(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】隆起面フランジシステム、原子炉モジュールの容器、及び隆起面フランジアセンブリ
(51)【国際特許分類】
F16L 23/032 20060101AFI20230216BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20230216BHJP
F16J 15/06 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
F16L23/032
F16J15/10 L
F16J15/06 H
(21)【出願番号】P 2021513403
(86)(22)【出願日】2018-12-14
(86)【国際出願番号】 US2018065791
(87)【国際公開番号】W WO2020068144
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-10-26
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511117093
【氏名又は名称】ニュースケール パワー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】リスカイ、 タマス
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-100959(JP,A)
【文献】国際公開第2015/075966(WO,A1)
【文献】特表2014-519602(JP,A)
【文献】特開2003-227893(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第04340051(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 23/032
F16J 15/10
F16J 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隆起面フランジ
システムであって、
第1隆起面フランジと、
第2フランジと、
前記第1隆起面フランジ及び前記第2フランジを直列に貫通するボルトと
を含み、
前記第1隆起面フランジは、
一以上のボルトのための一以上の開口それぞれを画定するボルト締め面と、
原子炉モジュールにおいて封止部を形成するための
、第1平面に配置される第1隆起面、及び前記第1平面とは異なる第2平面に配置される第2隆起面を含む一対の隆起面と
を含み、
前記第1隆起面及び前記第2隆起面の少なくとも一方が、ガスケットを受容するべく配置される一以上の溝を有し、
前記ボルト締め面は、
前記隆起面の間において前記第1平面及び
前記第2平面とは異なる第3平面に配置され、
前記ボルト締め面及び前記隆起面は一つの方向に向けられ、
前記第2隆起面のエリアと
前記第3平面との間の距離は、係合フランジとの接触力を
前記第2隆起面のエリアにわたって分散させて
前記封止部を維持する
べく前記第1平面と
前記第3平面との間の距離よりも大きい、隆起面フランジ
システム。
【請求項2】
前記第1平面及び
前記第2平面は非交差である、請求項1の隆起面フランジ
システム。
【請求項3】
前記第1平面及び
前記第2平面は交差する、請求項1の隆起面フランジ
システム。
【請求項4】
前記第2隆起面
が前記一以上の
溝を含む、請求項1の隆起面フランジ
システム。
【請求項5】
前記
一以上の溝に対応して配置される一以上のリングガスケットを
さらに含む、請求項4の隆起面フランジ
システム。
【請求項6】
前記第2隆起面の表面は直線勾配を含み、
前記直線勾配の表面は第1セクションを有し、
前記第1セクションは、前記直線勾配の表面の異なる第2セクションよりも前記第3平面から遠くに存在し、
前記第2セクションは前記第1セクションよりも、前記一以上のボルト開口のうち最も近いものから遠くに存在する、請求項1の隆起面フランジ
システム。
【請求項7】
前記封止部は、前記原子炉モジュールの炉容器の封止部を含む、請求項1の隆起面フランジ
システム。
【請求項8】
前記封止部は、前記原子炉モジュールの格納容器の封止部を含む、請求項1の隆起面フランジ
システム。
【請求項9】
