(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】撮像光学系、撮像装置及び撮像システム
(51)【国際特許分類】
G02B 13/18 20060101AFI20230217BHJP
G02B 13/04 20060101ALI20230217BHJP
G02B 13/08 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
G02B13/18
G02B13/04 D
G02B13/08
(21)【出願番号】P 2020530939
(86)(22)【出願日】2019-06-13
(86)【国際出願番号】 JP2019023536
(87)【国際公開番号】W WO2020017201
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2018135302
(32)【優先日】2018-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100199314
【氏名又は名称】竹内 寛
(72)【発明者】
【氏名】松村 善夫
(72)【発明者】
【氏名】庄林 寛幸
【審査官】岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-163549(JP,A)
【文献】特開2008-292800(JP,A)
【文献】特開2010-276755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00-17/08
G02B 21/02-21/04
G02B 25/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子に結像するイメージサークルを有する撮像光学系であって、
物体側から像面側に並んだ複数のレンズ素子と、前記複数のレンズ素子の間に配置された絞りとを備え、
前記複数のレンズ素子は、互いに交差する第1方向と第2方向との間で非対称な自由曲面を有する自由曲面レンズを含み、
少なくとも2枚の自由曲面レンズが、前記絞りよりも物体側に配置され
、
前記絞りよりも物体側の自由曲面レンズの全ての自由曲面において、(SS
k
-SL
k
)の符号が同じであり、
ここで、
k:前記絞りよりも物体側の自由曲面レンズの自由曲面における各自由曲面を示す番号
SL
k
:k番目の自由曲面の前記第1方向における高さが最短像高の50%の箇所のサグ量
SS
k
:当該自由曲面の前記第2方向における高さが最短像高の50%の箇所のサグ量
である、撮像光学系。
【請求項2】
前記イメージサークルにおいて、前記第1方向の径が前記第2方向の径以上であり、
前記絞りよりも物体側の自由曲面レンズの自由曲面に関する総和に基づく以下の条件式(1)を満たし、
【数1】
ここで、
N:前記絞りよりも物体側の自由曲面レンズにおける自由曲面の総数
k:総数Nの自由曲面における各自由曲面を示す番号
SL
k:k番目の自由曲面の前記第1方向における高さが最短像高の50%の箇所のサグ量
SS
k:当該自由曲面の前記第2方向における高さが最短像高の50%の箇所のサグ量
Δnd
k:当該自由曲面よりも像面側における屈折率から物体側における屈折率を差し引いた差分
YSH:最短像高の50%の高さ
である、請求項1に記載の撮像光学系。
【請求項3】
前記イメージサークルにおいて、前記第1方向の径が前記第2方向の径以上であり、
前記絞りよりも物体側の自由曲面レンズの自由曲面に関する総和に基づく以下の条件式(2)を満たし、
【数2】
ここで、
N:前記絞りよりも物体側の自由曲面レンズにおける自由曲面の総数
k:総数Nの自由曲面における各自由曲面を示す番号
SL
k:k番目の自由曲面の前記第1方向における高さが最短像高の50%の箇所のサグ量
SS
k:当該自由曲面の前記第2方向における高さが最短像高の50%の箇所のサグ量
Δnd
k:当該自由曲面よりも像面側における屈折率から物体側における屈折率を差し引いた差分
CTL1:最も物体側のレンズ素子の厚み
である、請求項1に記載の撮像光学系。
【請求項4】
前記イメージサークルにおいて、前記第1方向の径が前記第2方向の径以上であり、
前記絞りよりも物体側の自由曲面レンズの自由曲面に関する総和に基づく以下の条件式(3)を満たし、
【数3】
ここで、
N:前記絞りよりも物体側の自由曲面レンズにおける自由曲面の総数
k:総数Nの自由曲面における各自由曲面を示す番号
SL
k:k番目の自由曲面の前記第1方向における高さが最短像高の50%の箇所のサグ量
SS
k:当該自由曲面の前記第2方向における高さが最短像高の50%の箇所のサグ量
Δnd
k:当該自由曲面よりも像面側における屈折率から物体側における屈折率を差し引いた差分
CTF:最も物体側の自由曲面レンズの厚み
である、請求項1に記載の撮像光学系。
【請求項5】
前記イメージサークルにおいて、前記第1方向の径が前記第2方向の径以上であり、
最も物体側の自由曲面レンズの両面に関する総和と、前記絞りよりも物体側において最も像面側の自由曲面レンズの両面に関する総和とに基づく以下の条件式(4)を満たし、
【数4】
ここで、
i:前記最も物体側の自由曲面レンズの各面を示す番号
SL
i:前記最も物体側の自由曲面レンズのi番目の面の前記第1方向における高さが最短像高の50%の箇所のサグ量
SS
i:前記i番目の面の前記第2方向における高さが最短像高の50%の箇所のサグ量
Δnd
i:前記i番目の面よりも像面側における屈折率から物体側における屈折率を差し引いた差分
n:前記最も像面側の自由曲面レンズの各面を示す番号
SL
n:前記最も像面側の自由曲面レンズのn番目の面の前記第1方向における高さが最短像高の50%の箇所のサグ量
SS
n:前記n番目の面の前記第2方向における高さが最短像高の50%の箇所のサグ量
Δnd
n:前記n番目の面よりも像面側における屈折率から物体側における屈折率を差し引いた差分
である、請求項1に記載の撮像光学系。
【請求項6】
前記イメージサークルにおいて、前記第1方向の径が前記第2方向の径以上であり、
以下の条件式(5)を満たし、
【数5】
ここで、
SL
1:最も物体側の自由曲面の前記第1方向における高さが最短像高の50%の箇所のサグ量
SS
1:前記最も物体側の自由曲面の前記第2方向における高さが最短像高の50%の箇所のサグ量
Δnd
1:前記最も物体側の自由曲面よりも像面側における屈折率から物体側における屈折率を差し引いた差分
SL
N:前記絞りよりも物体側において最も像面側の自由曲面の前記第1方向における高さが最短像高の50%の箇所のサグ量
SS
N:前記最も像面側の自由曲面の前記第2方向における高さが最短像高の50%の箇所のサグ量
Δnd
N:前記最も像面側の自由曲面よりも像面側における屈折率から物体側における屈折率を差し引いた差分
である、請求項1に記載の撮像光学系。
【請求項7】
以下の条件式(6)を満たし、
1≦nd1/ndN<1.3 …(6)
ここで、
nd1:最も物体側の自由曲面レンズのd線に対する屈折率
ndN:前記絞りよりも物体側において最も像面側の自由曲面レンズのd線に対する屈折率
である、請求項1に記載の撮像光学系。
【請求項8】
以下の条件式(7)を満たし、
1.45<ndN<1.80 …(7)
ここで、
ndN:前記絞りよりも物体側において最も像面側の自由曲面レンズのd線に対する屈折率
である、請求項1に記載の撮像光学系。
【請求項9】
前記絞りよりも物体側の自由曲面レンズが、互いに隣り合う
請求項1に記載の撮像光学系。
