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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】食品加工装置
(51)【国際特許分類】
   A23P 30/00 20160101AFI20230217BHJP
   A47J 42/00 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
A23P30/00
A47J42/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022560819
(86)(22)【出願日】2021-11-05
(86)【国際出願番号】 JP2021040701
(87)【国際公開番号】W WO2022097707
(87)【国際公開日】2022-05-12
【審査請求日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2020185999
(32)【優先日】2020-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 邦弘
(72)【発明者】
【氏名】橋本 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】猪野 大輔
【審査官】西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第03/037504(WO,A1)
【文献】中国実用新案第204958454(CN,U)
【文献】特開2001-332216(JP,A)
【文献】特開2002-186472(JP,A)
【文献】特開2006-263609(JP,A)
【文献】特開2004-201535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23P 10/00-30/00
A47J 42/00-44/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品に用いる液状の反応物を貯める空間を有する反応槽と、
回転することで前記反応槽内の前記反応物を撹拌する撹拌体を有する撹拌部と、
複数の触媒反応部と、を備え、
前記複数の触媒反応部の各々は、反応管、前記反応管の内部に設けられた光源を含み、
前記反応管の外表面に光触媒が設けられ、
前記反応管は前記光源から照射された光を透過し、
前記複数の触媒反応部は、前記撹拌体の回転軸の周囲に、互いに間隔を空けた状態で配置され、
前記光源は、前記回転軸の軸方向から見た場合において異なる位置に配置される複数の発光部を有し、
前記回転軸の軸方向から見た場合において、前記複数の触媒反応部は、それぞれの前記反応管の基準の方向の、前記回転軸と前記反応管の中心とを結ぶ直線に対する位相が互いに等しく、
前記反応管の基準の方向は、前記回転軸の軸方向から見た場合において、当該反応管の内側の前記複数の発光部の光の放出方向と、前記複数の発光部の位置関係とに基づいて定められる方向である
食品加工装置。
【請求項2】
前記複数の触媒反応部のそれぞれの前記光源は、前記回転軸の軸方向から見た場合において、前記直線を対称軸として線対称に発光するように配置されている
請求項1に記載の食品加工装置。
【請求項3】
前記複数の触媒反応部のそれぞれの前記光源は、前記回転軸の軸方向から見た場合において、当該触媒反応部の前記反応管の内壁の部分のうち、前記回転軸に遠い部分よりも前記回転軸に近い部分に近い位置に配置されている
請求項1または2に記載の食品加工装置。
【請求項4】
前記複数の触媒反応部は、
前記回転軸の周囲に、互いに間隔を空けた状態で配置される複数の第1触媒反応部と、
前記複数の第1触媒反応部の周囲に、互いに間隔を空けた状態で配置される複数の第2触媒反応部とを有する
請求項1から3のいずれか1項に記載の食品加工装置。
【請求項5】
前記複数の第1触媒反応部では、それぞれの前記反応管の基準の方向の、前記回転軸と前記反応管の中心とを結ぶ直線に対する位相が互いに等しい第1位相であり、
前記複数の第2触媒反応部では、それぞれの前記反応管の基準の方向の、前記回転軸と前記反応管の中心とを結ぶ直線に対する位相が互いに等しい第2位相であり、
前記第1位相と前記第2位相とは、互いに異なる
請求項4に記載の食品加工装置。
【請求項6】
前記光源は、2本のガラス管体が前記反応管の長さ方向に沿って配置された蛍光灯である
請求項1から5のいずれか1項に記載の食品加工装置。
【請求項7】
前記光源は、前記反応管の長さ方向に並ぶ複数の発光ダイオードを有する複数の発光ユニットを有し、
前記複数の発光ユニットのそれぞれは、前記反応管の内壁に向かって光を放出するように配置される
請求項1から5のいずれか1項に記載の食品加工装置。
【請求項8】
さらに、
前記複数の触媒反応部の外側を囲んで配置され、前記反応槽内の前記反応物を冷却する冷却部を備える
請求項1から7のいずれか1項に記載の食品加工装置。
【請求項9】
前記複数の触媒反応部のそれぞれは、さらに、前記光源と前記反応管の底部との間に配置され、前記光源を前記反応管の前記底部に固定する固定部材を有する
請求項1から8のいずれか1項に記載の食品加工装置。
【請求項10】
食品に用いる液状の反応物を貯める空間を有する反応槽と、
回転することで前記反応槽内の前記反応物を撹拌する撹拌体を有する撹拌部と、
複数の触媒反応部と、を備え、
前記複数の触媒反応部の各々は、反応管、前記反応管の内部に設けられた光源を含み、
前記反応管の外表面に光触媒が設けられ、
前記反応管は前記光源から照射された光を透過し、
前記複数の触媒反応部は、前記撹拌体の回転軸の周囲に、互いに間隔を空けた状態で配置され、
前記光源は、前記回転軸の軸方向から見た場合において異なる位置に配置される複数の発光部を有し、
前記複数の触媒反応部のそれぞれの前記光源は、前記回転軸の軸方向から見た場合において、前記回転軸と前記反応管の中心とを結ぶ直線を対称軸として線対称に発光するように配置されている
