(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】毛切断装置及び毛切断システム
(51)【国際特許分類】
A45D 26/00 20060101AFI20230217BHJP
A61B 18/22 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
A45D26/00 G
A61B18/22
(21)【出願番号】P 2019202760
(22)【出願日】2019-11-07
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】春日井 秀紀
(72)【発明者】
【氏名】成田 憲二
【審査官】高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-504931(JP,A)
【文献】特開2002-355320(JP,A)
【文献】登録実用新案第3028988(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 26/00
A61B 18/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部と、前記コア部の少なくとも一部を覆うクラッド部とを有する光導波路を備え、
前記光導波路は、皮膚から突出する毛に光を照射することで前記毛の切断を行う光照射部を有し、
少なくとも前記毛の切断時において、前記光導波路を通る光のパワー密度
であって、前記コア部の断面全域において平均化された平均的なパワー密度が、50kW/cm
2以上である、
毛切断装置。
【請求項2】
前記光導波路を通る光のパワー密度は可変である、
請求項1に記載の毛切断装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の毛切断装置と、
前記光導波路に入力される光を発生する光源と、を備える、
毛切断システム。
【請求項4】
前記光導波路を通る光のパワー密度は、前記光源からの出力にて調整されている、
請求項3に記載の毛切断システム。
【請求項5】
前記光源は、発光期間及び消灯期間を繰り返すことにより間欠的に光を発生する、
請求項3又は4に記載の毛切断システム。
【請求項6】
前記発光期間の時間長さは、1万分の1秒以下である、
請求項5に記載の毛切断システム。
【請求項7】
前記発光期間の時間長さは、百分の1秒以上である、
請求項5に記載の毛切断システム。
【請求項8】
前記光源の動作モードは、
前記発光期間の時間長さが1万分の1秒以下である第1モードと、
前記発光期間の時間長さが百分の1秒以上である第2モードと、の切り替えが可能である、
請求項5に記載の毛切断システム。
【請求項9】
前記光源で発生する光の波長は、400nm以上である、
請求項5~8のいずれか1項に記載の毛切断システム。
【請求項10】
前記光源は、レーザ光源である、
請求項5~9のいずれか1項に記載の毛切断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に毛切断装置及び毛切断システムに関し、より詳細には、毛に光を作用させることで毛を切断する毛切断装置及び毛切断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レーザ光を利用して毛を切断するように構成された装置が記載されている。特許文献1に記載の装置は、レーザ光源と、ファイバ光学系と、を含んでいる。レーザ光源は、毛を効果的に切断するために所定の発色団を標的とするように選択された波長を有するレーザ光を、発生させるように構成されている。ファイバ光学系は、近位端と遠位端と外壁と、遠位端に向かって配置されて側壁の一部に沿って延在する切断領域と、を有する。ファイバ光学系は、近位端においてレーザ光源からレーザ光を受け取り、そのレーザ光を近位端から遠位端に向かって導光し、切断領域が毛に接触すると毛に向かって切断領域から光を放出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、光を利用した毛切断装置の実用化にあたり改善が求められる。
【0005】
本開示は上記事由に鑑みてなされており、改善された毛切断装置及び毛切断システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る毛切断装置は、コア部と、前記コア部の少なくとも一部を覆うクラッド部とを有する光導波路を備える。前記光導波路は、光照射部を有する。前記光照射部は、皮膚から突出する毛に光を照射することで前記毛の切断を行う。少なくとも前記毛の切断時において、前記光導波路を通る光のパワー密度であって、前記コア部の断面全域において平均化された平均的なパワー密度が、50kW/cm2以上である。
【0007】
本開示の一態様に係る毛切断システムは、前記毛切断装置と、前記光導波路に入力される光を発生する光源と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、改善された毛切断装置及び毛切断システムを提供できる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1Aは、実施形態1に係る毛切断システムの構成を示す正面図である。
図1Bは、同上の毛切断システムの構成を示す一部破断した側面図である。
【
図2】
図2Aは、実施形態1に係る毛切断装置における要部の構成を示す概略断面図である。
図2Bは、
図2Aの要部の拡大図である。
【
図3】
図3Aは、同上の毛切断装置における毛の切断時の動作、特に毛に光を照射する前のシーンを示す概略断面図である。
図3Bは、同上の毛切断装置における毛の切断時の動作、特に毛に光を照射するシーンを示す概略断面図である。
図3Cは、同上の毛切断装置における毛の切断時の動作、特に毛の切断後のシーンを示す概略断面図である。
【
図4】
図4Aは、同上の毛切断装置における毛の切断時の動作、特に毛に光を照射する前のシーンを示す概略断面図である。
図4Bは、同上の毛切断装置における毛の切断時の動作、特に毛に光を照射するシーンを示す概略断面図である。
【
図5】
図5は、同上の毛切断システムの制御回路の概略構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、同上の毛切断システムの動作例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7Aは、同上の毛切断装置に用いる光導波路の概略斜視図である。
図7Bは、実施形態1の第1変形例に係る毛切断装置に用いる光導波路の一例を示す概略斜視図である。
図7Cは、実施形態1の第1変形例に係る毛切断装置に用いる光導波路の他の例を示す概略斜視図である。
【
図8】
図8Aは、実施形態1の第1変形例に係る毛切断装置における要部の一例を示す概略断面図である。
図8Bは、実施形態1の第1変形例に係る毛切断装置における要部の他の例を示す概略断面図である。
図8Cは、
図8Aにおける光導波路の保持部材による保持構造を示す概略図である。
図8Dは、
図8Bにおける光導波路の保持部材による保持構造を示す概略図である。
【
図9】
図9A~
図9Fは、それぞれ実施形態1の第2変形例に係る毛切断装置における要部の概略断面図である。
【
図11】
図11Aは、実施形態2の変形例に係る毛切断装置における要部の構成を示す概略断面図である。
図11Bは、実施形態2の他の変形例に係る毛切断装置における要部の構成を示す概略断面図である。
【
図13】
図13は、実施形態3の変形例に係る毛切断装置における要部の構成を示す概略断面図である。
【
図14】
図14Aは、実施形態3に係る毛切断装置を一方向から見た要部の概略斜視図である。
図14Bは、同上の毛切断装置を他方向から見た要部の概略斜視図である。
【
図15】
図15は、同上の毛切断装置における要部の構成を示す概略断面図である。
【
図16】
図16Aは、同上の毛切断装置の進行方向の前方から見た要部の構成を示す概略図である。
図16Bは、同上の毛切断装置の進行方向の前方から見た要部の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
(1)概要
以下、本実施形態に係る毛切断装置1及び毛切断システム10の概要について、
図1A~
図2Bを参照して説明する。毛切断装置1は、毛91に光を作用させることで毛91を切断する装置である。毛切断装置1での切断対象となる毛91は、一例として人の「ひげ」等であるが、「ひげ」に限らず、人等の皮膚92から突出する様々な毛を含む。
図1B、
図2A及び
図2Bでは、毛91及び皮膚92を想像線(二点鎖線)で示す。
【0011】
要するに、毛切断装置1及び毛切断システム10は、物理的な「刃」にて毛91を切断する一般的な「かみそり」又は「はさみ」等とは異なり、「刃」の代わりに光エネルギを毛91に与えることで、毛91の切断を行う。そのため、毛切断装置1及び毛切断システム10では、一般的な、「かみそり」又は「はさみ」等に比較して、毛91の周囲の皮膚92等にダメージを与えにくく、さらに、刃こぼれ等の物理的な劣化も生じにくい。
【0012】
本実施形態に係る毛切断システム10は、
図1A及び
図1Bに示すように、グリップ2と、ヘッド3と、を備えている。グリップ2は、光を発生する光源21(
図1B参照)を有している。ヘッド3は、光導波路4と、保持部材5と、を備えている。光導波路4は、グリップ2内に受光部43(
図1B参照)を有しており、光源21で発生した光が光導波路4の受光部43に入力されることにより、光導波路4内を光が伝達する。本実施形態では一例として、光源21はレーザ光源であって、光導波路4内を伝達する光はレーザ光である。
【0013】
ここで、光導波路4は、光照射部40を有している。光導波路4は、光照射部40から毛91に光を照射することで毛91の切断を行う。保持部材5は、ヘッド3内において光導波路4を保持している。毛切断装置1は、光導波路4の光照射部40からの光を切断対象となる毛91に照射することで、毛91の切断を行う。具体的には、毛切断装置1は、切断対象である毛91の屈折率に近い屈折率を持つ光照射部40を、毛91に接触させることで、光照射部40から毛91に光の漏れを生じさせ、この光のエネルギで毛91を切断する。
【0014】
本実施形態では、毛切断システム10のうち、ヘッド3に相当する部分が毛切断装置1を構成する。言い換えれば、本実施形態に係る毛切断装置1は、光導波路4と、保持部材5と、を備えている。また、毛切断装置1に相当するヘッド3は、光源21を有するグリップ2と共に、毛切断システム10を構成する。言い換えれば、本実施形態に係る毛切断システム10は、毛切断装置1と、光源21と、を備えている。光源21は、光導波路4に入力される光を発生する。
【0015】
ところで、本実施形態では、毛切断装置1は、光導波路4を備え、光導波路4は、光照射部40を有している。光照射部40は、皮膚92から突出する毛91に光を照射することで毛91の切断を行う。ここで、光照射部40の屈折率は、皮膚92の表面921(
図2A参照)の屈折率よりも小さい。
【0016】
この構成によれば、光照射部40の屈折率が、皮膚92の表面921の屈折率よりも小さいので、光照射部40を含む光導波路4の材質等の選択肢が広がり、毛切断装置1を実現しやすくなる。さらに、この毛切断装置1によれば、例えば、光照射部40からの光を適切に皮膚92に照射すれば、殺菌又は活性化等の皮膚92への作用も期待できるようになる。結果的に、改善された毛切断装置1を提供できる、という利点がある。
【0017】
また、本実施形態では、毛切断装置1は、光導波路4を備え、光導波路4は、光照射部40を有している。光照射部40は、皮膚92から突出する毛91に光を照射することで毛91の切断を行う。ここで、少なくとも毛91の切断時において、光導波路4を通る光のパワー密度は50kW/cm2以上である。
【0018】
この構成によれば、毛91の切断時における、光導波路4を通る光のパワー密度が50kW/cm2以上であるので、光照射部40から毛91に照射する光で毛91を効率的に切断しやすい。つまり、毛91を切断するのに十分な光エネルギを光導波路4から毛91に与えることができ、比較的に短時間で、毛91の切断を行うことができる。したがって、例えば、切断可能な毛91の太さ又は硬さ等の幅が広がり、結果的に、改善された毛切断装置1を提供できる、という利点がある。
【0019】
また、本実施形態では、毛切断装置1は、光導波路4と、光導波路4を保持する保持部材5と、を備えている。光導波路4は、光照射部40を有している。光照射部40は、皮膚92から突出する毛91に光を照射することで毛91の切断を行う。保持部材5は、少なくとも一面から光照射部40が露出する態様で、光導波路4を保持する。
【0020】
この構成によれば、保持部材5の少なくとも一面から光照射部40が露出する態様で、保持部材5が光導波路4を保持するので、例えば、光照射部40に毛91又は皮膚92が接触しても、光導波路4の位置ずれ等が生じにくい。つまり、例えば、毛91を切断する際に、毛91又は皮膚92からの外力が光照射部40に作用しても、この外力によって光導波路4が外れたり破損したりすることが生じにくくなる。結果的に、改善された毛切断装置1を提供できる、という利点がある。
【0021】
(2)詳細
以下、本実施形態に係る毛切断装置1及び毛切断システム10の詳細について、
図1A~
図6を参照して説明する。
【0022】
以下では一例として、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸の3軸を設定し、特に、光照射部40の長さに沿った軸を「X軸」、光照射部40の進行方向に沿った軸を「Y軸」とする。X軸、Y軸、及びZ軸は、いずれも仮想的な軸であり、図面中の「X」、「Y」、「Z」を示す矢印は、説明のために表記しているに過ぎず、いずれも実体を伴わない。また、これらの方向は毛切断装置1及び毛切断システム10の使用時の方向を限定する趣旨ではない。
【0023】
(2.1)定義
本開示でいう「毛」は、皮膚92から突出する様々な毛91、つまり皮膚92から延びる様々な毛を含み、例えば、人(人間)の髪の毛、ひげ、眉毛、すね毛、鼻毛又は耳毛等の種々の体毛を含む。さらに、例えば、犬又は猫等のほ乳類、その他の動物においても、その皮膚92から突出する様々な毛91が、本開示でいう「毛」に含まれる。すなわち、本実施形態に係る毛切断装置1は、これらの毛91を切断対象とする装置である。また、本開示でいう「皮膚」には、人工皮膚等も含む。本実施形態では一例として、毛切断装置1の切断対象となる毛91が、人の皮膚92から突出する毛、特には成人男性の「ひげ」である場合について説明する。つまり、毛切断装置1の切断対象となる毛91は、人の顔の皮膚92から生えた毛である。顔の皮膚92等を含む人の皮膚92を「肌」ともいう。
【0024】
