(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】加圧型熱交換換気式建屋
(51)【国際特許分類】
F24F 7/007 20060101AFI20230217BHJP
F24F 7/08 20060101ALI20230217BHJP
F24F 7/003 20210101ALI20230217BHJP
F24F 7/00 20210101ALI20230217BHJP
E04B 1/76 20060101ALN20230217BHJP
【FI】
F24F7/007 B
F24F7/08 101J
F24F7/003
F24F7/00 C
E04B1/76 200A
(21)【出願番号】P 2019045810
(22)【出願日】2019-03-13
【審査請求日】2021-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】599094026
【氏名又は名称】フジ住宅株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500407466
【氏名又は名称】株式会社ホーム企画センター
(74)【代理人】
【識別番号】100145078
【氏名又は名称】内藤 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】鍜治 正一
(72)【発明者】
【氏名】青木 雅典
【審査官】▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3208689(JP,U)
【文献】特開2002-121830(JP,A)
【文献】特開2004-353216(JP,A)
【文献】特開2009-250468(JP,A)
【文献】特開2015-190687(JP,A)
【文献】特開2000-097468(JP,A)
【文献】特開2013-002217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/003
F24F 7/08
F24F 7/10
F24F 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密性を有する建屋本体の床部下空間に外気浄化室を形成し、該外気浄化室に多数の微多孔吸着体を配置し、前記外気浄化室に給気口を開口させた状態で前記建屋本体内に熱交換換気装置を配置し、外気浄化フィルターを有する外気吸込み管と排気口が屋外に開口する放出管を該熱交換換気装置に接続し、前記建屋本体に画成した部屋に開口する屋外排気管を該熱交換換気装置に接続し、前記外気浄化室を前記部屋に連通する給気ガラリを前記部屋の床部に設けた構成からなり、前記熱交換換気装置により吸引する外気は排出する屋内空気と熱交換して前記外気浄化室に放出し、前記微多孔吸着体により浄化空気に生成して前記給気ガラリから前記部屋に供給し、前記熱交換換気装置は、外気給気量>屋外排気量に設定して前記建屋本体内は外気圧より高い正圧に常時維持して外気の侵入を抑制する
ようにし、前記熱交換換気装置は、さらに、外気温度が所定の温度未満で、外気温度と室内温度が所定の温度差範囲内にある厳冬期には、単位時間当たりの給気回数を排気回数より多くし、かつ換気回数は他の季節より少ない換気制御を行い、外気温度が前記厳冬期の外気温度より高い所定の温度範囲内にある春季及び秋季には、給気回数に対して排気回数を2分の1とする換気制御を行い、外気温度が前記春季及び秋季における外気温度より高い夏季には、給気回数に対して1割少ない排気回数とする換気制御を行い、前記外気温度が所定の温度未満である厳冬期及び冬期の場合、並びに前記外気温度が所定の温度より高い夏季の場合は、導入する外気と排出する屋内空気との間で熱交換を行うことにより室内温度を適温に維持し、外気温度が前記所定の温度範囲内にある春季及び秋季には、熱交換を行わずに電力消費量を節減するようにしてなる加圧型熱交換換気式建屋。
