(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】高圧溶断装置
(51)【国際特許分類】
H01H 85/12 20060101AFI20230216BHJP
H01H 37/76 20060101ALI20230216BHJP
H01H 85/20 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
H01H85/12
H01H37/76 F
H01H85/20 B
(21)【出願番号】P 2021517001
(86)(22)【出願日】2019-09-18
(86)【国際出願番号】 CN2019106475
(87)【国際公開番号】W WO2020147327
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】201920068663.5
(32)【優先日】2019-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513150007
【氏名又は名称】厦門賽爾特電子有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】洪 ▲尭▼祥
【審査官】松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-508245(JP,A)
【文献】中国実用新案第208093500(CN,U)
【文献】中国実用新案第205900482(CN,U)
【文献】中国実用新案第206976273(CN,U)
【文献】国際公開第2015/133538(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/76、69/02
H01H 85/00-87/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧溶断装置であって、電流ヒューズ、温度ヒューズ、及び電流搬送ヒューズを含み、
前記電流ヒューズと前記温度ヒューズが直列接続されて高圧ヒューズとなり、前記電流ヒューズと前記温度ヒューズとの直列接続分岐が前記電流搬送ヒューズに並列接続され、前記電流ヒューズの抵抗値が前記温度ヒューズの抵抗値よりも大きく、
前記電流搬送ヒューズの抵抗値が前記電流ヒューズの抵抗値よりも小さく、前記電流搬送ヒューズにおいて溶断温度が前記温度ヒューズの溶断温度よりも低く、
絶縁ハウジングとカバープレートをさらに含み、前記電流ヒューズ、前記温度ヒューズ及び前記電流搬送ヒューズをそれぞれパッケージするように、前記絶縁ハウジングと前記カバープレートにより、独立した電流溶断室、温度溶断室及び電流搬送溶断室が囲まれ、前記絶縁ハウジングと前記カバープレートはシーラントで封止され、
左電極シートと右電極シートをさらに含み、前記左電極シートは前記電流ヒューズ及び前記電流搬送ヒューズのそれぞれの第1の端に接続され、前記右電極シートは前記温度ヒューズの第2の端及び前記電流搬送ヒューズの第2の端のそれぞれに接続され、前記左電極シート及び前記右電極シートは前記絶縁ハウジングから引き出されて引き出し端となり、
前記左電極シートの第1の端には第1の端子が設置され、前記右電極シートの第1の端には第2の端子が設置され、前記電流ヒューズは第1のn字形溶断体を含み、前記温度ヒューズは第2のn字形溶断体を含み、前記第1のn字形溶断体の第1の端が前記第1の端子に接続され、第2の端がブリッジピースを介して前記第2のn字形溶断体の第1の端に接続され、前記第2のn字形溶断体の第2の端が前記第2の端子に接続され、
前記第1のn字形溶断体のパラレルセグメント間には第1の遮断絶縁ストッパーが設置され、前記第2のn字形溶断体のパラレルセグメント間には第2の遮断絶縁ストッパーが設置され、
電流が前記高圧ヒューズに切り替わる時、前記第1のn字形溶断体の電流搬送能力をえる場合、前記第1のn字形溶断体は溶断し、電流が前記第1のn字形溶断体の電流搬送
能力より低い場合、前記第2のn字形溶断体は溶断
し、
前記電流搬送溶断室の天壁には第1のU字形ボスが設置され、前記カバープレートの上面には第2のU字形ボスが設置され、前記第1のU字形ボスと前記第2のU字形ボスは正対設置され、前記第1のU字形ボスと前記第2のU字形ボスとの接合面が千鳥配置される、
