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特許7228817コンクリート打設用の抵抗式センサアレイシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】コンクリート打設用の抵抗式センサアレイシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/04 20060101AFI20230217BHJP
【FI】
G01N27/04 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021508450
(86)(22)【出願日】2019-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2019012661
(87)【国際公開番号】W WO2020194482
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】509294922
【氏名又は名称】ムネカタインダストリアルマシナリー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101982
【弁理士】
【氏名又は名称】久米川 正光
(72)【発明者】
【氏名】海野 雄士
(72)【発明者】
【氏名】桑田 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】金澤 彰裕
(72)【発明者】
【氏名】中林 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】山田 勉
(72)【発明者】
【氏名】二宮 伸二
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-179995(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0234246(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0282496(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105136859(CN,A)
【文献】特開2006-348570(JP,A)
【文献】特開2002-039979(JP,A)
【文献】特開平09-210940(JP,A)
【文献】特開2018-040777(JP,A)
【文献】特表2009-521698(JP,A)
【文献】特開平06-050917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/00 - E21D 19/06
E21D 23/00 - E21D 23/26
G01N 27/00 - G01N 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート打設用の抵抗式センサアレイシステムにおいて、
抵抗式センサアレイと、
前記抵抗式センサアレイに取り付けられる計測システムとを有し、
前記抵抗式センサアレイは、
可撓性を有し、帯状に延在する基材と、
前記基材の延在方向に間隔を空けて配置された複数の電極によって、前記延在方向に沿ったそれぞれの検知エリアが規定され、前記検知エリアにおいて、互いに隣り合った一対の電極間に介在する物質に応じて抵抗値が変化する複数の抵抗式センサと、
前記複数の電極のそれぞれに接続された複数の配線とを有し、
互いに隣り合った一対の前記抵抗式センサは、前記電極を共用しており、これによって、前記検知エリアは、前記延在方向において不感帯を介することなく連続しており、
前記計測システムは、
交流電圧源と、
電圧計とを有し、
前記交流電圧源によって生成された電圧は、時系列的に順次選択される前記配線を介して、特定の抵抗式センサの電極に供給され、当該特定の抵抗式センサの電極間に生じる電位差を、時系列的に順次選択される前記配線を介して、前記電圧計によって検知することで、打設されたコンクリートの充填状況を前記検知エリア毎に逐次的に検出することを特徴とするコンクリート打設用の抵抗式センサアレイシステム
【請求項2】
前記電極は、前記延在方向において一定の間隔を空けて配置されていることを特徴とする請求項1に記載されたコンクリート打設用の抵抗式センサアレイシステム
【請求項3】
前記抵抗式センサアレイは、前記検知エリアのそれぞれにおいて、前記一対の電極に接続され、所定の抵抗値を有する断線チェック抵抗体をさらに有することを請求項1または2に記載されたコンクリート打設用の抵抗式センサアレイシステム
【請求項4】
前記抵抗式センサアレイは、前記検知エリアのそれぞれにおいて、前記一対の電極間に間隔を空けて配置され、固定電圧が印加されない複数のフローティング電極をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載されたコンクリート打設用の抵抗式センサアレイシステム
