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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】超音波診断システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/00 20060101AFI20230216BHJP
【FI】
A61B8/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021562280
(86)(22)【出願日】2019-12-05
(86)【国際出願番号】 JP2019047622
(87)【国際公開番号】W WO2021111581
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 武
(72)【発明者】
【氏名】山下 泰弘
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/111255(WO,A1)
【文献】特許第6611104(JP,B1)
【文献】特開2006-238913(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1586407(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波プローブを有する超音波診断装置と、
前記超音波プローブが被験者の体表面に押し当てられた際に当該超音波プローブに作用する反力を検出する反力検出センサと、
前記反力検出センサを用いて前記被験者に対する前記超音波プローブの押し込み量を推定する制御装置と、
前記超音波プローブの押し込み量の表示または警告を出力する出力装置と、
を備える超音波診断システムであって、
前記超音波プローブを移動させる移動装置を備え、
前記制御装置は、超音波診断に際して、前記超音波診断装置から得られる超音波画像に基づいて被験者の体内における血管を認識して前記超音波プローブから前記血管までの距離を計測し、前記距離が前記体内における超音波の有効深度内に入る押し込み量で前記超音波プローブが前記被験者に押し込まれるように前記移動装置を制御する、
超音波診断システム
【請求項2】
請求項1に記載の超音波診断システムであって、
記制御装置は、前記距離が前記体内における超音波の有効深度内に入る最小限の押し込み量で前記超音波プローブが前記被験者に押し込まれるように前記移動装置を制御する、
超音波診断システム。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波診断システムであって、
前記超音波プローブの位置を検出する位置センサを備え、
前記制御装置は、超音波診断に先立って前記反力検出センサにより検出される反力が所定値となる状態で被験者の体表面に前記超音波プローブが当接するように前記移動装置を制御した際に前記位置センサにより検出される超音波プローブの位置と、超音波診断の際に前記被験者の体表面に前記超音波プローブが押し当てられるように前記移動装置を制御したときに前記位置センサにより検出される超音波プローブの位置とに基づいて前記超音波プローブの押し込み量を推定する、
超音波診断システム。
【請求項4】
請求項2または3に記載の超音波診断システムであって、
前記移動装置は、多関節ロボットである、
超音波診断システム。
【請求項5】
超音波プローブを有する超音波診断装置と、
前記超音波プローブを移動させる移動装置と、
超音波診断に際して、前記超音波診断装置から得られる超音波画像に基づいて被験者の体内における血管を認識して前記超音波プローブから前記血管までの距離を計測し、前記距離が前記体内における超音波の有効深度内に入る押し込み量で前記超音波プローブが前記被験者に押し込まれるように前記移動装置を制御する制御装置と、
を備える超音波診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、超音波診断システムについて開示する。
【背景技術】
【0002】
従来より、超音波プローブを有する超音波診断装置と、超音波プローブを動作させる超音波診断装置用ロボットと、超音波診断装置用ロボットを制御する制御装置とを備える超音波診断システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。超音波診断装置は、超音波画像に基づく画像処理により、超音波画像が得られたときの超音波プローブの血管に対する配置情報を検出するプローブ状態検出機能を備える。制御装置は、超音波診断装置で検出された超音波プローブの配置状態に基づいて超音波診断装置でのデータ計測時に最適な状態で超音波プローブを配置するように超音波診断装置用ロボットを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-104191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超音波診断装置では、超音波プローブから放射される超音波の周波数が高いほど分解能が高くなるが、被験者の体内を検査する場合、超音波の到達深度は、超音波の周波数が高いほど浅くなる。