また、本開示でいう毛91の「切断」は、毛91を切断すること全般を含み、例えば、毛91を根元で切る(つまり、毛をそる)こと、適当な長さで毛91を切り揃えること、及び毛先のみを切ること等を含む。そのため、本開示でいう「毛切断装置」には、例えば、毛91をそるための装置である「シェーバ」又は「てい毛装置」、及び適当な長さで毛を切るための装置である「トリマ」、「バリカン」又は「はさみ」等が含まれる。さらには、本開示でいう毛91の「切断」は、毛91を略平面状の切断面にて2つに切断することだけでなく、毛91の切断部に損傷を与えて毛91を切断部にて破断すること等も含む。本実施形態では一例として、毛切断装置1及び毛切断システム10が、切断対象となる毛91(ひげ)を根元で切る(つまり、毛をそる)ことに適した「シェーバ」である場合について説明する。
【0025】
また、本開示でいう「レーザ光」は、誘導放出によって発生する光(Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation)を意味する。レーザ光を発生する光源21としては、例えば、半導体の再結合発光を利用した半導体レーザ(LD:Laser Diode)等がある。レーザ光は、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)が発生する光に比較して、干渉性(coherence)が高く、出力(パワー密度)が高く、単色性(単一波長)が高く、かつ指向性が高い、という特性を持つ。
【0026】
また、本開示でいう「光導波路」は、光を通すことで光を所望の経路に沿って導く光学部材を意味する。光導波路の具体例としては、互いに屈折率の異なるコア及びクラッドを有し、コアをクラッドで覆った光ファイバ等がある。光ファイバは、コアとクラッドとの界面での光の全反射を利用して、コアの内部に光を通すことで所望の経路に沿って光を導くことが可能である。ここで、光導波路は、特に、通信用の信号(光信号)を通す伝送路に限らず、光を所望の経路に沿って導く光学部材全般を意味する。
【0027】
また、本開示でいう「保持」は、2つの物体同士が互いの位置関係を保ち続けるように、一方の物体が他方の物体を支持することを意味する。ここで、2つの物体同士の相対的な位置関係は、多少、変化してもよく、一方の物体と他方の物体とが堅牢に固定されていなくてもよい。つまり、保持部材5は、光導波路4と保持部材5との位置関係が多少変化する態様で、光導波路4を保持していてもよい。
【0028】
また、本開示でいう「屈折率」は、真空中の光速度を媒質中の光速度(より正確には位相速度)で除した値である。屈折率は、基本的に、物質に依存して決まっており、例えば、空気の屈折率は「1.0003」であって、水の屈折率は「1.3334」である。同じ物質であっても、屈折率は入射する光の波長によって異なることがあるが、本開示では、特に断りがない限り、屈折率は波長404.7nmの光(水銀のh線)について示すこととする。
【0029】
また、本開示でいう「パワー密度」は、単位面積(1cm2)あたりの光強度を意味する。パワー密度の単位は「kW/cm2」又は「J/(s・cm2)」である。光導波路4の断面において光強度の分布にばらつきがある場合でも、光導波路4を通る光強度を光導波路4のコア部41の断面積で除することにより、コア部41の断面全域において平均化された平均的なパワー密度が求まる。本開示では、特に断りがない限り、このように求まる平均的なパワー密度を「パワー密度」とする。
【0030】
(2.2)全体構成
ここではまず、本実施形態に係る毛切断システム10の全体構成について、
図1A及び
図1Bを参照して説明する。
【0031】
毛切断システム10は、上述したように、毛切断装置1と、光源21と、を備えている。毛切断装置1は、光導波路4と、光導波路4を保持する保持部材5と、を備えている。光導波路4は、光照射部40を有しており、光源21で発生した光が入力されることによって、光照射部40から光を出力する。毛切断システム10は、光源21で発生した光を、毛切断装置1の光導波路4に入力し、光導波路4の光照射部40から毛91に照射することで、毛91の切断を行う。
【0032】
より詳細には、毛切断システム10は、光照射部40の屈折率として、切断対象である毛91の屈折率に近い値を採用している。これにより、光照射部40に毛91が接触した状態では、光照射部40から毛91に光が漏れ出し、この光のエネルギで毛91が切断される。一方で、光照射部40に毛91が接触しておらず、光照射部40に空気(屈折率:1.0)のみが接するような状態では、光照射部40と空気との屈折率の差によって、光照射部40からの光の漏れ量が小さく抑えられる。
【0033】
ところで、本実施形態では、毛切断システム10は、上述したように、光源21を有するグリップ2と、毛切断装置1を構成するヘッド3と、を備えている。グリップ2は、
図1A及び
図1Bに示すように、第1ケース20を有し、第1ケース20内に光源21等を収容している。第1ケース20は、一例として、Y軸に沿って長さを有する角柱状に形成されている。ヘッド3は、
図1A及び
図1Bに示すように、第2ケース30を有し、第2ケース30内に光導波路4等を収容している。第2ケース30は、一例として、X軸に沿って長さを有する角柱状に形成されている。本実施形態では、第1ケース20の長手方向の一端部と、第2ケース30の長手方向の中央部と、が結合されることにより、第1ケース20及び第2ケース30は、Z軸の一方側から見て、全体として略T字状のケースを構成している。
【0034】
このように、全体として略T字状の外観を有する毛切断システム10は、「T字かみそり」と同じように使用される。つまり、ユーザは、切断対象となる毛91(ここでは「ひげ」)を切断する(ここでは「そる」)際に、毛切断システム10のグリップ2、つまり第1ケース20を片手で握ることで、毛切断システム10を把持する。この状態で、ユーザは、毛切断システム10のヘッド3、つまり第2ケース30のZ軸方向の一面をユーザの(顔の)皮膚92に接触させ、ヘッド3を皮膚92に沿わせてY軸方向に移動させることにより、ヘッド3の光照射部40にて毛91を切断する。このとき、ユーザは、
図1Bに示すように、第2ケース30のうちのZ軸の負の向きを向いた面を皮膚92に接触させ、かつヘッド3をY軸の負の向きに移動させることによって、ヘッド3の進行方向の前方(つまりY軸の負の向き)に位置する毛91を切断する。
【0035】
本実施形態では一例として、第1ケース20及び第2ケース30は、いずれも合成樹脂製である。第1ケース20及び第2ケース30は、接着、溶着、貼り付け又は締結部材(ねじ等)を用いた結合等の適宜の手段にて、結合されている。
【0036】
グリップ2は、第1ケース20及び光源21に加えて、制御回路6、光学系22、電池23、ファン24、ヒートシンク25及び操作部26を更に有している。
【0037】
制御回路6、光学系22、電池23、ファン24及びヒートシンク25は、いずれも第1ケース20内に収容されている。操作部26は、第1ケース20の一面(Z軸の負の向きを向いた面)に設けられている。また、ヘッド3に含まれる光導波路4は、その一端部(受光部43)がグリップ2の第1ケース20内に位置するように、第1ケース20と第2ケース30とにまたがって収容されている。
【0038】
光源21は、電気エネルギを光エネルギに変換することで、光導波路4に入力される光を発生する。本実施形態では、光源21は、レーザ光源である。つまり、光源21で発生する光は、誘導放出によって発生するレーザ光である。ここでは、光源21は、半導体の再結合発光を利用した半導体レーザからなる。
【0039】
また、光源21で発生する光の波長は、400nm以上である。つまり、光源21は、400nmよりも長波長側にピーク波長又はドミナント波長を有するレーザ光を発生する。本実施形態では、光源21で発生する光の波長は、700nm以下である。詳しくは「(3)作用」の欄で説明するが、例えば、波長が400nm以上450nm以下の範囲にある光であれば、皮膚92に存在するアクネ菌等に対する殺菌作用が期待できる。また、波長が450nm以上700nm以下の範囲にある光であれば、皮膚92の活性化作用が期待できる。
【0040】
制御回路6は、少なくとも光源21を制御する回路である。制御回路6は、光源21に電力を供給することで光源21を発光(点灯)させる。さらに、制御回路6は、光源21の点灯/消灯の切り替え、及び光源21の出力(明るさ又は波長等)の調節等を行う。制御回路6は、プリント配線板(基板)と、プリント配線板に実装された複数の電子部品と、を含んでいる。制御回路6は、光源21の他、ファン24及び操作部26等の制御も行う。制御回路6について詳しくは、「(2.6)制御回路」の欄で説明する。
【0041】
光学系22は、光源21と光導波路4との間に配置されており、光源21からの光を光導波路4へと導く。光学系22は、複数のレンズを含んでいる。
図1Bの例では、光学系22は、第1レンズ221、第2レンズ222、第3レンズ223及び第4レンズ224を含んでいる。ただし、
図1Bは、個々のレンズの形状及び配置を厳密には示しておらず、光学系22を模式的に示しているに過ぎない。
【0042】
電池23は、制御回路6、光源21及びファン24等の駆動用の電力を供給する電源として機能する。本実施形態では一例として、電池23は、充電及び放電が可能な、リチウムイオン電池(LIB:Lithium Ion Battery)等の二次電池である。
【0043】
ファン24は、光源21の冷却用の冷却ファンである。具体的には、ファン24は、第1ケース20内においてヒートシンク25を通る気流を発生することにより、ヒートシンク25の放熱を促進する。
【0044】
ヒートシンク25は、熱伝導率が比較的に高い材質、例えば、アルミニウム等で構成されている。ヒートシンク25は、光源21と熱的に結合されており、主として光源21の放熱を行う。
【0045】
操作部26は、ユーザの操作を受け付けて、ユーザの操作に応じた電気信号を制御回路6に出力する。本実施形態では一例として、操作部26は、プッシュスイッチ又はスライドスイッチ等のメカニカルスイッチを少なくとも1つ有している。
【0046】
ヘッド3は、第2ケース30、光導波路4及び保持部材5に加えて、固定ブロック32を更に有している。
【0047】
第2ケース30のうち、ユーザの皮膚92に接触する面(つまりZ軸の負の向きを向いた面)には、少なくとも光照射部40を第2ケース30の外部に露出させるための開口部31が形成されている。開口部31は、X軸に沿って長さを有する長方形状に形成されている。この開口部31を通して、第2ケース30の内側の空間と外側の空間とがつながることになる。
【0048】
光導波路4、保持部材5及び固定ブロック32は、いずれも第2ケース30内に収容されている。ただし、上述したように、光導波路4は、その一端部(受光部43)がグリップ2の第1ケース20内に位置する。そのため、第1ケース20の内部空間と第2ケース30の内部空間とは連続しており、光導波路4は、第1ケース20と第2ケース30とにまたがって収容される。本実施形態では一例として、光導波路4の光照射部40に加えて、保持部材5及び固定ブロック32についても、開口部31を通して第2ケース30の外部に露出する。
【0049】
光導波路4は、光源21で発生した光を通すことで、光源21からの光を所望の経路に沿って導く光学部材である。本実施形態では一例として、光導波路4は光ファイバである。この光導波路4は、コア部41及びクラッド部42を有しており、コア部41がクラッド部42にて覆われている。さらに、本実施形態では、光導波路4は、
図1Bに示すように、受光部43及び保護シース44を更に有している。受光部43は、第1ケース20に収容され、光学系22に対向するように配置されることで、光源21からの光を光導波路4内に取り込む。具体的には、光導波路4は、光源21からの光が光導波路4(コア部41)を通って伝播するように、コア部41の端部に設けられた受光部43にて、光学系22を介して光源21と光学的に結合される。保護シース44は、クラッド部42を覆うように構成された樹脂製の被覆部材である。つまり、本実施形態で光導波路4として用いられる光ファイバは、コア部41と、コア部41の外側に位置するクラッド部42と、クラッド部42の外側に位置する保護シース44と、の三重構造を有している。
【0050】
光導波路4は、少なくとも受光部43が第1ケース20内に配置され、受光部43から延びる部位が第2ケース30に引き込まれるように、第1ケース20及び第2ケース30内に引き回されている。光導波路4は、受光部43側の一端部から第1中間部までの部分についてのみ保護シース44を有しており、第1中間部から先の部分については保護シース44が除去されてクラッド部42が露出する。さらに、光導波路4は、第1中間部から第2中間部までの部分についてのみクラッド部42を有しており、第2中間部から先の部分についてはクラッド部42が除去されてコア部41が露出する。このように、光導波路4のうち、クラッド部42が除去されてコア部41がむき出しになった部位が、光照射部40を構成する。
【0051】
すなわち、本実施形態では、光導波路4は、コア部41を有し、光照射部40は、コア部41からなる。言い換えれば、本実施形態では光導波路4のうち、毛91に光を照射することで毛91の切断を行う部分(光照射部40)は、コア部41のみで構成される。光導波路4について詳しくは、「(2.3)毛切断装置の構成」の欄で説明する。
【0052】
保持部材5は、光導波路4を保持する部材である。保持部材5は、光導波路4のうち少なくとも光照射部40を保持する。つまり、保持部材5は、光導波路4のうちクラッド部42が除去されてコア部41がむき出しになった部位(光照射部40)を少なくとも保持する。本実施形態では一例として、光導波路4のうち保持部材5に保持されるのは光照射部40のみであって、光導波路4のうち光照射部40以外の部位については、保持部材5以外の構造で適宜位置固定されている。保持部材5は、固定ブロック32に固定されている。保持部材5は、固定ブロック32に対して、接着、溶着、貼り付け又は締結部材(ねじ等)を用いた結合等の適宜の手段にて、固定されている。これにより、光導波路4(光照射部40)は、保持部材5を介して固定ブロック32に間接的に固定されることになる。保持部材5について詳しくは、「(2.4)光導波路の保持構造」の欄で説明する。
【0053】
固定ブロック32は、第2ケース30に固定されている。固定ブロック32は、合成樹脂製であって、X軸に沿って長さを有する角柱状に形成されている。固定ブロック32は、第2ケース30に対して、接着、溶着、貼り付け又は締結部材(ねじ等)を用いた結合等の適宜の手段にて、固定されている。固定ブロック32には、上述したように保持部材5が固定されている。そのため、光導波路4(光照射部40)は、保持部材5及び固定ブロック32を介して第2ケース30に間接的に固定されることになる。
【0054】
ここで、ヘッド3は、光導波路4の光照射部40、保持部材5及び固定ブロック32の全てが、開口部31を通して第2ケース30の外部に露出する。具体的には、
図1A及び
図1Bに示すように、固定ブロック32は、第2ケース30における開口部31の長さ(X軸)に沿って配置されている。そして、保持部材5は、固定ブロック32における毛切断装置1の進行方向の前方(Y軸の負の向き)を向いた面に固定されている。しかも、固定ブロック32及び保持部材5は、開口部31の短手方向(Y軸方向)において、毛切断装置1(ヘッド3)の進行方向の前方側に隙間を確保するように、毛切断装置1の進行方向の後方側(つまりY軸の正の側)に寄せて配置されている。
