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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】ティッシュ柔軟剤組成物
(51)【国際特許分類】
   D21H 19/32 20060101AFI20230216BHJP
【FI】
D21H19/32
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022199807
(22)【出願日】2022-12-14
(62)【分割の表示】P 2021517846の分割
【原出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-12-14
(31)【優先権主張番号】201811153667.X
(32)【優先日】2018-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516190747
【氏名又は名称】エルケム・シリコーンズ・シャンハイ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ELKEM SILICONES SHANGHAI CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジンクン・クー
(72)【発明者】
【氏名】チョンイン・チャオ
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-525441(JP,A)
【文献】特開平07-145596(JP,A)
【文献】特表2008-525103(JP,A)
【文献】特表2011-528731(JP,A)
【文献】国際公開第01/055456(WO,A1)
【文献】特表2006-505716(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102964602(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103061204(CN,A)
【文献】国際公開第02/081819(WO,A1)
【文献】特表2010-522279(JP,A)
【文献】特表2010-522280(JP,A)
【文献】特開2011-084845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00 - 15/715
D21B 1/00 - 1/38
D21C 1/00 - 11/14
D21D 1/00 - 99/00
D21F 1/00 - 13/12
D21G 1/00 - 9/00
D21H 11/00 - 27/42
D21J 1/00 - 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟剤組成物であって、前記組成物の総重量に対して、
0.1~20重量%の、以下の式(I)のアミノシリコーン;
【化1】
(式中、
pとrは0以上の数であり、
qは0より大きい数であり、
Rは、1~12個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル若しくはアルコキシルを表すか、又はヒドロキシルを表し、
1は、1~18個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル若しくはアルコキシルを表すか、又はヒドロキシルを表し、
2は、1~18個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキレンを表し、
3は、水素原子又は1~18個の炭素原子を有する直若しくは分岐アルキルを表し、
Zは-O-又は-NR8-を表し、ここで、R8はR3と同義である。)
及び、10~80重量%の1価又は多価アルコール
を含み、
1価又は多価アルコールに対する前記アミノシリコーンの重量比は、0.2~0.001である、柔軟剤組成物
【請求項2】
前記柔軟剤組成物が1.0~10重量%の前記アミノシリコーンを含むことを特徴とする、請求項1に記載の柔軟剤組成物。
【請求項3】
式(I)の前記アミノシリコーンが、以下のうちの少なくとも1つを特徴とする、請求項1又は2に記載の柔軟剤組成物:
pとrは、互いに独立して、1~1000の数である
qは1~30である;
p+r+qの合計は10~2000である;
R及びR1は、互いに独立して、メチル、エチル、プロピル、メトキシル、エトキシル又はヒドロキシルを表す;
2は、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンテン、又はヘキシレンを表す;
3は、水素原子、又は1~6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキルを表す;及び/又は