【請求項10】
前記複数のレンズ素子は、前記絞りよりも像面側に配置された自由曲面レンズを含む
請求項1に記載の撮像光学系。
【請求項11】
最も物体側のレンズ素子は、光軸に対して回転対称である
請求項1に記載の撮像光学系。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれか1項に記載の撮像光学系と、
前記撮像光学系によって結像される像を撮像する撮像素子とを備え、
前記撮像素子は、前記第1方向に対応する第1辺と、前記第2方向に対応する第2辺であって、前記第1辺以下の長さを有する第2辺とを有する
撮像装置。
【請求項13】
請求項
12に記載の撮像装置と、
前記撮像装置の撮像素子によって撮像された画像に画像処理を実行する画像処理部と
を備えた撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像光学系、撮像装置及び撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、長方形の画像センサによりパノラマ画像を撮像する方法を開示している。特許文献1は、魚眼対物レンズに円環レンズを用いることにより、円形画像を矩形画像にしている。これにより、長方形の画像センサにおいて、矩形の撮像素子に矩形画像を結像させ、パノラマ画像を撮像することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、特定の方向における画角を拡げ易くすることができる撮像光学系、撮像装置及び撮像システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る撮像光学系は、撮像素子に結像するイメージサークルを有する光学系である。撮像光学系は、物体側から像面側に並んだ複数のレンズ素子と、複数のレンズ素子の間に配置された絞りとを備える。複数のレンズ素子は、互いに交差する第1方向と第2方向との間で非対称な自由曲面を有する自由曲面レンズを含む。少なくとも2枚の自由曲面レンズが、絞りよりも物体側に配置される。
【0006】
本開示に係る撮像装置は、上記の撮像光学系と、撮像素子とを備える。撮像素子は、撮像光学系によって結像される像を撮像する。撮像素子は、第1方向に対応する第1辺と、第2方向に対応する第2辺であって、第1辺以下の長さを有する第2辺とを有する。
【0007】
本開示に係る撮像システムは、上記の撮像装置と、画像処理部とを備える。画像処理部は、撮像装置の撮像素子によって撮像された画像に画像処理を実行する。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る撮像光学系、撮像装置及び撮像システムによると、特定の方向における画角を拡げ易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態1に係る撮像システムの構成を示す図
【
図2】撮像システムにおける撮像素子を説明するための図
【
図3】実施例1に係る撮像光学系の構成を示すレンズ配置図
【
図4】数値実施例1の撮像光学系における画角と像点との関係を示す散布図
【
図5】数値実施例1における撮像光学系の面データを示す図
【
図6】数値実施例1における撮像光学系の各種データを示す図
【
図7】数値実施例1の撮像光学系における3番目の面の自由曲面データを示す図
【
図8】数値実施例1の撮像光学系における4番目の面の自由曲面データを示す図
【
図9】数値実施例1の撮像光学系における5番目の面の自由曲面データを示す図
【
図10】数値実施例1の撮像光学系における6番目の面の自由曲面データを示す図
【
図11】数値実施例1の撮像光学系における9番目の面の非球面データを示す図
【
図12】数値実施例1の撮像光学系における10番目の面の非球面データを示す図
【
図13】数値実施例1の撮像光学系における15番目の面の自由曲面データを示す図
【
図14】数値実施例1の撮像光学系における16番目の面の自由曲面データを示す図
【
図15】数値実施例1における撮像光学系の諸収差を示す収差図
【
図16】実施形態1の撮像光学系における諸条件の充足性を示す図表
【
図17】撮像光学系における諸条件を説明するための図
【
図18】実施例2に係る撮像光学系の構成を示すレンズ配置図
【
図19】数値実施例2における撮像光学系の面データを示す図
【
図20】数値実施例2における撮像光学系の各種データを示す図
【
図21】数値実施例2の撮像光学系における2番目の面の自由曲面データを示す図
【
図22】数値実施例2の撮像光学系における3番目の面の自由曲面データを示す図
【
図23】数値実施例2の撮像光学系における4番目の面の自由曲面データを示す図
【
図24】数値実施例2の撮像光学系における5番目の面の自由曲面データを示す図
【
図25】数値実施例2の撮像光学系における6番目の面の自由曲面データを示す図
【
図26】数値実施例2の撮像光学系における7番目の面の非球面データを示す図
【
図27】数値実施例2の撮像光学系における8番目の面の非球面データを示す図
【
図28】数値実施例2の撮像光学系における13番目の面の自由曲面データを示す図
【
図29】数値実施例2の撮像光学系における14番目の面の自由曲面データを示す図
【
図30】数値実施例2の撮像光学系における画角と像点との関係を示す散布図
【
図31】数値実施例2における撮像光学系の諸収差を示す収差図
【
図32】実施例3に係る撮像光学系の構成を示すレンズ配置図
【
図33】数値実施例3における撮像光学系の面データを示す図
【
図34】数値実施例3における撮像光学系の各種データを示す図
【
図35】数値実施例3の撮像光学系における2番目の面の非球面データを示す図
【
図36】数値実施例3の撮像光学系における3番目の面の自由曲面データを示す図
【
図37】数値実施例3の撮像光学系における4番目の面の自由曲面データを示す図
【
図38】数値実施例3の撮像光学系における5番目の面の自由曲面データを示す図
【
図39】数値実施例3の撮像光学系における6番目の面の自由曲面データを示す図
【
図40】数値実施例3の撮像光学系における15番目の面の非球面データを示す図
【
図41】数値実施例3の撮像光学系における17番目の面の自由曲面データを示す図
【
図42】数値実施例3の撮像光学系における18番目の面の自由曲面データを示す図
【
図43】数値実施例3の撮像光学系における19番目の面の自由曲面データを示す図
【
図44】数値実施例3の撮像光学系における20番目の面の自由曲面データを示す図
【
図45】数値実施例3の撮像光学系における画角と像点との関係を示す散布図
【
図46】数値実施例3における撮像光学系の諸収差を示す収差図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、或いは実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0011】
なお、出願人は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0012】
(実施形態1)
以下、本開示に係る撮像光学系、撮像装置及び撮像システムの実施形態1を、図面を用いて説明する。
【0013】
1.撮像システムについて
本実施形態に係る撮像システムについて、
図1を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る撮像システム10の構成を示す図である。
【0014】
本実施形態に係る撮像システム10は、例えば