前記第1隆起面及び第2隆起面はそれぞれがリング形状に沿って連続する、請求項1の隆起面フランジ
システム。
【請求項10】
前記第2隆起面のエリアと前記第3平面との間の距離と、前記第1平面と前記第3平面との間の距離との差が、前記隆起面フランジ
システムが取り付けられる圧力デバイスの側壁の変形可能性に基づいて選択される、請求項1の隆起面フランジ
システム。
【請求項11】
原子炉モジュールの容器であって、
前記容器の第1円筒側壁を前記容器の第2側壁に結合する容器フランジ接合部を含み、
前記容器フランジ接合部は、一以上のボルトを使用して下側フランジに結合される上側フランジを含み、
前記上側フランジ又は前記下側フランジは、
第1隆起面フランジと、
第2フランジと、
前記第1隆起面フランジ及び前記第2フランジを直列に貫通するボルトと
を含み、
前記第1隆起面フランジは、
前記一以上のボルトのための一以上の開口それぞれを画定するボルト締め面と、
前記
原子炉モジュールにおいて封止部を形成するための、第1平面に配置される第1隆起面、及び前記第1平面とは異なる第2平面に配置される第2隆起面を含む一対の隆起面と
を含み、
前記第1隆起面及び前記第2隆起面の少なくとも一方が、ガスケットを受容するべく配置される一以上の溝を有し、
前記ボルト締め面は、前記隆起面の間において前記第1平面及び前記第2平面とは異なる第3平面に配置され、
前記ボルト締め面及び前記隆起面は一つの方向に向けられ、
前記第2隆起面のエリアと前記
第3平面との間の距離
は、係合フランジとの接触力を前記第2隆起面のエリアにわたって分散させて前記
封止部を維持するべく前記第1平面と前記第3平面との間の距離よりも大きい、容器。
【請求項12】
前記第2側壁は第2円筒側壁を含む、請求項11の容器。
【請求項13】
前記容器は炉冷却材を包含する、請求項11の容器。
【請求項14】
前記容器は、炉圧力容器、又は炉圧力容器用の格納容器を包含する、請求項11の容器。
【請求項15】
前記容器フランジ接合部は第1容器フランジ接合部を含み、
前記炉圧力容器は第2容器フランジ接合部を含む、請求項14の容器。
【請求項16】
隆起面フランジアセンブリであって、
一以上のボルトを使用して下側フランジに結合される上側フランジを含み、
前記上側フランジ又は前記下側フランジは、
第1隆起面フランジと、
第2フランジと、
前記第1隆起面フランジ及び前記第2フランジを直列に貫通するボルトと
を含み、
前記第1隆起面フランジは、
前記一以上のボルトのための一以上の開口それぞれを画定するボルト締め面と、
原子炉モジュールにおいて封止部を形成するための、第1平面に配置される第1隆起面、及び前記第1平面とは異なる第2平面に配置される第2隆起面を含む一対の隆起面と
を含み、
前記第1隆起面及び前記第2隆起面の少なくとも一方が、ガスケットを受容するべく配置される一以上の溝を有し、
前記ボルト締め面は、前記隆起面の間において前記第1平面及び前記第2平面とは異なる第3平面に配置され、
前記ボルト締め面及び前記隆起面は一つの方向に向けられ、
前記第2隆起面のエリアと前記
第3平面との間の距離
は、係合
フランジとの接触力を前記第2隆起面のエリアにわたって分散させて
前記封止部を維持する
べく前記第1平面と前記第3平面との間の距離よりも大きい、隆起面フランジアセンブリ。
【請求項17】
前記封止部は、前記第2隆起面に形成される一以上の溝に一以上のガスケットが位置決めされることによって形成される、請求項16の隆起面フランジアセンブリ。
【請求項18】
前記上側フランジは、円筒本体を有する容器の第1円筒側壁の一端に形成され、
前記下側フランジは、前記容器の異なる第2円筒側壁の一端に形成される、請求項16の隆起面フランジアセンブリ。
【請求項19】
前記容器は格納容器又は原子炉容器を含む、請求項18の隆起面フランジアセンブリ。
【請求項20】
前記第2隆起面のエリアと前記
第3平面との間の距離と、前記第1隆起面のエリアと前記
第3平面との間の距離との差は20~40ミル(0.508~1.016ミリメートル)の範囲にある、請求項16の隆起面フランジアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
優先権
本願は、2018年9月25日に出願された「二重隆起面自己付勢容器閉止フランジ」との名称の米国仮特許出願第62/736,218号の優先権を主張し、その全体が参照によりここに組み入れられる。