超音波診断装置を用いて被験者の体内の血管を検査する場合、皮膚から血管までの距離は、被験者の体格によって様々であり、一般に、体格の大きな被験者の方が体格の小さな被験者よりも長くなる。すなわち、体格の大きな被験者の血管を検査する場合、超音波プローブから放射された超音波は、血管まで到達しづらくなる。このため、体格の大きな被験者の血管を検査する際には、場合によっては、超音波プローブが被験者の皮膚に過剰に強く押し付けられ、被験者に痛みや不快感を感じさせるおそれがある。
【0005】
本開示は、超音波診断の際に被験者の体格に拘わらず被験者に対する超音波プローブの押し込み量を適切にすることが可能な超音波診断システムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示の超音波診断システムは、
超音波プローブを有する超音波診断装置と、
前記超音波プローブが前記被験者の体表面に押し当てられた際に当該超音波プローブに作用する反力を検出する反力検出センサと、
前記反力検出センサを用いて前記被験者に対する前記超音波プローブの押し込み量を推定する制御装置と、
前記超音波プローブの押し込み量の表示または警告を出力する出力装置と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本開示の超音波診断システムは、超音波プローブが被験者の体表面に押し当てられた際に当該超音波プローブに作用する反力を検出する反力検出センサを備える。そして、超音波診断システムは、超音波診断の際に反力検出センサを用いて被験者に対する超音波プローブの押し込み量を推定し、推定した超音波プローブの押し込み量の表示または警告を出力装置に出力する。これにより、今どのくらい押し込まれているのかを確認しつつ、超音波プローブを被験者に押し当てることができるため、被験者の体格に拘わらず、被験者に対する超音波プローブの押し込み量を適切にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】超音波診断システム10の外観斜視図である。
図2】ロボット20の側面図である。
図3】ロボット20と制御装置70と超音波診断装置100との電気的な接続関係を示すブロック図である。
図4】超音波診断処理の一例を示すフローチャートである。
図5】診断準備処理の一例を示すフローチャートである。
図6】距離Lを説明する説明図である。
図7】警告画面の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本開示を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。図1は、超音波診断システム10の外観斜視図である。図2は、ロボット20の側面図である。図3は、ロボット20と制御装置70と超音波診断装置100との電気的な接続関係を示すブロック図である。なお、図1中、左右方向がX軸であり、前後方向がY軸方向であり、上下方向がZ軸方向である。
【0011】
超音波診断システム10は、ロボット20に超音波プローブ101を保持し、超音波プローブ101が被験者の皮膚に押し当てられるようにロボット20を駆動することにより超音波診断を行なうものである。本実施形態では、超音波診断システム10は、被験者の頸動脈に超音波を当てて、頸動脈の短軸方向における断面画像と長軸方向における断面画像とを取得し、取得した画像から血管の状態をチェックする頸動脈エコー検査に用いられる。超音波診断システム10は、図1図2に示すように、ロボット20と、力覚センサ28(図3参照)と、ロボット20を制御する制御装置70(図3参照)と、超音波診断装置100とを備える。
【0012】
超音波診断装置100は、超音波プローブ101と、超音波プローブ101がケーブル101aを介して接続される超音波診断装置本体102とを備える。超音波診断装置本体102は、装置全体の制御を司る制御部103と、診断開始などの指示を入力する指示入力部104と、超音波プローブ101からの受信信号を処理して超音波画像を生成するための画像処理部105と、生成された超音波画像を表示する表示部106とを含む。
【0013】
ロボット20は、第1アーム21と、第2アーム22と、ベース25と、基台26と、第1アーム駆動装置35と、第2アーム駆動装置36と、姿勢保持装置37と、昇降装置40と、回転3軸機構50と、保持具60とを備える。なお、第1アーム21と第2アーム22と回転3軸機構50とは、単にアームと呼ぶ場合がある。
【0014】
