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特許7228800搬送方法、搬送システム、プログラム及びパレット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】搬送方法、搬送システム、プログラム及びパレット
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20230217BHJP
【FI】
B66F9/24 P
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018203319
(22)【出願日】2018-10-29
(65)【公開番号】P2020070121
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-08-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲積 慶人
(72)【発明者】
【氏名】松川 善彦
(72)【発明者】
【氏名】上村 真一
(72)【発明者】
【氏名】白水 博
(72)【発明者】
【氏名】井川 喜博
(72)【発明者】
【氏名】栗原 飛光
(72)【発明者】
【氏名】島田 英明
(72)【発明者】
【氏名】高橋 淳一
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-278799(JP,A)
【文献】特表昭63-501317(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0016124(US,A1)
【文献】実開平06-033211(JP,U)
【文献】実開平06-018396(JP,U)
【文献】特開2017-178567(JP,A)
【文献】特開平05-024797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00 - 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知部を有する搬送装置にて対象物を搬送する搬送方法であって、
前記搬送装置と前記対象物との間の距離に関連する距離情報を含む前記検知部の検知結果を取得する取得処理と、
前記検知結果に基づいて、前記搬送装置に対する前記対象物の相対的な位置と、前記搬送装置に対する前記対象物の基準面の相対的な向きとの両方を特定する特定処理と、
前記検知結果に基づいて、複数の物体の中から、前記対象物となる1つの物体を選択する選択処理と、を有し、
前記検知部は、前記対象物の前記基準面に付されたマーカまでの距離を前記距離情報として検知し、
前記選択処理においては、複数の反射点を含む前記検知結果に基づいて、前記複数の反射点のうちの1つの反射点から所定距離内に位置する1つ以上の反射点を同一のクラスタに割り当てるクラスタリングを行い、前記クラスタの重心位置を算出することで、少なくとも前記搬送装置に対する前記複数の物体の相対的な位置を特定し、前記複数の物体の中から前記対象物となる1つの物体を選択し、
前記所定距離は、前記対象物の形状及び寸法に基づいた距離である、
搬送方法。
【請求項2】
前記マーカは、前記対象物の前記基準面における前記マーカ以外の部位に比べて光、音波又は電磁波の少なくとも1つの反射率が高い、
請求項1に記載の搬送方法。
【請求項3】
前記対象物の前記基準面は、中央桟部と、前記中央桟部の水平方向の両側に位置する一対の側方桟部と、を含み、
前記マーカは、少なくとも前記中央桟部に付されている、
請求項1又は2に記載の搬送方法。
【請求項4】
前記マーカは、三次元形状を含んでいる、
請求項1~3のいずれか1項に記載の搬送方法。
【請求項5】
前記マーカは、前記対象物の前記基準面に貼り付けられている、
請求項1~4のいずれか1項に記載の搬送方法。
【請求項6】
前記対象物は、それぞれ鉛直方向に沿う面であって、互いに異なる向きを向いた4つの外側面を有し、
前記4つの外側面の各々が前記基準面である、
請求項1~5のいずれか1項に記載の搬送方法。
【請求項7】
前記対象物は、それぞれ鉛直方向に沿う面であって、互いに異なる向きを向いた4つの外側面を有し、
前記4つの外側面は、前記基準面である面と、前記基準面ではない面と、を含む、
請求項1~5のいずれか1項に記載の搬送方法。
【請求項8】
前記対象物は、平面視において前記4つの外側面を4辺とする四角形状であって、
前記4つの外側面のうち四角形の短辺となる1つ又は2つの外側面が、前記基準面である、
請求項7に記載の搬送方法。
【請求項9】
前記検知部は、鉛直方向において前記基準面と同じ高さに配置されている、
請求項1~8のいずれか1項に記載の搬送方法。
【請求項10】
前記特定処理においては、前記複数の反射点を含む前記検知結果に基づいて、前記複数の反射点のうちの1つの反射点から所定距離内に位置する1つ以上の反射点を同一のクラスタに割り当てるクラスタリングを行い、前記クラスタ単位で、少なくとも前記搬送装置に対する前記対象物の相対的な位置を特定する、
請求項1~9のいずれか1項に記載の搬送方法。
【請求項11】
前記検知結果に基づいて、前記対象物の属性に関する属性情報を識別する識別処理を更に有する、
請求項1~10のいずれか1項に記載の搬送方法。
【請求項12】
検知部を有する搬送装置と、
前記搬送装置を制御する制御システムと、を備え、
前記制御システムは、
前記搬送装置と対象物との間の距離に関連する距離情報を含む前記検知部の検知結果を取得する取得部と、
前記検知結果に基づいて、前記搬送装置に対する前記対象物の相対的な位置と、前記搬送装置に対する前記対象物の基準面の相対的な向きとの両方を特定する特定部と、
前記検知結果に基づいて、複数の物体の中から、前記対象物となる1つの物体を選択する選択部と、を有し、
前記検知部は、前記対象物の前記基準面に付されたマーカまでの距離を前記距離情報として検知し、
前記選択部は、複数の反射点を含む前記検知結果に基づいて、前記複数の反射点のうちの1つの反射点から所定距離内に位置する1つ以上の反射点を同一のクラスタに割り当てるクラスタリングを行い、前記クラスタの重心位置を算出することで、少なくとも前記搬送装置に対する前記複数の物体の相対的な位置を特定し、前記複数の物体の中から前記対象物となる1つの物体を選択し、
前記所定距離は、前記対象物の形状及び寸法に基づいた距離である、
搬送システム。
【請求項13】
1以上のプロセッサに、請求項1~11のいずれか1項に記載の搬送方法を実行させるためのプログラム。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか1項に記載の搬送方法に前記対象物として用いられる、
パレット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に搬送方法、搬送システム、プログラム及びパレットに関し、より詳細には、搬送装置にて対象物を搬送するための搬送方法、搬送システム、プログラム及びパレットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、パレット(対象物)を搬送するパレットトラック(搬送装置)が開示されている。このパレットトラックでは、トラック本体の後側(フォーク側)に対し、昇降機構によってフォークが昇降可能に組み付けられている。また、このパレットトラックでは、フォークの先端部に小車輪が組み付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-81240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、特許文献1に記載されているような搬送装置(パレットトラック)を用いた対象物の搬送方法においては、対象物であるパレットの差込口にフォークをスムーズに差し込むことで、対象物の搬送に係る一連の処理をスムーズに進めることが望まれる。
【0005】
本開示は上記事由に鑑みてなされており、対象物の搬送に係る一連の処理をスムーズに進めやすい搬送方法、搬送システム、プログラム及びパレットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る搬送方法は、検知部を有する搬送装置にて対象物を搬送する搬送方法であって、取得処理と、特定処理と、選択処理と、を有する。前記取得処理は、前記検知部の検知結果を取得する処理である。前記検知部の前記検知結果は、前記搬送装置と前記対象物との間の距離に関連する距離情報を含む。前記特定処理は、前記検知結果に基づいて、前記搬送装置に対する前記対象物の相対的な位置と、前記搬送装置に対する前記対象物の基準面の相対的な向きとの両方を特定する処理である。前記選択処理では、前記検知結果に基づいて、複数の物体の中から、前記対象物となる1つの物体を選択する。前記検知部は、前記対象物の前記基準面に付されたマーカまでの距離を前記距離情報として検知する。前記選択処理においては、複数の反射点を含む前記検知結果に基づいて、前記複数の反射点のうちの1つの反射点から所定距離内に位置する1つ以上の反射点を同一のクラスタに割り当てるクラスタリングを行い、前記クラスタの重心位置を算出することで、少なくとも前記搬送装置に対する前記複数の物体の相対的な位置を特定し、前記複数の物体の中から前記対象物となる1つの物体を選択する。前記所定距離は、前記対象物の形状及び寸法に基づいた距離である。
【0007】