【0002】
政府の利益
本発明は、エネルギー省から受注した契約第DE-NE0000633号に基づく政府の支援によりなされている。政府は、本発明に所定の権利を有する。
【0003】
本開示は一般に、コンパクト隆起面フランジに関し、いくつかの実施形態は、二重隆起面自己付勢原子炉モジュール容器閉止フランジに関する。
【技術分野】
【0004】
配管が、2つの管セグメントの漏洩なし結合を与える配管フランジを含み得る。
図1Aは、管セグメント102に形成された平坦面フランジと係合する平坦面フランジが形成された管セグメント101を含む配管の断面を示す。これらの平坦面フランジは、(いくつかの例ではリングガスケット109を使用して)漏れなし接合を形成するべく締めることができるボルトを受容するボルト開口105を含み得る。
【0005】
管セグメント101の平坦面フランジの端面図を示す
図1Bが示すように、複数のボルト開口が当該配管を取り囲む。各ボルトが漏れ回避のために必要とするボルト張力は、当該ボルトの量及び当該配管の内圧に基づき得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2007/102926(A1)号公報
【文献】米国特許出願公開第2014/028021(A1)号公報
【発明の概要】
【0007】
原子炉モジュールにおいて炉圧力容器(RPV)又は格納容器のために使用されるいくつかのフランジは、直径がかなり大きい点を除いて配管フランジと同様の構成に似ていることがある。当該容器の圧力負荷によっては、各ボルトが漏れ回避のために必要とするボルト張力は、(平坦面フランジ又はいくつかの既知の隆起面フランジのような)いくつかの既知のフランジ用の市販の張力付与工具にとって高すぎることがある。市販の張力付与工具が使用され得る圧力負荷に対してであっても、必要なフランジ/ボルト寸法は、大量の原材料(例えば鋼)を必要とし、製造/組み立ての多大な費用を必要とし、及び/又は原子炉モジュールのための望ましくないほど大きな設置面積を必要とすることがある。
【0008】
いくつかの容器に対し、漏れを制御する一つの方法は、当該容器の圧力負荷に耐えるのに適切なボルトの数及びサイズを選択することとなり得る。しかしながら、いくつかの原子炉モジュールにおいては、隣接する容器シェルの中心線とフランジとのずれゆえに、大量の回転(例えばてこ動作)が行われ得る。この回転は、フランジが安定していなければ、漏れをもたらし得る。
【0009】
漏れのある接合を回避するべくフランジ回転を最小限にするように、ボルト張力を増加させることができる。しかしながら、既知の平坦面又は隆起面フランジ構成に対していくつかの原子炉モジュールにおいて必要とされるボルト張力の量は、市販の工具にとって高すぎとなり得る。カスタムボルト張力付与工具及びプロセスの開発には、有意な設備投資、試験及びプロトタイプが必要となり得る。
【0010】
ここに記載されるいくつかの実施形態は、原子炉モジュールのための二重隆起面自己付勢容器閉止フランジを含む。このフランジは、接触面とボルト軸との間に機械的てこ動作を生じさせる2つの隆起面を含み得る。2つの隆起面は、双方のボルト張力付与の間に容器シェルの付勢を解放するべく、かつ、当該封止面に付勢を与えるべく、少量だけずらされ得る。付勢が解放されたシェルは、圧力適用中に他の原子炉モジュールよりも低い程度で変形し得る。これにより接合部を、回転又はてこ動作に抵抗して安定させることができる。この構成により、市販のボルト張力付与工具を使用することができる範囲までボルト負荷を有意に低減させることが許容され得る。
【0011】
低減されたボルト負荷は、コンパクトな設計をもたらし得る。フランジは、所与の圧力負荷に対し、既知の原子炉モジュールで使用されるフランジよりも小さくなり得る。例えば、平坦面フランジの寸法が、所与の圧力負荷に対する容器の寸法と同じ長さを(同じ長さの平坦面表面を与えるべく)必要とするところ、この寸法を、隆起面フランジを使用することによって同じ圧力負荷に対して低減することができ、同じ圧力負荷に対して当該ずれを与えることによってなおもさらに低減することができる。これにより、所与の圧力負荷に対して全体的にコンパクトなフランジが得られる。
図2A~