ことを特徴とする高圧溶断装置。
【請求項2】
前記左電極シートの前記第1の端には第1のL字形接続部が設置され、前記右電極シートの前記第1の端には第2のL字形接続部が設置され、
前記電流搬送ヒューズは、一端が前記第1のL字形接続部に接続され、他端が前記第2のL字形接続部に接続される易溶融性合金接続セクションを少なくとも1本含み、
前記少なくとも1本の易溶融性合金接続セクションの外壁には溶断助剤が設置される、ことを特徴とする請求項1に記載の高圧溶断装置。
【請求項3】
複数本の第1の接続ワイヤと複数本の第2の接続ワイヤをさらに含み、前記第1の接続ワイヤと前記第2の接続ワイヤの外壁には絶縁層が套設され、
前記複数本の第1の接続ワイヤの第1の端が前記左電極シートの前記第1の端に溶接され、第2の端が引き出され、前記複数本の第1の接続ワイヤの第1の端及び溶接点が前記シーラントにより被覆され、
前記複数本の第2の接続ワイヤの第1の端が前記右電極シートの前記第1の端に溶接され、第2の端が引き出され、前記複数本の第2の接続ワイヤの第1の端及び溶接点が前記シーラントにより被覆される、ことを特徴とする請求項1に記載の高圧溶断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年1月16日に中国特許庁に提出され、出願番号が201920068663.5であり、発明の名称が「高圧溶断装置」である中国特許出願の優先権を主張し、その全内容は引用により本願に組み込まれている。
【0002】
本願は高圧溶断の技術分野に関し、特に高圧溶断装置に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、電気自動車は基本的にPTC(Positive Temperature Coefficient、サーミスタ)発熱器を採用して車全体を暖房し、運転室、乗員室の暖房や車全体の除霜、除霧の需要を満たしている。
【0004】
図1に示すように、既存のPTC加熱回路は、直列接続した温度制御スイッチ1と高圧リレー2のコイルを含む低圧回路と、高圧リレー2の接点とPTCヒータ3を含む高圧加熱回路とから構成されている。既存のPTC加熱回路の過熱保護過程は、低圧回路内の温度が温度制御スイッチ1の設定温度に達すると、温度制御スイッチ1の常閉接点が開放され、高圧リレー2のコイルが停電し、さらに低圧回路が高圧リレー2の接点を制御して開放させ、PCT発熱器3の加熱が停止する。しかし、高圧リレーは接点が付着しやすいため、温度が高すぎると高圧加熱回路を切断できず、PTCヒータや車両部品に損傷を与えやすく、自動車の自然発火を引き起こすこともある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記問題に対して、本願の高圧溶断装置は、高圧回路を迅速に切断し、高圧加熱回路に対して過熱保護を効果的に実施できる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術的課題を解決するために、本願の高圧溶断装置は、電流ヒューズ、温度ヒューズ、及び電流搬送ヒューズを含み、
前記電流ヒューズが前記温度ヒューズに直列接続され、前記電流ヒューズと前記温度ヒューズとの直列接続分岐が前記電流搬送ヒューズに並列接続され、
前記電流搬送ヒューズの抵抗値が前記電流ヒューズの抵抗値よりも小さく、前記電流搬送ヒューズにおいて溶断温度が前記温度ヒューズの溶断温度よりも低い。
【0007】
好ましくは、前記温度ヒューズの抵抗値が前記電流ヒューズの抵抗値よりも小さい。
【0008】
好ましくは、前記高圧溶断装置は、絶縁ハウジングとカバープレートをさらに含み、前記電流ヒューズ、前記温度ヒューズ及び前記電流搬送ヒューズをそれぞれパッケージするように、前記絶縁ハウジングと前記カバープレートにより、独立した電流溶断室、温度溶断室及び電流搬送溶断室が囲まれ、前記絶縁ハウジングと前記カバープレートはシーラントで封止される。
【0009】
好ましくは、前記高圧溶断装置は、左電極シートと右電極シートをさらに含み、前記左電極シートは前記電流ヒューズ及び前記電流搬送ヒューズのそれぞれの第1の端に接続され、前記右電極シートは前記温度ヒューズの第2の端及び前記電流搬送ヒューズの第2の端のそれぞれに接続され、前記左電極シート及び前記右電極シートは前記絶縁ハウジングから引き出されて引き出し端となる。