【請求項2】
内部に部屋を画成した気密性を有する建屋本体と、該建屋本体の床部下空間に形成した気密性を有する外気浄化室と、該外気浄化室に配置した多数の微多孔吸着体と、排気口が屋外に開口する放出管を有し、給気口を前記外気浄化室に開口させた状態で前記建屋本
体内に配置した熱交換換気装置と、外気吸込み口が屋外に開口し、途中に外気浄化フィルターを有して該熱交換換気装置に接続した外気吸込み管と、屋内吸引口が前記部屋に開口した状態で、前記熱交換換気装置に接続した屋外排気管と、床部に設けられて前記外気浄化室を前記部屋に連通する給気ガラリとから構成し、前記熱交換換気装置により、前記外気吸込み管を介して吸引する外気と前記屋外排気管により排出する屋内空気とを熱交換して前記外気浄化室に放出し、該外気浄化室内で前記微多孔吸着体に接触させることにより浄化空気を生成し、該浄化空気は前記給気ガラリにより管路抵抗を受けることなく前記部屋に直接供給し、前記熱交換換気装置は外気給気量>屋外排気量に設定し、かつ前記屋外排気管の管路抵抗により屋外排気量<外気給気量とすることにより、前記建屋本体内は外気圧より高い正圧に常時維持する
ようにし、前記熱交換換気装置は、さらに、外気温度が所定の温度未満で、外気温度と室内温度が所定の温度差範囲内にある厳冬期には、単位時間当たりの給気回数を排気回数より多くし、かつ換気回数は他の季節より少ない換気制御を行い、外気温度が前記厳冬期の外気温度より高い所定の温度範囲内にある春季及び秋季には、給気回数に対して排気回数を2分の1とする換気制御を行い、外気温度が前記春季及び秋季における外気温度より高い夏季には、給気回数に対して1割少ない排気回数とする換気制御を行い、前記外気温度が所定の温度未満である厳冬期及び冬期の場合、並びに前記外気温度が所定の温度より高い夏季の場合は、導入する外気と排出する屋内空気との間で熱交換を行うことにより室内温度を適温に維持し、外気温度が前記所定の温度範囲内にある春季及び秋季には、熱交換を行わずに電力消費量を節減するようにしてなる加圧型熱交換換気式建屋。
【請求項3】
前記建屋本体は、床下をコンクリート製スラブで形成し、外壁は断熱性を持たせて構成することにより、全体に輻射熱が滞留するようにしてある請求項1又は2記載の加圧型熱交換換気式建屋。
【請求項4】
前記部屋には、前記給気ガラリから離間する位置で、該部屋の壁際の床部に前記外気浄化室に連通する吹出しスリットを配設してある請求項1又は2記載の加圧型熱交換換気式建屋。
【請求項5】
前記吹出しスリットは、前記外気浄化室に開口する前記熱交換換気装置の給気口から最大限離間する位置に設けてあることを特徴とする請求項4記載の加圧型熱交換換気式建屋。
【請求項6】
前記外気温度が所定の温度未満は、14℃未満である請求項1から5のいずれか1に記載の加圧型熱交換換気式建屋。
【請求項7】
前記外気温度が所定の温度範囲内は、14~26℃である請求項1から5のいずれか1に記載の加圧型熱交換換気式建屋。
【請求項8】
前記外気温度が所定の温度範囲より高い温度は、26℃超である請求項1から5のいずれか1に記載の加圧型熱交換換気式建屋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染した外気が建屋本体内に侵入するのを防止し、侵入した外気は微多孔吸着体により浄化空気として屋内に供給し、また外気温度の変化に応じて給気と排気の換気回数を制御すると共に熱交換換気に要する電力消費量を抑えながら四季に合った快適な居住環境を提供する加圧型熱交換換気式建屋に関する。
【背景技術】
【0002】