【請求項5】
前記抵抗式センサアレイは、前記基材における前記抵抗式センサの配置面とは反対の面において、前記抵抗式センサと位置的に対応して配置された複数の圧電センサをさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載されたコンクリート打設用の抵抗式センサアレイシステム
【請求項6】
前記抵抗式センサアレイは、物体の温度を検知する少なくとも一つの温度センサをさらに有することを特徴とする請求項5に記載されたコンクリート打設用の抵抗式センサアレイシステム
【請求項7】
前記抵抗式センサアレイは、前記基材の一端側に設けられ、前記複数の配線の端部が集約されたコネクタをさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載されたコンクリート打設用の抵抗式センサアレイシステム
【請求項8】
前記計測システムは、前記交流電圧源の一端と、前記特定の抵抗式センサにおける一方の電極との間に設けられた抵抗をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載されたコンクリート打設用の抵抗式センサアレイシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート打設用の抵抗式センサアレイシステムに係り、特に、複数の抵抗式センサを一体化したアレイ構造の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の抵抗式アレイを1つのユニットとして一体化した抵抗式センサアレイが知られている。例えば、特許文献1には、コンクリートなどの充填物の充填状況を検知するシート状センサが開示されている。図13に示すように、このシート状センサ20は、シートの長手方向(延在方向)に間隔を空けて配置された複数の抵抗式センサ21を有し、それぞれの抵抗式センサ21は一対の電極22によって構成されている。抵抗式センサ21は、一対の電極22間に介在する物質に応じて抵抗値が変化する。この抵抗値をモニタリングすることによって、コンクリートの充填状況が判別される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-179995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1のシート状センサでは、シートの長手方向に間隔を空けて抵抗式センサが配置されているため、これらの検知エリアが離散的となり、間隔に相当するエリアは不感帯となる。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、コンクリート打設用の抵抗式センサアレイシステムにおいて、抵抗式センサアレイにおける検知エリアの連続性を確保しつつ、打設されたコンクリートの充填状況を検知エリア毎に逐次的に検出することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決すべく、本発明は、抵抗式センサアレイと、この抵抗式センサアレイに取り付けられる計測システムとを有する、コンクリート打設用の抵抗式センサアレイシステムを提供する。抵抗式センサアレイは、基材と、複数の抵抗式センサと、複数の配線とを有する。基材は、可撓性を有し、帯状に延在している。複数の抵抗式センサは、基材の延在方向に間隔を空けて配置された複数の電極によって、延在方向に沿ったそれぞれの検知エリアが規定され、検知エリアにおいて、互いに隣り合った一対の電極間に介在する物質に応じて抵抗値が変化する。複数の配線は、複数の電極のそれぞれに接続されている。互いに隣り合った一対の抵抗式センサは、電極を共用しており、これによって、検知エリアは、延在方向において不感帯を介することなく連続している。また、計測システムは、交流電圧源と、電圧計とを有する。交流電圧源によって生成された電圧は、時系列的に順次選択される配線を介して、特定の抵抗式センサの電極に供給され、この特定の抵抗式センサの電極間に生じる電位差を、時系列的に順次選択される配線を介して、電圧計によって検知することで、打設されたコンクリートの充填状況が検知エリア毎に逐次的に検出される。
【0007】