【0010】
好ましくは、前記電流搬送溶断室の天壁には第1のU字形ボスが設置され、前記カバープレートの上面には第2のU字形ボスが設置され、前記第1のU字形ボスと前記第2のU字形ボスは正対配置され、前記第1のU字形ボスと前記第2のU字形ボスとの接合面が千鳥配置される。
【0011】
好ましくは、前記左電極シートの第1の端には第1のL字形接続部が設置され、前記右電極シートの第1の端には第2のL字形接続部が設置され、
前記電流搬送ヒューズは、一端が前記第1のL字形接続部に接続され、他端が前記第2のL字形接続部に接続される易溶融性合金接続セクションを少なくとも1本含み、
前記少なくとも1本の易溶融性合金接続セクションの外壁には溶断助剤が設けられる。
【0012】
好ましくは、前記左電極シートの第1の端には第1の端子が設置され、前記右電極シートの第1の端には第2の端子が設置され、
前記電流ヒューズは第1のn字形溶断体を含み、前記温度ヒューズは第2のn字形溶断体を含み、
前記第1のn字形溶断体の第1の端が前記第1の端子に接続され、第2の端がブリッジピースを介して前記第2のn字形溶断体の第1の端に接続され、
前記第2のn字形溶断体の第2の端が前記第2の端子に接続される。
【0013】
好ましくは、前記第1のn字形溶断体のパラレルセグメント間には第1の遮断絶縁ストッパーが設置され、前記第2のn字形溶断体のパラレルセグメント間には第2の遮断絶縁ストッパーが設置される。
【0014】
好ましくは、前記高圧溶断装置は、前記電流搬送ヒューズ及び前記温度ヒューズに隣接して設置された発熱器をさらに含み、
前記発熱器は回路スイッチを介してコントローラに接続され、
前記コントローラは読み取った温度異常情報に基づいて前記回路スイッチを制御してオフにさせ、前記発熱器を発熱させるように構成される。
【0015】
好ましくは、前記高圧溶断装置は、前記発熱器に直列接続された温度ヒューズワイヤをさらに含み、前記温度ヒューズワイヤの溶断温度が前記温度ヒューズの溶断温度よりも高い。
【0016】
好ましくは、前記高圧溶断装置は、複数本の第1の接続ワイヤと複数本の第2の接続ワイヤを含み、前記第1の接続ワイヤと前記第2の接続ワイヤの外壁には絶縁層が套設され、
前記複数本の第1の接続ワイヤの第1の端が前記左電極シートの第1の端に溶接され、第2の端が軸方向又は径方向に沿って引き出され、前記複数本の第1の接続ワイヤの第1の端及び溶接点が前記シーラントにより被覆され、
前記複数本の第2の接続ワイヤの第1の端が前記右電極シートの第1の端に溶接され、第2の端が軸方向又は径方向に沿って引き出され、前記複数本の第2の接続ワイヤの第1の端及び溶接点が前記シーラントにより被覆される。
【0017】
本願の高圧溶断装置では、電流ヒューズと温度ヒューズが直列接続されて高圧ヒューズとなり、電流搬送ヒューズの抵抗値が電流ヒューズの抵抗値よりも小さいので、正常な場合、電流が主に電流搬送ヒューズを流れて、電流搬送ヒューズを発熱させ、異常の場合、電流搬送ヒューズを流れる電流が大きくなり、電流搬送ヒューズによる熱が増加し、温度が上昇し、電流搬送ヒューズの温度がその溶断温度を超えると、電流搬送ヒューズが溶断し、電流搬送ヒューズの位置する並列接続分岐が切断し、電流が高圧ヒューズの位置する分岐に切り替わり、このとき、電流が電流ヒューズの過電流よりも大きいと、電流ヒューズにより高圧溶断を実行し、高圧溶断装置による回路の切断機能を完了し、電流が電流ヒューズの過電流よりも小さいと、高圧ヒューズの温度が温度ヒューズの溶断温度を超えるまで上昇し続け、温度ヒューズにより高圧溶断を実行し、高圧溶断装置による回路の切断機能を完了する。
【発明の効果】
【0018】
従来技術に比べて、本願の高圧溶断装置は下記の有益な効果を有する。電流搬送ヒューズが高圧ヒューズに並列接続されているので、電流搬送ヒューズが溶断すると、この高圧溶断装置は電弧を発生させず、電流が高圧ヒューズに切り替わると、電流ヒューズ又は温度ヒューズは迅速に高圧切断を行うことができ、それにより、高圧加熱回路に対して過熱保護を効果的に実施できる。
上記説明は本願の技術案の概略に過ぎず、本願の技術的手段をより明確に把握するために、明細書の内容に従って実施することができ、また本願の上記及び他の目的の1つ、特徴及び利点をより明らかで理解しやすくするために、以下、本願の具体的な実施形態を挙げる。