Zは-O-又は-NR8-を表し、R8は水素原子、又は1~6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキルである。
【請求項4】
式(I)のアミノシリコーンにおいて、R及びR1は、互いに独立して、メチル、エチル、メトキシル又はヒドロキシル基から選択され;R2は、エチレン、プロピレン又はブチレンを表し;Zは、-O-を表し;及び/又はR3は水素原子を表す、請求項1~3のいずれか一項に記載の柔軟剤組成物。
【請求項5】
前記組成物において、式(I)とは異なる他のシリコーンの量が、前記組成物の総重量に対して、5重量%以下である、請求項1~のいずれか一項に記載の柔軟剤組成物。
【請求項6】
前記1価又は多価アルコールが式A-(OH)zを有し、
zは1~6の整数を表し、
Aは、1~12個の炭素原子を有する脂肪族基を表すか、又は40~1600の分子量のポリエーテルセグメントを表す、
請求項1~のいずれか一項に記載の柔軟剤組成物。
【請求項7】
前記ポリエーテルセグメントが脂肪族ポリエーテルセグメントである、請求項1~のいずれか一項に記載の柔軟剤組成物。
【請求項8】
前記1価又は多価アルコールがエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、グリコール、プロパンジオール、グリセリン、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサンジオール、又はポリエーテルポリオールから選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の柔軟剤組成物。
【請求項9】
前記1価又は多価アルコール成分は、少なくとも95重量%のグリセリンを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の柔軟剤組成物。
【請求項10】
アミノシリコーンと一価又は多価アルコールとの重量比は、0.001~0.2である、請求項1~のいずれか一項に記載の柔軟剤組成物。
【請求項11】
前記組成物は、増粘剤を、0.1重量%未満で含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の柔軟剤組成物。
【請求項12】
前記組成物は、pHを調整するための酸を0.01~0.3重量%含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の柔軟剤組成物。
【請求項13】
前記組成物がエマルジョンである、請求項1~12のいずれか一項に記載の柔軟剤組成物。
【請求項14】
式(I)の前記アミノシリコーン及び1価又は多価アルコール及び必要な水とは別に、前記組成物は、20重量%以下でる量の他の添加剤を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の柔軟剤組成物。
【請求項15】
前記組成物は、前記組成物の総重量に対して、20重量%~88重量%の水を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の柔軟剤組成物。
【請求項16】
以下のステップを含む、ティッシュを処理する方法:
請求項1から15のいずれか一項に記載される柔軟剤組成物を、ティッシュの坪量に対して20%を超える量でティッシュの表面にコーティングすること。
【請求項17】
前記柔軟剤組成物を、ティッシュの表面にローラーコーティング又はスプレーコーティングする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ティッシュの表面にコーティングした後、前記アミノシリコーンは0.01~3.2g/m 2 量で分布、前記ヒドロキシル基は0.5~9g/m 2 量で分布る、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1618のいずれか一項に記載の方法によって得られたティッシュ物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ティッシュ柔軟剤組成物、柔軟剤組成物を使用することによってティッシュを処理する方法、及び柔軟剤組成物によって処理されたティッシュ製品に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の生活では、人々はティッシュの柔らかさをますます望んでいる。したがって、ティッシュの柔らかさを改善するために適切な柔軟剤を使用することがますます重要になる。前記「ティッシュ」は、特に、ウェットティッシュ、ハンカチティッシュ、ナプキン、美容ティッシュ、箱入りティッシュなどの日常的に使用される紙製品を指し、これらは一般に、柔らかさ、ふわふわ感、又は吸水性に一定の要求がある。
