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特許7228833ジョイントテープロール及びそれを用いた塗膜防水工法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】ジョイントテープロール及びそれを用いた塗膜防水工法
(51)【国際特許分類】
   E04D 7/00 20060101AFI20230217BHJP
   E04D 11/00 20060101ALI20230217BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230217BHJP
   B32B 3/24 20060101ALI20230217BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
E04D7/00 G
E04D11/00 G
B32B27/00 M
B32B3/24 Z
B32B27/00 101
B32B27/12
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018236839
(22)【出願日】2018-12-19
(65)【公開番号】P2020097856
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】598171508
【氏名又は名称】株式会社秀カンパニー
(73)【特許権者】
【識別番号】508079175
【氏名又は名称】栗田煙草苗育布製造株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】515352788
【氏名又は名称】有限会社ヨシカネ
(74)【代理人】
【識別番号】110002136
【氏名又は名称】弁理士法人たかはし国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口秀夫
(72)【発明者】
【氏名】栗田昌幸
(72)【発明者】
【氏名】一柳隆治
(72)【発明者】
【氏名】酒井隆宏
(72)【発明者】
【氏名】吉野兼司
【審査官】清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】特許第2778010(JP,B2)
【文献】特開2004-003225(JP,A)
【文献】特開2017-137721(JP,A)
【文献】特開2014-210864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 7/00
E04D 11/00
B32B 27/00
B32B 3/24
B32B 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.3mm以上の厚さを有する構造体の端部面同士の突き合わせ部分の上部に貼り付けて該構造体同士を接合するためのジョイントテープが離型シートを介さずに巻かれてなるジョイントテープロールであって、
該ジョイントテープは、少なくとも上から順に、
下記網目状シートを構成する糸の上面に該網目を塞がないように形成されている離型層、
幅2cm以上20cm以下の網目状シート、
該網目状シートの下面全体であって、該網目状シートを構成する糸の下面に該網目を塞がないように形成されている粘着層A、
幅が該網目状シートの1/10以上1/2以下であって、該網目シートの幅方向の略中央に該網目状シートの中心線を跨ぐように積層されたフィルム、及び、
該フィルムの下面にのみ形成された粘着力が3N/25mm以上の粘着層B
を有することを特徴とするジョイントテープロール。
【請求項2】
上記離型層が、シリコーン系樹脂又はフッ素系樹脂を含有する請求項1に記載のジョイントテープロール。
【請求項3】
上記離型層が、有機重合体変性シリコーンを含有する請求項1又は請求項2に記載のジョイントテープロール。
【請求項4】
上記網目状シートを構成する糸の交点が目止め剤で目止めされており、該目止め剤の成分と上記離型層の成分とが同一である請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載のジョイントテープロール。
【請求項5】
上記構造体が、塗膜防水工法に用いられる横方向に通気性を有する通気シートである請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載のジョイントテープロール。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5の何れかの請求項に記載のジョイントテープロールに巻かれているものであって、離型シートを有していないことを特徴とするジョイントテープ。
【請求項7】
請求項1ないし請求項5の何れかの請求項に記載のジョイントテープロールを製造する方法であって、
網目状シートの上面に該網目を塞がないように離型層を形成する工程
網目状シートの下面に該網目を塞がないように粘着層Aを形成する工程
下面に粘着層Bが設けられたフィルムの上面を、上記網目状シートの中心線を跨ぐように、上記網目状シートの下面に積層する工程
上記工程で得られたジョイントテープを、離型シートを介さずに巻く工程
を少なくとも有することを特徴とするジョイントテープロールの製造方法。
【請求項8】
塗布することによって上記離型層を形成するための離型層形成液が、有機重合体変性シリコーンの水系エマルジョンを含有する請求項7に記載のジョイントテープロールの製造方法。
【請求項9】
有機重合体変性シリコーンの水系エマルジョンと、上記離型層を構成するポリマーの水系エマルジョンとを混合して離型層形成液を調製し、上記網目状シートの上面に該網目を塞がないように該離型層形成液を塗布して離型層を形成する請求項7又は請求項8に記載のジョイントテープロールの製造方法。
【請求項10】
上記離型層の形成と、上記網目状シートの目止めとを、同一液を用いて同時に行う請求項7ないし請求項9の何れかの請求項に記載のジョイントテープロールの製造方法。
【請求項11】
防水をする下地上に、上記構造体である横方向に通気性を有する通気シート同士を互いに突き合せて設置し、該通気シート同士の突き合せ部分に、請求項1ないし請求項5の何れかの請求項に記載のジョイントテープロールの巻きを解きつつ、上記ジョイントテープの幅方向の略中心が該突き合せ部分に対応するように、該通気シートの上から該ジョイントテープを接着し、次いで、塗膜防水材を塗布することを特徴とする塗膜防水工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型シートを介さずに巻かれているジョイントテープロール、該ジョイントテープロールに巻かれているジョイントテープ、その製造方法、及び、それを使用した塗膜防水工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ある程度の厚さを有する平板状の構造体、例えば、建築用ボード、防水シート、通気(緩衝)シート等を横に並べて互いに接合し固定する際には、該構造体同士の突き合わせ部分の上を、接着性を有するジョイントテープで互いに止めることが行われる。通常は接合後、ジョイントテープの上から液体である塗膜形成材(塗料)を塗布して、密着強度や外観を良くすると共に所望の表面物性を得る。
その際、上から塗布した塗膜形成材(塗料)を、該ジョイントテープの一部を通過させて構造体表面にまで達するようにし、該ジョイントテープの構造体への接着性を強固にする方法が知られている。例えば、特許文献1では、該テープの素材として網目シートが使用され、特許文献2では、開口体が使用されている。
【0003】
しかし、該ジョイントテープ全体が、上記したような開口のある網目状であると、液体である塗膜形成材(塗料)が、該ジョイントテープを通過して、構造体同士の突き合わせ部分の隙間にまで達し、該突き合わせ部分(隙間)を埋めてしまったり、更には下地にまで達したりすることで、種々の不具合が生じることがある。
【0004】
特に、塗膜防水工法に用いられる通気(緩衝)シートは、コンクリート等の下地から発生する水蒸気等の気体を横方向に通気させる機能を有する。具体的には、図6に示したように、該通気(緩衝)シートには、気体を横方向に逃すために、不織布等からできた通気層が該基材層の下に設けられていたり、粘着層が形成されていない部分と下地との間の空間を気体の通気路として確保したりして、気体を横方向に通気させて脱気筒にまで導けるようにしている。
上記した通り、複数枚の通気(緩衝)シートを併設し、突き合わせ部分にジョイントテープを使用した場合、網目シート等の網目を通過した塗膜形成材(塗膜防水工法の場合は防水塗料)が、該突き合わせ部分の隙間を埋めてしまったのでは、通気(緩衝)シートの接合部分で気体の流通が遮断され、防水塗膜に該気体による膨れ等が生じる場合がある。
【0005】
これを防止するために、例えば、該突き合わせ部分の直上に位置する該テープの中心部分にのみ、特許文献1では液を通過させないフィルムが設けられており、特許文献2では該開口体の開口率を小さくして液の通過を阻止している。このことによって、塗膜形成材(塗料)が、構造体(上記場合は通気(緩衝)シート)の突き合わせ部分の隙間に入って、その間の気体の流通を遮断しないようにしている。
【0006】
しかし、テープの中心部にのみ「液を通過させないフィルム」を設けた場合、該フィルムの下面(構造体に接着させる側)には、併設される構造体同士を固定するため等に強力な粘着層Bが必要である。
また、ジョイントテープ全面の下面にも、塗膜形成材(塗料)が塗布されるまでの仮止めとして粘着層Aが必要である。該粘着層Aがないと、塗膜形成材(塗料)を塗布する前に、ジョイントテープが風等で剥がれたり(飛ばされたり)、両脇の網目シートが波打ったりして、その後の塗膜形成材(塗料)の塗布に支障をきたす。
【0007】
このように、ジョイントテープには粘着層が必須であるため、該ジョイントテープの粘着層側に対しては離型シートが必要となり、従って、ジョイントテープロールを作製する際には、ジョイントテープを、該離型シートを介して巻き取る必要があった。
【0008】