本開示の一態様に係る搬送システムは、検知部を有する搬送装置と、前記搬送装置を制御する制御システムと、を備える。前記制御システムは、取得部と、特定部と、選択部と、を有する。前記取得部は、前記検知部の検知結果を取得する。前記検知部の前記検知結果は、前記搬送装置と対象物との間の距離に関連する距離情報を含む。前記特定部は、前記検知結果に基づいて、前記搬送装置に対する前記対象物の相対的な位置と、前記搬送装置に対する前記対象物の基準面の相対的な向きとの両方を特定する。前記選択部は、前記検知結果に基づいて、複数の物体の中から、前記対象物となる1つの物体を選択する。前記検知部は、前記対象物の前記基準面に付されたマーカまでの距離を前記距離情報として検知する。前記選択部は、複数の反射点を含む前記検知結果に基づいて、前記複数の反射点のうちの1つの反射点から所定距離内に位置する1つ以上の反射点を同一のクラスタに割り当てるクラスタリングを行い、前記クラスタの重心位置を算出することで、少なくとも前記搬送装置に対する前記複数の物体の相対的な位置を特定し、前記複数の物体の中から前記対象物となる1つの物体を選択する。前記所定距離は、前記対象物の形状及び寸法に基づいた距離である。
【0008】
本開示の一態様に係るプログラムは、1以上のプロセッサに、前記搬送方法を実行させるためのプログラムである。
【0009】
本開示の一態様に係るパレットは、前記搬送方法に前記対象物として用いられるパレットである。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、対象物の搬送に係る一連の処理をスムーズに進めやすい、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態1に係る搬送システムにおいて、搬送装置及び対象物の外観を示す斜視図である。
図2図2は、同上の搬送システムのブロック図である。
図3図3は、同上の搬送システムに用いられる搬送装置の外観を示す斜視図である。
図4図4Aは、同上の搬送システムに用いられる対象物の一例を示す斜視図である。図4Bは、同上の搬送システムに用いられる対象物の他の構成例を示す斜視図である。図4Cは、同上の搬送システムに用いられる対象物の更に他の構成例を示す斜視図である。
図5図5Aは、同上の搬送システムに用いられる対象物の一例を示す平面図である。図5Bは、同上の搬送システムに用いられる対象物の他の構成例を示す平面図である。
図6図6A図6Cは、同上の搬送システムにおける搬送装置及び対象物を示す模式的な平面図である。
図7図7A図7Cは、同上の搬送システムにおける搬送装置及び対象物を示す模式的な平面図である。
図8図8A図8Dは、同上の搬送システムにおける搬送装置及び対象物を示す模式的な平面図である。
図9図9A図9Dは、同上の搬送システムにおける搬送装置及び対象物を示す模式的な平面図である。
図10図10は、同上の搬送システムの動作例を示すフローチャートである。
図11図11は、実施形態2に係る搬送システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
(1)概要
本実施形態に係る搬送方法は、図1に示すように、搬送装置1にて対象物X1を搬送するための方法である。この搬送方法は、例えば、搬送システム100にて実現される。図2に示すように、搬送システム100は、搬送装置1と、制御システム4と、を備えている。制御システム4は、搬送装置1を制御するシステムである。
【0013】
搬送装置1は、1つ以上の駆動輪で移動面200の上を移動する装置であり、対象物X1の搬送用の装置である。搬送装置1は、例えば物流センター(配送センターを含む)、工場、オフィス、店舗、学校、及び病院等の施設に導入される。移動面200は、その上を搬送装置1が移動する面であり、搬送装置1が施設内を移動する場合は施設の床面等が移動面200となり、搬送装置1が屋外を移動する場合は地面等が移動面200となる。以下では、物流センターに搬送装置1を導入する場合について説明する。
【0014】
本実施形態に係る搬送装置1は、図1に示すように、本体部2と、支持部3と、を備えている。本体部2は、駆動輪を有しており、駆動輪により移動面200上を移動する。本実施形態では、本体部2は、自律移動可能である。
【0015】
支持部3は、本体部2から延びて対象物X1に差し込まれた状態で対象物X1を支持する。本開示でいう「対象物に差し込まれる」とは、対象物X1の有する差込口X11に差し込まれることをいう。本実施形態では、搬送装置1は、対象物X1に差し込まれる一対の支持部3を備えている。そして、搬送装置1は、対象物X1に差し込まれた状態の一対の支持部3を上昇させることで、一対の支持部3にて対象物X1を持ち上げる。したがって、対象物X1は、一対の支持部3が差し込まれた状態で、一対の支持部3に支持される。以下の説明では、特に断りのない限り、一対の支持部3を単に「支持部3」という。
【0016】
ところで、この種の搬送装置1を用いた対象物X1の搬送方法においては、対象物X1の搬送に係る一連の処理をスムーズに進めるためには、対象物X1に支持部3をスムーズに差し込むことが必要である。
【0017】
そこで、本実施形態に係る搬送方法は、検知部11を有する搬送装置1にて対象物X1を搬送する搬送方法であって、取得処理と、特定処理と、を有している。取得処理は、検知部11の検知結果を取得する処理である。検知部11の検知結果は、搬送装置1と対象物X1との間の距離に関連する距離情報を含んでいる。特定処理は、検知結果に基づいて、搬送装置1に対する対象物X1の相対的な位置と、搬送装置1に対する対象物X1の基準面X12の相対的な向きとの両方を特定する処理である。検知部11は、対象物X1の基準面X12に付されたマーカM1までの距離を距離情報として検知する。
【0018】
上記搬送方法によれば、検知部11の検知結果に基づいて、搬送装置1に対する対象物X1の相対的な位置だけでなく、搬送装置1に対する対象物X1の基準面X12の相対的な向きについても、特定処理により特定される。すなわち、搬送装置1に対する対象物X1の基準面X12の向きが特定されるので、例えば、基準面X12に形成された差込口X11に支持部3を差し込む場合においても、差込口X11に支持部3をスムーズに差し込むことが可能である。よって、上記搬送方法によれば、対象物X1の搬送に係る一連の処理をスムーズに進めやすい、という利点がある。
【0019】
(2)構成
以下、本実施形態に係る搬送システム100、搬送装置1及び対象物X1の構成について、図1及び図2を用いて詳細に説明する。以下では、特に断りのない限り、移動面200に直交する方向を上下方向とし、移動面200から見て搬送装置1側を「上方」、その逆を「下方」として説明する。また、以下では、搬送装置1が一対の支持部3を対象物X1の差込口X11に差し込む際に搬送装置1が進む向きを「後方」、その逆を「前方」として説明する。また、以下では、上下方向及び前後方向の両方向に直交する方向を左右方向として説明する。ただし、これらの方向の規定は、搬送装置1の使用態様を限定する趣旨ではない。また、図面中の各方向を示す矢印は、説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。更に、図面中の白抜きの矢印は、物体(例えば、本体部2など)の動く向きを表しているに過ぎず、実体を伴わない。
【0020】
(2.1)搬送システム
まず、本実施形態に係る搬送システム100の全体構成について説明する。
【0021】
本実施形態に係る搬送システム100は、制御システム4と、少なくとも1台の搬送装置1と、を備えている。本実施形態では、搬送システム100は、搬送装置1を複数台備えている。
【0022】
本実施形態では、制御システム4と搬送装置1とは一体化されている。ここでは、制御システム4は搬送装置1に搭載されることで、搬送装置1と一体化されている。つまり、搬送装置1の1つの筐体には、搬送装置1としての機能を実現するための構成要素と、制御システム4の構成要素と、が収容されている。
【0023】
本実施形態では、搬送システム100は、複数台の搬送装置1を備えているため、制御システム4についても、搬送装置1に対応するように複数備えている。つまり、搬送システム100は、複数台の搬送装置1と一対一に対応する複数の制御システム4を備えている。以下では、特に断りのない限り、任意の1台の搬送装置1、及びこの搬送装置1に搭載された制御システム4に着目して説明する。以下の説明は、残りの全ての搬送装置1及び制御システム4の各々についても同様に適用し得る。
【0024】
また、本実施形態では、搬送システム100は、図2に示すように、搬送システム100は、搬送装置1及び制御システム4に加えて、搬送装置1を遠隔で制御する上位システム5を更に備えている。
【0025】
上位システム5と制御システム4とは、互いに通信可能に構成されている。本開示において「通信可能」とは、有線通信又は無線通信の適宜の通信方式により、直接的、又はネットワーク若しくは中継器等を介して間接的に、情報を授受できることを意味する。すなわち、上位システム5と制御システム4とは、互いに情報を授受することができる。本実施形態では、上位システム5と制御システム4とは、互いに双方向に通信可能であって、上位システム5から制御システム4への情報の送信、及び制御システム4から上位システム5への情報の送信の両方が可能である。
【0026】
上位システム5は、少なくとも1台(本実施形態では複数台)の搬送装置1を遠隔で制御する。具体的には、上位システム5は、制御システム4と通信することにより、制御システム4を介して間接的に搬送装置1を制御する。つまり、上位システム5は、搬送装置1に搭載された制御システム4に搬送装置1の外部から送信される指令(搬送指令)により、搬送装置1を制御する。上位システム5は、例えば、指令(搬送指令)及び電子地図などのデータを制御システム4に送信する。
【0027】
本実施形態では、上位システム5は、例えばサーバであって、1以上のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムを、コンピュータシステムのプロセッサが実行することにより、上位システム5の機能が実現される。プログラムは、メモリに記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0028】
上位システム5は、後述する搬送装置1の検知部11の検知結果等から、少なくとも搬送装置1の現在位置を推定し、目標地点(目標ノード)までの搬送装置1の移動経路を決定する(経路計画)。上位システム5は、この移動経路に沿って搬送装置1が移動するように、制御システム4を介して搬送装置1を制御する。これにより、搬送装置1の遠隔制御が実現される。
