(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用改良型隔離板および関連する方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/449 20210101AFI20230216BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20230216BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20230216BHJP
H01M 50/423 20210101ALI20230216BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20230216BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20230216BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20230216BHJP
H01M 50/457 20210101ALI20230216BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20230216BHJP
【FI】
H01M50/449
H01M50/414
H01M50/42
H01M50/423
H01M50/426
H01M50/434
H01M50/443 C
H01M50/443 E
H01M50/443 M
H01M50/457
H01M50/489
(21)【出願番号】P 2021098022
(22)【出願日】2021-06-11
(62)【分割の表示】P 2019202158の分割
【原出願日】2013-08-07
【審査請求日】2021-07-05
(32)【優先日】2012-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598064680
【氏名又は名称】セルガード エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】チャン,チェンミン
(72)【発明者】
【氏名】リ,シュエファ
(72)【発明者】
【氏名】シ,リー
(72)【発明者】
【氏名】ラマダス,プレマナンド
(72)【発明者】
【氏名】ハルモ,ポール,エム.
(72)【発明者】
【氏名】チャン,シャオミン
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-240936(JP,A)
【文献】国際公開第2008/149986(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40-50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン二次電池のエネルギー貯蔵デバイス用のセラミック被覆された隔離板であって、
第1の表面と第2の表面とを有するミクロ多孔質膜であって、単一層、複数層、単一重ね、および/または複数重ね構造のうちの少なくとも1種である、ミクロ多孔質膜と、
前記ミクロ多孔質膜の少なくとも1つの表面上のセラミック被覆であって、高分子結合剤中に、直径0.05から5μmの範囲の平均粒子径を有するセラミック粒子および有機粒子の層を含むセラミック被覆と、を備え、
前記被覆された隔離板は、前記被覆された隔離板と電池電極との間の界面における酸化または還元層の形成により、リチウム電池の使用中に更なる酸化または還元反応が生じることを防止または停止し、前記リチウム電池の改善された安全性、サイクル寿命、耐高温性能を提供し、
前記高分子結合剤は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルアセテート(PVAc)、ポリアクリル酸塩、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミドまたはポリ(アクリル酸ナトリウム-アクリルアミド-アクリロニトリル)共重合体、およびそれらの共重合体、混合物、配合物、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの水性高分子結合剤を含む、セラミック被覆された隔離板。
【請求項2】
前記
少なくとも1つの水溶性高分子結合剤は、
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルアセテート(PVAc)、ポリアクリル酸塩、ポリアクリロニトリル
、ポリアクリルアミド、もしくはポリ(アクリル酸ナトリウム-アクリルアミド-アクリロニトリル)共重合体
から選択される少なくとも2つからなる混合物を含む、請求項
1に記載のセラミック被覆された隔離板。
【請求項3】
前記セラミック粒子は、無機物粒子、イオン伝導性材料、ケイ素酸化物(SiO
2)、アルミニウム酸化物(Al
2O
3)、ジルコニウム酸化物、チタン酸化物(TiO
2)それらの混合物、またはケイ素窒化物、アルミニウム窒化物、ジルコニウム窒化物、カルシウム窒化物、および/またはその混合物、配合物および/または組み合わせ、のうちの少なくとも1種を含む、請求項1に記載のセラミック被覆された隔離板。
【請求項4】
前記セラミック粒子は、直径で0.01μm~
4μmの範囲の平均粒径を有する粒子を含む、請求項
3に記載のセラミック被覆された隔離板。
【請求項5】
前記セラミック粒子は、直径で0.01μm~
2μの範囲の平均粒径を有するAl
2O
3を含む、請求項
4に記載のセラミック被覆された隔離板。
【請求項6】
前記ミクロ多孔質膜の少なくとも1表面上の前記セラミック被覆は、1.5μm~5.5μmの厚さを有する、請求項1に記載のセラミック被覆された隔離板。
【請求項7】
前記ミクロ多孔質膜の少なくとも1表面上の前記セラミック被覆は、1.5μm~5.5μmの厚さを有し、
TMA MD寸法変化が130℃以下で-2%以上0%以下を有する、請求項1に記載のセラミック被覆された隔離板。
【請求項8】
TMA・TD収縮率が130℃以下で0.5%以下を有する、請求項
6に記載のセラミック被覆された隔離板。
【請求項9】
前記ミクロ多孔質膜の少なくとも1表面上の前記セラミック被覆は、3.0μm~5.5μmの厚さを有し、
MD収縮率は1時間に150℃で28%以下を有する、請求項1に記載のセラミック被覆された隔離板。
【請求項10】
前記ミクロ多孔質膜は湿式処理ポリエチレンのミクロ多孔質膜であり、前記ミクロ多孔質膜の少なくとも1表面上の前記セラミック被覆は3.0μm~5.5μmの厚さを有し、前記セラミック被覆された隔離板は1時間に135℃で2%以下のMD収縮率を有する、請求項1に記載のセラミック被覆された隔離板。
【請求項11】
前記ミクロ多孔質膜の少なくとも1表面上の前記セラミック被覆は3.0μm~5.5μmの厚さを有し、前記セラミック被覆された隔離板は未被覆の膜に対して1時間に135℃で少なくとも40%のMD収縮率の減少を有する、請求項1に記載のセラミック被覆された隔離板。
【請求項12】
前記ミクロ多孔質膜は湿式処理ポリエチレンのミクロ多孔質膜であり、前記ミクロ多孔質膜の少なくとも1表面上の前記セラミック被覆は3.0μm~5.5μmの厚さを有し、前記セラミック被覆された隔離板は未被覆の膜に対して1時間に135℃で少なくとも10%のMD収縮率の減少を有する、請求項1に記載のセラミック被覆された隔離板。
【請求項13】
前記ミクロ多孔質膜の少なくとも1表面上の前記セラミック被覆は5.5μm~9.0μmの厚さを有し、前記セラミック被覆された隔離板は1時間に135℃で4%以下のMD収縮率を有する、請求項1に記載のセラミック被覆された隔離板。
【請求項14】
前記ミクロ多孔質膜は湿式処理ポリエチレンのミクロ多孔質膜であり、前記ミクロ多孔質膜の少なくとも1表面上の前記セラミック被覆は5.5μm~9.0μmの厚さを有し、前記セラミック被覆された隔離板は1時間に135℃で2%以下のMD収縮率を有する、請求項1に記載のセラミック被覆された隔離板。
【請求項15】
前記ミクロ多孔質膜の少なくとも1表面上の前記セラミック被覆は5.5μm~9.0μmの厚さを有し、前記セラミック被覆された隔離板は未被覆の膜に対して1時間に135℃で少なくとも80%のMD収縮率の減少を有する、請求項1に記載のセラミック被覆された隔離板。
【請求項16】
前記ミクロ多孔質膜は湿式処理ポリエチレンのミクロ多孔質膜であり、前記ミクロ多孔質膜の少なくとも1表面上の前記セラミック被覆は5.5μm~9.0μmの厚さを有し、前記セラミック被覆された隔離板は未被覆の膜に対して1時間に135℃で少なくとも90%のMD収縮率の減少を有する、請求項1に記載のセラミック被覆された隔離板。
