(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】ペプチド型細菌ジペプチジルペプチダーゼ7阻害剤
(51)【国際特許分類】
A61K 38/05 20060101AFI20230217BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230217BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230217BHJP
C07K 5/06 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
A61K38/05
A61P43/00 111
A61P31/04
C07K5/06
(21)【出願番号】P 2018151899
(22)【出願日】2018-08-10
【審査請求日】2021-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2017156345
(32)【優先日】2017-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507307374
【氏名又は名称】学校法人神戸学院
(73)【特許権者】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(73)【特許権者】
【識別番号】507148456
【氏名又は名称】学校法人 岩手医科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日高 興士
(72)【発明者】
【氏名】津田 裕子
(72)【発明者】
【氏名】阪本 泰光
(72)【発明者】
【氏名】關谷 瑞樹
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 渉
【審査官】佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/023368(WO,A1)
【文献】特表2009-526027(JP,A)
【文献】国際公開第2007/091528(WO,A1)
【文献】特表平11-503913(JP,A)
【文献】Beilstein J. Org. Chem., 2010, Vol.6, pp.945-959
【文献】ORGANIC LETTERS, 2012, Vol.14, No.11, pp.2890-2893
【文献】J. Org. Chem., 1974, Vol.39, No.26, pp.3929-3932
【文献】J. Molecular Catalysis, B: Enzymatic, 2001, Vol.16, pp.73-80
【文献】J. Chromatography, 1987, Vol.398, pp.203-209
【文献】Scientific Reports, 2014, Vol.4, Article No.4977, pp.1-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
C07K 1/00-19/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】
[式中、R
1及びR
2は水素原子を示す。R
3は単結合又は炭素数が1~2であるアルキレン基を示す。R
4は炭素数が5~7であるシクロアルキル基又は1つの水酸基で置換されていてもよいフェニル基を示す。R
5は炭素数が3~6である分岐アルキル基又は一般式(X);
【化2】
(式中、R
31は水素原子、水酸基、ハロゲン原子、又は炭素数が1~4のアルコキシ基を示す。)
で表される基を示す。R
6は-OR
61(R
61は水素原子又は炭素数が1~4であるアルキル基を示す。)又は-NR
62-(SO
2)
n-R
63(R
62及びR
63は同一又は異なって、水素原子又は炭素数が1~4であるアルキル基を示す。nは0又は1を示す。)を示す。]
で表される化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物を含有する、細菌ジペプチジルペプチダーゼ7阻害剤。
【請求項2】
前記R
6で示される-NR
62-(SO
2)
n-R
63において、前記R
62が水素原子であり、且つ前記R
63が炭素数が1~6であるアルキル基である、請求項1に記載の阻害剤。
【請求項3】
前記R
4で示されるフェニル基が置換されていない、請求項1又は2に記載の阻害剤。
【請求項4】
一般式(1):
【化3】
[式中、R
1及びR
2は水素原子を示す。R
3は単結合又は炭素数が1~2であるアルキレン基を示す。R
4は炭素数が5~7であるシクロアルキル基又は1つの水酸基で置換されていてもよいフェニル基を示す。R
5は炭素数が3~6である分岐アルキル基又は一般式(X);
【化4】
(式中、R
31は水素原子、水酸基、ハロゲン原子、又は炭素数が1~4のアルコキシ基を示す。)
で表される基を示す。R
6は-OR
61(R
61は水素原子又は炭素数が1~4であるアルキル基を示す。)又は-NR
62-(SO
2)
n-R
63(R
62及びR
63は同一又は異なって、水素原子又は炭素数が1~4であるアルキル基を示す。nは0又は1を示す。)を示す。]
で表される化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物を含有し、かつ、対象菌種が糖非発酵グラム陰性細菌である、抗菌剤。
【請求項5】
一般式(1):
【化5】
[式中、R
1及びR
2は水素原子を示す。R
3は単結合又は炭素数が1~2であるアルキレン基を示す。R
4は炭素数が5~7であるシクロアルキル基又は1つの水酸基で置換されていてもよいフェニル基を示す。R
5は炭素数が3~6である分岐アルキル基又は一般式(X);
【化6】
(式中、R
31は水素原子、水酸基、ハロゲン原子、又は炭素数が1~4のアルコキシ基を示す。)
で表される基を示す。R
6は-OR
61(R
61は水素原子又は炭素数が1~4であるアルキル基を示す。)又は-NR
62-(SO
2)
n-R
63(R
62及びR
63は同一又は異なって、水素原子又は炭素数が1~4であるアルキル基を示す。nは0又は1を示す。)を示す。]
で表される化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物を含有し、かつ、対象菌種が糖非発酵グラム陰性細菌である、細菌感染症の予防又は改善剤。
【請求項6】
一般式(1-X):
【化7】
[式中、R
1及びR
2は水素原子を示す。R
3は単結合又は炭素数が1~2であるアルキレン基を示す。R
4は炭素数が5~7であるシクロアルキル基又は1つの水酸基で置換されていてもよいフェニル基を示す。R
31は水素原子、水酸基、ハロゲン原子、又は炭素数が1~4のアルコキシ基を示す。R
6は-OR
61(R
61は水素原子又は炭素数が1~4であるアルキル基を示す。)又は-NR
62-(SO
2)
n-R
63(R
62及びR
63は同一又は異なって、水素原子又は炭素数が1~4であるアルキル基を示す。nは0又は1を示す。)を示す。]で表される化合物(但し、-R
3-R
4が天然アミノ酸の側鎖である場合の化合物
、R
1
及びR
2
が水素原子であり、R
3
が単結合であり、R
4
が無置換のフェニル基であり、R
31
が水酸基であり、且つR
6
がメトキシ基である化合物、R
1
及びR
2
が水素原子であり、R
3
が単結合であり、R
4
が無置換のフェニル基であり、R
31
が水素原子であり、且つR
6
がメトキシ基である化合物、R
1
及びR
2
が水素原子であり、R
3
が単結合であり、R
4
が無置換のフェニル基であり、R
31
が水酸基であり、且つR
6
がエトキシ基である化合物、並びに、R
1
及びR
2
が水素原子であり、R
3
が単結合であり、R
4
が無置換のフェニル基であり、R
31
が水素原子であり、且つR
6
が水酸基である化合物を除く。)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチド型細菌ジペプチジルペプチダーゼ7阻害剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
現在使用される抗菌薬は、細菌の細胞壁合成、タンパク質合成、核酸合成、代謝の過程において、病原菌に特有な標的分子の働きを止める作用機序をもつ。これらの抗菌薬は、耐性菌の出現を抑えるために、ガイドラインに基づき適正に使用する対策がとられる。しかし、国際的な人や物資の移動により、耐性菌の世界規模での拡大を防ぐことは困難であり、これまで病原性のなかった多剤耐性菌の院内感染アウトブレイクが増えていることから、予防や適正使用に加え、既存薬とは異なる作用機序をもつ新規抗菌薬の開発は重要である。
【0003】
多剤耐性菌の一つであるStenotrophomonas maltophilia (Sm)はβラクタム系、アミノグリコシド系、キノロン系などの薬剤に感受性が低く、術後の高度の免疫不全を伴う患者が感染すると菌血症や重篤な肺炎を引き起こして死に至る。Smは糖非発酵グラム陰性細菌であり、炭水化物の代わりにタンパク質やペプチドを分解してアミノ酸を栄養源とする。Smの内膜にはペプチドからジペプチドを切り出すジペプチジルペプチダーゼ7(本明細書において、「DPP7」と示すこともある。)という酵素が存在し、得られたジペプチドを内膜に透過させる必要があることから、Smが増殖するためにはDPP7の働きが必須である。一方、歯周病の代表的な原因菌であるPorphyromonas gingivalis (Pg)は糖尿病や狭心症、心筋梗塞などの全身疾患にも関与すると言われ、Smと同様に細菌の増殖に必須なDPP7をもつことがわかっている。
【0004】
ジペプチジルアミノペプチダーゼ(DAP) BIIは活性中心の構造がSmDPP7やPgDPP7と類似しており、Val-Tyrジペプチドとの共結晶構造が解析されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】SCIENTIFIC REPORT, 4, 4977 (2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、研究を進める中で、細菌のみがもつDPP7に着目した。本発明は、DPP7阻害剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、課題に鑑みて鋭意研究を進めた結果、一般式(1)で表わされる化合物がDPP7阻害活性を有することを見出した。この知見に基づいてさらに研究を進めた結果、本発明が完成した。
【0008】
即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
【0009】
項1.一般式(1):
【0010】
【0011】
[式中、R1及びR2は同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を示す。R3は単結合又はアルキレン基を示す。R4は置換されていてもよいシクロアルキル基又は置換されていてもよいアリール基を示す。R5は置換されていてもよい分岐アルキル基又は置換されていてもよいアリール基を示す。R6は-OR61(R61は水素原子又はアルキル基を示す。)又は-NR62-(SO2)n-R63(R62及びR63は同一又は異なって、水素原子又は炭化水素基を示す。nは0又は1を示す。)を示す。]
で表される化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物を含有する、細菌ジペプチジルペプチダーゼ7阻害剤。
【0012】
項2.前記R4で示されるシクロアルキル基及びアリール基の炭素数が5~7である、項1に記載の阻害剤。
【0013】
項3.前記R4で示されるシクロアルキル基及びアリール基が置換されている場合の置換基が、酸基、ハロゲン原子、アミノ基、又はニトロ基である、項1又は2に記載の阻害剤。
【0014】
項4.前記R5で示される分岐アルキル基の炭素数が3~8であり、且つ前記R5で示されるアリール基がフェニル基である、項1~3のいずれかに記載の阻害剤。
【0015】