【0029】
制御システム4は、取得部41と、特定部42と、選択部43と、識別部44と、通信部45と、第1インタフェース46と、を有している。このうち、取得部41、特定部42、選択部43及び識別部44は、メモリ及び1以上のプロセッサを含むコンピュータシステムを主構成とする制御処理部40の一機能として実現される。
【0030】
通信部45は、直接的、又はネットワーク若しくは中継器等を介して間接的に、上位システム5と通信する。通信部45と上位システム5との間の通信方式としては、無線通信又は有線通信の適宜の通信方式が採用される。本実施形態では一例として、通信部45は、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)又は免許を必要としない小電力無線(特定小電力無線)等の規格に準拠した、電波を通信媒体として用いる無線通信を採用する。
【0031】
第1インタフェース46は、直接的、又はネットワーク若しくは中継器等を介して間接的に、搬送装置1と通信する。第1インタフェース46と搬送装置1(第2インタフェース15)との間の通信方式としては、無線通信又は有線通信の適宜の通信方式が採用される。
【0032】
制御処理部40を構成するコンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムを、コンピュータシステムのプロセッサが実行することにより、取得部41、特定部42、選択部43及び識別部44の各々の機能が実現される。プログラムはメモリに予め記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0033】
取得部41は、取得処理を実行する。取得処理は、搬送装置1における検知部11の検知結果を取得する処理である。検知部11について詳しくは後述するが、検知部11の検知結果は、搬送装置1と対象物X1との間の距離に関連する距離情報を含んでいる。取得部41は、第1インタフェース46を介して、搬送装置1から検知部11の検知結果を随時取得する。
【0034】
特定部42は、特定処理を実行する。特定処理は、検知部11の検知結果に基づいて、搬送装置1に対する対象物X1の相対的な位置と、搬送装置1に対する対象物X1の基準面X12の相対的な向きとの両方を特定する処理である。ここで、特定部42は、搬送装置1から取得部41が取得した検知部11の検知結果に基づいて、搬送装置1に対する対象物X1の相対的な位置、及び搬送装置1に対する基準面X12の相対的な向きを特定する。特定部42の具体的な処理については、「(3.1)搬送準備」の欄で説明する。
【0035】
選択部43は、選択処理を実行する。選択処理は、検知部11の検知結果に基づいて、複数の物体の中から、対象物X1となる1つの物体を選択する処理である。ここで、選択部43は、搬送装置1から取得部41が取得した検知部11の検知結果に基づいて、対象物X1となる1つの物体を選択する。すなわち、対象物X1らしき物体(ここではパレット)が複数存在する場合に、選択部43は、いずれの物体を対象物X1とするかを判定する。選択部43の具体的な処理については、「(3.1)搬送準備」の欄で説明する。
【0036】
識別部44は、識別処理を実行する。識別処理は、検知部11の検知結果に基づいて、対象物X1の属性に関する属性情報を識別する処理である。ここで、識別部44は、搬送装置1から取得部41が取得した検知部11の検知結果に基づいて、属性情報を識別する。本開示でいう「属性情報」は、例えば、個々の対象物X1を識別するための固有の識別情報(ID)等であってもよいし、対象物X1の大きさ、重量、又は対象物X1の最大積載重量等であってもよい。識別部44の具体的な処理については、「(3.1)搬送準備」の欄で説明する。
【0037】
搬送装置1は、図2に示すように、検知部11と、駆動部12と、処理部13と、ユーザインタフェース14と、第2インタフェース15と、を有している。検知部11、駆動部12、処理部13、ユーザインタフェース14及び第2インタフェース15は、本体部2(図1参照)に搭載されている。
【0038】
検知部11は、本体部2の位置、本体部2の挙動、及び本体部2の周辺状況等を検知する。本開示でいう「挙動」は、動作及び様子等を意味する。つまり、本体部2の挙動は、本体部2が移動中/停止中を表す本体部2の動作状態、本体部2の速度(及び速度変化)、本体部2に作用する加速度、及び本体部2の姿勢等を含む。本開示でいう「周辺状況」には、本体部2(又は、支持部3)の周辺にある対象物X1の状況を含み得る。
【0039】
具体的には、検知部11は、例えば、LiDAR(Light Detection and Ranging)、ソナーセンサ、レーダ(RADAR:Radio Detection and Ranging)等のセンサを含み、これらのセンサにて本体部2の周辺状況を検知する。LiDARは、光(レーザ光)を用いて、対象物X1での反射光に基づいて対象物X1までの距離を測定するセンサである。ソナーセンサは、超音波等の音波を用いて、対象物X1での反射波に基づいて対象物X1までの距離を測定するセンサである。レーダは、マイクロ波等の電磁波(電波)を用いて、対象物X1での反射波に基づいて対象物X1までの距離を測定するセンサである。すなわち、検知部11の検知結果(検知部11の出力)は、少なくとも搬送装置1(本体部2)と対象物X1との間の距離に関連する距離情報を含んでいる。本開示でいう「距離情報」は、搬送装置1と対象物X1との間の距離が反映された情報、つまり距離に応じて変化する情報であればよく、搬送装置1と対象物X1との間の距離そのものを表す情報に限らない。また、検知部11は、例えば、速度センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ等のセンサを含み、これらのセンサにて本体部2の挙動を検知する。
【0040】
また、検知部11は、駆動輪の回転数を測定し、測定した駆動輪の回転数などの情報に基づいて本体部2の位置を推定する。つまり、本実施形態では、本体部2の位置は、主として、事前に取得した電子地図と、後述する第1センサ111及び第2センサ112の検知結果と、いわゆるデッドレコニング(Dead-Reckoning:DR)とにより推定される。
【0041】
駆動部12は、本体部2の駆動輪に対して、直接的又は間接的に駆動力を与える。駆動部12により駆動輪に駆動力が与えられると、駆動輪の回転に伴って本体部2が移動面200上を移動(走行)する。駆動部12は、本体部2に内蔵されている。駆動部12は、例えば、電動機(モータ)を含み、ギアボックス及びベルト等を介して、電動機で発生する駆動力を間接的に駆動輪に与える。また、駆動部12は、例えば、インホイールモータのように、駆動輪に対して直接的に駆動力を与える構成であってもよい。駆動部12は、処理部13から入力される制御信号に基づいて、駆動輪を制御信号に応じた回転方向及び回転速度で駆動する。
【0042】
また、駆動部12は、支持部3に対しても、直接的又は間接的に駆動力を与える。駆動部12により支持部3に駆動力が与えられると、支持部3が昇降して支持部3の高さが変化する。本開示でいう「高さ」は、上下方向における、移動面200から支持部3の上面までの長さである。駆動部12は、例えば、電動機(モータ)を含み、ギアボックス及びベルト等を介して、電動機で発生する駆動力を間接的に支持部3に与える。駆動部12は、処理部13から入力される制御信号に基づいて、支持部3を昇降させる。ここで、駆動部12は、本体部2(駆動輪)と支持部3とを個別に駆動する。
【0043】
処理部13は、検知部11、駆動部12、ユーザインタフェース14及び第2インタフェース15を制御する。本実施形態では、処理部13は、1以上のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムを、コンピュータシステムのプロセッサが実行することにより、処理部13の機能が実現される。プログラムは、メモリに記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0044】
ユーザインタフェース14は、ユーザ(作業員)の操作を受け付けたり、ユーザに情報を提示したりする装置である。本実施形態では、ユーザインタフェース14は、タッチパネルディスプレイを含んでいる。したがって、タッチパネルディスプレイにて、ユーザの操作を受け付ける機能と、ユーザに情報を表示(提示)する機能と、の両方が実現される。タッチパネルディスプレイは、例えば液晶ディスプレイ、又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等を含んでいる。本実施形態では、ユーザがユーザインタフェース14を操作することにより、搬送装置1に直接的に、搬送指令を与えることも可能である。
【0045】
第2インタフェース15は、直接的、又はネットワーク若しくは中継器等を介して間接的に、制御システム4と通信する。制御システム4(第1インタフェース46)と搬送装置1(第2インタフェース15)との間の通信方式としては、無線通信又は有線通信の適宜の通信方式が採用される。本実施形態では一例として、第2インタフェース15は制御システム4(第1インタフェース46)との通信に有線通信を採用する。
【0046】
(2.2)搬送装置
次に、搬送装置1の構成について、図1図3を用いて、より詳細に説明する。
【0047】
搬送装置1は、上述したように、本体部2と、支持部3と、を備えている。本体部2は、駆動輪を有しており、駆動輪により移動面200上を移動する。支持部3は、対象物X1を支持する。この搬送装置1は、支持部3としてのフォーク(爪)を対象物X1に差し込んだ状態で対象物X1を支持する、ハンドリフト型の搬送ロボットである。
【0048】