ここで、本発明において、上記電極は、延在方向において一定の間隔を空けて配置されていることが好ましい。また、上記抵抗式センサアレイは、検知エリアのそれぞれにおいて、一対の電極に接続され、所定の抵抗値を有する断線チェック抵抗体を有していてもよい。また、上記抵抗式センサアレイは、検知エリアのそれぞれにおいて、一対の電極間に間隔を空けて配置され、固定電圧が印加されない複数のフローティング電極を有していてもよい。また、上記抵抗式センサアレイは、基材における抵抗式センサの配置面とは反対の面において、抵抗式センサと位置的に対応して配置された複数の圧電センサを有していてもよい。この場合、上記抵抗式センサアレイは、物体の温度を検知する少なくとも一つの温度センサをさらに有していてもよい。また、上記抵抗式センサアレイは、基材の一端側に設けられ、複数の配線の端部が集約されたコネクタを有していてもよい。さらに、上記計測システムは、交流電圧源の一端と、特定の抵抗式センサにおける一方の電極との間に設けられた抵抗を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、帯状の基材の延在方向に間隔を空けて複数の電極を配置することによって、基材の延在方向に沿って、それぞれの抵抗式センサの検知エリアが、不感帯を介することなく連続的に規定される。これにより、基材の延在方向において、検知エリアの連続性を確保できる。また、計測システムにおいて、時系列的に配線を順次選択しながら、交流電圧源によって生成された電圧を特定の抵抗式センサの電極に供給し、この特定の抵抗式センサの電極間に生じる電位差を電圧計によって検知することで、打設されたコンクリートの充填状況を検知エリア毎に逐次的に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係る抵抗式センサアレイの平面図
図2】抵抗式センサの抵抗値の変化を示す図
図3】抵抗式センサアレイに取り付けられる外部計測システムの概念的な回路図
図4】トンネルにおける履工コンクリートの打設状態を示す断面図
図5】第2の実施形態に係る抵抗式センサアレイの要部平面図
図6】コンクリート、水および空気の介在時における抵抗値の説明図
図7】コンクリートおよび空気の介在時における抵抗値の説明図
図8】水のみ介在時における抵抗値の説明図
図9】コンクリートのみ介在時における抵抗値の説明図
図10】空気のみ介在時における抵抗値の説明図
図11】第3の実施形態に係る抵抗式センサアレイ1Cの要部平面図
図12】圧電センサの断面図
図13】従来技術の説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る抵抗式センサアレイの平面図である。この抵抗式センサアレイ1Aは、比較的広範囲な検知対象に取り付けられ、検知対象を複数の領域に分割した検知エリア毎に、検知エリアに介在する物質の状態を検知する。検知対象としては、例えば、トンネルにおけるコンクリートの構造体などが挙げられる。抵抗式センサアレイ1Aは、基材2と、複数の抵抗式センサ3と、複数の配線4と、コネクタ5と、断線チェック抵抗体6とを主体に構成されている。
【0011】
基材2は、合成樹脂などの絶縁性薄膜で形成されており、可撓性を有する。この基材2は、所定の幅を有し、長手方向に帯状に延在している。複数の抵抗式センサ3は、基材2の延在方向(長手方向)に並んで配置されている。具体的には、抵抗式センサ3は、所定の間隔を空けて配置された一対の電極3aによって構成されており、それぞれの抵抗式センサ3の検知エリアCH1~CH3は、基材2の延在方向に並んでいる。また、互いに隣り合った一対の抵抗式センサ3は、1つの電極3aを共用している。これによって、検知エリアCH1~CH3は、基材2の延在方向において、実質的に非検知エリア(不感帯)が介在しないように連続することになる。抵抗式センサ3は、検知エリアCHに存在する物質、換言すれば、互いに隣り合った一対の電極3a間に介在する物質に応じて自己の抵抗値が変化する。この抵抗値に起因した電極3a間の電位差をモニタリングすることにより、検知エリアCHにおける物質の状態(例えば、空気、水、コンクリートなどの種類)を検知・識別することができる。
【0012】
複数の配線4は、複数の電極3aに対応して設けられており、いずれかの電極3aに個別に接続されている。これらの配線4は、基材2における一方の側縁(上縁)を長手方向に延在する群と、基材2における他方の側縁(下縁)を長手方向に延在する群とに別れており、例えば、奇数番目の電極3aは上縁側の群、偶数番目の電極3aは下縁側の群といった如く、電極3a毎に交互に接続される。配線4は、銀ペーストや銅インクなどの導電性材料を基材2に印刷(コーティングを含む。)することによって形成してもよいし、物理的に独立した線材である金属ワイヤーを用いてもよい。金属ワイヤーは、印刷と比較して抵抗率を極めて低く、配線4の長大化に起因した電圧変化を抑制できる点で有利である。
【0013】
コネクタ5は、基材2の一端側に設けられている。コネクタ5は、外部の測定装置側(これに接続された配線を含む。)と接続可能な形状を有しており、複数の配線4のそれぞれの端部が集約されている。
【0014】
断線チェック抵抗体6は、検知エリアCH1~CH3のそれぞれにおいて、一対の電極3aに接続されており、所定の抵抗値を有する。本実施形態では、基材2の幅方向の中央に配置された電極3aの並びに対応して、この抵抗体6を線状に配置している。断線チェック抵抗体6としては、抵抗式センサ3が検知しようとする物質の状態に由来した抵抗の上限値と下限値との間の中間的な抵抗値を有するものであれば特に制限はないが、例えば、カーボン繊維を主原料とした線材を用いることができる。
【0015】