図1に示すように、撮像装置11と、画像処理部13とを備える。撮像装置11は、撮像光学系ILと、撮像素子12とを備える。撮像装置11は、種々の物体を被写体とする画像を撮像する装置であり、例えば各種のカメラを構成する。画像処理部13は、カメラ等に組み込まれてもよい。以下、撮像装置11おける撮像光学系ILの光軸D1の方向をZ方向とし、Z方向に直交する水平方向をX方向とし、Z,X方向に直交する垂直方向をY方向とする。
【0015】
撮像光学系ILは、撮像装置11の外部から入射する光を取り込んで、取り込んだ光によるイメージサークル等の像を結像する。撮像光学系ILは、例えば屈折光学系で構成される。撮像光学系ILの詳細については後述する。以下、
図1に示すように、撮像光学系ILにおける+Z側を像面側とし、-Z側を物体側とする。
【0016】
撮像素子12は、例えばCCD又はCMOSイメージセンサである。撮像素子12は、複数の画素が等間隔で二次元的に配置された撮像面を有する。撮像素子12は、撮像装置11において撮像面が撮像光学系ILの像面に位置するように配置される。撮像素子12は、撮像光学系ILを介して撮像面に結像した像を撮像し、撮像画像を示す画像信号を生成する。
【0017】
画像処理部13は、撮像素子12からの画像信号に基づいて、撮像装置11による撮像画像に所定の画像処理を行う。画像処理は、例えばガンマ補正および歪曲補正等である。画像処理部13は、例えば内部メモリに格納されたプログラムを実行することで種々の機能を実現するCPU又はMPU等を含む。画像処理部13は、所望の機能を実現するように設計された専用のハードウェア回路を含んでもよい。画像処理部13は、CPU、MPU、GPU、DSP、FPGA又はASIC等を含んでもよい。
【0018】
本実施形態の撮像システム10において、撮像素子12の撮像面は、例えば矩形状に構成される。撮像素子12の撮像面について、
図2を用いて説明する。
【0019】
図2は、撮像素子12の撮像面が長方形である場合を例示している。撮像素子12は、撮像面を規定する長辺Dxおよび短辺Dyを有する。
図2の例において、長辺Dxは、短辺Dyに直交し、且つ短辺Dyよりも大きい。撮像素子12は、長辺DxがX方向に平行であり、短辺DyがY方向に平行であるように配置される。以下、X方向を長辺方向といい、Y方向を長辺方向という場合がある。
【0020】
図2では、撮像光学系ILによるイメージサークルIsと撮像面との位置関係を例示している。本実施形態のイメージサークルIsは、円形状から楕円などに歪んだ形状であり、長径Ix及び短径Iyを有する。
図2の例において、長径Ixは、短径Iyに直交し、且つ短径Iyよりも大きい。撮像光学系ILは、撮像素子12の長辺Dx及び短辺Dyに対応して、イメージサークルIsの長径IxがX方向に平行であり、短径IyがY方向に平行であるように配置される。本実施形態において、X方向は第1方向の一例であり、Y方向は第2方向の一例である。また、長辺Dxは第1辺の一例であり、短辺Dyは第2辺の一例である。
【0021】
撮像光学系ILのイメージサークルIsは、例えば、撮像素子12の撮像面の範囲に包含されない部分を有する。
図2の例において、イメージサークルIsの長径Ixは、撮像素子12の長辺Dxよりも大きい。また、イメージサークルIsの短径Iyは、撮像素子12の短辺Dyよりも大きい。撮像素子12は、撮像面の範囲内のイメージサークルIsによる画像を撮像する。
【0022】
以上のような撮像システム10において、本実施形態の撮像光学系ILは、撮像素子12による撮像画像の解像度を確保しながら、短辺方向(即ちY方向)における画角の拡大を実現する。以下、本実施形態の撮像光学系ILの詳細について説明する。
【0023】
2.撮像光学系について
本実施形態に係る撮像光学系ILが具体的に実施される一例として、撮像光学系ILの実施例1~3を以下説明する。
【0024】
2-1.実施例1
図3~15を用いて、実施例1に係る撮像光学系IL1について説明する。
【0025】
図3は、実施例1に係る撮像光学系IL1の構成を示すレンズ配置図である。以下の各レンズ配置図は、例えば撮像光学系IL1の無限遠合焦状態において、各種レンズの配置を示す。
図3(a)は、本実施例の撮像光学系IL1のYZ断面におけるレンズ配置図を示す。
図3(b)は、撮像光学系IL1のXZ断面におけるレンズ配置図を示す。YZ断面及びXZ断面は、それぞれ撮像光学系IL1の光軸D1に沿った仮想的な断面である。
【0026】
図3(a)において、記号「*」及び「●」を付した曲面は、自由曲面であることを示す。自由曲面は、光軸D1に対して回転非対称な曲面である。例えば、記号「*」の自由曲面は後述するXY多項式面であり(式(E2)参照)、記号「●」の自由曲面は後述するアナモルフィック非球面である(式(E1)参照)。なお、
図3(b)では、各種符号を省略している。
【0027】
本実施形態の撮像光学系ILは、例えば
図3(a),(b)に示すように、X方向とY方向との間で非対称な自由曲面を複数、有する。以下、物体側と像面側の少なくとも一方に自由曲面を有するレンズ素子を自由曲面レンズという。
【0028】
実施例1の撮像光学系IL1は、第1~第8レンズ素子L1~L8と、絞りAとを備える。
図3(a)に示すように、撮像光学系IL1においては第1~第8レンズ素子L1~L8が、物体側から像面側へ順番に、光軸D1に沿って並んでいる。絞りAは、開口絞りである。
【0029】
本実施例の撮像光学系IL1において、最も物体側の第1レンズ素子L1は、魚眼レンズを構成する。本実施例の第1レンズ素子L1は、光軸D1に対して回転対称な球面レンズである。第1レンズ素子L1は、例えば負メニスカス形状を有し、凸面を物体側に向けて配置される。
【0030】
本実施例において、第2レンズ素子L2は、物体側と像面側の両側に自由曲面を有する自由曲面レンズである。また、第3レンズ素子L3は、両側に自由曲面を有する自由曲面レンズである。本実施例の撮像光学系IL1では、第2及び第3レンズ素子L2,L3により、絞りAよりも物体側において4つの自由曲面が設けられ、2つの自由曲面レンズが隣り合う。
【0031】
第4レンズ素子L4は、例えば負メニスカス形状を有する球面レンズである。第4レンズ素子L4は、凸面を像面側に向けて配置される。第5レンズ素子L5は、例えば非球面レンズであり、両側に回転対称な非球面を有する。第5レンズ素子L5は、例えば負メニスカス形状を有し、凸面を像面側に向けて配置される。第5レンズ素子L5と第6レンズ素子L6との間には、絞りAが配置される。
【0032】
第6レンズ素子L6は、例えば両凸形状を有する球面レンズである。第6レンズ素子L6と第7レンズ素子L7とは、例えば接合されている。第7レンズ素子L7は、例えば両凹形状を有する球面レンズである。第8レンズ素子L8は、例えば両側に自由曲面を有する自由曲面レンズである。本実施例の撮像光学系IL1では、第8レンズ素子L8により、絞りAよりも像面側に自由曲面が設けられる。
【0033】
以上のように構成される撮像光学系IL1においては、絞りAよりも物体側に、自由曲面レンズである第2及び第3レンズ素子L2,L3が配置される。各レンズ素子L2,L3による複数の自由曲面によって、外部から撮像光学系IL1に入射して絞りAに集光される光線を非対称に制御して、撮像光学系IL1が光を取り込む画角を、Y方向等の特定の方向において拡大することができる。また、撮像光学系IL1は、取り込んだ光線の非対称な制御により、像面において中央近傍を拡大した像を得ることができる。このような撮像光学系IL1の作用効果について、
図4を用いて説明する。