第1アーム21の基端部は、上下方向(Z軸方向)に延在する第1関節軸31を介してベース25に連結されている。第1アーム駆動装置35は、モータ35aと、エンコーダ35bとを備える。モータ35aの回転軸は、図示しない減速機を介して第1関節軸31に接続されている。第1アーム駆動装置35は、モータ35aにより第1関節軸31を回転駆動することにより、第1関節軸31を支点に第1アーム21を水平面(XY平面)に沿って回動(旋回)させる。エンコーダ35bは、モータ35aの回転軸に取り付けられ、モータ35aの回転変位量を検出するロータリエンコーダとして構成される。
【0015】
第2アーム22の基端部は、上下方向に延在する第2関節軸32を介して第1アーム21の先端部に連結されている。第2アーム駆動装置36は、モータ36aと、エンコーダ36bとを備える。モータ36aの回転軸は、図示しない減速機を介して第2関節軸32に接続されている。第2アーム駆動装置36は、モータ36aにより第2関節軸32を回転駆動することにより、第2関節軸32を支点に第2アーム22を水平面に沿って回動(旋回)させる。エンコーダ36bは、モータ36aの回転軸に取り付けられ、モータ36aの回転変位量を検出するロータリエンコーダとして構成される。
【0016】
ベース25は、基台26上に設置された昇降装置40により、基台26に対して昇降可能に設けられている。昇降装置40は、図1図2に示すように、ベース25に固定されたスライダ41と、基台26に固定されると共に上下方向に延出してスライダ41の移動をガイドするガイド部材42と、上下方向に延出すると共にスライダ41に固定されたボールねじナット(図示せず)に螺合されるボールねじ軸43(昇降軸)と、ボールねじ軸43を回転駆動するモータ44と、エンコーダ45(図3参照)とを備える。昇降装置40は、モータ44によりボールねじ軸43を回転駆動することにより、スライダ41に固定されたベース25をガイド部材42に沿って上下に移動させる。エンコーダ45は、スライダ41(ベース25)の上下方向における位置(昇降位置)を検出するリニアエンコーダとして構成される。
【0017】
回転3軸機構50は、上下方向に延在する姿勢保持用軸33を介して第2アーム22の先端部に連結されている。回転3軸機構50は、互いに直交する第1回転軸51,第2回転軸52および第3回転軸53と、第1回転軸51を回転させる第1回転装置55と、第2回転軸52を回転させる第2回転装置56と、第3回転軸53を回転させる第3回転装置57とを備える。第1回転軸51は、姿勢保持用軸33に対して直交姿勢で支持されている。第2回転軸52は、第1回転軸51に対して直交姿勢で支持されている。第3回転軸53は、第2回転軸52に対して直交姿勢で支持される。第1回転装置55は、第1回転軸51を回転駆動するモータ55aと、モータ55aの回転軸に取り付けられモータ55aの回転変位量を検出するエンコーダ55bとを有する。第2回転装置56は、第2回転軸52を回転駆動するモータ56aと、モータ56aの回転軸に取り付けられモータ56aの回転変位量を検出するエンコーダ56bとを有する。第3回転装置57は、第3回転軸53を回転駆動するモータ57aと、モータ57aの回転軸に取り付けられモータ57aの回転変位量を検出するエンコーダ57bとを有する。また、第3回転軸53には、保持具60が取り付けられている。本実施形態では、保持具60は、第3回転軸53から径方向に離間した位置に固定されている。保持具60に保持された超音波プローブ101は、第3回転軸53の回転により、第3回転軸53を中心とした円弧状の軌跡をもって移動する。なお、保持具60は、超音波プローブ101が第3回転軸53と同軸上に位置するように取り付けられてもよい。
【0018】
本実施形態のロボット20は、第1アーム駆動装置35と第2アーム駆動装置36と昇降装置40とによるX軸方向,Y軸方向およびZ軸方向の3方向の並進運動と、回転3軸機構50によるX軸回り(ピッチング),Y軸回り(ローリング)およびZ軸回り(ヨーイング)の3方向の回転運動との組み合わせにより、超音波プローブ101を任意の姿勢で任意の位置へ移動させることができる。
【0019】
姿勢保持装置37は、第1アーム21および第2アーム22の姿勢によらず回転3軸機構50の姿勢(第1回転軸51の向き)を一定の向きに保持するものである。姿勢保持装置37は、モータ37aと、エンコーダ37bとを備える。モータ37aの回転軸は、図示しない減速機を介して姿勢保持用軸33に接続されている。姿勢保持装置37は、第1回転軸51の軸方向が常時、左右方向(X軸方向)となるように第1関節軸31の回転角度と第2関節軸32の回転角度とに基づいて姿勢保持用軸33の目標回転角度を設定し、姿勢保持用軸33が目標回転角度となるようにモータ37aを駆動制御する。これにより、3方向の並進運動の制御と3方向の回転運動の制御とをそれぞれ独立して行なうことが可能となり、制御が容易となる。
【0020】
力覚センサ28は、アームの先端に取り付けられ、アームに作用する外力としてX軸,Y軸およびZ軸の各軸方向に作用する力成分と各軸周りに作用するトルク成分とを検出する。
【0021】