項5.前記R5で示される分岐アルキル基及びアリール基が置換されている場合の置換基が、水酸基、アルコキシ基、又はハロゲン原子である、項1~4のいずれかに記載の阻害剤。
【0016】
項6.前記R1及びR2が共に水素原子である、項1~5のいずれかに記載の阻害剤。
【0017】
項7.前記R6で示される-NR62-(SO2)n-R63において、前記R62が水素原子であり、且つ前記R63が炭化水素基である、項1~6のいずれかに記載の阻害剤。
【0018】
項8.前記R4で示されるシクロアルキル基及びアリール基の炭素数が5~7であり、
前記R4で示されるシクロアルキル基及びアリール基が置換されている場合の置換基が、
水酸基、ハロゲン原子、アミノ基、又はニトロ基であり、
前記R5で示される分岐アルキル基の炭素数が3~8であり、
前記R5で示されるアリール基がフェニル基である、
前記R5で示される分岐アルキル基及びアリール基が置換されている場合の置換基が、水酸基、アルコキシ基、又はハロゲン原子であり、
前記R1及びR2が共に水素原子であり、且つ
前記R6で示される-NR62-(SO2)n-R63において、前記R62が水素原子であり、且つ前記R63が炭化水素基である、
項1~7のいずれかに記載の阻害剤。
【0019】
項9.前記R4で示されるシクロアルキル基及びアリール基が置換されていない、項8に記載の阻害剤。
【0020】
項10.一般式(1):
【0021】
【0022】
[式中、R1及びR2は同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を示す。R3は単結合又はアルキレン基を示す。R4は置換されていてもよいシクロアルキル基又は置換されていてもよいアリール基を示す。R5は置換されていてもよい分岐アルキル基又は置換されていてもよいアリール基を示す。R6は-OR61(R61は水素原子又はアルキル基を示す。)又は-NR62-(SO2)n-R63(R62及びR63は同一又は異なって、水素原子又は炭化水素基を示す。nは0又は1を示す。)を示す。]
で表される化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物を含有する、抗菌剤。
【0023】
項11.一般式(1):
【0024】
【0025】
[式中、R1及びR2は同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を示す。R3は単結合又はアルキレン基を示す。R4は置換されていてもよいシクロアルキル基又は置換されていてもよいアリール基を示す。R5は置換されていてもよい分岐アルキル基又は置換されていてもよいアリール基を示す。R6は-OR61(R61は水素原子又はアルキル基を示す。)又は-NR62-(SO2)n-R63(R62及びR63は同一又は異なって、水素原子又は炭化水素基を示す。nは0又は1を示す。)を示す。]
で表される化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物を含有する、細菌感染症の予防又は改善剤。
【0026】
項12.一般式(1):
【0027】
【0028】
[式中、R1及びR2は同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を示す。R3は単結合又はアルキレン基を示す。R4は置換されていてもよいシクロアルキル基又は置換されていてもよいアリール基を示す。R5は置換されていてもよい分岐アルキル基又は置換されていてもよいアリール基を示す。R6は-OR61(R61は水素原子又はアルキル基を示す。)又は-NR62-(SO2)n-R63(R62及びR63は同一又は異なって、水素原子又は炭化水素基を示す。nは0又は1を示す。)を示す。]
で表される化合物(但し、-R3-R4が天然アミノ酸の側鎖である場合の化合物を除く。)。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、DPP7阻害剤作用を有する化合物、及びDPP7阻害剤を提供することができる。この化合物は、抗菌剤、細菌感染症の予防又は改善剤等として利用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】実施例15で測定された、化合物濃度100μMにおけるSmDPP7残存活性を示す。縦軸が残存活性を示す。横軸中、数字は、被検化合物の化合物番号を示し、「No inhibitor」は被検化合物を添加していない場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0032】
1.化合物
本発明は、その一態様において、一般式(1):
【0033】
【0034】
で表される化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物に関する。以下に、これについて説明する。
【0035】
<1-1.R1及びR2について>
R1及びR2は同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を示す。
【0036】
R1又はR2で示されるアルキル基には、直鎖状、分岐鎖状、又は環状(好ましくは直鎖状又は分枝鎖状、より好ましくは直鎖状)のいずれのものも包含される。該アルキル基の炭素数は、特に制限されず、例えば1~6、好ましくは1~4、より好ましくは1~2、さらに好ましくは1である。該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、3-メチルペンチル基等が挙げられる。
【0037】
R1及びR2は、好ましくは共に水素原子である。
【0038】
<1-2.R3について>
R3は単結合又はアルキレン基を示す。
【0039】
R3で示されるアルキレン基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれのものも包含し、好ましくは直鎖状である。該アルキレン基の炭素数は、特に制限されず、例えば1~6、好ましくは1~4、より好ましくは1~2、さらに好ましくは1である。該アルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基等が挙げられる。
【0040】
R3は、好ましくはアルキレン基である。
【0041】
<1-3.R4について>
R4は置換されていてもよいシクロアルキル基又は置換されていてもよいアリール基を示す。
【0042】
R4で示されるシクロアルキル基の炭素数は、特に制限されず、例えば3~10、好ましくは4~8、より好ましくは5~7、さらに好ましくは6である。該シクロアルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0043】
R4で示されるアリール基は、特に制限されないが、炭素数が6~12のものが好ましく、6~12のものがより好ましく、6~8のものがさらに好ましい。該アリール基は、単環式又は多環式(例えば2環式、3環式等)のいずれでも有り得るが、好ましくは単環式である。該アリール基としては、具体的には、例えばフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ペンタレニル基、インデニル基、アントラニル基、テトラセニル基、ペンタセニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオレニル基、フェナントリル基等が挙げられ、好ましくはフェニル基が挙げられる。
【0044】
R4で示されるシクロアルキル基及びR4で示されるアリール基が有していてもよい置換基としては、特に制限されず、例えば水酸基、ハロゲン原子、置換されていてもよいアミノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルチオ基、シアノ基等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは水酸基、ハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基等が挙げられ、より好ましくは水酸基が挙げられる。
【0045】
R4で示されるシクロアルキル基及びR4で示されるアリール基が有していてもよいハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0046】
R4で示されるシクロアルキル基及びR4で示されるアリール基が有していてもよいアミノ基としては、特に制限はなく、直鎖状又は分岐鎖状(好ましくは直鎖状)の炭素数1~6、好ましくは1~4、より好ましくは1~2のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基が挙げられる。アルキル基による置換数は、特に制限はなく、例えば0~3個、好ましくは0個である。このような置換されていてもよいアミノ基としては、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基等が挙げられる。
【0047】
R4で示されるシクロアルキル基及びR4で示されるアリール基が有していてもよいアルキル基としては、特に制限はなく、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)等で置換されていてもよい直鎖状又は分岐鎖状(好ましくは直鎖状)の炭素数1~6、好ましくは1~4、より好ましくは1~2、さらに好ましくは1のアルキル基が挙げられる。置換基の数は特に制限はなく、例えば0~3個、好ましくは0個である。このような置換されていてもよいアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基等が挙げられる。
【0048】
R4で示されるシクロアルキル基及びR4で示されるアリール基が有していてもよいアルコキシ基としては、特に制限はなく、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)等で置換されていてもよい直鎖状又は分岐鎖状(好ましくは直鎖状)の炭素数1~6、好ましくは1~4、より好ましくは1~2、さらに好ましくは1のアルコキシ基が挙げられる。置換基の数は特に制限はなく、例えば0~3個、好ましくは0個である。このような置換されていてもよいアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、パーフルオロメトキシ基、パーフルオロエトキシ基等が挙げられる。
【0049】
R4で示されるシクロアルキル基及びR4で示されるアリール基が有していてもよいアルキルチオ基としては、特に制限はなく、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)等で置換されていてもよい直鎖状又は分岐鎖状(好ましくは直鎖状)の炭素数1~6、好ましくは1~4、より好ましくは1~2、さらに好ましくは1のアルキルチオ基が挙げられる。置換基の数は特に制限はなく、例えば0~3個、好ましくは0個である。このような置換されていてもよいアルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n-ブチルチオ基、イソブチルチオ基、sec-ブチルチオ基、tert-ブチルチオ基、パーフルオロメチルチオ基、パーフルオロエチルチオ基等が挙げられる。
【0050】
R4で示されるシクロアルキル基及びR4で示されるアリール基の置換基の数は、例えば0~3、好ましくは0~2、より好ましくは0~1、さらに好ましくは0である。
【0051】
R4としては、好ましくは置換されていてもよいアリール基が挙げられる。
【0052】
<1-4.R5について>
R5は置換されていてもよい分岐アルキル基又は置換されていてもよいアリール基を示す。
【0053】
R5で示される分岐アルキル基の炭素数は、特に制限されず、例えば3~10、好ましくは3~8、より好ましくは3~6、さらに好ましくは3~4である。該分岐アルキル基の具体例としては、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基等が挙げられる。
【0054】