【0034】
図4は、本実施例の撮像光学系IL1における画角と像点P1との関係を示す散布図である。
図4においては、撮像光学系IL1の画角全体における所定の角度幅毎に、入射する光が像面上で結像する像点P1をプロットしている。当該角度幅は、10°に設定した。また、撮像光学系IL1は、無限遠合焦状態に設定した。
【0035】
図4のプロットは、実施例1の撮像光学系IL1を数値的に実施した数値実施例1に基づいている。撮像光学系IL1の数値実施例1については後述する。
図4では、光軸D1の位置を原点とする像面のXY平面において、第1象限の像点P1を例示している。本実施例の撮像光学系IL1は、X軸及びY軸に対して線対称であることから、第2~第4象限についても
図4と同様である。
【0036】
図4によると、Y像高がX像高よりも短いにも拘わらず、本実施例の撮像光学系IL1では上記の角度幅毎の像点P1のX軸に沿った個数と、Y軸に沿った個数との双方が、10個である。よって、Y方向における画角を拡大することが達成されている。また、像点P1間の間隔は、X方向においてもY方向においても、原点に近付くほど大きくなっている。つまり、像面上で中央近傍における所定範囲の領域において、端部よりも拡大される像を結像することができる。
【0037】
上記のような像の中央拡大によると、相対的に撮像素子12の撮像面上の画素が、中央近傍の拡大された領域において他の領域よりも多く割り当てられることとなる。よって、本実施形態の撮像装置11は、広い画角を確保しながら、中央近傍ほど高解像度で撮像することができる。
図4によると、特にY方向において、像点P1間の間隔の変化が顕著である。これにより、本実施形態の撮像装置11において、垂直方向における広範囲を撮像可能にしながら、垂直方向の中央近傍を高解像度にすることができる。
【0038】
以上のような実施例1の撮像光学系IL1に対応する数値実施例1について、
図5~15を参照して説明する。
【0039】
図5は、数値実施例1における撮像光学系IL1の面データを示す図である。
図5の面データは、撮像光学系IL1において物体側から順番に並ぶ各面s1~s16について、各々の面のタイプと、mm単位の曲率半径r及び面間隔dと、d線に対する各レンズ素子の屈折率nd及びアッベ数vdとを示している。面のタイプは、球面と、非球面と、アナモルフィック球面と、XY多項式面とを含む。
【0040】
図6は、数値実施例1における撮像光学系IL1の各種データを示す図である。
図6の各種データは、本数値実施例のFナンバーと、垂直半画角と、水平半画角と、垂直像高と、水平像高とを示している。各種像高の単位は「mm」であり、各半画角の単位は「°」である。
【0041】
図7は、数値実施例1の撮像光学系IL1における3番目の面s3の自由曲面データを示す図である。
図7の自由曲面データは、第2レンズ素子L2の物体側の面について、自由曲面としてのアナモルフィック球面を規定する次式(E1)の各種係数を示す。
【0042】
【数1】
上式(E1)において、CUX,CUY,AR,AP,BR,BP,CR,CP,DR,DPは係数である。上式(E1)によると、対象とする面上の(x,y)座標の位置におけるサグ量zが規定される。ここで、上式(E1)は、各座標変数x,yについて、x
2とy
2とを上記の係数で重み付けした加重和の形式でのみ依存する規則性を有する。すなわち、アナモルフィック非球面は、上式(E1)の規則性の範囲内において回転非対称となる自由曲面である。
【0043】
図8は、数値実施例1の撮像光学系IL1における4番目の面s4の自由曲面データを示す図である。
図8の自由曲面データは、第2レンズ素子L2の像面側の面について、自由曲面としてのXY多項式面を規定するXY多項式の各種係数を示す。XY多項式は、次式(E2)のように表される。
【0044】
【数2】
上式(E2)において、cは頂点曲率であり、Kはコーニック定数であり、c
jは係数である。上式(E2)の右辺第2項において、例えばjは2以上66以下の整数であり、各jについての総和が取られる。上式(E2)によると、アナモルフィック非球面の規則性よりも自由に、対象とする面上の(x,y)座標の位置におけるサグ量zが規定される。
【0045】
図9,10は、それぞれ数値実施例1の撮像光学系IL1における5,6番目の面s5,s6の自由曲面データを示す図である。
図9,10の自由曲面データは、それぞれ第3レンズ素子L3の物体側及び像面側の面について、
図8と同様に式(E2)の各種係数を示す。
【0046】
図11,12は、それぞれ数値実施例1の撮像光学系IL1における9,10番目の面s9,s10の非球面データを示す図である。
図11,12の各非球面データは、それぞれ第5レンズ素子L5の物体側及び像面側の面について、非球面の形状を規定する次式(E3)の各種係数を示す。
【0047】
【数3】
上式(E3)において、hは径方向の高さであり、Kはコーニック定数であり、Anはn次の非球面係数である。上式(E3)の右辺第2項において、例えばnは4以上20以下の偶数であり、各nについての総和が取られる。上式(E3)によると、対象とする面上の径方向の高さhにおけるサグ量zが、回転対称に規定される。
【0048】
図13,14は、それぞれ数値実施例1の撮像光学系IL1における15,16番目の面s15,s16の自由曲面データを示す図である。
図13の自由曲面データは、第8レンズ素子L8の物体側の面について、
図7と同様に式(E1)の各種係数を示す。
図14の自由曲面データは、第8レンズ素子L8の像面側の面について、
図8と同様に式(E2)の各種係数を示す。
【0049】
図15は、本実施例における撮像光学系IL1の諸収差を示す収差図である。以下の各収差図は、無限遠合焦状態における各種の縦収差を例示する。
図15(a)は、撮像光学系IL1における球面収差「SA」を示す。
図15(b),(c),(d)は、それぞれY方向における非点収差「AST-V」、X方向における非点収差「AST-H」、及び対角方向における非点収差「AST-D」を示す。
【0050】
図15(a)~(d)の横軸は、それぞれmm単位で表される。
図15(a)の縦軸は、瞳高さを基準としている。
図15(a)では、d線、F線及びc線に対する球面収差の特性曲線を示している。また、
図15(b)~(d)の縦軸は、半画角を基準としている。
図15(b)~(d)では、それぞれX方向又はY方向と光軸D1とに沿ったXZ断面又はYZに関する非点収差の特性曲線を示している。
【0051】
なお、本実施形態では、例えば
図7~10,13,14に示すように、各自由曲面においてx及びyの偶数項のみを使用している。このことから、対角方向の収差「AST-D」等は、第1~第4象限のいずれにおいても同じになる。
【0052】
2-2.諸条件について
以上の撮像光学系IL1の数値実施例1を用いて、本実施形態に係る撮像光学系ILが満たす各種条件について、
図16,17を参照して説明する。
【0053】
図16は、本実施形態の撮像光学系ILにおける諸条件の充足性を示す図表である。
図16に示す図表は、本実施形態の撮像光学系ILが、各数値実施例1~3においてそれぞれ下記の条件(1)~(7)を満たすことを示している。
【0054】
条件(1)は、撮像光学系ILにおける絞りAよりも物体側の全ての自由曲面レンズの自由曲面が、総じて下記の条件式(1)を満たすことである。絞りAよりも物体側の自由曲面レンズによると、撮像光学系ILの外部から絞りAに集光される光線を制御して、非対称な画角を設定し易い。
【0055】
【数4】