食品加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、食品加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光触媒を食品の製造過程で用いて、加熱しない常温下において、醸造物中の微生物を殺菌する製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003―250514号公報
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の装置または製造方法には改善の余地がある。例えば、食品に使用する反応物を効果的に改質することが難しいという課題がある。
【0005】
本開示の一態様は、このような事情に鑑みてなされたものであり、食品に使用する反応物を効果的に改質することができる食品加工装置を提供する。
【0006】
本開示の一態様に係る食品加工装置は、食品に用いる液状の反応物を貯める空間を有する反応槽と、回転することで前記反応槽内の前記反応物を撹拌する撹拌体を有する撹拌部と、複数の触媒反応部と、を備え、前記複数の触媒反応部の各々は、反応管、前記反応管の内部に設けられた光源を含み、前記反応管の外表面に光触媒が設けられ、前記反応管は前記光源から照射された光を透過し、前記複数の触媒反応部は、前記撹拌体の回転軸の周囲に、互いに間隔を空けた状態で配置され、前記光源は、前記回転軸の軸方向から見た場合において異なる位置に配置される複数の発光部を有し、前記回転軸の軸方向から見た場合において、前記複数の触媒反応部は、それぞれの前記反応管の基準の方向の、前記回転軸と前記反応管の中心とを結ぶ直線に対する位相が互いに等しく、前記反応管の基準の方向は、前記回転軸の軸方向から見た場合において、当該反応管の内側の前記複数の発光部の光の放出方向と、前記複数の発光部の位置関係とに基づいて定められる方向である。
【0007】
本開示の一態様の食品加工装置は、食品に使用する反応物を効果的に改質することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態の食品加工装置の一例を示す図である。
図2図2は、実施の形態に係る触媒反応部の構成の一例を示す図である。
図3図3は、固定部材の構成を示す図である。
図4図4は、実施の形態に係る食品加工装置のブロック図である。
図5図5は、実施の形態に係る食品加工装置の運転方法の例を示すフローチャートである。
図6図6は、図1における食品加工装置のVI-VI断面図である。
図7図7は、図6において、1本の触媒反応部における反応物の流れと光量分布との関係について説明するための図である。
図8図8は、変形例1に係る食品加工装置の、図1におけるVI-VI断面図に対応する断面図である。
図9図9は、図8において、1本の触媒反応部における反応物の流れと光量分布との関係について説明するための図である。
図10図10は、変形例2に係る食品加工装置の、図1におけるVI-VI断面図に対応する断面図である。
図11図11は、図10において、1本の触媒反応部における反応物の流れと光量分布との関係について説明するための図である。
図12図12は、変形例3に係る食品加工装置の、図1におけるVI-VI断面図に対応する断面図である。
図13図13は、図12において、1本の触媒反応部における反応物の流れと光量分布との関係について説明するための図である。
図14図14は、変形例4に係る食品加工装置の、図1におけるVI-VI断面図に対応する断面図である。
図15図15は、図14において、1本の触媒反応部における反応物の流れと光量分布との関係について説明するための図である。
図16図16は、変形例5に係る食品加工装置の、図1におけるVI-VI断面図に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(開示の基礎となった知見)
本発明者らは、「背景技術」の欄において記載した、食品の製造装置または製造方法に関し、以下の問題が生じることを見出した。
【0010】
食品の製造において、製造効率を向上する、栄養成分の含有性を良くする等の目的で、食品に使用する原料を改質することは広く行われている。
【0011】
食品の原料の改質する手法として、触媒を用いる手法があり、例えば、マーガリンの製造において、原料となる油脂成分を水素化するためニッケル触媒を用いる手法がある。食品の製造に固定化した酵素を用いることも、触媒利用の一つとすることができる。
【0012】
食品の原料を改質する観点ではないが、製造過程での殺菌目的で触媒を用いることもあり、例えば、特許文献1では、光触媒を食品の製造過程で用いて、加熱しない常温下において、醸造物中の微生物を殺菌する製造方法が検討されている。
【0013】
従来の触媒を用いる手法は、食品に使用する原料の改質時に触媒活性が低下(触媒が劣化)し、期待した反応性が得られなくなるおそれがある。例えば、光触媒を殺菌目的で製造方法に用いる装置においても、触媒活性が低下すると、十分な殺菌特性が得られなくなる。
【0014】
食品の大量製造のために装置を大型化する場合、触媒を用いて反応を促進するための触媒反応部の大容量化も必要となる。例えば、大容量化のために触媒反応部を複数用いる手法では、それぞれの触媒反応部の触媒活性が相違すると、期待した反応性が得られなくなり、触媒活性が低下する要因となり、頻繁なメンテナンスが必要になる。すなわち、光触媒を食品の原料の改質に用いる手法では、省エネルギー化、触媒活性の維持、メンテナンス性向上への整合に向けて改善の余地がある。
【0015】
本開示の一態様は、このような事情に鑑みてなされたものであり、新たに食品の原料を改質する光触媒を用いた食品加工装置を提供する。
【0016】
本開示の一態様に係る食品加工装置は、食品に用いる液状の反応物を貯める空間を有する反応槽と、回転することで前記反応槽内の前記反応物を撹拌する撹拌体を有する撹拌部と、複数の触媒反応部と、を備え、前記複数の触媒反応部の各々は、反応管、前記反応管の内部に設けられた光源を含み、前記反応管の外表面に光触媒が設けられ、前記反応管は前記光源から照射された光を透過し、前記複数の触媒反応部は、前記撹拌体の回転軸の周囲に、互いに間隔を空けた状態で配置され、前記光源は、前記回転軸の軸方向から見た場合において異なる位置に配置される複数の発光部を有し、前記回転軸の軸方向から見た場合において、前記複数の触媒反応部は、それぞれの前記反応管の基準の方向の、前記回転軸と前記反応管の中心とを結ぶ直線に対する位相が互いに等しく、前記反応管の基準の方向は、前記回転軸の軸方向から見た場合において、当該反応管の内側の前記複数の発光部の光の放出方向と、前記複数の発光部の位置関係とに基づいて定められる方向である。