南北に長い我が国では、居住する地域によって四季の気温と湿度が大きく相違しており、また気温の変化にも大きな幅がある。例えば、真夏では、北海道の日中の最高気温が本州では最低気温に略相当するといった相違がある。このような多様な気候の相違に対応して快適な居住環境を提供する技術として、導入する外気と排出する屋内空気との間で熱交換を行い、省エネを図りつつ建屋の換気を行う熱交換気空調システムが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に示す熱交換気空調システムは、換気・空調一体型ユニット10と各室A~Dとを連通する空調ダクト31A~31Dの各々の室内吹出口に副熱交換器(41A~41D)を設け、ユニット10の主熱交換器12と副熱交換器(41A~41D)と協働して全室冷房、主冷房・除湿、冷房・軽暖房、全室暖房、主暖房・送風、全除湿、主除湿・冷房可能な冷媒循環系RCを設けて構成し、空調ダクト(31A~31D)及び換気ダクト(35A~35D)に空気風量を増減可能な開閉ダンパ(51A~51D)を設けたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術は、空調ダクトと換気ダクトを換気・空調一体型ユニット10と各室との間に配設するためにダクトの本数が多く、天井裏空間にはダクトが張り巡らされた状態になる。このため、ダクトの資材と配管工事に多大のコストが掛る、ダクト内に沈積する塵埃や発生する黴等を除去するための清掃やメンテナンスの費用が発生するといった問題、ダクトの管路抵抗によりモーター等の駆動系に負荷が掛かるといった問題点がある。
【0006】
更に、季節風によって我が国に飛来してくる汚染物質によって大気が汚染され、この汚染された外気が建屋内に侵入して健康被害を招くという問題があるが、夏期には室内温度を下げるために建屋の窓を開放することが一般的に行われており、汚染した外気による健康被害を抑制することは困難であるという問題がある。
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題点を解決すべくなされたもので、輻射熱が滞留する建屋本体内を屋外より正圧に維持して汚染外気の侵入を阻止し、供給する外気は外気浄化フィルターと微多孔吸着体により確実に浄化して住環境の最適化を図り、給気ガラリと吹出しスリットにより部屋内で空気を対流させて室温の均一化と冷暖房効率を高め、また外気温及び屋内外の温度差に応じて熱交換と換気を制御することで夏季にも気密性を維持して外気の侵入を防止して住環境を守り、また暖冷房の電力消費量を抑えて健康で快適な居住環境を形成し、しかも給気系はダクトレスにして排気系の管路抵抗により建屋本体内を正圧に維持すると共に管理費を節減するようにした加圧型熱交換換気式建屋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上述した課題を解決するために構成した請求項1に係る発明の手段は、気密性を有する建屋本体の床部下空間に外気浄化室を形成し、該外気浄化室に多数の微多孔吸着体を配置し、前記外気浄化室に給気口を開口させた状態で前記建屋本体内に熱交換換気装置を配置し、外気浄化フィルターを有する外気吸込み管と排気口が屋外に開口する放出管を該熱交換換気装置に接続し、前記建屋本体に画成した部屋に開口する屋外排気管を該熱交換換気装置に接続し、前記外気浄化室を前記部屋に連通する給気ガラリを前記部屋の床部に設けた構成からなり、前記熱交換換気装置により吸引する外気は排出する屋内空気と熱交換して前記外気浄化室に放出し、前記微多孔吸着体により浄化空気に生成して前記給気ガラリから前記部屋に供給し、前記熱交換換気装置は、外気給気量>屋外排気量に設定して前記建屋本体内は外気圧より高い正圧に常時維持して外気の侵入を抑制するようにしたものからなる。