断線チェック抵抗体6は、配線4の断線を検知するために用いられる。この断線検知の仕組みを、図2を参照しつつ、空間内へのコンクリート充填を例に説明する。この場合、電気抵抗値の大小関係は、空気>断線チェック抵抗体>コンクリート>ブリーディング水となる。ここで、ブリーディング水(以下、単に「水」と称する。)とは、コンクリートの内部において、石やセメントなどの固体材料が沈降することにより、表面に上昇してきた水をいう。
【0016】
抵抗式センサ3では、一対の電極3a間の抵抗値(正確には、電流一定条件下の電位差)をモニタリングし、抵抗値の変化から物質を識別している。一対の電極3a間には断線チェック抵抗体6が配置されているため、コンクリートの充填前には、断線チェック抵抗体6の抵抗値R2そのものが検出される。この抵抗値R2は、コンクリートの抵抗値R1と空気の抵抗値R3(R3>R1)との間の中間値である。コンクリートの充填中において、一対の電極3a間に水が介在し始めると、抵抗式センサ3の抵抗値が増加し、その後コンクリートの接触により抵抗値が更に増加する。これに対して、配線4の断線が生じた場合、断線チェック抵抗体6を通電せず、空気を介して別の電極3aとの間の抵抗値が検知される。その結果、断線チェック抵抗体6の抵抗値R2より大きな本来の空気の抵抗値R3が検出され、これによって、配線4が断線したものと判断できる。
【0017】
図3は、抵抗式センサアレイ1Aに取り付けられる外部計測システムの概念的な回路図である。この計測システムは、交流電圧源7と、抵抗8と、電圧計9とを含む。交流電圧源7によって生成された電圧は、抵抗8を介して、抵抗式センサ3を構成する一方の電極3aに印加され、他方の電極3aとの間に電位差が生じる。この電位差は、抵抗式センサ3の抵抗値、すなわち、一対の電極3a間に介在する物質の状態に応じて変化する。電圧計9は、一対の電極3a間の電位差を検知し、この電位差に基づいて、検知エリアCHにおける物質の状態が検知・識別される。それぞれの検知エリアCH1~CH3に介在する物質の状態は、電圧を印加すべき配線4を時系列的に順次選択することによって、検知エリアCH毎に逐次的に検出される。
【0018】
抵抗式センサアレイ1Aの使用例として、図4に示すように、山岳用のトンネルにおける覆工コンクリートの打設を例に説明する。トンネルの構築に際しては、掘削されたトンネル内壁面に吹付けコンクリート10が施工され(鋼アーチ部材が支保工として併用)、その表面に防水シートが貼設される。そして、地山側壁面との間に距離を空けて、周方向に沿ったセントル(覆工コンクリート用移動型枠)の型枠11が設置される。そして、地山側壁面と型枠11との間に設けられた充填空間12内にコンクリートが打設される。その際、コンクリートの充填状況を的確に把握するために、本実施形態に係る抵抗式センサアレイ1Aを用いることができる。抵抗式センサアレイ1Aは、トンネルの周方向に延在するように、充填空間12内の表面に取り付けられ、1つの検知エリアCHの長さは、例えば1mに設定される。これにより、充填空間12内におけるコンクリートの充填状況を検知エリアCHの分解能で連続的に検出することが可能になる。なお、トンネルの周方向全体を1つの抵抗式センサアレイ1Aでカバーする必要はなく、例えば、トンネルを左右に2分割し、それぞれに対して抵抗式センサアレイ1Aを個別に取り付けてもよい。
【0019】
このように、本実施形態によれば、帯状の基材2の延在方向に間隔を空けて複数の電極1aを配置することによって、基材2の延在方向に沿って、それぞれの抵抗式センサ3の検知エリアCH1~CH3が規定される。これにより、基材2の延在方向において、非検知エリア(不感帯)を実質的に生じさせることなく、検知エリアCH1~CH3の連続性を確保できる。
【0020】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態に係る抵抗式センサアレイ1Bの要部平面図であり、抵抗式センサアレイ1B上に存在する複数の抵抗式センサ3のうちの一つを示す。本実施形態の特徴は、抵抗式センサ3の構成にあり、それ以外の点については、上述した第1の実施形態と同様なので、同一の符号を付して、ここでの説明を省略する(後述する第3の実施形態についても同様)。
【0021】
抵抗式センサ3は、上述した一対の電極3aの他に、複数のフローティング電極3bを有する。それぞれのフローティング電極3bは、一対の電極3a間に間隔を空けて配置されており、固定電圧が印加されない状態、すなわち、電気的にフローティングした状態となっている。断線チェック抵抗体6は、基材2の幅方向の中央に配置された電極3a,3bの並びに対応して、線状に配置されている。
【0022】