【0017】
これによれば、回転軸の軸方向から見た場合において、それぞれの反応管の基準の方向の、回転軸と反応管の中心とを結ぶ直線に対する位相が互いに等しくなるように、各反応管の内部に光源が配置される。このため、各反応管の表面における光量の分布と、各反応管の表面における反応物の流れ分布とを、各触媒反応部において互いに一致させることができる。これにより、各触媒反応部において互いに等しくなるように反応物を反応させることができる。各触媒反応部における反応機会をほぼ同一にできることから、触媒活性の低下も各触媒反応部においてほぼ同様に進行させることができるので、各触媒反応部のメンテナンスを同じタイミングで行うことができる。すなわち、食品加工装置を安定して運転させることができ、食品に使用する反応物を効果的に改質することができる。
【0018】
前記複数の触媒反応部のそれぞれの前記光源は、前記回転軸の軸方向から見た場合において、前記直線を対称軸として線対称に発光するように配置されていてもよい。
【0019】
このため、各反応管の表面における光源による光量の分布が、回転軸と反応管の中心とを結ぶ直線に対して線対称となるように、光源を配置することができる。これにより、反応管が上記直線を境界として2つの部分に分割された第1部分と第2部分とで互いに反応物の反応機会をほぼ同一にすることができる。よって、より効果的に、各触媒反応部における反応機会をほぼ同一にすることができる。
【0020】
前記複数の触媒反応部のそれぞれの前記光源は、前記回転軸の軸方向から見た場合において、当該触媒反応部の前記反応管の内壁の部分のうち、前記回転軸に遠い部分よりも前記回転軸に近い部分に近い位置に配置されていてもよい。
【0021】
このため、反応管の内壁の部分のうち、回転軸に近い部分への光源からの光の光量が回転軸に遠い部分への光源からの光の光量よりも多くすることができ、この結果、回転軸に近い部分における励起子の発生量を回転軸に遠い部分よりも多くすることができる。ここで、回転軸に近い部分は、回転軸に遠い部分よりも反応物との接触確率が大きい。このため、反応物の接触確率が大きい、回転軸に近い部分の励起子の発生量が多くなるように光源を反応管の内部に設置することで、発生させた励起子と反応物とを速やかに反応させることができる。よって、反応物の反応を効果的に促進することができる。
【0022】
前記複数の触媒反応部は、前記回転軸の周囲に、互いに間隔を空けた状態で配置される複数の第1触媒反応部と、前記複数の第1触媒反応部の周囲に、互いに間隔を空けた状態で配置される複数の第2触媒反応部とを有してもよい。
【0023】
このため、多数の触媒反応部を配置することができる。
【0024】
前記複数の第1触媒反応部では、それぞれの前記反応管の基準の方向の、前記回転軸と前記反応管の中心とを結ぶ直線に対する位相が互いに等しい第1位相であり、前記複数の第2触媒反応部では、それぞれの前記反応管の基準の方向の、前記回転軸と前記反応管の中心とを結ぶ直線に対する位相が互いに等しい第2位相であり、前記第1位相と前記第2位相とは、互いに異なってもよい。
【0025】
このため、各第1触媒反応部において互いに等しくなるように反応物を反応させることができ、各第2触媒反応部において互いに等しくなるように反応物を反応させることができる。
【0026】
前記光源は、2本のガラス管体が前記反応管の長さ方向に沿って配置された蛍光灯であってもよい。
【0027】
このため、光源を簡単な構成で実現することができる。
【0028】
前記光源は、前記反応管の長さ方向に並ぶ複数の発光ダイオードを有する複数の発光ユニットを有し、前記複数の発光ユニットのそれぞれは、前記反応管の内壁に向かって光を放出するように配置されてもよい。
【0029】
これによれば、光源に発光ダイオードを用いているため、光源の省エネルギー性及び耐久性を向上させることができる。
【0030】
さらに、前記複数の触媒反応部の外側を囲んで配置され、前記反応槽内の前記反応物を冷却する冷却部を備えてもよい。
【0031】
このため、反応物の反応、または、光源から発生する熱による反応物の温度上昇を抑制することができる。
【0032】
前記複数の触媒反応部のそれぞれは、さらに、前記光源と前記反応管の底部との間に配置され、前記光源を前記反応管の前記底部に固定する固定部材を有してもよい。
【0033】
このため、光源を反応管に安定した状態で固定することができるため、光源が反応管に対してずれることを抑制することができる。これにより、各反応管の表面における光量の分布を各反応管の所定の位置に維持することができるため、各触媒反応部において互いに等しくなるように反応物を反応させることができる。
【0034】
(実施の形態)
食品加工装置100の構成について、図1を用いて説明する。図1は、実施の形態の食品加工装置100の一例を示す図である。
【0035】
図1に示すように、食品加工装置100は、反応槽1と、撹拌部2と、触媒反応部6と、冷却部10と、温度検知部11と、制御部13と、給水部14と、排出部15とを備える。
【0036】
反応槽1は、食品に用いる液状の反応物を貯める第1空間S1を有する。反応槽1は、例えば、有底円筒形の容器である。なお、反応槽1は、液状の反応物を貯める第1空間S1を有する有底筒形の容器であればよく、円筒形でなくてもよい。反応槽1には、反応槽1の上部の開口を塞ぐ蓋部5が設けられている。蓋部5は、円板状の部材であり、撹拌体4の回転軸3、複数の触媒反応部6、および、温度検知部11によって貫通される貫通孔を有する。
【0037】
撹拌部2は、回転することで反応槽1内の反応物を撹拌する撹拌体4を有する。撹拌部2は、撹拌部2の回転軸3が反応槽1の円筒の中心軸に一致するように配置される。撹拌部2は、回転軸3を回転させる、図示しないモータを含む。
【0038】
ここで、撹拌体4の具体例について説明する。
【0039】