R5で示されるアリール基は、特に制限されないが、炭素数が6~12のものが好ましく、6~12のものがより好ましく、6~8のものがさらに好ましい。該アリール基は、単環式又は多環式(例えば2環式、3環式等)のいずれでも有り得るが、好ましくは単環式である。該アリール基としては、具体的には、例えばフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ペンタレニル基、インデニル基、アントラニル基、テトラセニル基、ペンタセニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオレニル基、フェナントリル基等が挙げられ、好ましくはフェニル基が挙げられる。
【0055】
R5で示される分岐アルキル基及びR5で示されるアリール基が有していてもよい置換基としては、特に制限されず、例えば水酸基、置換されていてもよいアルコキシ基、ハロゲン原子、置換されていてもよいアミノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルキルチオ基、シアノ基等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは水酸基、置換されていてもよいアルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられ、より好ましくは水酸基、置換されていてもよいアルコキシ基等が挙げられ、さらに好ましくは置換されていてもよいアルコキシ基が挙げられる。
【0056】
R5で示される分岐アルキル基及びR5で示されるアリール基が有していてもよいアルコキシ基としては、特に制限はなく、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)等で置換されていてもよい直鎖状又は分岐鎖状(好ましくは直鎖状)の炭素数1~6、好ましくは1~4、より好ましくは1~2のアルコキシ基が挙げられる。置換基の数は特に制限はなく、例えば0~3個、好ましくは0個である。このような置換されていてもよいアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、パーフルオロメトキシ基、パーフルオロエトキシ基等が挙げられる。
【0057】
R5で示される分岐アルキル基及びR5で示されるアリール基が有していてもよいハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、好ましくはヨウ素原子が挙げられる。
【0058】
R5で示される分岐アルキル基及びR5で示されるアリール基が有していてもよいアミノ基としては、特に制限はなく、直鎖状又は分岐鎖状(好ましくは直鎖状)の炭素数1~6、好ましくは1~4、より好ましくは1~2のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基が挙げられる。アルキル基による置換数は、特に制限はなく、例えば0~3個、好ましくは0個である。このような置換されていてもよいアミノ基としては、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基等が挙げられる。
【0059】
R5で示される分岐アルキル基及びR5で示されるアリール基が有していてもよいアルキル基としては、特に制限はなく、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)等で置換されていてもよい直鎖状又は分岐鎖状(好ましくは直鎖状)の炭素数1~6、好ましくは1~4、より好ましくは1~2、さらに好ましくは1のアルキル基が挙げられる。置換基の数は特に制限はなく、例えば0~3個、好ましくは0個である。このような置換されていてもよいアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基等が挙げられる。
【0060】
R5で示される分岐アルキル基及びR5で示されるアリール基が有していてもよいアルキルチオ基としては、特に制限はなく、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)等で置換されていてもよい直鎖状又は分岐鎖状(好ましくは直鎖状)の炭素数1~6、好ましくは1~4、より好ましくは1~2、さらに好ましくは1のアルキルチオ基が挙げられる。置換基の数は特に制限はなく、例えば0~3個、好ましくは0個である。このような置換されていてもよいアルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n-ブチルチオ基、イソブチルチオ基、sec-ブチルチオ基、tert-ブチルチオ基、パーフルオロメチルチオ基、パーフルオロエチルチオ基等が挙げられる。
【0061】
R5で示される分岐アルキル基及びR5で示されるアリール基の置換基の数は、例えば0~3、好ましくは1~3、より好ましくは1~2、さらに好ましくは1である。
【0062】
R5としては、好ましくは置換されていてもよいアリール基が挙げられ、より好ましくは一般式(X):
【0063】
【0064】
[式中、R31、R32、R33、R34、及びR35は同一又は異なって、水素原子、水酸基、置換されていてもよいアルコキシ基、ハロゲン原子、置換されていてもよいアミノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルキルチオ基、シアノ基を示す。]
【0065】
一般式(X)中、R31、R32、R33、R34、又はR35で示される各種置換基については、上記したR5で示される分岐アルキル基及びR5で示されるアリール基が有していてもよい置換基と同様である。
【0066】
一般式(X)において、好ましくは、R32、R33、R34、及びR35が水素原子であり、且つR31が水素原子以外の置換基である。
【0067】
<1-5.R6について>
R6は-OR61(R61は水素原子又はアルキル基を示す。)又は-NR62-(SO2)n-R63(R62及びR63は同一又は異なって、水素原子又は炭化水素基を示す。
【0068】
R61で示されるアルキル基には、直鎖状、分岐鎖状、又は環状(好ましくは直鎖状又は分枝鎖状、より好ましくは直鎖状)のいずれのものも包含される。該アルキル基の炭素数は、特に制限されず、例えば1~6、好ましくは1~4、より好ましくは1~2、さらに好ましくは1である。該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、3-メチルペンチル基等が挙げられる。
【0069】
R61は、好ましくはアルキル基である。
【0070】
R62又はR63で示される炭化水素基は、特に制限されず、アルキル基、アリール基、これらが組み合わされてなる基等が挙げられる。
【0071】
R62又はR63で示されるアルキル基には、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のいずれのものも包含される。該アルキル基の炭素数は、特に制限されず、例えば1~6、好ましくは1~4、である。該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、3-メチルペンチル基等が挙げられる。
【0072】
R62又はR63で示されるアリール基は、特に制限されないが、炭素数が6~12のものが好ましく、6~12のものがより好ましく、6~8のものがさらに好ましい。該アリール基は、単環式又は多環式(例えば2環式、3環式等)のいずれでも有り得るが、好ましくは単環式である。該アリール基としては、具体的には、例えばフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ペンタレニル基、インデニル基、アントラニル基、テトラセニル基、ペンタセニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオレニル基、フェナントリル基等が挙げられ、好ましくはフェニル基が挙げられる。
【0073】
R62又はR63で示される炭化水素基としては、好ましくはアルキル基が挙げられる。
【0074】
好ましくは、R62が水素原子であり、且つR63が炭化水素基である。
【0075】
R6は、好ましくは-OR61である。
【0076】
<1-6.異性体>
一般式(1)で表される化合物には、立体異性体及び光学異性体が含まれ、これらは特に限定されるものではない。一般式(1)で表される化合物の中でも、好ましい立体構造を有する化合物としては、下記一般式(1’):
【0077】
【0078】
[式中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6は前記に同じである。]
で表される化合物が挙げられる。
【0079】
<1-7.塩、水和物、溶媒和物>
一般式(1)で表される化合物の塩は、薬学的に許容される塩である限り、特に制限されるものではない。該塩としては、酸性塩、塩基性塩のいずれも採用することができる。酸性塩の例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩; 酢酸塩、プロピオン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩等の有機酸塩が挙げられ、塩基性塩の例としては、ナトリウム塩、及びカリウム塩等のアルカリ金属塩; 並びにカルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩; アンモニアとの塩; モルホリン、ピペリジン、ピロリジン、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、モノ(ヒドロキシアルキル)アミン、ジ(ヒドロキシアルキル)アミン、トリ(ヒドロキシアルキル)アミン等の有機アミンとの塩等が挙げられる。
【0080】
一般式(1)で表される化合物は水和物、溶媒和物とすることもできる。溶媒としては、例えば、薬学的に許容される有機溶媒(例えばエタノール、グリセロール、酢酸等)等が挙げられる。
【0081】
2.製造方法
一般式(1)で表される化合物は、様々な方法で合成することができる。代表的には、一般式(1)で表される化合物は、ペプチド固相合成法に従って又は準じて、2種のアミノ酸及び/又はアミノ酸誘導体をペプチド結合させることを含む方法により得ることができる。
【0082】
以下に、具体的合成方法の例を示す。なお、下記反応スキーム中、RAは、一般式(1)における-(CH2)-R5に対応し、RBは、一般式(1)における-R3-R4に対応し、RCは、一般式(1)における-R63に対応し、RDは、一般式(1)におけるR5で示されるアリール基の置換基であるアルコキシ基に対応する。
【0083】
C末端がカルボン酸の化合物は、下記反応スキームに従って、2-クロロトリチルクロリド樹脂を用いて通常のFmoc固相合成法によりジペプチドまで結合させ、脱保護および脱樹脂を行い、合成することができる。
【0084】
【0085】
C末端がカルボキサミド構造の化合物は、下記反応スキームに従って、Fmoc-アミド樹脂を用いてジペプチドまで伸長し、脱樹脂および脱保護を行い、合成することができる。
【0086】
【0087】
C末端がスルホンアミドの化合物は、下記反応スキームに従って、DBU存在下でCDIを用いてBoc-保護チロシンと縮合させた後、脱保護を行い、次いで、Bocアミノ酸のカップリングおよび脱保護を行い、合成することができる。
【0088】
【0089】
C末端がメチルエステルの化合物は、Boc-チロシンメチルエステルを出発物質とし、Boc基を除去した後、Boc-シクロヘキシルアラニンを縮合させて中間体を得て、この中間体を脱保護し、合成することができる。また、チロシン側鎖の水酸基をアルキル化した化合物については、アルキルブロミドを用いて中間体のアルキル化を行い、次いで、エステル加水分解および脱保護を行い、合成することができる。
【0090】
【0091】
3.用途
一般式(1)で表される化合物は、DPP7阻害作用を有するので、種々の用途、例えばDPP7阻害剤、抗菌剤、細菌感染症の予防又は治療剤等の有効成分として好適に利用することができる。この観点から、本発明は、その一態様において、一般式(1)で表される化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物を含有する、DPP7阻害、抗菌剤、又は細菌感染症の予防若しくは改善剤(本明細書において、これらを総称して「本発明の剤」と示すこともある。)に関する。