【請求項17】
前記セラミック被覆された隔離板は、アルミニウム酸化物(Al
2O
3)を含む掃気フィラーとを有し、50℃以上で0.5%以上の揮発性成分を放出する、請求項1に記載のセラミック被覆された隔離板。
【請求項18】
歪み収縮率は120℃以上で0%を有する、請求項1に記載のセラミック被覆された隔離板。
【請求項19】
前記ミクロ多孔質膜はポリオレフィンのミクロ多孔質膜であり、120℃以上で20%未満のMD伸長率を有する、請求項1に記載のセラミック被覆された隔離板。
【請求項20】
前記ミクロ多孔質膜の少なくとも1表面上の前記セラミック被覆は多孔質被覆である、請求項1に記載のセラミック被覆された隔離板。
【請求項21】
請求項1に記載のセラミック被覆された隔離板を備える、リチウムイオン二次電池。
【請求項22】
請求項
21に記載のリチウムイオン二次電池を備える、電気車両駆動系。
【請求項23】
請求項
21に記載のリチウムイオン二次電池を備える、エネルギー貯蔵デバイス。
【請求項24】
リチウムイオン二次電池用のセラミック被覆された隔離板であって、
第1の表面と第2の表面とを有するミクロ多孔質膜であって、単一層、複数層、単一重ね、および/または複数重ね構造のうちの少なくとも1種である、ミクロ多孔質膜と、
前記ミクロ多孔質膜の少なくとも1つの表面上のセラミック被覆であって、高分子結合剤中にセラミック粒子を含む前記セラミック被覆と、を備え、
前記セラミック被覆は、前記リチウムイオン二次電池の使用時に前記セラミック被覆上において酸化または還元反応が生じることを防止または停止する酸化掃気層を提供する、被覆された隔離板。
【請求項25】
前記セラミック被覆された隔離板は、250℃以上で1.0%より多い揮発性成分を放出させる、請求項
24に記載のセラミック被覆された隔離板。
【請求項26】
前記セラミック被覆は多孔質である、請求項
24に記載のセラミック被覆された隔離板。
【請求項27】
前記ミクロ多孔質膜は、停止(shutdown)挙動のある超極薄の3層の隔離板であり、3~9ミクロンの範囲の厚みを有する、請求項
24に記載のセラミック被覆された隔離板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された、新規な、もしくは改質された膜、隔離板および/または関連する方法に向けられている。少なくともある実施形態によれば、本発明は、改良された、新規な、もしくは改質された非多孔質、多孔質、またはミクロ多孔質の電池隔離板膜または隔離板および/または関連する製造方法および/またはそのような膜または隔離板の使用、に向けられている。少なくとも選択された実施形態によれば、本発明は、リチウムイオン電池用の改良された、新規な、もしくは改質された非多孔質、多孔質、またはミクロ多孔質の電池隔離板膜または隔離板および/または関連する製造方法および/またはそのような膜または隔離板の使用、に向けられている。少なくとも選択された特定の実施形態によれば、本発明は、二次的または再充電可能なリチウムイオン電池用の改良された、新規な、もしくは改質された非多孔質、多孔質、またはミクロ多孔質の電池隔離板膜または隔離板および/または関連する製造方法および/またはそのような膜または隔離板の使用、に向けられている。少なくとも選択されたある特定の実施形態によれば、本発明は、リチウムイオン二次電池用の非多孔質、多孔質、またはミクロ多孔質被覆された多孔質またはミクロ多孔質の電池隔離板膜または隔離板および/または関連する製造方法および/またはそのような膜または隔離板の使用、に向けられている。少なくとも一実施形態によれば、リチウムイオン電池用の改良された、新規な、もしくは改質された非多孔質、多孔質、またはミクロ多孔質の膜、離板膜または隔離板は、1種以上の粒子および/または結合剤の層等のセラミック被覆または層で被覆された多孔質またはミクロ多孔質膜を含む。少なくとも特定な一実施形態によれば、リチウムイオン二次電池用の改良された、新規な、もしくは改質された非多孔質、多孔質、またはミクロ多孔質の膜、隔離板膜または隔離板は、1種以上のセラミック粒子と高分子結合剤との層等の少なくとも1種の多孔質セラミック被覆または層で被覆されたミクロ多孔質膜を含む。少なくとも選択された実施形態によれば、本発明のセラミック被覆された隔離板膜または隔離板は、好ましくは、リチウムイオン二次電池において向上した安全性、サイクル寿命、および/または耐高温性能を提供する。
【背景技術】
【0002】
本出願は参照により本明細書に完全に含めた2012年8月7日付で出願された米国仮特許出願第61/680、550号についての優先権およびその利益を主張する。
【発明の概要】
【0003】
本発明の少なくとも選択された実施形態、目的または態様によれば、改良された、新規な、もしくは改質された膜、隔離板、および/または関連する方法が提供される。少なくともある実施形態によれば、本発明は、改良された、新規な、もしくは改質された非多孔質、多孔質、またはミクロ多孔質の電池隔離板膜または隔離板および/または関連する製造方法および/またはそのような膜または隔離板の使用に、向けられる。少なくとも選択された実施形態によれば、本発明は、リチウムイオン電池用の改良された、新規な、もしくは改質された非多孔質、多孔質、またはミクロ多孔質の電池隔離板膜または隔離板および/または関連する製造方法および/またはそのような膜または隔離板の使用に、向けられる。少なくとも選択された特定の実施形態によれば、本発明は、二次的または再充電可能なリチウムイオン電池用の改良された、新規な、もしくは改質された非多孔質、多孔質、またはミクロ多孔質の電池隔離板膜または隔離板および/または関連する製造方法および/またはそのような膜または隔離板の使用に、向けられる。少なくとも選択されたある特定の実施形態によれば、本発明は、リチウムイオン二次電池用の非多孔質、多孔質、またはミクロ多孔質被覆された多孔質またはミクロ多孔質の電池隔離板膜または隔離板および/または関連する製造方法および/またはそのような膜または隔離板の使用、に向けら
れている。少なくとも一実施形態によれば、リチウムイオン電池用の改良された、新規な、もしくは改質された非多孔質、多孔質、またはミクロ多孔質の膜、隔離板膜または隔離板は、1種以上の粒子および/または結合剤等の、セラミック被覆または層を被覆した多孔質またはミクロ多孔質の膜を含む。少なくとも特定の一実施形態によれば、リチウムイオン二次電池用の改良された、新規な、もしくは改質された非多孔質、多孔質、またはミクロ多孔質の膜、隔離板膜または隔離板は、1種以上のセラミック粒子と高分子結合剤との層等の、少なくとも1個の多孔質セラミック被覆または層を被覆したミクロ多孔質膜を含む。少なくとも選択された実施形態によれば、本発明のセラミック被覆された隔離板膜または隔離板は、好ましくは、リチウムイオン二次電池において向上した安全性、サイクル寿命、および/または耐高温性能を提供する。
【0004】
少なくとも選択された実施形態によれば、本発明は、改良された、新規な、もしくは改質されたミクロ多孔質膜、隔離板、および/または関連する方法に、向けられる。少なくともある実施形態によれば、本発明は、改良された、新規な、もしくは改質されたミクロ多孔質の電池隔離板膜または隔離板および/または関連する製造方法および/またはそのような膜または隔離膜の使用に、向けられる。少なくとも選択されたある実施形態によれば、本発明は、リチウムイオン電池用の改良された、新規な、もしくは改質されたミクロ多孔質の電池隔離板膜または隔離板および/または関連する製造方法および/またはそのような膜または隔離板の使用に、向けられる。少なくとも選択された特定の実施形態によれば、本発明は、二次的または再充電可能なリチウムイオン電池用の改良された、新規な、もしくは改質されたミクロ多孔質の電池隔離板膜または隔離板および/または関連する製造方法および/またはそのような膜または隔離板の使用に、向けられる。少なくとも選択されたある実施形態によれば、本発明は、リチウムイオン二次電池用の被覆されたミクロ多孔質の電池隔離板膜または隔離板および/または関連する製造方法および/またはそのような膜または隔離板の使用に、向けられる。少なくとも一実施形態によれば、リチウムイオン電池用の改良された、新規な、もしくは改質されたミクロ多孔質の膜、隔離板膜または隔離板は、1種以上の粒子、セラミック、高分子化合物および/または結合剤の層等の少なくとも1個の被覆、粒子被覆、および/またはセラミック被覆または層で被覆されたミクロ多孔質膜を含む。少なくとも特定な一実施形態によれば、リチウムイオン二次電池用の改良された、新規な、もしくは改質されたミクロ多孔質の膜、隔離板膜または隔離板は、少なくとも1種のセラミック粒子と高分子結合剤との層等の少なくとも1個の多孔質のセラミック被覆または層で被覆されたミクロ多孔質膜を含む。少なくとも選択された実施形態によれば、本発明のセラミック被覆されたミクロ多孔質の隔離板膜は、好ましくは、リチウムイオン二次電池において向上した安全性、サイクル寿命、および/または耐高温性能を提供する。