撹拌体4は、例えば、傾斜パドル翼で実現されてもよい。撹拌体4は、反応物の粘性、撹拌部2の消費電力等の動作処理条件を考慮して最適処理条件となるように、プロペラ翼、ディスクタービン翼、および遠心式撹拌体のいずれか1つで実現されてもよい。なお、食品加工装置100に複数の撹拌体4が用いられる場合には、撹拌体4は、傾斜パドル翼、プロペラ翼、ディスクタービン翼および遠心式撹拌体のうちの少なくとも1つを含んでいればよい。
【0040】
触媒反応部6は、食品加工装置100に複数設けられる。複数(本実施の形態では6個)の触媒反応部6は、撹拌体4の回転軸3の軸方向から見た場合に、撹拌体4の回転軸3の周囲に、互いに間隔を空けた状態で配置される。6個の触媒反応部6の外側は、反応槽1の内壁面により取り囲まれる。つまり、触媒反応部6は、反応槽1の内部の第1空間S1に配置される。これにより、撹拌部2によって反応槽1の内部の反応物が撹拌された場合に、撹拌された反応物は、複数の触媒反応部6の間を移動することができる。
【0041】
ここで、図2を用いて、触媒反応部6の構成の詳細について説明する。図2は、実施の形態に係る触媒反応部6の構成の一例を示す図である。
【0042】
複数の触媒反応部6のそれぞれは、図2に示すように、反応管7と、光源8とを有する。触媒反応部6は、さらに、反応管7の底部7cとは反対側の端部(他端)の開口部7dと、光源8との間を封止する封止部18を有していてもよい。反応管7の内部には、乾燥気体が封入されていてもよい。
【0043】
反応管7は、光触媒が設けられた外表面、および、一端が封止された底部7cを有し、光を透過する。反応管7は、具体的には、有底円筒形のガラス基材7aと、ガラス基材7aの外表面に設けられた光触媒の薄膜7bとを有する。ガラス基材7aは、ガラス基材7aの円筒形の筒軸方向が撹拌体4の回転軸3に沿った向きで配置される。つまり、反応管7は、回転軸3と略平行に配置される。
【0044】
ガラス基材7aの外表面に設けられる光触媒の薄膜7bは、例えば、一般的なゾルゲル法で形成される。光触媒の薄膜7bは、具体的には、TiO2により構成される。光触媒の薄膜7bの形成方法において用いられるゾルゲル液を、ガラス基材7aの外表面に塗布し、ゾルゲル液が塗布された状態のガラス基材7aを、回転機を用いて回転させる。これにより、ガラス基材7aの外表面の全体に亘って、ゾルゲル液が均一に塗布される。ゾルゲル液が塗布されたガラス基材7aは、ゾルゲル液が乾燥した後に、電気炉において乾燥後、500℃以上の高温で加熱されることで、ガラス基材7aの外表面に光触媒の薄膜7bが焼成される。
【0045】
光源8は、反応管7の内側から反応管7の外表面に設けられた光触媒に光を照射する。光源8は、ガラス基材7aの底部7cとは反対側の開放部分からガラス基材7aの内部に挿入されている。光源8は、光触媒での励起子の発生を効果的に行うため、具体的には、260nm~400nm程度を中心波長とする光源を含む。光源8は、例えば、紫外線315nm~400nmの波長域(UV-A)の波長を中心波長とする蛍光灯を含む。このため、光触媒による反応物の反応を効果的に促進させることができる。
【0046】
光源8は、ガラス基材7aの外表面に設けられた薄膜7bに光を効果的に照射するため、反応管7の外表面の薄膜7bに対向するように、配置されてもよい。光源8は、反応管7の長さ方向に略平行に配置され、反応管7の内面に向かって発光する2本の直管形の蛍光灯を含む2つの発光部12を有する。この蛍光灯は、反応管7の長さ方向に沿って配置された2本のガラス管体を含む。つまり、光源8は、回転軸3の軸方向から見た場合において異なる位置に配置される複数の発光部12を有する。
【0047】
2つの発光部12は、反応管7の開口部7dよりも底部7cに近い位置で電気的に接続される。これにより、反応管7の他方の開放部分の一方向から、光源8の電力供給の取り合いができる。
【0048】
複数の触媒反応部6のそれぞれは、さらに、光源8と反応管7の底部7cとの間に配置され、光源8を反応管7の底部7cに固定する固定部材16を有していてもよい。固定部材16は、図3に示すように、光源8の底部7cが嵌合する固定くぼみ17を有し、反応管7の底部7cに嵌合する形状を有する。固定部材16は、外側が反応管7の底部7cに嵌合し、固定くぼみ17が光源8の底部と嵌合することで、光源8を反応管7の底部7cに固定する。
【0049】
これにより、光源8は、反応管7の内部に光触媒の薄膜7bに対向した状態で固定される。このため、光触媒の薄膜7bに光を効果的に照射することができる。
【0050】
なお、光源8は、例えば、高圧水銀ランプ、紫外線発光のLED(Light Emitting Diode)等を含んでもよい。LEDは、発光効率が高く発熱が少ないので、発熱の大きな光源と比較すると反応管7の内部に発生する対流の強さを小さくでき、外気を反応管7に取り込むことを抑制することができる。
【0051】
冷却部10は、反応槽1内の反応物を冷却する。冷却部10は、複数の触媒反応部6の外側を囲んで配置される。具体的には、冷却部10は、反応槽1を囲む外壁10aと、反応槽1と外壁10aとの間の第2空間S2を流通する冷却媒体(冷媒)とを有する。
【0052】
冷却部10は、温度検知部11で検出された温度に基づいて動作することにより、反応物の温度を調整する。具体的には、冷却部10は、第1温度よりも高い温度の反応物を第1温度に冷却する場合、第1温度以下の冷媒を第2空間S2に流通させる。これにより、冷却部10は、冷媒と反応物とを反応槽1を挟んで熱交換させることで反応物を冷却する。反応物と熱交換することで、温度が上昇した冷媒は、例えば、第2空間S2外に配置されている図示しない熱交換器において第1温度以下に冷却され、その後に第2空間S2に戻るように図示しない配管で接続されていてもよい。冷媒は、例えば、図示しない循環ポンプなどにより第2空間S2と上記熱交換器との間を循環していてもよい。この場合、冷却部10は、循環ポンプの動作を開始させることにより、反応物の冷却を開始してもよい。
【0053】
温度検知部11は、反応槽1内に配置され、反応物の温度を検出する。温度検知部11は、例えば、サーミスタ、熱電対などにより構成される。温度検知部11は、蓋部5を貫通しており、例えば、蓋部5に固定されている。
【0054】