【0092】
対象となるDPP7は、細菌が有するDPP7である限り特に制限されない。DPP7が由来する細菌としては、例えば Bacteroides fragilis、Bacteroides ovatus、Bacteroides thetaiotaomicron、Bacteroides uniformis、Bacteroides vulgatus、Capnocytophaga gingivalis、Capnocytophaga ochracea、 Chryseobacterium sp.、Shewanella putrefaciens、Stenotrophomonas maltophilia、Porphyromonas assaccharolytia、Porphyromonas endodontalis、Porphyromonas gingivalis、Porphyromonas uenonis、Prevotella bivia、Prevotella disiens、Prevotella intermedia、Prevotella melaninogenica、Prevotella oralis、Prevotella oris、Pseudomonas sp.、Pseudoxanthomonas mexicana、Tannerella forsythensis等の糖非発酵グラム陰性菌が挙げられる。本発明の剤が抗菌剤である場合は、これらの細菌に対して、好適に使用することができる。
【0093】
細菌感染症としては、上記細菌の感染によって引き起こされる細菌感染症である限り特に制限されず、例えば敗血症、菌血症、肺炎、歯周病、糖尿病、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、低体重児等が挙げられる。
【0094】
本発明の剤中の有効成分の含有量は、DPP7阻害作用を発揮できる量である限り特に制限されない。本発明の剤中の有効成分の含有量は、本発明の剤全体を100重量部として0.0001重量部~100重量部程度をすることができる。
【0095】
本発明を剤においては、一般式(1)で表される化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物と共に、他の細菌DPP(例えばDPP-4、-5、-7、-11等)の阻害剤を併用することがある。併用するDPP阻害剤としては、例えばアナグリプチン、アログリプチン、オマリグリプチン、サキサグリプチン、シタグリプチン、テネリグリプチン、トレラグリプチン、ビルダグリプチン、リグナグリプチン、ベルベリン、DPP4選択的阻害剤1c、K579、NVP-DPP728、2-シアノ-1-イソロイシルピロリジン、グリシルヒドロキシプロリン、リジノプリル等が挙げられる。
【0096】
本発明の剤は、使用用途及び態様に応じて、添加剤を含有する組成物であることができる。添加剤としては、例えば基剤、担体、溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、増粘剤、保湿剤、着色料、香料、キレート剤、防錆剤、金属防食剤、消泡剤、防錆剤、極圧添加剤、金属防食剤、消泡剤、染料等が挙げられる。使用目的に応じて、これらの添加剤のうち、薬学的に許容される成分、香粧品学的に許容される成分を選択して使用することが好ましい。
【0097】
本発明のDPP7阻害剤及び抗菌剤の使用分野は、特に限定されない。例えば、医療分野、化粧分野、食品分野、洗浄分野、口腔分野、試薬分野等の分野において用いることができる。
【0098】
本発明の剤の形態は、特に限定されず、本発明の剤の用途に応じて、各用途において通常使用される形態をとることができる。
【0099】
形態としては、用途が医薬である場合は、例えば貼付剤(プラスター剤、硬膏剤等のテープ剤(リザーバー型、マトリックス型等)、パップ剤、パッチ剤、マイクロニードル等)、軟膏剤、外用液剤(リニメント剤、ローション剤等)、スプレー剤(外用エアゾール剤、ポンプスプレー剤等)、クリーム剤、ゲル剤、点眼剤、眼軟膏剤、点鼻剤、坐剤、直腸用半固形剤、注腸剤等の非経口摂取に適した製剤形態(特に、外用製剤形態); 錠剤(口腔内側崩壊錠、咀嚼可能錠、発泡錠、トローチ剤、ゼリー状ドロップ剤などを含む)、丸剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、ドライシロップ剤、液剤(ドリンク剤、懸濁剤、シロップ剤を含む)、ゼリー剤などの経口摂取に適した製剤形態(経口製剤形態)が挙げられ、外用製剤形態が好ましく挙げられる。
【0100】
形態としては、用途が化粧品である場合は、例えば液剤、ジェル剤、クリーム剤、軟膏剤、スティック剤等が挙げられる。
【0101】
形態としては、用途が健康増進剤、栄養補助剤(サプリメントなど)などである場合は、例えば錠剤(口腔内側崩壊錠、咀嚼可能錠、発泡錠、トローチ剤、ゼリー状ドロップ剤などを含む)、丸剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、ドライシロップ剤、液剤(ドリンク剤、懸濁剤、シロップ剤を含む)、ゼリー剤などの経口摂取に適した製剤形態(経口製剤形態)、が挙げられる。
【0102】
形態としては、用途が食品組成物の場合は、液状、ゲル状あるいは固形状の食品、例えばジュース、清涼飲料、茶、スープ、豆乳、サラダ油、ドレッシング、ヨーグルト、ゼリー、プリン、ふりかけ、育児用粉乳、ケーキミックス、粉末状または液状の乳製品、パン、クッキーなどが挙げられる。
【0103】
形態としては、用途が口腔用組成物(医薬も包含する)である場合は、例えば液体(溶液、乳液、懸濁液など)、半固体(ゲル、クリーム、ペーストなど)、固体(錠剤、粒子状剤、カプセル剤、フィルム剤、混練物、溶融固体、ロウ状固体、弾性固体など)などの任意の形態、より具体的には、歯磨剤(練歯磨、液体歯磨、液状歯磨、粉歯磨など)、洗口剤、含嗽剤、塗布剤、貼付剤、口中清涼剤、食品(例えば、チューインガム、錠菓、キャンディ、グミ、フィルム、トローチなど)などが挙げられる。
【0104】
形態としては、用途が消毒剤である場合は、例えば例えば液剤、乳剤、懸濁剤、分散剤、エアゾール剤等の液剤; 水和剤、粉剤、粒剤、微粒剤、フロアブル剤等の固形又は半固形剤等が挙げられる。
【0105】
本発明の剤を生体に適用する場合、その適用(例えば、投与、摂取、接種など)経路は特に制限されず、経口投与、及び非経口投与(例えば静脈注射、筋肉注射、皮下投与、直腸投与、経皮投与、局所投与)のいずれかの投与経路でヒトを含む哺乳類に投与することができる。
【0106】
本発明の剤を生体に適用する場合、その適用(例えば、投与、摂取、接種など)量は、所望の効果を発現する有効量であれば特に限定されず、通常は、有効成分の重量として、一般に一日あたり0.1~1000 mg/kg体重である。上記投与量は1日1回又は2~3回に分けて投与するのが好ましく、年齢、病態、症状により適宜増減することもできる。
【実施例】
【0107】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0108】
実施例1:シクロヘキシルグリシルチロシン (化合物1)
【0109】
【0110】
窒素ガスを充填したプラスチックカラムに2-クロロトリチルクロリド樹脂 (602 mg, 0.91 mmol)、N-α-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-O-(tert-ブチル)-L-チロシン(545 mg, 1.19 mmol)、脱水ジクロロメタン(6 mL)、ジイソプロピルエチルアミン(300 μL, 1.72 mmol)を順に加え、室温にて2時間振とうした。反応溶媒を吸引ろ過して取り除き、メタノール(2 mL)で2回洗浄した後、メタノール(2 mL)、ジイソプロピルエチルアミン(79.4 μL, 0.46 mmol)を順に加え、室温にて15分間振とうした。反応溶媒を吸引ろ過し、樹脂をN,N-ジメチルホルムアミド、80% N,N-ジメチルホルムアミド水溶液、N,N-ジメチルホルムアミド、クロロホルム、メタノール(各2 mLを5回ずつ)で順に洗浄し、オイルポンプで乾燥し、N-α-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-O-(tert-ブチル)-L-チロシル-2-クロロトリチル樹脂(962 mg、導入率 88%)を得た。
【0111】
N-α-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-O-(tert-ブチル)-L-チロシル-2-クロロトリチル樹脂(320 mg)を20%ピペリジン/ N,N-ジメチルホルムアミド溶液(2 mL)を加えて1分間振とうした後、反応溶媒を吸引ろ過した。再度、20%ピペリジン/ N,N-ジメチルホルムアミド溶液(2 mL)を加えて20分間振とうした後、樹脂をN,N-ジメチルホルムアミド(2 mLを5回)、クロロホルム(2 mLを2回)、N,N-ジメチルホルムアミド(2 mLを3回)を用いて洗浄し、カイザー試験によりFmoc基の除去を確認した。次に、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物(140 mg, 0.91 mmol)、N-α-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-L-シクロヘキシルグリシン(346 mg, 0.91 mmol)、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェイト(475 mg, 0.91 mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド(2 mL)、ジイソプロピルエチルアミン(159 μL, 0.91 mmol)を加え、2時間振とうした。反応溶媒を吸引ろ過して取り除き、樹脂をN,N-ジメチルホルムアミド(2 mLを5回)により洗浄し、カイザー試験によりカップリングの完了を確認した。樹脂を20%ピペリジン/ N,N-ジメチルホルムアミド溶液(2 mL)を加えて1分間振とうした後、反応溶媒を吸引ろ過した。再度、20%ピペリジン/ N,N-ジメチルホルムアミド溶液(2 mL)を加えて20分間振とうした後、樹脂をN,N-ジメチルホルムアミド(2 mLを5回)、クロロホルム(2 mLを2回)、N,N-ジメチルホルムアミド(2 mLを3回)を用いて洗浄し、カイザー試験によりFmoc基の除去を確認した後、樹脂をメタノール(2 mLを5回)により洗浄した後、真空ポンプで乾燥した。樹脂をトリフルオロ酢酸/トリイソプロピルシラン/水(95 : 2.5 : 2.5)混合溶液(2.0 mL)と混合し、室温で1時間撹拌した。樹脂を濾過して取り除き、反応液を減圧濃縮して得られた残渣にジエチルエーテルを加え、析出した沈殿物を濾過して乾燥した(120 mg, 90%)。得られた粗生成物を逆相カラムHPLCにより精製し、凍結乾燥して白色粉末を得た(回収率 82%)。
【0112】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ9.25 (s, 1H), 8.57 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 8.05 (br. s., 3H), 7.07-7.01 (m, 2H), 6.70-6.64 (m, 2H), 4.52-4.29 (m, 1H), 3.55 (d, J = 5.1 Hz, 1H), 2.96 (dd, J = 14.1, 5.2 Hz, 1H), 2.82 (dd, J= 14.0, 8.6 Hz, 1H), 1.80-1.56 (m, 6H), 1.25-0.95 (m, 5H); MS (ESI-TOF) m/z: calcd for C17H25N2O4 [M + H]+321.1809; found 321.1779。
【0113】
実施例2:フェニルグリシルチロシン(化合物2)
【0114】
【0115】