【0019】
本願の実施例又は従来技術の技術案をより明確に説明するために、以下、実施例又は従来技術の説明に必要な図面を簡単に説明するが、明らかなように、以下の説明における図面は本願のいくつかの実施例であり、当業者であれば、創造的な努力を必要とせずに、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】従来技術におけるPTC加熱回路の構造模式図である。
【
図2】本願の実施例1の高圧溶断装置の構造模式図である。
【
図3】本願の実施例2の高圧溶断装置の解体模式図である。
【
図4】本願の実施例2の電流搬送溶断室の横断面模式図である。
【
図5】本願の実施例2の電流溶断室及び温度溶断室の横断面模式図である。
【
図6】本願の実施例3の高圧溶断装置の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本願の実施例の目的の1つ、技術案及び利点をより明確にするために、以下、本願の実施例の図面を参照しながら、本願の実施例の技術案を明確かつ完全に説明するが、明らかなように、説明する実施例は本願の実施例の一部であり、すべての実施例ではない。本願の実施例に基づいて、当業者が創造的な努力を必要とせずに得る他のすべての実施例は、本願の特許範囲に属する。
【0022】
以下の説明において本願を十分に理解するために多くの詳細を説明する。ただし、本願はここでの記載と異なる多くの別の形態で実施することができ、当業者であれば、本願の趣旨を逸脱せずに類似するものを実施することができ、したがって、本願は以下で開示された特定実施例により限定されない。
【0023】
以下、特定実施例及び図面を参照しながら本願の技術案を明確かつ完全に説明する。
【0024】
実施例1
図2は、本願の実施例1の高圧溶断装置の構造模式図である。
【0025】
図2に示すように、該高圧溶断装置は、電流ヒューズ102、温度ヒューズ103、及び電流搬送ヒューズ101を含み、電流ヒューズ102が温度ヒューズ103に直列接続され、電流ヒューズ102と温度ヒューズ103との直列接続分岐が電流搬送ヒューズ101に並列接続され、電流搬送ヒューズ101の抵抗値が電流ヒューズ102の抵抗値よりも小さく、電流搬送ヒューズ101において溶断温度が温度ヒューズ103の溶断温度よりも低い。
【0026】
本願の高圧溶断装置では、電流ヒューズ102と温度ヒューズ103が直列接続されて高圧ヒューズ110となり、電流搬送ヒューズ101の抵抗値が電流ヒューズ102の抵抗値よりも小さい。そのため、正常な場合、電流が主に電流搬送ヒューズ101を流れて、電流搬送ヒューズ101を発熱させる。異常な場合、電流搬送ヒューズ101を流れる電流が大きくなり、電流搬送ヒューズ101による熱が増加して、温度が上昇し、電流搬送ヒューズ101の温度がその溶断温度を超えると、電流搬送ヒューズ101が溶断し、電流搬送ヒューズ101の位置する並列接続分岐が切断され、電流が高圧ヒューズ110の位置する分岐に切り替わる。このとき、電流が電流ヒューズ102の過電流よりも大きいと、電流ヒューズ102により高圧溶断を実行し、高圧溶断装置による回路の切断機能を完了する。電流が電流ヒューズ102の過電流よりも小さいと、高圧ヒューズ110の温度が温度ヒューズ103の溶断温度を超えるまで上昇し続け、温度ヒューズ103により高圧溶断を実行し、高圧溶断装置による回路の切断機能を完了する。
【0027】
従来技術に比べて、本願の高圧溶断装置は下記の有益な効果を有する。電流搬送ヒューズが高圧ヒューズに並列接続されているので、電流搬送ヒューズが溶断すると、この高圧溶断装置は電弧を発生させず、電流が高圧ヒューズに切り替わると、電流ヒューズ又は温度ヒューズは迅速に高圧切断を行うことができ、それにより、高圧加熱回路に対して過熱保護を効果的に実施できる。
【0028】
好ましくは、
図2に示すように、該高圧溶断装置では、温度ヒューズ103の抵抗値が電流ヒューズ102の抵抗値よりも小さく、それにより、同じ電流が高圧ヒューズ110を流れるときに、該電流が電流ヒューズ102で生じる熱が、温度ヒューズ103で生じる熱よりも高く、高圧ヒューズ110に切り替わるときの電流が電流ヒューズ102の過電流よりも小さい場合、電流ヒューズ102による熱で温度ヒューズ103の溶断を制御することが可能となる。