【0003】
ティッシュ用の柔軟剤製品は、通常、第4級アンモニウム塩、潤滑剤、シリコーンなどで作られている。通常、ブラシコーティング、ローラーコーティング、スラリー内での添加などの方法でティッシュの表面に添加される。
【0004】
例えば、CN101509213Aは、ビスアミド第4級塩ティッシュ柔軟剤、ならびにその調製方法及び用途を開示している。
【0005】
さらに、さまざまなカチオン性柔軟剤のティッシュに対する効果が、YANG, Qinwu外,「Effect of Different Cationic Softening Agents on Household Paper」, Journal of Cellulose Science and Technology, Vol. 23 No. 1, Mar. 2015において比較されている。これらのカチオン性柔軟剤には、イミダゾリン、ポリアクリルアミド、第4級アンモニウム塩、脂肪酸エステル、及びシリコーンが含まれる。比較の結果は、アミノ含有シリコーン柔軟剤が柔らかさのために最適化された特性を最もよく持っていることを示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ティッシュの柔らかさの改善に加えて、ティッシュ製造業者、特にウェットティッシュ製造業者は、柔軟剤処理後のティッシュの皮膚親和性(特にアミノ含有シリコーン化合物の場合の皮膚刺激)及び柔軟剤のコート重量を増やして製造コストを削減し、原材料を節約すると同時に、損傷を可能な限り免除された柔らかさとティッシュ強度を維持する方法に対する関心をますます持つようになっている。
【0007】
別の文書CN103061204Bは、特にジオルガノシリコーン、1価又は多価アルコールを含むアルコール保湿剤、及び増粘剤を含む柔軟剤エマルジョン組成物を開示している。柔軟剤エマルジョン組成物の推奨されるコート重量は、ベースティッシュの坪量に対して1%~20%であり、組成物は増粘剤を含まなければならない。さらに、この文書は特定のジオルガノシリコーン化合物を提案していない。
【0008】
さらに、US5721297Aは、新規のピペリジニルオルガノシロキサンを開示している。しかしながら、前記オルガノシロキサンは、この文献では、ポリエチレン又はポリジオレフィンなどのポリマー基板の光/UV安定剤としてのみ使用されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目標を考慮して、本出願は、特定の量比で1価又は多価アルコールとの特殊なアミノシリコーンの組み合わせを含む、請求項1に記載の柔軟剤組成物を提供する。驚くべきことに、本出願の発明者は、そのような柔軟剤組成物を使用することにより、ティッシュ強度を損なうことなく、改善された柔らかさ及び増加したコート重量を達成できることを見出した。特に、柔軟剤組成物のコート重量は、増粘剤などの粘度を増加させるための添加剤を添加することなく、ティッシュの坪量に対して20%以上の量まで増加させることができる。
【0010】
さらに、本発明による柔軟剤組成物は、特定の比率でのアミノシリコーンと一価又は多価アルコールとの相乗作用下での柔らかさの改善において、シリコーン系単独又はアルコール系単独よりも効率的である。さらに、本発明による柔軟剤組成物は、処理後のティッシュの良好な吸水を維持し、黄変する傾向を少なくし、良好な皮膚親和性をもたらすことができる。
【0011】
別の態様では、本出願はまた、ティッシュを処理するための方法に関する。
【0012】
最後に、本出願は、上記の方法から得られたティッシュ製品に関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
アミノシリコーン(一般にアミノシリコーンオイルとしても知られている)は、ティッシュ処理用の柔軟剤として知られている。そのようなアミノ修飾シリコーン化合物は、その分岐又は末端にアミノ基を有するポリシロキサンである。バックボーンのシリコーン-酸素結合の酸素原子が繊維の表面に付着する可能性があるため、疎水性基をティッシュ繊維表面に沿って配向及び配置し、それによって疎水性で柔軟な連続薄膜を形成してティッシュを柔らかくすることができる。ただし、従来のアミノポリジメチルシロキサンは皮膚や目を刺激する。また、それらによって処理されたティッシュは、高温及び周囲条件下で黄変しやすく、処理されたティッシュの貯蔵寿命を短くする可能性がある。シリコーンフィルムの撥水性のため、処理されたティッシュの吸水特性は大幅に低下する。
【0014】
しかしながら、本出願の発明者は、以下に記載される特定のアミノシリコーンを1価又は多価アルコール、特にグリセリンなどの多価アルコール化合物と組み合わせて使用すると、柔らかさのさらなる大幅な改善とコート重量の大幅な向上を達成しながら、機械的特性が損なわれずに維持され、又は増加さえすることを見出した。さらに、処理されたティッシュは、ベースティッシュの吸水性を維持し、黄変又は色の変化に対して脆弱ではなく、良好な皮膚親和性を有する。