N-α-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-O-(tert-ブチル)チロシル-2-クロロトリチル樹脂(321 mg)を20%ピペリジン/ N,N-ジメチルホルムアミド溶液(2 mL)を加えて1分間振とうした後、反応溶媒を吸引ろ過した。再度、20%ピペリジン/ N,N-ジメチルホルムアミド溶液(2 mL)を加えて20分間振とうした後、樹脂をN,N-ジメチルホルムアミド(2 mLを5回)、クロロホルム(2 mLを2回)、N,N-ジメチルホルムアミド(2 mLを3回)を用いて洗浄し、カイザー試験によりFmoc基の除去を確認した。次に、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物(140 mg, 0.91 mmol)、N-α-(tert-ブチルオキシカルボニル)-L-フェニルグリシン(229 mg, 0.91 mmol)、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェイト(475 mg, 0.91 mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド(2 mL)、ジイソプロピルエチルアミン(159 μL, 0.91 mmol)を加え、2時間振とうした。反応溶媒を吸引ろ過して取り除き、樹脂をN,N-ジメチルホルムアミド(2 mLを5回)により洗浄し、カイザー試験によりカップリングの完了を確認した。樹脂をメタノール(2 mLを5回)により洗浄した後、真空ポンプで乾燥した。樹脂をトリフルオロ酢酸/トリイソプロピルシラン/水(95 : 2.5 : 2.5)混合溶液(2.0 mL)と混合し、室温で1時間撹拌した。樹脂を濾過して取り除き、反応液を減圧濃縮して得られた残渣にジエチルエーテルを加え、析出した沈殿物を濾過して乾燥した(114 mg, 88%)。得られた粗生成物を逆相カラムHPLCにより精製し、凍結乾燥して白色粉末を得た(回収率 21%)。
【0116】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ12.73 (br, s., 1H), 9.25 (s, 1H), 8.76 (d, J= 7.7 Hz, 1H), 8.50 (br. s., 3H), 7.55-7.34 (m, 5H), 7.06-6.92 (m, 2H), 6.71-6.53 (m, 2H), 4.93 (s, 1H), 4.37 (td, J = 8.0, 5.2 Hz, 1H), 2.94 (dd, J = 14.0, 5.1 Hz, 1H), 2.82 (dd, J = 14.0, 8.4 Hz, 1H); MS (ESI-TOF) m/z: calcd for C17H19N2O4[M + H]+ 315.1339; found 315.1338。
【0117】
実施例3:シクロヘキシルアラニルチロシン(化合物3)
【0118】
【0119】
N-α-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-O-(tert-ブチル)チロシル-2-クロロトリチル樹脂(321 mg)を20%ピペリジン/ N,N-ジメチルホルムアミド溶液(2 mL)を加えて1分間振とうした後、反応溶媒を吸引ろ過した。再度、20%ピペリジン/ N,N-ジメチルホルムアミド溶液(2 mL)を加えて20分間振とうした後、樹脂をN,N-ジメチルホルムアミド(2 mLを5回)、クロロホルム(2 mLを2回)、N,N-ジメチルホルムアミド(2 mLを3回)を用いて洗浄し、カイザー試験によりFmoc基の除去を確認した。次に、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物(140 mg, 0.91 mmol)、N-α-(tert-ブチルオキシカルボニル)-L-シクロヘキシルアラニン一水和物(264 mg, 0.91 mmol)、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェイト(475 mg, 0.91 mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド(2 mL)、ジイソプロピルエチルアミン(159 μL, 0.91 mmol)を加え、2時間振とうした。反応溶媒を吸引ろ過して取り除き、樹脂をN,N-ジメチルホルムアミド(2 mLを5回)により洗浄し、カイザー試験によりカップリングの完了を確認した。樹脂をメタノール(2 mLを5回)により洗浄した後、真空ポンプで乾燥した。樹脂をトリフルオロ酢酸/トリイソプロピルシラン/水(95:2.5:2.5)混合溶液(2.0 mL)と混合し、室温で1時間撹拌した。樹脂を濾過して取り除き、反応液を減圧濃縮して得られた残渣にジエチルエーテルを加え、析出した沈殿物を濾過して乾燥した(126 mg, 92%)。得られた粗生成物を逆相カラムHPLCにより精製し、凍結乾燥して白色粉末を得た(回収率 48%)。
【0120】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ9.26 (s, 1H), 8.70 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 8.02 (br. s., 3H), 7.55-7.34 (m, 5H), 7.03 (d, J = 8.4 Hz,2H), 6.69-6.65 (m, 2H), 4.93 (s, 1H), 4.41 (td, J = 8.1, 5.4 Hz, 1H), 3.77 (dd, J = 8.1, 6.2 Hz, 1H), 2.96 (dd, J = 14.0, 5.2 Hz, 1H), 2.83 (dd, J = 14.1, 8.5 Hz, 1H), 1.74-1.45 (m, 7H), 1.41-1.30 (m, 1H), 1.25-1.12 (m, 3H), 0.97-0.72 (m, 2H); MS (ESI-TOF) m/z: calcd for C18H27N2O4[M + H]+ 335.1965; found 315.1942。
【0121】
実施例4:シクロヘキシルアラニル(4-ヨード)フェニルアラニン(化合物4)
【0122】
【0123】
窒素ガスを充填したプラスチックカラムに2-クロロトリチルクロリド樹脂 (200 mg, 0.30 mmol) 、N-α-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-4-ヨード-L-フェニルアラニン(187 mg, 0.37 mmol)、脱水ジクロロメタン(3 mL)、ジイソプロピルエチルアミン(212 μL, 1.22 mmol)を順に加え、室温にて2時間振とうした。反応溶媒を吸引ろ過して取り除き、メタノール(2 mL)で2回洗浄した後、メタノール(2 mL)、ジイソプロピルエチルアミン(79.4 μL, 0.46 mmol)を順に加え、室温にて15分間振とうした。反応溶媒を吸引ろ過し、樹脂をN,N-ジメチルホルムアミド、80% N,N-ジメチルホルムアミド水溶液、N,N-ジメチルホルムアミド、クロロホルム、メタノール(各2 mLを5回ずつ)で順に洗浄し、オイルポンプで乾燥した。N-α-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-4-ヨード-L-フェニルアラニル-2-クロロトリチル樹脂307 mg、導入率57%。
【0124】
N-α-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-4-ヨード-L-フェニルアラニル-2-クロロトリチル樹脂(307 mg)を20%ピペリジン/ N,N-ジメチルホルムアミド溶液(2 mL)を加えて1分間振とうした後、反応溶媒を吸引ろ過した。再度、20%ピペリジン/ N,N-ジメチルホルムアミド溶液(2 mL)を加えて20分間振とうした後、樹脂をN,N-ジメチルホルムアミド(2 mLを5回)、クロロホルム(2 mLを2回)、N,N-ジメチルホルムアミド(2 mLを3回)を用いて洗浄し、カイザー試験によりFmoc基の除去を確認した。次に、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物(123 mg, 0.80 mmol)、N-α-(tert-ブチルオキシカルボニル)シクロヘキシルアラニン一水和物(364 mg, 1.34 mmol)、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェイト(418 mg, 0.80 mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド(3 mL)、ジイソプロピルエチルアミン(280 μL, 1.61 mmol)を加え、2時間振とうした。反応溶媒を吸引ろ過して取り除き、樹脂をN,N-ジメチルホルムアミド(2 mLを5回)により洗浄し、カイザー試験によりカップリングの完了を確認した。樹脂をメタノール(2 mLを5回)により洗浄した後、真空ポンプで乾燥した。樹脂をトリフルオロ酢酸/トリイソプロピルシラン/水(95:2.5:2.5)混合溶液(3.0 mL)と混合し、室温で1時間撹拌した。樹脂を濾過して取り除き、反応液を減圧濃縮して得られた残渣にジエチルエーテルを加え、析出した沈殿物を濾過して乾燥した(110 mg, 73.6 %)。得られた粗生成物を逆相カラムHPLCにより精製し、凍結乾燥して白色粉末を得た(回収率60%)。
【0125】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ8.76 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 8.12 (br. s., 3H), 7.69-7.57 (m, 2H), 7.12-7.00 (m, 2H), 4.49 (s, 1H), 4.49 (td, J = 8.3, 5.1 Hz, 1H), 3.82-3.71 (m, 1H), 3.08-3.00 (m, 1H), 2.95-2.88 (m, 1H), 1.74-1.44 (m, 7H), 1.39-1.28 (m, 1H), 1.25-1.05 (m, 3H),0.94-0.74 (m, 2H); MS (ESI-TOF) m/z: calcd for C18H26IN2O3 [M + H]+445.0983; found 445.0988。
【0126】
実施例5:シクロヘキシルアラニルチロシルシクロプロパンスルホンアミド(化合物5)
【0127】
【0128】
N-α-(tert-ブトキシカルボニル)-O-(tert-ブチル)-L-チロシン(675 mg, 2.0 mmol)を乾燥N,N-ジメチルホルムアミド (7 mL) に溶解し、N,N-カルボニルジイミダゾール(487 mg, 3 mmol)を加えて50 oCで2時間攪拌した。反応液に、N-シクロプロピルスルホンアミド (364 mg, 3.0 mmol)、ジアザビシクロウンデセン (448 μL, 3.0 mmol) を加えて50 ℃で2時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣に水(20 mL)を加え、酢酸エチルで抽出後、10%クエン酸溶液、5%炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順に洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾過して減圧濃縮し、白色固体(366 mg)を得た。固体をアニソール (435 μL, 4.0 mmol) 、4 M塩酸ジオキサン溶液と混合して、室温で1時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣にジエチルエーテルを加えて析出した沈殿物を濾過し、乾燥後、淡黄白色固体のチロシルシクロプロパンスルホンアミド塩酸塩を得た (274 mg, 43%)。MS (ESI-TOF) m/z: calcd for C12H17N2O4S [M + H]+285.0904; found 285.0896.