給水部14は、蓋部5に配置され、反応槽1の内部の第1空間S1に水を供給する。給水部14は、水が供給される給水配管と、給水配管に接続され、当該配管からの水が反応槽1に供給される状態(開状態)と、供給されない状態(閉状態)とを切り替える電磁弁、電動弁などの弁とにより構成されていてもよい。
【0055】
排出部15は、反応槽1の底部に配置され、反応槽1に貯められた反応物または水を排出する。排出部15は、反応槽1の底部を貫通する排出口(図示せず)に接続され、この排出口から反応槽1に貯められた反応物または水が排出される状態(開状態)と、排出されない状態(閉状態)とを切り替える電磁弁、電動弁などの弁により構成されていてもよい。
【0056】
次に、図4を用いて、食品加工装置100が備える制御部13について説明する。図4は、実施の形態に係る食品加工装置100のブロック図である。
【0057】
制御部13は、食品加工装置100の動作を制御する。制御部13は、温度検知部11の検知結果を取得し、取得した検知結果に応じて、撹拌部2、光源8、冷却部10、給水部14および排出部15の少なくとも1つを制御する。制御部13は、例えば、プロセッサ、および、プロセッサにより実行されるプログラムを格納しているメモリにより実現されてもよい。制御部13は、例えば、専用回路により実現されてもよい。
【0058】
次に、食品加工装置100の動作について、図5を用いて説明する。図5は、実施の形態に係る食品加工装置100の運転方法の例を示すフローチャートである。
【0059】
まず、制御部13は、給水部14を水が供給されない状態から水が供給される状態に切り替えることで、給水部14から反応槽1に水を投入する(S11:第1投入工程)。第1投入工程では、人が反応槽1に水を投入してもよい。制御部13は、第1投入工程において、所定の水量の水が反応槽1に貯まると、給水部14を水が供給されない状態に切り替える。
【0060】
次に、食品に用いる原料(以下、原料という)を反応槽1に投入する(S12:第2投入工程)。第2投入工程では、所定の量に計量された原料が投入装置により反応槽1に自動的に投入されてもよいし、人が所定の量に計量した原料を反応槽1に投入してもよい。原料は、固形状、例えば、粉末状である。
【0061】
なお、ステップS11およびステップS12を含む投入工程では、ステップS11の前にステップS12が行われてもよいし、ステップS11と同時にステップS12が行われてもよい。この投入工程では、水と原料とが混合された混合物が反応槽1に投入されてもよい。
【0062】
制御部13は、反応槽1に水と原料とが反応槽1に投入されると、撹拌部2を駆動することで水と原料とを撹拌して液状の混合物を生成してもよい。
【0063】
次に、制御部13は、光源8を点灯させ、反応管7の内部から反応管7の光触媒の薄膜7bへの光照射を開始する(S13:反応工程)。反応工程では、投入された混合物が反応管7の外表面の薄膜7bに接している状態で、光源8から光を照射することで混合物の反応を促進する。反応工程では、制御部13は、撹拌部2のモータを駆動させることにより撹拌体4の回転軸3を回転させ、反応槽1内の反応物の撹拌を行う。合わせて、反応工程では、制御部13は、冷却部10の循環ポンプを駆動させることで、冷却部10の第2空間S2へ冷却媒体を供給する。
【0064】
このとき、制御部13は、反応物の温度を温度検知部11で検出し、反応物が予め設定した温度になるように、第2空間S2に供給する、冷却媒体の温度、及び/または、冷却媒体の供給量を調整する。制御部13は、例えば、第2空間S2外に設置されている熱交換器での熱交換量を調整することで冷却媒体の温度を調整する。制御部13は、具体的には、熱交換器が空冷であれば熱交換器における空冷を促進するファンの風量を調整することで冷却媒体の温度を調整してもよいし、熱交換器が水冷であれば熱交換器における水冷を促進するポンプによる水量を調整することで冷却媒体の温度を調整してもよい。制御部13は、反応槽1の外側の第2空間S2と熱交換器との間で冷却媒体を循環させるための循環ポンプによる循環量を調製することで冷却媒体の第2空間への供給量を調整してもよい。このように、冷却媒体の温度、及び/または、冷却媒体の供給量は、熱交換器、循環ポンプおよび配管を含む循環装置(図示せず)等を用いて調整することができる。
【0065】
例えば、食品加工装置100における反応物の反応がビール酵母の発酵であれば、低温(例えば5℃程度)で熟成させてもよい。この場合、冷却部10において目標とされる予め設定される温度は、5℃である。
【0066】
食品加工装置100では、光照射された光触媒と食品の原料となる反応物とを接触させ、光触媒によって反応物を改質させる。例えば、ビールの原料を改質する場合、麦汁中の糖分をあらかじめ分解させることで、発酵期間を短くすることができる。
【0067】
制御部13は、予め設定された反応時間で反応工程を行って混合物を改質させ、反応時間が終わると反応工程の動作を停止する。つまり、制御部13は、光源8を消灯し、撹拌部2のモータを停止し、冷却部10の動作を停止する。
【0068】
次に、制御部13は、排出部15を反応物が排出されない状態から排出される状態に切り替えることで、反応槽1から混合物を含む反応物を取り出す(S14:取り出し工程)。
【0069】
次に、制御部13は、反応槽1内を水で洗浄する(S15:洗浄工程)。本実施の形態では、制御部13は、給水部14水が供給されない状態から水が供給される状態に切り替えることで、給水部14から反応槽1に水を投入する。そして、制御部13は、反応槽1内を水で満たした状態で、撹拌部2を動作させることにより、反応槽1内を水で洗浄する。これにより、反応管7の外表面に付着した反応物を洗い流すことができる。そして、制御部13は、排出部15を水が排出されない状態から排出される状態に切り替えることで、反応槽1から洗浄に用いられた水を取り出す。
【0070】
制御部13は、ステップS15が終了すると、終了指示があるか否かを判定してもよい(S16)。
【0071】
制御部13は、終了指示があると判定した場合(S16でYes)、運転方法を終了する。制御部13は、終了指示がないと判定した場合(S16でNo)、ステップS11に戻り、ステップS11~S15を1サイクルとする工程群を繰り返すことで食品に用いる原料の改質処理を進める。つまり、制御部13は、終了指示があるまで、投入工程、反応工程、取り出し工程、及び、洗浄工程を繰り返す。