【0015】
したがって、本発明による柔軟剤組成物は、前記組成物の総重量に対して、
0.1~20重量%、好ましくは0.5~15重量%、より好ましくは1.0~10重量%の、以下の式(I)のアミノシリコーン;
【化1】
(式中、
pとrは0以上の数であり、
qは0より大きい数、好ましくは1~40であり、好ましくは、p+r+qの合計は5以上であり、
Rは、1~12個、好ましくは1~6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル若しくはアルコキシルを表すか、又はヒドロキシルを表し、
1は、1~18個、好ましくは1~12個、より好ましくは1~8個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル若しくはアルコキシルを表すか、又はヒドロキシルを表し、
2は、1~18個、好ましくは2~12個の炭素原子を有する線状又は分枝状アルキレンを表し、
3は、1~18個、好ましくは2~12個の炭素原子を有する水素原子又は直鎖又は分岐アルキルを表し、
Zは-O-又は-NR8-を表し、ここで、R8はR3と同義である。)
及び、10~80重量%、好ましくは20~75重量%、より好ましくは25~75重量%の1価又は多価アルコール。
ここで、1価又は多価アルコールに対する前記アミノシリコーンの重量比は、0.2~0.001である。
【0016】
本発明の有利な実施形態において、式(I)の前記アミノシリコーンが、以下のうちの少なくとも1つを特徴とする:
pとrは、互いに独立して、1~1000の数であり、例えば2~800である;
qは1~30である;
p+r+qの合計は10~2000、好ましくは100~1600である;
R及びR1は、互いに独立して、メチル、エチル、プロピル、メトキシル、エトキシル又はヒドロキシルを表す;
2は、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンテン、又はヘキシレンを表す;
3は、水素原子、又はメチル、エチル、若しくはプロピルのような1~6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキルを表す;及び/又は
Zは-O-又は-NR8-を表し、R8は水素原子、又はメチル、エチル、若しくはプロピルのような1~6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキルである。
【0017】
より好ましい実施形態では、式(I)のアミノシリコーンにおいて、R及びR1は、互いに独立して、メチル、エチル、メトキシル又はヒドロキシル基、より好ましくはメチル基から選択され;R2は、エチレン、プロピレン又はブチレン、より好ましくはプロピレンを表し;Zは、-O-を表し;及び/又はR3は水素原子を表す。
【0018】
本発明の式(I)のアミノシリコーンは、以下の式(II)のシリコーン化合物から調製することができる。
【化2】
式中、p、q、r、R及びR1はそれぞれ、式(I)の化合物の上記定義において与えられた意味を有する。本明細書において、出発物質として好ましく使用される式(II)の化合物中のR1基の少なくとも1つは、CH3である。
【0019】
式(II)のそのような化合物は容易に市販から入手できる。
【0020】
化合物(II)の水素原子の式(III)の基、また任意的に基R1による置換は、シリコーン(II)を、触媒の存在下でヒドロシリル化反応を受けやすいエチレン性二重結合を有する化合物と反応させることによって実施することができる。
【化3】
【0021】
したがって、そのような化合物は、基(III)又は基R1の不飽和前駆体であり得る。
【0022】
基R1の不飽和前駆体の特定の非限定的な例には、1-オクテン、1-ドデセン及び1-オクタデセンが含まれる。
【0023】
式(III)の基の前駆体の特定の非限定的な例には、1-アリルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-アリルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン及び2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニルウンデセノエートが含まれる。
【0024】
エチレン性二重結合を含むR2の前駆体を≡Si-H部分のヒドロシリル化により反応させ、次にこのR2の前駆体に対して2番目の反応を行って、その上で2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル基を導入することにより、以下の構造単位を形成することも可能である:
【化4】
【0025】
本発明の式(I)の異なる化合物への合成経路は様々であり得、本明細書に限定されない。例えば、当業者は、先行技術US5721297Aに記載されているピペリジニルシリコーンの合成方法を参照及び修正して、所望の構造を有する式(I)の化合物を得ることができる。US5721297Aの全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0026】
ここで、本発明に特に適した式(I)のアミノシリコーンは、BLUESIL FLD 21650、BLUESIL FLD 21653、BLUESIL FLD 21654などとして市販されている。
【0027】
具体的には、本出願の発明者は、組成物が本発明の式(I)のアミノシリコーンを含む場合、損傷のない機械的特性の維持及び柔らかさの有意な改善に加えて、式(I)のアミノシリコーンはまた、他の従来のアミノシリコーンオイルと比較して、より良い吸水率及び改善された黄変に対する耐性、ならびに特に良好な皮膚親和性を処理ティッシュに与えることができることを見出した。したがって、好ましくは、本発明の組成物は、実質的に式(I)のアミノシリコーンをシリコーン成分として含み、他のシリコーン化合物(特に他のアミノシリコーン)の量は、組成物の総重量に対して、5重量%以下、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。
【0028】
本発明の柔軟剤組成物の別の成分として、1価又は多価アルコール化合物が使用される。本発明の範囲において、適切な1価又は多価アルコールは、平均して1分子あたり1つ又は複数のヒドロキシルを有する化合物、好ましくは脂肪族アルコール又はポリエーテルアルコールであると理解される。
【0029】
有利な実施形態において、適切な一価又は多価アルコール化合物は、式A-(OH)zを有し得、
zは1~6、好ましくは1~4、より好ましくは2~3の整数を表し、
Aは、1~12個の炭素原子、好ましくは2~8個の炭素原子、より好ましくは3~8個の炭素原子、例えばアルキルを有する脂肪族基を表すか、又は40~1600の分子量のポリエーテルセグメントを表す。
【0030】
好ましくは、前記ポリエーテルセグメントが脂肪族ポリエーテルセグメントであり、より好ましくは4~25個のポリオキシエチレン及び/又はポリオキシプロピレン基を有するセグメントから選択される。
【0031】
ここで、ヒドロキシルの位置は限定されておらず、それは基Aの末端又は側であり得る。
【0032】
好ましくは、本発明による1価又は多価アルコール化合物の例には、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、グリコール、プロパンジオール、グリセリン、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサンジオール、又はポリオキシエチレン若しくはポリオキシプロピレンのジオール若しくはトリオールなどのポリエーテルポリオールが含まれる。好ましくは、前記1価又は多価アルコール化合物は、グリコール、トリメチロールプロパン、プロパンジオール及び/又はグリセリンから選択される。本出願の発明者は、組成物中の1価又は多価アルコール成分としてグリセリン(グリセロール)を使用する場合、処理されたティッシュがより最適な柔らかさ、滑りやすさ、保湿性を有することができることを見出した。
【0033】
したがって、特に好ましい実施形態では、前記1価又は多価アルコール成分は、少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に好ましくは99.5重量%、さらには100重量%のグリセリンを含む。
【0034】
さらに、本発明の上記の効果を達成するために、多価アルコール成分に対する前記アミノシリコーンの重量比は、0.001~0.2の範囲でなければならない。この範囲外の重量比を採用した場合、処理されたティッシュの手触りが悪くなり、保湿性が低下し、機械的特性やコート重量にも悪影響を与える可能性がある。有利には、前記アミノシリコーンと1価又は多価アルコールとの重量比は、0.001~0.2、好ましくは0.002~0.15、より好ましくは0.005~0.10、特に好ましくは0.01~0.08である。前記最も好ましい範囲と、好ましくは実質的にグリセリンに基づく1価又は多価アルコール成分とを組み合わせて、処理されたティッシュは、最適な包括的な特性を示すことができる。
【0035】