【0055】
また、固定ブロック32及び保持部材5は、Z軸の負の向きを向いた面が、第2ケース30におけるZ軸の負の向きを向いた面と面一になるように、配置されている。さらに、詳しくは「(2.4)光導波路の保持構造」の欄で説明するが、光導波路4(光照射部40)は、保持部材5における毛切断装置1の進行方向の前方(Y軸の負の向き)を向いた面に固定されている。
【0056】
また、
図1A及び
図1Bでは図示を省略しているが、毛切断システム10は、例えば、電池23用の充電回路、又は、毛切断システム10の動作状態を表示するための表示部等の構成要素を更に備えていてもよい。
【0057】
(2.3)毛切断装置の構成
次に、本実施形態に係る毛切断装置1、つまり毛切断システム10のヘッド3のより詳細な構成について、
図2A及び
図2Bを参照して説明する。
図2Aは、毛切断装置1(ヘッド3)における光導波路4及び保持構造5周辺の構成を示す概略断面図である。
図2Bは、
図2Aの要部の拡大図である。
【0058】
本実施形態では、毛切断システム10のうちのヘッド3に相当する部分が毛切断装置1を構成するので、ヘッド3に含まれる第2ケース30、光導波路4、保持部材5及び固定ブロック32は、全て毛切断装置1の構成要素である。つまり、本実施形態に係る毛切断装置1は、光導波路4及び保持部材5に加えて、第2ケース30及び固定ブロック32を更に備えている。ただし、第2ケース30及び固定ブロック32は、毛切断装置1にとって必須の構成要素ではなく、第2ケース30及び固定ブロック32の少なくとも一方は適宜省略可能である。
【0059】
毛切断装置1における光導波路4は、上述したように、毛91に光を照射することで毛91の切断を行う光照射部40を有している。本実施形態では、光導波路4は、コア部41と、クラッド部42と、を有する光ファイバである。クラッド部42は、コア部41をコア部41の全周にわたって覆っている。ここで、コア部41及びクラッド部42は、いずれも比較的に高い光透過性を有している。ただし、コア部41とクラッド部42とでは屈折率が異なっており、コア部41の屈折率は、クラッド部42の屈折率よりも大きい。この構成により、受光部43からコア部41に入射した光は、コア部41とクラッド部42との界面での全反射又は屈折により、極力、コア部41のみを通るようにして、光導波路4の先端部(受光部43とは反対側の端部)まで到達する。
【0060】
本実施形態では一例として、光導波路4は、コア部41及びクラッド部42のいずれもが合成石英からなる。例えば、コア部41は合成石英製であって、クラッド部42は、コア部41とは屈折率が異なる、不純物を添加した合成石英製である。本実施形態では一例として、ファイバ入射NA(Numerical Aperture)が「0.1」の場合、コア部41の屈折率は「1.4698」であって、クラッド部42の屈折率は「1.4309」である。また、ファイバ入射NAが「0.2」の場合、コア部41の屈折率は「1.4698」であって、クラッド部42の屈折率は「1.309」である。ここで挙げるNA及び屈折率は、あくまで一例に過ぎず、コア部41の屈折率とクラッド部42の屈折率との差等を規定する趣旨ではない。
【0061】
ところで、上述した構成の光導波路4(光ファイバ)のうち、受光部43とは反対側の先端部から第2中間部までの、クラッド部42が除去されてコア部41が露出した部位は、光照射部40を構成する。つまり、光導波路4のうち、クラッド部42が除去されてコア部41がむき出しになった部位のコア部41こそが、毛91に光を照射する光照射部40を構成する。
【0062】
ただし、より厳密には、クラッド部42が除去されてむき出しになったコア部41のうち、保持部材5にて覆われる部位は、毛91に光を漏らすことができないため、毛91に光を照射する光照射部40として機能しない。言い換えれば、本実施形態では、光照射部40はコア部41のみからなるのであって、コア部41のうち、特にクラッド部42に覆われずに露出した部位が、光照射部40となる。
図2A及び
図2B等においては、光導波路4のうちのコア部41が露出した部位での断面を示し、クラッド部42としては端面を図示している。
【0063】
そして、本実施形態に係る毛切断装置1では、上述したように、光導波路4における光照射部40の屈折率は、皮膚92の表面921(
図2A参照)の屈折率よりも小さい。ここで、人の皮膚92(肌)は、表皮、真皮及び皮下組織等を含んでいる。ここでいう皮膚92の表面921は、これら皮膚92を構成する複数の要素のうち最も外側に位置する表皮、又は表皮の表面を意味する。
【0064】
すなわち、本実施形態では、光照射部40は、コア部41及びクラッド部42を有する光導波路4(光ファイバ)のうちのコア部41からなるので、コア部41の屈折率は皮膚92の表面921の屈折率よりも小さくなるように設定される。一例として、人の皮膚92の表面921の屈折率は「1.4770」であると仮定する。そうすると、光照射部40であるコア部41の屈折率が上述したように「1.4698」であれば、光照射部40の屈折率が皮膚92の表面921の屈折率より小さい、という条件は満足する。
【0065】
より詳細には、本実施形態では、光照射部40の屈折率は、1.47以下である。要するに、光照射部40の屈折率が皮膚92の表面921の屈折率よりも小さくなるように、光照射部40の屈折率は「1.4700」以下の範囲に設定されている。これにより、皮膚92の表面921の屈折率に多少のばらつきがあっても、光照射部40の屈折率は、皮膚92の表面921の屈折率よりも小さくなる。つまり、皮膚92の表面921の屈折率が「1.4770」よりもわずかに小さい場合でも、光照射部40の屈折率が皮膚92の表面921の屈折率よりも小さい、という条件は満足できる。
【0066】
さらに、ここでいう皮膚92の表面921の屈折率は、毛91の屈折率よりも小さい。つまり、皮膚92の表面921と、皮膚92から突出する切断対象である毛91と、光照射部40(コア部41)と、の三者で屈折率を比較すると、毛91の屈折率が最も大きく、次に皮膚92の表面921の屈折率が大きく、光照射部40の屈折率が最も小さい。一例として、毛切断装置1での切断対象である人の毛91(ここでは「ひげ」)の屈折率は「1.5432」であると仮定する。そうすると、人の皮膚92の表面921の屈折率が「1.4770」であれば、皮膚92の表面921の屈折率が毛91の屈折率よりも小さい、という条件は満足する。
【0067】
要するに、本実施形態では、屈折率の関係としては「光照射部<皮膚<毛」のように、光照射部40(コア部41)よりも皮膚92の表面921の方が屈折率は大きく、皮膚92の表面921よりも毛91の方が更に屈折率は大きくなる。つまり、光照射部40の屈折率は、切断対象である毛91の屈折率よりも小さく、かつ皮膚92の表面921の屈折率よりも小さい。
【0068】
このように、本実施形態に係る毛切断装置1においては、光照射部40の屈折率は、切断対象である毛91の屈折率よりも小さいので、光照射部40に毛91が接触した状態では、光照射部40から毛91に光が漏れ出すことになる。したがって、光照射部40から毛91に漏れ出した光のエネルギで、毛91が切断されることになる。毛91が切断される原理(メカニズム)については「(2.5)使用例」の欄で詳しく説明する。一方で、光照射部40に毛91が接触しておらず、光照射部40に空気(屈折率:1.0)のみが接するような状態では、光照射部40と空気との屈折率の差によって、光照射部40からの光の漏れ量が小さく抑えられる。
【0069】
さらに、屈折率の関係として、より好ましくは、光照射部40の屈折率と、切断対象である毛91の屈折率との差は、極力小さい方がよい。つまり、皮膚92の表面921と、毛91と、光照射部40と、の三者では、屈折率が上述したような大小関係を満たしつつも、その差は極力小さいことが好ましい。これにより、光照射部40の屈折率は、切断対象である毛91の屈折率に近い値となり、光照射部40に毛91が接触した状態では、光照射部40から毛91に光が漏れ出しやすくなる。
【0070】
本実施形態では一例として、光照射部40(コア部41)の屈折率は「1.4698」、皮膚92の表面921の屈折率は「1.4770」、毛91の屈折率は「1.5432」であり、光照射部40の屈折率と皮膚92の表面921の屈折率とは同程度であると言える。ここで、「屈折率が同程度」とは、互いに異なる2つの屈折率があった場合において、大きい方の屈折率の±5%の範囲内に、小さい方の屈折率が含まれる程度に、両者が近しい値をとることをいう。この場合、例えば、光の入射角(皮膚92の表面921の法線との間の角度)を80度(入射NAは約0.17)とすると、毛91の屈折率の-5%の屈折率をもつ物体と毛91の屈折率をもつ物体との界面での反射率(s偏光)が13.2%、光照射部40と毛91との界面での反射率(s偏光)が12.5%、皮膚92と毛91との界面での反射率(s偏光)が11.3%となる。このように、屈折率が-5%変化しても、反射率は2%しか変化しない。つまり、本実施形態では、光照射部40の屈折率(1.4698)及び皮膚92の表面921の屈折率は、毛91の屈折率(1.5432)の±5%の範囲にあるため、同程度にあると言える。
【0071】
ちなみに、「(2.1)定義」の欄で説明したように、同じ物質であっても屈折率は波長によって異なるが、上述した屈折率の関係は、少なくとも光源21から出力される光の波長の範囲においては不変である。すなわち、少なくとも光源21から出力される光の波長の範囲(例えば、400nm以上700nm以下の範囲)においては、屈折率は「光照射部<皮膚<毛」との関係を満たす。
【0072】
さらに、クラッド部42の屈折率は光照射部40であるコア部41の屈折率よりも小さいので、上述した条件を満たす場合には、コア部41、クラッド部42、皮膚92の表面921、及び毛91の四者の中では、クラッド部42の屈折率が最小となる。つまり、四者の屈折率の関係は「クラッド部<コア部<皮膚<毛」となる。
【0073】
ところで、本実施形態に係る毛切断装置1では、上述したように、少なくとも毛91の切断時において、光導波路4を通る光のパワー密度は50kW/cm2以上である。すなわち、コア部41及びクラッド部42を有する光導波路4においては、コア部41の内部を光が通ることになるため、コア部41の断面における単位面積(1cm2)あたりの光強度が、50kW以上となる。ここで、光導波路4を通る光のパワー密度は、常に、50kW/cm2以上である必要はなく、少なくとも毛91の切断を行う際(毛91の切断時)において、50kW/cm2以上であればよい。
【0074】
本実施形態では一例として、毛91の切断時における光導波路4を通る光のパワー密度は、50kW/cm2以上300kW/cm2以下である。また、毛91の切断時における光導波路4を通る光のパワー密度は、毛91を切断可能な70kW/cm2以上であることが好ましく、75kW/cm2以上であることがより好ましい。さらに、毛91を素早く(例えば0.1s程度で)切断可能とするならば、毛91の切断時における光導波路4を通る光のパワー密度は、100kW/cm2以上であることがより好ましい。さらに、毛91の切断時における光導波路4を通る光のパワー密度は、民生品として応用可能なレーザの光出力、及びファイバ径等を考慮すると200kW/cm2以下であることが好ましい。本実施形態では一例として、毛91の切断時における光導波路4を通る光のパワー密度は、初期値が100kW/cm2であると仮定する。
【0075】
詳しくは「(2.5)使用例」の欄及び「(3)作用」の欄で説明するが、この程度のパワー密度であれば、毛切断装置1は、光照射部40から毛91に照射する光で毛91を効率的に切断しやすい。
【0076】
また、本実施形態では、光導波路4を通る光のパワー密度は可変である。すなわち、本実施形態に係る毛切断装置1は、光導波路4を通る光のパワー密度が初期値に固定されているわけではなく、光導波路4を通る光のパワー密度が変更可能に構成されている。ここでは特に、毛91の切断時における光導波路4を通る光のパワー密度が、初期値(100kW/cm2)に固定されるのでなく、初期値から変更可能である。毛91の切断時における光導波路4を通る光のパワー密度は、50kW/cm2以上の範囲で可変であることが好ましい。光導波路4を通る光のパワー密度は、連続的に変化してもよいし、つまり段階的(非連続的)に変化してもよい。
【0077】
また、本実施形態では、光導波路4を通る光のパワー密度は、光源21からの出力にて調整されている。すなわち、本実施形態に係る毛切断装置1は、光源21と共に毛切断システム10を構成しているのであって、この光源21からの出力を調整することによって、光導波路4を通る光のパワー密度が調整されている。ここでいう「調整」は、所定値にパワー密度を設定する態様と、上述したようにパワー密度を変化させる態様と、の両方の態様を含んでいる。要するに、光導波路4を通る光のパワー密度が初期値に固定される場合には、パワー密度が初期値(100kW/cm2)となるように、光源21からの出力の大きさが決定される。一方、光導波路4を通る光のパワー密度が初期値から所望の値に変化させられる場合には、パワー密度が変化後の所望の値となるように、光源21からの出力の大きさが決定される。光源21からの出力の大きさを決定するための構成について詳しくは、「(2.6)制御回路」の欄で説明する。
【0078】
(2.4)光導波路の保持構造
次に、本実施形態に係る毛切断装置1における光導波路4の保持構造の詳細について、
図2A及び
図2Bを参照して説明する。
【0079】
毛切断装置1は、上述したように、光導波路4を保持する保持部材5を備えている。ここで、保持部材5は、
図2A及び
図2Bに示すように、保持部材5は、少なくとも一面から光照射部40が露出する態様で、光導波路4を保持する。すなわち、光導波路4は、保持部材5における毛切断装置1の進行方向の前方(Y軸の負の向き)を向いた面に、少なくとも光照射部40を露出させる態様で、保持部材5に保持されている。より詳細には、光照射部40を構成するコア部41の全体が露出するのではなく、少なくともコア部41のうち毛切断装置1の進行方向の前方(Y軸の負の向き)を向いた面が、保持部材5から露出する。そして、コア部41のうち、このように保持部材5から露出した部位が、毛91に光を照射することで毛91の切断を行う、光照射部40として機能する。
【0080】
また、保持部材5は、上述したように、ヘッド3の固定ブロック32に固定されているので、光導波路4(光照射部40)は、保持部材5及び固定ブロック32を介してヘッド3の第2ケース30に間接的に固定されることになる。
【0081】
ここで、光導波路4の光照射部40、保持部材5及び固定ブロック32の全てが、開口部31(
図1B参照)を通してヘッド3の第2ケース30(
図1B参照)の外部に露出している。しかも、開口部31内では、固定ブロック32及び保持部材5は、開口部31の短手方向(Y軸方向)において、毛切断装置1(ヘッド3)の進行方向の後方側(つまりY軸の正の側)に偏って配置されている。そのため、保持部材5から見て、毛切断装置1の進行方向の前方側(つまりY軸の負の側)には、開口部31の周縁との間に隙間が確保され、この隙間を通して、開口部31内に切断対象である毛91を取り込むことが可能である。言い換えれば、保持部材5のうちの光照射部40が露出するように光導波路4が保持された面、つまり毛切断装置1の進行方向の前方(Y軸の負の向き)を向いた面と、開口部31の周縁との間には、