【0072】
次に、各触媒反応部における改質処理について説明する。
【0073】
図6は、図1における食品加工装置のVI-VI断面図である。図7は、図6において、1本の触媒反応部における反応物の流れと光量分布との関係について説明するための図である。
【0074】
改質処理では、触媒反応部6の光触媒の薄膜7bに接触した原料の有機成分と、光源8から照射された光で薄膜7bに発生させた励起子とが反応して、原料の改質反応が進む。
【0075】
図6に示すように、複数の触媒反応部6は、回転軸3の軸方向から見た場合において、回転軸3を中心に撹拌体4を取り囲むように均等に配置されている。このため、液状の反応物は、撹拌部2が動作することにより、複数の触媒反応部6にほぼ均一に供給される。励起子の発生は、光源8の光量と相関があるため、励起子の発生量は、触媒反応部6の光触媒の薄膜7bにできる光量分布に応じた分布となる。つまり、光源8の光量が多くなるにつれて励起子の発生量が増えるため、触媒反応部6のうち光源8の光量が多い領域ほど原料の反応が進みやすい。
【0076】
例えば、光源が1つの発光部で構成されており、1つの発光部が反応管の中央に配置されている場合、発光部を中心として反応管7の内面に向かい光が放射状に照射され、反応管7の外表面の光触媒の薄膜7bにほぼ均一に光が照射される。具体的には、反応管7を反応管7の長さ方向から見た場合、反応管7の光触媒の薄膜7bの円形の周方向における光源からの光量分布は、周方向のどの位置においても略一定になる。
【0077】
一方、本実施の形態の食品加工装置100のように、反応管7の長さ方向に反応管7内面に向かい2つの発光部12を有する光源8の場合、2つの発光部12と反応管7の外表面との位置関係により、光触媒の薄膜7bに照射される光の光量分布に偏りが生じる。図7に示すように、2つの発光部12から、2つの発光部12の中心を結ぶ直線L2と反応管7とが交わる点71までの距離と、反応管7の中心を通り直線L2に垂直な直線L3と反応管7とが交わる点72までの距離とは、互いに異なる。このため、点71における光量と、点72における光量とは、互いに異なる、具体的には、2つの発光部12から点71までの距離は、2つの発光部12から点72までの距離よりも短い。よって、点71における光量は、点72における光量よりも多い。このように、反応管7の薄膜7bには、周方向に応じて光量が異なる光量分布が形成される。
【0078】
一方、各反応管7に供給される液状の反応物は、上述したように複数の触媒反応部6にほぼ均一に供給される。このため、反応槽1に設置した複数の触媒反応部6の反応管7での光量分布を各触媒反応部6で互いに一致させると、各触媒反応部6で励起子と反応物との反応をほぼ均一に進めることができる。これにより、例えば、反応物との反応をほぼ均一にすることで、反応後の反応物が反応する副反応を管理する制御、食品加工装置間での反応物の反応性を、時間管理または光源8への入力等で、一致させることが容易になる。
【0079】
上記を実現するため本実施の形態の食品加工装置100では、複数の触媒反応部6の間での原料の反応分布を同等にするため、図6及び図7に示すように、回転軸3の軸方向から見た場合において、複数の触媒反応部6は、それぞれの反応管7の基準の方向の、回転軸3と反応管7の中心とを結ぶ直線L1に対する位相が互いに等しくなるように配置されている。反応管7の基準の方向は、回転軸3の軸方向から見た場合において、当該反応管7の内側の複数の発光部12の光の放出方向と、複数の発光部12の位置関係とに基づいて定められる方向である。
【0080】
本実施の形態では、複数の発光部12の光の放出方向は、例えば、回転軸3の軸方向から見た場合に、360度の全周方向である。複数の発光部12の発光方向が360度の全周方向である場合、反応管7の基準の方向は、複数の発光部12の中心を結ぶ直線L2が延びる方向としてもよい。よって、本実施の形態では、図7に示すように、反応管7の基準の方向の、直線L1に対する位相とは、直線L1と直線L2とが為す角θ1の角度である。このように、複数の触媒反応部6のうちのどの反応管7においても、図7に示すように、回転軸3と各触媒反応部6が有する光源8の2つの発光部12との位置関係は、互いに等しい。
【0081】
なお、複数の発光部の光の放出方向が1つの方向に定められる場合には、複数の発光部のうちの1つの発光部の光の放出方向を反応管7の基準の方向としてもよい。この場合に、複数の発光部から選択される1つの発光部は、複数の触媒反応部の間で同じ基準で選択される。選択する基準とは、発光量で定められてもよいし、複数の発光部の位置関係で定められてもよいし、光の放出方向で定められてもよい。
【0082】
本実施の形態に係る食品加工装置100によれば、回転軸3の軸方向から見た場合において、それぞれの反応管7の基準の方向の、回転軸3と反応管7の中心とを結ぶ直線L1に対する位相が互いに等しくなるように、各反応管7の内部に光源8が配置される。このため、各反応管7の表面における光量の分布と、各反応管7の表面における反応物の流れ分布とを、各触媒反応部6において互いに一致させることができる。これにより、各触媒反応部6において互いに等しくなるように反応物を反応させることができる。各触媒反応部6における反応機会をほぼ同一にできることから、触媒活性の低下も各触媒反応部6においてほぼ同様に進行させることができるので、各触媒反応部6のメンテナンスを同じタイミングで行うことができる。すなわち、食品加工装置100を安定して運転させることができ、食品に使用する反応物を効果的に改質することができる。
【0083】
本実施の形態に係る食品加工装置100において、光源8は、2本のガラス管体が反応管7の長さ方向に沿って配置された蛍光灯である。このため、光源8を簡単な構成で実現することができる。
【0084】
本実施の形態に係る食品加工装置100において、複数の触媒反応部6のそれぞれは、さらに、光源8と反応管7の底部7cとの間に配置され、光源8を反応管7の底部7cに固定する固定部材16を有する。このため、光源8を反応管7に安定した状態で固定することができるため、光源8が反応管7に対してずれることを抑制することができる。これにより、各反応管7の表面における光量の分布を各反応管7の所定の位置に維持することができるため、各触媒反応部6において互いに等しくなるように反応物を反応させることができる。