【0029】
実施例2
図3を参照すると、本願の実施例2の高圧溶断装置の解体模式図である。
【0030】
図3~5に示すように、該高圧溶断装置は、絶縁ハウジング201とカバープレート202をさらに含み、絶縁ハウジング201、カバープレート202及びエポキシ樹脂211により、電流ヒューズ、温度ヒューズ及び電流搬送ヒューズをそれぞれパッケージする独立した電流溶断室214、温度溶断室215及び電流搬送溶断室213が囲まれ、絶縁ハウジング201とカバープレート202はシーラントで封止される。
【0031】
好ましくは、
図3に示すように、該高圧溶断装置では、左電極シート203と右電極シート204をさらに含み、左電極シート203は電流ヒューズ及び電流搬送ヒューズの第1の端のそれぞれに接続され、右電極シート204は温度ヒューズの第2の端及び電流搬送ヒューズの第2の端のそれぞれに接続され、左電極シート203と右電極シート204はミラー関係を有し、両方が正対して間隔をあけて設置され、絶縁ハウジング201から引き出されて引き出し端となる。
【0032】
図3及び
図4に示すように、電流搬送溶断室213において、左電極シート203の第1の端には第1のL字形接続部203aが設置され、右電極シート204の第1の端には第2のL字形接続部204bが設置され、電流搬送ヒューズは、一端が第1のL字形接続部203aに接続され、他端が第2のL字形接続部204bに接続された易溶融性合金接続セクション205を少なくとも1本含み、該少なくとも1本の易溶融性合金接続セクション205の外壁には第1の溶断助剤206が設置される。
【0033】
好ましくは、該易溶融性合金接続セクション205は、導通及び遮断能力に応じてさまざまな直径、長さ又は本数で設置することができ、その直径と長さとの比が1:3よりも大きく、該易溶融性合金接続セクション205は、融点が300℃よりも小さい金属及びその合金、たとえば、Bi、Sn、In等の低融点金属元素からなる合金を含む。
【0034】
好ましくは、
図4に示すように、該電流搬送ヒューズの第1の溶断助剤206は電流搬送溶断室213内に充填されて、該少なくとも1本の易溶融性合金接続セクション205の外面に被覆される。該少なくとも1本の易溶融性合金接続セクション205の温度がその融点温度に達すると、該易溶融性合金接続セクション205は第1の溶断助剤206の張力作用を受けて収縮して遮断され、電流搬送ヒューズの位置する並列接続分岐を切断する。
【0035】
好ましくは、
図4に示すように、電流搬送溶断室213の天壁には第1のU字形ボス201aが設置され、カバープレート202の上面には第2のU字形ボス202aが設置され、第1のU字形ボス201aと第2のU字形ボス202aは正対設置され、第1のU字形ボス201aと第2のU字形ボス202aとの接合面が千鳥配置され、それにより、電流搬送溶断室213の隔離ボスが形成され、左電極シート203と右電極シート204との間の沿面距離が増大し、さらに該易溶融性合金接続セクション205の溶断後の該高圧溶断装置の安全性が向上する。
【0036】
好ましくは、
図3及び
図5に示すように、電流溶断室214には第1の端子203b、ブリッジピース209の第1の端及び電流ヒューズがパッケージされており、ここで、該第1の端子203bは左電極シート203の第1の端に設置され、該電流ヒューズは、第1のn字形溶断体207を含み、該第1のn字形溶断体207は第1の端子203bとブリッジピース209の第1の端との間に接続され、該電流溶断室214内には消弧ペースト208が充填されている。
【0037】
好ましくは、
図3及び
図5に示すように、該第1のn字形溶断体207のパラレルセグメント間には第1の遮断絶縁ストッパー202bが設置され、それにより、第1のn字形溶断体207の切断後の左電極シート203とブリッジピース209の間の電気クリアランス及び沿面距離が増大する。
【0038】
好ましくは、
図3及び
図5に示すように、温度溶断室215には第2の端子204b、ブリッジピース209の第2の端及び温度ヒューズがパッケージされており、ここで、該第2の端子204bは右電極シート204の第1の端に設置され、該温度ヒューズは第2のn字形溶断体210を含み、該第2のn字形溶断体210は第2の端子204bとブリッジピース209の第2の端との間に接続され、該温度溶断室215内に第2の溶断助剤212が充填されている。
