の電圧は診断前電圧から電圧Vに向けて上昇するが、その上昇速度は断線時よりも遅い。その結果、図7に示すように、断線時の入力ポート11の電圧と正常時の入力ポート11の電圧との間に大きな差が生じる。この特性に鑑みて、第1閾値VUaを、上述の実施の形態で用いた第1閾値VU(電圧Vよりも僅かに低い値)よりも、さらに低い値に設定することで、オン継続時間および待ち時間を短縮することができる。
【0078】
[変形例3]
図8は、本変形例3による回路基板1Bの構成の一例を模式的に示す図である。回路基板1Bは、上述の図1に示す回路基板1に対して、サーミスタ2、電源13および抵抗R2を取り除いて、電源14および抵抗R4,R5を追加したものである。回路基板1Bのその他の構成は、上述の図1に示す回路基板1と同じであるため、ここでの詳細な説明は繰返さない。
【0079】
抵抗R4,R5は、電源14とグランドとの間に直列に接続される。抵抗R4と抵抗R5との接続ノードの電圧は、電源14の電圧(たとえば12ボルト)を降圧した所定電圧Vaとなる。すなわち、抵抗R4,R5は、電源14の電圧を所定電圧Vaに降圧するための分圧回路である。アナログ信号線LAの一端は、抵抗R4と抵抗R5との接続ノードに接続され、所定電圧Vaの電圧が印加される。なお、所定電圧Vaは、制御装置10内の電源12の電圧(たとえば5ボルト)よりも低い値(たとえば1.5ボルト)である。
【0080】
本変形例3による演算部20は、上述の実施の形態で説明した断線診断処理(図2)、あるいは上述の変形例1で説明した断線診断処理(図4)と同様の処理を行なう。
【0081】
図9は、本変形例3による演算部20が上述の変形例1で説明した断線診断処理(図4)を行なった場合の入力ポート11の電圧の変化の一例を示すタイミングチャートである。図9には、時刻t1にて測定された診断前電圧が基準値V/2よりも低い所定電圧Vaである例が示されている。この場合、演算部20は、第1スイッチS1をオン状態にして、入力ポート11を電源12に接続する。これにより、入力ポート11の電圧は所定電圧Vaから電圧Vに向けて上昇し始める。
【0082】
この際、断線時(たとえば抵抗R1のオープン故障時)には、入力ポート11がアナログ信号線LAから遮断された状態であるため、入力ポート11の電圧は所定電圧Vaから電圧Vに向けて急速に上昇する。一方、正常時には、入力ポート11はアナログ信号線LAに接続されており、入力ポート11にアナログ信号線LAからの信号が入力されている状態であるため、入力ポート11の電圧は所定電圧Vaから電圧Vに向けて上昇するが、その上昇速度は断線時よりも遅い。その結果、図9に示すように、断線時の入力ポート11の電圧と正常時の入力ポート11の電圧との間に大きな差が生じる。正常時の所定電圧Vaが規定値であることがわかっている場合、第1閾値VUaをさらに低い値に設定することで、オン継続時間および待ち時間を短縮することができる。
【0083】
[変形例4]
上述の実施の形態においては、診断前電圧と比較される基準値を、電源12の電圧Vの半分の値(=V/2)に設定した。
【0084】
しかしながら、基準値は、少なくとも電源12の電圧Vよりも低い値(0~Vまでのいずれかの値)であればよく、必ずしも電源12の電圧Vの半分の値に限定されるものではない。
【0085】
[変形例5]
上述の変形例1においては、診断前電圧と基準値V/2とを比較することによって、診断前電圧と電源12の電圧Vとの差分が診断前電圧よりも大きいか否かを判定していた。
【0086】
しかしながら、基準値V/2を用いることなく、診断前電圧と電源12の電圧Vとの差が診断前電圧よりも大きいか否かを直接的に判定するようにしてもよい。すなわち、診断前電圧と電源12の電圧Vとの差分を算出し、算出された差分が診断前電圧よりも大きい場合には診断に用いるスイッチを第1スイッチS1とし、算出された差分が診断前電圧よりも小さい場合には診断に用いるスイッチを第2スイッチS2とするようにしてもよい。
【0087】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0088】
1,1A,1B 回路基板、2 サーミスタ、3 増幅器、10 制御装置、11 入力ポート、12,13,14 電源、15 内部グランド、20 演算部、C コンデンサ、F フィルタ、LA アナログ信号線、R1~R5 抵抗、S1 第1スイッチ、S2 第2スイッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9