制御装置70は、図3に示すように、CPU71を中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPU71の他に、ROM72やRAM73、入出力ポートおよび通信ポート(図示せず)を備える。制御装置70には、力覚センサ28からの検出信号や各エンコーダ35b,36b,37b,45,55b,56b,57bからの検出信号などが入力ポートを介して入力されている。また、制御装置70からは、各モータ35a,36a,37a,44,55a,56a,57aへの駆動信号が出力ポートを介して出力されている。また、制御装置70は、超音波診断装置100の制御部103と通信ポートを介して通信しており、データのやり取りを行なう。
【0022】
次に、こうして構成された本実施形態の超音波診断システム10の動作について説明する。図4は、制御装置70のCPU71により実行される超音波診断処理の一例を示すフローチャートである。
【0023】
超音波診断処理が実行されると、CPU71は、まず、ロボット20の対応するモータを駆動制御して被験者に向けて超音波プローブ101の移動を開始する(ステップS100)。超音波プローブ101は、以下のようにして行なわれる。すなわち、CPU71は、予め作成されたタスクプログラムに従って超音波プローブ101を保持するアームの目標位置および目標姿勢を決定する。続いて、CPU71は、アームを目標姿勢で目標位置へ移動させるための第1関節軸31の目標回転角度と第2関節軸32の目標回転角度と姿勢保持用軸33の目標回転角度とベース25の目標昇降位置と第1回転軸51の目標回転角度と第2回転軸52の目標回転角度と第3回転軸53の目標回転角度とをそれぞれ設定する。そして、CPU71は、各エンコーダ35b,36b,37b,45,55b,56b,57bにより検出される回転角度あるいは昇降位置が対応する目標回転角度あるいは目標昇降位置と一致するように対応するモータを制御する。
【0024】
CPU71は、超音波プローブ101の移動を開始すると、各エンコーダ35b,36b,37b,45,55b,56b,57bにより検出される各軸(第1関節軸31,第2関節軸32,第1~第3回転軸51~53および昇降軸)の回転角度および昇降位置を入力する(ステップS110)。続いて、CPU71は、入力した各軸の回転角度および昇降位置に基づいて順運動学により超音波プローブ101の先端位置(プローブ位置)を計算する(ステップS120)。そして、CPU71は、計算したプローブ位置と被験者の体表面位置との差分により被験者に対する超音波プローブ101の押し込み量δを計算する(ステップS130)。ここで、被験者の体表面位置は、超音波診断処理に先立って行なわれる図5の診断準備処理により測定されたものが用いられる。
【0025】
診断準備処理では、CPU71は、まず、被験者に向けて超音波プローブ101の移動を開始する(ステップS300)。続いて、CPU71は、超音波プローブ101が被験者の体表面に接触した際に体表面から超音波プローブ101に加わる反力Fを力覚センサ28から入力し(ステップS310)、入力した反力Fが値0よりも若干大きい所定値となるまで待つ(ステップS320)。ステップS320の処理は、超音波プローブ101が被験者に殆ど押し込まれることなく接触した状態にあるか否かを判定するものである。CPU71は、反力Fが所定値となったと判定すると、超音波プローブ101の移動を停止して(ステップS330)、各エンコーダ35b,36b,37b,45,55b,56b,57bにより検出される各軸の回転角度および昇降位置を入力し(ステップS340)、入力した各軸の回転角度および昇降位置に基づいてプローブ位置を計算する(ステップS350)。そして、CPU71は、計算したプローブ位置を被験者の体表面位置として設定すると共に設定した体表面位置をRAM73に登録して(ステップS360)、診断準備処理を終了する。
【0026】
超音波診断処理に戻って、CPU71は、計算した押し込み量δが値0よりも大きいか否かを判定する(ステップS140)。この処理は、超音波プローブ101が被験者の体表面に接触しているか否かを判定するものである。CPU71は、押し込み量δが値0よりも大きくないと判定すると、超音波プローブ101の移動を継続して(ステップS210)、ステップS110に戻り、処理を繰り返す。一方、CPU71は、押し込み量δが値0よりも大きいと判定すると、更に押し込み量δが閾値δrefよりも小さいか否かを判定する(ステップS150)。閾値δrefは、被験者の体表面に対する超音波プローブ101の押し込みが過大であるか否かを判定するための閾値である。したがって、押し込み量δが閾値δrefよりも小さい場合には、押し込み量δは許容範囲内であり、被験者に過度の負担は生じていないと判断される。
【0027】