【0005】
少なくとも一実施形態によれば、リチウムイオン電池用の改良された、新規な、もしくは改質された膜、隔離板膜または隔離板は、1種類以上のセラミック粒子と少なくとも1種の高分子結合剤等の、材料、粒子被覆、および/またはセラミック被覆および層で被覆したミクロ多孔質膜を含む。少なくとも選択された実施形態によれば、本発明のセラミック被覆された隔離板膜は、好ましくはリチウムイオン二次電池において向上した安全性、サイクル寿命、および/または耐高温性能を提供する。被覆および/またはセラミック被覆された隔離板の安全性、サイクル寿命、および/または耐高温性能の向上は、主に、リチウムイオン電池での被覆隔離板と電極との界面での酸化または還元反応を受けている被覆またはセラミック被覆または層によるものと思われる。隔離板と電池電極との間の界面での酸化または還元された層の形成は、更なる酸化または還元反応が生じることを防止または停止し、リチウムイオン電池の安全性、サイクル寿命、および/または耐高温性能を向上させる。加えて、被覆および/またはセラミック被覆された隔離板膜の安全性、サイクル寿命、および耐高温性能は、高温時の高い寸法安定性により向上される。更に、少なくともある実施形態では、この本発明固有のセラミック被覆されたミクロ多孔質の隔離板
膜は、好ましくは、250℃以上で2%より多い揮発性成分を放出させる。
【0006】
少なくとも選択された実施形態によれば、本発明は、好ましくは、リチウムイオン二次電池用の被覆隔離板膜を提供し、該膜は、少なくとも1表面を1種以上の高分子化合物または結合剤、粒子、および/またはセラミック粒子と少なくとも1種の高分子結合剤の被覆、粒子被覆、および/もしくはセラミック被覆で被覆した、ミクロ多孔質のポリオレフィン基材で好ましくは作製される。これらの選択された実施形態は、本発明による隔離版を生成するための過程、リチウムイオン二次電池での本発明の隔離板の使用等を更に提供する。これらの選択された実施形態は、また、本発明の隔離板を提供し、該隔離板はリチウムイオン電池で使用されたときに向上した安全性、サイクル寿命、および/または耐高温性能の利点を有するのが好ましい。リチウムイオン電池用の、この改良された、新規な、もしくは改質された膜、膜隔離板または隔離板は、好ましくは、少なくとも1表面上にセラミック粒子または粒子と1種以上の水性または水系高分子結合剤との混合物で被覆される。セラミック被覆または層に含有された水性または水系結合剤は、リチウムイオン電池内の被覆隔離板と電極との界面で、酸化または還元反応を受ける可能性がある。酸化または還元反応は、リチウムイオン電池の形成段階におよび/またはリチウムイオン電池の充電および/または放電段階に、起こり得る。酸化または還元された界面層が、被覆隔離板の表面上に障壁または犠牲界面層を提供する可能性があり、これが更なる酸化または還元反応が界面で起きることを防止または停止し、リチウムイオン電池の性能またはサイクル寿命を向上させる。
【0007】
非多孔質、多孔質またはミクロ多孔質の被覆、粒子被覆、および/またはセラミック被覆は、多孔質、マクロ多孔質もしくはミクロ多孔質の膜、フィルムまたは隔離板膜に、単一層または複数層の被覆または層構造としておよび片面または両面被覆として適用できる。本発明の少なくとも選択された実施形態は、約1~12μm厚以上、好ましくは約2~12μm厚、より好ましくは約3~10μm厚、最も好ましくは約3~7μm厚、の片面または両面の被覆またはセラミック被覆を備える。本発明の選択された実施形態は、先行技術の被覆またはセラミック被覆された電池隔離板から、5方法のうちの少なくとも1方法によって区別され得るのが好ましい:1)本発明のセラミック被覆されたミクロ多孔質膜は、自由状態で試験したとき1時間に120℃で2%未満の機械方向(MD)収縮率を有し、自由状態で試験したとき1時間に130℃で3%未満のMD収縮率を有する、2)本発明のセラミック被覆されたミクロ多孔質膜は、熱機械分析(TMA)を用いて試験したとき150℃で1%未満のMD収縮率を有する、3)本発明のセラミック被覆されたミクロ多孔質膜は、e-TMAを用いて試験したとき150℃で1%未満の横方向(TD)収縮率を有する、4)本発明のセラミック被覆されたミクロ多孔質膜は、熱重量分析(TGA)を用いて試験したとき250℃で2%未満の揮発性成分を放出させる、および/または5)本発明のセラミック被覆されたミクロ多孔質膜に対してGurleyでは、被覆は低増加である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】膜の機械方向(MD-machine direction)に試験を遂行した、本発明の実施例Ex1~Ex5と2比較例CE1およびCE2との、熱機械分析(TMA)サーモグラム表示である。
【
図2】膜の横方向(TD-transverse direction)に試験を遂行した、本発明の実施例Ex1~Ex4と比較例CE1およびCE2との、熱機械分析(TMA)サーモグラム表示である。
【
図3】は、本発明の実施例Ex3およびEx4と比較例CE3およびCE4との、熱重量分析(TGA)サーモグラム表示である。
【
図4】片面に被覆した膜、隔離板膜または隔離板の概要横断面図である。
【
図5】両面に被覆した膜、隔離板膜または隔離板の概要横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の種々の実施例、実施形態または態様を図面に示す。これらの図は本発明の原理を単に説明するにすぎないことを認識すべきである。多数の付加的な実施形態、実施例、変更例、およびそれらの適合化を以下に説明するが、本発明の主旨および範囲から逸脱しない限り、当業者にとってはたやすく明らかになるだろう。
【0010】
本発明の少なくとも選択された実施形態、目的または態様によれば、改良された、新規な、もしくは改質された膜、隔離板、および/または関連する方法が提供される。少なくともある実施形態によれば、本発明は、改良された、新規な、もしくは改質された非多孔質、多孔質、またはミクロ多孔質の電池隔離板膜または隔離板および/または関連する製造方法および/またはそのような膜または隔離板の使用に、向けられる。少なくとも選択された実施形態によれば、本発明は、リチウムイオン電池用の改良された、新規な、もしくは改質された非多孔質、多孔質、もしくはミクロ多孔質の電池隔離板膜または隔離板および/または関連する製造方法および/またはそのような膜または隔離板の使用に、向けられる。少なくとも選択された特定の実施形態によれば、本発明は、二次的または再充電可能なリチウムイオン電池用の改良された、新規な、もしくは改質された非多孔質、多孔質、またはミクロ多孔質の電池隔離板膜または隔離板および/または関連する製造方法および/またはそのような膜または隔離板の使用に、向けられる。少なくともある選択された特定の実施形態によれば、本発明は、リチウムイオン二次電池用の非多孔質、多孔質、またはミクロ多孔質被覆された多孔質もしくはミクロ多孔質の電池隔離板膜もしくは隔離板、ならびに/またはかかる膜もしくは隔離板の関連する製造方法および/もしくは使用に向けられる。少なくとも一実施形態によれば、リチウムイオン電池用の改良された、新規な、もしくは改質された非多孔質、多孔質、またはミクロ多孔質の膜、隔離板膜または隔離板は、1種以上の粒子および/または結合剤等の、セラミック被覆または層を被覆した多孔質またはミクロ多孔質の膜を含む。少なくとも特定の一実施形態によれば、リチウムイオン二次電池用の改良された、新規な、もしくは改質された非多孔質、多孔質、またはミクロ多孔質の膜、隔離板膜または隔離板は、1種以上のセラミック粒子と高分子結合剤との層等の、少なくとも1個の多孔質セラミック被覆または層を被覆したミクロ多孔質膜を含む。少なくとも選択された実施形態によれば、本発明のセラミック被覆された隔離板膜または隔離板は、好ましくは、リチウムイオン二次電池において向上した安全性、サイクル寿命、および/または耐高温性能を提供する。
【0011】