図2Aに示すように、切断対象の毛91を導入可能である。
【0082】
上述した構成により、切断対象である毛91は、
図2Aに示すように、保持部材5で保持された光照射部40と対向する位置に、開口部31から第2ケース30内に導入される。この状態では、保持部材5にて保持されている光導波路4は、光照射部40のうちの少なくとも保持部材5から露出した部位(Y軸の負の向きを向いた面)を、切断対象である毛91に突き合わせる格好になる。これにより、光導波路4は、切断対象である毛91に光照射部40を接触させることが可能である。
【0083】
ところで、本実施形態では、保持部材5は、基台51と、接着部材52と、を有している。接着部材52は、基台51に対して光導波路4を接着する。基台51及び接着部材52は、いずれも光透過性を有する合成樹脂製である。特に、基台51は金型を用いて成形される樹脂成形品である。これに対して、接着部材52は、接着剤であるペースト状の樹脂が硬化した硬化物である。つまり、接着部材52は、基台51と光導波路4とを接合するための接着剤の硬化物である。
【0084】
そのため、保持部材5にて保持された状態の光導波路4を実現するためには、例えば、基台51にペースト状の接着部材52が塗布された状態で、接着部材52に光導波路4の一部を埋め込んで、接着部材52を硬化させればよい。これにより、保持部材5は、接着部材52にて基台51に光導波路4を接着しつつ、接着部材52から光導波路4の一部を露出させることで、保持部材5の一面から光照射部40が露出する態様で光導波路4を保持することができる。
【0085】
基台51は、X軸に沿って長さを有する角柱状に形成されている。基台51は、固定ブロック32における毛切断装置1の進行方向の前方(Y軸の負の向き)を向いた面に、接着、溶着、貼り付け又は締結部材(ねじ等)を用いた結合等の適宜の手段にて、固定されている。本実施形態では、基台51の屈折率は、コア部41(光照射部40)の屈折率以上である。
【0086】
また、基台51は、
図2Bに示すように、対向面511と、側面512と、背面513と、裏面514と、の4面を有している。基台51の長さ(X軸)に直交する断面は、これら4面を四辺とする略矩形状となる。対向面511は、毛91の切断時に皮膚92の表面921に対向する面である。側面512は、毛91の切断時に皮膚92の表面921に対して交差する面であって、対向面511と隣接する面である。背面513は、対向面511とは反対側を向いた面であって、側面512と隣接する面である。裏面514は、側面512とは反対側を向いた面であって、背面513と隣接する面である。すなわち、基台51のうちZ軸の負の向きを向いた面が対向面511であって、Y軸の負の向きを向いた面が側面512である。さらに、基台51のうちZ軸の正の向きを向いた面が背面513であって、Y軸の正の向きを向いた面が裏面514である。
【0087】
そして、本実施形態では、これら対向面511、側面512、背面513及び裏面514のうちの側面512に、光導波路4が保持されている。すなわち、本実施形態では、保持部材5は、毛91の切断時に皮膚92の表面921に対して交差する側面512を有している。光導波路4は、保持部材5における側面512に保持されている。特に、側面512は、基台51において、毛切断装置1(ヘッド3)の進行方向の前方(Y軸の負の向き)を向いた面である。そのため、光導波路4の光照射部40は、保持部材5における毛切断装置1の進行方向の前方(Y軸の負の向き)を向いた面に固定されることになる。
【0088】
接着部材52は、基台51に対して光導波路4を接着する。本実施形態では、基台51の側面512に光導波路4が保持されるように、接着部材52は、基台51の側面512に設けられ、基台51と光導波路4との接合を行う。ここで、接着部材52は、基台51の長手方向(X軸方向)の全長にわたって配置されている。そのため、光導波路4は、基台51の長手方向の全長にわたって、接着部材52にて基台51に接着されることになる。
【0089】
接着部材52は、接着剤としてのペースト状の樹脂の硬化物であるので、接着部材52の形状を完全に制御することは困難であるが、例えば、基台51の側面512に設けられる接着部材52の量等によって、接着部材52の形状は、ある程度、制御可能である。本実施形態では、
図2Bに示すように、基台51の長手方向(X軸方向)に直交する断面において、光導波路4のコア部41の一部を接着部材52に埋没させつつ、コア部41の一部が接着部材52から露出するように、接着部材52の形状が制御されている。より詳細には、毛切断装置1の進行方向(Y軸方向)におけるコア部41の略半分(つまり半径)の高さまで、接着部材52がコア部41の「ぬれ性」によってコア部41の周面に沿ってはい上がる。これにより、光導波路4のコア部41は、その周面の半周部分が接着部材52にて覆われ、残りの半周部分が保持部材5(接着部材52)から露出して、光照射部40を構成する。
【0090】
本実施形態では、接着部材52の屈折率は、光照射部40の屈折率よりも小さい。つまり、光照射部40(コア部41)の屈折率が「1.4698」であるとすれば、接着部材52の屈折率は「1.4698」よりも小さい。これにより、コア部41から接着部材52への光の漏れ量を適度に制限することができ、必要以上にコア部41から光が漏れ出すことによる光のパワー密度の低下を抑制できる。本実施形態では、クラッド部42が除去されてコア部41がむき出しになった部位が光照射部40を構成しているので、接着部材52は、直接的に光照射部40(コア部41)に接触する。そのため、一例として、接着部材52の屈折率は、クラッド部42の屈折率と同等、又はクラッド部42の屈折率以下である。
【0091】
また、上述したように、固定ブロック32及び保持部材5のうちのZ軸の負の向きを向いた面は、第2ケース30におけるZ軸の負の向きを向いた面と面一になるように、第2ケース30に対する、固定ブロック32及び保持部材5の配置が決められている。より詳細には、固定ブロック32及び保持部材5の基台51の各々におけるZ軸の負の向きを向いた面は、第2ケース30におけるZ軸の負の向きを向いた面と面一である。基台51のうちのZ軸の負の向きを向いた面は、対向面511である。そのため、毛切断装置1(ヘッド3)において、第2ケース30のうちのZ軸の負の向きを向いた面を皮膚92に接触させた状態では、固定ブロック32及び保持部材5の基台51もまた、皮膚92に接触する。
【0092】
ところで、本実施形態では、基台51のうち、光導波路4が保持される側面512に、光導波路4の位置決めを行う位置決め部53が形成されている。位置決め部53は、少なくとも光導波路4の長さに直交する平面、つまりX軸に直交するY-Z平面内での光導波路4の位置決めを行う。このように、本実施形態では、保持部材5は、光導波路4の長さに直交する平面内での光導波路4の位置決めを行う位置決め部53を有している。
【0093】
ここでは、
図2Bに示すように、位置決め部53は、基台51の側面512に形成された溝からなる。つまり、位置決め部53は、保持部材5の一面(側面512)に形成された溝である。位置決め部53としての溝は、基台51の長手方向(X軸方向)の全長にわたって形成されている。光導波路4は、クラッド部42が除去されてむき出しになったコア部41の少なくとも一部が、位置決め部53としての溝内に収容されるようにして、基台51の側面512に保持される。つまり、光導波路4は、少なくとも一部が溝(位置決め部53)内に収まることになる。
【0094】
ここで、本実施形態では一例として、位置決め部53としての溝は、短手方向(幅方向)の中心に近づくほどに深くなる、断面V字状の溝である。このように、短手方向(幅方向)の中心に近づくほどに深くなる形状の溝(位置決め部53)内に配置されることで、光導波路4は、セルフアライメント効果により、位置決め部53としての溝の短手方向(幅方向)の略中心に配置されることになる。特に、本実施形態のように、接着部材52にて光導波路4が基台51に接着される構成では、接着部材52が硬化するまでの間に、光導波路4が変位する可能性があるので、セルフアライメント効果を奏することは有用である。
【0095】
また、本実施形態では、保持部材5は、少なくとも毛91の切断時以外において、光照射部40と基台51との間に隙間が生じるように、光導波路4を保持している。つまり、少なくとも毛91の切断時以外においては、
図2Bに示すように、保持部材5の基台51と光照射部40とは接触しておらず、光照射部40は、基台51との間に、ある程度の間隔を空けた状態で保持されている。ここにおいて、本実施形態では、上述したように、基台51の屈折率はコア部41(光照射部40)の屈折率以上である。そのため、もし仮に光照射部40が基台51に接触すると、光照射部40における基台51との接触部位から基台51に光が漏れ、毛切断装置1としての光の利用効率が低下する可能性がある。そこで、本実施形態に係る毛切断装置1では、基台51から光照射部40を離すことによって、光の利用効率の低下を抑制する。
【0096】
特に、本実施形態では、接着部材52のうち基台51と光導波路4との間に介在する部位は、光導波路4を通る光の波長以上の厚みD1を有する。接着部材52のうち基台51と光導波路4との間に介在する部位の厚みD1は、
図2Bに示すように、接着部材52を挟んで対向する、基台51と光導波路4との間の最短距離を意味する。つまり、光導波路4の光照射部40(コア部41)と基台51との間には、光導波路4を基台51に接着するための接着部材52が介在するため、この接着部材52によって、光照射部40と基台51との間に隙間が確保されている。ただし、基台51と光導波路4との間に介在する接着部材52の厚みが小さい(薄い)場合、光導波路4(コア部41)と接着部材52との界面からの接着部材52側への光(エバネッセント波)の染み出しにより、光が基台51に漏れ出すことがある。このようなエバネッセント波が生じるのは、界面から光の1波長分程度の範である。そこで、本実施形態では、
図2Bに示すように、基台51と光導波路4との間に介在する接着部材52の厚みD1を、光導波路4を通る光の波長以上の大きさとすることで、基台51へのエバネッセント波の影響が及びにくくする。一例として、光導波路4を通る光の波長、つまり光源21で発生する光の波長が700nmであれば、基台51と光導波路4との間に介在する接着部材52の厚みD1は700nm以上である。
【0097】
さらに、本実施形態では、毛切断装置1は、毛91の切断時に皮膚92に接触する接触面を有している。光導波路4は、接触面からの光照射部40の高さL0が100μm以下となるように、保持部材5に保持されている。本開示でいう「接触面」は、毛切断装置1のうち、毛91の切断時に皮膚92に接触する面を意味し、基本的には、毛切断装置1の中で最もZ軸の負の方向に位置する面である。ここで、本実施形態に係る毛切断装置1は、皮膚92に接触する接触面として、少なくとも基台51の対向面511を有している。さらに、固定ブロック32におけるZ軸の負の向きを向いた面、及び第2ケース30におけるZ軸の負の向きを向いた面は、基台51の対向面511であるから、これらも接触面に含まれる。このような接触面からの光照射部40のZ軸方向における高さL0は、毛91の切断時における皮膚92の表面921からの光照射部40の高さに等しい。すなわち、本実施形態では、
図2Bに示すように、接触面である対向面511からの光照射部40の高さL0が、100μm以下に設定されることで、毛91の切断時における皮膚92の表面921から光照射部40までの距離(高さ)は100μm以下となる。
【0098】
ただし、本実施形態では、接触面である対向面511からの光照射部40の高さL0は1μm以上であり、ゼロ(0)ではない。言い換えれば、毛切断装置1は、光照射部40は接触面(対向面511)からある程度の高さL0を有するので、毛91の切断時において、皮膚92の表面921から光照射部40を離すことができる。このように、光導波路4の光照射部40が皮膚92の表面921から離れていることで、例えば、皮膚92の表面921にニキビ等の隆起物があっても、隆起物による光照射部40の引っ掛かりが生じにくい。
【0099】
また、本実施形態のように、保持部材5が位置決め部53を有する場合には、接触面からの光照射部40の高さL0に代えて、接触面からの位置決め部53の高さが規定されていてもよい。すなわち、Z軸方向における接触面(対向面511等)から位置決め部53としての溝の縁までの距離は、100μm以下であることが好ましい。特に、本実施形態では、接触面からの位置決め部53の高さ、つまりZ軸方向における接触面(対向面511等)から位置決め部53としての溝の縁までの距離は、1μm以上である。
【0100】
(2.5)使用例
次に、本実施形態に係る毛切断装置1及び毛切断システム10の使用例について、
図3A~
図4Bを参照して説明する。
【0101】
すなわち、本実施形態では、上述した構成の毛切断装置1及び毛切断システム10は、毛91(ここでは「ひげ」)の切断(ここでは「そる」)に用いられる。その際、ユーザは、毛切断システム10のグリップ2を片手で握って毛切断システム10を把持した状態で、毛切断システム10のヘッド3、つまり第2ケース30のZ軸の負の向きを向いた面をユーザの(顔の)皮膚92に接触させる。これにより、
図3Aに示すように、切断対象である毛91は、保持部材5で保持された光照射部40と対向する位置に、開口部31から第2ケース30内に導入される。
【0102】
図3Aに示すように、光照射部40が毛91に接触していない状態では、光照射部40には空気が接することになるため、光照射部40と空気との屈折率の差によって、光照射部40からの光の漏れはほとんど生じない。この状態で、ユーザは、毛切断装置1としてのヘッド3(第2ケース30)を、皮膚92の表面921に沿って
図3Aにおける矢印A1の向きに移動させる。
【0103】
ヘッド3(第2ケース30)の移動に伴って、
図3Bに示すように、光照射部40は、ヘッド3の進行方向の前方(つまりY軸の負の向き)に位置する毛91に接触する。このとき、光照射部40と毛91との屈折率の差によって、光照射部40からの光が毛91に漏れ出すようにして毛91に照射する。すなわち、光照射部40の屈折率は、切断対象である毛91の屈折率よりも小さいので、光照射部40に毛91が接触した状態では、光照射部40から毛91に光が漏れ出すことになり、光照射部40から毛91に光が照射される。
【0104】
さらに、
図3Bに示す状態において、光照射部40から毛91に照射される光の一部が散乱することで、光照射部40からの光は、毛91の周辺の皮膚92にも照射することになる。具体的には、光照射部40における毛91との接触部位から漏れ出た光の一部は、毛91にて散乱して皮膚92に照射する。ここで、
図3Bに示すように、主として毛91に照射する光を第1照射光Op1、主として皮膚92に照射する光を第2照射光Op2とする。すなわち、光照射部40に毛91が接触した状態においては、光照射部40からは、第1照射光Op1が毛91に照射されるとともに、第2照射光Op2が皮膚92に照射する。