図2Bは、RPV及び/又は格納容器において使用され得る容器フランジ接合部を示す。この容器フランジ接合部は、ここに記載される任意のコンパクト隆起面フランジアセンブリを利用することができる。
【0012】
また、漏れ止めフランジが必要とされるいずれのアプリケーションもコンパクトフランジからの利益(例えば材料コストの低減)を得ることができるので、ここに記載されるコンパクト隆起面フランジはいずれも、海洋環境、配管、流体(例えば、液体又は気体)貯蔵容器等のような漏れ止めフランジが必要とされる任意の環境において、寸法のスケールが原子炉容器とまったく異なる場合であっても、使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
含まれる図面は例示目的であり、開示される発明のシステム、装置、方法及びコンピュータ可読記憶媒体のための可能な構造及び動作の例を提供するべく与えられる。これらの図面は、開示される実装例の要旨及び範囲から逸脱することなく、当業者によってなされ得る形態及び詳細の任意の変更を何ら制限しない。
【0014】
【
図1A】平坦面フランジを含む配管の断面図を示す。
【
図2A】原子炉モジュールにおける平坦面フランジに基づく容器フランジ接合部を示す。
【
図3】様々な実施形態に係る二重隆起面を使用するコンパクト隆起面フランジアセンブリの断面を示す。
【
図4】様々な実施形態に係る容器内の内圧を受けるコンパクト隆起面フランジアセンブリに作用する内力を示す。
【
図5A】隆起面同士のずれがない隆起面フランジにおける内力分布を示すヒートマップである。
【
図5B】小さなずれがある隆起面フランジにおける内力分布を示すヒートマップである。
【
図6】様々な実施形態に係る直線勾配内部隆起面を有するコンパクト隆起面フランジアセンブリの断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図3は、様々な実施形態に係る二重隆起面を使用するコンパクト隆起面フランジアセンブリ10の断面図を示す。アセンブリ10は、シェルの側壁18(例えば上側側壁又は下側側壁)に形成される隆起面フランジ11(例えば上側フランジ又は下側フランジ)と、シェル(例えば上側シェル又は下側シェルの他方)の側壁19に形成される係合フランジ12(例えば上側フランジ又は下側フランジの他方)とを含み得る。アセンブリ10は、封止部を形成するべくフランジ11及び12を一緒に保持する張力を適用するボルト5(及び図示しない関連ボルト締結具)を含み得る。例えば、ボルト5は、封止部を形成するべくフランジ11とフランジ12との間に位置決めされるガスケット(図示せず)を含んでよい。
【0016】
隆起面フランジ11は、ボルト5のための開口を画定するボルト締め円形面25と、一対のずれ隆起面とを含み得る。当該一対のずれ隆起面は、外径隆起面22に対してずらされた内径隆起面21を含み得る。詳しくは、外径隆起面22のエリアとボルト締め円形面25の平面との間の距離は、封止部を維持するべく、内径隆起面21のエリアとボルト締め円形面25の平面との間の距離よりも大きくなり得る。
【0017】
一対の隆起面は、任意の既知のフランジにおいて使用される任意の封止特徴部を含み得る。例えば、内径隆起面21は、一以上のリングガスケットそれぞれを受容する一以上の溝を含んでよい。いくつかの例において、内径隆起面21の露出部分が係合フランジの対応表面と接触し得る(例えば封止特徴部が当該表面の一方又は双方に形成されるチャネル内に位置決めされてよい)。
【0018】
この例において、一対のずれ隆起面の表面は完全に平行とされる(例えば双方の表面が平坦かつ勾配なしである)。これにより、機械加工の複雑性が低減され得る。機械加工オプションが利用可能な他例において、内径隆起面21の表面に、ボルト開口に近い方が薄肉セクションとなる勾配を付けてよい。この勾配は、内径隆起面21の表面全体にわたる直線勾配又は非直線勾配としてよい。薄肉セクションがボルト開口近くになる勾配表面により、圧力がさらに内径隆起面の表面沿いに分散される(例えば、ボルト開口に最も近い表面エリアへの強い力により引き起こされる「魚の口(fish mouth)」のてこ動作が補償される)。直線勾配の場合、内径隆起面21の表面全体を、外径隆起面22の表面が位置決めされる平面と交差する平面に、位置決めすることができる。いくつかの例において、外径隆起面22もまた勾配を含んでよい。この勾配は内径隆起面に対応し得る(例えば同時勾配)。