しかしながら、ジョイントテープ使用の現場で発生する不要の離型シートは、省エネルギー化に反しコスト増加をもたらすこと以外にも、例えば後記するように、ジョイントテープを使用する施工現場特有の種々の問題を引き起こしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第2778010号公報
【文献】特開2017-137721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、不要物を出さず作業がし易くなるジョイントテープやジョイントテープロールを提供することであり、更には、該ジョイントテープ(ロール)を使用した施工し易い塗膜防水工法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ロール状に巻いた際に粘着層に隣接する裏面(以下、「巻回接触面」と略記する場合がある)に離型層を形成しておいたとしても、その後の塗膜形成材(塗料)の塗布性、及び、ジョントテープや塗布された塗膜の構造体表面への密着性に、意外にも全く悪影響を与えないことを見出した。更には、そのような離型層を見出した。
すなわち、該巻回接触面は、施工時に該ジョイントテープを構造体の突き合わせ部分に貼り付けたときに最上面になるが、そこに離型層を形成しておいても、液体の塗膜形成材(塗料)が、意外にも該離型層によってはじかれずに塗布ができ、しかも網目を通過して構造体まで達した塗膜形成材(塗料)によって、ジョイントテープの構造体への貼付性は、意外にも強固に保たれる(該離型層がない場合に比較して弱くならない)ことを見出して、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、0.3mm以上の厚さを有する構造体の端部面同士の突き合わせ部分の上部に貼り付けて該構造体同士を接合するためのジョイントテープが離型シートを介さずに巻かれてなるジョイントテープロールであって、
該ジョイントテープは、少なくとも上から順に、
下記網目状シートを構成する糸の上面に該網目を塞がないように形成されている離型層、
幅2cm以上20cm以下の網目状シート、
該網目状シートの下面全体であって、該網目状シートを構成する糸の下面に該網目を塞がないように形成されている粘着層A、
幅が該網目状シートの1/10以上1/2以下であって、該網目シートの幅方向の略中央に該網目状シートの中心線を跨ぐように積層されたフィルム、及び、
該フィルムの下面にのみ形成された粘着力が3N/25mm以上の粘着層B
を有することを特徴とするジョイントテープロールを提供するものである。
【0013】
また、本発明は、上記離型層が、シリコーン系樹脂又はフッ素系樹脂を含有する上記のジョイントテープロールを提供するものである。
【0014】
また、本発明は、上記離型層が、有機重合体変性シリコーンを含有する上記のジョイントテープロールを提供するものである。
【0015】
また、本発明は、上記のジョイントテープロールに巻かれているものであって、離型シートを有していないことを特徴とするジョイントテープを提供するものである。
【0016】
また、本発明は、上記のジョイントテープロールを製造する方法であって、
網目状シートの上面に該網目を塞がないように離型層を形成する工程
網目状シートの下面に該網目を塞がないように粘着層Aを形成する工程
下面に粘着層Bが設けられたフィルムの上面を、上記網目状シートの中心線を跨ぐように、上記網目状シートの下面に積層する工程
上記工程で得られたジョイントテープを、離型シートを介さずに巻く工程
を少なくとも有することを特徴とするジョイントテープロールの製造方法を提供するものである。
【0017】
また、本発明は、防水をする下地上に、上記構造体である横方向に通気性を有する通気シート同士を互いに突き合せて設置し、該通気シート同士の突き合せ部分に、上記のジョイントテープロールの巻きを解きつつ、上記ジョイントテープの幅方向の略中心が該突き合せ部分に対応するように、該通気シートの上から該ジョイントテープを接着し、次いで、塗膜防水材を塗布することを特徴とする塗膜防水工法を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明のジョイントテープによれば、前記問題点と課題を解決し、離型シートがなくても、巻き取ったときに粘着層と巻回接触面がくっつき難い。
また、本発明のジョイントテープには離型シートがないので、現場で作業者がジョイントテープロールの巻きを解くだけで、ジョイントテープを容易に構造体の突き合わせ部分の上に貼り付けることができる。
すなわち、本発明のジョイントテープによれば、離型シートを排除することで、巻き解き性を良好にでき施工を容易にできる。
ここで、「離型シート」とは、少なくとも一方の面が離型性を有するシートを言い、その基材は、フィルム、紙、シート、布等、シート状であれば限定されない。
【0019】
粘着層とは反対側の巻回接触面は、ジョイントテープを構造体の突き合わせ部分の上に貼り付けたときに最上面になる。従って、従来は、「そこに離型層を形成したのでは、巻き解きはできるようになるものの、該離型層によって塗膜形成材(塗料)の塗布不良や、網目通過性の悪化等が生じる」と考えられていた。
しかしながら、本発明によれば、このような塗布不良が生じず、しかも離型層による密着性低下がたとえ若干あったとしても、網目を正常に通過した塗膜形成材(塗料)による埋め込み効果(アンカー効果)によって、ジョイントテープの構造体への密着性は全く低下しない。
【0020】
前記フィルムの存在しない網目状シート部分(ジョントテープの両脇部分)は、粘着層Aが形成されていると言っても、該網目状シートを構成する糸の下面にのみ形成されている。従って、ロールとした際に、網状の粘着層Aの巻回接触面へのくっつき性は弱いと考えられる。
【0021】
しかしながら、前記理由から(突き合わせ部分に塗膜形成材が流れ込まないようにするために)、該網目シートの略中心に積層されたフィルムと該フィルムの下面に形成された粘着層Bが必須である。
該粘着層Bはフィルム全面に形成されるので、網状に形成された粘着層Aより接着性が強い。また、構造体の突き合わせ部分に貼り付けて該構造体同士を接合する必要があるので、塗膜形成材(塗料)の塗布前の「構造体への仮止め」に過ぎない網目部分の粘着層Aより接着性が強い。
また、該フィルムの構造体への接着は、該フィルムは網目ではないので塗膜形成材(塗料)の埋め込み効果(アンカー効果)が期待できず、また、塗膜形成材(塗料)のフィルムの脇からの侵入を阻止しなくてはならないので、その分、粘着層Bの接着性は強い必要がある。
【0022】
本発明によれば、網目状シートを構成する糸の上面に形成されている離型層の存在によって、驚くべきことに、上記したように接着性の強い粘着層Bですら巻回接触面にくっつき難く、その結果、離型シートがないジョイントテープロールが実現できる。
また、本発明によれば、該粘着層Bの粘着力(JIS Z 0237:180℃ピール法による粘着力)が、構造体同士の接合に十分な値以上であっても、粘着層Bが巻回接触面に貼り付かない。
【0023】
更に、上記離型層にシリコーン系樹脂又はフッ素系樹脂を含有させて離型性を持たせることによって、特に、上記離型層に、アクリル変性シリコーン、ウレタン変性シリコーン等の有機重合体変性シリコーンを含有させて離型性を持たせることによって、上記した性能がより効果的に得られる。すなわち、ロールの巻き解き性(非くっつき性)を良好にしつつ、塗膜形成材(塗料)の塗布不良、塗膜の密着性不良等を生じさせないようにできる。更に、網目状シートの目止めと離型層の形成とを同時に行うことができて製造工程が短縮できる。
また、変性されていることによって、回巻してロールとしたときに、シリコーン(粒子)が、巻回接触面である粘着層Aや粘着層Bに転写(裏移り)することがない。
【0024】
本発明のジョイントテープによれば、離型シートがそもそも存在しないので、ごみが出ずに後片付けが完璧かつ容易となる;省エネルギー化・低コスト化が実現できる;ジョイントテープロールの巻きを解くだけで容易に構造体上に貼り付けることができる;離型シートを剥がすときの静電気が起きないので手等が感電する(ビリッとする)ことがない。また、静電気によって、剥がした離型シートの裏側(離型性がない側の面)が、風によってジョイントテープの粘着面等にくっつく事故や、使用場所が、中層・高層を含む建築物の屋上となることが多いため、剥がした離型シートが、強風によって切られて飛ばされ、空を舞い、道路や、最悪の場合、鉄道の架線にひっかかると言ったような事故の発生がない。
【0025】
本発明のジョイントテープ使用の対象となる構造体は屋外にある場合が多く、特に該構造体としては、塗膜防水工法に使用する通気(緩衝)シートであることが好ましいが、屋外では風による離型シートの舞が問題となっていた。
本発明のジョイントテープによれば、離型シートが風で飛ぶことがあり得ないので、該離型シートの離型処理されてない方の面が、ジョイントテープ中央のフィルム上の粘着層Bに貼り付くと言った従来の問題点が発生しない。また、離型シートが風で飛んで、「防水塗料等の塗膜形成材(塗料)」が乾燥する前(硬化する前)の面に貼り付くと言った問題点も発生しない。
【0026】
上記したように、屋外で使用されることの多いジョイントテープにおいては、特に離型シートなしの効果は顕著であり、本発明によれば構造体接合の作業性が著しく向上する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明のジョイントテープの概略平面図(上)と、ジョイントテープを横断するように切ったときの概略断面図(長手方向に見たときの概略断面図)(下)である。
図2】本発明のジョイントテープの網目状シート部分の概略拡大断面図である。 (a)図1のX-X矢視断面図 (b)図1のY-Y矢視断面図
図3】本発明のジョイントテープの写真である。 (a)斜め上からの写真 (b)斜め下からの写真
図4】本発明のジョイントテープロールの概略斜視図である。
図5】ジョイントテープの使用形態を示す概略断面図である。 (a)ジョイントテープを一体で表示 (b)ジョイントテープの層構成も表示