CPU71は、押し込み量δが閾値δrefよりも小さいと判定すると、超音波診断装置100の画像処理部105により生成された超音波画像を取得する(ステップS160)。続いて、CPU71は、取得した超音波画像から血管を認識する画像処理を行ない(ステップS170)、認識が成功したか否かを判定する(ステップS180)。この処理は、例えば、取得された超音波画像にパターンマッチングを適用することにより行なうことができる。CPU71は、認識が成功しなかったと判定すると、超音波プローブ101の移動を継続して(ステップS210)、ステップS110に戻り、処理を繰り返す。一方、CPU71は、認識が成功したと判定すると、被験者の体表面から血管までの距離Lを計測する(ステップS190)。図6は、距離Lを説明する説明図である。図中、上端が体表面を示し、上下方向が体内深度を示す。距離Lは、超音波画像の上端から血管までの距離により計測することができる。
【0028】
CPU71は、距離Lを計測すると、計測した距離Lが生体内における超音波の有効深度に到達しているか否かを判定する(ステップS200)。有効深度は、放射する超音波の周波数などの超音波プローブ101の仕様に応じて予め定められる。CPU71は、距離Lが超音波の有効深度に到達していないと判定すると、超音波プローブ101の移動を継続して(ステップS210)、ステップS110に戻り、処理を繰り返す。一方、CPU71は、距離Lが超音波の有効深度に到達したと判定すると、超音波プローブ101の移動を停止して(ステップS220)、超音波診断処理を終了する。このように、CPU71は、本実施形態では、距離Lが超音波の有効深度に到達するまで被験者に対する超音波プローブ101の押し込み量を徐々に増やしていき、距離Lが有効深度に到達すると、超音波プローブ101の押し込みを停止する。これにより、被験者に対する超音波プローブ101の押し込み量を、超音波の有効深度に入る最小限の押し込み量、すなわち、超音波診断を正常に実行するための画像の鮮明度を確保できる最小限の押し込み量とすることができる。この結果、超音波診断の際の被験者の負担をより軽減することができる。
【0029】
CPU71は、ステップS150において、押し込み量δが閾値δref以上であると判定すると、警告を出力すると共に(ステップS240)、超音波プローブ101の移動を停止して(ステップS220)、超音波診断処理を終了する。ステップS240の処理は、超音波診断装置100の制御部103に警告信号を送信することによって、警告信号を受信した制御部103が表示部106に警告画面を表示することにより行なわれる。図6は、警告画面の一例を示す説明図である。図示するように、警告画面は、診断実施者の注意を喚起する旨の警告メッセージと超音波プローブ101の現在の押し込み量とが含まれる。これにより、被験者に超音波プローブ101が過大な力で押し込まれているおそれがあることを検査実施者に報知することができる。なお、警告画面には、警告メッセージと現在の押し込み量とのうちいずれか一方のみが表示されるようにしてもよい。また、CPU71は、ステップS240において、警告音を出力してもよい。
【0030】
ここで、実施形態の主要な要素と請求の範囲に記載した本開示の主要な要素との対応関係について説明する。即ち、本実施形態の超音波プローブ101が本開示の超音波プローブに相当し、超音波診断装置100が超音波診断装置に相当し、力覚センサ28が反力検出センサに相当し、制御装置70が制御装置に相当し、超音波診断装置100の表示部106が出力装置に相当する。また、ロボット20が移動装置に相当する。また、エンコーダ35b,36b,37b,45,55b,56b,57bが位置センサに相当する。
【0031】
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0032】
例えば、上述した実施形態では、制御装置70は、力覚センサ28により検出される超音波プローブ101にかかる反力Fが値0よりも若干大きい所定値となるように被験者の体表面に超音波プローブ101を接触させたときのプローブ位置を被験者の体表面位置として設定するものとした。しかし、制御装置70は、被験者をカメラで撮像し、得られた画像に基づいて被験者の体表面との距離を算出することにより、算出した距離に基づいて被験者の体表面位置を設定してもよい。
【0033】
また、上述した実施形態では、制御装置70は、超音波診断の際に被験者に押し当てられる超音波プローブ101の位置(プローブ位置)と被験者の体表面位置との差分により押し込み量δを算出するものとした。しかし、制御装置70は、力覚センサ28により検出される超音波プローブ101にかかる反力Fの大きさに基づいて押し込み量δを算出してもよい。この場合、押し込み量δは、反力Fが大きいほど大きくなるように算出されるものとすればよい。
【0034】
上述した実施形態では、ロボット20は、3方向の並進運動と3方向の回転運動とが可能な7軸の多関節ロボットとして構成されるものとした。しかし、軸の数はいくつであっても構わない。また、ロボット20は、いわゆる垂直多関節ロボットや水平多関節ロボットなどにより構成されてもよい。
【0035】