【0019】
強調目的のため、図示のずれは縮尺通りではない。いくつかの原子炉モジュールアプリケーションにおいて、このずれは、近似的に30ミル(0.762ミリメートル)としてよい(例えば外径隆起面22は、内径隆起面よりも近似的に30ミル厚くてよく、例えば20~40ミル(0.508~1.016ミリメートル)厚くてよい)。コンパクト隆起面フランジアセンブリ10がこれよりも小さい又は大きい他のアプリケーションにおいて、このずれもまた小さく又は大きくてよい。ずれの厚さは、容器側壁(例えば管側壁)の変形可能性、隆起面フランジの本体の可撓性、必要なボルト張力、一対のずれ隆起面間の距離、又は、圧力デバイス(例えば容器、管、外殻、ハッチ等、又はこれらの組み合わせ)及び/若しくは隆起面フランジアセンブリ10の任意の他の特性に基づいて選択することができる。
【0020】
図示の例において、係合フランジ12は平坦面を含む。他例において、係合フランジ12上の異なる表面を使用することも可能かつ実用的となり得る。例えば、係合フランジ12上に隆起面を含めることが可能かつ実用的となり得る(また、係合フランジ12上の隆起面は、隆起面フランジ11の一対の隆起面のためにどの程度のずれが含まれるかに応じて任意のずれを含んでも含まなくてもよい)。
【0021】
隆起面フランジアセンブリ10は、ここに記載される任意の圧力デバイス(例えば容器)とともに使用してよい。例えば、
図2A~
図2Bに示される容器と同様の容器に対して隆起面フランジアセンブリ10が使用される一例において、面21、22及び25、並びに一以上の溝13により連続するリング形状が形成されてよい。ボルト締め円形面25は、容器を取り囲む任意数のボルト5のための任意数のボルト開口を含んでよい。ここに記載されるように、各ボルトに対するボルト張力は、いくつかの既知の容器フランジ接合部に使用されるボルト張力よりも小さくてよい。その結果、ボルトを小さくすることができ、フランジの寸法も小さくすることができる。したがって、このフランジは、既知のフランジに基づく容器フランジよりも容器からの突出が少ないので、原子炉モジュールの全体的な設置面積を低減することができる。
【0022】
ここに記載される隆起面フランジ11又は任意の他のフランジのいずれの特徴も、ブラインドフランジ、容器ノズルカバー、ボルト締めバルブ、バルブのボンネット等において使用してよい。いくつかの例において、ブラインドフランジ、容器ノズルカバー、ボルト締めバルブ、バルブのボンネット等は、隆起面フランジ11と同様の二重隆起面を含んでよい。
【0023】
図4は、様々な実施形態に係る容器内の内圧を受けるコンパクト隆起面フランジアセンブリ30に作用する内力を示す。コンパクト隆起面フランジアセンブリ30は、コンパクト隆起面フランジアセンブリ10(
図3)のような、ここに記載される任意のコンパクト隆起面フランジアセンブリと同様である。内力は、内径隆起面31に関連付けられる接触力35、外径隆起面32に関連付けられる接触力36、容器シェルのエンドキャップ圧力33、及びボルト張力34を含み得る。
【0024】
てこ動作が、主にエンドキャップ圧力33によって引き起こされる。この力33はボルトの中心からずれているからである。このてこ作用及びフランジの回転が、フランジ自体の可撓性によって悪化し得る(フランジが有限の厚さ/剛性を有することを前提とする)。フランジの回転は、てこ腕の幾何学的距離(フランジの厚さに加えてL1及びL2)、及びフランジシステムにおける力の大きさによって制御することができる。
【0025】
当該システムの平衡が内力によって維持され得るが、それだけでは漏れ止め接合部が確保されない。フランジを介する漏れを防止するべく、封止表面における接触を、当該封止部のスプリングバックよりも下に維持することができる。ボルト張力を増加させることにより、フランジの内径部での接触力を封止部において維持することができる。しかしながら、これは、大きな程度のボルト負荷を必要とし得る。
【0026】
接合部の回転を安定させるべく、フランジの2つの隆起面間の小さなずれを導入し、外径部の厚さが内径部の厚さよりもわずかに大きくなるようにすることができる。
図5Aは、隆起面同士のずれがない隆起面フランジにおける内力分布を示すヒートマップであり、