【0085】
(変形例1)
変形例1について説明する。
【0086】
図8は、変形例1に係る食品加工装置の、図1におけるVI-VI断面図に対応する断面図である。図9は、図8において、1本の触媒反応部における反応物の流れと光量分布との関係について説明するための図である。
【0087】
変形例1に係る食品加工装置100Aでは、複数の触媒反応部6のうちの一の触媒反応部6における光源8は、回転軸3の軸方向から見た場合において、直線L1を対称軸として線対称に発光するように配置されている。具体的には、図9に示すように、2つの発光部12は、直線L1を対称軸として線対称となる位置に配置される。変形例1では、2つの発光部12は、2つの発光部12の間に直線L1が位置するように、配置される。つまり、変形例1では、図9に示すように、反応管7の基準の方向の、直線L1に対する位相とは、直線L1と2つの発光部12の中心を結ぶ直線L12とが為す角θ2の角度であり、角θ2は90度である。
【0088】
このため、各反応管7の表面における光源8による光量の分布が、回転軸3と反応管7の中心とを結ぶ直線L1に対して線対称となるように、光源8を配置することができる。これにより、反応管7が上記直線L1を境界として2つの部分に分割された第1部分(図9の左半分の部分)と第2部分(図9の右半分の部分)とで互いに反応物の反応機会をほぼ同一にすることができる。よって、より効果的に、各触媒反応部における反応機会をほぼ同一にすることができる。
【0089】
(変形例2)
変形例2について説明する。
【0090】
図10は、変形例2に係る食品加工装置の、図1におけるVI-VI断面図に対応する断面図である。図11は、図10において、1本の触媒反応部における反応物の流れと光量分布との関係について説明するための図である。
【0091】
変形例2に係る食品加工装置100Bでは、変形例1に係る食品加工装置100Aと同様に、複数の触媒反応部6のうちの一の触媒反応部6における光源8は、回転軸3の軸方向から見た場合において、直線L1を対称軸として線対称に発光するように配置されている。具体的には、図11に示すように、2つの発光部12は、直線L1を対称軸として線対称となる位置に配置される。変形例2では、2つの発光部12は、その中心が直線L1上に位置するように配置される。つまり、変形例2では、図10に示すように、反応管7の基準の方向の、直線L1に対する位相とは、直線L1と2つの発光部12の中心を結ぶ直線L22とが為す角θ3の角度であり、角θ3は180度である。
【0092】
このため、各反応管7の表面における光源8による光量の分布が、回転軸3と反応管7の中心とを結ぶ直線L1に対して線対称となるように、光源8を配置することができる。これにより、反応管7が上記直線L1を境界として2つの部分に分割された第1部分(図11の左半分の部分)と第2部分(図11の右半分の部分)とで互いに反応物の反応機会をほぼ同一にすることができる。よって、より効果的に、各触媒反応部における反応機会をほぼ同一にすることができる。
【0093】
(変形例3)
変形例3について説明する。
【0094】
図12は、変形例3に係る食品加工装置の、図1におけるVI-VI断面図に対応する断面図である。図13は、図12において、1本の触媒反応部における反応物の流れと光量分布との関係について説明するための図である。
【0095】
変形例3に係る食品加工装置100Cでは、各触媒反応部6Cの光源8Cは、反応管7の長さ方向に並ぶ複数の発光ダイオードを有する複数の発光ユニットである複数(本実施の形態では4つ)の発光部12Cを有する。4つの発光部12Cのそれぞれは、反応管7の内壁に向かって光を放出するように配置される。
【0096】
変形例3の食品加工装置100Cのように、反応管7の長さ方向に反応管7内面に向かい4つの発光部12Cを有する光源8Cの場合であっても、4つの発光部12Cと反応管7の外表面との位置関係により、光触媒の薄膜7bに照射される光の光量分布に偏りが生じる。図13に示すように、4つの発光部12から、4つの発光部12のうちの対向する2つの発光部12の中心を結ぶ直線L32および直線L33と反応管7とが交わる4つの点73までの距離と、反応管7において4つの点73の間の4つの点74までの距離とは、互いに異なる。このため、点73における光量と、点74における光量とは、互いに異なる、具体的には、4つの発光部12から点73までの距離は、4つの発光部12から点74までの距離よりも短い。よって、点73における光量は、点74における光量よりも多い。このように、反応管7の薄膜7bには、周方向に応じて光量が異なる光量分布が形成される。
【0097】
このような複数の触媒反応部6Cであっても、それぞれの反応管7の基準の方向の、回転軸3と反応管7の中心とを結ぶ直線L1に対する位相が互いに等しくなるように配置されている。反応管7の基準の方向は、回転軸3の軸方向から見た場合において、当該反応管7の内側の複数の発光部12Cの光の放出方向と、複数の発光部12Cの位置関係とに基づいて定められる方向である。例えば、基準の方向は、直線L32が延びる方向である。よって、変形例3では、図13に示すように、反応管7の基準の方向の、直線L1に対する位相とは、直線L1と直線L32とが為す角θ4の角度である。このように、複数の触媒反応部6Cのうちのどの反応管7においても、図13に示すように、回転軸3と各触媒反応部6Cが有する光源8Cの4つの発光部12Cとの位置関係は、互いに等しい。
【0098】
変形例3に係る食品加工装置100Cによれば、光源8Cに発光ダイオードを用いているため、光源8Cの省エネルギー性及び耐久性を向上させることができる。
【0099】
(変形例4)
変形例4について説明する。
【0100】
図14は、変形例4に係る食品加工装置の、図1におけるVI-VI断面図に対応する断面図である。図15は、図14において、1本の触媒反応部における反応物の流れと光量分布との関係について説明するための図である。
【0101】