抵抗式センサ3にフローティング電極3bを設けた場合、抵抗式センサ3の抵抗値が離散化し、介在する物質の状態に応じて抵抗値が特徴的な値を示す傾向が高くなる。例えば、図6に示すように、一部にコンクリート、一部に水、そして、残りの部分に空気が介在する場合、コンクリートの抵抗が100Ω、水の抵抗が10Ω、空気の抵抗が1kΩとすると、コンクリートの領域の抵抗分(200Ω)と、水の領域の抵抗分(20Ω)と、空気の領域の抵抗分(1kΩ)との直列合成抵抗である1220Ωが抵抗式センサ3の抵抗値となる。このことから、抵抗式センサ3の抵抗値が1220Ω(特徴値)近傍である場合、コンクリートと、水と、空気とが混在した状態であると判別できる。
【0023】
図7に示すように、一部にコンクリートが介在し、残りの部分に空気が介在する場合、コンクリートの領域の抵抗分(200Ω)と、空気の領域の抵抗分(3kΩ)との直列合成抵抗である3.2kΩが抵抗式センサ3の抵抗値となる。3.2kΩは、他の特徴値とは異なる本状態固有の特徴的な値である。よって、抵抗式センサ3の抵抗値が3.2kΩ(特徴値)近傍である場合、コンクリートと、空気とが混在した状態であると判別できる。
【0024】
図8に示すように、水のみが介在する場合、水の領域の抵抗分(50Ω)が抵抗式センサ3の抵抗値となる。50Ωは、他の特徴値とは異なる本状態固有の特徴的な値である。よって、抵抗式センサ3の抵抗値が50Ω(特徴値)近傍である場合、水のみが介在した状態であると判別できる。
【0025】
図9に示すように、コンクリートのみが介在する場合、コンクリートの領域の抵抗分(500Ω)が抵抗式センサ3の抵抗値となる。500Ωは、他の特徴値とは異なる本状態固有の特徴的な値である。よって、抵抗式センサ3の抵抗値が500Ω(特徴値)近傍である場合、コンクリートのみが介在した状態であると判別できる。
【0026】
また、図10に示すように、空気のみが介在する場合、空気の領域の抵抗分(5kΩ)が抵抗式センサ3の抵抗値となる。5kΩは、他の特徴値とは個なる本状態固有の特徴的な値である。よって、抵抗式センサ3の抵抗値が5kΩ(特徴値)近傍である場合、空気のみが介在した状態であると判別できる。
【0027】
このように、本実施形態によれば、上述した第1の実施形態と同様の作用効果を奏する他、抵抗式センサ3の抵抗値が介在する物質の状態に応じて特徴的な値を示す傾向が高くなるため、外部計測システム側において、物質の状態の判別をパターン化でき、判別精度の向上を図ることができる。
【0028】
(第3の実施形態)
図11は、第3の実施形態に係る抵抗式センサアレイ1Cの要部平面図である。この抵抗式センサアレイ1Cは、上述した抵抗式センサアレイ1A,1Bの構成に複数の圧電センサ13を追加したものである。具体的には、基材2における抵抗式センサ3の配置面(表面)とは反対の面(裏面)において、抵抗式センサ3と位置的に対応して、複数の圧電センサ13が設けられている。本実施形態では、抵抗式センサ3を構成する一対の電極3aの中間に圧電センサ13が配置されている。
【0029】
図12は、圧電センサ13の断面図である。この圧電センサ13は、下部電極13aと、上部電極13bと、これらの電極13a,13bによって挟まれた圧電性樹脂膜13cとを主体に構成されている。圧電センサ13は、検知エリアCHに加わった圧力に応じて、電極13a,13b間に電位差を発生させる。したがって、この電位差をモニタリングすることで、検知エリアCHの圧力を検知することができる。
【0030】
また、基材2の裏面には、1本の共通配線14と、圧線センサ13の個数に対応した複数の個別配線15とが設けられており、それぞれは基材2の延在方向に延在している。共通配線14は、複数の圧電センサ13(上下の電極13a,13bの一方)に共通接続されている。また、それぞれの個別配線15は、これが対応する圧電センサ13(上下の電極13a,13bの他方)に個別的に接続されている。これらの配線14,15の端部は、コネクタ5に集約されている。
【0031】
このように、本実施形態によれば、上述した第1または第2の実施形態と同様の作用効果を奏する他、抵抗式センサアレイ1Cとして、抵抗式センサ3(検知エリアCH)と位置的に対応した複数の圧電センサ13を追加することで、複数種のセンサ情報を検知エリアCH毎に取得でき、より多様な計測・判別が可能になる。
【0032】
なお、図11に示したように、抵抗式センサアレイ1Cにおいて、物体の温度を検知する温度センサ16を追加してもよい(接続配線の図示は省略)。温度センサ16としては、チューブ状やフィルム状の接触型のものが入手可能であり、適宜のものが組み込まれる。また、抵抗式センサ3(検知エリアCH)と位置的に対応した複数の温度センサ16を設ければ、検知エリアCH毎に物体の温度を検知することができる。
【符号の説明】
【0033】
1A,1B,1C 抵抗式センサアレイ
2 基材
3 抵抗式センサ
3a 電極
3b フローティング電極
4 配線
5 コネクタ
6 断線チェック抵抗体
7 交流電圧源
8 抵抗
9 電圧計
10 吹付けコンクリート
11 型枠
12 充填空間
13 圧電センサ
13a 下部電極
13b 上部電極
13c 圧電性樹脂膜
14 共通配線
15 個別配線
16 温度センサ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13