本体部2は、例えば、施設の床面等からなる平坦な移動面200を自律移動する。ここでは一例として、本体部2は、蓄電池を備え、蓄電池に蓄積された電気エネルギを用いて動作することとする。本実施形態では、本体部2は、支持部3に対象物X1を支持させた状態で移動面200上を移動する。これにより、搬送装置1は、例えば、施設内のある場所に置かれている対象物X1を、施設内の別の場所に搬送することが可能である。
【0049】
本体部2は、例えば金属製である。ただし、本体部2は、金属製に限らず、例えば樹脂製であってもよい。本体部2は、図1及び図3に示すように、前後方向よりも左右方向に長く、かつ左右方向及び前後方向よりも上下方向の寸法が大きい直方体状である。本体部2は、1つ以上の駆動輪と、1つ以上の補助輪と、を有している。駆動輪は、駆動部12からの駆動力を受けて回転可能である。本実施形態では、駆動輪は、例えば上下方向に沿った操舵軸を有する駆動輪である。したがって、本実施形態では、本体部2は、駆動輪及び操舵軸の回転により、移動面200の上を、前、後、左、及び右に移動可能である。また、本実施形態では、本体部2の補助輪は、非駆動輪(従動輪)である。
【0050】
支持部3は、例えば金属製である。ただし、支持部3は、金属製に限らず、例えば樹脂製であってもよい。本実施形態では、支持部3は一対である。一対の支持部3は、図3に示すように、いずれも前後方向に長い矩形状の板であり、本体部2の後面から後向きに突出している。また、一対の支持部3は、左右方向に間隔を空けて配置されている。
【0051】
一対の支持部3は、後述する対象物X1に形成された一対の差込口X11に差し込み可能に構成されている。本実施形態では、一対の支持部3の各々の長さ(前後方向の長さ)は、対象物X1の前後方向の長さよりも短くなっている。したがって、一対の支持部3が対象物X1に差し込まれた状態においては、一対の支持部3の各々の先端(後端)は、対象物X1の内側に位置することになる。一対の支持部3の各々の後端には、車輪31が取り付けられている。また、本実施形態では、支持部3の車輪31は、非駆動輪(従動輪)である。
【0052】
本実施形態では、一対の車輪31の中間位置付近に、後述する回転中心P1(図6A参照)を有する。回転中心は、本体部2が旋回する際の、搬送装置1の回転の中心となる仮想点である。つまり、本体部2は、一対の支持部3の先端(後端)付近に設定された回転中心P1の周囲を旋回することにより、搬送装置1は回転中心P1を中心に回転する。本体部2が回転中心P1の周囲を旋回する際に、回転中心P1の位置は殆ど変化しない。
【0053】
支持部3は、駆動部12により、本体部2に対して昇降可能である。本実施形態では、支持部3は、第1高さ及び第2高さの少なくとも2段階の高さに位置し得る。つまり、支持部3が昇降することで、支持部3の高さは少なくとも2段階で変化可能である。図3では、支持部3が第1高さにある状態を示しており、第2高さは第1高さよりも高い。第1高さは、支持部3が対象物X1に差し込まれるときの高さである。第2高さは、支持部3が対象物X1を支持する高さである。つまり、第1高さにある支持部3は、移動面200に接している状態の対象物X1に差し込み可能である。また、第2高さにある支持部3は、対象物X1を移動面200から浮かせた状態で支持可能である。
【0054】
したがって、第1高さで対象物X1に差し込まれた支持部3を、駆動部12にて、第2高さまで駆動することにより、支持部3にて対象物X1を持ち上げることができる。そのため、搬送装置1は、対象物X1に差し込まれた支持部3で対象物X1を移動面200から浮かせた状態で支持しつつ、本体部2で移動面200上を移動することにより、対象物X1を搬送することが可能である。
【0055】
本実施形態では、検知部11は、図1及び図3に示すように、第1センサ111と、第2センサ112と、を有している。第1センサ111及び第2センサ112は、いずれもLiDARである。第1センサ111は、本体部2の後部に設けられており、本体部2の後方の状況を主として検知するために用いられる。第2センサ112は、本体部2の前部に設けられており、本体部2の前方の状況を主として検知するために用いられる。
【0056】
ここにおいて、第1センサ111及び第2センサ112は、いずれも同一の高さに位置する物体を検知する2D-LiDARである。つまり、第1センサ111は、第1センサ111と同一の水平面内に位置する物体を検知し、第2センサ112は、第2センサ112と同一の水平面内に位置する物体を検知する。第1センサ111及び第2センサ112は、対象物X1の基準面X12の検知に用いられるため、少なくとも基準面X12とは同じ高さに配置されている。言い換えれば、検知部11は、鉛直方向において基準面X12と同じ高さに配置されている。
【0057】
また、搬送装置1は、上記以外の構成、例えば、蓄電池の充電回路等を適宜備えている。
【0058】
(2.3)対象物
次に、対象物X1の構成について、図1及び図4A図5Bを用いて、より詳細に説明する。ここでは、本実施形態に係る搬送方法に対象物X1としてパレットが用いられる場合を例示する。
【0059】
本実施形態では、対象物X1は、図1に示すように、例えば樹脂製の平パレットである。対象物X1は、直方体状のパレット本体X10を有している。図1の例では、パレット本体X10の上面及び下面は、正方形状である。つまり、パレット本体X10は、平面視において正方形状である。パレット本体X10の上面及び下面は、長方形状であってもよい。パレット本体X10の厚さ方向(上下方向)の寸法は、幅方向(左右方向)の寸法よりも小さい。パレット本体X10の上面には、荷物が積載可能である。つまり、搬送装置1は、搬送時においては、荷物が積載されていない対象物X1、又は荷物が積載された対象物X1を支持部3に支持させた状態で、移動面200上を移動することになる。これにより、搬送装置1は、対象物X1単体で、又は荷物ごと、対象物X1を搬送することが可能になる。
【0060】
対象物X1は、4つの外側面X101,X102,X103,X104を有している。これら4つの外側面X101,X102,X103,X104は、それぞれ鉛直方向に沿う面であって、互いに異なる向きを向いた面である。本実施形態では、パレット本体X10の4つの側面(前面、後面、左面及び右面)が、4つの外側面X101,X102,X103,X104となる。
【0061】
4つの外側面X101,X102,X103,X104には、それぞれ一対の矩形状の差込口X11が設けられている。各差込口X11は、側壁を厚さ方向(前後方向又は左右方向)に貫通しており、搬送装置1の支持部3を差し込み可能となっている。図1に示す例では、搬送装置1の一対の支持部3は、本体部2を後進させることにより、パレット本体X10の外側面X101(前面)にある一対の差込口X11に差し込まれる。
【0062】
また、4つの外側面X101,X102,X103,X104の各々は、中央桟部X13と、一対の側方桟部X14と、を含んでいる。中央桟部X13は、各外側面X101,X102,X103,X104における水平方向の中央に位置する。一対の側方桟部X14は、各外側面X101,X102,X103,X104における中央桟部X13の水平方向の両側に位置する。例えば、外側面X101(前面)であれば、中央桟部X13の左右方向の両側に一対の側方桟部X14が位置する。中央桟部X13と一対の側方桟部X14とは、一定の間隔を空けて水平方向に並んでいる。そして、中央桟部X13と一対の側方桟部X14との間に生じる隙間が、一対の差込口X11として機能する。言い換えれば、各外側面X101,X102,X103,X104において、一対の側方桟部X14の間に形成される1つの開口部を、中央桟部X13で仕切ることにより、中央桟部X13の両側に一対の差込口X11が形成される。したがって、搬送装置1の一対の支持部3は、各外側面X101,X102,X103,X104における中央桟部X13と一対の側方桟部X14との間を通して、対象物X1に差し込まれることになる。
【0063】
ここにおいて、対象物X1は、基準面X12を有している。基準面X12は、搬送装置1の検知部11にて対象物X1を検知する際に、基準とされる面である。本実施形態では、対象物X1は、平パレットであるので、差込口X11が設けられた、4つの外側面X101,X102,X103,X104のうちの少なくとも1面が基準面X12となる。つまり、本実施形態では、対象物X1において、搬送装置1の支持部3の進入面となる外側面X101,X102,X103,X104のうちの少なくとも1面が、基準面X12として機能する。
【0064】
以下の説明では、特に断りのない限り、図1及び図4Aに示すように、搬送装置1の支持部3の進入面となる4つの外側面X101,X102,X103,X104のうち、前方を向いた外側面X101(前面)のみが基準面X12である対象物X1を想定する。言い換えれば、4つの外側面X101,X102,X103,X104は、基準面X12である面(外側面X101)と、基準面X12ではない面(外側面X102,X103,X104)と、を含んでいる。
【0065】
ここで、対象物X1の基準面X12(外側面X101)には、図4Aに示すように、マーカM1が付されている。マーカM1は、搬送装置1の検知部11にて対象物X1を検知する際に、基準面X12の中でも特に目印とされる部位である。本開示でいう「マーカM1を付す」とは、基準面X12にマーカM1を配置するための種々の態様を含む。例えば、マーカM1が、基準面X12に貼り付けられている態様、印刷又は塗装等により基準面X12に直接的に付されている態様、及び対象物X1の基準面X12と一体成形される態様等が、「マーカM1を付す」に含まれる。詳しくは「(3.1)搬送準備」の欄で説明するが、搬送装置1の検知部11は、少なくとも対象物X1の基準面X12に付されたマーカM1までの距離を距離情報として検知する。
【0066】