【0105】
特に、光照射部40から毛91に第1照射光Op1が照射すると、光照射部40から毛91に照射する光(第1照射光Op1)のエネルギにて、毛91が切断される。要するに、本実施形態では、光源21から出力されて光導波路4を通る光の波長(例えば400nm以上700nm以下)は、毛91の中の発色団(分子にその色を提供する分子の一部)によって吸収される光の波長を含む。したがって、第1照射光Op1は、毛91の発色団によって吸収されることで熱に変換され、この熱をもって、毛91の分子の結合を破壊、又は毛91を溶融若しくは燃焼させる。光照射部40から毛91に照射する光(第1照射光Op1)の標的となり得る発色団は、例えば、ケラチン及び水等の発色団を含む。
【0106】
上述のように、ユーザが、毛切断装置1としてのヘッド3(第2ケース30)を、皮膚92に沿って矢印A1(
図3A参照)の向きに移動させることで、皮膚92から突出した毛91を切断することができる。したがって、光導波路4が通過した後は、
図3Cに示すように、皮膚92には、切り残しとなる毛91の根元部分のみが残ることになる。
【0107】
ただし、毛切断装置1では、
図3Bに示すように、光照射部40が毛91に接触しなくても、例えば、光照射部40と空気との界面からの空気側への光(エバネッセント波)の染み出し等により、光が毛91に照射することもある。そのため、光照射部40が毛91に接触した場合のみならず、光照射部40と毛91とが接触寸前まで接近した場合等にも、毛切断装置1において、光照射部40から毛91に第1照射光Op1が照射して毛91を切断できることがある。
【0108】
ところで、皮膚92の状態によっては、
図4A及び
図4Bに示すように、毛切断装置1及び毛切断システム10を使用して毛91(ここでは「ひげ」)の切断(ここでは「そる」)を行う際に、光照射部40が皮膚92の一部に接触する場合もある。
図4A及び
図4Bは、皮膚92における毛91の周辺(毛根周辺)に、一例としてニキビ等の隆起部922が存在する場合の、毛切断装置1及び毛切断システム10の使用例を示す。隆起部922は、皮膚92のうち、隆起部922の周辺の皮膚92の表面921に比較して盛り上がった(隆起した)部位である。
【0109】
すなわち、
図4Aに示すように、光照射部40が毛91に接触していない状態では、光照射部40には空気が接することになるため、光照射部40と空気との屈折率の差によって、光照射部40からの光の漏れはほとんど生じない。この状態で、ユーザは、毛切断装置1としてのヘッド3(第2ケース30)を、皮膚92の表面921に沿って
図4Aにおける矢印A1の向きに移動させる。
【0110】
ヘッド3(第2ケース30)の移動に伴って、
図4Bに示すように、光照射部40は、ヘッド3の進行方向の前方(つまりY軸の負の向き)に位置する毛91に接触する。このとき、光照射部40と毛91との屈折率の差によって、光照射部40からの光(第1照射光Op1)が毛91に漏れ出すようにして毛91に照射する。光照射部40から毛91に第1照射光Op1が照射すると、光照射部40から毛91に照射する光(第1照射光Op1)のエネルギにて、毛91が切断される。
【0111】
さらに、
図4Bに示す状態において、光照射部40は、皮膚92における毛91の周辺の隆起部922にも接触する。このとき、光照射部40と皮膚92の表面921(隆起部922)との屈折率の差によって、光照射部40からの光が皮膚92に漏れ出すようにして皮膚92に照射する。すなわち、光照射部40の屈折率は、皮膚92の表面921の屈折率よりも小さいので、光照射部40に皮膚92が接触した状態では、光照射部40から皮膚92に光が漏れ出すことになり、光照射部40から皮膚92に光(第2照射光Op2)が照射される。このとき、光照射部40から皮膚92には第2照射光Op2が直接的に照射され、第2照射光Op2は、主として隆起部922に照射される。
【0112】
(2.6)制御回路
次に、本実施形態に係る毛切断システム10の制御回路6の構成について、
図5及び
図6を参照して説明する。
【0113】
制御回路6は、
図5に示すように、光源21、電池23、ファン24及び操作部26等に電気的に接続されている。制御回路6は、入力部61と、モード切替部62と、出力調整部63と、駆動部64と、を有している。
【0114】
制御回路6は、例えば、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含んでいる。マイクロコントローラは、1以上のメモリに記録されているプログラムを1以上のプロセッサで実行することにより、制御回路6としての機能を実現する。プログラムは、予めメモリに記録されていてもよいし、メモリカードのような非一時的記録媒体に記録されて提供されたり、電気通信回線を通して提供されたりしてもよい。言い換えれば、上記プログラムは、1以上のプロセッサを、制御回路6として機能させるためのプログラムである。
【0115】
入力部61には、ユーザの操作に応じた電気信号が、操作部26から入力される。例えば、操作部26が光源21の点灯/消灯の切り替え等の操作を受け付けた場合に、この操作に応じた電気信号が入力部61に入力される。
【0116】
モード切替部62は、光源21の動作モードの切り替えを行う。本実施形態では、光源21の動作モードとしては、後述する第1モード及び第2モードの2種類のモードを有している。モード切替部62は、例えば、入力部61からの電気信号に従って、これら第1モードと第2モードとの切り替えを行う。
【0117】
駆動部64は、光源21に電力を供給することで光源21を駆動する。つまり、駆動部64は、半導体レーザからなる光源21に駆動電流I1を供給することで、光源21を発光(点灯)させる。ここで、駆動部64は、光源21を駆動する際には、
図5に示すように、発光期間T1と消灯期間T2とを交互に繰り返す矩形波状の駆動電流I1を光源21に供給することで、光源21を発光させる。つまり、駆動部64は、パルス電流からなる駆動電流I1を光源21に供給し、これを受けて、光源21は間欠的に光を発生(点滅)する。
【0118】
すなわち、駆動電流I1の発光期間T1に光源21は発光し、駆動電流I1の消灯期間T2に光源21は消灯するので、光源21は駆動電流I1の周波数に合わせて間欠的に光を発生(点滅)する。要するに、光源21は、発光期間T1及び消灯期間T2を繰り返すことにより間欠的に光を発生する。本実施形態では一例として、駆動電流I1のデューティ(1周期に占める発光期間T1の割合)は50%であると仮定する。つまり、発光期間T1の時間長さと消灯期間T2の時間長さとは等しい。
【0119】
ところで、本実施形態では、光源21の動作モードとしては、第1モード及び第2モードの2種類のモードを有している。
【0120】
第1モードは、皮膚92への作用を優先するモードであって、発光期間T1の時間長さが1万分の1秒以下となるモードである。つまり、光源21の動作モードが第1モードであれば、光源21の発光期間T1の時間長さは、1万分の1秒以下である。言い換えれば、第1モードにおいては、駆動部64は、周波数が5kHz以上の駆動電流I1にて光源21を駆動する。これにより、光源21が連続的に光を発生する最大時間は、10000分の1秒(1/10000s)以下となる。本実施形態では一例として、光源21の動作モードが第1モードである場合における、光源21の発光期間T1の時間長さは15000分の1秒である。
【0121】
第2モードは、毛91の切断を優先するモードであって、発光期間T1の時間長さが百分の1秒以上となるモードである。つまり、光源21の動作モードが第2モードであれば、光源21の発光期間T1の時間長さは、百分の1秒以上である。言い換えれば、第2モードにおいては、駆動部64は、周波数が50Hz以下の駆動電流I1にて光源21を駆動する。これにより、光源21が連続的に光を発生する最小時間は、100分の1秒(1/100s)以上となる。本実施形態では一例として、光源21の動作モードが第2モードである場合における、光源21の発光期間T1の時間長さは80分の1秒である。
【0122】
ここで、制御回路6は、これら第1モードと第2モードとの切り替えを行うモード切替部62を有している。すなわち、本実施形態では、光源21の動作モードは、発光期間T1の時間長さが1万分の1秒以下である第1モードと、発光期間T1の時間長さが百分の1秒以上である第2モードと、の切り替えが可能である。
【0123】
出力調整部63は、駆動部64を制御することで光源21の出力を調整する。出力調整部63での調整対象となる光源21の出力は、光源21が発生する光強度(明るさ)及び光の波長等を含む。出力調整部63は、例えば、入力部61からの電気信号に従って、光源21の出力の調整を行う。
【0124】
特に、本実施形態では、上述したように、光導波路4を通る光のパワー密度は、光源21からの出力にて調整されている。そのため、出力調整部63は、光源21の出力の大きさ(パワー密度)を調整することによって、光導波路4を通る光のパワー密度を調整する。具体的には、出力調整部63は、駆動部64から光源21に供給される駆動電流I1の大きさを変化させることで、光源21から光導波路4に出力される光のパワー密度を調整する。
【0125】
さらに、上述したように、光導波路4を通る光のパワー密度が可変である場合、パワー密度の変化は、出力調整部63にて実現される。すなわち、出力調整部63は、光源21の出力の大きさ(パワー密度)を変化させることで、光導波路4を通る光のパワー密度を変化させる。出力調整部63は、例えば、入力部61からの電気信号に従って、これら光源21の出力の大きさ(パワー密度)を変化させる。
【0126】
次に、上述した制御回路6を備えた毛切断システム10の動作例について、
図6を参照して説明する。
図6は、本実施形態に係る毛切断システム10の動作例を示すフローチャートである。
【0127】
毛切断システム10は、まず、光源21の動作モードが第1モードであるか否かの判定を行う(S1)。このとき、動作モードが第1モードであれば(S1:Yes)、毛切断システム10は、発光期間T1の時間長さを1万分の1秒以下に設定して、駆動部64にて光源21を駆動する(S2)。一方、動作モードが第1モードでなければ(S1:No)、毛切断システム10は、処理S2をスキップして処理S3に移行する。
【0128】
処理S3では、毛切断システム10は、光源21の動作モードが第2モードであるか否かの判定を行う。このとき、動作モードが第2モードであれば(S3:Yes)、毛切断システム10は、発光期間T1の時間長さを100分の1秒以上に設定して、駆動部64にて光源21を駆動する(S4)。一方、動作モードが第2モードでなければ(S3:No)、毛切断システム10は、処理S4をスキップして処理を終了する。
【0129】
毛切断システム10は、上記処理S1~S4を繰り返し実行する。
図6に示すフローチャートは、毛切断システム10の動作の一例に過ぎず、例えば、処理の順序が適宜入れ替わってもよいし、適宜、処理が追加又は省略されてもよい。
【0130】
(3)作用
次に、本実施形態に係る毛切断装置1及び毛切断システム10にて期待し得る作用について説明する。
【0131】
まず、毛切断装置1及び毛切断システム10の基本的な機能である毛91の切断については、「(2.5)使用例」の欄で説明したようなメカニズムにより実現される。
【0132】
ここで、本実施形態では、光照射部40から毛91に照射する第1照射光Op1は、400nm以上700nm以下の波長を持つので、例えば、ケラチン及び水等の毛91に含まれる発色団に吸収されやすい。また、本実施形態では、少なくとも毛91の切断時において、光導波路4を通る光のパワー密度は50kW/cm2以上である。そのため、光照射部40から毛91に照射する第1照射光Op1においても、毛91を切断するのに十分なパワー密度(50kW/cm2以上)を持ち得る。
【0133】
加えて、本実施形態では、上述したように、光源21の動作モードが、毛91の切断を優先する第2モードであれば、光源21の発光期間T1の時間長さが百分の1秒以上となる。そのため、毛切断装置1は、例えば、1回の発光期間T1において、毛91を切断するのに十分なエネルギの第1照射光Op1を毛91に照射することができる。したがって、本実施形態に係る毛切断装置1及び毛切断システム10によれば、比較的に短時間で毛91を切断することができる。そのため、本実施形態に係る毛切断装置1及び毛切断システム10によれば、毛91の引っ掛かり又は噛み込み等も生じにくく、スムーズな毛91の切断を実現しやすい。
【0134】
さらに、毛切断装置1及び毛切断システム10では、比較的に短時間で毛91を切断できるので、毛切断装置1が1箇所にとどまりにくく、皮膚92の同一箇所に長時間にわたって光が照射するような事態も起こりにくいため、皮膚92へのダメージも与えにくい。結果的に、改善された毛切断装置1及び毛切断システム10を提供できる、という利点がある。
【0135】
次に、本実施形態に係る毛切断装置1の副次的な機能である皮膚92への作用について説明する。
【0136】
すなわち、光照射部40から皮膚92に照射する第2照射光Op2は、400nm以上700nm以下の波長を持つので、殺菌又は活性化等の皮膚92への作用も期待できるようになる。つまり、皮膚92に照射する第2照射光Op2が、例えば、400nm以上450nm以下の波長を持つ場合、皮膚92に存在するアクネ菌等に対する殺菌作用が期待できる。特に、
図4A及び
図4Bに例示したように、皮膚92における毛91の周辺に、ニキビ等の隆起部922が存在する場合には、光照射部40から隆起部922に第2照射光Op2が直接的に照射し、より効果的な殺菌作用等を期待できる。
【0137】
さらに、皮膚92に照射する第2照射光Op2が、例えば、450nm以上700nm以下の波長を持つ場合、皮膚92の活性化作用が期待できる。つまり、第2照射光Op2が皮膚92に照射されることによって、皮膚92が活性化され、肌質の改善等のいわゆる「美肌効果」といった作用が期待できる。
【0138】
また、本実施形態では、少なくとも毛91の切断時において、光導波路4を通る光のパワー密度は50kW/cm2以上である。そのため、光照射部40から皮膚92に照射する第2照射光Op2においても、光導波路4を通る光と同程度のパワー密度(50kW/cm2以上)を持ち得る。ここで、本実施形態では、接触面である対向面511からの光照射部40の高さL0は1μm以上であって、毛91の切断時において、皮膚92の表面921から光照射部40を離すことができる。そのため、皮膚92に対しては、基本的には、毛91で散乱した第2照射光Op2が照射されるのであって、皮膚92に照射される第2照射光Op2のパワー密度を、適度に小さく抑えることができる。一方で、接触面である対向面511からの光照射部40の高さL0は、100μm以下に設定されるので、ニキビ等の隆起部922にも効果的に第2照射光Op2を作用させることができる。
【0139】