図6】通気シートの形態とその上の塗膜防水層を示す概略断面図である。 (a)不織布等を材質とする通気層と通気路を有する通気緩衝シートの概略断面図 (b)通気層と通気路を有する通気シートの概略斜視図 (c)緩衝層と通気路を有する通気シートの概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明について説明するが、本発明は、以下の具体的形態に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
【0029】
<ジョイントテープロール>
本発明のジョイントテープロールは、「0.3mm以上の厚さを有する構造体の端部面同士の突き合わせ部分の上部に貼り付けて該構造体同士を接合するためのジョイントテープ」が、離型シートを介さずに巻かれてなるものである。
【0030】
<構造体>
接合(ジョイント)の対象となる構造体としては、特に限定はされないが、例えば、建築用ボード、防水シート、通気(緩衝)シート、金属板(折半屋根)、窯業系サイディング、内装パネル、断熱板等の「0.3mm以上の厚さを有し、隣接するもの同士を接合・固定する必要があるもの」が挙げられる。
中でも、ジョイントテープ貼り付け後に、その上から塗料等の液体を塗布する必要のある構造体が好適なものとして挙げられる。更には、隣接するもの同士を突き合せたときに生じる隙間に、塗料等の液体が流入(侵入)して該隙間を埋めてしまってはいけないような構造体が、特に適したものとして挙げられる。
【0031】
構造体の厚さは、対象となる構造体によって異なるが、0.3mm以上であり、0.5mm以上20mm以下が好ましく、0.7mm以上10mm以下が特に好ましい。
構造体の厚さが上記範囲であれば、構造体同士の突き合わせ部分の「接合面の面積や隙間の体積」を勘案して、本発明の前記効果を奏し易い。
【0032】
中でも特に、シートの横方向に気体の流通性が要求され、従ってその接合部分にも気体の流通性が要求される、防水シート、通気シート41等が好ましい構造体として挙げられる。該構造体が、塗膜防水工法に用いられる横方向に通気性を有する通気シート41であることが、本発明の前記効果を発揮し易いために特に好ましい。
ここで、上記「防水シート」とは、屋上等の下地31の防水施工に用いられるもので、通気性と共に防水性を有し、防水第1層としての機能を有するものを言う。所謂「防水シート」でも、通気性を有していれば「通気シート」と定義する。
【0033】
また、「通気シート14」には、通気緩衝シート41が含まれ、塗膜防水工法に用いられて、少なくともシートの横方向の通気性を有するもの全体を言う。
通気緩衝シート41は、塗膜防水工法等で用いられ、外力や下地コンクリート等の乾燥や収縮により発生したクラックが、外気温の変化によって生じる応力等を緩衝する機能を有すると共に、下地コンクリート等から発生する水蒸気等の気体を横方向に通気させる機能を有し、塗膜防水層51に局部的なフクレが発生することを防止するものである。
【0034】
図6に、通気シート41の種々の形態と、該通気シート41を敷いてその上に塗膜防水層51を形成したときの概略断面図を示すが、該通気シート41は、図6に示した形態に限定されるものではない。
図6(a)は不織布等を材質とする通気層44と通気路47を有する通気シート41の概略断面図であり、図6(b)は通気層44と通気路47を有する通気シート41の概略斜視図であり、図6(c)は緩衝層46と通気路47を有する通気シート41の概略断面図である。本発明のジョイントテープ11は、何れの形態の通気シート41にも好適に使用可能である。補強層43は必須ではない。
また、防水シートは、特に限定はされないが、例えば、図6の通気シート41の通気シート基材42に防水性を持たせたもの、特許文献1に防水シートとして記載されたもの等が挙げられる。
【0035】
<ジョイントテープ>
<<ジョイントテープの使用方法>>
図5に、本発明のジョイントテープ11の使用態様を、塗膜防水工法に使用したときを例にして示す。図5(a)は、ジョイントテープ11を層構成に分けずに全体を一体で示した超概略断面図であり、図5(b)は、ジョイントテープ11の層構成をも示した概略断面図である。なお、図5(a)(b)では、分かり易いように、縦方向(厚さ方向)の拡大倍率が、横方向の倍率より大きく描かれている。また、図5では、突き合わせ部分48を隙間で示しているが、隣接する通気シート41同士はぴったり突き合わされることもある(ぴったり突き合わされている部分もある)。
図5に示したように、該ジョイントテープ11は、構造体の端部面同士の突き合わせ部分48の上部に貼り付けて該構造体同士を接合するために使用される。
【0036】
図5(b)に示したように、ジョイントテープ11の幅方向の略中央に設けられたフィルム15の下の粘着層B(16)が、2枚の構造体の突き合わせ部分48の上に貼られ、該2枚の構造体同士を接合(ジョイント)している。また、網目状シート12の下に形成された粘着層A(14)が、該フィルム15の両脇において、2枚の構造体に該ジョイントテープ11を仮止めしている。
その後、塗膜形成材(図5では、塗膜防水層51を形成するための防水塗料)を塗布すると、液体の塗膜形成材は、網目状シート12の網目を通過して構造体にまで達し、得られた塗膜防水層51は、より強く該ジョントテープを構造体に固定して、そのことによって、構造体同士がより強く接合(ジョイント)する。
なお、図5(b)は、網目状シート12が一層で描かれているが、実際は、網目に塗膜形成材(防水塗料)が入り込んで、塗膜防水層51は、該網目状シート12を内包して構造体表面にまで達するように形成されている。
【0037】
<<ジョイントテープの構成>>
本発明のジョイントテープ11は、少なくとも上から順に、
下記網目状シート12を構成する糸の上面に該網目を塞がないように形成されている離型層13
幅2cm以上20cm以下の網目状シート12、
該網目状シート12の下面全体であって、該網目状シート12を構成する糸の下面に該網目を塞がないように形成されている粘着層A(14)、
幅が該網目状シート12の1/10以上1/2以下であって、該網目シートの幅方向の略中央に該網目状シート12の中心線を跨ぐように積層されたフィルム15、及び、
該フィルム15の下面にのみ形成された粘着層B(16)
を有することを特徴とする(図1図3図5(b))。
なお、上記した「上(下)」は施工時や施工後に上(下)になる方の意味で、ジョイントテープ製造時や取り扱い時の上(下)の意味ではない(図1図5(b))。
【0038】
網目状シート12を構成する糸の上面にだけ形成された離型層13によって、ロール状に巻いて経時保管させたとしても(図4)、その巻回接触面にあたる「粘着性が高い粘着層B」ですら該網目状シート12にくっついてしまうことがなく、作業現場で作業者が容易にジョイントテープロールの巻きを解いて使用することができる。
【0039】
図1に、本発明のジョイントテープ11の概略平面図(図1の上)と、ジョイントテープ11を幅方向に横断するように切ったときの(長手方向に見たときの)概略断面図(図1の下)を示す。図1の平面(横)方向(概略平面図)はほぼ実物大を示し、図1の概略断面図の厚さ方向は、分かり易いようにそれより拡大して描いてある。
また、図3(a)に、本発明のジョイントテープ11を斜め上から見た写真を、図3(b)に、斜め下から見た写真を示す。
【0040】
本発明のジョイントテープ11の幅、すなわち網目状シート12の横幅は、2cm以上20cm以下であり、好ましくは4cm以上17cm以下であり、特に好ましくは7cm以上14cm以下である。
該幅が短過ぎると、そこから通過する塗膜形成材の量が減り、構造体同士を強固に固定できない場合があり、隣接する構造体同士のずれが、ジョイントテープ11の剥がれ、ひいては塗膜(塗膜防水層51やトップコート層52)にクラックを生じさせる場合があり、塗膜形成材が突き合わせ部分48に流れ込む場合があり、ジョイントテープ11の機能が低下する場合等がある。
一方、ジョイントテープ11の幅は、広過ぎると、無駄になったり、取り扱い難くなったりする場合がある。
【0041】
<<<網目状シート>>>
網目状シート12は、織物又は編物が好ましく、平織又はからみ織の織物であることが、柔軟性があって伸び縮みするために、隣接する構造体同士の相互のずれにも好適に対応できる;製造コスト的に有利である;薄葉化(扁平に)することによって、塗膜形成材の塗布前に構造体の上に仮止めさせ易い;塗膜に対する補強布としての機能を発揮して該塗膜の強度を向上させる;等の点から好ましい。
【0042】
網目状シート12が織物の場合、それは縦糸12b及び横糸12aで形成されており、縦糸12b及び/又は横糸12aの密度は、4本/インチ以上40本/インチ以下であることが好ましく、5本/インチ以上20本/インチ以下であることがより好ましく、6本/インチ以上10本/インチ以下である特に好ましい。
ただし、上記「縦糸」、「横糸」とも、2本以上の単位糸が引き揃えられて構成されているものでもよい。その場合、上記「1本の縦糸又は横糸」とは、2本以上の単位糸が隙間なく引き揃えられた1本の縦糸列又は横糸列のことを言う。
【0043】
縦糸列(すなわち縦糸)、横糸列(すなわち横糸)とも、1本又は「2本以上5本以下」の単位糸が引き揃えられていることが好ましく、2本以上4本以下が特に好ましい。上記本数に引き揃えられていると、前記した薄葉化(扁平に)する効果がより得られ易い。
【0044】
また、網目状シート12の開口率(開口部の面積/網目状シートの面積)は、塗膜形成材(塗料)の粘度に応じて調整することでもよいが、20%以上90%以下であることが好ましく、25%以上70%以下であることがより好ましく、35%以上55%以下であることが更に好ましく、40%以上50%以下であることが特に好ましい。
密度も開口率も、上記範囲であれば、塗膜形成材の通過性、ジョイントテープ自体の強度、構造体への固定強度、柔軟性(伸び縮み性)、後述するヘナヘナ性、その他前記した特性を発揮し易い。
【0045】