上式(1)において、Nは絞りAよりも物体側(即ち-Z側)にある自由曲面の総数である。kは絞りAよりも-Z側における各自由曲面を指定する番号であり、1~Nの整数である。以下、番号kは、総数Nの自由曲面における最も-Z側をk=1として、像面側(即ち+Z側)へ昇順に設定されることとする。
【0056】
上式(1)の左辺は、絞りAよりも-Z側の自由曲面レンズの各自由曲面についての、下記のPS
k及びPL
k間の差分(PS
k-PL
k)の総和である。
PS
k=SS
k×Δnd
k
PL
k=SL
k×Δnd
k
ここで、SS
kは、k番目の自由曲面におけるY方向において基準とする高さYSHの箇所のサグ量であり、当該自由曲面における短辺側のサグ量の代表的な値を示す。高さYSHは、撮像光学系ILにおける最短像高の50%であり、例えば
図2のイメージサークルIsの短径Iyの1/4である。SL
kは、k番目の自由曲面における長辺側のサグ量の代表値であって、X方向における高さYSHの箇所のサグ量である。Δnd
kは、k番目の自由曲面よりも+Z側における屈折率から-Z側における屈折率を差し引いた差分である。
【0057】
PS
kは、k番目の自由曲面の短辺側のサグ量SS
kに応じたレンズのYZ断面におけるパワー(即ち屈折力)の傾向を示す。PL
kは、同面の長辺側のサグ量SL
kに応じたXZ断面におけるパワーの傾向を示す。PS
k,PL
kについて、
図17を用いて説明する。
【0058】
図17は、-Z側にk番目の自由曲面を有し、+Z側に(k+1)番目の自由曲面を有するレンズ素子LkのYZ断面を例示する。
図17では、レンズ素子Lkが全体的に両凸形状であって、両面において正のパワーを生じさせる場合を例示している。この場合、レンズ素子Lkの-Z側の面のサグ量SS
kは、
図17に示すように正である。また、同面の+Z側の屈折率はレンズ素子Lkの材料に基づく屈折率nkであり、-Z側の屈折率は空気等に基づく屈折率n0である。よって、同面の±Z側の屈折率nk,n0間の差分Δnd
kは正になり、PS
k=SS
k×Δnd
k>0となる。
【0059】
また、レンズ素子Lkの+Z側の面のサグ量SS
k+1は、
図17に示すように負になる。これとともに、同面の±Z側の屈折率n0,nk間の差分Δnd
k+1も、Δnd
kから符号が反転して、負になる。よって、PS
k+1=SS
k+1×Δnd
k+1>0となる。
【0060】
以上のように、PSkの正負は、対応する自由曲面がレンズ素子Lkの+Z側であるか-Z側であるかに拘わらず、YZ断面におけるパワーの正負に対応している。XZ断面に関するPLkの正負についても同様である。
【0061】
ここで、自由曲面においては、短辺側のサグ量SSkと長辺側のサグ量SLkとの違いに応じて、PSkとPLk間の差分が生じる。差分(PSk-PLk)が負の場合、対応する自由曲面は、レンズ素子LkのXZ断面よりもYZ断面において、即ち長辺側よりも短辺側においてパワーを負に強める傾向を有する。
【0062】
以上より、条件式(1)が満たされると、撮像光学系ILの絞りAよりも-Z側の自由曲面が総合的に、長辺側よりも短辺側においてパワーを負に強めることとなる。よって、条件(1)により、撮像光学系ILにおいて短辺側の画角を拡大することができる。
【0063】
条件式(1)の左辺の計算結果を
図16に示す。
図3の撮像光学系IL1において、条件式(1)の左辺の総和は、第2レンズ素子L2の-Z側の面をk=1として、第3レンズ素子L3の+Z側の面までのN=4にわたって計算される。
図16に示すように、条件(1)について、実施例1の撮像光学系IL1の計算結果「-0.0204」は、上式(1)の右辺に示す上限値「0」を下回っている。
【0064】
条件(1)の上限値を上回ると、短辺側の画角の拡大が困難になったり、あるいは光学系の大型化を招いたりしてしまう。実施例1の撮像光学系IL1は、条件式(1)の上限値を「0」から「-0.01」に引き下げた条件も満たしている。当該条件を以下、条件(1’)という。条件(1’)によると、短辺側の画角をより拡げ易くしたり、光学系の小型化を図ったりすることができる。
【0065】
条件(2)は、条件(1)と同様に絞りAよりも物体側の自由曲面レンズの自由曲面に関する総和に基づき、以下の条件式(2)により規定される。
Σ
N
k=1{(SS
k-SL
k)×Δnd
k}/CTL1<-0.0002 …(2)
ここで、CTL1は、撮像光学系ILにおいて最も-Z側となる第1レンズ素子L1の厚みである。上式(2)の左辺の総和は、条件式(1)と同様の範囲で計算される。上式(2)の左辺の計算結果を
図16に示す。
【0066】
条件式(2)の上限値を上回ると、非点収差が制御し難くなる、或いは光学系の大型化を招くことが考えられる。これに対して、
図16に示す計算結果によると、例えば実施例1の撮像光学系IL1は条件式(2)の上限値を下回り、条件(2)を満たしている。さらに、実施例1の撮像光学系IL1は、条件式(2)の上限値を「-0.002」に引き下げた条件も満たしている。当該条件を以下、条件(2’)という。条件(2’)によると、撮像光学系IL1の非点収差を制御し易くしたり、光学系を小型化し易くしたりすることができる。
【0067】
条件(3)は、条件(1)と同様に絞りAよりも物体側の自由曲面レンズの自由曲面に関する総和に基づき、以下の条件式(3)により規定される。
Σ
N
k=1{(SS
k-SL
k)×Δnd
k}/CTF<-0.001 …(3)
ここで、CTFは、撮像光学系ILにおいて最も-Z側の自由曲面レンズの厚みであり、例えば実施例1の撮像光学系IL1では、第2レンズ素子L2の厚みである。上式(3)の左辺の総和は、条件式(1)と同様の範囲で計算される。上式(3)の左辺の計算結果を
図16に示す。
【0068】
条件式(3)の上限値を上回ると、短辺側の画角が拡大し難くなる、或いは光学系の大型化を招き得る。これに対して、例えば実施例1の撮像光学系IL1は、
図16に示すように、条件(3)を満たしている。さらに、実施例1の撮像光学系IL1は、条件式(3)の上限値を「-0.01」に引き下げた条件も満たしている。当該条件を以下、条件(3’)という。条件(3’)によると、撮像光学系IL1の短辺側の画角を拡大し易くしたり、光学系を小型化し易くしたりすることができる。
【0069】
また、実施例1の撮像光学系IL1では、絞りAよりも-Z側におけるk=1~Nの自由曲面の全てにおいて、(SSk-SLk)の符号が負である。k=1~Nの自由曲面の間で(SSk-SLk)の符号を同じにすることにより、撮像光学系IL1において入射する光線を徐々に曲げて、収差の発生を抑制することができる。
【0070】
条件(4)は、撮像光学系ILにおいて最も-Z側の自由曲面レンズの両面に関する総和と、絞りAよりも-Z側において最も+Z側の自由曲面レンズの両面に関する総和とに基づく以下の条件式(4)で規定される。
【0071】
【数5】
ここで、上式(4)の中辺における分子の総和は、最も-Z側の自由曲面レンズの-Z側の面と+Z側の面とにわたり、各面はi=1,2によって指定される。即ち、SS
iは、当該自由曲面レンズにおいてiで指定される面のY方向における高さYSHの箇所のサグ量である。同様に、SL
iは、同自由曲面レンズのi番目の面のX方向における同じ高さYSHの箇所のサグ量である。例えば、実施例1の撮像光学系IL1において、SL
i,SS
iは第2レンズ素子L2の各面で規定される。なお、i番目の面が自由曲面でない場合、回転対称性からSS
i=SL
iとなり、上記の総和に寄与しない。
【0072】