少なくとも選択された実施形態によれば、本発明は、改良された、新規な、もしくは改質されたミクロ多孔質膜、隔離板、および/または関連する方法に、向けられる。少なくともある実施形態によれば、本発明は、改良された、新規な、もしくは改質されたミクロ多孔質の電池隔離板膜または隔離板および/または関連する製造方法および/またはそのような膜または隔離膜の使用に、向けられる。少なくとも選択されたある実施形態によれば、本発明は、リチウムイオン電池用の改良された、新規な、もしくは改質されたミクロ多孔質の電池隔離板膜または隔離板および/または関連する製造方法および/またはそのような膜または隔離板の使用に、向けられる。少なくとも選択された特定の実施形態によれば、本発明は、二次的または再充電可能なリチウムイオン電池用の改良された、新規な、もしくは改質されたミクロ多孔質の電池隔離板膜または隔離板および/または関連する製造方法および/またはそのような膜または隔離板の使用に、向けられる。少なくとも選択されたある実施形態によれば、本発明は、リチウムイオン二次電池用の被覆されたミクロ多孔質の電池隔離板膜または隔離板および/または関連する製造方法および/またはそのような膜または隔離板の使用に、向けられる。少なくとも一実施形態によれば、リチウムイオン電池用の改良された、新規な、もしくは改質されたミクロ多孔質の膜、隔離板膜または隔離板は、1種以上の粒子、セラミック、高分子化合物および/または結合剤の層等の少なくとも1個の被覆、粒子被覆、および/またはセラミック被覆または層で被覆さ
れたミクロ多孔質膜を含む。少なくとも特定な一実施形態によれば、リチウムイオン二次電池用の改良された、新規な、もしくは改質されたミクロ多孔質の膜、隔離板膜または隔離板は、少なくとも1種以上のセラミック粒子と高分子結合剤との層等の少なくとも1個の多孔質のセラミック被覆または層で被覆されたミクロ多孔質膜を含む。少なくとも選択された実施形態によれば、本発明のセラミック被覆されたミクロ多孔質の隔離板膜は、好ましくは、リチウムイオン二次電池において向上した安全性、サイクル寿命、および/または耐高温性能を提供する。
【0012】
少なくとも一実施形態によれば、リチウムイオン電池用の改良された、新規な、もしくは改質された膜、隔離板膜または隔離板は、1種類以上のセラミック粒子と少なくとも1種の高分子結合剤等の、材料、粒子被覆、および/またはセラミック被覆および層で被覆したミクロ多孔質膜を含む。少なくとも選択された実施形態によれば、本発明のセラミック被覆された隔離板膜は、好ましくはリチウムイオン二次電池において向上した安全性、サイクル寿命、および/または耐高温性能を提供する。被覆および/またはセラミック被覆された隔離板膜の安全性、サイクル寿命、および/または耐高温性能の向上は、主に、リチウムイオン電池での被覆隔離板と電極との界面での酸化または還元反応を受けている被覆またはセラミック被覆または層によるものと思われる。隔離板と電池電極との間の界面での酸化または還元された層の形成は、更なる酸化または還元反応が生じることを防止または停止し、リチウムイオン電池の安全性、サイクル寿命、および/または耐高温性能を向上させる。加えて、被覆および/またはセラミック被覆された隔離板膜の安全性、サイクル寿命、および耐高温性能は、高温時の高い寸法安定性により向上される。更に、少なくともある実施形態では、この本発明固有のセラミック被覆されたミクロ多孔質の隔離板膜は、好ましくは、250℃以上で2%より多い揮発性成分を放出させる。
【0013】
少なくとも選択された実施形態によれば、本発明は、好ましくは、リチウムイオン二次電池用の被覆隔離板膜を提供し、該膜は、少なくとも1表面上に1種以上の高分子化合物または結合剤、粒子、および/またはセラミック粒子と少なくとも1種の高分子結合剤とで被覆した、ミクロ多孔質のポリオレフィン基材で好ましくは作製される。これらの選択された実施形態は、本発明による隔離版を生成するための過程、リチウムイオン二次電池での本発明の隔離板の使用等を更に提供する。これらの選択された実施形態は、また、本発明の隔離板を提供し、該隔離板はリチウムイオン電池で使用されたときに向上した安全性、サイクル寿命、および/または耐高温性能の利点を有するのが好ましい。リチウムイオン電池用の、この改良された、新規な、もしくは改質された膜、膜隔離板または隔離板は、好ましくは、少なくとも1表面上にセラミック粒子または粒子と1種以上の水性または水系高分子結合剤との混合物で被覆される。セラミック被覆または層に含有された水性または水系結合剤は、リチウムイオン電池内の被覆隔離板と電極との界面で、酸化または還元反応を受ける可能性がある。酸化または還元反応は、リチウムイオン電池の形成段階におよび/またはリチウムイオン電池の充電および/または放電段階に、起こり得る。酸化または還元された界面層が、被覆隔離板の表面上に障壁または犠牲界面層を提供する可能性があり、これが更なる酸化または還元反応が界面で起きることを防止または停止し、リチウムイオン電池の性能またはサイクル寿命を向上させる。
【0014】
非多孔質、多孔質またはミクロ多孔質の被覆、粒子被覆、および/またはセラミック被覆は、多孔質、マクロ多孔質またはミクロ多孔質の膜、フィルムまたは隔離板膜に、単一層または複数層の被覆または層構造としておよび片面または両面被覆として適用できる。本発明の選択された実施形態は、約1~12μm厚以上、好ましくは約2~12μm厚、より好ましくは約3~10μm厚、最も好ましくは約3~7μm厚、の片面または両面の被覆またはセラミック被覆を備える。本発明の選択された実施形態は、先行技術の被覆またはセラミック被覆された電池隔離板から、5方法のうちの少なくとも1方法によって区別され得るのが好ましい:1)本発明のセラミック被覆されたミクロ多孔質膜は、自由状
態で試験したとき1時間に120℃で2%未満の機械方向(MD)収縮率を有し、自由状態で試験したとき1時間に130℃で3%未満のMD収縮率を有する、2)本発明のセラミック被覆されたミクロ多孔質膜は、熱機械分析(TMA)を用いて試験したとき150℃で1%未満のMD収縮率を有する、3)本発明のセラミック被覆されたミクロ多孔質膜は、e-TMAを用いて試験したとき150℃で1%未満の横方向(TD)収縮率を有する、4)本発明のセラミック被覆されたミクロ多孔質膜は、熱重量分析(TGA)を用いて試験したとき250℃で2%より多い揮発性成分を放出させる、および/または5)本発明のセラミック被覆されたミクロ多孔質膜に対してGurleyでは、被覆は低増加である。
【0015】
本発明は、好ましくは、改良された、新規な、もしくは改質された電池隔離板、およびまたは関連する方法、に向けられる。少なくともある実施形態によれば、本発明は、改良された、新規な、もしくは改質された非多孔質、多孔質またはミクロ多孔質の電池隔離板および/または関連する製造方法および/またはそのような隔離板の使用、に向けられる。少なくとも選択された実施形態によれば、本発明はリチウムイオン電池用の改良された、新規な、もしくは改質された被覆、粒子被覆、またはセラミック被覆された電池隔離板および/または関連する製造方法および/またはそのような隔離板の使用に、向けられる。少なくとも選択された特定の実施形態によれば、本発明は二次的または再充電可能なリチウムイオン電池用の改良された、新規な、もしくは改質された被覆、粒子被覆、またはセラミック被覆された電池隔離板および/または関連する製造方法および/またはそのような隔離板の使用に、向けられる。少なくとも選択されたある特定の実施形態によれば、本発明は、少なくとも片面に被覆を有するミクロ多孔質膜、フィルムまたは隔離板を含む被覆電池隔離板、および/または関連する製造方法および/またはそのような隔離板の使用に、向けられる。少なくとも一実施形態によれば、リチウムイオン電池用の改良された、新規な、もしくは改質された被覆された隔離板は、セラミック粒子と少なくとも1種の高分子結合剤との多孔質または非多孔質の層等の、セラミック被覆または層で被覆されたミクロ多孔質膜を含む。少なくとも選択された実施形態によれば、本発明のセラミック被覆された隔離板は、好ましくは、リチウムイオン二次電池において向上した安全性、サイクル寿命、および/または耐高温性能を提供する。
【0016】
選択された実施形態によれば、被覆、粒子被覆、またはセラミック被覆は、膜、フィルム、隔離板膜または隔離板の片面または両面上に存在していればよい。
図4および
図5は、片面または片面被覆を施した実施形態、および両面または両面被覆を施した実施形態、をそれぞれ示す。
図4および
図5では、被覆は高分子化合物、粒子またはセラミックの被覆であればよく、被覆は多孔質または非多孔質であればよく、