網目状シート12(を構成する糸)の材質は、本発明の前記効果を発揮するものであれば、特に限定はないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル;(メタ)アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル(の部分ケン化物)、ビニロン、それらの共重合体等のビニル樹脂;ナイロン、アラミド等のポリアミド;ポリウレタン;レーヨン等の(再生)セルロース;ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール(ザイロン(登録商標)等);等が挙げられる。
また、コットン(綿)、麻、ウール(毛)、絹等の天然繊維;上記したような合成繊維;上記したような再生繊維;ガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維;金属繊維(スチール繊維);等の繊維等が挙げられる。
【0046】
限定はされないが、このうち、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ビニロン、レーヨン、(メタ)アクリル樹脂、ナイロン、アラミド、ポリアリレート、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール、ガラス繊維等が特に好ましい。
縦糸12bや横糸12aは、短繊維から成る紡績糸(スパンヤーン)であってもよいし、長繊維から成るフィラメント糸(フィラメントヤーン)であってもよく、この場合、モノフィラメント糸、マルチフィラメント糸の何れでもよい。
【0047】
単位糸の太さは、本発明の効果を奏するならば特に限定はないが、フィラメント糸の場合、50デニール以上が好ましく、150デニール以上が特に好ましい。また、700デニール以下が好ましく、500デニール以下が特に好ましい。また、紡績糸の場合、綿番手で7番手以上が好ましく、10番手以上が特に好ましい。また、100番手以下が好ましく、50番手以下が特に好ましい。
【0048】
本発明における網目状シート12は、限定はされないが、加圧によって薄葉化されてなるような形態をしていることが、ヘナヘナにして取り扱い易くし、糸の繊維束を偏平状にして接着面積を大きくして接着性をよくするために好ましい。
更に、薄葉化する利点として、網目状シートを構成する糸の重なり部(縦糸と横糸の交点12c)と非重なり部の厚み差が小さくなることにより、塗膜形成材(塗料)を塗布して得られる塗膜表面から網目状シート12の網目が消え易い。また、引き揃えた糸を偏平状にすることにより、微細な隙間が埋まる効果も有り、塗膜形成材(塗料)を塗布したときに発生する気泡が絡み難く、その結果、気泡の滞留が発生し難く、ピンホールの低減となる。
【0049】
上記薄葉化の方法は、特に限定はないが、網目状シート12を回転するカレンダーロールの間を通過させて加熱及び加圧するカレンダー加工が好ましい。カレンダー加工を施すことによって、網目状シート12に圧力がかかり厚さが低減されてヘナヘナになる。
カレンダー加工に使用されるカレンダー機については、特に限定はなく、一対のカレンダーロールのみを使用してその間に通過させてもよいし、多連式若しくは多段式のカレンダーロールを使用してもよい。カレンダーロールの材質は、特に限定はないが、幅方向のプレス圧力を均一にし易い、入手や取扱いが容易である等の点から金属製が好ましい。
【0050】
ジョイントテープ11の網目状シート部分の厚さは、0.05mm以上1mm以下が好ましく、0.07mm以上0.8mm以下がより好ましく、0.1mm以上0.6mm以下が更に好ましく、0.13mm以上0.5mm以下が特に好ましい。
厚過ぎると、柔軟性がなくなったり、ジョイントテープ11の縁に段差ができてしまい、塗膜性能(防水性等)に悪影響を与えたり、美観を損ねたりする場合等がある。一方、薄過ぎると、ジョイントテープ11の強度が確保できない場合等がある。
【0051】
更に、後述するように、本発明における網目状シート12の上面には該網目を塞がないように離型層13が形成されているが、本発明における該網目状シート12は、意外にも、目止めされていない織物に対して、離型層13の形成と目止めとを同時に行って得ることも可能であった。
従って、上記を同時に行って得られたようなものであることが、工程の簡略化等のために特に好ましい。本発明のジョイントテープ(ロール)としては、上記網目状シート12を構成する糸の交点12cが目止め剤で目止めされており、該目止め剤の成分と上記離型層13の成分とが同一であることが特に好ましい。
【0052】
本発明は、ジョイントテープが離型シートを介さずに巻かれてなるジョイントテープロールであって、離型剤を含有する目止め剤を用いて目止めをし、次いで、網目状シートの一方の面に粘着層Aを形成し、後述するような、フィルム及び粘着層Bを有することを特徴とするジョイントテープロールでもある。
【0053】
目止めに使用される目止め剤としては、例えば、(メタ)アクリル系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、エチレン酢酸ビニル系接着剤、(メタ)アクリルエチレン酢酸ビニル系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤等が好ましいものとして例示できる。
本発明における離型層13には、後述するように、有機重合体変性シリコーンを含有させることが特に好ましいが、その場合、該有機重合体変性シリコーンのシリコーン部分が離型効果を発揮し、該有機重合体変性シリコーンの有機重合体部分や上記した接着剤成分が目止め効果を発揮しているものと考えられる。
【0054】
<<<離型層>>>
本発明のジョイントテープ11における網目状シート12を構成する糸の上面には、図1図2図5(b)に示したように、該網目を塞がないように離型層13が形成されている。
なお、「離型層」とは言っても、網目状シートの面積全体に層が形成されてはおらず、糸の上のみに形成されている。図2(a)は、網目状シート12を構成する横糸12aがない箇所での断面図(図1のX-X矢視断面図)であり、図2(b)は、横糸12aがある箇所での断面図(横糸12aの縦断面図、図1のY-Y矢視断面図)である。
【0055】
離型層の付着量は、5g/m以上80g/m以下が好ましく、10g/m以上65g/m以下がより好ましく、15g/m以上50g/m以下が特に好ましい。
なお、上記単位面積(m)は、糸の上だけの面積ではなく、網目状シート全体の面積である。
【0056】
上記下限以上であると、「ロールとしたときの巻回接触面への非くっつき性」が良好となり、一方、上記上限以下であると、塗膜形成材(塗料)の塗布適性や、塗膜形成材(塗料)による埋め込み効果(アンカー効果)や、塗膜のジョイントテープ11や構造体への密着性等が良好となる。また、目止めと離型層13の形成を同時に行うときは、上記範囲であると、目止めとしても好適範囲となる。
該離型層13の存在によって離型シートが不要となる。該離型層13の成分は、特に限定はなく、(該離型層13の巻回接触面にあたる)粘着層B(16)ですら該網目状シート12にくっついてしまうことがない。
【0057】
ここで、回巻してジョイントテープロールとしたときに、巻回接触面に「くっつかない」又は「非くっつき性が良好」とは、図4に示したようなジョイントテープロールを、12月間、室温(25℃)に保管した(経時させた)ときに、作業に支障がない程度に巻きが容易に解けることを言う。
なお、「非くっつき性」に関して、実施例で定義された粘着力(粘着層Bの粘着力と同様の測定方法による粘着力[cN/25mm])で表すと、実施例に示したような相関がある。該粘着力[cN/25mm]の数値を用いると、12月間保管(経時)させなくても「非くっつき性」の判定が可能である。
【0058】
網目でありそもそも接触面積が小さいことと、網目の上の離型層13の存在との相乗効果によって、ロール状に回巻して経時したときでも、巻回接触面となる「粘着層A(14)には勿論のこと粘着力が高い粘着層B(16)」にもくっついてしまうことがない。なお、粘着層B(16)の巻回接触面は、離型層13を有する網目となる。なお、粘着層B(16)については後述する。
また、塗膜形成材(塗料)の濡れ性、塗布性、密着性等を悪化させない程度に(弱い)離型性を有する離型層13でも、粘着層B(16)を含む巻回接触面にくっついてしまうことがない。
網目状シート12を有するジョイントテープロールは、意外にも、離型シートがなくても離型層13があれば、「塗膜形成材(塗料)の塗布適性や構造体への密着性」と「巻回接触面非くっつき性」との両立が実現された。
【0059】
粘着層B(16)は、その粘着力(JIS Z 0237:180℃ピール法による粘着力)が3N/25mm以上であれば、隣接する構造体同士を接合させることができる場合があるため、粘着層B(16)の粘着力は3N/25mm以上である。粘着層B(16)の粘着力は、4N/25mm以上が好ましく、6N/25mm以上がより好ましく、8N/25mm以上が更に好ましく、10N/25mm以上が特に好ましい。
また、粘着層B(16)の粘着力は、大きければ大きい程、構造体同士の接合性の点では良好であるため、上限については特に限定はないが、粘着層Bの実現性の点から、30N/25mm以下が好ましく、25N/25mm以下がより好ましく、20N/25mm以下が更に好ましく、15N/25mm以下が特に好ましい。
ここで、「粘着力」は、JIS Z 0237(2009年12月21日改訂)で定義される。測定条件は、実施例に記載したものとする。
【0060】
粘着層B(16)の粘着力が上記下限より小さいと、突き合わせ部分48の上部に強く貼り付けられず、構造体同士を好適に接合させられない場合がある。
一方、粘着層B(16)の粘着力が上記上限より大きいと、そのように大きな粘着力を有する粘着層が入手困難だったり、ジョイントテープの貼り直しができ難かったり、大き過ぎる粘着力が無駄であったりする場合がある。また、粘着層Bの巻回接触面が離型層13を有する網目であっても、くっついてしまう場合がある。
【0061】