(2)また、請求項2に係る本発明は、内部に部屋を画成した気密性を有する建屋本体と、該建屋本体の床部下空間に形成した気密性を有する外気浄化室と、該外気浄化室に配置した多数の微多孔吸着体と、排気口が屋外に開口する放出管を有し、給気口を前記外気浄化室に開口させた状態で前記建屋本体1内に配置した熱交換換気装置と、外気吸込み口が屋外に開口し、途中に外気浄化フィルターを有して該熱交換換気装置に接続した外気吸込み管と、屋内吸引口が前記部屋に開口した状態で、前記熱交換換気装置に接続した屋外排気管と、床部に設けられて前記外気浄化室を前記部屋に連通する給気ガラリとから構成し、前記熱交換換気装置により、前記外気吸込み管を介して吸引する外気と前記屋外排気管により排出する屋内空気とを熱交換して前記外気浄化室に放出し、該外気浄化室内で前記微多孔吸着体に接触させることにより浄化空気を生成し、該浄化空気は前記給気ガラリにより管路抵抗を受けることなく前記部屋に直接供給し、前記熱交換換気装置は外気給気量>屋外排気量に設定し、かつ前記屋外排気管の管路抵抗により屋外排気量<外気給気量とすることにより、前記建屋本体内は外気圧より高い正圧に常時維持するようにしたものからなる。
(3)そして、前記熱交換換気装置は、外気温度が所定の温度未満で、外気温度と室内温度が所定の温度差範囲内にある厳冬期には、単位時間当たりの給気回数を排気回数より多くし、かつ換気回数は他の季節より少ない換気制御を行い、外気温度が前記厳冬期の外気温度より高い所定の温度範囲内にある春季及び秋季には、給気回数に対して排気回数を2分の1とする換気制御を行い、外気温度が前記春季及び秋季における外気温度より高い夏季には、給気回数に対して1割少ない排気回数とする換気制御を行い、前記外気温度が所定の温度未満である厳冬期及び冬期の場合、並びに前記外気温度が所定の温度より高い夏季の場合は、導入する外気と排出する屋内空気との間で熱交換を行うことにより室内温度を適温に維持し、外気温度が前記所定の温度範囲内にある春季及び秋季には、熱交換を行わずに電力消費量を節減するようにするとよい。
(4)そして、前記建屋本体は、床下をコンクリート製スラブで形成し、外壁は断熱性を持たせて構成することにより、全体に輻射熱が滞留するようにするとよい。
(5)また、前記部屋には、前記給気ガラリから離間する位置で、該部屋の壁際の床部に前記外気浄化室に連通する吹出しスリットを配設した構成にするとよい。
(6)また、前記吹出しスリットは、前記外気浄化室に開口する前記熱交換換気装置の給気口から最大限離間する位置に設けるとよい。
(7)また、前記外気温度が所定の温度未満は、14℃未満であるとよい。
(8)また、前記外気温度が所定の温度範囲内は、14~26℃であるとよい。
(9)そして、前記外気温度が所定の温度範囲より高い温度は、26℃超である。
【発明の効果】
【0009】
(1)気密性を有する建屋本体内を屋外より正圧に維持するから、建屋内にPM2.5や花粉等の有害物質の混入する汚染外気が侵入するのを阻止し、また、窓や玄関ドアを開けても汚染外気が入り難く、建屋内を清浄な空気に維持できる。
(2)熱交換換気装置が吸引する外気は外気浄化フィルターと微多孔吸着体で浄化して建屋本体内に供給するようにしたから、健康で快適な居住空間を形成し維持することができる。
(3)建屋本体内は外気圧より高い正圧に常時維持することにより、部屋の隅々まで浄化空気を行き渡らせることができるから健康な生活環境を確保できる。
(4)外気温と屋内外の温度差に応じて年間を通じて熱交換換気装置を制御することで、夏季にも建屋本体内を正圧にして外気の侵入を防止することで住環境を守り、春・秋季には熱交換を行わずに暖冷房費の節減を図り電力消費量を抑えることで経済的に環境形成を実現できる。
(5)外気浄化室で浄化した空気は給気ガラリから部屋に直接供給するダクトレスにしたから、ダクトの敷設費用と管理費を節減できるし、管路抵抗による換気装置の負荷を低減することができる。
(6)建屋本体は全体に輻射熱が滞留するように構成したから、建屋本体内が外気温度の影響を受けることなく室温が安定するし、冷暖房費を節減することができる。
(7)外気浄化室に連通する吹出しスリットを給気ガラリから離間して配設し、部屋内で浄化空気を対流させることにより室温の均一化と冷暖房効率を高めることができる。