上述した実施形態では、超音波診断システム10は、タスクプログラムに従って自動的に動作するロボット20を備えるものとした。しかし、超音波診断システムは、遠隔地に設置されオペレータ(診断実施者)による操作が可能なマスタ装置と、マスタ装置と通信回線を介して接続されると共に超音波プローブをアームに保持しマスタ装置の操作に応じてアームを動作する遠隔操作ロボットとを備えるものとしてもよい。この場合、遠隔操作ロボットの制御装置は、被験者への超音波プローブの押し込み量δが閾値δref以上のときには、マスタ装置側からオペレータに対して警告(警告音や警告表示の出力)を行なうためにマスタ装置へ警告信号を送信するものとしてもよい。
【0036】
以上説明したように、本開示の超音波診断システムは、超音波プローブを有する超音波診断装置と、前記超音波プローブが前記被験者の体表面に押し当てられた際に当該超音波プローブに作用する反力を検出する反力検出センサと、前記反力検出センサを用いて前記被験者に対する前記超音波プローブの押し込み量を推定する制御装置と、前記超音波プローブの押し込み量の表示または警告を出力する出力装置と、を備えることを要旨とする。
【0037】
この本開示の超音波診断システムは、超音波プローブが被験者の体表面に押し当てられた際に当該超音波プローブに作用する反力を検出する反力検出センサを備える。そして、超音波診断システムは、超音波診断の際に反力検出センサを用いて被験者に対する超音波プローブの押し込み量を推定し、推定した超音波プローブの押し込み量の表示または警告を出力装置に出力する。これにより、今どのくらい押し込まれているのかを確認しつつ、超音波プローブを被験者に押し当てることができるため、被験者の体格に拘わらず、被験者に対する超音波プローブの押し込み量を適切にすることが可能となる。
【0038】
こうした本開示の超音波診断システムにおいて、前記超音波プローブを移動させる移動装置を備え、前記制御装置は、超音波診断に際して、前記超音波診断装置から得られる超音波画像に基づいて前記被験者の体内における血管を認識して前記超音波プローブから前記血管までの距離を計測し、前記距離が前記体内における超音波の有効深度内に入る最小限の押し込み量で前記超音波プローブが前記被験者に押し込まれるように前記移動装置を制御するものとしてもよい。こうすれば、超音波診断の際の被験者の負担を最小限にすることができる。この場合、前記超音波プローブの位置を検出する位置センサを備え、前記制御装置は、超音波診断に先立って前記反力検出センサにより検出される反力が所定値となる状態で前記被験者の体表面に前記超音波プローブが当接するように前記移動装置を制御した際に前記位置センサにより検出される超音波プローブの位置と、超音波診断の際に前記被験者の体表面に前記超音波プローブが押し当てられるように前記移動装置を制御したときに前記位置センサにより検出される超音波プローブの位置とに基づいて前記超音波プローブの押し込み量を推定するものとしてもよい。こうすれば、超音波プローブの押し込み量をより正確に推定することができる。また、前記移動装置は、多関節ロボットであるものとしてもよい。
【0039】
なお、超音波診断システムは、以下のような構成が採用されてもよい。すなわち、本開示の第2の超音波診断システムは、超音波プローブを有する超音波診断装置と、前記超音波プローブを移動させる移動装置と、超音波診断に際して、前記超音波診断装置から得られる超音波画像に基づいて前記被験者の体内における血管を認識して前記超音波プローブから前記血管までの距離を計測し、前記距離が前記体内における超音波の有効深度内に入る最小限の押し込み量で前記超音波プローブが前記被験者に押し込まれるように前記移動装置を制御する制御装置と、を備えることを要旨とする。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本開示は、超音波プローブの位置ずれ量測定装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0041】
10 超音波診断システム、20 ロボット、21 第1アーム、22 第2アーム、25 ベース、26 基台、28 力覚センサ、31 第1関節軸、32 第2関節軸、33 姿勢保持用軸、35 第1アーム駆動装置、35a モータ、35b エンコーダ、36 第2アーム駆動装置、36a モータ、36b エンコーダ、37 姿勢保持装置、37a モータ、37b エンコーダ、40 昇降装置、41 スライダ、42 ガイド部材、43 ボールねじ軸、44 モータ、45 エンコーダ、50 回転3軸機構、51 第1回転軸、52 第2回転軸、53 第3回転軸、55 第1回転装置、55a モータ、55b エンコーダ、56 第2回転装置、56a モータ、56b エンコーダ、57 第3回転装置、57a モータ、57b エンコーダ、60 保持具、100 超音波診断装置、101 超音波プローブ、101a ケーブル、102 超音波診断装置本体、103 制御部、104 指示入力部、105 画像処理部、106 表示部。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7