本発明は、離型層13を形成させると、特に好ましくは特定組成の離型層13を形成させると、粘着層B(16)の粘着力を十分大きく設定することで構造体同士の接合性の点からは全く問題のないようにしても、回巻したときの非くっつき性が良好であることを見出してなされたものである。
【0062】
上記離型層は、シリコーン系樹脂又はフッ素系樹脂を含有することが離型性を高めるために好ましい。すなわち、該離型層13としては、フッ素系離型剤、シリコーン系離型剤等の離型剤を含有する離型層13が挙げられる。「シリコーン系樹脂」とは、離型効果を有する程に分子内にシロキサン構造(-Si-O-)を有する樹脂であり、「フッ素系樹脂」とは、離型効果を有する程に分子内にフッ素原子を有する樹脂である。
【0063】
特に、該離型剤を粒子状等として層内に不均質に含有する離型層13が特に好ましいものとして挙げられる。なお、本発明で「粒子」とは、固体粒子に限定されず、高粘度液体粒子等の液体粒子又はエマルジョン粒子も含まれる。
【0064】
中でも、離型剤粒子を水系エマルジョン(分散媒体が水系)の形で塗布・乾燥してなる離型層13が好ましいものとして挙げられる。
更にその中でも、離型剤粒子を水系エマルジョン(分散媒体が水系)の形で、離型層13の(バインダー或いは接着剤としての機能を有する)ポリマーに混合して、塗布・乾燥してなる離型層13が挙げられる。この場合、離型剤粒子が水系エマルジョンであるので、該ポリマーも水系エマルジョンの形であることが特に好ましい。
ここで、該離型剤粒子としては、具体的には、例えば、シリコーン粒子、フッ素含有ポリマー粒子、下記する有機重合体変性シリコーン粒子等が挙げられる。
【0065】
好適な離型効果を得るために、更には、「塗膜形成材(塗料)の塗布適性や構造体への密着性」と「巻回接触面非くっつき性」とを好適に両立させるために、上記離型層13中に有機重合体変性シリコーンを含有させることが特に好ましい。すなわち、上記シリコーン系樹脂が有機重合体変性シリコーンであることが特に好ましい。ここで、上記「含有」には、有機重合体変性シリコーンの単独含有も含まれるし、有機重合体変性シリコーンと「離型層を構成するポリマー(バインダー)」との併用含有も含まれる。
シリコーン部分に結合して変性をする上記「有機重合体」の重合度には限定がなく、すなわち繰り返し単位を有していればよく、高分子量ないし低分子量ポリマー、オリゴマー、数量体(2~5量体)等が含まれる。
【0066】
有機重合体変性がされていないシリコーンを用いると、すなわち、有機重合体変性シリコーン粒子(エマルジョン)に代えて、シリコーン粒子(エマルジョン)を用いると、ジョイントテープロールとしたときに、離型層中のシリコーン粒子が脱離して、巻回接触面に転写(裏移り)する場合等がある。
【0067】
離型層13としては、該有機重合体変性シリコーンを粒子として含有するものが好ましく、更には、「有機重合体変性シリコーンの水系エマルジョン」と「バインダー或いは接着剤としての機能を有するポリマーの水系エマルジョン」とを混合して形成されたような離型層13が特に好ましい。
従って、本発明は、有機重合体変性シリコーンの水系エマルジョンと、上記「離型層を構成するポリマー」の水系エマルジョンとを混合して離型層形成液を調製し、上記網目状シート12の上面に該網目を塞がないように該離型層形成液を塗布してなる離型層13を有するジョイントテープ11又はジョイントテープロールでもある。
【0068】
上記有機重合体変性シリコーンとしては、側鎖及び/又は末端に有機重合体基を導入したものが挙げられるが、少なくとも側鎖に有機重合体基を導入したもの(以下、「特殊変性シリコーン」と略記する場合がある)が好ましいものとして挙げられる。
該有機重合体基としては、ポリ(メタ)アクリル基、ポリウレタン基、ポリエステル基、ポリカーボネート基、ポリ酢酸ビニル基、ポリエーテル基、ポリフロロアルキル基等の非反応性基;「アミノ基、エポキシ基、アルコール性水酸基、メルカプト基、カルボキシ基等の反応性基」を含む有機重合体基;等が挙げられる。
具体的には、例えば、(メタ)アクリル変性シリコーン、ウレタン変性シリコーン、特殊変性シリコーン等の有機重合体変性シリコーンが特に好ましいものとして挙げられる。
【0069】
該有機重合体変性シリコーン(水系エマルジョン)としては、市販品も好適に使用できる。該市販品としては、シャリーヌR、シャリーヌE(登録商標)(日信化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0070】
一方、上記「離型層を構成するポリマー」、すなわち離型層中に含有させる「バインダー或いは接着剤としての機能を有するポリマー」としては、(メタ)アクリル系ポリマー、酢酸ビニル系ポリマー、エチレン酢酸ビニル系ポリマー、(メタ)アクリルエチレン酢酸ビニル系ポリマー、ポリビニルアルコール系ポリマー等が挙げられる。また、これらの共重合ポリマー、部分ケン化ポリマー、これら2種以上の混合物等も挙げられる。
【0071】
また、上記「離型層を構成するポリマー」としては、「アクリル系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、エチレン酢酸ビニル系接着剤、(メタ)アクリルエチレン酢酸ビニル系接着剤、ポリビニルアルコール接着剤等の目止め剤」に含有されているポリマーが挙げられる。前述した通り、離型層13の形成と目止めとを同時に行うときは、「離型層を構成するポリマー」として、目止め剤に含有されるポリマーが使用されることになる。
上記網目状シート12を構成する糸の交点12cが目止め剤で目止めされており、該目止め剤の成分と上記離型層13の成分とが同一であることが特に好ましい。
【0072】
有機重合体変性シリコーンの水系エマルジョンと、上記離型層を構成するポリマーの水系エマルジョンとを混合して離型層形成液を調製するときは、「上記離型層を構成するポリマーの水系エマルジョン」として、目止め剤として使用される水系エマルジョンを使用することが好ましい。該離型層形成液は、一般に「ディスパージョン」とも言われているものである。
この場合、両者のエマルジョンのイオン性は、同一である必要があり、限定はされないが、両者ともアニオン系エマルジョンであることが好ましい。
【0073】
離型層13中の、「離型層を構成するポリマー」と「有機重合体変性シリコーン等の離型剤粒子」との含有比は、巻回接触面非くっつき性と、塗膜形成材(塗料)の塗布性・塗膜密着性との両立が図れ、また、網目状シートの(単位)糸解れ(ほつれ)や離脱が問題にならなければ特に限定はないが、離型層13全体に対する離型剤(粒子)の量として、2質量%以上40質量%以下が好ましく、4質量%以上25質量%以下が好ましく、7質量%以上15質量%以下が特に好ましい。
上記両者を何れも(水系)エマルジョンの形で使用する場合は、該エマルジョン中の粒子濃度を勘案して、2種の(水系)エマルジョンを上記固形分範囲になるように混合して用いられる。もし粒子濃度が両者何れも50質量%であったときは、例えば、「特に好ましい混合比」は、[離型剤水系エマルジョン]:[離型層を構成するポリマー]=7:93~15:85(エマルジョン質量比)となる。
【0074】
また、離型層13に含有される有機重合体変性シリコーンの量は、付着量として、2g/m以上が好ましく、4g/m以上がより好ましく、6g/m以上が特に好ましい。
また、目止め樹脂に対する含有率は4質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、10質量%以上が特に好ましい。なお、上記単位面積(m)は、糸の上だけの面積ではなく、網目状シート全体の面積である。
【0075】
離型効果だけをみれば、有機重合体変性シリコーンの含有比や付着量は、高ければ高いほど効果を発揮するが、その一方、離型層13の形成と目止めとを同時に行うときは、網目状シートの交点12cを接着させる効果が薄れ、スリット加工時に端部の糸解れ(ほつれ)が生じる場合がある。
【0076】
離型層13の形成は、限定はされないが、具体的には、例えば、生地の仕上げ加工に使用されるテンター加工機を用い、該網目状シートに離型層形成液を含浸(ディッピング)させ、ゴムロールによる絞り(ニップ)を行い、乾熱乾燥により不要な水分を蒸発させることにより有効成分のみを固着させる。
【0077】
<<<粘着層A>>>
本発明のジョイントテープ11は、網目状シート12の下面全体であって、該網目状シート12を構成する糸の下面に該網目を塞がないように粘着層A(14)が形成されている(図1図2図5(b))。
粘着層A(14)は、網目シートの部分を構造体に仮止めするのに必要であり、網目シートが塗膜内に内包されることで塗膜の構造体への密着性アップを助長する。
【0078】
粘着層Aの付着量は、10g/m以上30g/m以下が好ましく、15g/m以上25g/m以下がより好ましく、17g/m以上23g/m以下が特に好ましい。なお、上記単位面積(m)は、糸の上だけの面積ではなく、網目状シート全体の面積である。
上記下限以上であると、塗膜形成材(塗料)を塗布する前の仮止めの効果が得られ、ジョイントテープ11が風等で剥がれたり波打ったりしない。一方、上記上限以下であると、網目を塞いでしまうことがなく、貼着性が上がり過ぎて無駄になることがない。
【0079】
粘着層A(14)の材質としては、(メタ)アクリル酸エステル系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、ビニルブチラール系、ポリイソブチレン系、スチレンブタジエン系、イソプレン系、クロロプレン系、塩化ゴム系、(メタ)アクリル酢酸ビニル系、又は、これらの共重合系等が挙げられる。水系エマルジョンとして優れている点等から、上記粘着剤の材質として、(メタ)アクリル酸エステル系、(メタ)アクリル酢酸ビニル系等が特に好ましい。
【0080】
粘着層A(14)の形成方法については特に限定はなく、粘着層A(14)の材料(粘着剤)を有機溶媒に溶解させ、粘着剤溶液の形で付与(塗布)してもよいし、粘着剤がエマルジョン等の形で分散された分散液の形で付与(塗布)してもよい。中でも、水系のエマルジョンとして塗布することがより好ましい。
【0081】
<<<フィルム>>>