図5Bは、小さなずれがある隆起面フランジにおける内力分布を示すヒートマップである。
図5A及び
図5Bは、小さなずれあり(
図5B)及び小さなずれなし(
図5A)で同じボルト負荷が適用されるときのフランジの相対応力分布を示す。
【0027】
一対の隆起面の小さなずれの効果は、2つの観察に現れる。第一に、封止溝における接触応力分布450が、小さなずれが含まれる場合に均一かつ集中した分布を示す。この良好な接触力により、漏れ止め封止配列が確保され得る。第二に、小さなずれが含まれる場合、容器シェル応力451は、フランジから容器シェルへの遷移領域の近傍において低減され得る。その結果、容器シェルが付勢解放されるときに当該接合部が締まったままに維持される(例えば変形させない)ように、ボルト張力ひずみエネルギーの多くを利用することができる。この特徴は、封止接合部における小さなずれの自己付勢特性と称することができる。接合部を漏れ止めのままに維持するのに必要なボルト負荷を、いくつかの原子炉モジュールにおいて市販の機器の使用が許容され得る30~40%以上まで低減することができる。
【0028】
ここに記載される任意のコンパクト隆起面フランジは鍛造によって形成することができる。例えば、容器シェルを鍛造することによって、当該容器シェルにコンパクト隆起面フランジを形成することができる。他例において、鍛造に引き続いて一つの隆起面をミル加工して、例えば、直線勾配又は非直線勾配を形成することも可能かつ実用的となり得る。
図6は、様々な実施形態に係る直線勾配内側隆起面を有するコンパクト隆起面フランジアセンブリ50の断面を示す。非直線勾配が、フランジの予測される湾曲に基づく曲線プロファイルを有してよい(例えば、曲線プロファイルが、所定のボルト張力/容器シェル剛性に対するボルト締め円形面の予測される変形に係る曲線プロファイルに一致してよい)。前述したように、いくつかの例において、外側隆起面上の勾配、例えば内側隆起面の勾配に対応する勾配、も同様に設けることが有益となり得る。
【0029】
図示の例において、原子炉容器は2つの管に類似し得る。しかしながら、ここに記載される任意の隆起面フランジは、他のシナリオにおいても使用することができる。例えば、いくつかの原子炉容器が、内圧が反応するためのより直接的かつ有利な負荷経路を与えるように円筒容器及び半球ヘッドを含んでよく、もちろん、ここに記載される任意のコンパクト隆起面フランジはまた、これらの原子炉容器とともに利用してよい。さらに、いくつかのアプリケーションにおいて、ここに記載される任意の隆起面フランジが利用され得る任意の圧力デバイスも、任意の他の形状としてよい(必ずしも管に類似する側壁を含む必要はない)。
【0030】
明細書の一部を形成し、特定の実装例を図示により示す添付図面が参照されている。これらの開示される実装例が、当業者が当該実装例を実施することを可能にするべく十分詳細に記載されているにもかかわらず、これらの例が限定ではないことを理解するべきであり、他の実装例を使用してよく、その要旨及び範囲から逸脱することなく開示の実装例に対して変更を加えてよい。
【0031】
例
【0032】
例1は、一以上のボルトに対して一以上の開口をそれぞれ画定するボルト締め面と、第1平面に配置された第1隆起面、及び原子炉モジュールにおける封止部を形成する第2隆起面を含む一対の隆起面とを含む隆起面フランジであって、第2隆起面は、第1平面とは異なる第2平面に配置され、ボルト締め面は、第1平面及び第2平面とは異なる第3平面に配置され、第2隆起面のエリアと第3平面との間の距離は、係合フランジとの接触力を当該第2隆起面のエリアにわたって分散させて当該封止部を維持するように第1平面と第3平面との間の距離よりも大きい。
【0033】
例2は、例1の主題及び/又はここでの任意の他例を含んでよく、第1平面及び第2平面は非交差である。
【0034】
例3は、例1の主題及び/又はここでの任意の他例を含んでよく、第1平面及び第2平面は交差する。
【0035】
例4は、例1~3のいずれかの主題及び/又はここでの任意の他例を含んでよく、第2隆起面は、その表面又はその中にガスケットを取り付けるための一以上の特徴を含む。
【0036】
例5は、例1~4のいずれかの主題及び/又はここでの任意の他例を含んでよく、ガスケットは一以上のリングガスケットを含み、一以上の特徴は、一以上のリングガスケットそれぞれを受容する一以上の溝を含む。