また、上式(4)の中辺における分母の総和は、絞りAよりも-Z側において最も+Z側の自由曲面レンズの-Z側の面と+Z側の面とにわたり、各面はn=1,2によって指定される。SSnとSLnとは、それぞれ上記と同様に、当該自由曲面レンズにおいてnで指定される面のY,X方向における高さYSHの箇所のサグ量である。例えば、実施例1において、SLn,SSnは第3レンズ素子L3の各面で規定される。
【0073】
条件式(4)について、下限値を下回ると非点収差の制御が困難になる一方、上限値を上回ると短辺側の画角の拡大が困難になる。これに対して、例えば実施例1の撮像光学系IL1は、
図16に示すように条件(4)を満たしている。さらに、実施例1の撮像光学系IL1は、条件式(4)の下限値を「0.00」に引き上げて且つ上限値を「2.00」に引き下げた条件も満たしている。当該条件を以下、条件(4’)という。条件(4’)によると、撮像光学系IL1の非点収差の制御および短辺側の画角拡大を行い易くすることができる。
【0074】
条件(5)は、撮像光学系ILにおいて最も-Z側の自由曲面と、絞りAよりも-Z側において最も+Z側の自由曲面とに関する以下の条件式(5)で規定される。
【0075】
【数6】
ここで、SL
1,SS
1は、それぞれ最も-Z側の自由曲面のX,Y方向における高さYSHの箇所のサグ量である。SL
N,SS
Nは、それぞれ絞りAよりも-Z側において最も+Z側の自由曲面のX,Y方向における高さYSHの箇所のサグ量である。実施例1の撮像光学系IL1において、SL
1,SS
1は第2レンズ素子L2の-Z側の面で規定され、SL
N,SS
Nは第3レンズ素子L3の+Z側の面で規定される。
【0076】
条件式(5)について、下限値を下回ると光学系の大型化を招く一方、上限値を上回ると短辺側の画角を拡大し難くなる。これに対して、
図16に示す計算結果によると、例えば実施例1の撮像光学系IL1は、条件(5)を満たしている。さらに、実施例1の撮像光学系IL1は、条件式(5)の下限値を「-6.00」に引き上げて且つ上限値を「-2.00」に引き下げた条件も満たしている。当該条件を以下、条件(5’)という。条件(5’)によると、撮像光学系IL1の小型化および短辺側の画角拡大を行い易くすることができる。
【0077】
条件式(6)は、撮像光学系ILにおける絞りAよりも-Z側の自由曲面レンズの屈折率に関する以下の条件式(6)で規定される。
1≦nd1/ndN<1.3 …(6)
ここで、nd1は、最も-Z側の自由曲面レンズのd線に対する屈折率である。ndNは、絞りAよりも-Z側において最も+Z側の自由曲面レンズのd線に対する屈折率である。例えば、実施例1では、nd1は第2レンズ素子L2の屈折率であり、ndNは第3レンズ素子L3の屈折率である。
【0078】
条件式(6)について、下限値を下回ると非点収差の制御が困難になる一方、上限値を上回ると倍率色収差の制御が困難になる。これに対して、
図16に示す計算結果によると、例えば実施例1の撮像光学系IL1は、条件(6)を満たしている。これにより、非点収差及び倍率色収差の制御が困難になる事態を回避できる。
【0079】
条件式(7)は、絞りAよりも-Z側において最も+Z側の自由曲面レンズの自由曲面レンズの屈折率ndNに関する以下の条件式(7)で規定される。
1.45<ndN<1.80 …(7)
【0080】
条件式(7)について、下限値を下回ると像面湾曲の制御が困難になる一方、上限値を上回ると倍率色収差の制御が困難になる。これに対して、
図16に示す計算結果によると、例えば実施例1の撮像光学系IL1は、条件(7)を満たしている。さらに、実施例1の撮像光学系IL1は、条件式(7)の下限値を「1.50」に引き上げて且つ上限値を「1.60」に引き下げた条件も満たしている。当該条件を以下、条件(7’)という。条件(7’)によると、像面湾曲および倍率色収差の制御を行い易くすることができる。
【0081】
本実施形態に係る撮像光学系ILは、上述した実施例1の撮像光学系IL1に限らず様々な形態で実施可能である。例えば、実施例1の撮像光学系IL1では絞りAよりも物体側の自由曲面レンズが2枚であるが、本実施形態の撮像光学系ILでは、3枚以上の自由曲面レンズが絞りAよりも物体側に配置されてもよい。
【0082】
2-3.実施例2
実施例2では、絞りAよりも物体側の自由曲面レンズが3枚である撮像光学系ILの一例を説明する。
図18~31を用いて、実施例2の撮像光学系IL2について説明する。
【0083】
図18は、実施例2に係る撮像光学系IL2の構成を示す。
図18(a),(b)は、それぞれ
図3(a),(b)と同様に、撮像光学系IL2のレンズ配置図を示す。
【0084】
実施例2の撮像光学系IL2は、実施例1と同様に順番に配置された第1~第7レンズ素子L1~L7と、第4及び第5レンズ素子L4,L5間に配置された絞りAとを備える。本実施例の撮像光学系IL2において、第1レンズ素子L1は、像面側にXY多項式面を有する自由曲面レンズで構成される。また、第2及び第3レンズ素子L2,L3は、両面にXY多項式面を有する自由曲面レンズで構成される。
【0085】
本実施例では、以上のような第1~第3レンズ素子L1~L3により、絞りAよりも物体側において総数N=5の自由曲面が設けられ、3つの自由曲面レンズが隣り合う。絞りAよりも物体側のk=1~5の各自由曲面における(SS
k-SL
k)の符号は、本実施例では正である。また、最も像面側の第7レンズ素子L7は、両面にXY多項式面を有する自由曲面レンズで構成される。実施例2の撮像光学系IL2に対応する数値実施例を、
図19~29に示す。
【0086】
図19は、数値実施例2における撮像光学系IL2の面データを示す図である。
図20は、本実施例における撮像光学系IL2の各種データを示す図である。
図19,20は、それぞれ数値実施例1の
図5,6と同様に各データを示す。
【0087】
図21~25は、それぞれ本実施例の撮像光学系IL2における2~6番目の面s2~s6の自由曲面データを示す図である。
図21の自由曲面データは、第1レンズ素子L1の像面側の面について、数値実施例1と同様に式(E2)の各種係数を示す。同様に、
図22~25は、それぞれ第2及び第3レンズ素子L2,L3の両面についての各自由曲面データを示す。
【0088】
図26,27は、それぞれ本実施例の撮像光学系IL2における7,8番目の面s7,s8の非球面データを、
図11,12と同様に示す。
図28,29は、それぞれ撮像光学系IL2における13,14番目の面s13,s14の自由曲面データを、
図14等と同様に示す。
【0089】
以上の数値実施例2に基づいて、
図30に、本実施例の撮像光学系IL2における画角と像点P2との関係を示す。
図30に示すように、本実施例の撮像光学系IL2によっても、実施例1と同様にY方向における画角を拡大することができる。
【0090】
図31は、本実施例における撮像光学系IL2の諸収差を示す。
図31(a),(b),(c),(d)は、それぞれ
図15(a)~(d)と同様に、本実施例における撮像光学系IL2の各収差図を示している。
【0091】
また、本実施例の撮像光学系IL2は、
図16に示すように、上述した各条件(1)~(7)を満たしている。さらに、本実施例の撮像光学系IL2は、条件(6)の下限値を「1.05」に引き上げて且つ上限値を「1.2」に引き下げた条件も満たしている。当該条件を以下、条件(6’)という。条件(6’)によると、撮像光学系IL2の非点収差及び倍率色収差の制御を行い易くすることができる。
【0092】
2-4.実施例3
図32~46を用いて、実施例3の撮像光学系IL3について説明する。