本発明のジョイントテープ(ロール)においては、幅が前記網目状シートの1/10以上1/2以下であって、該網目シートの幅方向の略中央に該網目状シート12の中心線を跨ぐように積層されたフィルム15が存在する(図1図3図4図5(b))。
該フィルム15は、塗膜形成材(塗料)が、構造体同士の突き合わせ部分48の隙間に入り込んで気体の流通を遮断してしまわないために設けられる。通常、ジョイントテープ11の幅方向の略中央部が突き合わせ部分48のほぼ真上に来るように貼り付けるので、上記効果が得られるために、該フィルム15は該網目状シート12の幅方向の中心線を跨ぐように設けられる。
【0082】
該フィルム15の幅は、網目状シートの1/10以上1/2以下であるが、1/6以上1/2.2以下が好ましく、1/4以上1/2.4以下がより好ましく、1/3.7以上1/2.6以下が特に好ましい。
該フィルム15の幅としては、1cm以上5cm以下が好ましく、1.8cm以上4.4cm以下が好ましく、2.5cm以上3.8cm以下が特に好ましい。
【0083】
該フィルム15の幅が小さ過ぎると、中心線がずれて貼り付けられたときに、塗膜形成材(塗料)が該フィルム15の(網目になっている)脇から突き合わせ部分48に流れ込む場合、粘着層B(16)の面積が小さくなるために、構造体同士を接合し難くなる場合等がある。
一方、該フィルム15の幅が大き過ぎると、その分、網目部分の幅が小さくなるので、構造体表面に達する塗膜形成材(塗料)の量(面積)が少なくなり、ジョイントテープ11の塗膜形成材(塗料)による密着性向上(一体化)効果が得られ難い場合がある。
【0084】
該フィルム15は、塗膜形成材(塗料)が構造体の突き合わせ部分48から下地31へ浸入し、通気路47を塞がないようにするためのもの、すなわち、液体の浸入を防止するものであれば、その厚さや材質は特に限定はないが、塗膜形成材(塗料)やその中に含まれている溶剤に侵されないものが好ましい。このようなものとして、熱可塑性合成樹脂系フィルムや合成ゴム系フィルムが使用されるが、中でも加工性から合成樹脂系フィルムが好ましい。
【0085】
フィルム15の厚さは、特に限定はないが、10μm以上500μm以下が好ましく、20μm以上300μm以下がより好ましく、30μm以上120μm以下が更に好ましく、30μm以上80μm以下が特に好ましい。
薄過ぎると、物理的強度が落ちたり、粘着層B(16)の塗工が難しくなったり、塗膜形成材(塗料)に侵される場合等がある。一方、厚過ぎると、塗膜の上に段差ができて美観を損ねる場合等がある。
【0086】
該フィルム15の粘着層B(16)の形成されていない側は、ジョイントテープ11を貼り付けた後には、網目状シート12の網目を介してはいるが最表面となり、塗膜形成材(塗料)が接する(塗られる)ことになるので、塗膜形成材(塗料)の密着性が良くなる処理が施されていてもよい。該処理としては、密着性を向上させる層の塗工若しくは印刷、(薄い)不織布の積層、コロナ放電処理等が挙げられる。
【0087】
<<<粘着層B>>>
上記フィルム15の下面にのみ粘着層B(16)が形成されている(存在する)(図1図5(b))。該粘着層B(16)は網目状シート12の上には存在せず、該粘着層B(16)は、接着性を上げるために、上記フィルム15の下面全体に形成されていることが好ましい。
粘着層B(16)は、構造体の表面に接着させ、構造体同士を接合するためにある。
【0088】
粘着層B(16)の材質としては、(メタ)アクリル酸エステル系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、ビニルブチラール系、ポリイソブチレン系、スチレンブタジエン系、イソプレン系、クロロプレン系、塩化ゴム系等、又は、これらの共重合系等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル酸エステル系が特に好ましい。
【0089】
該粘着層Bの材料(粘着剤)は、有機溶媒に溶解された粘着剤溶液の形で付与してもよいし、粘着剤がエマルジョン等の形で分散された分散液の形で塗布してもよい。塗布方法も特に限定はなく、公知の塗布装置(コーター)や公知の方法が用いられる。
【0090】
粘着層B(16)の付着量は、特に限定はないが、10g/m以上100g/m以下が好ましく、15g/m以上60g/m以下がより好ましく、20g/m以上40g/m以下が特に好ましい。
上記下限以上であると、粘着層B(16)のあるフィルム15が、ひいてはジョイントテープ11が、構造体表面に接着し易い。上記上限以下であると、粘着層B(16)が無駄にならず、段差も生じ難い。
【0091】
<ジョイントテープロール>
本発明は、上記したジョイントテープ11が回巻されてなるジョイントテープロールであり、また本発明は、上記したジョイントテープロールに巻かれているもの(ロール状に巻かれる前のもの)であって、離型シートを有していないことを特徴とするジョイントテープである。
本発明のジョイントテープロールの概略斜視図を図4に示す。ジョイントテープロールは、前記「上」(施工したときの上)が外側になるように回巻されていても、内側になるように回巻されていてもよいが、「上」(粘着剤Bがない方)が内側になるように回巻されていることが好ましい。
【0092】
<ジョイントテープ(ロール)の製造方法>
本発明は、上記のジョイントテープロールを製造する方法であって、
網目状シート12の上面に該網目を塞がないように離型層13を形成する工程
網目状シート12の下面に該網目を塞がないように粘着層A(14)を形成する工程
下面に粘着層B(16)が設けられたフィルム15の上面を、上記網目状シート12の中心線を跨ぐように、上記網目状シート12の下面に積層する工程
上記工程で得られたジョイントテープ11を、離型シートを介さずに巻く工程
を少なくとも有することを特徴とするジョイントテープロールの製造方法でもある。
【0093】
離型層13の形成方法、粘着層A(14)の形成方法、粘着層B(16)をフィルム15の上面に形成する方法については、前記した方法や公知の方法で行うことができる。
【0094】
特に離型層13に関しては、塗布することによって上記離型層を形成するための離型層形成液が、有機重合体変性シリコーンの水系エマルジョンを含有することが好ましい。ここで、「含有」には、有機重合体変性シリコーンの単独含有も含まれるし、有機重合体変性シリコーンと「離型層を構成するポリマー(バインダー)」との併用含有も含まれる。
【0095】
特に離型層13の形成方法としては、限定はされないが、前記した通り、有機重合体変性シリコーンの水系エマルジョンと、上記離型層を構成するポリマーの水系エマルジョンとを混合して離型層形成液(ディスパージョン)を調製し、上記網目状シート12の上面に該網目を塞がないように該離型層形成液を塗布して離型層13を形成することが特に好ましい。上記離型層13の形成と、上記網目状シート12の目止めとを同一液を用いて同時に行うことが特に好ましい。
【0096】
従って、本発明は、上記のジョイントテープロールを製造する方法であって、
離型剤を含有する目止め剤を用いて目止めをする工程
網目状シート12の下面に該網目を塞がないように粘着層A(14)を形成する工程
下面に粘着層B(16)が設けられたフィルム15の上面を、上記網目状シート12の中心線を跨ぐように、上記網目状シート12の下面に積層する工程
上記工程で得られたジョイントテープ11を、離型シートを介さずに巻く工程
を少なくとも有することを特徴とするジョイントテープロールの製造方法でもある。
離型剤としては、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、有機重合体変性シリコーン、無変性シリコーン等、前記したものが挙げられる。また、粒子状のものも挙げられる。
【0097】
離型層13や粘着層A(14)を、網目状シート12の網目(開口部)を塞がないように形成するには、十分粘度の低い溶液若しくは分散液を直接塗布することが好ましい。
かかる直接塗布の方法としては、特に限定はないが、ロールコーター、カーテンコーター、刷毛塗り、スプレーコーター、浸漬等を用いた塗布方法が好ましい。溶液若しくは分散液を適当な粘度に調整することによって、網目(開口部)を塞がないようにしつつ、網目状シート12の片面に離型層13又は粘着層A(14)を形成することが可能である。
【0098】
粘着層B(16)の形成方法については、粘着層B(16)が塗工等で形成されたフィルム15を網目状シート12の上面に粘着層Aの粘着性を利用して積層する方法、「上面に粘着層Bが、下面に接着層(図示せず)が設けられている両面テープ」を予め製造しておいて、それを網目状シート12の上面に積層する方法、等が挙げられる。
すなわち、かかる積層は、網目状シート12の上面にある粘着層A自体が有する接着性によって行ってもよし、フィルム15の粘着層B(16)の対面に別途設けた接着層(図示せず)によって行ってもよい。
【0099】
上記工程で得られたジョイントテープ11を、離型シートを介さずに巻く方法(回巻方法)としては、公知の方法が用いられ得るが、スリッター機を用い、軸巻で例えば内径1~3インチの紙管等に巻き取る方法等が好ましい。
【0100】
<塗膜防水工法>
本発明は、防水をする下地31上に、上記構造体である横方向に通気性を有する通気シート41同士を互いに突き合せて設置し、該通気シート41同士の突き合せ部分に、前記したジョイントテープロールの巻きを解きつつ、上記ジョイントテープ11の幅方向の略中心が該突き合せ部分に対応するように、該通気シート41の上から該ジョイントテープ11を接着し、次いで、塗膜防水材を塗布することを特徴とする塗膜防水工法でもある(図4図5図6)。すなわち、前記「塗膜形成材(塗料)」が、塗膜防水材(防水塗料)である塗膜防水工法が好ましい。
【0101】
押えコンクリート等の下地31の上に、複数枚の通気(緩衝)シート41を敷設する(図6)。日本では、脱気筒は、「建築工事標準仕様書 JASS 8 防水工事」によって、100mに1~2個設置することが義務付けられているが、本発明の塗膜防水工法では、隣接する通気(緩衝)シート41の間の気体の流通が確保されるので、塗膜防水層51やトップコート層52に浮き上がり(膨れ)が発生しない。
【0102】