(8)吹出しスリットは熱交換換気装置の屋内給気口から最大限離間する位置に設け、供給する外気が外気浄化室内を長い距離と時間微多孔吸着体と接触するようにしたから、外気を十分に浄化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係る建屋の縦断面図である。
【
図3】温度差に応じて行う換気量制御の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳述する。
図1、2において、1は二階建ての建屋本体を示す。2は該建屋本体1を構成するコンクリート製のスラブ、3は該スラブ2上に一体に形成した基礎3で、該基礎3上には土台4が設けてあり、該土台4上に木造の躯体5が構築してある。6は該躯体5を覆う屋根部である。躯体5は断熱材を用いて断熱性を持たせた外壁5Aと図示しない柱とから構成してある。そして、躯体5内は一階床部7Aと一階天井部7Bによって一階区画部7を形成し、二階床部8Aと二階天井部8Bによって二階区画部8を形成し、各区画部7、8には仕切り壁9及びドア10によって複数の部屋11、11、・・・が画成してある。
【0012】
上述の構成からなる建屋本体1は、床部7A下面、外壁5A内面及び二階天井部8B裏面を図示しない気密シートで覆うことにより全体に気密性を持たせてある。また、一階床部7A下とスラブ2との空間は気密性を持たせた外気浄化室12に形成してあり、該外気浄化室12は一階天井部7Bと二階床部8Aで画成される空気流入空間13に給気路14によって連通している。そして、外気浄化室12は一階床部7Aに設けた給気ガラリ15によって部屋11と連通し、空気流入空間13は二階床部8Aに設けた給気ガラリ15によって部屋11と連通している。
【0013】
また、16は各部屋11の壁際に位置し、外気浄化室12に連通して床部7Aに開口する吹出しスリットを示す。該吹出しスリット16は前記給気グリル15から可及的に離間して配置してあり、外気浄化室12内を外気が長い距離と時間流動し、後述する微多孔吸着体23と十分に接触して浄化するようにしてある。従って、給気グリル15と吹出しスリット16は部屋11の対角線上の壁際に位置させるとよいし、対面する仕切り壁9の際に配設するのもよい。
ここで、吹出しスリット16は壁際に沿って床部7Aに開口する幅約2mmの隙間状のもので、部屋11に家具等を配置する場合の支障にならない大きさと形状であり、また、長さは部屋11の面積に応じて適宜異ならせてある。なお、吹出しスリット16は上記のように細い隙間状のものであるが、配置位置、給気グリル15との関係等を示す必要から
図2の図面では大きく描いてある。
【0014】
また、二階の部屋11にも給気ガラリ15から離間して床部8Aの壁際に同様に吹出しスリット16が配設してあり、空気流入空間13から浄化空気が部屋11に流入するようにしてある。
【0015】
17は前記外気浄化室12に設置した熱交換換気装置を示す。該熱交換換気装置17は
図2に示すように、ケーシング17Aと、該ケーシング17Aに設けた外気導入口17B、屋外排気口17C、屋内給気口17D及び屋内排気口17Eの4個の給・排口と、前記ケーシング17A内に設けた図示しない給気用と排気用の2モーターと、前記給・排口17B~17Eに接続してケーシング17Aに内蔵した熱交換素子17Fとから構成してあり、外気導入口17Bに外気温度センサー17G、屋内排気口17Eに室内温度センサー17Hが夫々設けてある。そして、熱交換換気装置17は吸引する外気の温度と室内空気の温度の変動とこれらの温度差に応じて、給気用及び排気用モーターの夫々を駆動、停止というON、OFF制御をすることにより、熱交換を行い、或いは熱交換を行わない普通換気を行うことで、電力消費量を抑えつつ室内に温かい空気或いは冷たい空気を供給して空調を図っている。
【0016】
18は前記熱交換換気装置17の外気導入口17Bに接続した外気吸込み管を示す。該外気吸込み管18は外気吸込み口18Aを躯体5の外壁5Aから屋外に開口させてあり、熱交換換気装置17の上流側に位置して外気浄化フィルター19を設けることにより、屋外の大気中の粉塵、花粉、排気ガス、PM2.5等の不純物を吸着除去して外気を浄化し、また熱交換換気装置17の給気モーターの負荷を低減している。