【0093】
図32は、実施例3に係る撮像光学系IL3の構成を示す。
図32(a),(b)は、それぞれ
図3(a),(b)と同様に、撮像光学系IL3のレンズ配置図を示す。
【0094】
実施例3の撮像光学系IL3は、実施例1と同様に順番に配置された第1~第10レンズ素子L1~L10と、第5及び第6レンズ素子L5,L6間に配置された絞りAとを備える。本実施例の撮像光学系IL3において、最も物体側の第1レンズ素子L1は、実施例1のような魚眼レンズではなく、両凹形状を有する。本実施例の第1レンズ素子L1は、例えば像面側に非球面を有し、回転対称な非球面レンズで構成される。
【0095】
本実施例において、第2及び第3レンズ素子L2,L3は、
図32(a)に示すように両面に自由曲面を有する自由曲面レンズである。
【0096】
また、第4レンズ素子L4は、両凸形状を有する球面レンズである。第5レンズ素子L5は、正メニスカス形状を有する球面レンズであり、凸面を物体側に向けて配置される。第6レンズ素子L6は、両凸形状を有する球面レンズであり、第7レンズ素子L7に接合されている。第7レンズ素子L7は、両凹形状を有する球面レンズである。第8レンズ素子L8は、物体側に非球面を有する非球面レンズである。
【0097】
本実施例において、第9レンズ素子L9は、両面に自由曲面を有する自由曲面レンズである。さらに、第10レンズ素子L10は、両面に自由曲面を有する自由曲面レンズである。実施例3の撮像光学系IL3に対応する数値実施例を、
図33~44に示す。
【0098】
図33は、数値実施例3における撮像光学系IL3の面データを示す図である。
図34は、本実施例における撮像光学系IL3の各種データを示す図である。
図33,34は、それぞれ数値実施例1の
図5,6と同様に各データを示す。
【0099】
図35は、本実施例の撮像光学系IL3における2番目の面s2の非球面データを示す図である。
図35の非球面データは、第1レンズ素子L1の像面側の面について、数値実施例1と同様に式(E3)の各種係数を示す。
【0100】
図36~39は、それぞれ本実施例の撮像光学系IL3における3~6番目の面s3~s6の自由曲面データを示す図である。
図36~39は、数値実施例1と同様に式(E2)の各種係数を示す。
【0101】
図40は、本実施例の撮像光学系IL3における15番目の面s15の非球面データを、
図35と同様に示す。
図41~44は、それぞれ撮像光学系IL3における17~20番目の面s17~s20の自由曲面データを示す図である。
図41~44は、それぞれ第9及び第10レンズ素子L9,L10の両面についての各自由曲面データを、
図36~39と同様に示す。
【0102】
以上の数値実施例3に基づいて、
図45に、本実施例の撮像光学系IL3における画角と像点P3との関係を示す。また、
図46は、本実施例における撮像光学系IL3の諸収差を示す。
図46(a),(b),(c),(d)は、それぞれ
図15(a)~(d)と同様に、本実施例における撮像光学系IL3の各収差図を示している。さらに、本実施例の撮像光学系IL3は、
図16に示すように、上述した各条件(1)~(7)を満たしている。以上のように、本実施例の撮像光学系IL3によっても、実施例1と同様に短辺方向における画角を拡げ易くすることができる。
【0103】
(他の実施形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置換、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、上記各実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。そこで、以下、他の実施形態を例示する。
【0104】
上記の実施形態1では、
図2において長方形の撮像面を例示したが、撮像素子12の撮像面はこれに限らない。本実施形態において、撮像素子12の撮像面は、長方形でない各種の矩形状であってもよく、部分的にマスクされていてもよい。また、撮像素子12の撮像面は、湾曲していてもよい。このような撮像素子12に対しても、本実施形態の撮像光学系ILによって実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0105】
例えば、本実施形態の撮像素子12の長辺Dxと短辺Dyとは直交していなくてもよく、各種の角度で交差してもよい。また、撮像素子12は、長辺Dx及び短辺Dyの代わりに同じ長さの二辺を有してもよい。本実施形態の撮像光学系ILでは、イメージサークルIsの長径Ixと短径Iyとによる第1及び第2方向も、互いに直交していなくてもよく、各種の角度で交差してもよい。また、イメージサークルIsにおける第1及び第2方向の径の長さが同じであってもよい。イメージサークルIsは、必ずしも円形から歪んでいなくてもよい。
【0106】
上記の各実施形態では、自由曲面の一例として、XY多項式面およびアナモルフィック非球面を例示した。本実施形態において、自由曲面は上記に限らず、例えばトーリック面であってもよい。また、本実施形態の撮像光学系は、アナモルフィックではない自由曲面を2枚以上、絞りAよりも物体側に備えてもよい。アナモルフィックではない自由曲面は、XY多項式面は含む一方でアナモルフィック非球面を含まない。アナモルフィックではない自由曲面は、例えば対称面を有さなくてもよい。
【0107】
本実施形態の撮像システム10は、各種の用途に適用可能であり、例えば車載用途に適用可能である。例えば、撮像装置11が、車両等の移動体の後方のシーンを撮像するように、車載カメラを構成してもよい。また、車載カメラとしての撮像装置11は移動体の後方に限らず、前方あるいは側方等の各種シーンを撮像する用途に適用されてもよい。また、撮像システム10は車載用途に限らず、例えば種々の状況を監視する監視カメラにも適用可能である。
【0108】
以上のように、本開示における技術の例示として、実施形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
【0109】
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0110】
また、上述の実施形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において、種々の変更、置換、付加、省略などを行うことができる。
【0111】
(態様のまとめ)
以下、本開示に係る各種態様を例示する。
【0112】
本開示に係る第1の態様は、撮像素子に結像するイメージサークルを有する撮像光学系である。撮像光学系は、物体側から像面側に並んだ複数のレンズ素子と、複数のレンズ素子の間に配置された絞りとを備える。複数のレンズ素子は、互いに交差する第1方向と第2方向との間で非対称な自由曲面を有する自由曲面レンズを含む。少なくとも2枚の自由曲面レンズが、絞りよりも物体側に配置される。
【0113】
以上の撮像光学系によると、絞りよりも物体側における複数の自由曲面レンズの各自由曲面によって、特定の方向における画角を拡げ易くすることができる。
【0114】
第2の態様では、第1の態様の撮像光学系のイメージサークルにおいて、第1方向の径が第2方向の径以上である。撮像光学系は、絞りよりも物体側の自由曲面レンズの自由曲面に関する総和に基づく以下の条件式(1)を満たす。
【数7】
ここで、
N:絞りよりも物体側の自由曲面レンズにおける自由曲面の総数
k:総数Nの自由曲面における各自由曲面を示す番号
SL
k:k番目の自由曲面の第1方向における高さが最短像高の50%の箇所のサグ量