さらに、有利な実施形態では、本発明による柔軟剤組成物は、ティッシュをコーティングするのに役立つ安定化されたエマルジョンを形成するための乳化剤も含むことができる。そのような乳化剤は、非イオン性乳化剤及びカチオン性乳化剤であり得る。適切な非イオン性乳化剤の例には、脂肪族アルコールのポリオキシエチレンエーテル、例えば4~50のオキシアルキレン単位を有するポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリビニルソルビトールエーテル、ポリオキシエチレングリセロールエーテル及びイソトリデシルアルコールポリオキシエチレンエーテルなどのソルビトールエステルなどが含まれる。カチオン性乳化剤の例は、アルキルトリメチルアンモニウムクロリド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド及びアルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリドなどの第4級アンモニウム塩乳化剤である。
【0036】
組成物の粘度は、通常、サイジング量(すなわち、コート重量)に比較的重要な影響を及ぼす。粘度が低すぎる場合、塗布された組成物がコーティングローラー表面に付着するのに有利ではない。粘度が高すぎると、流動性が悪くなり、均一なコーティングが得られにくい。したがって、従来技術では、粘度を調整するために、一般に、一定量の増粘剤が柔軟剤組成物に添加される。しかしながら、増粘剤の添加は、ティッシュ製品の手触りを損なう一方で、製品中の細菌に対する耐性に悪影響を及ぼす。したがって、本発明において、好ましい組成物は、0.1重量%未満、より好ましくは0.05重量%未満の増粘剤を含み、最も好ましくは増粘剤を含まない。そのような増粘剤は、例えば、ポリアクリル酸、セルロース、アルギン酸の塩、及びグアーガム増粘剤である。
【0037】
上記の成分に加えて、本発明による柔軟剤組成物は、他の添加剤、例えば、クエン酸、リン酸、酢酸、乳酸、塩酸などの、pHを調整するための0.01~0.3重量%の酸、及び臭気調整用香料を例えば0.01~0.1重量%含むこともできる。本発明の範囲内で、pHを調整するための酸が好ましくは添加され、その結果、処理されたティッシュは、組成物エマルジョンの安定性を有利に増加させながら、皮膚に対してさらに優しくなる。
【0038】
一般に、本発明において、式(I)の前記アミノシリコーン及び1価又は多価アルコール及び必要な水とは別に、前記組成物は、20重量%以下、好ましくは15重量%未満又は10重量%未満、より好ましくは5重量%未満又は1重量%未満又は0.5重量%未満又は0.1重量%未満であるの量の他の添加剤を含む。
【0039】
好ましい実施形態では、前記組成物はエマルジョンである。
【0040】
別の好ましい実施形態では、前記組成物は、組成物の総重量に対して、20重量%~88重量%、例えば、30重量%~70重量%又は35重量%~60重量%の水を含む。
【0041】
本発明の第2の態様は、前記柔軟剤組成物の調製方法に関する。
【0042】
本発明の柔軟剤組成物は、各成分を示された量で簡単な方法で混合し、完全に攪拌して安定なエマルジョンを形成することによって得ることができる。
【0043】
さらなる態様では、本出願はまた、ティッシュの軟化処理方法に関する。処理方法は、スプレーコーティング、ローラーコーティング、印刷などの後処理方法である。例えば、本発明による柔軟剤組成物は、例えば、ティッシュを巻き上げる若しくは巻き戻すプロセス、又はティッシュを作製する他のプロセスの間に、上記の方法によって、処理すべきティッシュ製品の表面に直接適用することができる。
【0044】
ティッシュの軟化処理の有利な実施形態では、上記の柔軟剤組成物は、ティッシュの坪量に対して20%を超える量、好ましくは25%~35%の量でティッシュの表面にコーティングされる。好ましくは、適用後、ティッシュ表面の各平方メートルには、アミノシリコーンは0.01~3.2g/m2、好ましくは0.04~2g/m2の量で分布され、ヒドロキシルは0.5~9g/m2、好ましくは1~9g/m2の量で分布される。
【0045】
最後に、本出願は、上記の方法に従って得られたティッシュ製品に関する。
【実施例
【0046】
1.原材料の一部のリスト
【0047】
【表1】
【0048】
2.エマルジョンの調製
例を示す表2に記載されているように、アルコール成分を除く各成分を示された量で均一に混合し、続いて少量の水を加え、完全に転相するまで高速撹拌した。次に、残りの水を徐々に加え、300rpmで10分間混合した。最後に、アルコール成分(すなわち、グリセリン及び/又は1,2PG)を添加し、40℃、200rpmで1時間撹拌し続けた。例1及び8は比較例である。
【0049】
さらに、例4のシリコーン油を一般的なアミノシリコーン油(Bluesil Ecosoft C803)に置き換えたことを除いて、例4を繰り返して比較例10を実施した。次に、2つの例で調製された柔軟剤組成物を、以下に記載されるように、ティッシュ吸水率、白色度低下率、及び皮膚親和性について試験し、結果を表4に要約する。
【0050】
3.テスト
【0051】
(1)スプレーコート重量:
a)準備したティッシュ柔軟剤を高圧スプレーガンに注ぎ、スプレーコーティングの粒子径とスプレーコートの重量を調整する。
b)治療するティッシュの重さを量り、その重さをW0として記録する。
c)処理するティッシュをスプレーコーティングパネルに固定し、柔軟剤をスプレーコーティングし、ティッシュの反対側で同じ処理を行う。
d)スプレーコーティングされたティッシュの重量を量り、その重量をW1として記録する。
e)次の式に従ってスプレーコートの重量Wを計算する。
f)上記の手順を繰り返して、各サンプルに対して少なくとも10枚の処理済みティッシュを準備する。
g)上記のティッシュを2つのグループに分け、一方のグループを予備としてジップロック(登録商標)バッグに入れ、もう一方のグループを指定の温度と湿度(湿度70~80%、室温20℃12時間の条件下で維持)に調整した。
【0052】
(2)ティッシュの特性
(i)官能検査
このテストについてすでに十分な訓練を受けた少なくとも5人を含む集団に、テストの主観的な評価を依頼した。各評価者は、処理されたティッシュに触れ、最も柔らかいものから最も柔らかくないものまでのスコアを与えた。ティッシュの滑りやすさと水分を評価するために、同様の手順を行った。各特性について、サンプルの最も悪い感覚は1としてスコア付けされ、最も良いスコアは5としてスコア付けされた。
【0053】
すべてのサンプルのすべての評価者からのテスト結果が表にまとめられ、各特性の平均数について計算された。数値が大きいほど、柔らかさ、滑りやすさ、又はしっとり感が優れていることを意味する。
【0054】
上記のすべての特性のテストデータは、以下の表3にまとめられている。
【0055】
(ii)ティッシュ吸水試験
a)処理したティッシュをテーブルに広げた。
b)標準のスポイトを使用して、ティッシュに水滴を垂らした。水が滴り、ティッシュ上に広がりが止まるまで広がった。完全な拡散時間を記録した。
c)上記の操作を5回繰り返し、平均(秒単位)を取った。
数値が大きいほど、吸水率は低い。
【0056】
(iii)ティッシュ白色度試験
a)ティッシュを2回半分に折りたたんで、4つの領域を作成した。比色計を使用して、4つの領域の白色度の値をテストした。同じ操作をティッシュの反対側で実行した。8つの領域の平均白色度値M0を取得した。
b)ティッシュを170℃で2分間加熱した後、室温で2時間置いた。
c)ステップa)にしたがった、焼けたティッシュの白色度値M1をテストした。
d)ティッシュの白色度低下率Mを、式:
に従って計算した。ここで、Mが低いほど、黄変に対する耐性が高い。
【0057】
(iv)ティッシュの皮膚親和性試験
製品は、「化粧品衛生規則」(保健省、2007年)(GB7919-87化粧品安全性評価手順及び方法)に記載されている手順に従ってテストした。皮膚親和性は、主に皮膚刺激性試験結果、皮膚アレルギー試験結果、及び皮膚光毒性試験結果に基づいて評価した。良好な親和性とは、刺激、アレルギー反応、光毒性反応が起こらないことと定義されている。
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
上記の内容は、本発明の例示的な説明であり、本発明の特定の実施形態がこれに限定されるとは考えられない。本発明の核心から逸脱することなく、創造的な作業なしに当業者が行うことができる任意の単純な変形、修正、又は他の同等の置換は、本発明の保護範囲に入ることに留意されたい。
【要約】
【課題】ティッシュ強度を損なうことなく、改善された柔らかさ及び増加したコート重量を達成できることできるティッシュ柔軟剤組成物の提供。
【解決手段】この課題は、柔軟剤組成物であって、前記組成物の総重量に対して、
0.1~20重量%の、以下の式(I)のアミノシリコーン;
【化1】
(式中、
pとrは0以上の数であり、
qは0より大きい数であり、
Rは、1~12個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル若しくはアルコキシル基を表すか、又はヒドロキシル基を表し、
1は、1~18個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル若しくはアルコキシル基を表すか、又はヒドロキシル基を表し、
2は、1~18個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキレン基を表し、
3は、水素原子又は1~18個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基を表し、
Zは-O-又は-NR8-を表し、ここで、R8はR3と同義である。)
及び、10~80重量%の1価又は多価アルコール
を含み、
1価又は多価アルコールに対する前記アミノシリコーンの重量比は、0.2~0.001である、柔軟剤組成物。を提供することによって解決される。
【選択図】なし