【0129】
チロシルシクロプロパンスルホンアミド塩酸塩(64.2 mg, 0.2 mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド (2 mL) に溶解し、氷冷攪拌下、トリエチルアミン(97.8 μL, 0.7 mmol)、N-α-(tert-ブチルオキシカルボニル)-L-シクロヘキシルアラニンジシクロヘキシルアミン塩(99.6 mg, 0.22 mmol)、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェイト(115 mg, 0.22 mmol)を順に加え、室温で終夜撹拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣に酢酸エチルを加えた後、10%クエン酸溶液、5%炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順に洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾過して除き、減圧濃縮して白色固体(137 mg)を得た。固体をアニソール (43.5 μL, 0.4 mmol) 、トリフルオロ酢酸(2 mL)と混合して、室温で4時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣にジエチルエーテルを加えて析出した沈殿物を濾過し、乾燥後、茶白色固体を得た (71.6 mg, 65%)。得られた粗生成物を逆相カラムHPLCにより精製し、凍結乾燥して白色粉末を得た(回収率 30%)。
【0130】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ11.99 (s, 1H), 9.27 (s, 1H), 8.76 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 8.03 (br. s., 3H), 7.10-7.08 (m, 2H), 6.72-6.62 (m, 2H), 4.57-4.49 (m, 1H), 3.78 (br.s., 1H), 2.93 (dd, J = 13.9, 5.1 Hz, 1H), 2.89-2.82 (m, 1H), 2.77 (dd, J = 14.1, 9.1 Hz, 1H), 1.72-1.51 (m, 7H), 1.41-1.27 (m, 1H), 1.22-1.01(m, 7H),0.94-0.81 (m, 2H); MS (ESI-TOF) m/z: calcd for C21H32N3O5S [M + H]+ 438.2057; found 438.2042。
【0131】
実施例6:フェニルグリシルチロシルシクロプロパンスルホンアミド(化合物6)
【0132】
【0133】
チロシルシクロプロパンスルホンアミド塩酸塩(64.2 mg, 0.2 mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド (2 mL) に溶解し、氷冷攪拌下、トリエチルアミン(97.8 μL, 0.7 mmol)、N-α-(tert-ブチルオキシカルボニル)-L-フェニルグリシン(55.3 mg, 0.22 mmol)、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェイト(115 mg, 0.22 mmol)を順に加え、室温で終夜撹拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣に酢酸エチルを加えた後、10%クエン酸溶液、5%炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順に洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾過して除き、減圧濃縮して無色油状物(59 mg)を得た。油状物アニソール (43.5 μL, 0.4 mmol) 、トリフルオロ酢酸(2 mL)と混合して、室温で1時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣にジエチルエーテルを加えて析出した沈殿物を濾過し、乾燥後、白色固体を得た (34.7 mg, 33%)。得られた粗生成物を逆相カラムHPLCにより精製し、凍結乾燥して白色粉末を得た(回収率 36%)。
【0134】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ11.97 (br. s, 1H), 9.29 (s, 1H), 8.87 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 8.55 (br. s., 3H), 7.52-7.36 (m, 5H), 7.12-6.95 (m, 2H), 6.72-6.62 (m, 2H), 4.96 (s, 1H), 4.57-4.49 (m, 1H), 2.93-2.87 (m, 1H), 2.84-2.74 (m, 2H), 1.12-0.94 (m, 4H); MS (ESI-TOF) m/z: calcd for C20H24N3O5S [M + H]+ 418.1431; found 438.1418。
【0135】
実施例7:シクロヘキシルアラニル-(O-メチル)チロシン(化合物7)
【0136】
【0137】
N-α-(tert-ブチルオキシカルボニル)-L-チロシンメチルエステル(1.00 g, 3.39 mmol)とアニソール (737 μL, 6.78 mmol) 、トリフルオロ酢酸(5 mL)と混合し、室温で1時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣にヘキサンを加えて析出した沈殿物を濾過し、乾燥後、白色固体を得た (1.08 g)。得られたトリフルオリ酢酸塩をN,N-ジメチルホルムアミド (20 mL) に溶解し、氷冷攪拌下、トリエチルアミン(3.31 mL, 23.8 mmol)、N-α-(tert-ブチルオキシカルボニル)-L-シクロヘキシルアラニン一水和物(1.08 mg, 3.73 mmol)、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェイト(1.94 g, 3.73 mmol)を順に加え、室温で終夜撹拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣に酢酸エチルを加えた後、10%クエン酸溶液、5%炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順に洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾過して除き、減圧濃縮して非晶質の固体(2.03 g)を得た。MS (ESI-TOF) m/z: calcd for C24H36N2NaO6 [M + Na]+471.2466; found 471.2443.
【0138】
得られたN-α-(tert-ブチルオキシカルボニル)シクロヘキシルアラニルチロシンメチルエステル(256 mg, 0.57 mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド (4 mL) に溶解し、炭酸カリウム(86.7 mg, 0.63 mmol)、ヨウ化メチル(390 μL, 6.27 mmol)を順に加え、室温で終夜撹拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣に酢酸エチルを加えた後、10%クエン酸溶液、5%炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順に洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾過して除き、減圧濃縮して淡黄色油状物(221 mg)を得た。油状をメタノール(2 mL)に溶解し、1 M水酸化ナトリウム水溶液(2 mL)を加えて室温で2時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、クエン酸を加えてpH 3にした後、酢酸エチルで抽出し、10%クエン酸溶液、飽和食塩水で順に洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾過して除き、減圧濃縮して無色油状物を得た。油状をトリフルオロ酢酸(2 mL)と混合して、室温で80分間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣にジエチルエーテルを加えて析出した沈殿をデカンテーションして上澄み液を取り除き、乾燥後、残渣を水に溶解し、凍結乾燥して白色粉末を得た (197 mg, 90%)。得られた粗生成物を逆相カラムHPLCにより精製し、凍結乾燥して白色粉末を得た(回収率 32%)。
【0139】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ8.73 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 8.11 (br. s., 3H), 7.28-7.09 (m, 2H), 6.91-6.70 (m, 2H), 4.43 (td, J = 8.0, 5.4 Hz, 1H),3.80-3.78 (m, 1H), 3.01 (dd, J = 14.0, 5.3 Hz, 1H), 2.89 (dd, J= 14.1, 8.6 Hz, 1H), 1.75-1.45 (m, 7H), 1.40-1.30 (m, 1H), 1.26-1.02(m, 3H),0.94-0.73 (m, 2H); MS (ESI-TOF) m/z: calcd for C19H29N2O4[M + H]+ 349.2122; found 349.2117。
【0140】
実施例8:シクロヘキシルアラニルチロシンアミド(化合物8)
【0141】
【0142】
N-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-アミド樹脂(202 mg, 0.14 mmol)を20%ピペリジン/ N,N-ジメチルホルムアミド溶液(2 mL)を加えて1分間振とうした後、反応溶媒を吸引ろ過した。再度、20%ピペリジン/ N,N-ジメチルホルムアミド溶液(2 mL)を加えて20分間振とうした後、樹脂をN,N-ジメチルホルムアミド(2 mLを5回)、クロロホルム(2 mLを2回)、N,N-ジメチルホルムアミド(2 mLを3回)を用いて洗浄し、カイザー試験によりFmoc基の除去を確認した。次に、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物(63.4mg, 0.41 mmol)、N-α-(tert-ブチルオキシカルボニル)-O-(tert-ブチル)-L-チロシン(190 mg, 0.41 mmol)、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェイト(215 mg, 0.41 mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド(2 mL)、ジイソプロピルエチルアミン(72.1 μL, 0.41 mmol)を加え、90分間振とうした。反応溶媒を吸引ろ過して取り除き、樹脂をN,N-ジメチルホルムアミド(2 mLを5回)により洗浄し、カイザー試験によりカップリングの完了を確認した。を20%ピペリジン/ N,N-ジメチルホルムアミド溶液(2 mL)を加えて1分間振とうした後、反応溶媒を吸引ろ過した。再度、20%ピペリジン/ N,N-ジメチルホルムアミド溶液(2 mL)を加えて20分間振とうした後、樹脂をN,N-ジメチルホルムアミド(2 mLを5回)、クロロホルム(2 mLを2回)、N,N-ジメチルホルムアミド(2 mLを3回)を用いて洗浄し、カイザー試験によりFmoc基の除去を確認した。次に、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物(63.4mg, 0.41 mmol)、N-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-L-シクロヘキシルアラニン(163 mg, 0.41 mmol)、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェイト(215 mg, 0.41 mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド(2 mL)、ジイソプロピルエチルアミン(72.1 μL, 0.41 mmol)を加え、90分間振とうした。反応溶媒を吸引ろ過して取り除き、樹脂をN,N-ジメチルホルムアミド(2 mLを5回)により洗浄し、カイザー試験によりカップリングの完了を確認した。樹脂をメタノール(2 mLを5回)により洗浄した後、真空ポンプで乾燥した。樹脂をトリフルオロ酢酸/トリイソプロピルシラン/水(95 : 2.5 : 2.5)混合溶液(2.0 mL)と混合し、室温で1時間撹拌した。樹脂を濾過して取り除き、反応液を減圧濃縮して得られた残渣にジエチルエーテルを加え、析出した沈殿物を濾過して乾燥した(17.6 mg, 34%)。得られた粗生成物を逆相カラムHPLCにより精製し、凍結乾燥して白色粉末を得た(回収率 68%)。