マーカM1は、対象物X1の基準面X12におけるマーカM1以外の部位に比べて光、音波又は電磁波の少なくとも1つの反射率が高い。本実施形態では、検知部11(第1センサ111及び第2センサ112)は、上述したように、光(レーザ光)を用いて対象物X1までの距離を測定するLiDARである。そのため、マーカM1は、対象物X1の基準面X12におけるマーカM1以外の部位に比べて少なくとも光の反射率が高い、光反射部材である。言い換えれば、マーカM1の光の反射率は、パレット本体X10の光の反射率よりも高い。特に、マーカM1は、外部から入射した光を、比較的広い入射角にわたって、入射光の光路に沿った方向へ反射する、再帰性反射の性質を有することが好ましい。マーカM1が再帰性反射を行うことで、検知部11が基準面X12の法線方向に無くても、検知部11にてマーカM1での反射光を捉えやすくなる。
【0067】
ただし、マーカM1は光反射性を有する構成に限らず、検知部11がソナーセンサであれば、マーカM1は少なくとも音の反射率が高いことが好ましく、検知部11がレーダであれば、マーカM1は少なくとも電磁波(電波)の反射率が高いことが好ましい。マーカM1は、光、音波及び電磁波の2つ以上について高い反射率を有していてもよい。
【0068】
以下の説明では、特に断りのない限り、図1及び図4Aに示すように、マーカM1は、対象物X1の基準面X12に貼り付けられていることとする。本開示でいう「貼り付けられている」は、例えば、粘着、接着、ねじ留め、かしめ又は溶着等の適宜の方法により、対象物X1とは別体のマーカM1が基準面X12に貼り付けられている態様を含む。すなわち、図4Aの例では、矩形状の反射板(光反射板)からなるマーカM1が、対象物X1の基準面X12に貼り付けられている。
【0069】
さらに、対象物X1の基準面X12は、外側面X101であるので、上述したように、中央桟部X13と、中央桟部X13の水平方向の両側に位置する一対の側方桟部X14と、を含んでいる。ここで、マーカM1は、これら中央桟部X13及び一対の側方桟部X14のうち、少なくとも中央桟部X13に付されていることが好ましい。つまり、マーカM1は、基準面X12のうち、少なくとも水平方向の中央付近に配置されていることが好ましい。以下の説明では、特に断りのない限り、図1及び図4Aに示すように、中央桟部X13及び一対の側方桟部X14のうち、中央桟部X13のみにマーカM1が付されていることとする。
【0070】
図4B及び図4Cは、対象物X1の他の構成例を示す斜視図である。
【0071】
図4Bの例では、中央桟部X13及び一対の側方桟部X14の各々に対して、マーカM1,M2が付されている。つまり、中央桟部X13にはマーカM1が付されており、一対の側方桟部X14の各々にはマーカM2が付されている。ここで、検知部11の検知結果において、中央桟部X13に付されたマーカM1と、各側方桟部X14に付されたマーカM2とを区別できるように、マーカM1とマーカM2とでは、サイズ(幅、長さ等)、形状又は反射率の少なくとも1つが異なることが好ましい。図4Bの例では、マーカM1とマーカM2とで幅が異なっており、マーカM1の幅はマーカM2の幅よりも広い。さらに別の例として、中央桟部X13と一方の側方桟部X14にのみ、マーカが付されていてもよい。
【0072】
図4Cの例では、マーカM1は、三次元形状を含んでいる。すなわち、図4Cの対象物X1に付されたマーカM1は、二次元形状(平面形状)のみではなく、少なくとも一部に立体的な形状を含んでいる。より詳細には、基準面X12に付されたマーカM1は、基準面X12に対して凸形状と凹形状との少なくとも一方を含んでいる。図4Cの例では、マーカM1は、鉛直方向(上下方向)に沿う長さを有する複数本のリブ(凸形状)が、水平方向(左右方向)に等間隔で並んだ三次元形状を含んでいる。この例に限らず、例えば、複数本のリブが鉛直方向に並んでいてもよいし、リブに代えて溝(凹形状)が形成されてもよい。このように三次元形状を含むマーカM1は、例えば、対象物X1(パレット本体X10)の成形(樹脂成形)時に、対象物X1の基準面X12を含む部位と一体成形される態様で、基準面X12に付すことが可能である。
【0073】
また、図5A及び図5Bは、対象物X1の更に他の構成例を示す平面図である。
【0074】
図5Aの例では、対象物X1において、搬送装置1の支持部3の進入面となる4つの外側面X101,X102,X103,X104の各々が、基準面X12である。言い換えれば、対象物X1は、全周面(前面、後面、左面及び右面)にわたって、基準面X12を有している。図5Aの例では、対象物X1は、平面視において4つの外側面X101,X102,X103,X104を4辺とする四角形状である。この四角形は、4辺の長さが同一となる正方形状である。ここでは、基準面X12となる4つの外側面X101,X102,X103,X104の全てに対して、マーカM1が付されている。
【0075】
このように4辺の全てが基準面X12である対象物X1によれば、対象物X1の四方から、搬送装置1の支持部3を差し込み可能となる。したがって、搬送装置1の支持部3を対象物X1に差し込む際に、対象物X1の四方のいずれの方向からでも、搬送装置1を対象物X1に接近させることができ、搬送装置1の移動経路をシンプルにできる。
【0076】
図5Bの例では、対象物X1において、搬送装置1の支持部3の進入面となる4つの外側面X101,X102,X103,X104のうち、前方を向いた外側面X101(前面)及び後方を向いた外側面X102(後面)のみが基準面X12である。言い換えれば、4つの外側面X101,X102,X103,X104は、基準面X12である面(外側面X101,X102)と、基準面X12ではない面(外側面X103,X104)と、を含んでいる。図5Bの例では、対象物X1は、平面視において4つの外側面X101,X102,X103,X104を4辺とする四角形状である。この四角形は、左右方向よりも前後方向に長い長方形状である。そのため、図5Bの例では、4つの外側面X101,X102,X103,X104のうち四角形(長方形)の短辺となる2つの外側面X101,X102が、基準面X12である。ここでは、基準面X12となる4つの外側面X101,X102に対してのみ、マーカM1が付されている。
【0077】
このように短辺のみが基準面X12である対象物X1によれば、対象物X1の短辺側から、搬送装置1の支持部3を差し込み可能となる。したがって、搬送装置1の支持部3を対象物X1に差し込んだ状態で、左右方向における本体部2からの対象物X1の突出量を小さく抑えることができ、例えば、比較的細い通路であっても、搬送装置1にて対象物X1を搬送可能となる。4つの外側面X101,X102,X103,X104のうち四角形(長方形)の短辺となる1つの外側面X101(又はX102)のみが、基準面X12であってもよい。
【0078】
(3)動作
以下、本実施形態に係る搬送システム100の動作、つまり本実施形態に係る搬送方法について説明する。本実施形態に係る搬送方法は、対象物X1を搬送装置1にて支持するまでの「搬送準備」の段階と、搬送装置1にて支持した対象物X1を搬送する「搬送」の段階と、に大別できる。以下では、「搬送準備」に係る搬送システム100の動作(搬送方法)と、「搬送」を含めた搬送システム100の全体動作(搬送方法)とに分けて説明する。
【0079】
(3.1)搬送準備
まず、「搬送準備」に係る搬送システム100の動作(搬送方法)について、図6A図7Cを参照して説明する。図6A図7Cは、搬送装置1及び対象物X1を示す模式的な平面図である。図6A図7Cでは、回転中心P1(仮想点)を原点として、後方に延びるX軸、及び右方に延びるY軸を図示しているが、X軸及びY軸は仮想軸であって、実体を伴わない。さらに、図6A図7Cでは、検知部11にてレーザ光の反射が検出された「反射点」を、対象物X1に重ねて図示しているが、これらの反射点は仮想点であって、実体を伴わない。
【0080】
搬送準備においては、対象物X1に支持部3をスムーズに差し込むために、搬送装置1に対する対象物X1の相対的な位置、及び搬送装置1に対する対象物X1の基準面X12の相対的な向きを特定する、特定処理が行われる。図6A図6Cは、特定処理の説明図である。
【0081】
ここでは、図6Aに示すように、基準面X12を搬送装置1側に向けた対象物X1が搬送装置1の後方に存在し、かつ対象物X1の基準面X12が、Y軸に対して傾斜角θ1(図6C参照)だけ傾斜している場合を想定する。この場合において、検知部11は、対象物X1の基準面X12上に、複数の反射点を検知する。これら複数の反射点は、基本的には、中央桟部X13、及び一対の側方桟部X14上に集中する。
【0082】
特定処理においては、特定部42は、このような複数の反射点を含む検知部11の検知結果について、クラスタリングの処理を行う。すなわち、特定部42は、複数の反射点の中から1つの反射点をランダムに選択し、選択した1つの反射点から所定距離内に位置する1つ以上の反射点を、図6Bに示すように、同一のクラスタに割り当てる。クラスタリングに用いる所定距離は、中央桟部X13、及び側方桟部X14の各々の幅寸法、及び検知部11の分解能等に基づいて定められる。これにより、中央桟部X13上の複数の反射点は、第1クラスタC1に割り当てられ、一対の側方桟部X14上の複数の反射点は、それぞれ第2クラスタC2及び第3クラスタC3に割り当てられる。
【0083】
ここで、中央桟部X13にはマーカM1が付されているため、一対の側方桟部X14での反射光の強度に比較すると、中央桟部X13での反射光の強度は高くなる。そのため、各反射点における反射光の強度を、所定の閾値と比較して二値化することにより、中央桟部X13上の反射点と、側方桟部X14上の反射点とは区別可能である。よって、特定部42では、第1クラスタC1と、第2クラスタC2及び第3クラスタC3と、を区別可能である。そして、特定部42は、第1クラスタC1の重心位置を算出することで、X-Y座標系における中央桟部X13の中心位置、つまり基準面X12の中心位置を特定可能である。これにより、特定部42は、搬送装置1に対する対象物X1の相対的な位置を特定することができる。
【0084】