通気(緩衝)シート41の端部面同士の突き合わせ部分48の上に、粘着剤Bが来るように、本発明の前記ジョイントテープ11を貼り付ける。そのとき、離型シートの存在を気にすることなく貼り付けることができる(図5)。
次いで、塗膜形成材である防水塗料を、ジョイントテープ11の上から塗布するが、通気(緩衝)シート41の端部面同士の突き合わせ部分48の隙間には防水塗料が流れ込まず、その両側の網目からは防水塗料が構造体の上面にまで達して、ジョイントテープ11の強固な固着が達成される(図5)。
【0103】
防水塗料の種類には特に限定はなく、公知の材料が使用できるが、ウレタン防水材、ウレア防水材、アクリルゴム防水材、ポリマーセメント防水材等が好ましく使用できる。また、塗布する方法についても特に限定はなく公知の方法が用いられる。
また、防水塗料の溶剤や希釈剤としての溶剤は、公知の任意の溶剤が使用可能である。
防水塗料は、1層塗りでも2層塗り(中塗り層あり)でもそれ以上でもよい。更に、最上層として、トップコート層52を設けることが好ましい。
【実施例
【0104】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
以下「表面層」とは、本願発明の場合は「離型層」を意味し、「表面層」には離型性はあってもなくてもよい。「表面層」とは、本願発明の「離型層」の位置に存在し、「離型層」をも包含するものである。
【0105】
作製例1
<ジョイントテープ1の作製>
縦糸としてポリエステルフィラメント糸(200デニール)、横糸としてポリエステルフィラメント糸(200デニール)を使用して網目状シートを作製した。3本の単位糸を引き揃えて1本の縦糸とし、1インチ当たり8本の縦糸とし、2本の単位糸を引き揃えて1本の横糸とし、1インチ当たり8本の横糸とした。
縦糸は3mm間隔、横糸は3mm間隔で設置し、最終的な開口率を44%とした。
【0106】
<<表面層(離型層)の形成>>
(メタ)アクリルエチレン酢酸ビニル系ポリマー(表1では「アクリルEVA系」)である「ポリゾール(登録商標)EF265(固形分48~52質量%の水系エマルジョン)、昭和電工(株)製」を離型層形成液とし、網目状シートに付着量(乾燥質量)15g/mとなるように付与して、表面層の形成と目止めとを同時に行った。
【0107】
<<薄葉化>>
回転するカレンダーロールの間を通過させて加熱及び加圧を行い(カレンダー加工を行い)、網目状シート部分の厚さを0.16mmとした。
【0108】
<<粘着層Aの形成>>
(メタ)アクリル酸エステル系(表1では「アクリル系」)の水系エマルジョンである「オリバイン(登録商標)BPW6111A、東洋インキ製造(株)製」を、網目状シートに付着量(乾燥質量)20g/mとなるように付与して粘着層Aを形成させた。
【0109】
<<フィルムと粘着層Bの積層>>
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、(メタ)アクリル酸エステル系の粘着剤(表1では「アクリル系」と記載)の水系エマルジョンを、膜厚(乾燥質量)25g/mとなるように付与して粘着層Bを形成させた。フィルムと粘着層Bとの合計の厚さを50μmとした。
次いで、図1に示したように、上記「粘着層Bを形成させたフィルム」を幅35mmに切断し、スリット工程において幅100mmとした網目状シートの幅方向の中央に積層した。
【0110】
また、別途、フィルムの表面に粘着層Bが既に形成されているものとして、ウレタン防水塗膜等の塗膜形成材との接着性向上のために、「粘着層が形成されている側とは反対側に、エステル系ポリウレタン樹脂を含有するインクをグラビア印刷した粘着テープ『リンテック(株)製FNSケシS50』」を、幅35mmにして網目状シートの幅方向の中央に積層した。
なお、前記「粘着層Bを形成させたフィルム」や、上記「フィルムの表面に粘着層Bが既に形成されている粘着テープ」は、粘着層Bが形成されていない方の面を、それぞれ網目状シートに積層した。該積層は網目状シートに形成された粘着層Aの接着性に依った。
【0111】
上記のようにして、図1に示したような幅100mmのジョイントテープ1を製作し、以下の評価に供した。
また、ジョイントテープ1を、粘着剤Bがない方が内側になるように紙管に巻き取って(回巻して)、ジョイントテープロール1を作製し、以下の評価に供した。
【0112】
作製例4
<ジョイントテープ4の作製>
作製例1の<<表面層(離型層)の形成>>において、(メタ)アクリルエチレン酢酸ビニル系ポリマー(アクリルEVA系)である「ポリゾールEF265」の単独使用に代えて、“同じ(メタ)アクリルエチレン酢酸ビニル系ポリマーである「ポリゾールEF265」と、有機重合体変性シリコーン(表1では「シリコーン系」)である「シャリーヌ(登録商標)E-790(固形分42~45質量%の特殊変性シリコーンの水系エマルジョン)、日信化学工業(株)製」とを、水系エマルジョン状態での質量比で9:1となるように混合してなる水系エマルジョン”を離型層形成液とした以外は、作製例1と同様の網目状シートに付着量(乾燥質量)15g/mとなるように付与して、表面層の形成と目止めとを同時に行った。
【0113】
作製例1の<<粘着層Aの形成>>において、(メタ)アクリル酸エステル系(アクリル系)である「オリバインBPW6111A」に代えて、(メタ)アクリル酢酸ビニル系(表1では「アクリル-酢酸ビニル系」)である「ポリゾールSE6101、昭和電工(株)製」を使用し、作製例1と同様の網目状シートに付着量(乾燥質量)20g/mとなるように付与して粘着層Aを形成させた。
【0114】
その他は、作製例1と同様にして、図1に示したような幅100mmのジョイントテープ4を製作し、以下の評価に供した。
また、ジョイントテープ1を、粘着剤Bがない方が内側になるように紙管に巻き取って(回巻して)、ジョイントテープロール4を作製し、以下の評価に供した。
【0115】
作製例12
<ジョイントテープ12の作製>
作製例4において、糸種を表1に記載したものに代えた以外は、作製例4と同様にして、図1に示したような幅100mmのジョイントテープ12を製作し、以下の評価に供した。
また、ジョイントテープ12を、粘着剤Bがない方が内側になるように紙管に巻き取って(回巻して)、ジョイントテープロール12を作製し、以下の評価に供した。
【0116】
作製例13
<ジョイントテープ13の作製>
作製例4及び作製例12の<<表面層(離型層)の形成>>において、(メタ)アクリルエチレン酢酸ビニル系ポリマー(表1では「アクリルEVA系」)である「ポリゾールEF265」と、有機重合体変性シリコーン(表1では「シリコーン系」)である「シャリーヌE-790(登録商標)、日信化学工業(株)製」とを、質量比で9:1に混合したことに代えて、水系エマルジョン状態での質量比で8:2に混合した以外は、作製例12と同様にして、図1に示したような幅100mmのジョイントテープ13を製作し、以下の評価に供した。
また、ジョイントテープ13を、粘着剤Bがない方が内側になるように紙管に巻き取って(回巻して)、ジョイントテープロール13を作製し、以下の評価に供した。
【0117】
作製例14
<ジョイントテープ14の作製>
作製例4及び作製例12の<<表面層(離型層)の形成>>において、「ポリゾールEF265」と、「シャリーヌE-790」とを、質量比で9:1に混合したことに代えて、水系エマルジョン状態での質量比で7:3に混合した以外は、作製例12と同様にして、図1に示したような幅100mmのジョイントテープ14を製作し、以下の評価に供した。
また、ジョイントテープ14を、粘着剤Bがない方が内側になるように紙管に巻き取って(回巻して)、ジョイントテープロール14を作製し、以下の評価に供した。
【0118】
作製例2、3、5~8、9~11
<ジョイントテープ2、3、5~8、9~11の作製>
上記作製例1、4、12~14に代えて、表1に記載したように変更した以外は、同様にしてジョイントテープ2、3、5~8、9~11を作製して、以下の評価に供した。
また、それぞれのジョイントテープを、同様に巻き取って(回巻して)、それぞれのジョイントテープロールを作製し、以下の評価に供した。
【0119】
評価例1
<構造体への粘着層A及び粘着層Bの接着性>
構造体として、通気緩衝シート(「マットSB」、ダイフレックス(株)製)を用いた。通気緩衝シートは、全体の厚さ約1.2mm、通気路の幅3mm、通気路の高さ(粘着層の厚さ)0.5mm、通気層の厚さ0.3mmであった。
図3に示した形態の本発明のジョイントテープを、上記通気緩衝シートの端部面同士の突き合わせ部分の上部に、図5に示すように貼り付けた。
【0120】
屋上における通常の強風で粘着層Aが、上記構造体から剥がれず、両端(脇)部分が剥離して波打たず、塗膜形成材であるウレタン系防水塗料の塗工に問題ないものを、粘着層Aの接着性「良好」とし、「良好」でないものを「不良」とした。
該粘着層Aの評価は、後述する「ボールタック」と相関があり、「ボールタック」が4以上のとき(好ましくは5以上のとき)、粘着層Aの接着性は「良好」である。
【0121】
構造体同士の接合が良好で、2枚の構造体が十分に固定されて、ジョイントテープとして問題のないものを、粘着層Bの接着性「可」とし、「良好」でないものを「不可」とした。
該粘着層Bの評価は、後述する「粘着力」と相関があり、後述する「粘着剤Bの粘着力[N/25mm]」が、3N/25mm以上の場合、ジョイントテープとして使用可能であった(粘着層Bの接着性「可」であった)。6N/25mm以上を「良好」、8N/25mm以上を「更に良好」、10N/25mm以上を「特に良好」とした。
【0122】
評価例2
<粘着剤Bの粘着力[N/25mm]>
JIS Z 0237:2009に準拠して行った。
試験片(測定試料)の幅、(測定時の)温度・湿度、(貼り付けられる側の)試験板(の種類)等は、JIS Z 0237:2009に記載の標準的なもので行い、2kgの圧着ローラーで2往復させて試験板に貼り付け、5分以上経過させた後、引張試験機にて、300mm/分の速度で、引きはがし角度180°で引きはがした。
単位は、JIS Z 0237:2009では、[N/10mm]であるが、[N/25mm]に換算した。