【0143】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ9.21 (s, 1H), 8.58 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 8.02 (br. s., 3H), 7.48 (s, 1H), 7.06 (s, 1H), 7.09-6.98 (m,3H), 6.69-6.60 (m, 2H), 4.42 (td, J = 8.2, 5.8 Hz, 1H), 3.84-3.72 (m, 1H), 2.87 (dd, J = 13.9, 5.6 Hz, 1H), 2.73 (dd, J = 13.9, 8.4 Hz, 1H), 1.73-1.44 (m, 7H), 1.39-1.25 (m, 1H), 1.25-1.05 (m, 3H), 0.94-0.76 (m, 2H); MS (ESI-TOF) m/z: calcd for C18H28N3O3 [M + H]+334.2125; found 334.2134。
【0144】
実施例9:シクロヘキシルアラニルロイシン(化合物9)
【0145】
【0146】
L-ロイシンメチルエステル塩酸塩(36.3 mg, 0.2 mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド (2 mL) に溶解し、氷冷攪拌下、トリエチルアミン(28.0 μL, 0.2 mmol)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(33.7 mg, 0.22 mmol)、N-α-(tert-ブチルオキシカルボニル)-L-シクロヘキシルアラニン一水和物(63.7 mg, 0.22 mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(42.2 mg, 0.22 mmol)を順に加え、室温で終夜撹拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣に酢酸エチルを加えた後、10%クエン酸溶液、5%炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順に洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾過して除き、減圧濃縮して白色固体を得た。固体をメタノール(1.5 mL)に溶解し、1M水酸化ナトリウム水溶液(1.5 mL)を加えて室温で1時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、クエン酸を加えてpH 3にした後、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾過して除き、減圧濃縮して白色固体を得た。固体をアニソール (43.5 μL, 0.4 mmol) 、トリフルオロ酢酸(1.5 mL)と混合して、室温で1時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣にヘキサンを加えて析出した沈殿物を濾過し、乾燥後、無色油状物を得た (143 mg)。得られた粗生成物を逆相カラムHPLCにより精製し、凍結乾燥して白色粉末を得た(回収率 40%)。
【0147】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ8.63 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 8.08 (br. s., 3H), 4.32-4.24 (m, 1H), 3.79 (t, J = 7.3 Hz, 1H), 1.77-1.48 (m, 10H), 1.43-1.31 (m, 1H), 1.28-1.02 (m, 3H), 1.01-0.75 (m, 8H); MS (ESI-TOF) m/z: calcd for C15H29N2O3 [M + H]+285.2173; found 285.2168。
【0148】
実施例10:シクロヘキシルアラニル-(O-エチル)チロシン(化合物10)
【0149】
【0150】
N-α-(tert-ブチルオキシカルボニル)シクロヘキシルアラニルチロシンメチルエステル(44.9 mg, 0.10 mmol)をアセトニトリル (2 mL) に溶解し、炭酸カリウム(27.6 mg, 0.2 mmol)、臭化エチル(14.9 μL, 0.2 mmol)を順に加え、室温で終夜撹拌した。更に、アセトニトリル (1 mL)、臭化エチル(14.9 μL, 0.2 mmol)を加え、50℃で8時間撹拌した。反応液を濾過して不溶物を取り除いた後、減圧濃縮し、残渣をメタノール(1 mL)に溶解し、1M水酸化ナトリウム水溶液(1 mL)を加えて室温で1時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、クエン酸を加えてpH 3にした後、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾過して除き、減圧濃縮して無色油状物を得た。油状をアニソール(21.7 μL, 0.2 mmol)、トリフルオロ酢酸(1 mL)と混合して、室温で1時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣にヘキサンを加えて析出した沈殿をデカンテーションして上澄み液を取り除き、乾燥後、残渣を水に溶解し、凍結乾燥して白色粉末を得た (92 mg)。得られた粗生成物を逆相カラムHPLCにより精製し、凍結乾燥して白色粉末を得た(回収率 17%)。
【0151】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ8.70-8.58 (m, 1H), 7.14 (d, J = 8.6 Hz,2H),6.87-6.75 (m,2H), 4.45-4.38 (m, 1H), 3.98 (q, J = 5.6 Hz, 1H), 3.73-3.69 (m, 1H), 3.00 (dd, J = 14.1, 5.3 Hz, 1H), 2.87 (dd, J = 13.9, 8.4 Hz, 1H), 1.72-1.43 (m, 7H), 1.40-1.25 (m, 4H), 1.23-1.05 (m, 3H), 0.92-0.78 (m, 2H); MS (ESI-TOF) m/z: calcd for C20H31N2O4[M + H]+ 363.2278; found 363.2266。
【0152】
実施例11:シクロヘキシルアラニルチロシンメチルエステル(化合物11)
【0153】
【0154】
N-α-(tert-ブチルオキシカルボニル)シクロヘキシルアラニルチロシンメチルエステル(44.9 mg, 0.10 mmol)をアニソール(21.7 μL, 0.2 mmol)、トリフルオロ酢酸(1 mL)と混合して、室温で1時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣にヘキサンを加えてデカンテーションして上澄み液を取り除き、乾燥後、残渣を水に溶解し、凍結乾燥して白色粉末を得た (40.7 mg, 88%)。得られた粗生成物を逆相カラムHPLCにより精製し、凍結乾燥して白色粉末を得た(回収率 36%)。
【0155】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ9.29 (s, 1H), 8.84 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 8.00 (br. s., 3H), 7.09-6.94 (m,2H), 6.76-6.61 (m, 2H), 4.52-4.42 (m, 1H), 3.78 (dd, J = 8.1, 6.3 Hz, 1H), 3.60 (s, 3H), 2.94 (dd, J = 14.1, 6.0 Hz, 1H), 2.86 (dd, J = 14.0, 8.4 Hz, 1H), 1.77-1.46 (m, 7H), 1.58-1.40 (m, 1H), 1.26-1.08 (m, 3H), 0.94-0.79 (m, 2H); MS (ESI-TOF) m/z: calcd for C19H29N2O4[M + H]+ 349.2122; found 349.2111。
【0156】
実施例12:フェニルグリシル(4-ヨード)フェニルアラニン(化合物12)
【0157】
【0158】
窒素ガスを充填したプラスチックカラムに2-クロロトリチルクロリド樹脂 (202 mg, 0.30 mmol) 、N-α-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-4-ヨード-L-フェニルアラニン(203 mg, 0.40 mmol)、脱水ジクロロメタン(3 mL)、ジイソプロピルエチルアミン(101 μL, 0.58 mmol)を順に加え、室温にて2時間振とうした。反応溶媒を吸引ろ過して取り除き、メタノール(2 mL)で2回洗浄した後、メタノール(2 mL)、ジイソプロピルエチルアミン(79.4 μL, 0.46 mmol)を順に加え、室温にて15分間振とうした。反応溶媒を吸引ろ過し、樹脂をN,N-ジメチルホルムアミド、80% N,N-ジメチルホルムアミド水溶液、N,N-ジメチルホルムアミド、クロロホルム、メタノール(各2 mLを5回ずつ)で順に洗浄し、オイルポンプで乾燥し、N-α-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-4-ヨードフェニルアラニル-2-クロロトリチル樹脂(365 mg、導入率 97%)を得た。
【0159】
N-α-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-4-ヨードフェニルアラニル-2-クロロトリチル樹脂を20%ピペリジン/ N,N-ジメチルホルムアミド溶液(3 mL)を加えて振とうした後、反応溶媒を吸引ろ過した(3分間2回、20分間1回)。樹脂をN,N-ジメチルホルムアミドを用いて洗浄し(3 mLを6回)、カイザー試験によりFmoc基の除去を確認した。次に、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物(140mg, 0.91 mmol)、N-α-(tert-ブチルオキシカルボニル)-L-フェニルグリシン(229 mg, 0.91 mmol)、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェイト(475 mg, 0.91 mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド(2 mL)、ジイソプロピルエチルアミン(618 μL, 1.82 mmol)を加え、2時間振とうした。反応溶媒を吸引ろ過して取り除き、樹脂をN,N-ジメチルホルムアミド(2 mLを5回)により洗浄し、カイザー試験によりカップリングの完了を確認した。樹脂をメタノール(2 mLを5回)により洗浄した後、真空ポンプで乾燥した。樹脂をトリフルオロ酢酸/トリイソプロピルシラン/水(95 : 2.5 : 2.5)混合溶液(2.0 mL)と混合し、室温で1時間撹拌した。樹脂を濾過して取り除き、反応液を減圧濃縮して得られた残渣にジエチルエーテルを加え、析出した沈殿物を濾過して乾燥した(22.6 mg, 18%)。得られた粗生成物を逆相カラムHPLCにより精製し、凍結乾燥して白色粉末を得た(回収率 44%)。