図5の両面被覆した実施形態では被覆は各表面で同一でも互いに異なっていても構わない、ことに留意すべきである。例えば、2種類のセラミック被覆を示したが、1表面を無粒子被覆(PVDF等)、粒子被覆(結合剤中に高分子粒子等)、またはセラミック被覆(結合剤または高分子結合剤中のセラミック粒子等)とし、他表面を同一のまたは異なる被覆、粒子被覆、またはセラミック被覆としても構わないことが理解できる。1表面を陰極に接触するように適合させ、他表面を陽極に接触するように適合させてもよい。例えば、1表面にPVDF被覆を施し、他表面に1種以上のセラミック粒子をPP、PE、PO、PVDFまたはPTFE等の1種以上の高分子結合剤と混合させた一つ以上のセラミック粒子の混合物でセラミック被覆を施してもよい。
【0017】
好ましい膜、フィルム、下地層、膜隔離板または隔離板は、ミクロ多孔質ポリオレフィン(PO)基材でよく、この基材は乾式処理(CELGARD法としても知られている)、湿式処理、粒子引延法、BOPP法、BNBOPP過程等により作製できる。乾式処理とは、ミクロ多孔質膜での孔形成が非多孔質の前駆体膜の一軸または二軸引延し(環状またはスロット押出)に起因する処理法をいう。湿式処理は、通常、熱誘起相分離法と溶剤
抽出ステップと(またはTIPS法)を包含する。膜、フィルム、下地層、隔離板膜または隔離板は、好ましくは、2層以上の同質または異質のポリオレフィンを有するまたはそれらから構成された、単一層(単分子層)または複数層(2層、3層またはその他の複数層)のミクロ多孔質のポリオレフィン膜であればよい。ポリオレフィンの例として、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリメチルペンテン(PMP)の上述の任意のものとの共重合体およびその混合物が含まれるが、それらに限定はされない。好ましいミクロ多孔質のポリオレフィン基材は、約1~100μm、好ましくは約4~50μm、より好ましくは約6~30μm、最も好ましくは8~20μm、の範囲の厚さを有する。好ましい膜として、Celgard社(LLC of Charlotte、North Carolina)から入手可能なCelgard(登録商標)ブランドの膜がある。
【0018】
セラミック被覆は、1種以上の水性または水系結合剤、高分子化合物、高分子結合剤等、と混合された1種以上のセラミック粒子または材料、で作製または構成され、またはこれらを含むのが好ましい。セラミック粒子は、無機物または有機物でよいが、無機物であることが好ましい。無機物粒子の非限定的な例として、ケイ素(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、ジルコニウム、チタン(TiO2)または亜鉛の酸化物またはそれらの混合物、またはケイ素、アルミナ、ジルコニウム、カルシウム、亜鉛の炭酸塩およびそれらの配合物または混合物がある。好ましい粒子はAl2O3である。無機物粒子は、直径で0.05~5μm、より好ましくは直径で0.01~4μm、最も好ましくは0.01~2μm、の範囲の平均粒径を有していればよい。セラミック粒子は、粒子への充分な負荷および被覆厚さを想定しまたは加えた場合、高温で電極を隔てまたは分離させておくように適合されるのが好ましい。
【0019】
粒子被覆は、1種以上の水性または水系結合剤、高分子結合剤、高分子化合物等、と混合された1種以上の粒子または材料、で作製または構成され、またはこれらを含むのが好ましい。粒子は、無機物または有機物でよいが、有機物であることが好ましい。有機物粒子の非限定的な例として、高分子繊維、ビーズ、細砕石等の高分子材料または粒子がある。好ましい高分子化合物として、PP、PE、PO、PP/PE、PTFE、PVDF、共重合体、ブロック共重合体、またはそれらの配合物または混合物が含まれる。好ましい粒子は、PO、PVDFまたはPETである。有機物粒子は、直径で0.05~5μm、より好ましくは直径で0.01~4μm、最も好ましくは0.01~2μm、の範囲の平均粒径を有していればよい。ある種の高温用高分子化合物粒子は、粒子への充分な負荷および被覆厚さを想定しまたは加えた場合、高温で電極を隔てまたは分離させておくように適合されるのが好ましい。
【0020】
好ましい水系高分子結合剤は、ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリアクリル酸塩、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、もしくはポリ(アクリル酸ナトリウム-アクリルアミド-アクリロニトリル)共重合体、または上記の共重合体または上記の配合物または混合物でよい。
【0021】
高分子結合剤:被覆混合物を構成するセラミック粒子の比率は1:99~99:1であればよい。
【0022】
ミクロ多孔質ポリオレフィン基材を被覆するための方法は、浸漬法、グラビア法、噴霧法、電子スピン法、メイヤーロッド(myer rod)浸漬法、スロットダイまたは押出法、スパッタ法、蒸着法、スパッタ化学蒸着法等の、従来の任意の被覆方法を含む。セラミック被覆は、ミクロ多孔質膜、基材または隔離板膜に、片面または両面被覆として適用できる。本発明の少なくとも選択された実施形態は、好ましくは、約2~12μmの厚さ、より好ましくは約3~10μmの厚さ、最も好ましくは3~7μmの厚さの、片面ま
たは両面のセラミック被覆を備える。好ましい方法は、両面被覆である。
【0023】
好ましいと思われる本発明のセラミック被覆されたミクロ多孔質隔離板膜は、高温での膜の縦および横方向での収縮量の減少により向上した、高い温度安定性を有する。本発明のセラミック被覆された隔離板膜を、TA Instruments製熱機械分析器モデルTMA Q400を用いて分析した。この試験方法では、長さ5mmで幅5.9mmの試料を0.02Nの一定負荷下で保持する一方、試料の融点を超えて試料が破断するまで温度を5℃/分の率で上昇させる。通常、隔離板膜の試料の温度が上昇するにつれて、試料は初期には小さな測定可能な量の収縮を示し、その後試料は最終的な破壊または破断に至るまで伸長する。隔離板膜フィルムが呈す初期収縮を、歪み収縮と定義する。試料の破壊または破断点の温度を、破断温度と定義する。
【0024】
図1は、本発明の実施例Ex1~EX5用の試料についての縦MD方向でのサーモグラム分析またはTMA分析を、比較例CE1およびCE2と共に、示している。セラミック被覆された試料Ex1、Ex2およびEx3のTMAデータは、未被覆の比較用CE1に比べて、90および130℃の間での、セラミック被覆されたPE試料のMD歪み収縮量の顕著な減少を示している。本発明のEx4、即ちセラミック被覆されたPP/PE/PPの3層膜であるCelgardC-210もまた、未被覆の比較試料CE2と比べて、歪み収縮量の減少を示している。更に、単分子層PPセラミック被覆されたミクロ多孔質膜であるEx5、のMD歪み収縮は減少している。本発明のセラミック被覆は、90および130℃の間の温度で、PE、PPとPPおよびPE含有の複数層ミクロ多孔質隔離板膜との、MD歪み収縮量の減少を生じている。
【0025】
130℃の温度では、Ex1~Ex5のTMA MD方向の歪みが2%未満であることが示されている。更に、140℃では、Ex1、Ex2およびEx3に示されたセラミック被覆されたPEミクロ多孔質膜のTMA MD方向の歪み収縮率は、2%未満である。更に、150℃では、セラミック被覆されたPEミクロ多孔質膜Ex1、Ex2およびEx3のTMA MD方向の歪み収縮率は、2%未満である。更に、160℃では、セラミック被覆されたPEミクロ多孔質膜Ex2およびEx3のTMA MD方向の歪み収縮率は、2%未満である。
【0026】
更に、MD方向でのTMA試験結果は、PE膜への両面被覆として施されたときのセラミック被覆総厚5~6μm(
図1のEx2を参照)が、セラミック被覆されたPE隔離板膜を250℃未満で溶融することから充分に防止する旨を示している。
【0027】
図2は、試料Ex1~Ex5と比較例CE1およびCE2と、の横方向(TD)での試験結果を示している。本発明のセラミック被覆は、1%未満の非常に低いTD歪み収縮率を有している。Ex2は225℃の温度未満で高い温度安定性を有している。
【0028】
リチウムイオン電池における本発明のセラミック被覆された電池隔離板膜のある好ましい有益な効果は、高温での向上した安全性にある。高温での隔離板のMDおよびTD方向の歪み収縮最小量は、電池の陽極と陰極との間の何らかの接触を防止するために絶縁性で電気的非電導性の障壁を維持する上での主要因かも知れない。
【0029】
図3は、本発明のセラミック被覆された隔離板膜Ex3およびEx4の熱重量分析(TGA)サーモグラムを、比較例CE3およびCE4と共に、示している。本発明のセラミック被覆された隔離板のTGA分析を、TA Instruments製TGA Q50モデルを用いて行い、本発明のセラミック被覆された隔離板膜の質量変化を温度上昇の関数としてモニターした。