【0037】
例6は、例1~5のいずれかの主題及び/又はここでの任意の他例を含んでよく、第2隆起面の表面は直線勾配を含み、当該直線勾配の表面は第1セクションを有し、第1セクションは、当該直線勾配の表面の異なる第2セクションよりも第3平面から遠くに存在し、第2セクションは第1セクションよりも、一以上のボルト開口のうち最も近いものから遠くに存在する。
【0038】
例7は、例1~6のいずれかの主題及び/又はここでの任意の他例を含んでよく、封止部は、原子炉モジュールの炉容器の封止部を含む。
【0039】
例8は、例1~6のいずれかの主題及び/又はここでの任意の他例を含んでよく、封止部は、原子炉モジュールの格納容器の封止部を含む。
【0040】
例9は、例1~8のいずれかの主題及び/又はここでの任意の他例を含んでよく、第1隆起表面及び第2隆起表面はそれぞれがリング形状に沿って連続する。
【0041】
例10は、例1~9のいずれかの主題及び/又はここでの任意の他例を含んでよく、当該距離間の差が、隆起面フランジが取り付けられる圧力デバイスの側壁の変形可能性に基づいて選択される。
【0042】
例11は、原子炉モジュールの容器であり、当該容器は、当該容器の第1円筒側壁を当該容器の第2側壁に結合する容器フランジ接合部を含み、当該容器フランジ接合部は、一以上のボルトを使用して下側フランジに結合される上側フランジを含み、当該上側フランジ又は下側フランジは、一以上のボルトのための一以上の開口それぞれを画定するボルト締め面と、当該上側フランジ又は下側フランジの他方の係合表面と接触する第1隆起面及び第2隆起面を含む一対の隆起面とを含み、第2隆起面のエリアと当該ボルト締め面に対応する平面との間の距離が、第1隆起面のエリアと第3平面との間の距離よりも大きいことにより、係合フランジとの接触力を第2隆起面のエリアにわたって分散させて当該容器フランジ接合部の封止が最適化される。
【0043】
例12は、例11のいずれかの主題及び/又はここでの任意の他例を含んでよく、第2側壁は第2円筒側壁を含む。
【0044】
例13は、例11~12のいずれかの主題及び/又はここでの任意の他例を含んでよく、容器は炉冷却材を包含する。
【0045】
例14は、例11~13のいずれかの主題及び/又はここでの任意の他例を含んでよく、容器は、炉圧力容器、又は炉圧力容器用の格納容器を包含する。
【0046】
例15は、例11~14のいずれかの主題及び/又はここでの任意の他例を含んでよく、容器フランジ接合部は第1容器フランジ接合部を含み、炉圧力容器は第2容器フランジ接合部を含む。
【0047】
例16は、一以上のボルトを使用して下側フランジに結合される上側フランジを含む隆起面フランジアセンブリであり、当該上側フランジ又は下側フランジは、当該一以上のボルトのための一以上の開口それぞれを画定するボルト締め面と、当該上側フランジ又は下側フランジの他方の係合表面と接触する第1隆起面及び第2隆起面を含む一対の隆起面とを含み、第2隆起面のエリアと当該ボルト締め面に対応する平面との間の距離が、第1隆起面のエリアと当該平面との間の距離よりも大きいことにより、係合表面との接触力を第2隆起面のエリアにわたって分散させて封止部を維持する。
【0048】
例17は、例16のいずれかの主題及び/又はここでの任意の他例を含んでよく、当該封止部は、第2隆起面に形成される一以上の溝に一以上のガスケットが位置決めされることによって形成される。
【0049】
例18は、例16~17のいずれかの主題及び/又はここでの任意の他例を含んでよく、上側フランジは、円筒本体を有する容器の第1円筒側壁の一端に形成され、下側フランジは、当該容器の異なる第2円筒側壁の一端に形成される。
【0050】
例19は、例16~18のいずれかの主題及び/又はここでの任意の他例を含んでよく、容器は格納容器又は原子炉容器を含む。
【0051】
例20は、例16~19のいずれかの主題及び/又はここでの任意の他例を含んでよく、当該距離間の差は20~40ミル(0.508~1.016ミリメートル)の範囲にある。
【0052】
好ましい実施形態の原理が記載及び図示されたが、かかる原理から逸脱することなく、これらの実施形態の配列及び詳細を変更してよいことは明らかである。特許請求の範囲は、以下の特許請求の範囲の要旨及び範囲内にあるすべての修正例及びバリエーションに対して作られる。