加えて、本実施形態では、上述したように、光源21の動作モードが皮膚92への作用を優先する第1モードであれば、光源21の発光期間T1の時間長さが1万分の1秒以下となる。そのため、毛切断装置1は、例えば、1回の発光期間T1において、皮膚92に照射される第2照射光Op2のエネルギを、適度に小さく抑えることができる。具体的には、光導波路4を通る光のパワー密度が50kW/cm2であって、1回の発光期間T1の時間長さが10000分の1秒(1/10000s)であるとすれば、単位面積当たりの第2照射光Op2のエネルギは、最大でも5J/cm2に抑えられる。
【0140】
したがって、本実施形態に係る毛切断装置1及び毛切断システム10によれば、毛91の切断のみならず、皮膚92への作用といった副次的な機能も期待できる。しかも、毛切断装置1及び毛切断システム10では、皮膚92に照射する第2照射光Op2のエネルギを適度に調整することで、皮膚92へのダメージを与えにくくしながらも、皮膚92の殺菌又は活性化等の作用が期待できる。結果的に、改善された毛切断装置1及び毛切断システム10を提供できる、という利点がある。
【0141】
(4)変形例
実施形態1は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態1は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、本開示で参照する図面は、いずれも模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。以下、実施形態1の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0142】
(4.1)第1変形例
実施形態1の第1変形例に係る毛切断装置1について、
図7A~
図8Dを参照して説明する。
【0143】
本変形例では、光導波路4の構成が実施形態1に係る毛切断装置1と相違する。すなわち、実施形態1では、
図7Aに示すように、コア部41及びクラッド部42を備える光導波路4のうち、先端側から所定長さ分についてクラッド部42を除去し、コア部41をむき出しにすることで、むき出しにされたコア部41が光照射部40を構成する。これに対して、
図7Bに示す変形例では、光導波路4Aは、先端側から所定長さ分について、コア部41の周方向の一部のみ、クラッド部42が除去されることでコア部41が露出している。
図7Cに示す変形例では、光導波路4Bは、クラッド部42に対して偏心したコア部41を有しており、コア部41の周方向の一部のみ、クラッド部42から露出している。
【0144】
すなわち、
図7B及び
図7Cに示す変形例では、光導波路4A,4Bは、コア部41の少なくとも一部を覆うクラッド部42を有している。光照射部40は、コア部41の周方向の一部であってクラッド部42から露出する部位からなる。このように、本変形例においては、コア部41の周方向の全周にわたってクラッド部42が存在しない実施形態1とは異なり、コア部41の周方向の一部についてのみクラッド部42が存在しない。そのため、本変形例における光導波路4A,4Bにおいては、コア部41の周方向における光照射部40以外の部位については、クラッド部42で覆われることになるため、コア部41からの必要以上の光の漏れが生じにくい。
【0145】
図8Aは、実施形態1に係る毛切断装置1の構成をベースに、光導波路4に代えて、
図7Bに示す光導波路4Aを採用した場合の毛切断装置1を示す概略断面図である。
図8Aに示す変形例においても、実施形態1に係る毛切断装置1と同様に、保持部材5は、少なくとも一面から光照射部40が露出する態様で、光導波路4Aを保持する。このような構成であっても、光導波路4Aの光照射部40から、毛91に対しては第1照射光Op1が照射され、皮膚92に対しては第2照射光Op2が照射される。
【0146】
図8Bは、実施形態1に係る毛切断装置1の構成をベースに、光導波路4に代えて、
図7Cに示す光導波路4Bを採用した場合の毛切断装置1を示す概略断面図である。
図8Bに示す変形例においても、実施形態1に係る毛切断装置1と同様に、保持部材5は、少なくとも一面から光照射部40が露出する態様で、光導波路4Bを保持する。このような構成であっても、光導波路4Bの光照射部40から、毛91に対しては第1照射光Op1が照射され、皮膚92に対しては第2照射光Op2が照射される。
【0147】
ところで、
図8C及び
図8Dに示すように、基台51と光導波路4A,4Bとの少なくとも一方において接着部材52に接触する部位は、複数の凹部と複数の凸部との少なくとも一方を含む起伏面R1,R2を有することが好ましい。
図8Cは、
図8Aにおける光導波路4Aの保持部材5による保持構造を示す概略図、
図8Dは、
図8Bにおける光導波路4Bの保持部材5による保持構造を示す概略図である。
図8C及び
図8Dにおいては、起伏面R1,R2が形成されている範囲(領域)に、網掛(ドットハッチング)を付している。つまり、起伏面R1,R2を表す網掛は、あくまで起伏面R1,R2の範囲を表すために便宜的に付しているに過ぎず、実際の毛切断装置1に網掛が付されている訳ではない。
【0148】
図8Cの例では、基台51において接着部材52に接触する部位は起伏面R2を有し、光導波路4Aにおいて接着部材52に接触する部位は起伏面R1を有する。
図8Cの例では、起伏面R2は、位置決め部53として基台51の側面512に形成された溝の内周面に形成され、起伏面R1は、光導波路4Aのクラッド部42の外周面に形成されている。より詳細には、光導波路4Aのうちのクラッド部42の外周面であって、光照射部40とは反対側(Y軸の正の向き)を向いた面に、起伏面R1が形成されている。
【0149】
同様に、
図8Dの例では、基台51において接着部材52に接触する部位は起伏面R2を有し、光導波路4Bにおいて接着部材52に接触する部位は起伏面R1を有する。
図8Dの例では、起伏面R2は、位置決め部53として基台51の側面512に形成された溝の内周面に形成され、起伏面R1は、光導波路4Bのクラッド部42の外周面に形成されている。より詳細には、光導波路4Aのうちのクラッド部42の外周面であって、光照射部40とは反対側(Y軸の正の向き)を向いた面に、起伏面R1が形成されている。
【0150】
本開示でいう「起伏面」は、複数の凹部と複数の凸部との少なくとも一方を含む面を意味する。つまり、起伏面R1,R2は、複数の凹部のみで構成されていてもよいし、複数の凸部のみで構成されていてもよい。さらに、起伏面R1,R2は、複数の凹部と1つの凸部とで構成されていてもよい。この場合、一例として、起伏面R1,R2は、網状の1つの凸部と、この凸部で囲まれた網目の部位からなる複数の凹部とで構成される。同様に、一例として、起伏面R1,R2は、網状の1つの凹部と、この凹部で囲まれた網目の部位からなる複数の凸部とで構成されていてもよい。
【0151】
ここでは一例として、起伏面R1,R2は、複数の凹部と複数の凸部とを含んでいる。そして、起伏面R1,R2における複数の凹部及び複数の凸部は、肉眼では個々の識別ができない程度の極めて小さなサイズを持ち、1つの起伏面R1,R2には、多数の凹部及び多数の凸部が含まれることになる。つまり、凹部及び凸部は起伏面R1,R2全体に比べて微細である。これにより、人が起伏面R1,R2を見たときに、凹部及び凸部があることで起伏面R1,R2がざらざらした「梨地」のように見えることになる。このような微細な凹部及び凸部を多数含んだ起伏面R1,R2は、例えば、シボ加工により形成される。
【0152】
このような起伏面R1,R2は、多数の凹部及び凸部により、全体として、梨地、しわ模様(シボ)、木目、岩目、砂目、又は幾何学模様等の模様(凹凸形状)を有することになる。
【0153】
また、このような微細な凹部及び凸部のサイズは、起伏面R1,R2の表面粗さで表すことができる、つまり、凹部及び凸部の形状は、起伏面R1,R2の輪郭曲線のうちの粗さ曲線に反映される。よって、起伏面R1,R2における凹部及び凸部のサイズは、起伏面R1,R2の算術平均粗さ(Ra)に相当する。そのため、溝(位置決め部53)の内周面(起伏面R2)の算術平均粗さ(Ra)は、基台51の側面512のうちの溝(位置決め部53)以外の部位の算術平均粗さ(Ra)よりも大きい。言い換えれば、基台51において接着部材52に接触する部位は、基台51において接着部材52に接触しない部位よりも粗い面である。同様に、クラッド部42の外周面(起伏面R1)の算術平均粗さ(Ra)は、コア部41の外周面の算術平均粗さ(Ra)よりも大きい。言い換えれば、光導波路4A,4Bにおいて接着部材52に接触する部位は、光導波路4A,4Bにおいて接着部材52に接触しない部位よりも粗い面である。
【0154】
光導波路4A,4Bの起伏面R1は、クラッド部42の外周面上に形成された、複数の凹部と複数の凸部との少なくとも一方を含む無機部材又は有機部材の層にて実現されてもよい。または、光導波路4A,4Bの起伏面R1は、コア部41の外周面上に形成された、複数の凹部と複数の凸部との少なくとも一方を含む無機部材又は有機部材の層にて実現されてもよい。
【0155】
このように、基台51と光導波路4A,4Bとの少なくとも一方において接着部材52に接触する部位が起伏面R1,R2を有することで、アンカー効果により、接着部材52による基台51と光導波路4A,4Bとの接着力(密着性)が向上する。結果的に、保持部材5による光導波路4A,4Bの保持構造について、耐久性の向上を図りやすい。また、ここでは、基台51と光導波路4A,4Bとの両方における接着部材52に接触する部位が起伏面R1,R2を有する例を示したが、基台51と光導波路4A,4Bとの一方のみにおける接着部材52に接触する部位が起伏面を有していてもよい。さらに、第1変形例以外の態様(例えば、実施形態1又は実施形態1の第1変形例以外の変形例)であっても、基台51と光導波路4との少なくとも一方において接着部材52に接触する部位が起伏面を有する構成は、採用可能である。
【0156】
また、第1変形例に係る毛切断装置1のように、光照射部40(コア部41)の一部がクラッド部42から露出している場合には、接着部材52は、クラッド部42と基台51とを接着すればよく、直接的に光照射部40(コア部41)に接触しない。そのため、接着部材52の屈折率は、クラッド部42の屈折率と同等、又はクラッド部42の屈折率以下でなくてもよく、クラッド42の屈折率に関わらず適宜設定可能である。
【0157】
(4.2)第2変形例
実施形態1の第2変形例に係る毛切断装置1について、
図9A~
図9Fを参照して説明する。本変形例では、
図9A~
図9Fに示すように、保持部材5による光導波路4のコア部41(光照射部40)の保持の態様が実施形態1とは相違する。
【0158】
図9A~
図9Cに示す例では、保持部材5の基台51に形成されている位置決め部53としての溝の形状が、実施形態1(断面V字状)とは相違する。すなわち、
図9Aの例では、位置決め部53としての溝は、短手方向(幅方向)の中心に近づくほどに深くなる、断面半円弧状(U字状)の溝である。
図9Bの例では、位置決め部53としての溝は、短手方向(幅方向)において深さが均一となる断面矩形状(長方形状)の溝である。
図9Cの例では、位置決め部53としての溝は、短手方向(幅方向)の中心側ほどに深くなる、断面台形状の溝である。
【0159】
また、
図9D~
図9Fに示す例では、保持部材5は、光照射部40(コア部41)を基台51に接触させた状態で、光導波路4を保持している。すなわち、
図9Dの例では、コア部41が位置決め部53(溝)の底面に接触した状態で、位置決め部53としての断面V字状の溝内にコア部41が配置されている。
図9Eの例では、位置決め部54は、基台51の側面512(
図2B参照)における短手方向の両端部から突出するリブであって、位置決め部54である一対のリブの間にコア部41が配置されている。
図9Fの例では、コア部41が位置決め部53(溝)を埋め尽くすように、位置決め部53としての断面V字状の溝内にコア部41が配置されている。
【0160】
また、
図9Fの例からも明らかなように、保持部材5が接着部材52(
図2A等参照)を有することは、毛切断装置1に必須の構成ではない。すなわち、保持部材5が接着部材52を有していなくても、保持部材5は、光導波路4、特に光照射部40としてのコア部41を保持することが可能である。つまり、保持部材5が基台51のみを有する構成であっても、光導波路4の光照射部40は保持部材5(基台51)にて保持可能である。この場合、光照射部40(コア部41)は保持部材5(基台51)に対して直接的に固定されていればよい。コア部41を基台51に直接的に固定する手段としては、例えば、コア部41と基台51とを二色成形等により一体成形する手段、コア部41を基台51に溶着する手段、又は、コア部41を基台51に圧着する手段等がある。
【0161】
(4.3)その他の変形例
以下、実施形態1の第1変形例及び第2変形例以外の変形例について説明する。
【0162】
また、実施形態1に係る毛切断システム10の制御回路6と同様の機能は、制御方法、コンピュータプログラム、又はコンピュータプログラムを記録した記録媒体等で具現化されてもよい。すなわち、制御回路6に対応する機能を、制御方法、コンピュータプログラム、又はコンピュータプログラムを記録した記録媒体等で具現化してもよい。
【0163】
本開示における毛切断システム10は、制御回路6等にコンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における制御回路6としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very LargeScale Integration)、又はULSI(UltraLarge Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable GateArray)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0164】
また、毛切断システム10の少なくとも一部の機能が、1つの筐体内に集約されていることは毛切断システム10に必須の構成ではなく、毛切断システム10の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。また、毛切断システム10における制御回路6等の少なくとも一部の機能は、例えば、サーバ又はクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0165】
反対に、実施形態1において、複数の筐体(ケース)に分散されている毛切断システム10の少なくとも一部の機能が、1つの筐体(ケース)内に集約されていてもよい。例えば、毛切断システム10は、第1ケース20及び第2ケース30に代えて、分離できない一体のケースを有していてもよい。この場合、毛切断システム10の構成要素は、1つのケースに収容又は付設されることになる。
【0166】
また、操作部26は、メカニカルスイッチに限らず、タッチスイッチ、光学式若しくは静電容量式の非接触スイッチ、又はジェスチャセンサ等であってもよい。さらに、操作部26は、例えば、スマートフォン等の外部端末からの操作信号を受け付ける通信部、又はユーザの音声操作を受け付ける音声入力部等であってもよい。
【0167】