【0030】
TGAは、熱および化学両論比率を利用して試料中の溶質の質量百分率を決定する過程である。TGAにより試験試料中の揮発性成分の損失を定量化できる。
【0031】
CE3およびCE4は、250℃の温度までは1.4%未満の重量損失であることを示している。対称的に、本発明のセラミック被覆された隔離板膜試料Ex3およびEx4は250℃の温度で2重量%より多い揮発性成分の損失を呈している。
図3の本発明のセラミック被覆された隔離板膜を用いて、リチウムイオン電池を作製してこれに45℃の温度で合計400サイクルの充電/放電を受けさせた。セラミック被覆された隔離板膜Ex3およびEx4を400サイクルの試験後、電池から取出して、これらのセラミック被覆された隔離板膜にTGAを実施した。Ex3およびEx4は400電池サイクル後も90%より大きな質量保持を示し、工業電池のサイクル標準を満たしている。
試験方法
【0032】
改正後のASTM2732-96の手順を用いて、収縮を120℃で1時間または130℃で1時間測定する。試料の幅および長さの両方について、熱処理の前と後に測定する。試料は自由状態で炉内に置き、つまり試料を張力が掛かった状態では置かず、試料の幅出しフレームによる支持も行なわない。正味収縮率を、以下の式により計算する。
%正味収縮率=100*(Lo-L1)/(Lo+Wo-W1/Wo))
【0033】
ここで、Loは処理前の試料の長さ、L1は処理後の試料の長さ、Woは処理前の試料の幅、W1は処理後の試料の幅、である。
【0034】
ガーレー(Gurley)は日本工業規格として定義(JIS Gurley)され、OHKEN通気性試験器を用いて測定を行う通気性試験である。JISガーレーは、100ccの空気が4.8インチの一定水圧で1平方インチのフィルムを通過するのに要する秒時間である。
厚さは、Emveco Microgage 210-Aマイクロメーター厚さ試験器と試験手順ASTM D374とを用いて、マイクロメートル、μm、で測定される。
【0035】
熱機械分析(TMA)は負荷の下での試料の形状変化の測定を包含し、温度は線形状に増加させる。TA Instruments製のTMA Q400を分析に用いた。TMA分析試験には、長さ5mmで幅5.9mmの小型の隔離板試料を利用して、ミニインストロン(mini-Instron)型グリップに保持する。試料を約0.02Nの一定張力または負荷下に保持し、試料の融点を超えて試料が破断温度で破断するまで温度を5℃/分で上昇させる。通常、隔離板膜試料の温度が上昇するにつれて、試料は初期に何らかの収縮を示し、次いで試料が最終的に破壊または破断に至るまでの伸長を開始する。隔離板膜フィルムが呈する初期収縮を歪み収縮と定義する。
【0036】
熱重量分析(TGA)は、制御下の雰囲気中で試料試験片が制御下の温度プログラムを受けた際の、物質質量を温度関数としてモニターする技術である。分析にはTA Instruments製TGA Q50モデルを用いた。TGAは、熱と化学両論比率とを利用して試料に含有された溶質の質量百分率を決定する過程である。分析は、試料温度を徐々に上げて対温度重量(百分率)をプロットすることにより実行する。TGAによって、水分損失、溶剤の損失、可塑剤損失、脱炭酸反応、熱分解、酸化、分解、フィラー重量%、カーボンナノチューブに残留する金属触媒の残滓量、および灰分重量%、を定量化できる。
【0037】
少なくとも選択された実施形態によれば、薄型または超薄型隔離板、停止作用のある薄型または超薄型隔離板、停止挙動のある薄型または超薄型3層の隔離板等、を使用するのが好ましいかもしれない。一実施形態では、停止する能力を保持する、約9~12ミクロ
ンの薄さ範囲または約3~9ミクロンの極薄範囲、の電池隔離板を用いるのが好ましい。また、PP層が20ミクロン未満、10ミクロン未満、5ミクロン未満、2.5ミクロン未満、または約0.5と1.5ミクロンとの間、のPP/PE/PP3層構成を用いるのが好ましいかもしれない。少なくとも選択された特定の実施形態によれば、PP/PE/PPまたはPP/PP/PPまたはPP/PE/PEまたはPP/PP/PEの3層の電池隔離板構造を、製品厚さ約6μm~80μmの範囲で使用することが好ましいかもしれず、この場合、最外側PP層厚さは20μm未満、10μm未満、5μm未満、2.5μm未満、または約0.25μmと2μmとの間、にする。
【実施例】
【0038】
(実施例1)
Celgard(登録商標)EK1240ポリエチレン(PE)製12μmのミクロ多孔質の隔離板膜を、平均粒径が2μm未満のデグサ(Degussa)Al2O3セラミック粒子と混合させたポリアクリル酸ナトリウム、アクリルアミドおよびアクリロニトリルの共重合体で構成された水性高分子結合剤の混合物で、被覆した。被覆は、両面被覆で総被覆厚が4μmであった。最終被覆膜厚さは、表1に示すように16μmであった。
【0039】
【0040】
(実施例2)
Celgard(登録商標)EK1240ポリエチレン(PE)製12μmのミクロ多孔質隔離板膜を、平均粒径が2μm未満のデグサAl2O3セラミック粒子と混合させたポリアクリル酸ナトリウム、アクリルアミドおよびアクリロニトリルの共重合体で構成された水性高分子結合剤の混合物で、被覆した。被覆は、両面被覆で総被覆厚が6μmであった。最終被覆膜厚は18μmであった。
【0041】
(実施例3)
Celgard(登録商標)EK1311ポリエチレン(PE)製13μmのミクロ多孔質隔離板膜を、平均粒径が2μm未満のデグサAl2O3セラミック粒子と混合させたポリアクリル酸ナトリウム、アクリルアミドおよびアクリロニトリルの共重合体で構成された水性高分子結合剤の混合物で、被覆した。被覆は、両面被覆で総被覆厚が7μmであった。最終被覆膜厚は20μmであった。
【0042】
(実施例4)
Celgard(登録商標)C210ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン(PP/PE/PP)製16μmの3層ミクロ多孔質隔離板膜を、平均粒径が2μm未満のデグサAl2O3セラミック粒子と混合させたポリアクリル酸ナトリウム、アクリルアミドおよびアクリロニトリルの共重合体で構成された水性高分子結合剤の混合物で、被覆した。被覆は、両面被覆で総被覆厚が6μmであった。最終被覆膜厚は、22μmであった。
【0043】
(実施例5)
Celgard(登録商標)A273ポリプロピレン(PP)の16μmのミクロ多孔質の隔離板膜に、平均粒径が2μm未満のデグサAl2O3セラミック粒子と混合させたポリアクリル酸ナトリウム、アクリルアミドおよびアクリロニトリルの共重合体で構成された水性高分子結合剤の混合物を被覆した。被覆は、総被覆厚が6μmの両面被覆であった。最終被覆膜厚は22μmであった。
【0044】
(比較例1)
韓国セルガード社(Celgard Korea Inc.)により製造されたCelgard(登録商標)EK1240は、12μm厚の未被覆の単分子層ポリエチレン(P
E)製のミクロ多孔質隔離板膜である。
【0045】
(比較例2)
Celgard(登録商標)C-210は、16μm厚の未被覆の3層ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン(PP/PE/PP)製のミクロ多孔質隔離板膜である。
【0046】
(比較例3)
比較例3は、A社によりCelgard(登録商標)2320をミクロ多孔質基体基材膜として用いて製造された、被覆済製品である。被覆は、セラミック粒子と高分子結合剤との混合物で構成され、両面被覆が施されて33.5μmの被覆厚を有している。
【0047】
(比較例4)
比較例4は、B社により製造されたPEミクロ多孔質隔離板膜であって、セラミック粒子と高分子結合剤との混合物で片面被覆されて33μmの被覆厚を有している。
【0048】
本発明の少なくとも一実施形態、目的または態様は、リチウムイオン二次電池用の改良された、新規な、もしくは改質されたミクロ多孔質膜隔離板に向けられており、これはセラミック粒子と高分子結合剤との多孔質層で被覆されたミクロ多孔質膜を含んでいる。この発明のセラミック被覆されたミクロ多孔質の隔離板膜は、主に、被覆した分離板と電池電極との間の界面で酸化または還元反応を受けているセラミック被覆層による、リチウムイオン二次電池での向上した安全性と耐高温性能とを有する。隔離板と電池電極との間の酸化または還元された界面層の形成は、更なる酸化または還元反応が生じることを防止または停止し、リチウムイオン電池の安全性と耐高温性能とを向上させる。加えて、セラミック被覆されたミクロ多孔質の隔離板膜の安全性および耐高温性能は、高温で、高い寸法安定性によって向上される。更に、この固有のセラミック被覆されたミクロ多孔質の隔離板膜は、250℃以上で2%より多い揮発性成分を放出させる。