【0160】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ8.78 (d, J = 7.7 Hz, 1H), 8.47 (br. s., 3H), 7.64-7.57 (m, 2H), 7.52-7.35 (m, 5H), 7.00 (d, J = 8.3 Hz,2H), 4.91 (s, 1H), 4.44 (td, J = 8.2, 5.0 Hz, 1H), 3.02 (dd, J = 13.8, 4.7 Hz, 1H), 2.89 (dd, J = 13.9, 8.8 Hz, 1H); MS (ESI-TOF) m/z: calcd for C17H18IN2O3[M + H]+ 425.0357; found 245.0357。
【0161】
実施例13:フェニルアラニルチロシン(化合物13)
【0162】
【0163】
L-チロシンメチルエステル塩酸塩(100 mg, 0.43 mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド (2 mL) に溶解し、氷冷攪拌下、トリエチルアミン(60.1 μL, 0.43a mmol)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(72.4 mg, 0.47 mmol)、N-α-(tert-ブチルオキシカルボニル)-L-フェニルアラニン(126 mg, 0.47 mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(90.7 mg, 0.47 mmol)を順に加え、室温で終夜撹拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣に酢酸エチルを加えた後、10%クエン酸溶液、5%炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順に洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾過して除き、減圧濃縮して白色固体(189 mg)を得た。固体をメタノール(1.5 mL)に溶解し、1 M水酸化ナトリウム水溶液(1.5 mL)を加えて室温で1時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、クエン酸を加えてpH 3にした後、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾過して除き、減圧濃縮して無色油状物を得た。油状をアニソール(93.5 μL, 0.86 mmol)、4 M塩酸ジオキサン溶液(3 mL)と混合して、室温で1時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣にジエチルエーテルを加えて析出した沈殿を濾過し、乾燥後、白色固体を得た (175 mg)。得られた粗生成物を逆相カラムHPLCにより精製し、凍結乾燥して白色粉末を得た(回収率 74%)。
【0164】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ12.89 (br. s, 1H), 9.29 (s, 1H), 8.87 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 8.11 (br. s., 3H), 7.36-7.22 (m, 5H), 7.09-7.01 (m,2H), 6.72-6.64 (m, 2H), 4.43 (td, J = 8.0, 5.3 Hz, 1H), 4.04 (dd, J = 8.2, 4.9 Hz, 1H), 3.15 (dd, J = 14.2, 4.8 Hz, 1H), 3.01-2.81 (m, 3H); MS (ESI-TOF) m/z: calcd for C18H21N2O4[M + H]+ 329.1496; found 329.1486。
【0165】
実施例14:チロシルチロシン(化合物14)
【0166】
【0167】
L-チロシンメチルエステル塩酸塩(100 mg, 0.43 mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド (2 mL) に溶解し、氷冷攪拌下、トリエチルアミン(60.1 μL, 0.43ammol)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(72.4 mg, 0.47 mmol)、N-α-(tert-ブチルオキシカルボニル)-L-チロシン(133 mg, 0.47 mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(90.7 mg, 0.47 mmol)を順に加え、室温で終夜撹拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣に酢酸エチルを加えた後、10%クエン酸溶液、5%炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順に洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾過して除き、減圧濃縮して白色固体(204 mg)を得た。固体をメタノール(1.5 mL)に溶解し、1M水酸化ナトリウム水溶液(1.5 mL)を加えて室温で1時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、クエン酸を加えてpH 3にした後、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾過して除き、減圧濃縮して無色油状物を得た。油状をアニソール(93.5 μL, 0.86 mmol)、4 M塩酸ジオキサン溶液(3 mL)と混合して、室温で1時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣にジエチルエーテルを加えて析出した沈殿を濾過し、乾燥後、白色固体を得た (193 mg)。得られた粗生成物を逆相カラムHPLCにより精製し、凍結乾燥して白色粉末を得た(回収率 68%)。
【0168】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ9.36 (br. s, 1H), 9.29 (br. s, 1H), 8.81 (d, J= 7.7 Hz, 1H), 7.07 (d, J = 8.3 Hz,2H), 7.05 (d, J = 8.4 Hz,2H),6.70-6.69 (m, 4H), 4.45-4.38 (m, 1H), 3.91 (br. s, 1H), 3.06-2.95 (m, 2H), 2.87-2.75 (m, 2H); MS (ESI-TOF) m/z: calcd for C18H21N2O5[M + H]+ 345.1445; found 345.1431。
【0169】
実施例15:細菌DPP7の酵素阻害アッセイ
酵素比活性値を測定するために、96ウェルのプレート(黒)上で50 μLの酵素液(100 mM リン酸NaBuffer pH7.0、10 mM EDTA、0.01% Tween20および酵素(SmDPP7、PgDPP7、又はPmDPP7)を含む)と、50 μLの基質溶液(200 μM Met-Leu-MCA)とを混合し、励起波長355 nm/測定波長460 nmで遊離MCAの蛍光値を測定しながら25℃ で 20 分間反応させて活性測定を行った。MCAを標準物質とする検量線から遊離MCA量を算出し、一分間当たりに遊離されるMCA量を、酵素比活性値(μmol/min/mg)として決定した。複数の基質濃度を用いた酵素活性値から、ミカエリエス・メンテン式に基づく計算値について最小二乗法による近似を行い、カイネティックパラメーターであるKm (μM)およびkcat (/sec)を算出した。
【0170】
酵素残存活性、阻害率、IC50およびKiを測定するために、50 μLの酵素液(前述と同一組成)と50 μLの基質・化合物混合液(200 μM Met-Leu-MCAおよび1.5625~200 μMの化合物(化合物1~14のいずれか1つ))を混合し、前述の活性測定法で酵素比活性値を算出した。IC50はシグモイド曲線から算出し、Kiは化合物と酵素の阻害様式を拮抗阻害と仮定したCheng-Prusoff式を用いてIC50、Kmおよび基質濃度(100 μM)から算出した。残存活性は下記式(A)に、阻害率は下記式(B)から算出した。
式(A) 残存活性(%)=「酵素活性(化合物を含む)」/「酵素活性(化合物を含まない)」×100
式(B) 阻害率(%)=100 - 式(A)。
【0171】
化合物濃度100 μMにおけるSmDPP7残存活性を
図1に示す。化合物のSmDPP7に対する50%阻害濃度を表1に示す。化合物濃度100 μMにおける細菌DPP7の残存活性を表2に示す。
【0172】
【0173】
【0174】
図1に示されるように、化合物1~14はSmDPP7残存活性を低下させることが分かった。また、表1(残存活性が20%を下回った化合物についてはSmDPP7に対するIC
50値を求めた結果)に示されるように、残存活性が20%を下回った化合物のIC
50値は20 μM未満であり、中で最も化合物7や化合物11は、それぞれIC
50値が2.0 μM、2.5 μMであり、強いSmDPP7阻害活性を示した。
【0175】
表2に示されるように、化合物は、SmDPP7のみならず、PgDPP7及びPmDPP7の残存活性をも低下させることが分かった。化合物2、3、及び5はSmDPP7と同様にPmDPP7の残存活性を顕著に低下させたが、PgDPP7に対しては残存活性の低下が中程度であった。一方、化合物4は3種の細菌DPP7に対して20%程度に残存活性を低下させた。
【0176】
実施例16:SmDPP7と化合物7の複合体の結晶化実験
SmDPP7精製標品(5 mg/mL)と化合物7/80 mM Tris/HCl pH 8.5の100%飽和溶液を9 : 1の割合で混合し、SmDPP7/化合物7混合溶液を作製した。次いで、48ウェルのプレートに200 μLの20% (w/v)ポリエチレングリコール8000、200 mMの酢酸アンモニウムから成る結晶化溶液を添加した。そして、SmDPP7/化合物7混合溶液と48ウェルプレートに分注した結晶化溶液から、それぞれ0.7 μLずつ撥水加工したカバーグラス上に載せ、一つのドロップレットとした。カバーグラスを反転させ、ドロップレットを下側に向けた状態とし、48ウェルプレートのうちの一つのウェルに被せて密閉し、20℃で静置した。凡そ10日程度で0.3 mm×0.1 mm×0.01 mm程度の平板状の結晶を得た。
【0177】
実施例17:抗菌活性評価
メナジオンを0.001%含むABCM培地にPorphyromonas gingivalis W83株を嫌気性条件下、37oCで48時間培養し、菌体をPBSに懸濁させOD600を測定した。各化合物をDMSOに溶解させ、培地にDMSOが0.5%, 100 μMになるように添加した。コントロールには化合物を含まないDMSOを0.5%加え、その濁度を100%とした。菌の増殖率は、下記式(1)から算出した。結果(化合物100μMにおけるPorphyromonas gingivalis W83株の増殖率)の一部を表3に示す。
式(1) 増殖率(%)=「OD600(化合物を含む)」/「OD600(化合物を含まない)」×100。
【0178】
【0179】
表3に示されるように、化合物11存在下では増殖率が52.6%となり、菌の増殖を抑制した。