さらに、特定部42は、図6Cに示すように、第2クラスタC2及び第3クラスタC3に含まれる複数の反射点に対して、例えば、最小二乗法を採用することで、これら複数の反射点に沿った近似直線L1を算出する。このようにして算出される近似直線L1は、対象物X1の基準面X12に相当するので、Y軸に対する近似直線L1の傾斜角θ1は、Y軸に対する基準面X12の傾斜角θ1に相当する。これにより、特定部42は、搬送装置1に対する対象物X1の基準面X12の相対的な向き(傾斜角θ1)を特定することができる。ここで、近似直線L1の算出に、第2クラスタC2及び第3クラスタC3に加えて又は代えて、第1クラスタC1の反射点を用いてもよい。ただし、マーカM1が付された中央桟部X13と、一対の側方桟部X14とでは、そもそも反射率が異なるため、反射率が同一である第2クラスタC2及び第3クラスタC3の反射点のみから、近似直線L1を算出することが好ましい。
【0085】
以上説明したような特定処理によれば、検知部11の検知結果に基づいて、搬送装置1に対する対象物X1の相対的な位置と、搬送装置1に対する対象物X1の基準面X12の相対的な向きとの両方を特定することができる。
【0086】
すなわち、特定処理においては、特定部42は、複数の反射点を含む検知結果に基づいて、クラスタリングを行う。クラスタリングでは、特定部42は、複数の反射点のうちの1つの反射点から所定距離内に位置する1つ以上の反射点を同一のクラスタC1,C2,C3に割り当てる。特定部42は、クラスタC1,C2,C3単位で、少なくとも搬送装置1に対する対象物X1の相対的な位置を特定する。
【0087】
次に、複数の物体の中から、対象物X1となる1つの物体を選択する、選択処理を実行する。図7A図7Cは、選択処理の説明図である。
【0088】
ここでは、図7Aに示すように、それぞれ基準面X12を搬送装置1側に向けた複数の物体X1a,X1b,X1cが搬送装置1の後方に存在し、かつ各基準面X12が、Y軸に対して傾斜している場合を想定する。この場合において、検知部11は、複数の物体X1a,X1b,X1cの基準面X12上に、複数の反射点を検知する。これら複数の反射点は、基本的には、中央桟部X13、及び一対の側方桟部X14上に集中する。
【0089】
選択処理においては、選択部43は、このような複数の反射点を含む検知部11の検知結果について、各反射点における反射光の強度を、所定の閾値と比較して二値化することにより、中央桟部X13上の反射点と、側方桟部X14上の反射点とを区別する。これにより、図7Bに示すように、中央桟部X13上の複数の反射点のみが抽出される。
【0090】
図7Bの状態において、選択部43は、クラスタリングの処理を行う。すなわち、選択部43は、複数の反射点の中から1つの反射点をランダムに選択し、選択した1つの反射点から所定距離内に位置する1つ以上の反射点を、図7Cに示すように、同一のクラスタに割り当てる。クラスタリングに用いる所定距離は、中央桟部X13の幅寸法、及び検知部11の分解能等に基づいて定められる。これにより、複数の物体X1a,X1b,X1cにおける複数の反射点は、それぞれクラスタC11,C12,C13に割り当てられる。
【0091】
そして、選択部43は、各クラスタC11,C12,C13の重心位置を算出することで、X-Y座標系における中央桟部X13の中心位置、つまり基準面X12の中心位置を特定可能である。これにより、選択部43は、搬送装置1に対する複数の物体X1a,X1b,X1cの相対的な位置を特定することができる。その結果、選択部43では、搬送装置1の後方に複数の物体X1a,X1b,X1cが存在することを認識でき、これら複数の物体X1a,X1b,X1cの中から、対象物X1となる1つの物体を任意に選択できる。
【0092】
すなわち、選択処理においては、選択部43は、複数の反射点を含む検知結果に基づいて、クラスタリングを行う。クラスタリングでは、選択部43は、複数の反射点のうちの1つの反射点から所定距離内に位置する1つ以上の反射点を、同一のクラスタC11,C12,C13に割り当てる。選択部43は、クラスタC11,C12,C13の重心位置を算出することで、少なくとも搬送装置1に対する複数の物体X1a,X1b,X1cの相対的な位置を特定し、複数の物体X1a,X1b,X1cの中から対象物X1となる1つの物体を選択する。
【0093】
また、本実施形態では、搬送準備において、検知部11の検知結果に基づいて、対象物X1の属性に関する属性情報を識別する識別処理を実行することも可能である。具体的には、識別部44は、例えば、マーカM1に含まれる文字、数字、記号又は模様等で表される識別子を、検知部11の検知結果から認識する。さらに、識別部44は、認識した識別子に基づいて、対象物X1の大きさ、重量、又は対象物X1の最大積載重量等の属性情報を識別する。このとき、識別部44は、例えば、メモリ(制御処理部40のメモリ)に記憶してある情報を参照し、識別子に対応する属性情報を特定する。
【0094】
(3.2)全体動作
次に、「搬送」を含めた搬送システム100の全体動作(搬送方法)について、図8A図10を参照して説明する。図8A図9Dは、搬送装置1及び対象物X1を示す模式的な平面図である。図8A図9Dでは、回転中心P1、目標ノードP2(目標地点)、近似直線L1、移動経路L10、法線L11,L12等を図示しているが、これらの点及び線は仮想点又は仮想線であって、実体を伴わない。図10のフローチャートにおける「S1」~「S11」の処理が、対象物X1を搬送装置1にて支持するまでの「搬送準備」に相当する。
【0095】
ここでは、図8Aに示すように、パレット置場Sp1に置かれている対象物X1を、搬送装置1にて搬送する場合を例示する。ここで、対象物X1の基準面X12は、パレット置場Sp1の外周縁に対して傾斜角θ1だけ傾斜している。さらに、パレット置場Sp1は、搬送装置1の移動経路L10の側方(移動経路L10上を前進する搬送装置1から見て右手側)に位置する。さらに、パレット置場Sp1の外周縁のうち移動経路L10側の辺は、移動経路L10と平行である。平面視におけるパレット置場Sp1の中心から移動経路L10に向けて延びる法線L11と、移動経路L10と、の交点には、目標ノードP2が設定されている。つまり、目標ノードP2は、パレット置場Sp1の正面であって、パレット置場Sp1と移動経路L10との間隔D1の分だけ、パレット置場Sp1から離れた位置に設定されている。
【0096】
まず、制御システム4は、上位システム5からの指令(搬送指令)及び電子地図に従って、目標ノードP2に向けて搬送装置1を移動させる(図10のS1)。このとき、図8Aに示すように、搬送装置1は、移動経路L10上を目標ノードP2に向けて前進する。
【0097】
搬送装置1は、移動経路L10上を移動しながら、検知部11にて対象物X1の有無を検知する(S2)。検知部11にて対象物X1が無いと判断されると(S2:No)、搬送装置1は、目標ノードP2に向けての移動(S1)を継続する。そして、図8Bに示すように、検知部11(第2センサ112)にて対象物X1の存在を捉えると、制御システム4は、対象物X1が有ると判断し(S2:Yes)、目標ノードP2に到着したか否かを判断する(S3)。ただし、搬送装置1が移動中(走行中)であれば、対象物X1が有ると判断しても、搬送装置1に対する対象物X1の相対的な位置、及び搬送装置1に対する対象物X1の基準面X12の相対的な向きとの両方を特定する特定処理は開始しない。目標ノードP2に到着していなければ(S3:No)、処理S2に戻る。
【0098】
図8Cに示すように、回転中心P1が目標ノードP2上にくると、搬送装置1が目標ノードP2に到着したと判断し(S3:Yes)、制御システム4は、搬送装置1を停止させる。このとき、制御システム4の動作モードは搬送モードに移行する(S4)。搬送モードは、制御システム4が、上位システム5からの指令を受けずに単独で、搬送装置1を制御可能な動作モードである。搬送モードに移行した制御システム4は、搬送装置1を目標ノードP2上に停止させたままで、取得処理(S5)、及び特定処理(S6)を実行する。図8Cの例では、検知部11(第1センサ111)は対象物X1を捉えているので、取得処理では、取得部41は、対象物X1に関する検知部11の検知結果を取得する。特定処理では、「(3.1)搬送準備」の欄で説明したように、特定部42は、検知部11の検知結果に基づいて、搬送装置1に対する対象物X1の相対的な位置と、搬送装置1に対する対象物X1の基準面X12の相対的な向き(傾斜角θ1)との両方を特定する。
【0099】
その後、制御システム4は、基準面X12が搬送装置1に対して傾斜しているか否かを判断する(S7)。特定処理で算出された近似直線L1の傾斜角θ1(図8A参照)が0(ゼロ)でなければ(θ1≠0)、制御システム4は、基準面X12が傾斜していると判断し(S7:Yes)、搬送装置1を基準面X12の法線L12上に移動させる(S8)。つまり、図8Dに示すように、制御システム4は、傾斜角θ1から特定される、基準面X12の法線L12と移動経路L10との交点まで、搬送装置1を移動(後退)させる。図8Dに示すように、回転中心P1が基準面X12の法線L12上までくると、制御システム4は、搬送装置1を停止させる。
【0100】
回転中心P1が基準面X12の法線L12上に位置する状態で、図9Aに示すように、制御システム4は、搬送装置1を旋回させる(S9)。このとき、搬送装置1は、検知部11(第1センサ111)ので対象物X1の検知を継続しつつ、回転中心P1を中心として本体部2を旋回させる。ここでは、搬送装置1は、90度に傾斜角θ1を加えた角度(θ1+90度)だけ、反時計回りに旋回する。その結果、図9Bに示すように、一対の支持部3が基準面X12の法線L12に平行となる位置まで、搬送装置1が移動する。
【0101】
一方で、特定処理で算出された近似直線L1の傾斜角θ1(図8A参照)が0(ゼロ)であれば(θ1=0)、制御システム4は、基準面X12が傾斜していないと判断する(S7:No)。この場合、制御システム4は、搬送装置1を基準面X12の法線L12上に移動させる処理(S8)をスキップして、搬送装置1を旋回させる(S9)。このとき、搬送装置1は、90度だけ、反時計回りに旋回する。