【0123】
評価例3
<回巻接触面からの剥離強度[cN/25mm]>
試験板として、JIS Z 0237:2009で規定のSUS304鋼板に代えて、実際のジョイントテープの回巻接触面とした以外は、JIS Z 0237:2009に準拠して行った。単位は、JIS Z 0237:2009では、[N/10mm]であるが、[cN/25mm]に換算した。
【0124】
評価例4
<回巻接触面からの「巻き解き性(非くっつき性)」の評価方法>
ジョイントテープを、図4に示したようにジョイントテープロールとし、12月間、室温(25℃)に保管した(経時させた)。その後、巻き解きの容易さを評価して以下の基準で判定した。
【0125】
<巻き解き性(非くっつき性)の判定基準>
○:作業に殆ど支障がない程度に巻きが容易に解ける。
△:作業にほぼ支障がない程度に巻きが解ける。
×:作業に支障がでる程度に巻きが容易に解けない。
【0126】
実際の「巻き解き性(非くっつき性)」に関して、前記した「回巻接触面からの剥離強度[cN/25mm]」とは以下の相関があるので、巻き解き性(非くっつき性)の評価は、回巻接触面からの剥離強度で代用することができる。
なお、以下は、粘着層Bの回巻接触面からの剥離強度であるが、粘着層Aの回巻接触面からの剥離強度は、全て良好であるので問題にならない。
【0127】
回巻接触面からの剥離強度 巻き解き性(非くっつき性)の判定
120cN以下/25mm ○
120~160cN/25mm △
160cN以上/25mm ×
【0128】
評価例5
<ボールタック>
傾斜角30°で、助走面10cm、粘着層面10cmの試料(測定層)に、スチールボール32種類(1/32インチ~32/32インチ)を転がし、粘着層面の中央付近に停止するボールの径の番号(1~32)を「ボールタック」とする。測定温度は23℃、測定湿度は50%RHとする。
【0129】
評価例6
<糸解れ(ほつれ)>
網目状シートの縦糸と横糸との交点付近において、糸の解れを目視で観察評価し、以下の基準で判定した。「△」以上を合格とした。
◎:スリット時に端部の糸解れが見られない。
○:スリット時に端部の糸解れが僅かに見られる。
△:スリット時に端部の糸解れが見られる。
×:スリット時に端部の糸解れが著しく見られる。
【0130】
<ジョイントテープ(ロール)1~14の評価結果>
ジョイントテープ(ロール)1~14について、評価結果を表1にまとめた。
【0131】
【表1】
【0132】
粘着層Aの「ボールタック」が5以上であり、かつ、粘着層Bの粘着力が3N/25mm以上であり、実際的にも、ジョイントテープ1~14の全てが、構造体への粘着層A及び粘着層Bの接着性において良好であった。特に、粘着層Bの粘着力が、全てのジョイントテープにおいて、11.5N/25mmであったので、粘着層Bの接着性は「特に良好」であった。
【0133】
巻き解き性(非くっつき性)は、「離型層ではない表面層」を有する(離型層を有さない)ジョイントテープロール1、2、5、6、9、10では全て「×」判定であり、ジョイントテープロールを巻き解く際に、容易に巻き解けず作業に支障がでた(又は作業ができなかった)。
また、離型層を有さないジョイントテープ1、2、5、6、9、10では、粘着層Bの実際の回巻接触面からの剥離強度が、全て160cN/25mm以上であり、実際の巻き解き性(非くっつき性)の判定が「×」であることを支持した。
【0134】
一方、離型層を有するジョイントテープロール3、4、7、8、11~14では、巻き解き性(非くっつき性)は全て「○」判定であり、ジョイントテープロールを巻き解く際に、巻きが容易に解け、作業に殆ど支障がなかった(又は作業に全く支障がなかった)。
また、離型層を有するジョイントテープロール3、4、7、8、11~14では、粘着層Bの実際の回巻接触面からの剥離強度が、全て120cN/25mm以下であり、実際の巻き解き性(非くっつき性)の判定が「○」であることを支持した。
【0135】
離型層があれば、粘着層Bの粘着力が11.5N/25mmと構造体同士を特に良好に接合できジョイントテープ(ロール)として全く問題のないレベルであっても、巻き解き性(非くっつき性)が全て良好「○」であることが分かった。
更にシリコーン系樹脂を含有する、特に有機重合体変性シリコーンを含有する離型層であれば、粘着層Bの粘着力が高くても、巻き解き性(非くっつき性)が極めて良好であることが分かった。
一方、離型層のないジョイントテープ(ロール)では、粘着層Bに回巻接触面がくっついてしまい、巻き解き性(非くっつき性)が不良であった。
【0136】
離型層の形成と目止めとを、同一離型層形成液(エマルジョン)で同時に行うことができた。シリコーン系樹脂(有機重合体変性シリコーン)を高い含有比率で含むジョイントテープ14は、巻き解き性(非くっつき性)は極めて良好であったが、目止めが若干弱く、スリット時に糸解れ(ほつれ)が若干見られた。
【0137】
離型層の存在するジョイントテープや、シリコーン系樹脂(有機重合体変性シリコーン)を含む目止め剤で目止めをしたジョイントテープは、巻き解き性(非くっつき性)が良好であるため、離型シートを介さずに巻き取ってジョイントテープロールとしても、現場で全く作業に支障をきたさないことが分かった。
【0138】
作製例21
<ジョイントテープ(ロール)21の作製>
(メタ)アクリルエチレン酢酸ビニル系ポリマーである「ポリゾール(登録商標)EF265(固形分48~52質量%の水系エマルジョン)、昭和電工(株)製」で目止めを行い、次いで、作製例14のジョイントテープ14の作製と同様にして離型層を形成させる等してジョイントテープ21を作製した。
【0139】
粘着層A、粘着層Bの構造体への接着性は何れも良好であり、巻き解き性(非くっつき性)も極めて良好(「○」判定)であり、スリット時に糸解れ(ほつれ)も見られなかった。
【0140】
作製例22
<ジョイントテープ(ロール)22の作製>
(メタ)アクリルエチレン酢酸ビニル系ポリマーである「ポリゾール(登録商標)EF265(固形分48~52質量%の水系エマルジョン)、昭和電工(株)製」で目止めを行った。
次いで、作製例4のジョイントテープ4の作製において、(メタ)アクリルエチレン酢酸ビニル系ポリマーである「ポリゾールEF265」を除いて、有機重合体変性シリコーンである「シャリーヌ(登録商標)E-790(固形分42~45質量%の水系エマルジョン)、日信化学工業(株)製」のみを用いて離型層を形成させ、他は作製例4と同様にしてジョイントテープ22を作製した。
なお、作製例4に合わせるべく、目止めと離型層の合計の付着量(乾燥質量)を15g/mとなるようにした。
【0141】
粘着層A、粘着層Bの構造体への接着性は何れも良好であり、巻き解き性(非くっつき性)も極めて良好(「○」判定)であり、スリット時に糸解れ(ほつれ)も見られなかった。
【0142】
作製例23
<ジョイントテープ(ロール)23の作製>
作製例4のジョイントテープ4の作製において、有機重合体変性シリコーンである「シャリーヌ(登録商標)E-790」に代えて、無変性シリコーン(ジメチルシロキサンポリマー)の水系エマルジョンである「KM-9736A、信越化学工業(株)製」を用いた以外は作製例4と同様にして離型層を形成させた。混合比率(質量)も作製例4と同様に9:1とし、次いで、作製例4と同様にしてジョイントテープ23を作製した。
【0143】
粘着層A、粘着層Bの構造体への接着性は何れも良好であり、巻き解き性(非くっつき性)も極めて良好(「○」判定)であり、スリット時に糸解れ(ほつれ)も見られなかった。ただ、ジョイントテープロールに回巻しておくと、離型層中のシリコーン粒子が若干回巻接触面である粘着層Bに転写(裏移り)したが、使用上は問題なかった。
【0144】
作製例24
<ジョイントテープ(ロール)24の作製>
(メタ)アクリルエチレン酢酸ビニル系ポリマーである「ポリゾール(登録商標)EF265(固形分48~52質量%の水系エマルジョン)、昭和電工(株)製」で目止めを行い、離型層の形成をせず、その後、作製例1、3と同様にして粘着層Aを形成させ、他も作製例1、3と同様にしてジョイントテープ24を作製した。
【0145】
粘着層A、粘着層Bの構造体への接着性は何れも良好であったが、巻き解き性(非くっつき性)が不良(「×」判定)であった。
【0146】
<ジョイントテープロール1~14、21~24の評価結果>
ジョイントテープロール1~14、21~24において、巻き解き性(非くっつき性)が良好(「○」判定)であったもの(No.3、4、7、8、11~14、21~23)は、何れも離型シートが不要であった。なお、粘着層Bの2種の形成方法(作製例1に記載)については何れも評価結果は同様であった。
その結果、No.3、4、7、8、11~14、21~23)については、離型シートが存在しないジョイントテープロールを製造できたので、製造コストや現場での作業性に優れ、不要となった離型シートの散乱・飛散や離型シート剥離時の静電気によるトラブル等が起こり得なかった。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明のジョイントテープロールは離型シートを介して巻かれていないので、言い換えれば、該ジョイントテープロールに巻かれているジョイントテープ11には離型シートが存在しないので、構造体接合の作業が容易になり、剥離した離型シートを片付ける手間も省け、剥離時の静電気の発生があり得ず、離型処理されてない方の面が粘着層B(16)に貼り付く等と言った従来の問題点が発生しない。
そのため、屋上を始め多くの場所の塗膜防水加工の分野を始め、ある程度の厚さを有する構造体の端部面同士の接合が必要な建築分野等に広く利用されるものである。
【符号の説明】
【0148】
11 ジョイントテープ
12 網目状シート
12a 横糸
12b 縦糸
12c 交点
13 離型層
14 粘着層A
15 フィルム
16 粘着層B
31 下地
41 通気シート
42 通気シート基材
43 補強層
44 通気層
45 接着層
46 緩衝層
47 通気路
48 突き合わせ部分
51 塗膜防水層
52 トップコート層
図1
図2
図3
図4
図5
図6