また、毛切断装置1は、物理的な「刃」にて毛91を切断するシェーバ(刃が駆動される電気シェーバを含む)等と組み合わされてもよい。この場合、毛切断装置1は、光照射部40に加えて、物理的な「刃」を有することで、光照射部40から照射される光と物理的な「刃」との両方で、毛91を切断できる。
【0168】
また、光導波路4は、コア部41及びクラッド部42が合成石英製である光ファイバに限らず、例えば、石英(SiO2)製又はプラスチック製の光ファイバであってもよい。プラスチック製の光ファイバの例としては、クラッド部42がフッ素系ポリマ等からなり、コア部41が完全フッ素化ポリマ、ポリメタクリル酸メチル系又はポリカーボネート等からなる光ファイバがある。さらに、光導波路4は、スラブ導波路、矩形光導波路又はフォトニック結晶ファイバ等であってもよい。
【0169】
また、光導波路4は、最小限の構成としてコア部41を有していればよく、クラッド部42は適宜省略されていてもよい。
【0170】
また、保持部材5における接着部材52の屈折率が光照射部40の屈折率よりも小さいことは、毛切断装置1に必須の構成ではない。つまり、接着部材52の屈折率は、光照射部40の屈折率以上であってもよい。
【0171】
また、保持部材5において、基台51の長手方向(X軸方向)の全長にわたって、接着部材52にて光導波路4を基台51に接着することは、毛切断装置1に必須の構成ではない。すなわち、保持部材5は、基台51の長手方向の一部でのみ、接着部材52にて光導波路4を局所的に基台51に接着することで、光導波路4を保持する構成であってもよい。この場合、光導波路4には、基台51に対して接着されている部位と、接着されていない部位と、が生じる。この場合、光導波路4のずれ等が極力抑えられるように、接着部材52は、複数個所で光導波路4を基台51に接着することが好ましい。
【0172】
また、光照射部40と基台51との間の隙間は、少なくとも、毛切断装置1における毛91の切断時以外において確保されていればよく、毛91の切断時には、光照射部40が基台51に接触してもよい。例えば、光導波路4が、基台51の長手方向の両端部でのみ接着部材52にて基台51に接着された構成では、基台51の長手方向の中央部では、光導波路4は基台51に対して接着されていない。このような構成において、基台51の長手方向の中央部では、毛切断装置1による毛91の切断時以外において、光導波路4は基台51から浮いた状態で保持されていればよい。つまり、基台51の長手方向の中央部においては、光導波路4は、例えば、毛切断装置1による毛91の切断時に、毛91からの反力を受けて基台51に押し付けられてもよい。
【0173】
また、光源21は、単一波長の光に限らず、例えば、複数の波長の光を発生してもよい。この場合、光源21は、複数の波長の光を、同時に発生してもよいし、順次切り替えながら発生してもよい。この構成では、光照射部40から毛91に照射する光(第1照射光Op1)は、複数の波長に対応する複数の発色団を標的とし得るので、複数種類の分子の結合を破壊することができ、毛91の切断効率の向上を図ることができる。
【0174】
また、毛切断装置1は、光導波路4を複数備えていてもよい。この場合、毛切断装置1は、複数の光導波路4の各々の光照射部40にて毛91に光を照射して毛91を切断することが可能になる。ここで、複数の光導波路4は、同一の波長の光を通してもよいし、互いに異なる複数の波長の光を通してもよい。
【0175】
また、実施形態1では、光源21の動作モードについて、第1モードと第2モードとの切替えが手動で行われているが、この例に限らず、第1モードと第2モードとの切替えが自動的に行われてもよい。一例として、光源21の動作モードが、第1モード及び第2モードに加えて、第3モードとしての混合モードを含む場合に、モード切替部62は、混合モード(第3モード)を選択できてもよい。混合モード(第3モード)においては、第1モードと第2モードとが、例えば、周期的に交互に切り替わる。そのため、光源21の動作モードが混合モード(第3モード)であれば、光源21は、発光期間T1の時間長さが1万分の1秒以下である第1モードと、発光期間T1の時間長さが百分の1秒以上である第2モードと、を交互に繰り返すことになる。
【0176】
また、電池23は、二次電池に限らず、一次電池であってもよい。さらに、毛切断システム10は、電池駆動式に限らず、例えば、系統電源(商用電源)等の外部電源からの電力供給を受けて動作してもよい。この場合、毛切断システム10としての電池23は省略可能である。
【0177】
また、光導波路4を通る光のパワー密度は、光源21からの出力以外で調整されていてもよい。例えば、光学系22又は光導波路4に含まれる光学フィルタにて、光導波路4を通る光のパワー密度が調整されてもよい。あるいは、光導波路4の曲率半径を変えることによって、光導波路4を通る光のパワー密度が調整されてもよい。光導波路4の一部からコア部41を露出させ、コア部41から光の一部を漏洩させることで、光導波路4を通る光のパワー密度が調整されてもよい。
【0178】
また、光導波路4における受光部43と反対側の端部(先端部)にミラーが配置され、光導波路4の先端部まで到達する光がミラーにて光導波路4内に反射されるように構成されていてもよい。
【0179】
また、皮膚92への作用という機能は、あくまで毛切断装置1の副次的な機能であって、適宜省略可能である。つまり、毛切断装置1は、基本的な機能である毛91の切断の機能を有していればよい。
【0180】
また、固定ブロック32は、合成樹脂製に限らず、例えば、金属製であってもよい。
【0181】
また、二値間の比較において、「以上」としているところは、二値が等しい場合、及び二値の一方が他方を超えている場合との両方を含む。ただし、これに限らず、ここでいう「以上」は、二値の一方が他方を超えている場合のみを含む「より大きい」と同義であってもよい。つまり、二値が等しい場合を含むか否かは、閾値等の設定次第で任意に変更できるので、「以上」か「より大きい」かに技術上の差異はない。同様に、「未満」においても「以下」と同義であってもよい。
【0182】
(実施形態2)
本実施形態に係る毛切断装置1Aは、
図10A及び
図10Bに示すように、保持部材5による光導波路4の保持構造が、実施形態1に係る毛切断装置1とは相違する。以下、実施形態1と同様の構成については共通の符号を付して適宜説明を省略する。また、
図10A以降の図面に関しては、光導波路4のうちのコア部41が露出した部位での断面図において、その断面(紙面)よりも奥に存在するクラッド部42の図示を省略する。
【0183】
本実施形態に係る毛切断装置1Aでは、
図10Aに示すように、光導波路4(コア部41)は、Z軸方向における基台51の一端側(Z軸の負の側)に偏って配置されている。すなわち、本実施形態では、基台51の側面512のうち、短手方向(Z軸方向)における中心から見て対向面511(接触面)側の端縁寄りの位置に、コア部41の光軸(中心軸)が配置されている。これにより、実施形態1のように基台51の側面512の中心にコア部41の光軸が位置する場合に比較して、毛91の切断時において、光導波路4(コア部41)を皮膚92の表面921により近づけることが可能である。したがって、本実施形態に係る毛切断装置1Aによれば、より根元に近い位置で毛91を切断することが可能である。
【0184】
ここにおいて、
図10Bに示すように、基台51の長手方向(X軸方向)に直交する断面において、光導波路4のコア部41の一部を接着部材52に埋没させつつ、コア部41の一部が接着部材52から露出するように、接着部材52の形状が制御されている。より詳細には、毛切断装置1Aの進行方向(Y軸方向)におけるコア部41の略4分の3程度(つまり半径の3倍)の高さまで、接着部材52がコア部41の「ぬれ性」によってコア部41の周面に沿ってはい上がる。これにより、光導波路4のコア部41は、その周面の大半が接着部材52にて覆われ、残りの部分が保持部材5(接着部材52)から露出して、光照射部40を構成する。すなわち、接着部材52は、光導波路4における光照射部40以外の部位を覆っている。
【0185】
また、本実施形態では、
図10Bに示すように、接着部材52のうちのZ軸の負の向きを向いた面は、基台51の対向面511と面一である。つまり、コア部41の周面に沿ってはい上がることで光導波路4(コア部41)を覆うように形成された接着部材52は、対向面511と面一となる面を有し、この面が、毛91の切断時に皮膚92に接触する接触面として機能する。対向面511は、固定ブロック32及び第2ケース30のうちのZ軸の負の向きを向いた面とも面一であるので、接着部材52の接触面は、固定ブロック32及び第2ケース30のうちのZ軸の負の向きを向いた面とも面一となる。
【0186】
そして、実施形態1と同様に、光導波路4は、接触面(対向面511等)からの光照射部40の高さL1が100μm以下となるように、保持部材5に保持されている。さらに、本実施形態では、接触面である対向面511からの光照射部40の高さL1は1μm以上であり、ゼロ(0)ではない。ここで、本実施形態においても、接触面からの光照射部40の高さL1に代えて、接触面からの位置決め部53の高さが規定されてもよい。この場合、Z軸方向における接触面(対向面511等)から位置決め部53としての溝の縁までの距離は、100μm以下であることが好ましい。特に、本実施形態では、接触面からの位置決め部53の高さ、つまりZ軸方向における接触面(対向面511等)から位置決め部53としての溝の縁までの距離は、ゼロ(0)である。
【0187】
以上説明した本実施形態に係る毛切断装置1Aにおいても、実施形態1に係る毛切断装置1と同様に、保持部材5は、少なくとも一面から光照射部40が露出する態様で、光導波路4を保持する。このような構成であっても、光導波路4の光照射部40から、毛91に対しては第1照射光Op1(
図3B参照)が照射され、皮膚92に対しては第2照射光Op2(
図3B参照)が照射される。
【0188】
しかも、本実施形態では、実施形態1に比較して、毛91の切断時において、光導波路4(コア部41)を皮膚92の表面921により近づけることが可能であるため、コア部41からの光を皮膚92に対してより効果的に作用させることができる。すなわち、本実施形態に係る毛切断装置1Aによれば、光照射部40から毛91に照射される光の一部が散乱した場合に、散乱光は第2照射光Op2として毛91の周辺の皮膚92に照射しやすくなる。
【0189】
さらに、本実施形態では、接着部材52のうちのZ軸の負の向きを向いた面は、基台51の対向面511等と面一であって、毛91の切断時に皮膚92に接触する接触面として機能する。そのため、毛91の切断時においては、
図10Aに示すように、接着部材52が皮膚92の表面921に接触することになり、光導波路4のコア部41と皮膚92の表面921との間に、接着部材52が挟まれる格好となる。言い換えれば、光導波路4のコア部41と皮膚92との間には、接着部材52が介在することになる。
【0190】
したがって、毛切断装置1Aでは、コア部41が直接的に皮膚92に接触する場合に比べて、接着部材52にて光が減衰することになり、コア部41から皮膚92へ照射する光を適当なパワー密度に調整しやすくなる。具体的には、コア部41と接着部材52との屈折率の差、及び接着部材52と皮膚92の表面921との屈折率の差によって、コア部41から皮膚92に照射する光のパワー密度が調整されることになる。本実施形態では、接着部材52の屈折率は、コア部41(光照射部40)の屈折率よりも小さいので、コア部41から接着部材52への光の漏れ量を比較的小さく抑えることができる。その結果、毛切断装置1Aを用いた毛切断システム10においては、例えば、光源21の動作モードが毛91の切断を優先する第2モードであっても、皮膚92へのダメージを十分に抑えることができる。
【0191】
図11A及び
図11Bは、実施形態2の変形例に係る毛切断装置1Aを示している。変形例に係る毛切断装置1Aは、皮膚92の表面921からの光照射部40の高さが可変である点で、実施形態2に係る毛切断装置1Aと相違する。これにより、毛切断装置1Aでは、トリマのように、毛91を切断する際の毛91の切断面の位置、つまり切り残しとなる毛91の長さを、調整することが可能となる。
【0192】
すなわち、
図11Aに示す例では、毛切断装置1Aは、ヘッド3の第2ケース30に取外し可能に取り付けられたアタッチメント33Aを備えることで、皮膚92の表面921からの光照射部40の高さを増加させている。つまり、アタッチメント33Aが、固定ブロック32及び第2ケース30のうちのZ軸の負の向きを向いた面に取り付けられることで、アタッチメント33Aの厚み分だけ、皮膚92の表面921からの光照射部40の高さが大きくなる。アタッチメント33Aは、毛切断装置1Aの進行方向の前方(Y軸の負の向き)に突出する複数のくし歯331(
図11A及び
図11Bでは1本のみ図示)を有している。複数のくし歯331は、光照射部40の長手方向(X軸方向)に並んで配置されている。この毛切断装置1Aでは、複数のくし歯331のうち、隣接する一対のくし歯331間に、毛91が案内されることにより、毛91の切断が可能となる。
【0193】
図11Aに示す毛切断装置1Aでは、毛91の切断時に皮膚92に接触する接触面は、基台51の対向面511等ではなく、アタッチメント33AにおけるZ軸の負の向きを向いた面となる。この例において、接触面(アタッチメント33AにおけるZ軸の負の向きを向いた面)からの光照射部40の高さL2は、実施形態2における高さL1(
図10B参照)よりも大きくなる。
【0194】
また、
図11Bに示す例では、毛切断装置1Aは、ヘッド3の第2ケース30に取外し可能に取り付けられたアタッチメント33Bを備えることで、皮膚92の表面921からの光照射部40の高さを増加させている。アタッチメント33Bは、その厚みがアタッチメント33Aよりも大きい点を除き、アタッチメント33Aと共通の構成を有する。したがって、
図11Bの例では、接触面(アタッチメント33BにおけるZ軸の負の向きを向いた面)からの光照射部40の高さL3は、高さL2(
図11A参照)よりも大きくなる。
【0195】
図11A及び
図11Bに示す例においては、アタッチメント33A,33Bは、第2ケース30に対して取外し可能に取り付けられているが、この構成に限らない。例えば、アタッチメント33A,33Bは、第2ケース30に対してスライド動作することで、皮膚92の表面921からの光照射部40の高さを変化させてもよい。
【0196】
実施形態2で説明した種々の構成(変形例を含む)は、実施形態1で説明した種々の構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて採用可能である。
【0197】
(実施形態3)
本実施形態に係る毛切断装置1Bは、
図12A及び
図12Bに示すように、保持部材5による光導波路4の保持構造が、実施形態1に係る毛切断装置1とは相違する。以下、実施形態1と同様の構成については共通の符号を付して適宜説明を省略する。
【0198】
本実施形態に係る毛切断装置1Bでは、
図12A及び