そして、外気吸込み管18を介して吸引した外気は熱交換換気装置17内で建屋本体1からの排出空気と熱交換して屋内給気口17Dから外気浄化室12に放出される。また、20は熱交換換気装置17の屋外排気ポート17Cに接続し、先端開口の排気口20Aを屋外に開口させた放出管を示す。
【0017】
21は建屋本体1内の屋内空気を屋外に排出するための屋外排気管を示す。該屋外排気管21は熱交換換気装置17の屋内排気口17Eに接続して外気浄化室12に配設した横主管21Aと、該横主管21Aの先端から二階天井部8B裏に伸長する縦主管21Bと、一階天井部7B裏及び二階天井部8B裏に配設し、該縦主管21Bに接続した上下の横分岐管21C、21Cと、該各横分岐管21Cに接続して各部屋11に開口する枝管21D、21D、・・・とから構成してある。
そして、各枝管21D、21Dの開口には図示しない塵埃除去フィルターが設けてあり、室内の塵埃が屋外排気管21内に堆積して管路抵抗が増大する事態や、熱交換換気装置17内に吸引されて排気モーターに掛る負荷が増大する事態を防止している。
【0018】
22、22、・・・は外気浄化室12及び空気流入空間13に配列した複数の微多孔吸着体を示す。該各微多孔吸着体22は織布等の通気性素材からなる袋に木炭、竹炭等の微多孔材を収容したものからなり、外気浄化フィルター19で除去できなかった外気中の有害な化学物質、例えばホルムアルデヒド、トルエン等を吸着除去することにより、より一層浄化した清浄な空気を各部屋11等に供給するものである。
なお、微多孔吸着体22は空気との接触面積が広いことが望ましいので、下面側に通気孔を形成した載置台、例えば簀の子状の台の上に配列するとよい。
【0019】
本実施の形態は上述の構成からなるもので、次にその作用について詳述する。先ず、熱交換換気装置17は外気吸込み管18を介して吸引した外気を外気浄化フィルター19で浄化した後、屋内給気口17Dから外気浄化室12に管路を経ないで直に放出する。浄化空気は外気浄化室12で更に微多孔吸着体22と接触することにより一層浄化した浄化空気となって給気ガラリ15から各部屋11に供給される。
このように、浄化空気の給気系は熱交換換気装置17の屋内給気口17Dから外気浄化室12に直接放出するダクトレスの流路に構成してあるから、管路抵抗を受けることが無いし、給気用モーターに掛る負荷も軽減できる。
【0020】
外気浄化室12の浄化空気は給気ガラリ15を介して一階の部屋11に吹込まれ、また給気路14を経て空気流入空間13に吹込まれ、給気ガラリ15から二階の部屋11に吹込まれることで、各部屋11は浄化空気で満たすことができる。一階天井部7B裏の空気流入空間13には多数の微多孔吸着体22を配置してあり、外気浄化室12で浄化した空気を更に浄化している。
【0021】
吹出しスリット16は熱交換換気装置17の屋内給気口17Dから可及的に離間する位置に設けてあり、屋内給気口17Dから吹出した外気が外気浄化室12内を長い距離と時間流動して微多孔吸着体22と接触するようにしたから、外気を十分に浄化して吹出しスリット16から部屋11に放出することができる。
そして、部屋11に給気ガラリ15から離間して設けた吹出しスリット16からも浄化空気を吹込むことにより、部屋11内では浄化空気が長時間対流し、また速やかに室温の均一化を図ることができると共に、効率良く冷暖房することができる。しかも、部屋11に浄化空気を加圧した状態で吹込むことで、部屋11の隅々まで浄化空気を行き渡らせることができる。
【0022】
他方、各部屋11の屋内空気は一階天井部7B及び二階天井部8Bに枝管21Dが開口する屋外排気管21を介して熱交換換気装置17により吸引され、熱交換換気装置17内で吸引した外気と熱交換して放出管20から屋外に放出される。そして、給気系は管路抵抗による圧損は掛からないのに対し、排気系では屋外排気管21での管路抵抗による圧損が掛ることで外気給気量>屋外排気量の状態が維持される、即ち建屋本体1内は常に正圧の状態が維持される結果、汚染空気や物質が隙間、換気口等から建屋本体1内に侵入するのを常時阻止して建屋内を快適な居住環境に維持することができる。