【0039】
好ましくは、
図3及び
図5に示すように、該第2のn字形溶断体210のパラレルセグメント間には第2の遮断絶縁ストッパー202cが設置され、それにより、第2のn字形溶断体210の切断後の右電極シート204とブリッジピース209の間の電気クリアランス及び沿面距離が増大する。
【0040】
具体的な実施において、実施例2の高圧溶断装置は電気自動車のPTC加熱回路の高圧加熱回路に直列接続され、その作動過程は以下のとおりである。
【0041】
図3~
図5に示すように、正常な状態では、電流搬送ヒューズは主な電流搬送機能を果たし、高圧加熱回路に高圧リレーが機能できなくなる場合、PTCヒータは作動し続け、温度が異常に上昇し、温度が電流搬送溶断室213内の第1の溶断助剤206の軟化温度を超えると、第1の溶断助剤206が固体から液体になり、該易溶融性合金接続セクション205の表面酸化層を活性化させ、温度が該易溶融性合金接続セクション205の溶断温度を超えると、該易溶融性合金接続セクション205は第1の溶断助剤206の張力作用を受けて第1のL字形接続部203a及び第2のL字形接続部204bへ収縮して移動し、該易溶融性合金接続セクションは溶断する。
【0042】
電流が高圧ヒューズに切り替わり、第1のn字形溶断体207の電流搬送能力を超えると、第1のn字形溶断体207自体に高抵抗があるため、第1のn字形溶断体207による熱が増加し、その溶断温度を超えると、第1のn字形溶断体207が溶断する。第1のn字形溶断体207の溶断遮断において、第1のn字形溶断体207の溶断にはパラレルセグメントがあるので、溶断後のパラレルセグメント間に高強度電界が存在し、電子間の反発作用により電弧が長くなり、自由電子と陽イオンとの再結合及び拡散が促進され、それにより、消弧能力が効果的に向上し、さらに、電流溶断室214内に消弧ペースト208が充填されており、該消弧ペースト208は電弧による衝撃を吸収し、第1の遮断絶縁ストッパー202bにより隔てられて電弧を切断し、このように、電弧を迅速に切断し、高圧加熱回路の安全性を確保する。
【0043】
電流が高圧ヒューズに切り替わり、第1のn字形溶断体207の電流搬送能力よりも低い場合、PTCヒータは作動し続け、温度が第2のn字形溶断体210の溶断温度まで徐々に上昇し、第2のn字形溶断体210は第2の溶断助剤212による張力作用を受けて、ブリッジピース209の第2の端及び第2の端子204bへ収縮して移動し、該第2のn字形溶断体210が溶断する。第2のn字形溶断体210の溶断遮断において、第2のn字形溶断体210の溶断にはパラレルセグメントがあるので、溶断後のパラレルセグメント間に高強度電界が存在し、電子間の反発作用により電弧が長くなり、自由電子と陽イオンとの再結合及び拡散が促進され、それにより、消弧能力が効果的に向上し、さらに、第2の遮断絶縁ストッパー202cにより隔てられて電弧を切断し、このように、電弧を迅速に切断し、高圧加熱回路の安全性を確保する。
【0044】
実施例3
図6を参照すると、本願の実施例3の高圧溶断装置の構造模式図である。
【0045】
図6に示すように、該高圧溶断装置は、実施例1又は実施例2のすべての構成要素に加えて、電流搬送ヒューズ101及び温度ヒューズ103に隣接して設置された発熱器104をさらに含み、発熱器104が回路スイッチを介してコントローラに接続され(図示せず)、コントローラは、読み取った温度異常情報に基づいて回路スイッチを制御してオフにさせ、発熱器104を発熱させるように構成される。
【0046】
該実施例では、コントローラは、温度異常情報に基づいて回路スイッチを制御してオフにさせ、発熱器104を発熱させるように構成され、それにより、発熱器104は電流搬送ヒューズ101及び温度ヒューズ103に熱を供給し、電流搬送ヒューズ101又は温度ヒューズ103の溶断を促進する。
【0047】
好ましくは、
図6に示すように、該高圧溶断装置は、発熱器104に直列接続された温度ヒューズワイヤ105をさらに含み、温度ヒューズワイヤ105の溶断温度が温度ヒューズ103の溶断温度よりも高い。該温度ヒューズワイヤ105は、発熱器104に対して過熱保護を実施するように構成され、発熱器104の温度が温度ヒューズワイヤ105の融点を超えると、温度ヒューズワイヤ105は切断し、発熱器104の作動回路を切断し、発熱器104は加熱を停止する。