【0102】
すなわち、制御システム4は、特定処理で特定された情報に基づいて、基準面X12の法線上に搬送装置1の回転中心P1が位置するように搬送装置1を移動させる。そして、制御システム4は、基準面X12の法線上に搬送装置1の回転中心P1が位置する状態で、搬送装置1に対する対象物X1の基準面X12の相対的な向き(傾斜角θ1)に応じて、回転中心P1を中心として搬送装置1を旋回させる。
【0103】
搬送装置1の旋回が終わると、制御システム4は、図9Cに示すように、搬送装置1を対象物X1に向けて後退させ、支持部3を対象物X1に差し込む(S10)。図9Dに示すように、支持部3が対象物X1に差し込まれると、制御システム4は、搬送装置1を停止させる。この状態で、制御システム4は、支持部3を第1高さから第2高さまで上昇させることにより、支持部3にて対象物X1をリフトアップするように、搬送装置1を制御する(S11)。
【0104】
これにより、搬送装置1は支持部3で対象物X1を持ち上げた状態となる。そして、搬送装置1は、対象物X1に差し込まれた支持部3で対象物X1を移動面200から浮かせた状態で支持しつつ、本体部2で移動面200上を移動することにより、対象物X1を搬送する(S12)。
【0105】
以上説明した一連の動作によれば、搬送システム100は、一度の切り返しのみで、対象物X1の差込口X11に支持部3をスムーズに差し込むことが可能である。すなわち、搬送準備の特定処理にて、搬送装置1に対する対象物X1の相対的な位置と、搬送装置1に対する対象物X1の基準面X12の相対的な向きとの両方が特定されるので、対象物X1の差込口X11に支持部3をスムーズに差し込むことが可能である。その結果、上記搬送方法によれば、対象物X1の搬送に係る一連の処理をスムーズに進めやすい、という利点がある。
【0106】
(4)変形例
実施形態1は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態1は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、実施形態1に係る搬送方法及び搬送システム100と同様の機能は、コンピュータプログラム、又はコンピュータプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化されてもよい。一態様に係るプログラムは、1以上のプロセッサに上記搬送方法を実行させるためのプログラムである。
【0107】
以下、実施形態1の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0108】
本開示における搬送システム100において、制御システム4及び上位システム5等は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における制御システム4及び上位システム5としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。更に、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0109】
また、制御システム4及び上位システム5における複数の機能が、1つの筐体内に集約されていることは、搬送システム100に必須の構成ではない。つまり、制御システム4及び上位システム5の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、制御システム4及び上位システム5の少なくとも一部の機能、例えば、上位システム5の一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0110】
また、搬送装置1は、支持部3としてのフォーク(爪)を対象物X1に差し込んだ状態で対象物X1を支持する、ハンドリフト型の搬送ロボットに限らない。搬送装置1は、例えば、対象物X1の下方に潜り込んで対象物X1を持ち上げることで、対象物X1を支持する低床型の搬送ロボットであってもよい。
【0111】
また、対象物X1についても、平パレットに限らず、例えば、台車、ボックスパレット、ロールボックスパレット、コンテナ、木材又は箱(ケース)等であってもよい。これらの対象物X1であっても、搬送に際して、搬送装置1が対象物X1をスムーズに支持するためには、対象物X1の基準面X12に対して搬送装置1が接近すべき方向等が決まっている。そのため、実施形態1に係る搬送方法を用いて、搬送装置1に対する対象物X1の基準面X12の相対的な向きが特定されることは、対象物X1の搬送に係る一連の処理をスムーズに進めるために有用である。
【0112】
また、マーカM1は、対象物X1の基準面X12におけるマーカM1以外の部位に比べて光、音波又は電磁波の少なくとも1つの反射率が高い構成に限らず、例えば、マーカM1以外の部位に比べて光、音波又は電磁波の少なくとも1つの反射率が低い構成でもよい。その他、マーカM1は、反射率に関わらず、文字、数字、記号、模様、図形又はテクスチャであってもよい。あるいは、マーカM1がLED又は蛍光体等を含むことで、マーカM1自らが発光してもよい。
【0113】
また、基準面X12は、搬送装置1の支持部3の進入面となる外側面X101,X102,X103,X104に限らない。すなわち、対象物X1のうちの差込口X11が形成されていない外側面が基準面X12であってもよい。
【0114】
また、基準面X12は、対象物X1の外側面X101,X102,X103,X104に限らず、例えば、対象物X1の内側面、又は上面等であってもよい。対象物X1の内側面が基準面X12である場合、例えば、支持部3の先端部に配置された検知部11にて、基準面X12を検知可能である。
【0115】
また、マーカM1が付される中央桟部X13は、1本に限らず、基準面X12において、一対の側方桟部X14の間に複数本の中央桟部X13がある場合に、これら複数本の中央桟部X13の各々にマーカM1が付されていてもよい。さらに、一対の側方桟部X14は、中央桟部X13の水平方向の両側にあればよく、一対の側方桟部X14が基準面X12の水平方向の端部に位置することは必須ではない。
【0116】
また、検知部11は、LiDAR、ソナーセンサ及びレーダに限らず、例えば、ステレオカメラ又はモーションステレオカメラ等のセンサを含んでいてもよい。
【0117】
また、上位システム5は、搬送システム100に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。この態様では、制御システム4が単独で搬送装置1を制御する。
【0118】
(実施形態2)
本実施形態に係る搬送システム100Aは、図11に示すように、制御システム4Aと搬送装置1Aとが別体である点で、実施形態1に係る搬送システム100とは相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
【0119】
本実施形態では、制御システム4Aは、第1インタフェース46(図2参照)に代えて、第1通信部47を有している。搬送装置1Aは、第2インタフェース15(図2参照)に代えて、第2通信部16を有している。第1通信部47及び第2通信部16は、直接的、又はネットワーク若しくは中継器等を介して間接的に、通信する。第1通信部47と第2通信部16との間の通信方式としては、無線通信又は有線通信の適宜の通信方式が採用される。本実施形態では一例として、第1通信部47及び第2通信部16は、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)又は免許を必要としない小電力無線(特定小電力無線)等の規格に準拠した、電波を通信媒体として用いる無線通信を採用する。
【0120】
制御システム4Aは、搬送装置1Aに搭載されるのではなく、定位置に設置されている。つまり、搬送装置1Aの筐体には、搬送装置1Aとしての機能を実現するための構成要素のみが収容されている。制御システム4Aは、搬送装置1Aを遠隔で制御することができる。
【0121】
また、制御システム4Aは、複数台の搬送装置1Aを遠隔で制御してもよい。この場合、制御システム4Aは、第1通信部47にて複数台の搬送装置1Aの第2通信部16と通信する。
【0122】
実施形態2の変形例として、制御システム4Aは、上位システム5と一体化されていてもよい。つまり、1つの筐体内に、制御システム4Aの構成要素と、上位システム5の構成要素と、が収容されていてもよい。
【0123】
実施形態2で説明した種々の構成(変形例を含む)は、実施形態1で説明した種々の構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて採用可能である。
【0124】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係る搬送方法は、検知部(11)を有する搬送装置(1,1A)にて対象物(X1)を搬送する搬送方法であって、取得処理と、特定処理と、を有する。取得処理は、検知部(11)の検知結果を取得する処理である。検知部(11)の検知結果は、搬送装置(1,1A)と対象物(X1)との間の距離に関連する距離情報を含む。特定処理は、検知結果に基づいて、搬送装置(1,1A)に対する対象物(X1)の相対的な位置と、搬送装置(1,1A)に対する対象物(X1)の基準面(X12)の相対的な向きとの両方を特定する処理である。
【0125】
この態様によれば、検知部(11)の検知結果に基づいて、搬送装置(1,1A)に対する対象物(X1)の相対的な位置だけでなく、搬送装置(1,1A)に対する対象物(X1)の基準面(X12)の相対的な向きについても、特定される。よって、上記搬送方法によれば、対象物(X1)の搬送に係る一連の処理をスムーズに進めやすい、という利点がある。
【0126】
第2の態様に係る搬送方法では、第1の態様において、検知部(11)は、対象物(X1)の基準面(X12)に付されたマーカ(M1,M2)までの距離を距離情報として検知する。
【0127】