変形例4に係る食品加工装置100Dでは、複数の触媒反応部6Dのそれぞれの光源8は、回転軸3の軸方向から見た場合において、当該触媒反応部6Dの反応管7の内壁の部分のうち、回転軸3に遠い部分の点76よりも回転軸3に近い部分の点75に近い位置に配置されている。点75は、直線L1が反応管7と交差する2点のうち回転軸3に近い点であり、点76は、直線L1が反応管7と交差する2点のうち回転軸3から遠い点である。
【0102】
これにより、反応管7の内壁の部分のうち、回転軸3に近い部分への光源8からの光の光量が回転軸3に遠い部分への光源8からの光の光量よりも多くすることができ、この結果、回転軸3に近い部分における励起子の発生量を回転軸3に遠い部分よりも多くすることができる。ここで、回転軸3に近い部分は、回転軸3に遠い部分よりも反応物との接触確率が大きい。このため、反応物の接触確率が大きい、回転軸3に近い部分の励起子の発生量が多くなるように光源8を反応管7の内部に設置することで、発生させた励起子と反応物とを速やかに反応させることができる。よって、反応物の反応を効果的に促進することができる。
【0103】
(変形例5)
変形例5について説明する。
【0104】
図16は、変形例5に係る食品加工装置の、図1におけるVI-VI断面図に対応する断面図である。
【0105】
変形例5に係る食品加工装置100Dでは、複数の触媒反応部6Eは、回転軸3の周囲に、互いに間隔を空けた状態で配置される複数の第1触媒反応部61と、複数の第1触媒反応部61の周囲に、互いに間隔を空けた状態で配置される複数の第2触媒反応部62とを有する。具体的には、複数の第1触媒反応部61は、回転軸3を中心とする円C1上に等間隔で配置される。複数の第2触媒反応部62は、回転軸3を中心とし、かつ、円C1よりも直径が大きい円C2上に等間隔で配置される。このため、多数の触媒反応部6Eを配置することができる。
【0106】
複数の第1触媒反応部61のそれぞれは、図7に示した触媒反応部6と同様に、直線L1に対する第1位相が角θ1の角度であってもよい。つまり、複数の第1触媒反応部61では、それぞれの反応管7の基準の方向の、回転軸3と反応管7の中心とを結ぶ直線L1に対する位相が互いに等しい第1位相である。
【0107】
複数の第2触媒反応部62のそれぞれは、図9に示した触媒反応部6と同様に、直線L1に対する第2位相が角θ2の角度であってもよい。つまり、複数の第2触媒反応部62では、それぞれの反応管7の基準の方向の、回転軸3と反応管7の中心とを結ぶ直線L1に対する位相が互いに等しい第2位相である。そして、第1位相と第2位相とは、互いに異なっていてもよい。なお、これに限らずに、第1位相と第2位相とは、互いに等しくてもよい。
【0108】
このため、各第1触媒反応部61において互いに等しくなるように反応物を反応させることができ、各第2触媒反応部62において互いに等しくなるように反応物を反応させることができる。
【0109】
(変形例6)
変形例6に係る食品加工装置を説明する。
【0110】
食品加工装置100は、食品に用いる液状の反応物を貯める空間を有する反応槽1と、撹拌体4を有する撹拌部3と、空間に配置される複数の触媒反応部6とを備える。攪拌体4の回転軸3を回転させて攪拌体4に反応槽1内の反応物を撹拌させる。複数の触媒反応部(例:図6に示された6つの触媒反応部6)に含まれる第i触媒反応部(例:図2に示された触媒反応部6)は、第i反応管(例:図2に示された反応管7)、第i反応管7の内部に設けられた第i光源(例:図2に示された光源8)を含む。iは1以上n以下の自然数であり、nは2以上の自然数である。第i反応管7の外表面に第i光触媒(例:図2に示された薄膜7b)が設けられる。第i反応管7は第i光源8から照射された光を透過する。第i光源6は、第i発光部(例:図2に示された2つの発光部12のうち図面に向かって左側の発光部12)と第(i+n)発光部(例:図2に示された2つの発光部12のうち図面に向かって右側の発光部12)を含む。
【0111】
第i発光部7の側面は、回転軸3と平行な第i軸を中心とする円筒状であり(図2図6参照)、第(i+n)発光部の側面は、回転軸3と平行な第(i+n)軸を中心とする円筒状である(図2図6参照)。第i反応管7の側面は、回転軸3と平行な第(i+2n)軸を中心に有する円筒状であり(図2図6参照)。第i触媒反応部6は、回転軸3と第(i+2n)軸を含む第i平面(例:図7の紙面に対して垂直な平面であって、L1を含む平面)と第i軸と第(i+n)軸を含む第(i+n)平面(例:図7の紙面に対して垂直な平面であって、L2を含む平面)との間の第i角度(例:図7に示されたθ1)に対応し、第i角度は第i平面を基準として時計回りに定義される。
【0112】
回転軸3と第(i+2n)軸との距離は第i距離である。第1距離、~、第n距離は同じである(例:図6に示された6つの触媒反応部6と回転軸3の距離のそれぞれは同じ)。第1角度の大きさ、~、第n角度の大きさ同じである(例:図6参照)。
【0113】
nは2であってもよい。
【0114】
(その他)
なお、触媒反応部が有する光源は、U字形の蛍光灯で構成されていてもよい。U字形の蛍光灯は、2つの直管部分と、2つの直管部分を接続する曲管部分とを有する。つまり、U字形の蛍光灯は、2つの直管部分を有するため、回転軸3の軸方向から見た場合において異なる位置に配置される複数の発光部を有すると言える。
【0115】
以上、本開示の一つまたは複数の態様に係る食品加工装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本開示の一態様は、例えば、食品の原料を改質する光触媒を用いた食品加工装置などに利用できる。
【符号の説明】
【0117】
1 反応槽
2 撹拌部
3 回転軸
4 撹拌体
5 蓋部
6、6C、6D、6E 触媒反応部
7 反応管
7a ガラス基材
7b 薄膜
7c 底面
7d 開口部
8、8C 光源
10 冷却部
10a 外壁
11 温度検知部
12、12C 発光部
13 制御部
14 給水部
15 排出部
16 固定部材
17 固定くぼみ
18 封止部
61 第1触媒反応部
62 第2触媒反応部
71~76 点
100、100A、100B、100C、100D、100E 食品加工装置
C1、C2 円
L1、L2、L3、L12、L22、L32、L33 直線
θ1、θ2、θ3 角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16