SS
k:当該自由曲面の第2方向における高さが最短像高の50%の箇所のサグ量
Δnd
k:当該自由曲面よりも像面側における屈折率から物体側における屈折率を差し引いた差分
YSH:最短像高の50%の高さ
である。これにより、撮像光学系の絞りよりも物体側の自由曲面が総合的に、第1方向よりも第2方向においてパワーを負に強めて、第2方向における画角を拡げることができる。
【0115】
第3の態様では、第1の態様の撮像光学系のイメージサークルにおいて、第1方向の径が第2方向の径以上である。撮像光学系は、絞りよりも物体側の自由曲面レンズの自由曲面に関する総和に基づく以下の条件式(2)を満たす。
【数8】
ここで、
N:絞りよりも物体側の自由曲面レンズにおける自由曲面の総数
k:総数Nの自由曲面における各自由曲面を示す番号
SL
k:k番目の自由曲面の第1方向における高さが最短像高の50%の箇所のサグ量
SS
k:当該自由曲面の第2方向における高さが最短像高の50%の箇所のサグ量
Δnd
k:当該自由曲面よりも像面側における屈折率から物体側における屈折率を差し引いた差分
CTL1:最も物体側のレンズ素子の厚み
である。これにより、第2方向における画角を拡げる際に、非点収差を抑制したり光学系の大型化を回避したりすることができる。
【0116】
第4の態様では、第1の態様の撮像光学系のイメージサークルにおいて、第1方向の径が第2方向の径以上である。撮像光学系は、絞りよりも物体側の自由曲面レンズの自由曲面に関する総和に基づく以下の条件式(3)を満たす。
【数9】
ここで、
N:絞りよりも物体側の自由曲面レンズにおける自由曲面の総数
k:総数Nの自由曲面における各自由曲面を示す番号
SL
k:k番目の自由曲面の第1方向における高さが最短像高の50%の箇所のサグ量
SS
k:当該自由曲面の第2方向における高さが最短像高の50%の箇所のサグ量
Δnd
k:当該自由曲面よりも像面側における屈折率から物体側における屈折率を差し引いた差分
CTF:最も物体側の自由曲面レンズの厚み
である。これにより、光学系の大型化を回避しながら、第2方向における画角を拡げることができる。
【0117】
第5の態様では、第1の態様の撮像光学系のイメージサークルにおいて、第1方向の径が第2方向の径以上である。撮像光学系は、最も物体側の自由曲面レンズの両面に関する総和と、絞りよりも物体側において最も像面側の自由曲面レンズの両面に関する総和とに基づく以下の条件式(4)を満たす。
【数10】
ここで、
i:最も物体側の自由曲面レンズの各面を示す番号
SL
i:最も物体側の自由曲面レンズのi番目の面の第1方向における高さが最短像高の50%の箇所のサグ量
SS
i:i番目の面の第2方向における高さが最短像高の50%の箇所のサグ量
Δnd
i:i番目の面よりも像面側における屈折率から物体側における屈折率を差し引いた差分
n:最も像面側の自由曲面レンズの各面を示す番号
SL
n:最も像面側の自由曲面レンズのn番目の面の第1方向における高さが最短像高の50%の箇所のサグ量
SS
n:n番目の面の第2方向における高さが最短像高の50%の箇所のサグ量
Δnd
n:n番目の面よりも像面側における屈折率から物体側における屈折率を差し引いた差分
である。これにより、非点収差を制御すると共に第2方向の画角拡大を行うことができる。
【0118】
第6の態様では、第1の態様の撮像光学系のイメージサークルにおいて、第1方向の径が第2方向の径以上である。撮像光学系は、以下の条件式(5)を満たす。
【数11】
ここで、
SL
1:最も物体側の自由曲面の第1方向における高さが最短像高の50%の箇所のサグ量
SS
1:最も物体側の自由曲面の第2方向における高さが最短像高の50%の箇所のサグ量
Δnd
1:最も物体側の自由曲面よりも像面側における屈折率から物体側における屈折率を差し引いた差分
SL
N:絞りよりも物体側において最も像面側の自由曲面の第1方向における高さが最短像高の50%の箇所のサグ量
SS
N:最も像面側の自由曲面の第2方向における高さが最短像高の50%の箇所のサグ量
Δnd
N:最も像面側の自由曲面よりも像面側における屈折率から物体側における屈折率を差し引いた差分
である。これにより、光学系の小型化を図りながら第2方向の画角拡大を行うことができる。
【0119】
第7の態様では、第1の態様の撮像光学系が、以下の条件式(6)を満たす。
1≦nd1/ndN<1.3 …(6)
ここで、
nd1:最も物体側の自由曲面レンズのd線に対する屈折率
ndN:絞りよりも物体側において最も像面側の自由曲面レンズのd線に対する屈折率
である。これにより、非点収差及び倍率色収差の制御が困難になる事態を回避しながら、第2方向の画角拡大を行うことができる。
【0120】
第8の態様では、第1の態様の撮像光学系が、以下の条件式(7)を満たす。
1.45<ndN<1.80 …(7)
ここで、
ndN:絞りよりも物体側において最も像面側の自由曲面レンズのd線に対する屈折率
である。これにより、像面湾曲及び倍率色収差の制御が困難になる事態を回避しながら、第2方向の画角拡大を行うことができる。
【0121】
第9の態様では、第1の態様の撮像光学系において、絞りよりも物体側の自由曲面レンズが、互いに隣り合う。これにより、光束の非対称成分の振るまいを制御しやすくなり、像面湾曲の非対称成分を良化することができる。
【0122】
第10の態様では、第1の態様の撮像光学系において、複数のレンズ素子は、絞りよりも像面側に配置された自由曲面レンズを含む。これにより、例えば像面の中央近傍の解像度を高くするといった解像度の制御を行い易くすることができる。
【0123】
第11の態様では、第1の態様の撮像光学系において、最も物体側のレンズ素子は、光軸に対して回転対称である。これにより、撮像光学系の製造工程を簡略化することができる。
【0124】
第12の態様では、第1の態様の撮像光学系において、絞りよりも物体側の自由曲面レンズの全ての自由曲面において、(SSk-SLk)の符号が同じである。ここで、
k:絞りよりも物体側の自由曲面レンズの自由曲面における各自由曲面を示す番号
SLk:k番目の自由曲面の第1方向における高さが最短像高の50%の箇所のサグ量
SSk:当該自由曲面の第2方向における高さが最短像高の50%の箇所のサグ量
Δndk:当該自由曲面よりも像面側における屈折率から物体側における屈折率を差し引いた差分
である。これにより、絞りよりも物体側の自由曲面において第2の方向における画角を拡げる際に、入射する光線を徐々に曲げて、収差の発生を抑制することができる。
【0125】
第13の態様は、第1~第12の態様のいずれかの撮像光学系と、撮像素子とを備える撮像装置である。撮像素子は、撮像光学系によって結像される像を撮像する。撮像素子は、第1方向に対応する第1辺と、第2方向に対応する第2辺であって、第1辺以下の長さを有する第2辺とを有する。撮像光学系により、撮像装置の特定の方向における画角を拡げ易くすることができる。
【0126】
第14の態様は、第13の態様の撮像装置と、画像処理部とを備えた撮像システムである。画像処理部は、撮像装置の撮像素子によって撮像された画像に画像処理を実行する。撮像光学系により、撮像システムにおいて特定の方向における画角を拡げ易くすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本開示に係る撮像システムは、種々の撮像用途に適用可能であり、例えば車載カメラ、監視カメラ、Webカメラ、及びデジタルカメラ等に適用可能である。また、本開示に係る撮像光学系は、交換レンズ装置において提供されてもよい。