この態様によれば、マーカ(M1,M2)が付されることにより、検知部(11)にて基準面(X12)を検知しやすくなる。
【0128】
第3の態様に係る搬送方法では、第2の態様において、マーカ(M1,M2)は、対象物(X1)の基準面(X12)におけるマーカ(M1,M2)以外の部位に比べて光、音波又は電磁波の少なくとも1つの反射率が高い。
【0129】
この態様によれば、光、音波又は電磁波の少なくとも1つがマーカ(M1,M2)で反射されやすくなり、光、音波又は電磁波の少なくとも1つを用いた検知部(11)にて基準面(X12)を検知しやすくなる。
【0130】
第4の態様に係る搬送方法では、第2又は3の態様において、対象物(X1)の基準面(X12)は、中央桟部(X13)と、中央桟部(X13)の水平方向の両側に位置する一対の側方桟部(X14)と、を含む。マーカ(M1,M2)は、少なくとも中央桟部(X13)に付されている。
【0131】
この態様によれば、検知部(11)にて中央桟部(X13)の位置を検知しやすくなる。
【0132】
第5の態様に係る搬送方法では、第2~4のいずれかの態様において、マーカ(M1,M2)は、三次元形状を含んでいる。
【0133】
この態様によれば、例えば、対象物(X1)が樹脂製である場合に、マーカ(M1,M2)を基準面(X12)と同時に成形可能になる。
【0134】
第6の態様に係る搬送方法では、第2~5のいずれかの態様において、マーカ(M1,M2)は、対象物(X1)の基準面(X12)に貼り付けられている。
【0135】
この態様によれば、例えば、既存の対象物(X1)に対しても、比較的簡単にマーカ(M1,M2)を付すことができる。
【0136】
第7の態様に係る搬送方法では、第1~6のいずれかの態様において、対象物(X1)は、それぞれ鉛直方向に沿う面であって、互いに異なる向きを向いた4つの外側面(X101,X102,X103,X104)を有する。4つの外側面(X101,X102,X103,X104)の各々が基準面(X12)である。
【0137】
この態様によれば、対象物(X1)の四方から、対象物(X1)の基準面(X12)を検知可能となる。
【0138】
第8の態様に係る搬送方法では、第1~6のいずれかの態様において、対象物(X1)は、それぞれ鉛直方向に沿う面であって、互いに異なる向きを向いた4つの外側面(X101,X102,X103,X104)を有する。4つの外側面(X101,X102,X103,X104)は、基準面(X12)である面と、基準面(X12)ではない面と、を含む。
【0139】
この態様によれば、基準面(X12)の向きから、対象物(X1)の向きを特定しやすくなる。
【0140】
第9の態様に係る搬送方法では、第8の態様において、対象物(X1)は、平面視において4つの外側面(X101,X102,X103,X104)を4辺とする四角形状である。4つの外側面(X101,X102,X103,X104)のうち四角形の短辺となる1つ又は2つの外側面が、基準面(X12)である。
【0141】
この態様によれば、例えば、搬送装置(1,1A)が対象物(X1)の短辺側から、対象物(X1)を支持することで、搬送装置(1,1A)の進行方向に直交する方向への対象物(X1)の突出量を小さく抑えることができる。
【0142】
第10の態様に係る搬送方法では、第1~9のいずれかの態様において、検知部(11)は、鉛直方向において基準面(X12)と同じ高さに配置されている。
【0143】
この態様によれば、検知部(11)を基準面(X12)に対して高い位置に配置される場合に比べて、検知部(11)を含む搬送装置(1,1A)全体の高さを低く抑えることが可能である。
【0144】
第11の態様に係る搬送方法は、第1~10のいずれかの態様において、検知結果に基づいて、複数の物体(X1a,X1b,X1c)の中から、対象物(X1)となる1つの物体を選択する選択処理を更に有する。
【0145】
この態様によれば、複数の物体(X1a,X1b,X1c)が比較的近くにある場合であっても、これら複数の物体(X1a,X1b,X1c)の中から、対象物(X1)を1つ選択して搬送することが可能である。
【0146】
第12の態様に係る搬送方法は、第11の態様において、選択処理においては、複数の反射点を含む検知結果に基づいて、クラスタリングを行う。クラスタリングでは、複数の反射点のうちの1つの反射点から所定距離内に位置する1つ以上の反射点を、同一のクラスタ(C11,C12,C13)に割り当てる。クラスタ(C11,C12,C13)の重心位置を算出することで、少なくとも搬送装置(1,1A)に対する複数の物体(X1a,X1b,X1c)の相対的な位置を特定し、複数の物体(X1a,X1b,X1c)の中から対象物(X1)となる1つの物体を選択する。
【0147】
この態様によれば、クラスタリングにより、比較的簡単な処理で、複数の物体(X1a,X1b,X1c)の中から、対象物(X1)を1つ選択して搬送することが可能である。
【0148】
第13の態様に係る搬送方法は、第1~12のいずれかの態様において、特定処理においては、複数の反射点を含む検知結果に基づいて、クラスタリングを行う。クラスタリングでは、複数の反射点のうちの1つの反射点から所定距離内に位置する1つ以上の反射点を同一のクラスタ(C1,C2,C3)に割り当てる。クラスタ(C1,C2,C3)単位で、少なくとも搬送装置(1,1A)に対する対象物(X1)の相対的な位置を特定する。
【0149】
この態様によれば、クラスタリングにより、比較的簡単な処理で、搬送装置(1,1A)に対する対象物(X1)の相対的な位置を特定することが可能である。
【0150】
第14の態様に係る搬送方法は、第1~13のいずれかの態様において、検知結果に基づいて、対象物(X1)の属性に関する属性情報を識別する識別処理を更に有する。
【0151】
この態様によれば、対象物(X1)の属性を識別することが可能である。
【0152】
第15の態様に係る搬送方法は、第1~14のいずれかの態様において、特定処理で特定された情報に基づいて、基準面(X12)の法線上に搬送装置(1,1A)の回転中心(P1)が位置するように搬送装置(1,1A)を移動させる。基準面(X12)の法線上に搬送装置(1,1A)の回転中心(P1)が位置する状態で、搬送装置(1,1A)に対する対象物(X1)の基準面(X12)の相対的な向きに応じて、回転中心(P1)を中心として搬送装置(1,1A)を旋回させる。
【0153】
この態様によれば、基準面(X12)が搬送装置(1,1A)に対して傾斜している場合でも、基準面(X12)の真正面から基準面(X12)と対向する状態に、搬送装置(1,1A)を移動させることができる。
【0154】
第16の態様に係る搬送システム(100,100A)は、検知部(11)を有する搬送装置(1,1A)と、搬送装置(1,1A)を制御する制御システム(4)と、を備える。制御システム(4)は、取得部(41)と、特定部(42)と、を有する。取得部(41)は、検知部(11)の検知結果を取得する。検知部(11)の検知結果は、搬送装置(1,1A)と対象物(X1)との間の距離に関連する距離情報を含む。特定部(42)は、検知結果に基づいて、搬送装置(1,1A)に対する対象物(X1)の相対的な位置と、搬送装置(1,1A)に対する対象物(X1)の基準面(X12)の相対的な向きとの両方を特定する。
【0155】
この態様によれば、検知部(11)の検知結果に基づいて、搬送装置(1,1A)に対する対象物(X1)の相対的な位置だけでなく、搬送装置(1,1A)に対する対象物(X1)の基準面(X12)の相対的な向きについても、特定される。よって、搬送システム(100,100A)によれば、対象物(X1)の搬送に係る一連の処理をスムーズに進めやすい、という利点がある。
【0156】
第17の態様に係る搬送システム(100,100A)では、第16の態様において、検知部(11)は、対象物(X1)の基準面(X12)に付されたマーカ(M1,M2)までの距離を距離情報として検知する。
【0157】
この態様によれば、マーカ(M1,M2)が付されることにより、検知部(11)にて基準面(X12)を検知しやすくなる。
【0158】
第18の態様に係るプログラムは、1以上のプロセッサに、第1~12のいずれかの態様に係る搬送方法を実行させるためのプログラムである。
【0159】
この態様によれば、検知部(11)の検知結果に基づいて、搬送装置(1,1A)に対する対象物(X1)の相対的な位置だけでなく、搬送装置(1,1A)に対する対象物(X1)の基準面(X12)の相対的な向きについても、特定される。よって、上記プログラムによれば、対象物(X1)の搬送に係る一連の処理をスムーズに進めやすい、という利点がある。
【0160】
第19の態様に係るパレットは、第1~15のいずれかの態様に係る搬送方法に対象物(X1)として用いられるパレットである。
【0161】
この態様によれば、検知部(11)の検知結果に基づいて、搬送装置(1,1A)に対する対象物(X1)の相対的な位置だけでなく、搬送装置(1,1A)に対する対象物(X1)の基準面(X12)の相対的な向きについても、特定される。よって、上記パレットによれば、対象物(X1)の搬送に係る一連の処理をスムーズに進めやすい、という利点がある。
【0162】
上記態様に限らず、実施形態1及び実施形態2に係る搬送方法の種々の態様(変形例を含む)は、搬送システム(100,100A)、プログラム又はパレットにて具現化可能である。
【0163】
第2~15の態様に係る構成については、搬送方法に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0164】
11 検知部
1,1A 搬送装置
4 制御システム
41 取得部
42 特定部
M1,M2 マーカ
X1 対象物(パレット)
X1a,X1b,X1c 物体
X12 基準面
X13 中央桟部
X14 側方桟部
X101,X102,X103,X104 外側面
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