【0023】
次に、建屋本体1における給気と排気の換気回数について、外気温度に温度差が生じる季節に場合分けしてその制御を説明する。
外気温度が14~26℃の範囲にある春季と秋季(中間期)は、室内温度と外気温度の差は小さいから熱交換換気装置17の熱交換機能は停止する。そして、春季と秋季では、屋内への給気量に対して屋外への排気量を少なくする制御を行う。即ち、給気回数を0.50回/hとするのに対し排気回数を0.25回/hと2分の1に設定し(
図3参照)、建屋本体1内を加圧して正圧に維持すると共に電力消費量を節減し省エネを図る。
【0024】
他方、外気温度が14℃未満で、かつ室内温度に対して外気温度が大きく低下し、屋内温度と屋外温度の温度差が17℃≦△θ<29℃と大きな温度差が生じる厳冬期には、
図3に示すように、給気回数を0.35回/hに、排気回数を0.30回/hにして屋内外の換気回数を抑え、また換気量を近似させる制御を行うことで、建屋本体1内の暖気の排出を抑えつつ熱交換と換気を行い、暖房コストに要する電力消費量を抑制するようにしている。
【0025】
また、外気温度が14℃未満で、室内外の温度差が8≦△θ<17の範囲にある場合は、給気回数を0.40/hに対して排気回数を0.35/hに、室内外の温度差が2≦△θ<8の範囲にある場合は、給気回数を0.45/hに対して排気回数を0.40/hに、室内外の温度差が2≦△θ<8の範囲にある場合は、給気回数を0.45/hに対して排気回数を0.40/hに、室内外の温度差が△θ<2の範囲にある場合は、給気回数を0.50/hに対して排気回数を0.45/hというように、室内外の温度差が小さくなるのに合わせて単位時間当たりの吸排気の換気回数を増やす制御を行うことで、熱交換換気装置17の電力消費量を無駄の無いように効率化を図っている。
【0026】
以上要すれば、外気温度が所定の温度14℃未満である厳冬期及び冬期の場合、並びに前記外気温度が所定の温度26℃より高い夏季の場合は、導入する外気と排出する屋内空気との間で熱交換を行うことにより室内温度を適温に維持すると共に、電力消費量の節減を図る制御を行う。他方、外気温度が14~26℃の所定の温度範囲内にある春季及び秋季には、建物本体1内は加圧して正圧に維持しつつ熱交換は行わずに暖冷房に要する電力消費量を節減する制御を行う。
【0027】
また、熱交換換気装置17の屋内給気口17Dからダクトを介さずに外気浄化室12に直に給気することで管路抵抗はゼロにしてあり、他方屋内空気は建屋本体1内に配設した屋外排気管21により排出することで管路抵抗を受ける構成にしてあるから、常に給気量>排気量の関係が成立し、建屋本体1内を正圧に維持するための熱交換換気装置17の負荷を軽減しながら建屋本体1内は外気圧より高い正圧を維持するようにしてある。
【0028】
更に、熱交換換気装置17から外気浄化室12を介して部屋11にダクトを介さず浄化空気を直接放出する構成にすることでダクトの敷設工費を省くことができるし、ダクトの目詰まりや防黴の対策も不要であり、維持管理費を削減することができる。
【0029】
なお、本実施の形態では2階建ての戸建て建屋を例に説明したが、本発明は一階建ての平屋にも、また高層集合建屋にも用いることができるものである。この高層集合建屋の場合、床下空間は下層階の部屋の天井裏と上層階の部屋の床下との間の空間が相当する。
【符号の説明】
【0030】
1 建屋本体
2 スラブ
5A 外壁
7A 床部
11 部屋
12 外気浄化室
15 給気ガラリ
16 吹出しスリット
17 熱交換換気装置
17D 屋内給気口
18 外気吸込み管
18A 外気吸込み口
19 外気浄化フィルター
21 屋外排気管
22 微多孔吸着体