【0049】
本発明の少なくとも一実施形態、目的または態様は、リチウムイオン二次電池用のセラミック被覆された隔離板であって、
a.第1の表面と第2の表面とを有するミクロ多孔質膜であって、単一層、複数層、単
一重ね、および/または複数重ね構造のうちの少なくとも1種である、ミクロ多孔質膜と、
b.ミクロ多孔質膜の少なくとも1表面上の多孔質のセラミック被覆であって、水性高分子結合剤中のセラミック粒子の層を備え、使用時に更なる酸化または還元反応が生じることを防止または停止する酸化掃気層を提供する、多孔質のセラミック被覆と、
を備える、セラミック被覆された隔離板、
に、向けられる。
【0050】
本発明の少なくとも選択された実施形態、目的または態様によれば、改良された、新規な、もしくは改質された膜、隔離板および/または関連する方法が提供される。少なくともある実施形態によれば、本発明は改良された、新規な、もしくは改質された非多孔質、多孔質、またはミクロ多孔質の電池隔離板膜または隔離板および/または関連する製造方法および/またはそのような膜または隔離板の使用に、向けられる。少なくとも選択された実施形態によれば、本発明はリチウムイオン電池用の改良された、新規なまたは改質された非多孔質、多孔質、またはミクロ多孔質の電池隔離板膜または隔離板および/または関連する製造方法および/またはそのような膜または隔離板の使用に、向けられる。少なくとも選択された特定の実施形態によれば、本発明は、二次的または再充電可能なリチウムイオン電池用の改良された、新規な、もしくは改質された非多孔質、多孔質、またはミクロ多孔質の電池隔離板膜または隔離板および/または関連する製造方法および/またはそのような膜または隔離板の使用に、向けられる。少なくとも選択されたある特定の実施形態によれば、本発明は、リチウムイオン二次電池用の非多孔質、多孔質、またはミクロ多孔質被覆多孔質またはミクロ多孔質の電池隔離板膜または隔離板および/または関連する製造方法および/またはそのような膜または隔離板の使用に、向けられる。少なくとも一実施形態によれば、リチウムイオン電池用の改良された、新規な、もしくは改質された非多孔質、多孔質、またはミクロ多孔質の膜、隔離板膜または隔離板は、一種以上の粒子および/または結合剤の層等のセラミック被覆または層で、被覆された多孔質またはミクロ多孔質膜を含む。少なくとも特定な一実施形態によれば、リチウムイオン二次電池用の改良された、新規な、もしくは改質された非多孔質、多孔質、またはミクロ多孔質膜、隔離板膜または隔離板は、少なくとも一種のセラミック粒子と高分子結合剤との層等の少なくとも一種の多孔質のセラミック被覆または層で被覆されたミクロ多孔質膜を含む。少なくとも選択された実施形態によれば、本発明のセラミック被覆された隔離板膜または隔離板は、好ましくは、リチウムイオン二次電池での向上した安全性、サイクル寿命、および/または耐高温性能を提供する。
【0051】
選択された目的によれば、改良された、新規な、もしくは改質された膜、隔離板、および/または関連する方法が提供される。少なくともある目的によれば、改良された、新規な、もしくは改質された電池隔離板膜または隔離板および/または関連する製造方法および/またはそのような膜または隔離板が提供される。少なくとも選択されたある特定な目的によれば、リチウムイオン二次電池用の被覆された電池隔離板膜または隔離板および/または関連する製造方法および/またはそのような膜または隔離板の使用が提供される。
【0052】
更なる態様では、改良された、新規な、もしくは改質された膜、隔離板、および/または関連する製品を製造する方法を本明細書に説明する。被覆された膜または隔離板の一作製方法は、いくつかの実施形態で、高分子固着剤または結合剤中に無機物粒子を分散させて複合被覆または層材料を提供することと、複合被覆材料から予備形成した基体膜または隔離板上に被覆または層を形成することと、を含む。
【0053】
膜または隔離板は、上に述べた方法も含めて、本発明の目的と矛盾しない任意の方法で形成できる。例えば、一部の実施形態では、複合膜または隔離板を、ラミネーション、押出し、同時押出し、噴霧被覆、ローラコーティング、乾式押出し、湿式押出し、および/
またはその他、により形成してもよい。本発明の目的と矛盾しない任意の押出し装置を用いて、本明細書に説明したような方法を実行してもよい。例えば、一部の場合には、1軸または2軸押出機が使用される。加えて、必要ならば、本明細書で説明した基体膜は、スロットまたは環状ダイ処理法、鋳造またはブロウン(blown)、またはその他、を含むダイ処理法を用いて形成できる。
【0054】
加えて、本発明の目的と矛盾しない任意量の粒子、無機物粒子、有機物粒子、またはそれらの配合物または混合物を用いて所望の被覆材料または層を提供してもよい。一部の場合には、被覆材料用の粒子成分を提供するために、最大で約98重量百分率の無機物および/または有機物粒子、最大で約80重量百分率の無機物および/または有機物粒子、最大で約60重量百分率の無機物および/または有機物粒子、最大で約50重量百分率の無機物および/または有機物粒子、または最大で約40重量百分率の無機物および/または有機物粒子、が使用され、この場合には重量百分率は複合被覆材料の総重量に基づく。
【0055】
本明細書に説明した方法にしたがって生成した複合膜は、上に詳述した任意の構造および/または特質を有し得る。例えば、一部の実施形態では、本明細書に説明した方法に従って生成した複合膜は、複数の高分子化合物層を含み、少なくとも1層は本明細書に説明したような高分子固着剤または結合剤中に分散させた無機物または有機物の粒子を含んだミクロ多孔質の高分子固着剤を含む。一部の実施形態では、複合膜の2以上の個別層は無機物および/または有機物の粒子を含む。あるいは、他の実施形態では、複合膜の唯一の個別層が無機物および/または有機物の粒子を含む。
【0056】
本発明の少なくとも選択された好ましいと思われる実施形態によれば、リチウムイオン二次電池等のエネルギー貯蔵デバイス用のセラミック被覆された隔離板であって、
a.第1の表面と第2の表面とを有するミクロ多孔質膜であって、単一層、複数層、単一重ね、および/または複数重ね構造のうちの少なくとも1種である、ミクロ多孔質膜と、
b.ミクロ多孔質膜の少なくとも1表面上の多孔質のセラミック被覆であって、水性高分子結合剤中のセラミック粒子の層を備えた、多孔質のセラミック被覆と、
を備え、
セラミック被覆された隔離板は、向上した安全性と、耐高温性能と、酸化または還元反応の界面、表面、または境界と、使用時の前記隔離板と電池電極との間の酸化または還元された界面層と、のうちの少なくとも1つを提供し、更なる酸化または還元反応が使用時に生じることを防止または停止し、リチウムイオン電池の安全性および耐高温性能、および高温時の高い寸法安定性等を向上させる。
【0057】
上記のセラミック被覆された隔離板であって、水性高分子結合剤は、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリアクリル酸塩、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、もしくはポリ(アクリル酸ナトリウム-アクリルアミド-アクリロニトリル)共重合体、および/またはそれらの共重合体、混合物、配合物、および/または組み合わせ、のうちの少なくとも1種を含む、隔離板。
【0058】
上記のセラミック被覆された隔離板であって、記水性高分子結合剤は、ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリアクリル酸塩、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、もしくはポリ(アクリル酸ナトリウム-アクリルアミド-アクリロニトリル)共重合体、またはそれらの共重合体、のうちの少なくとも2種を含む、隔離板。
【0059】
上記のセラミック被覆された隔離板であって、セラミック粒子は、無機物粒子、イオン伝導性材料(ベータ-アルミナ、即ちシリカとアルミニウムのリン酸塩である超イオン伝
導性材料であるナシコン(Nasicon))、ケイ素(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、ジルコニウム、チタン(TiO2)の酸化物、それらの混合物、ケイ素、アルミナ、ジルコニウム、カルシウムの窒化物、またはそれらの混合物、および/またはそれらの混合物、配合物および/または組み合わせ、のうちの少なくとも1種を含む、隔離板。
【0060】