図12Bに示すように、基台51における対向面511、側面512、背面513及び裏面514のうちの背面513に、光導波路4が保持されている。つまり、光導波路4は、実施形態1のような基台51の側面512ではなく、基台51の背面513に保持されている。すなわち、本実施形態では、保持部材5は、毛91の切断時に皮膚92の表面921に対向する対向面511とは反対側を向いた背面513を有している。光導波路4は、保持部材5における背面513に保持されている。特に、背面513は、基台51において、毛切断装置1Bの進行方向(Y軸方向)に沿った面であって、Z軸の正の向きを向いた面である。そのため、光導波路4の光照射部40は、保持部材5における毛切断装置1Bの進行方向に沿った面(Z軸の正の向きを向いた面)に固定されることになる。
【0199】
本実施形態では、基台51のうち、光導波路4が保持される背面513に、光導波路4の位置決めを行う位置決め部53が形成されている。位置決め部53は、基台51の背面513に形成された溝からなる。光導波路4は、クラッド部42が除去されてむき出しになったコア部41の少なくとも一部が、位置決め部53としての溝内に収容されるようにして、基台51の背面513に、接着部材52にて保持される。
【0200】
さらに、本実施形態に係る毛切断装置1Bでは、光導波路4(コア部41)は、Y軸方向における基台51の一端側(Y軸の負の側)に偏って配置されている。すなわち、本実施形態では、基台51の背面513のうち、短手方向(Y軸方向)における中心から見て、毛切断装置1Bの進行方向の前方(Y軸の負の向き)側の端縁寄りの位置に、コア部41の光軸(中心軸)が配置されている。これにより、保持部材5は、基台51の背面513にて光導波路4を保持しながらも、毛91の切断時においては、毛91に光照射部40が接触しやすい。
【0201】
また、本実施形態においても、毛91の切断時に皮膚92に接触する接触面(対向面511)からの光照射部40の高さL4が100μm以下となるように、光導波路4が保持部材5に保持されることが好ましい。ただし、コア部41と接触面(対向面511)との間には基台51が介在するので、接触面である対向面511からの光照射部40の高さL4は1μm以上であり、ゼロ(0)ではない。
【0202】
以上説明した本実施形態に係る毛切断装置1Bにおいても、実施形態1に係る毛切断装置1と同様に、保持部材5は、少なくとも一面から光照射部40が露出する態様で、光導波路4を保持する。このような構成であっても、光導波路4の光照射部40から、毛91に対しては第1照射光Op1(
図3B参照)が照射され、皮膚92に対しては第2照射光Op2(
図3B参照)が照射される。
【0203】
しかも、本実施形態では、光導波路4(コア部41)と皮膚92の表面921との間に、基台51が介在する。したがって、コア部41から接着部材52に漏れ出た光は、基台51を通して皮膚92に照射することが可能である。ここで、接着部材52及び基台51にて光が減衰することになり、コア部41から皮膚92へ照射する光を適当なパワー密度に調整しやすくなる。具体的には、コア部41と接着部材52との屈折率の差、接着部材52と基台51との屈折率の差、及び基台51と皮膚92の表面921との屈折率の差によって、コア部41から皮膚92に照射する光のパワー密度が調整される。
【0204】
図13は、実施形態3の変形例に係る毛切断装置1Bを示している。変形例に係る毛切断装置1Bは、基台51がシート材である点で、実施形態3に係る毛切断装置1Bと相違する。ここでは一例として、基台51としてのシート材は柔軟性を有する合成樹脂製のシートであると仮定する。
【0205】
また、本変形例では、基台51であるシート材の屈折率は、光照射部40の屈折率よりも小さい。つまり、光照射部40(コア部41)の屈折率が「1.4698」であるとすれば、基台51であるシート材の屈折率は「1.4698」よりも小さい。ここでは一例として、基台51(シート材)の屈折率は、クラッド部42の屈折率と略同一である。
【0206】
さらに、
図13に示す毛切断装置1Bでは、基台51がシート材であるため、位置決め部53(
図12B参照)としての溝が省略され、平坦な基台51の一表面(厚み方向の一方の面)に光導波路4が接着部材52にて接着さされている。すなわち、本変形例に係る毛切断装置1Bでは、基台51は、シート材であって、光導波路4は、シート材の厚み方向の一方の面に接着部材52にて保持されている。
【0207】
本変形例によれば、実施形態3の毛切断装置1Bに比較して、毛91の切断時において、光導波路4(コア部41)を皮膚92の表面921により近づけることが可能である。したがって、本変形例に係る毛切断装置1Bによれば、より根元に近い位置で毛91を切断することが可能である。また、コア部41と接着部材52との屈折率の差、接着部材52と基台51(シート材)との屈折率の差、及び基台51(シート材)と皮膚92の表面921との屈折率の差によって、コア部41から皮膚92に照射する光のパワー密度の調整が可能である。
【0208】
実施形態3で説明した種々の構成(変形例を含む)は、実施形態1又は実施形態2で説明した種々の構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて採用可能である。
【0209】
(実施形態4)
本実施形態に係る毛切断装置1Cは、
図14A及び
図14Bに示すように、保持部材5の形状が、実施形態3に係る毛切断装置1とは相違する。以下、実施形態3と同様の構成については共通の符号を付して適宜説明を省略する。
【0210】
本実施形態では、基台51は、毛切断装置1Cの進行方向の前方(Y軸の負の向き)に突出する複数の突起部55を有している。複数の突起部55は、光照射部40の長手方向(X軸方向)に並んで配置されている。本実施形態では一例として、基台51と複数の突起部55とは、分離できない態様で一体に形成された樹脂成形品である。ここで、複数の突起部55においてZ軸の負の向きを向いた面は、基台51におけるZ軸の負の向きを向いた面である対向面511(
図12B参照)と面一である。したがって、毛切断装置1Cでは、毛91の切断時に皮膚92に接触する接触面は、基台51の対向面511、及び複数の突起部55におけるZ軸の負の向きを向いた面となる。
【0211】
本実施形態に係る毛切断装置1Cにおいても、実施形態3と同様に、光導波路4は、基台51のうち、毛切断装置1Cの進行方向(Y軸方向)に沿った面であって、Z軸の正の向きを向いた背面513(
図12B参照)に保持される。そのため、光導波路4は、基台51の背面513における複数の突起部55の付け根付近に、光照射部40を露出させるように接着部材52にて保持されることになる。言い換えれば、複数の突起部55は、基台51のうち、毛91の切断時に皮膚92の表面921に対して交差する側面512(
図12B参照)から突出している。そして、基台51における側面512であって、隣接する一対の突起部55の間からは、基台51に保持されている光照射部40が露出する。
【0212】
以上説明した本実施形態に係る毛切断装置1Cでは、毛91の切断時においては、
図15に示すように、複数の突起部55のうち、隣接する一対の突起部55間に、毛91が案内されることにより、毛91の切断が可能となる。つまり、一対の突起部55の間においては、基台51に保持された光導波路4の光照射部40が露出するので、一対の突起部55間に案内された毛91に光照射部40が接触し、光照射部40から毛91に対して第1照射光Op1が照射され、毛91が切断される。
【0213】
すなわち、本実施形態では、保持部材5は、複数の突起部55を有している。複数の突起部55は、毛91の切断時に皮膚92の表面921に対して交差する面(側面512)であって、光照射部40が露出する一面(側面512)から突出する。光照射部40は、複数の突起部55における隣接する一対の突起部55の間に導入された毛91に光を照射する。したがって、光照射部40は、その長手方向の全長にわたって毛91が接触するのではなく、隣接する一対の突起部55の間から露出する部分にのみ毛91が接触し得ることになる。これにより、毛切断装置1Cでは、光照射部40が毛91に接触することで光照射部40から毛91に漏れ出す光の量を抑えることができ、光導波路4を通る光の損失を小さく抑えることが可能である。
【0214】
また、本実施形態に係る毛切断装置1Cにおいても、光照射部40から皮膚92に対しては第2照射光Op2(
図3B参照)が照射される。ただし、第2照射光Op2の一部は、複数の突起部55の各々で遮られることになり、皮膚92には到達しない。つまり、皮膚92のうち、光照射部40から見て複数の突起部55の影になる部分には、光照射部40からの第2照射光Op2は直接的には届かないため、皮膚92に照射する光のエネルギを適当な大きさに調整しやすくなる。言い換えれば、第2照射光Op2は、隣接する一対の突起部55の隙間から局所的に皮膚92に照射するので、皮膚92の広範囲にわたって光が照射する場合に比べて、皮膚92に照射する光のエネルギを小さく抑えることができる。
【0215】
さらに、本実施形態に係る毛切断装置1Cは、
図16A及び
図16Bに示すように、毛91の切断時において、複数の突起部55にて皮膚92を部分的に押さえつけることが可能である。
図16A及び
図16Bは、いずれも毛91の切断時において、毛切断装置1Cの進行方向の前方(Y軸の負の向き)から見た光導波路4及び保持構造5周辺の構成を示す概略図である。
【0216】
すなわち、
図16Aに示すように、切断対象である毛91の両側の皮膚92が一対の突起部55で押さえつけられることにより、一対の突起部55の間から露出する、毛91の周辺の皮膚92は、盛り上がることになる。そのため、毛切断装置1Cによれば、より根元に近い位置で毛91を切断することが可能である。しかも、皮膚92への作用に関しても、
図16Bに示すように、一対の突起部55の間で盛り上がった皮膚92は、光照射部40に近づいて光照射部40に接触しやすくなるので、光照射部40から皮膚92に対しても光が効率的に照射される。
【0217】
実施形態4の変形例として、複数の突起部55の形状は、適宜変更可能である。例えば、複数の突起部55の各々は、平面視において(Z軸の一方から見て)、直線状に限らず、矩形状、台形状、三角形状、半円状又は曲線状等の任意の形状を採用し得る。
【0218】
実施形態4で説明した種々の構成(変形例を含む)は、実施形態1、実施形態2又は実施形態3で説明した種々の構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて採用可能である。
【0219】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係る毛切断装置(1,1A~1C)は、光導波路(4,4A,4B)を備える。光導波路(4,4A,4B)は、光照射部(40)を有する。光照射部(40)は、皮膚(92)から突出する毛(91)に光を照射することで毛(91)の切断を行う。少なくとも毛(91)の切断時において、光導波路(4,4A,4B)を通る光のパワー密度は50kW/cm2以上である。
【0220】
この態様によれば、毛(91)の切断時における、光導波路(4,4A,4B)を通る光のパワー密度が50kW/cm2以上であるので、光照射部(40)から毛(91)に照射する光で毛(91)を効率的に切断しやすい。つまり、毛(91)を切断するのに十分な光エネルギを光導波路(4,4A,4B)から毛(91)に与えることができ、比較的に短時間で、毛(91)の切断を行うことができる。したがって、例えば、切断可能な毛(91)の太さ又は硬さ等の幅が広がり、結果的に、改善された毛切断装置(1,1A~1C)を提供できる、という利点がある。
【0221】
第2の態様に係る毛切断装置(1,1A~1C)では、第1の態様において、光導波路(4,4A,4B)を通る光のパワー密度は可変である。
【0222】
この態様によれば、光導波路(4,4A,4B)を通る光のパワー密度を変えることで、用途又は状況に応じた、所望の作用を得ることができる。
【0223】
第3の態様に係る毛切断システム(10)は、第1又は2の態様に係る毛切断装置(1,1A~1C)と、光導波路(4,4A,4B)に入力される光を発生する光源(21)と、を備える。
【0224】
この態様によれば、改善された毛切断システム(10)を提供できる、という利点がある。
【0225】
第4の態様に係る毛切断システム(10)では、第3の態様において、光導波路(4,4A,4B)を通る光のパワー密度は、光源(21)からの出力にて調整されている。
【0226】
この態様によれば、光源(21)からの出力にて、光導波路(4,4A,4B)を通る光のパワー密度を精度よく調整可能である。
【0227】
第5の態様に係る毛切断システム(10)では、第3又は4の態様において、光源(21)は、発光期間(T1)及び消灯期間(T2)を繰り返すことにより間欠的に光を発生する。
【0228】
この態様によれば、光源(21)での電気エネルギの消費を抑えることができる。
【0229】
第6の態様に係る毛切断システム(10)では、第5の態様において、発光期間(T1)の時間長さは、1万分の1秒以下である。
【0230】
この態様によれば、皮膚(92)への作用に適したエネルギの光を照射することができる。
【0231】
第7の態様に係る毛切断システム(10)では、第5の態様において、発光期間(T1)の時間長さは、百分の1秒以上である。
【0232】
この態様によれば、毛(91)の切断に適したエネルギの光を照射することができる。
【0233】
第8の態様に係る毛切断システム(10)では、第5の態様において、光源(21)の動作モードは、第1モードと、第2モードと、の切り替えが可能である。第1モードでは、発光期間(T1)の時間長さが1万分の1秒以下である。第2モードでは、発光期間(T1)の時間長さが百分の1秒以上である。
【0234】
この態様によれば、皮膚(92)への作用に適したエネルギの光と、毛(91)の切断に適したエネルギの光と、を切り替えて照射することができる。
【0235】
第9の態様に係る毛切断システム(10)では、第5~8のいずれかの態様において、光源(21)で発生する光の波長は、400nm以上である。
【0236】
この態様によれば、皮膚(92)への作用に適した波長の光を照射することができる。
【0237】
第10の態様に係る毛切断システム(10)では、第5~9のいずれかの態様において、光源(21)は、レーザ光源である。
【0238】
この態様によれば、毛(91)の切断に適したエネルギの光を照射することができる。
【0239】
第2の態様に係る構成については、毛切断装置(1,1A~1C)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【0240】
第4~10の態様に係る構成については、毛切断システム(10)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【産業上の利用可能性】
【0241】
毛切断装置及び毛切断システムは、家庭用、又は美容、医療若しくは介護等の様々な分野において、人又は人以外の動物の様々な毛の切断に適用することができる。
【符号の説明】
【0242】
1,1A~1C 毛切断装置
4,4A,4B 光導波路
10 毛切断システム
21 光源
40 光照射部
91 毛
92 皮膚
T1 発光期間
T2 消灯期間