【0048】
好ましくは、上記実施例では、高圧溶断装置は、複数本の第1の接続ワイヤと複数本の第2の接続ワイヤ(図示せず)をさらに含み、第1の接続ワイヤ及び第2の接続ワイヤの外壁には絶縁層が套設され、複数本の第1の接続ワイヤの第1の端が左電極シート203の第1の端に溶接され、第2の端が軸方向又は径方向に沿って引き出されて接続リード端となり、複数本の第1の接続ワイヤの第1の端及び溶接点がシーラントにより被覆されて封止され、複数本の第2の接続ワイヤの第1の端が右電極シート204の第1の端に溶接され、第2の端が軸方向又は径方向に沿って引き出されて接続リード端となり、複数本の第2の接続ワイヤの第1の端及び溶接点がシーラントにより被覆されて封止される。
【0049】
以上は、本願の好適な実施例に過ぎず、本願を何ら制限するものではなく、このため、本願の技術案の内容を逸脱することなく、本願の技術的趣旨に基づいて以上の実施例について行う簡単な修正、等価変化及び修飾であれば、本願の技術案の範囲に属する。
【0050】
以上で説明する装置の実施例は例示的なものに過ぎず、前記分離部材として説明されるユニットは、物理的に分離してもよく分離しなくてもよく、ユニットとして表示される部材は、物理ユニットであってもよく、物理ユニットでなくてもよく、すなわち、1つの場所に配置されていてもよく、複数のネットワークユニットに分散されていてもよい。これらのモジュールの一部又はすべては、実際の必要に応じて、本実施例の態様の目的の1つを達成するために選択され得る。当業者は、創造的な努力を必要とせずに、それを理解して実施することができる。
【0051】
本明細書でいう「1つの実施例」、「実施例」、又は「1つ又は複数の実施例」は、実施例を参照して説明された特定の特徴、構造、又は特性が本願の少なくとも1つの実施例に含まれることを意味する。なお、ここで「1つの実施例において」という用語の例は、必ずしも全てが同一の実施例を指すとは限らない。
【0052】
本明細書には、多くの詳細が記載されている。しかしながら、なお、本願の実施例は、これらの詳細なしに実施されてもよい。いくつかの例では、本明細書の理解を曖昧にしないように、公知の方法、構造、及び技術が詳細に示されていない。
【0053】
請求項において、括弧内の参照記号は、クレームを限定するように構成されてはならない。「含む」という用語は、請求項に記載されていない要素又はステップの存在を排除するものではない。要素の前にある用語「一」又は「1つ」は、そのような要素が複数存在することを排除するものではない。本願は、いくつかの異なる要素を含むハードウェア及び適切にプログラムされたコンピュータによって実施することができる。いくつかの装置が列挙されている単一の請求項において、これらの装置のいくつかは、同じハードウェアアイテムによって具体化されてもよい。第1、第2、第3などの用語の使用は、順序を表すものではない。これらの用語は名称として解釈できる。
【0054】
最後に、上記の実施例は、本願の技術案を説明するためにのみ使用され、それを限定するものではなく、前述の実施例を参照して本願を詳細に説明したが、当業者は、前述の各実施例に記載された技術案を補正し、又はその中の一部の技術的特徴を等価に置き換えることができることを理解すべきであり、これらの補正又は置換は、対応する技術案の本質を本願の各実施例の技術案の精神及び範囲から逸脱させるものではない。
【符号の説明】
【0055】
1 温度制御スイッチ
2 高圧リレー
3 PTCヒータ
101 電流搬送ヒューズ
102 電流ヒューズ
103 温度ヒューズ
104 発熱器
105 温度ヒューズワイヤ
110 高圧ヒューズ
201 絶縁ハウジング
201a 第1のU字形ボス
202 カバープレート
202a 第2のU字形ボス
202b 第1の遮断絶縁ストッパー
202c第2の遮断絶縁ストッパー
203 左電極シート
203a 第1のL字形接続部
203b 第1の端子
204 右電極シート
204b 第2のL字形接続部
204b 第2の端子
205 易溶融性合金接続セクション
206 第1の溶断助剤
207 第1のn字形溶断体
208 消弧ペースト
209 ブリッジピース
210 第2のn字形溶断体
211 エポキシ樹脂
212 第2の溶断助剤
213 電流搬送溶断室
214 電流溶断室
215 温度溶断室