上記のセラミック被覆された隔離板であって、セラミック粒子は、直径で0.01μm~5μm、より好ましくは直径で0.05μm~4μm、最も好ましくは直径で0.01μm~2μm、の範囲の平均粒径を有する粒子を含む、隔離板。
【0061】
上記のセラミック被覆された隔離板であって、セラミック粒子は、直径で0.01μm~5μm、より好ましくは直径で0.05μm~4μm、最も好ましくは直径で0.05μm~2μm、の範囲の平均粒径を有するAl2O3を含む、隔離板。
【0062】
上記のセラミック被覆された隔離板であって、ミクロ多孔質膜の少なくとも1表面上の多孔質のセラミック被覆は、約1.5μm~5.5μmの厚さを有する、隔離板。
【0063】
上記のセラミック被覆された隔離板であって、ミクロ多孔質膜の少なくとも1表面上の多孔質のセラミック被覆は約1.5μm~5.5μmの厚さを有し、セラミック被覆された隔離板は、110℃以下、好ましくは130℃以下、より好ましくは140℃以下、更により好ましくは160℃以下、最も好ましくは175℃以下、で-2%以上のTMA MD寸法変化を有する、隔離板。
【0064】
上記のセラミック被覆された隔離板であって、セラミック被覆された隔離板は、130℃以下、好ましくは140℃以下、より好ましくは150℃以下、最も好ましくは160℃以下、で約0.5%のTMA TD収縮率を有する、隔離板。
【0065】
上記のセラミック被覆された隔離板であって、ミクロ多孔質膜の少なくとも1表面上の多孔質のセラミック被覆は約3.0μm~5.5μmの厚さを有し、セラミック被覆された隔離板は1時間に135℃で15%以下のMD収縮率、好ましくは1時間に150℃で28%以下のMD収縮率、を有する、隔離板。
【0066】
上記のセラミック被覆された隔離板であって、ミクロ多孔質膜は湿式処理ポリエチレンのミクロ多孔質膜であり、ミクロ多孔質膜の少なくとも1表面上の多孔質のセラミック被覆は約3.0μm~5.5μmの厚さを有し、セラミック被覆された隔離板は、1時間に135℃で2%以下のMD収縮率、好ましくは1時間に150℃で5%以下のMD収縮率、を有する、隔離板。
【0067】
上記のセラミック被覆された隔離板であって、ミクロ多孔質膜の少なくとも1表面上の多孔質のセラミック被覆は約3.0μm~5.5μmの厚さを有し、セラミック被覆された隔離板は、未被覆の膜上で1時間に135℃で少なくとも40%のMD収縮率の減少、好ましくは未被覆の膜上で1時間に150℃で少なくとも30%のMD収縮率の減少、を有する、隔離板。
【0068】
上記のセラミック被覆された隔離板であって、ミクロ多孔質膜は湿式処理ポリエチレンのミクロ多孔質膜であり、ミクロ多孔質膜の少なくとも1表面上の多孔質のセラミック被覆は約3.0μm~5.5μmの厚さを有し、セラミック被覆された隔離板は、未被覆の膜上で1時間に135℃で少なくとも10%のMD収縮率の減少、好ましくは未被覆の膜上で1時間に150℃で少なくとも5%のMD収縮率の減少、を有する、隔離板。
【0069】
上記のセラミック被覆された隔離板であって、ミクロ多孔質膜の少なくとも1表面上の
多孔質のセラミック被覆は約5.5μm~9.0μmの厚さを有し、セラミック被覆された隔離板は、時間に135℃で4%以下のMD収縮率、好ましくは1時間に150℃で5%以下のMD収縮率、を有する、隔離板。
【0070】
上記のセラミック被覆された隔離板であって、ミクロ多孔質膜は湿式処理ポリエチレンのミクロ多孔質膜であり、ミクロ多孔質膜の少なくとも1表面上の多孔質のセラミック被覆は約5.5μm~9.0μmの厚さを有し、セラミック被覆された隔離板は、1時間に135℃で2%以下のMD収縮率、好ましくは1時間に150℃で2%以下のMD収縮率、を有する、隔離板。
【0071】
上記のセラミック被覆された隔離板であって、ミクロ多孔質膜の少なくとも1表面上の多孔質のセラミック被覆は約5.5μm~9.0μmの厚さを有し、セラミック被覆された隔離板は、未被覆の膜上で1時間に135℃で少なくとも80%のMD収縮率の減少、好ましくは未被覆の膜上で1時間に150℃で少なくとも60%のMD収縮率の減少、を有する、隔離板。
【0072】
上記のセラミック被覆された隔離板であって、ミクロ多孔質膜は湿式処理ポリエチレンのミクロ多孔質膜であり、ミクロ多孔質膜の少なくとも1表面上の多孔質のセラミック被覆は約5.5μm~9.0μmの厚さを有し、セラミック被覆された隔離板は、未被覆の膜上で1時間に135℃で少なくとも90%のMD収縮率の減少、好ましくは未被覆の膜上で1時間に150℃で少なくとも70%のMD収縮率の減少、を有する、隔離板。
【0073】
上記のセラミック被覆された隔離板であって、水性結合剤とAl2O3等の掃気フィラーとを有するセラミック被覆された隔離板は、250℃以上で0.5%以上の揮発性成分を、好ましくは250℃以上で1.0%以上の揮発性成分を、より好ましくは250℃以上で1.5%以上の揮発性成分を、最も好ましくは250℃以上で2.0%以上の揮発性成分を、放出させる、隔離板。
【0074】
上記のセラミック被覆された隔離板であって、セラミック被覆された隔離板は、120℃以上、好ましくは130℃以上、より好ましくは140℃以上、更に好ましくは150℃以上、最も好ましくは160℃以上、で0%の歪み収縮率、を有する、隔離板。
【0075】
上記のセラミック被覆された隔離板であって、ミクロ多孔質膜はポリオレフィンのミクロ多孔質膜であり、120℃以上で20%未満、好ましくは120℃以上で15%未満、より好ましくは120℃以上で10%未満、更に好ましくは120℃以上で5%未満、最も好ましくは120℃以上で2%未満、のMD伸長率、を有する、隔離板。
【0076】
本発明の少なくとも好ましいと思われるある実施形態によれば、上に説明したセラミック被覆された隔離板を備えたリチウムイオン二次電池における改良が提供される。
【0077】
本発明の少なくとも好ましいと思われるある実施形態によれば、上記のリチウムイオン二次電池を備えた電気車両駆動システムにおける改良が提供される。
【0078】
本発明の少なくとも好ましいと思われるある実施形態によれば、上記のリチウムイオン二次電池を備えたエネルギー貯蔵デバイスにおける改良が提供される。
【0079】
本発明の少なくとも好ましいと思われるある実施形態によれば、リチウムイオン二次電池用のセラミック被覆された隔離板であって、
c.第1の表面と第2の表面とを有するミクロ多孔質膜であって、ミクロ多孔質膜は単一層、複数層、単一重ねおよび/または複数重ね構造のうちの少なくとも1種である、
ミクロ多孔質膜と、
d.ミクロ多孔質膜の少なくとも1表面上の多孔質のセラミック被覆であって、水性高分子結合剤中のセラミック粒子の層を備え、使用時に更なる酸化または還元反応が生じることを防止または停止する酸化掃気層を提供する、多孔質のセラミック被覆と、を備えた、セラミック被覆された隔離板、が提供される。
【0080】
上記のセラミック被覆された隔離板であって、セラミック被覆された隔離板は、250℃以上で0.5%より多い揮発性成分を、好ましくは250℃以上で1.0%より多い揮発性成分を、より好ましくは250℃以上で1.5%より多い揮発性成分を、最も好ましくは250℃以上で2.0%より多い揮発性成分を、放出させる、隔離板。
【0081】
上記のセラミック被覆された隔離板であって、ミクロ多孔質膜は停止挙動のある極薄3層の隔離板であって、停止する能力がある約3~9ミクロンの超極薄範囲にある、隔離板。
【0082】
本発明の少なくとも選択された実施形態によれば、リチウムイオン二次電池用の被覆、粒子被覆、またはセラミック被覆された隔離板であって、
a.第1の表面と第2の表面とを有するミクロ多孔質膜であって、ミクロ多孔質膜は単一層、複数層、単一重ねおよび/または複数重ね構造のうちの少なくとも1種である、ミクロ多孔質膜と、
b.ミクロ多孔質膜の少なくとも1表面上の非多孔質もしくは多孔質の被覆、粒子被覆、またはセラミック被覆であって、高分子結合剤の、高分子結合剤中の粒子の、または溶剤系または水系の高分子結合剤中のセラミック粒子の、非多孔質または多孔質の層を備えた、隔離板、が提供される。例えば、結合剤が膨潤して電界液により電解液中のゲルが有効にイオン導電性になっているか、粒子が少なくともそれらの外表面でイオン導電性になっているか、またはその両者である場合、非多孔質被覆は依然イオン導電性であることができる。
【0083】
本発明の種々の目的を達成するように本発明の種々の実施形態について説明を行った。これらの実施形態は、本発明の原理を説明するものに過ぎないことを認識されるべきである。本発明の主旨および範囲から逸脱しない限り、多くの変形態様およびその適合化が当業者にとってたやすく明らかになるだろう。